JP2004189102A - エアバッグ - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量で、コンパクトに収納でき、かつ高温耐圧性に優れるエアバッグの提供。
【解決手段】複数枚の本体基布を縫合により袋状に形成し、外周部において本体基布とは別体の保護布が本体基布の上面に重ね合せ、または本体基布間に挟まれた状態で縫合されているエアバッグであって、本体基布が350デシテックス以下の糸を用いた、目付が200g/m2以下で、かつカバーファクターが2000以上の織物からなり、保護布が本体基布のカバーファクター以上のカバーファクターであり、好ましくは少なくとも片面に耐熱性被覆材が施されているからなる織物からなることを特徴とするエアバッグ。
【選択図】 図6
【解決手段】複数枚の本体基布を縫合により袋状に形成し、外周部において本体基布とは別体の保護布が本体基布の上面に重ね合せ、または本体基布間に挟まれた状態で縫合されているエアバッグであって、本体基布が350デシテックス以下の糸を用いた、目付が200g/m2以下で、かつカバーファクターが2000以上の織物からなり、保護布が本体基布のカバーファクター以上のカバーファクターであり、好ましくは少なくとも片面に耐熱性被覆材が施されているからなる織物からなることを特徴とするエアバッグ。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の衝突安全性を向上するためのエアバッグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗員保護用安全装置としてエアバッグシステムが普及してきており、運転席用から助手席用、側突保護用、後部座席用と装着部位も増えてきている。
しかるに搭載されるエアバッグの部位、数量が増えるにつれエアバッグシステムの軽量化、小型化が求められ、それに応じた工夫がなされてきている。例えば、エアバッグの本体については、ノンコート化あるいは低塗布量コート処方の開発、従来より細い糸を用いた薄く、軽い基布の開発、バッグ容量の低減などが検討されてきている。
【0003】
しかし、薄く、軽い基布を用いた場合、従来のエアバッグで使用されていた縫製法を適用すると、エアバッグの縫合部、とりわけ、エアバッグの外周部が、エアバッグ展開時の衝撃力、あるいは乗員当接によるバッグ内圧の上昇などにより縫い目の孔が拡大する、いわゆる目開きを生じ易く、場合によっては拡大した孔からインフレーターの熱ガスが抜け、縫合部を溶融、損傷させるおそれもあった。すなわち、本体基布が薄くなるほど材料を昇温、溶融させるのに必要な熱量が少なくて済み、それは本体基布がコーティングされていない場合は尚のことである。そのため、縫い目孔を保護し、孔の拡大を抑止する方法が各種提案されている。
【0004】
例えば、特開平8−310325号公報には、外周縫製部の内側に、バッグの最大内圧時より小さな張力で破断する破断可能な仮縫製部を設け、展開時に外周縫製部へ過度な力が加わらないようにする仕様が提案されている。しかし、この仕様は展開後に破断する可能性があり、乗員の当接時には外周縫製部の保護にならない場合がある。
【0005】
また、特開平10−166978号公報には、エアバッグの外縁縫製部にシート状物を共縫いすることにより、縫製部に発生する目ズレからのガス漏れを防ぐ方法が開示されている。しかし、この場合も、本体基布やシート状物の仕様については全く言及されていない。
【0006】
本発明者は、先に特開平3−10946号公報で、縫合部に布帛と接着層からなるテープを貼ったエアバッグを提案した。この公報に示した発明では、極めて堅牢且つ耐久性に優れる縫合部を提供できる。しかしながら、その後のエアバッグについては上述の通り、極めて薄い織物を使用した軽量のものが求められてきている。そのようなエアバッグを提供するには、本公報に係る技術についてさらなる改良が必要である。
【0007】
【特許文献1】
【特開平8−310315号公報】
【特許文献2】
【特開平10−166978号公報】
【特許文献3】
【特開平3−10946号公報】
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、軽量で薄い基布を用いたエアバッグの縫合部を改良することにより、
展開時の高い耐圧性に優れた堅牢性と、軽量かつ極めて優れたコンパクト収納性を兼ね備えたエアバッグを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、軽く、薄い基布を使用してエアバッグの一層の軽量、コンパクト化の実現を目指し検討する中で、袋体としての耐圧特性、特にインフレーターからの熱ガスによる外周縫製部の縫い目拡大抑止に優れ、軽量で極めてコンパクトに収納することのできる柔軟なエアバッグの製造技術に関し鋭意工夫を行った結果、エアバッグ本体基布に特定の基布仕様を選択し、かつ外周縫合部に特定の保護布を共縫いすることが有効であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)二枚以上の本体基布同士を縫合により袋状に形成し、外周部において保護布が本体基布にて共縫いされているエアバッグであって、本体基布が350デシテックス以下の糸を用いた目付が200g/m2以下、カバーファクターが2000以上の織物からなり、保護布が本体基布と同等以上のカバーファクターを有する織物からなることを特徴とするエアバッグ、
(2)本体基布が235デシテックス以下の糸を用いた目付けが160g/m2以下である織物であることを特徴とする前記(1)記載のエアバッグ、
(3)保護布の少なくとも片面に耐熱性の被覆材が施されていることを特徴とする前記(1)または(2)記載のエアバッグ、
(4)基布のカバーファクターが2000〜2600である請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ、
に関する。
【0011】
本発明のエアバッグは、インフレーターが供給する熱ガスがエアバッグの高い内圧により縫合部、特に外周縫合部の縫い目孔から噴出する際に、縫い目孔の周囲の基布を軟化、溶融させ、縫い目孔を拡大させる作用を抑止できる、堅牢で耐圧性に優れたものであり、乗員の衝撃エネルギーを充分に吸収でき、しかも軽量で折畳み容量も少ないコンンパクトなエアバッグである。
【0012】
