JP2007268546A - 鋼材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】所定の炭素含有量及び鋳片厚みである鋳片を、所定の鋳造速度Vc・溶鋼加熱度・比水量において複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、所定の最終製品厚みとする。このとき、メニスカスを基準として、前記鋳片を前記ロール対で圧下し始める地点に至るまでの距離である圧下開始メニスカス距離Ls[m]を下記式(1)で求める。また、メニスカスを基準として、前記鋳片を前記ロール対で圧下し終える地点に至るまでの距離である圧下終了メニスカス距離Lf[m]を下記式(2)で求める。前記圧下開始メニスカス距離Lsから前記圧下終了メニスカス距離Lfに至るまでの区間における圧下量X[mm]を下記式(3)で求められる範囲とする。
Ls=(D/52)2×Vc・・・(1)
Lf=(D/49)2×Vc・・・(2)
X>0.015×D・・・(3)
【選択図】図2
Description
このザク欠陥は、後工程である熱間圧延工程などにおける圧延工程によって完全に解消される場合がある。
しかし、最終製品厚みが例えば90mm以上である所謂厚鋼材を製造する場合には、当該圧延の圧下比は十分には得られず、また、圧延工程においては鋳片に対して均熱処理(均熱拡散処理を含む。)が施されるので、当該鋳片の表面に圧力を与えても当該圧力がザク欠陥の発生箇所である鋳片の中心部にまで伝達され難い。従って、当該圧延工程では、ザク欠陥は解消されずに残存する傾向にあり(即ちUT不良となり)、製品化の大きな妨げとなってしまう。
即ち、連続鋳造段階において前記鋳片は、その表面近傍と中心部との間に大きな温度差がある。具体的には、当該鋳片の表面近傍の温度は、同じく中心部の温度と比して極めて低くなっている。従って、当該連続鋳造段階において鋳片の表面に圧力を与えれば、当該圧力はザク欠陥の発生箇所である鋳片の中心部にまで伝達され易く、ザク欠陥が解消される傾向にあるのである。
上記の計算条件のうち特にその計算結果に大きく影響を与えるものとして、(1)(物性データ)凝固潜熱と、(2)(外部からの抜熱条件)2次冷却帯における熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数と、が挙げられる。
しかし、当該2次冷却帯におけるスプレー/ミスト冷却の熱伝達係数は多種のパラメータが連関する複雑な関数として表されることが報告されている(三塚ら:鉄と鋼、69(1983)、262/三塚:鉄と鋼、91(2005)、1を参照)。当該パラメータは例えば、スプレー流量/水滴のサイズ及び運動量/エアーの量及び圧力/鋳片の表面温度などのことである。
そして上記熱伝達係数は、これらのパラメータが適宜に決定されたとしても測定条件によって結局は大きくバラついているのが現状である。
加えて、上記のラボ実験では、(a)鋳片の上下面における冷却能の差異の、鋳片の移動に伴う変化や、(b)浸漬ノズルの詰まりによる影響、(c)ガイドロール間の溜り水による影響、(d)低温ロールからの冷却による影響、(e)鋳片の酸化具合(スケールの付着厚み)による影響、など実機において発生し得る種々の影響を見積もることが当然できない。
参考として、凝固伝熱計算の計算結果の一例を図5に示す。本図は、前述した三塚らの文献に記載された予測式を用い、上記凝固潜熱を55又は65cal/gとして計算してみたものである。本図において、実線は当該凝固潜熱を65cal/gとして計算したものであり、破線は55cal/gとして計算したものである。本図から判る通り、前記凝固潜熱を略主観的に決定している現状では、結果として、当該固相率とメニスカス距離との関係に、例えば数mオーダにまで及ぶ大きなズレが生じてしまうのである。また、前述した三塚らの予測式が全ての鋳造条件に適合するとは考え難く、何れの予測式を採用するかによっても、同様に当該固相率とメニスカス距離との関係に大きなズレが生じることが容易に推測される。
即ち、炭素含有量[wt%]が0.03〜0.60であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を0.8〜1.4とし、溶鋼加熱度[℃]を10〜45とし、比水量[L/kg鋼]を0.5〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚み[mm]を90〜200とする。
メニスカスを基準として、前記鋳片を前記ロール対で圧下し始める地点に至るまでの距離である圧下開始メニスカス距離Ls[m]を下記式(1)で求める。