保護布は、本体基布の上または下に重ねられるか、本体基布同士の間に挟み込まれて適用することができる。本体基布は二枚、または三枚以上とすることができる。
袋体を構成する基布は350デシテックス(315デニ−ル)以下、好ましくは235デシテックス(210デニール)以下の細い糸を用いた織物を使用する。350デシテックス以下の細い糸を用いることより、軽く、コンパクトに折り畳むことができるエアバッグを提供することができる。350デシテックスを超える太い糸を用いた場合には、バッグ重量も多く、折り畳み容積を小さくすることが難しい。
【0013】
また、袋体の本体基布の目付は200g/m2以下、好ましくは160g/m2以下とする。200g/m2超える目付では袋体が充分に軽量にならない。なお、ここにいう目付けとは、被覆材などが施されていない状態の基布の重さをいう。
織物を構成する糸のデシテックス(dtex)と織物の打込み密度(本/吋)から求められるカバーファクターは2000以上、好ましくは2200〜2600である。カバーファクターが2000未満の場合には、織物組織が粗い構造になるため、エアバッグが衝撃的に展開し、あるいは乗員がエアバッグに当接してエアバッグの内圧が急激に上昇した際に、織物が組織ずれを起こし易く、縫合部の縫い目孔が拡大し、縫合部が溶融、損傷する場合もある。一方、カバーファクターが2600を超える場合は、織物が極めて粗硬となり、折り畳み容積も小さくすることができない。
【0014】
ここで、織物のカバーファクター(CF)は織物構造の緻密さを示す指数で、織物に用いられている経糸および緯糸のデシテックス(DwおよびDf)と織物の経密度および緯密度(NwおよびNf)(本/吋)から求められる。
【数1】
【0015】
本発明では外周縫合部に保護布を適用する。すなわち、保護布を本体基布の上面に重ね合せるか、基布同士の間に挟んだ状態で縫合することにより、熱ガスが縫合部の縫い目孔を通過して袋体の外に抜け出ることを防止でき、縫い目孔周囲の軟化、溶融が阻止され、堅牢で耐圧性に優れたエアバッグを提供することができる。保護布は、熱ガスが縫合部の縫い目孔から袋体外部に抜け出ようとする際の遮蔽体であり、本体基布と同じかそれ以上のカバーファクター、すなわち緻密な織物構造であることが必要であり、例えば、カバーファクターが2000以上、好ましくは2000〜2600である。本体基布より小さなカバーファクターの場合は、熱ガスの遮蔽が十分でない。保護布は本体基布の縫合と同時に縫い合わせることが出来るので、接着法や塗布法などの様に製造工程を煩雑にすることもない。
【0016】
保護布が本体基布と一体で縫合されるため、保護布自体にも縫い目孔が生じる。保護布自体には、本体基布に加わるほどの大きな張力は作用することは少ないものの、保護布を緻密でない粗い組織の織物にすると、織物の組織ずれした部分から熱ガスが抜け、更に本体基布の縫い目孔をも拡大させる原因になり易い。従って、本発明の保護布は、しっかりした組織である材料が好ましく、編物、不織布などに比較して寸法安定性、被覆性に優れる織物が良い。保護布の特性は、エアバッグの形状および容量、縫合部位、本体基布の仕様などに応じて選定すれば良いが、普通の織物の他に、三軸織物、四軸織物などを用いると更に寸法安定性の高い保護布が得られ、織物のバイアス方向に裁断して用いれば伸縮性に富んだ材料が得られ、曲線部を縫合する場合には特に適する。
【0017】
保護布の遮蔽性能を上げるため、保護布の少なくとも片面に耐熱性の被覆材を施すのがよい。被覆材は、通常エアバッグに用いられているものの内、耐久性、耐熱性に優れる材料、例えば、シリコーン樹脂またはシリコーンゴム、ポリウレタン樹脂またはポリウレタンゴム(シリコーン変性、フッ素変性を含む)、クロロプレンゴムやハイパロンゴムなどの含塩素系ゴム、フッ素系ゴム、および塩素系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂(各種変性を含む)などから適宜選定すれば良い。
【0018】
保護布の寸法は縫合部位および形状に応じて、縫合部を完全に被覆するように選定すれば良いが、例えば、本体基布の上面に重ね合せる場合や基布間に挟む場合には、幅10〜40mm程度とすれば良く、二つ折りして本体基布を上下から挟み込むような場合には、幅20〜100mm程度とすれば良い。また、保護布の長さは縫合部の形状、長さに合せて適宜、選定すればよいが、長尺のテープ状としてもよいし、縫合部形状に合せて裁断してもよい。保護布を本体基布と共に縫製する際には、通常、衣料の縫製などに用いられるバインダー、ラッパ、ホルダーなどの縫製治具類をミシンに取り付けて縫製し、両端部が重なるようにすれば高い遮蔽性が得られる。
【0019】
外周縫合部の縫製仕様は、本体基布の仕様、エアバッグの種類、搭載個所、形状、容量、要求される縫合強力などに応じて選定すれば良く、縫い糸番手は20番手〜5番手、運針数は2〜5針/cm、などとし、縫い目仕様は、本縫い、二重環縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫い、などがあり、これらを組合せてもよい。また、縫い目線の本数は、通常は1〜3本から選べばよく、縫い目線が複数の場合には縫い目線間の距離は2〜6mmの中から選べばよい。
【0020】
ここでいう縫い糸番手とは、JIS L−2510、L−2511、およびL−2512で規定される化合繊縫い糸と呼ぶ縫い糸の番手を示し、フィラメント糸縫い糸の場合は、番手とデシテックスの関係は、概略、以下の通りである。
20番手が667〜800デシテックス、10番手が820〜890デシテックス、8番手糸が940〜1110デシテックス、5番手糸が1400〜1670デシテックス。
紡績糸縫い糸の場合は、前記各JISに記載の数値表のデシテックスから換算すればよい。
【0021】
本発明に使用する縫糸は、一般に化合繊縫糸と呼ばれるものや工業用縫糸として使用されているものの中から適宜選定すればよく、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラスなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸、フィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
【0022】
本体基布は、その少なくとも片面に耐熱性の被覆材を施しても良い。被覆材の付与により更に高い気密性と耐熱性を得ることが出来る。被覆材の種類や付与方法ならびに付与量は、保護布に用いた材料および方法と同じで良く、あるいは異なるものでも良い。エアバッグの軽量、折畳み容積などの観点から、被覆材の付与量は少ない方が良いが、本体基布の仕様、エアバッグの仕様、形状、容量、搭載個所などにより付与すべき場合には、その仕様等は適宜選定すれば良く、例えば付与法は、織物との接着、被覆層の気密性が確保できるものであればよく、コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ)、印捺法(スクリーン、ロール、ロータリー)、ラミネート法、浸漬法、スプレー法などいずれの加工法でもよいし、付与量は10〜80g/m2の範囲から選べば良い。
【0023】
本体基布および保護布と被覆材との接着性を向上させるために、予め織物表面にプライマー処理、プラズマ加工などの前処理を施してもよい。さらに、被覆材の物理特性、織物と被覆材との接着性を向上させるため、被覆材を織物に付与した後、乾燥、固化する工程で接触または非接触による熱処理、高エネルギー処理(高周波、電子線、紫外線)などを行ってもよい。
【0024】
被覆材には、加工性、接着性、表面特性あるいは耐久性などを改良するために通常使用される各種の添加剤、例えば、架橋剤、反応促進剤、反応遅延剤、接着付与剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、粘着防止剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤、などの一種または二種以上を選択、混合を使用してもよい。
【0025】
また、本体基布および保護布に用いる織物を構成する繊維糸条は特に限定するものではなく、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独またはこれらの共重合、混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸の共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合により得られるポリエステル繊維、パラフェニレンテレフタルアミド、およびこれと芳香族エーテルとの共重合物などに代表されるアラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ビニロン繊維、超高分子量ポリエチレン系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素系繊維、ポリサルフォン(PSf)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、高強力レーヨンを含むセルロース系繊維、アクリル系繊維、炭素繊維、ガラス繊維、シリコーンカーバイド(SiC)繊維、アルミナ繊維、などから適宜選定すればよく、場合によっては、スチールに代表される金属繊維などの無機繊維を含んでもよい。
【0026】
これらの繊維糸条には紡糸性や加工性、材質の耐久性を改善するために通常使用されている各種の添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの一種または二種以上を使用してもよい。また、場合によっては、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工などの加工を施してもよい。さらに糸条の形態は、長繊維のフィラメント、短繊維の紡績糸、これらの複合糸など、特に限定するものでない。
【0027】
本発明の織物を製造する織機は通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、例えば、シャトル織機、ウォータージェット織機(WJL)、エアージェット織機(AJL)、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選べばよい。織物の組織も、平織、斜子織(バスケット織)、綾織、格子織(リップ・ストップ織)、あるいはこれらの複合組織など、いずれでもよい。
【0028】
本発明になるエアバッグは、車輌の乗員を保護するためのエアバッグで、前席用(運転席、助手席、ニーバッグ、フットバッグ)、後席用、側部用(サイドバッグ、カーテンバッグ)、などを対象としているが、場合によっては追突保護用のヘッドレスト用バッグ、幼児保護用ミニバッグ、シートベルト用バッグ(エアーベルト)など機能的に適応し得る部位にも適用することもでき、形状、容量などは要望される要件を満足するようにすればよい。さらに、車輌以外の、列車、飛行機、船舶、二輪車、歩行者保護などの用途に適用してもよい。
【0029】
本発明になるエアバッグの大きな力を受ける部位の補強に用いられる補強布は、袋体に用いられたものと同じ織物でもよいが、別途準備した補強用織物、例えばナイロン66の940デシテックス、470デシテックスなどを用いて作成された、厚手織物の単独または複数枚を用いてもよい。ここでいう補強布は、インフレーターから噴出する熱ガスを遮蔽するための防炎布を含むものとし、補強布に耐熱性を付与するために、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂、耐熱性ゴムなどを塗布してもよいし、塗布量も本発明の基布より多いものとしてもよい。また、アラミド繊維などの耐熱性繊維を用いた織物を使用してもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下実施例に基づき本願発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例の中でエアバッグの性能評価は以下の方法によった。
(1)折り畳み厚さ
インフレーターの固定金具の上辺に沿ってエアバッグの上半分を下側に折り、折り重ねたバッグを上側に1回、さらに残り部分を下側へ1回折り曲げて、左右に長い矩形状とした。次いで、矩形の左側を固定金具の左辺に沿って右側に1回折り曲げ、残り部分を3回内側に折り曲げ、矩形の右側についても左側と同様に折り曲げ、バッグを折り畳んだ。折り畳んだバッグの上に20cm×20cm、厚さ約5mmのアクリル板を置き、さらに荷重1kgを載せ、1分後の厚さを測定した。結果は、実施例2を100とした時の相対値で示した。
【0031】
(2)高温耐圧試験