メニスカスを基準として、前記鋳片を前記ロール対で圧下し終える地点に至るまでの距離である圧下終了メニスカス距離Lf[m]を下記式(2)で求める。
前記圧下開始メニスカス距離Lsから前記圧下終了メニスカス距離Lfに至るまでの区間における、鋳造方向に対する前記ロール対の面間距離の、減少量X[mm]を下記式(3)で求められる範囲とする。
Ls=(D/52)2×Vc・・・(1)
Lf=(D/49)2×Vc・・・(2)
X>0.015×D・・・(3)
換言すれば、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、ザク欠陥を十分且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる。当該効果は、最終製品厚み[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比の小さな鋼材を製造する場合において特に有用である。
また、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
なお、完全凝固後においてのみ圧下するものであるから、中心偏析を一切悪化させることがない。
メニスカスを基準とし下記式(4)で求められる第1メニスカス距離Lrから前記圧下開始メニスカス距離Lsに至るまでの区間における、鋳造方向に対する前記ロール対の面間距離の、減少勾配[mm/m]を0.6±0.2とする。
Lr=(D/61)2×Vc・・・(4)
前記圧下終了メニスカス距離Lfにおける前記鋳片の表面温度が700[℃]以上となるように鋳造条件を設定する。
なお、当該「表面温度」とは、鋳片の広面の中央部における表面温度を、例えば放射温度計などを用いて測定されたものとする。
次に、本発明の第1実施形態に関して説明する。
本図に示す如く、本実施形態に係る連鋳機100は、溶鋼を冷却し所定形状のシェル(凝固殻)を形成するための鋳型1と、当該鋳型1へ溶鋼を適宜の流量で注湯するためのタンディッシュ2と、当該鋳型1からみて下流側に順に並設される複数のロール3・3・・・と、を備えている。
この鋳片は、前述の冷却水噴射装置により冷却されながら、また、前記複数のロール対8・8・・・に挟持されながら、前記の鋳造経路の下流側へ送られていく。これに伴い、前記のシェルが徐々に鋳片内部へ向かって凝固成長していき、やがて内部まで完全に凝固した鋳片が形成される。
本実施形態において鋳造対象とする鋼材は、炭素含有量[wt%]が0.03〜0.60のものである。一方、本実施形態において炭素以外の他の元素(例えば珪素など)の含有量は特に限定しない。即ち、一般的な範囲であれば自由に設定してよい。
上記の条件を満足する鋼材は、例えば、高HAZ靭性鋼(C[wt%]:0.03、Si[wt%]:0.1、Mn[wt%]:1.45)や金型用鋼(C[wt%]:0.55、Si[wt%]:0.24、Mn[wt%]:0.74)、中炭厚板向け汎用鋼(C[wt%]:0.1〜0.15)などである。
ところで、本実施形態に係る前記連鋳機100の鋳造経路のうち水平な経路においては、前記一対のロール3・3から成るロール対8に代えて、一対の圧下ロール5・5から成る圧下ロール対(ロール対)4・4・・・が当該経路に沿って配設されている。当該圧下ロール5・5も、前記ロール3・3と同様に、前記鋳造経路を沿って送られてくる鋳片を挟んで向かい合い且つ所定面間距離を空けて配設されている。即ち、圧下ロール5・5の一方は鋳造経路の上側に、他方は当該鋳造経路の下側に夫々配置されている。
即ち、この圧下量とは前述した如く、鋳造方向に対するロール面間距離の減少量[mm]である。例えば本図に示す如く鋳造方向に隣り合う二対の圧下ロール対4a・4bが距離L[mm]だけ離間しており、当該圧下ロール対4aのロール面間距離をG1[mm]とし、同じく圧下ロール対4bのそれをG2[mm]とすると、前記の圧下量X1−2[mm]は下記式で表される。
圧下量X1−2=(G1−G2)
Ls=(D/52)2×Vc・・・(1)
Lf=(D/49)2×Vc・・・(2)
X>0.015×D・・・(3)
換言すれば、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定することから、ザク欠陥を十分且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる。当該効果は、最終製品厚み[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比の小さな鋼材を製造する場合において特に有用である。