上記の様に折り畳んだバッグと運転席用インフレーター(ダイセル社製デュアル型インフレーターZA、出力160kpa/200kpa)をモジュールに固定し、モジュール全体を85℃で予熱した。予熱後のモジュ−ルをインパクター試験機に固定し、インフレーターの2室を同時着火させてバッグを展開させながら、重量約40kg、直径φ380mmの円盤を速度略20km/hでバッグに押し当てバッグの耐圧性を評価し、展開後のバッグの状態を観察した。
【0032】
実施例1
ナイロン66繊維350dtex/72f(原糸強度8.6cN/dtex)の糸を用い、織密度が経、緯いずれも60本/吋の平織物を作成し、この織物を精練、熱セットしてノンコート基布を得た。織物の目付けは190g/m2であった。また、防炎布として、この熱セットの基布に、熱硬化性シリコーン樹脂を45g/m2(固形分換算)塗布し、120℃で乾燥し、160℃で熱処理を施したコート基布を準備した。
【0033】
次に、ノンコート基布からエアバッグ本体基布として外径φ690mmの円形布を2枚(基布1,2)、中央部の幅が170mm、両端部の幅が70mm、長さが520mmの吊紐(10)を1本、内径φ66mm、外径φ260mmの円盤状の取付け口補強布を1枚(補強布5。但し、排気孔の補強部まで含む変形円盤状)、上下に吊紐固定部が延設されている吊紐固定布(補強布6)を1枚、また、防炎布(補強布7)としてコート基布から円盤状の取付け口補強布と同一形状布を1枚、裁断した。基布1の中央に、吊紐(10)を図1に示すように、ナイロン66の縫い糸(上糸、下糸とも5番手糸)を使い、運針数3針/cm、本縫い2列にて縫製した。基布2には、図3に示すように、中央にφ66mmのインフレーター取付け口、取付け口の左、右ほぼ45度の位置にφ30mmの排気孔を各1個設けた。次いで、エアバッグの反転後に図2の状態となるように、バッグの取付け口に補強布5および6をセットし、取付け口と排気孔の円形部を縫い付けた。取付け口の縫い目径は内側から115mm、200mmとし、排気孔の縫い目径は50mm、55mmとした。縫い糸は、上糸、下糸いずれもナイロン66の5番手糸、本縫いで3.5針/cmにて行った。
【0034】
さらに、その上に防炎布7を重ね、同じ縫い仕様で最内層縫い目径75mmにて縫合した。基布1,2を重ね合わせ、外周を上糸が5番手糸、下糸が8番手糸であるナイロン66の縫い糸を用い、二重環縫い2列で4.5針/cmにて縫合した。縫い代は20mmとした。このとき、エアバッグ本体基布と同じノンコート基布から、幅70mmで織物のバイアス方向に裁断した保護布(15)をバインダーにより二つ折りにしながら、図6に示すように本体基布の外周部を挟み込むようにして一緒に縫合した。次いで、吊紐のそれぞれの端部を、補強布6の両端の延設部に、上糸、下糸ともにナイロン66の5番手糸の縫い糸を用い、運針数4針/cmにて本縫いにより縫合した。吊紐の長さは220mmであった。このバッグを取付け口から反転し、試験用バッグとした。
このバッグを評価法に準じて、高温耐圧試験を行った。得られたエアバッグの評価結果を表1に示す。外周縫合部の目開きは全く発生せず、問題がなかった。
【0035】
実施例2
ナイロン66繊維235dtex/72f(原糸強度8.6cN/dtex)の糸を用い、織密度が経、緯いずれも74本/吋の平織物を作成した。この織物を精練、熱セットし、次いで織物の片面に熱硬化性シリコーン樹脂を25g/■(固型分換算)を塗布し、乾燥、熱処理を行い、コーティング基布を得た。コーティング後の織物の密度は経、緯いずれも76本/吋であり、織物の目付けはコーティング前が148g/m2、コーティング後が173g/m2であった。
【0036】
次に、本体布に上記235dtexのコーティング基布を用い、また保護布には、実施例1で防炎布として用いたコート基布の織物のバイアス方向に幅80mmで裁断したものを用いた以外は、実施例1に準じてエアバッグを作成した。
得られたエアバッグの評価結果を表1に示す。極めて優れた折り畳み特性を示し、耐圧性評価後のバッグに問題はなかった。
【0037】
比較例1
保護布として、ナイロン66繊維350dtex/72f(原糸強度8.6cN/dtex)の糸を用いて織密度が経、緯いずれも48本/吋の平織物を作成し、この織物を精練、熱セットして経、緯の密度がいずれも50本/吋のノンコート基布を得た。
次いで、保護布に上記ノンコート基布を用いた以外は、実施例1に準じてエアバッグを作成し、特性を評価した。
得られたエアバッグの評価結果を表1に示す。折畳み性は良好であるが、外周縫合部の一部に目開きを発生した。
【0038】
比較例2
実施例2に準じて、経、緯の織密度が62本/吋である235dtexのコート基布を作成し、実施例1に準じてエアバッグを作成した。
得られたエアバッグは、折り畳み性は極めて良好であるが、耐圧試験後のバッグ外周縫合部は縫い目が目開きし、溶融していた。
【0039】
比較例3
エアバッグの本体用基布として、ナイロン66繊維470dtex/72f(原糸強度8.6cN/dtex)の糸を用い、精練、熱セット後の織密度が経、緯いずれも54本/吋であるノンコート基布を作成した。本体基布と保護布に上記470dtexノンコート基布を用いた以外は、実施例1に準じてエアバッグを作成した。
得られたエアバッグは、耐圧性には問題ないものの、折畳んだ容量が極めて大きく、本発明の目的とするものではなかった。
【0040】
比較例4
保護布を使用しない点を除いて、実施例2と同様のエアバッグを作成し、評価した。評価結果は、表1に示すように外周縫製部において数カ所の破損が見られた。
【0041】
以上のように、外周部に保護布を施すことにより、軽量でコンパクトに収納でき、しかも高温耐圧性にも優れるエアバッグを得ることができる。
【表1】
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明により、軽量でコンパクトに収納でき、しかも高温耐圧性にも優れるエアバッグを得ることができる。
【0043】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の運転席用エアバッグ反転前の乗員側基布の説明図。
【図2】反転後の図1のA−A線断面図。
【図3】本発明の運転席用エアバッグ反転前の取り付け側基布の説明図。
【図4】図2の外周縫合部の拡大図。
【図5】本発明実施例の一例を示す外周縫合部の拡大図。
【図6】本発明の別の実施例の一例を示す外周縫合部の拡大図。
【図7】本発明の更に別の実施例の一例を示す外周縫合部の拡大図。
【0044】
【符号の説明】
1,2 エアバッグ本体基布
3 エアバッグ部の取付け口
4, 排気孔
5 取付け口補強布
6 吊紐固定布
7 防炎布
10 吊紐
11 外周縫合部
12〜15 保護布
16,17 縫製糸
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の衝突安全性を向上するためのエアバッグに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、乗員保護用安全装置としてエアバッグシステムが普及してきており、運転席用から助手席用、側突保護用、後部座席用と装着部位も増えてきている。
しかるに搭載されるエアバッグの部位、数量が増えるにつれエアバッグシステムの軽量化、小型化が求められ、それに応じた工夫がなされてきている。例えば、エアバッグの本体については、ノンコート化あるいは低塗布量コート処方の開発、従来より細い糸を用いた薄く、軽い基布の開発、バッグ容量の低減などが検討されてきている。
【0003】
しかし、薄く、軽い基布を用いた場合、従来のエアバッグで使用されていた縫製法を適用すると、エアバッグの縫合部、とりわけ、エアバッグの外周部が、エアバッグ展開時の衝撃力、あるいは乗員当接によるバッグ内圧の上昇などにより縫い目の孔が拡大する、いわゆる目開きを生じ易く、場合によっては拡大した孔からインフレーターの熱ガスが抜け、縫合部を溶融、損傷させるおそれもあった。すなわち、本体基布が薄くなるほど材料を昇温、溶融させるのに必要な熱量が少なくて済み、それは本体基布がコーティングされていない場合は尚のことである。そのため、縫い目孔を保護し、孔の拡大を抑止する方法が各種提案されている。
【0004】
例えば、特開平8−310325号公報には、外周縫製部の内側に、バッグの最大内圧時より小さな張力で破断する破断可能な仮縫製部を設け、展開時に外周縫製部へ過度な力が加わらないようにする仕様が提案されている。しかし、この仕様は展開後に破断する可能性があり、乗員の当接時には外周縫製部の保護にならない場合がある。
【0005】
また、特開平10−166978号公報には、エアバッグの外縁縫製部にシート状物を共縫いすることにより、縫製部に発生する目ズレからのガス漏れを防ぐ方法が開示されている。しかし、この場合も、本体基布やシート状物の仕様については全く言及されていない。
【0006】
本発明者は、先に特開平3−10946号公報で、縫合部に布帛と接着層からなるテープを貼ったエアバッグを提案した。この公報に示した発明では、極めて堅牢且つ耐久性に優れる縫合部を提供できる。しかしながら、その後のエアバッグについては上述の通り、極めて薄い織物を使用した軽量のものが求められてきている。そのようなエアバッグを提供するには、本公報に係る技術についてさらなる改良が必要である。
【0007】
【特許文献1】
【特開平8−310315号公報】
【特許文献2】
【特開平10−166978号公報】
【特許文献3】
【特開平3−10946号公報】
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、軽量で薄い基布を用いたエアバッグの縫合部を改良することにより、
展開時の高い耐圧性に優れた堅牢性と、軽量かつ極めて優れたコンパクト収納性を兼ね備えたエアバッグを提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、軽く、薄い基布を使用してエアバッグの一層の軽量、コンパクト化の実現を目指し検討する中で、袋体としての耐圧特性、特にインフレーターからの熱ガスによる外周縫製部の縫い目拡大抑止に優れ、軽量で極めてコンパクトに収納することのできる柔軟なエアバッグの製造技術に関し鋭意工夫を行った結果、エアバッグ本体基布に特定の基布仕様を選択し、かつ外周縫合部に特定の保護布を共縫いすることが有効であることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)二枚以上の本体基布同士を縫合により袋状に形成し、外周部において保護布が本体基布にて共縫いされているエアバッグであって、本体基布が350デシテックス以下の糸を用いた目付が200g/m2以下、カバーファクターが2000以上の織物からなり、保護布が本体基布と同等以上のカバーファクターを有する織物からなることを特徴とするエアバッグ、
(2)本体基布が235デシテックス以下の糸を用いた目付けが160g/m2以下である織物であることを特徴とする前記(1)記載のエアバッグ、
(3)保護布の少なくとも片面に耐熱性の被覆材が施されていることを特徴とする前記(1)または(2)記載のエアバッグ、
(4)基布のカバーファクターが2000〜2600である請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ、
に関する。
【0011】
本発明のエアバッグは、インフレーターが供給する熱ガスがエアバッグの高い内圧により縫合部、特に外周縫合部の縫い目孔から噴出する際に、縫い目孔の周囲の基布を軟化、溶融させ、縫い目孔を拡大させる作用を抑止できる、堅牢で耐圧性に優れたものであり、乗員の衝撃エネルギーを充分に吸収でき、しかも軽量で折畳み容量も少ないコンンパクトなエアバッグである。
【0012】
保護布は、本体基布の上または下に重ねられるか、本体基布同士の間に挟み込まれて適用することができる。本体基布は二枚、または三枚以上とすることができる。
袋体を構成する基布は350デシテックス(315デニ−ル)以下、好ましくは235デシテックス(210デニール)以下の細い糸を用いた織物を使用する。350デシテックス以下の細い糸を用いることより、軽く、コンパクトに折り畳むことができるエアバッグを提供することができる。350デシテックスを超える太い糸を用いた場合には、バッグ重量も多く、折り畳み容積を小さくすることが難しい。
【0013】
また、袋体の本体基布の目付は200g/m2以下、好ましくは160g/m2以下とする。200g/m2超える目付では袋体が充分に軽量にならない。なお、ここにいう目付けとは、被覆材などが施されていない状態の基布の重さをいう。