また、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
なお、完全凝固後においてのみ圧下するものであるから、中心偏析を一切悪化させることがない。
JISの超音波探傷基準(JIS B0901)の4倍の判定基準(欠陥エコー<25%)で超音波探傷試験を行い、測定される欠陥エコー高さの大小によってUT欠陥の発生状況について評価した。このときの評価基準は下記の通りである。なお、「欠陥エコー高さ」とは、底面エコー高さに対する欠陥エコー高さの割合(%)を示すものであり、この値が小さいほどザク欠陥が発生していないことを意味する。要するに、UT欠陥の発生状況に基づいてザク欠陥の有無を評価しようとするものである。
○:製品(100mm厚)の欠陥エコー高さが5%以下
△:製品(100mm厚)の欠陥エコー高さが5%よりも大きく10%未満
×:製品(100mm厚)の欠陥エコー高さが10%以上
スラブ鋳片の長手方向中心断面における炭素含有量の最大値(Cmax)を測定し、これと平均炭素含有量(Co)、即ち溶鋼の炭素含有量(Co)との比(Cmax/C)に基づいて中心偏析の発生状況を評価した。このときの評価基準は下記の通りである。
◎:(Cmax/Co)が1.1以下
○:(Cmax/Co)が1.1よりも大きく1.2未満
×:(Cmax/Co)が1.2以上
なお、(Cmax/Co)が1.2未満だと、中心偏析を拡散させるための均熱拡散処理を省略しても問題ないとされる。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
これは具体的には、鋳造方向上流側(即ち、完全凝固直後の地点側)においては、鋳片の中心部温度が当該鋳片の表面温度を大きく上回っているので、鋳片の表面に与えた圧力が当該鋳片の中心部へ伝達され易いからだと考えられる。これに対して、例えば条件14の試験結果から判る通り、比して下流側では鋳片の中心部温度と表面温度との隔たりが縮小されていると考えられるから、例え大きな圧下量を鋳片に対して与えたとしても、当該圧下が鋳片中心部に局所的に作用されることがなかったと考えられ、結果として中心部ザク性状が改善されなかった。
なお、比して鋳造方向下流側で所定の圧下量だけ圧下するためには、上流側で当該圧下量だけ圧下するのに比べて、より大きな圧下力を鋳片に対して与える必要があると言える。なぜなら、当該鋳造方向下流側へ進むにつれて前記鋳片中心部の温度が下がり、一方で当該鋳片中心部の塑性エネルギーは温度に依存するものだからである。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
即ち、前記のタンディッシュ2から鋳型1へ溶鋼を注湯する際のガイドとしての機能を有する浸漬ノズル2a(図1参照)が詰まり易い。また、メニスカスにおいて溶鋼が凝固してしまう所謂メニスカス皮張りが発生する恐れがある。更に、圧下条件が最適条件から大きくズレるため、前記の圧下開始メニスカス距離Lsや圧下終了メニスカス距離Lfを一々再設定する必要が生じ、手間が増え、生産性が低下してしまう。
一方、溶鋼の溶鋼加熱度[℃]が45よりも高い場合は、以下の問題を生じ得る。
即ち、柱状晶ブリッジングが生じ易くなり、中心偏析が悪化すると共に鋳片中心部に巨大ザク(巨大ポロシティ)が残存し易くなってしまう。また、鋳型1内においてシェルが十分には形成され難くなるので、所謂ブレークアウトの恐れもある。またこの場合も上記同様、手間が増え、生産性が低下してしまう。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
なお、当該比水量[L/kg鋼]が0.5〜1.5の範囲を外れると、鋳片の未凝固部の性状が大きく変化することから、前記の圧下開始メニスカス距離Lsや圧下終了メニスカス距離Lfを一々再設定しなければならず、手間が増え、生産性が低下してしまう。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.2とした。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.2とした。
具体的には試験2で説明した如くである。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.2とした。
なお、溶鋼の溶鋼加熱度[℃]が10〜45の範囲を外れる場合に生じる問題は、試験3で説明した如くである。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.2とした。