織物を構成する糸のデシテックス(dtex)と織物の打込み密度(本/吋)から求められるカバーファクターは2000以上、好ましくは2200〜2600である。カバーファクターが2000未満の場合には、織物組織が粗い構造になるため、エアバッグが衝撃的に展開し、あるいは乗員がエアバッグに当接してエアバッグの内圧が急激に上昇した際に、織物が組織ずれを起こし易く、縫合部の縫い目孔が拡大し、縫合部が溶融、損傷する場合もある。一方、カバーファクターが2600を超える場合は、織物が極めて粗硬となり、折り畳み容積も小さくすることができない。
【0014】
ここで、織物のカバーファクター(CF)は織物構造の緻密さを示す指数で、織物に用いられている経糸および緯糸のデシテックス(DwおよびDf)と織物の経密度および緯密度(NwおよびNf)(本/吋)から求められる。
【数1】
【0015】
本発明では外周縫合部に保護布を適用する。すなわち、保護布を本体基布の上面に重ね合せるか、基布同士の間に挟んだ状態で縫合することにより、熱ガスが縫合部の縫い目孔を通過して袋体の外に抜け出ることを防止でき、縫い目孔周囲の軟化、溶融が阻止され、堅牢で耐圧性に優れたエアバッグを提供することができる。保護布は、熱ガスが縫合部の縫い目孔から袋体外部に抜け出ようとする際の遮蔽体であり、本体基布と同じかそれ以上のカバーファクター、すなわち緻密な織物構造であることが必要であり、例えば、カバーファクターが2000以上、好ましくは2000〜2600である。本体基布より小さなカバーファクターの場合は、熱ガスの遮蔽が十分でない。保護布は本体基布の縫合と同時に縫い合わせることが出来るので、接着法や塗布法などの様に製造工程を煩雑にすることもない。
【0016】
保護布が本体基布と一体で縫合されるため、保護布自体にも縫い目孔が生じる。保護布自体には、本体基布に加わるほどの大きな張力は作用することは少ないものの、保護布を緻密でない粗い組織の織物にすると、織物の組織ずれした部分から熱ガスが抜け、更に本体基布の縫い目孔をも拡大させる原因になり易い。従って、本発明の保護布は、しっかりした組織である材料が好ましく、編物、不織布などに比較して寸法安定性、被覆性に優れる織物が良い。保護布の特性は、エアバッグの形状および容量、縫合部位、本体基布の仕様などに応じて選定すれば良いが、普通の織物の他に、三軸織物、四軸織物などを用いると更に寸法安定性の高い保護布が得られ、織物のバイアス方向に裁断して用いれば伸縮性に富んだ材料が得られ、曲線部を縫合する場合には特に適する。
【0017】
保護布の遮蔽性能を上げるため、保護布の少なくとも片面に耐熱性の被覆材を施すのがよい。被覆材は、通常エアバッグに用いられているものの内、耐久性、耐熱性に優れる材料、例えば、シリコーン樹脂またはシリコーンゴム、ポリウレタン樹脂またはポリウレタンゴム(シリコーン変性、フッ素変性を含む)、クロロプレンゴムやハイパロンゴムなどの含塩素系ゴム、フッ素系ゴム、および塩素系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル系樹脂(各種変性を含む)などから適宜選定すれば良い。
【0018】
保護布の寸法は縫合部位および形状に応じて、縫合部を完全に被覆するように選定すれば良いが、例えば、本体基布の上面に重ね合せる場合や基布間に挟む場合には、幅10〜40mm程度とすれば良く、二つ折りして本体基布を上下から挟み込むような場合には、幅20〜100mm程度とすれば良い。また、保護布の長さは縫合部の形状、長さに合せて適宜、選定すればよいが、長尺のテープ状としてもよいし、縫合部形状に合せて裁断してもよい。保護布を本体基布と共に縫製する際には、通常、衣料の縫製などに用いられるバインダー、ラッパ、ホルダーなどの縫製治具類をミシンに取り付けて縫製し、両端部が重なるようにすれば高い遮蔽性が得られる。
【0019】
外周縫合部の縫製仕様は、本体基布の仕様、エアバッグの種類、搭載個所、形状、容量、要求される縫合強力などに応じて選定すれば良く、縫い糸番手は20番手〜5番手、運針数は2〜5針/cm、などとし、縫い目仕様は、本縫い、二重環縫い、安全縫い、千鳥縫い、扁平縫い、などがあり、これらを組合せてもよい。また、縫い目線の本数は、通常は1〜3本から選べばよく、縫い目線が複数の場合には縫い目線間の距離は2〜6mmの中から選べばよい。
【0020】
ここでいう縫い糸番手とは、JIS L−2510、L−2511、およびL−2512で規定される化合繊縫い糸と呼ぶ縫い糸の番手を示し、フィラメント糸縫い糸の場合は、番手とデシテックスの関係は、概略、以下の通りである。
20番手が667〜800デシテックス、10番手が820〜890デシテックス、8番手糸が940〜1110デシテックス、5番手糸が1400〜1670デシテックス。
紡績糸縫い糸の場合は、前記各JISに記載の数値表のデシテックスから換算すればよい。
【0021】
本発明に使用する縫糸は、一般に化合繊縫糸と呼ばれるものや工業用縫糸として使用されているものの中から適宜選定すればよく、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ポリエステル、ビニロン、アラミド、カーボン、ガラスなどがあり、紡績糸、フィラメント合撚糸、フィラメント樹脂加工糸のいずれでもよい。
【0022】
本体基布は、その少なくとも片面に耐熱性の被覆材を施しても良い。被覆材の付与により更に高い気密性と耐熱性を得ることが出来る。被覆材の種類や付与方法ならびに付与量は、保護布に用いた材料および方法と同じで良く、あるいは異なるものでも良い。エアバッグの軽量、折畳み容積などの観点から、被覆材の付与量は少ない方が良いが、本体基布の仕様、エアバッグの仕様、形状、容量、搭載個所などにより付与すべき場合には、その仕様等は適宜選定すれば良く、例えば付与法は、織物との接着、被覆層の気密性が確保できるものであればよく、コーティング法(ナイフ、キス、リバース、コンマ)、印捺法(スクリーン、ロール、ロータリー)、ラミネート法、浸漬法、スプレー法などいずれの加工法でもよいし、付与量は10〜80g/m2の範囲から選べば良い。
【0023】
本体基布および保護布と被覆材との接着性を向上させるために、予め織物表面にプライマー処理、プラズマ加工などの前処理を施してもよい。さらに、被覆材の物理特性、織物と被覆材との接着性を向上させるため、被覆材を織物に付与した後、乾燥、固化する工程で接触または非接触による熱処理、高エネルギー処理(高周波、電子線、紫外線)などを行ってもよい。
【0024】
被覆材には、加工性、接着性、表面特性あるいは耐久性などを改良するために通常使用される各種の添加剤、例えば、架橋剤、反応促進剤、反応遅延剤、接着付与剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、粘着防止剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤、などの一種または二種以上を選択、混合を使用してもよい。
【0025】
また、本体基布および保護布に用いる織物を構成する繊維糸条は特に限定するものではなく、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン610、ナイロン612などの単独またはこれらの共重合、混合により得られる脂肪族ポリアミド繊維、ナイロン6T、ナイロン9Tに代表される脂肪族アミンと芳香族カルボン酸の共重合ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどの単独またはこれらの共重合、混合により得られるポリエステル繊維、パラフェニレンテレフタルアミド、およびこれと芳香族エーテルとの共重合物などに代表されるアラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ビニロン繊維、超高分子量ポリエチレン系繊維、ポリテトラフルオロエチレンを含むフッ素系繊維、ポリサルフォン(PSf)繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)系繊維、ポリイミド(PI)繊維、ポリエーテルイミド(PEI)繊維、高強力レーヨンを含むセルロース系繊維、アクリル系繊維、炭素繊維、ガラス繊維、シリコーンカーバイド(SiC)繊維、アルミナ繊維、などから適宜選定すればよく、場合によっては、スチールに代表される金属繊維などの無機繊維を含んでもよい。
【0026】
これらの繊維糸条には紡糸性や加工性、材質の耐久性を改善するために通常使用されている各種の添加剤、例えば、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐光安定剤、老化防止剤、潤滑剤、平滑剤、顔料、撥水剤、撥油剤、酸化チタンなどの隠蔽剤、光沢付与剤、難燃剤、可塑剤などの一種または二種以上を使用してもよい。また、場合によっては、加撚、嵩高加工、捲縮加工、捲回加工などの加工を施してもよい。さらに糸条の形態は、長繊維のフィラメント、短繊維の紡績糸、これらの複合糸など、特に限定するものでない。
【0027】
本発明の織物を製造する織機は通常の工業用織物を製織するのに用いられる各種織機から適宜選定すればよく、例えば、シャトル織機、ウォータージェット織機(WJL)、エアージェット織機(AJL)、レピア織機、プロジェクタイル織機などから選べばよい。織物の組織も、平織、斜子織(バスケット織)、綾織、格子織(リップ・ストップ織)、あるいはこれらの複合組織など、いずれでもよい。
【0028】
本発明になるエアバッグは、車輌の乗員を保護するためのエアバッグで、前席用(運転席、助手席、ニーバッグ、フットバッグ)、後席用、側部用(サイドバッグ、カーテンバッグ)、などを対象としているが、場合によっては追突保護用のヘッドレスト用バッグ、幼児保護用ミニバッグ、シートベルト用バッグ(エアーベルト)など機能的に適応し得る部位にも適用することもでき、形状、容量などは要望される要件を満足するようにすればよい。さらに、車輌以外の、列車、飛行機、船舶、二輪車、歩行者保護などの用途に適用してもよい。
【0029】
本発明になるエアバッグの大きな力を受ける部位の補強に用いられる補強布は、袋体に用いられたものと同じ織物でもよいが、別途準備した補強用織物、例えばナイロン66の940デシテックス、470デシテックスなどを用いて作成された、厚手織物の単独または複数枚を用いてもよい。ここでいう補強布は、インフレーターから噴出する熱ガスを遮蔽するための防炎布を含むものとし、補強布に耐熱性を付与するために、シリコーン樹脂、フッ素樹脂などの耐熱性樹脂、耐熱性ゴムなどを塗布してもよいし、塗布量も本発明の基布より多いものとしてもよい。また、アラミド繊維などの耐熱性繊維を用いた織物を使用してもよい。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下実施例に基づき本願発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例の中でエアバッグの性能評価は以下の方法によった。
(1)折り畳み厚さ
インフレーターの固定金具の上辺に沿ってエアバッグの上半分を下側に折り、折り重ねたバッグを上側に1回、さらに残り部分を下側へ1回折り曲げて、左右に長い矩形状とした。次いで、矩形の左側を固定金具の左辺に沿って右側に1回折り曲げ、残り部分を3回内側に折り曲げ、矩形の右側についても左側と同様に折り曲げ、バッグを折り畳んだ。折り畳んだバッグの上に20cm×20cm、厚さ約5mmのアクリル板を置き、さらに荷重1kgを載せ、1分後の厚さを測定した。結果は、実施例2を100とした時の相対値で示した。
【0031】
(2)高温耐圧試験
上記の様に折り畳んだバッグと運転席用インフレーター(ダイセル社製デュアル型インフレーターZA、出力160kpa/200kpa)をモジュールに固定し、モジュール全体を85℃で予熱した。予熱後のモジュ−ルをインパクター試験機に固定し、インフレーターの2室を同時着火させてバッグを展開させながら、重量約40kg、直径φ380mmの円盤を速度略20km/hでバッグに押し当てバッグの耐圧性を評価し、展開後のバッグの状態を観察した。
【0032】
実施例1
ナイロン66繊維350dtex/72f(原糸強度8.6cN/dtex)の糸を用い、織密度が経、緯いずれも60本/吋の平織物を作成し、この織物を精練、熱セットしてノンコート基布を得た。織物の目付けは190g/m2であった。また、防炎布として、この熱セットの基布に、熱硬化性シリコーン樹脂を45g/m2(固形分換算)塗布し、120℃で乾燥し、160℃で熱処理を施したコート基布を準備した。
【0033】