なお、当該比水量[L/kg鋼]が0.5〜1.5の範囲を外れると、鋳片の未凝固部の性状が大きく変化することから、前記の圧下開始メニスカス距離Lsや圧下終了メニスカス距離Lfを一々再設定しなければならず、手間が増え、生産性が低下してしまう。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は310とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は310とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
具体的には試験2で説明した如くである。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は310とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
なお、溶鋼の溶鋼加熱度[℃]が10〜45の範囲を外れる場合に生じる問題は、試験3で説明した如くである。
本試験では、鋳片厚みD[mm]は310とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
なお、当該比水量[L/kg鋼]が0.5〜1.5の範囲を外れると、鋳片の未凝固部の性状が大きく変化することから、前記の圧下開始メニスカス距離Lsや圧下終了メニスカス距離Lfを一々再設定しなければならず、手間が増え、生産性が低下してしまう。
次に、本発明の第2実施形態に関して説明する。当該第2実施形態が前述の第1実施形態と相違する点を中心に説明する。
Lr=(D/61)2×Vc・・・(4)
即ち、鋳造方向に隣り合う二対の圧下ロール対4i・4i+1間における各圧下勾配Si・i+1は、下記式で表されるものである。
圧力勾配Si・i+1=(G1−G2)/L
なお、ある任意の区間における圧下勾配Sは、当該区間に存するすべての隣り合う圧下ロール対4i・4i+1間における各圧下勾配Si・i+1を当該区間において平均化したものとする。
即ち、炭素・マンガン・珪素などの中心偏析が抑制されると、中心部におけるマンガン等量が低減され、その結果、ベイナイト組織が低減されることにより水素性欠陥が防止されるからである。
試験13では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とし、前記第1メニスカス距離Lr[m]を21.8とした。
試験14では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とし、前記圧下終了メニスカス距離Lf[m]を32.6とした。
試験15では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.2とし、前記第1メニスカス距離Lr[m]を25.2とした。
試験16では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.2とし、前記圧下終了メニスカス距離Lf[m]を39.2とした。
試験17では、鋳片厚みD[mm]は310とし、鋼種は金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とし、前記第1メニスカス距離Lr[m]を25.8とした。
試験18では、鋳片厚みD[mm]は310とし、鋼種は金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とし、前記圧下終了メニスカス距離Lf[m]を40.2とした。
試験13〜18の試験条件及び試験結果を下記表13〜18に夫々示す。
即ち、中心偏析を抑制できた。また、中心偏析が抑制されるので、製品のUT不良率を低減できる。なお、中心部ザク性状は何れの試験においても改善されていた。
なお、表13〜18において中心偏析の列に「(V)」とあるのは、鋳片の長手方向断面を目視で確認した際に所謂V偏析が現れていたことを示し、一方、「(逆V)」とあるのは、同様に、鋳片の長手方向断面を目視で確認した際に所謂逆V偏析が現れていたことを示す。そして、上記区間における前記圧下勾配S(Lr〜Ls)[mm/m]が0.4未満だと、中心偏析が十分には改善されずに所謂V偏析(即ち、周辺部(中心部周辺)V偏析)が発生してしまった。また、同じく0.8よりも大きい場合も同様に、中心偏析が十分には改善されずに所謂逆V偏析(即ち、周辺部(中心部周辺)逆V偏析)が発生してしまった。
次に、本発明の第3実施形態に関して説明する。以下、当該第3実施形態が前述の第1実施形態及び第2実施形態と相違する点を中心に説明する。