次に、ノンコート基布からエアバッグ本体基布として外径φ690mmの円形布を2枚(基布1,2)、中央部の幅が170mm、両端部の幅が70mm、長さが520mmの吊紐(10)を1本、内径φ66mm、外径φ260mmの円盤状の取付け口補強布を1枚(補強布5。但し、排気孔の補強部まで含む変形円盤状)、上下に吊紐固定部が延設されている吊紐固定布(補強布6)を1枚、また、防炎布(補強布7)としてコート基布から円盤状の取付け口補強布と同一形状布を1枚、裁断した。基布1の中央に、吊紐(10)を図1に示すように、ナイロン66の縫い糸(上糸、下糸とも5番手糸)を使い、運針数3針/cm、本縫い2列にて縫製した。基布2には、図3に示すように、中央にφ66mmのインフレーター取付け口、取付け口の左、右ほぼ45度の位置にφ30mmの排気孔を各1個設けた。次いで、エアバッグの反転後に図2の状態となるように、バッグの取付け口に補強布5および6をセットし、取付け口と排気孔の円形部を縫い付けた。取付け口の縫い目径は内側から115mm、200mmとし、排気孔の縫い目径は50mm、55mmとした。縫い糸は、上糸、下糸いずれもナイロン66の5番手糸、本縫いで3.5針/cmにて行った。
【0034】
さらに、その上に防炎布7を重ね、同じ縫い仕様で最内層縫い目径75mmにて縫合した。基布1,2を重ね合わせ、外周を上糸が5番手糸、下糸が8番手糸であるナイロン66の縫い糸を用い、二重環縫い2列で4.5針/cmにて縫合した。縫い代は20mmとした。このとき、エアバッグ本体基布と同じノンコート基布から、幅70mmで織物のバイアス方向に裁断した保護布(15)をバインダーにより二つ折りにしながら、図6に示すように本体基布の外周部を挟み込むようにして一緒に縫合した。次いで、吊紐のそれぞれの端部を、補強布6の両端の延設部に、上糸、下糸ともにナイロン66の5番手糸の縫い糸を用い、運針数4針/cmにて本縫いにより縫合した。吊紐の長さは220mmであった。このバッグを取付け口から反転し、試験用バッグとした。
このバッグを評価法に準じて、高温耐圧試験を行った。得られたエアバッグの評価結果を表1に示す。外周縫合部の目開きは全く発生せず、問題がなかった。
【0035】
実施例2
ナイロン66繊維235dtex/72f(原糸強度8.6cN/dtex)の糸を用い、織密度が経、緯いずれも74本/吋の平織物を作成した。この織物を精練、熱セットし、次いで織物の片面に熱硬化性シリコーン樹脂を25g/■(固型分換算)を塗布し、乾燥、熱処理を行い、コーティング基布を得た。コーティング後の織物の密度は経、緯いずれも76本/吋であり、織物の目付けはコーティング前が148g/m2、コーティング後が173g/m2であった。
【0036】
次に、本体布に上記235dtexのコーティング基布を用い、また保護布には、実施例1で防炎布として用いたコート基布の織物のバイアス方向に幅80mmで裁断したものを用いた以外は、実施例1に準じてエアバッグを作成した。
得られたエアバッグの評価結果を表1に示す。極めて優れた折り畳み特性を示し、耐圧性評価後のバッグに問題はなかった。
【0037】
比較例1
保護布として、ナイロン66繊維350dtex/72f(原糸強度8.6cN/dtex)の糸を用いて織密度が経、緯いずれも48本/吋の平織物を作成し、この織物を精練、熱セットして経、緯の密度がいずれも50本/吋のノンコート基布を得た。
次いで、保護布に上記ノンコート基布を用いた以外は、実施例1に準じてエアバッグを作成し、特性を評価した。
得られたエアバッグの評価結果を表1に示す。折畳み性は良好であるが、外周縫合部の一部に目開きを発生した。
【0038】
比較例2
実施例2に準じて、経、緯の織密度が62本/吋である235dtexのコート基布を作成し、実施例1に準じてエアバッグを作成した。
得られたエアバッグは、折り畳み性は極めて良好であるが、耐圧試験後のバッグ外周縫合部は縫い目が目開きし、溶融していた。
【0039】
比較例3
エアバッグの本体用基布として、ナイロン66繊維470dtex/72f(原糸強度8.6cN/dtex)の糸を用い、精練、熱セット後の織密度が経、緯いずれも54本/吋であるノンコート基布を作成した。本体基布と保護布に上記470dtexノンコート基布を用いた以外は、実施例1に準じてエアバッグを作成した。
得られたエアバッグは、耐圧性には問題ないものの、折畳んだ容量が極めて大きく、本発明の目的とするものではなかった。
【0040】
比較例4
保護布を使用しない点を除いて、実施例2と同様のエアバッグを作成し、評価した。評価結果は、表1に示すように外周縫製部において数カ所の破損が見られた。
【0041】
以上のように、外周部に保護布を施すことにより、軽量でコンパクトに収納でき、しかも高温耐圧性にも優れるエアバッグを得ることができる。
【表1】
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明により、軽量でコンパクトに収納でき、しかも高温耐圧性にも優れるエアバッグを得ることができる。
【0043】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の運転席用エアバッグ反転前の乗員側基布の説明図。
【図2】反転後の図1のA−A線断面図。
【図3】本発明の運転席用エアバッグ反転前の取り付け側基布の説明図。
【図4】図2の外周縫合部の拡大図。
【図5】本発明実施例の一例を示す外周縫合部の拡大図。
【図6】本発明の別の実施例の一例を示す外周縫合部の拡大図。
【図7】本発明の更に別の実施例の一例を示す外周縫合部の拡大図。
【0044】
【符号の説明】
1,2 エアバッグ本体基布
3 エアバッグ部の取付け口
4, 排気孔
5 取付け口補強布
6 吊紐固定布
7 防炎布
10 吊紐
11 外周縫合部
12〜15 保護布
16,17 縫製糸
Claims (4)
- 350デシテックス以下の糸を用いた目付が200g/m2以下でカバーファクターが2000以上の織物からなる二枚以上の本体基布を外周部において互いに縫合して袋状に形成したエアバッグであって、その外周部に別体の保護布を重ね合せて共縫いしてあり、この保護布は、本体基布のカバーファクター以上のカバーファクターを有する織物からなることを特徴とするエアバッグ。
- 本体基布が235デシテックス以下の糸を用いた目付けが160g/m2以下である織物であることを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
- 保護布の少なくとも片面に耐熱性の被覆材が施されていることを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ。
- 基布のカバーファクターが2000〜2600である請求項1〜3のいずれかに記載のエアバッグ。
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