なお、当該「表面温度」とは、鋳片の広面の中央部における表面温度を、例えば放射温度計などを用いて測定して得られるものである。また、上記「鋳造条件」とは例えば前記の溶鋼加熱度ΔTや鋳造速度Vc、比水量などのことである。
鋳造された鋳片を鋳片表面に対して垂直に切断し、これにより現れた鋳片切断面を観察し、表面割れの割れ深さ(鋳片表面からの割れ侵入深さ)を測定した。このときの測定結果の評価基準は以下の通りである。
○:割れ深さ:1.5mm未満
×:割れ深さ:1.5mm以上
なお、当該割れ深さが1.5mm以上の場合は、所謂ホットスカーフ処理(鋳肌の表面溶削)を必要とする点で生産性が劣る。一方、当該割れ深さが1.5mm未満の場合では、圧延工程の前処理として行われる均熱拡散処理の際に酸化して消滅するので、何ら問題とならない。
<試験19〜21>
試験19では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
試験20では、鋳片厚みD[mm]は280とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.2とした。
試験21では、鋳片厚みD[mm]は310とし、鋼種は高HAZ靭性鋼(炭素含有量0.03wt%)又は490N/mm2級溶接構造用鋼(炭素含有量0.16wt%)或いは金型用鋼(炭素含有量0.55wt%)を対象とし、鋳造速度Vc[m/min]は1.0とした。
即ち、前記圧下に起因して鋳片の表面に所謂表面割れが発生することを防止できた。なお、中心部ザク性状に関する評価は何れの試験においても良好であった。
即ち、上記『700[℃]』とは、上記の試験19〜21における対象鋼種の所謂『第III領域の脆化温度』と概ね一致している。この『第III領域の脆化温度』とは、低歪速度10−3〜10−4[sec−1]で延性が低下する温度であって、鋼種によって異なるが約650〜800[℃]の温度領域に存在するものである。そして、『第III領域の脆化温度』以上であればある程度の延性が確保されて、所謂割れ感受性が低くなることが本発明の発明者による高温引張試験結果(不図示)により明らかとなっている。
要するに、上記試験19〜21において前記鋳片の表面温度T(Lf)を700[℃]以上とすると上記表面割れの発生が防止できたのは、当該鋳片の表面温度T(Lf)が『第III領域の脆化温度』以上であったからだといえる。
本実施態様は、上述の第1実施形態のみを実施するものである。この場合における前記の圧下勾配とメニスカス距離との関係を図3に模式的に表す。なお、本図において破線で囲った領域は、対応するメニスカス距離において好適とされる圧下勾配のとり得る範囲を説明するためのものである(下記図4も同様。)。
本図に示す如く、前記の圧下開始メニスカス距離Lsから圧下終了メニスカス距離Lfに至るまでの区間における圧下勾配は任意に設定できる。一方で、その圧下を当該区間で積分したもの、即ち圧下量は前述した如く適宜に設定する必要がある。
<実施態様2:図4参照>
本実施態様は、上述の第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて実施するものである。この場合における前記の圧下勾配とメニスカス距離との関係を図4に示す。なお、本図において実線で囲った領域は、対応するメニスカス距離において好適とされる圧下勾配のとり得る範囲を説明するものである。
即ち、炭素含有量[wt%]が0.03〜0.60であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、鋳造速度Vc[m/min]を0.8〜1.4とし、溶鋼加熱度[℃]を10〜45とし、比水量[L/kg鋼]を0.5〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、最終製品厚み[mm]を90〜200とする。
メニスカスを基準として、前記鋳片を前記ロール対で圧下し始める地点に至るまでの距離である圧下開始メニスカス距離Ls[m]を下記式(1)で求める。
メニスカスを基準として、前記鋳片を前記ロール対で圧下し終える地点に至るまでの距離である圧下終了メニスカス距離Lf[m]を下記式(2)で求める。
前記圧下開始メニスカス距離Lsから前記圧下終了メニスカス距離Lfに至るまでの区間における、鋳造方向に対する前記ロール対の面間距離の、減少量X[mm]を下記式(3)で求められる範囲とする。
Ls=(D/52)2×Vc・・・(1)
Lf=(D/49)2×Vc・・・(2)
X>0.015×D・・・(3)
換言すれば、精度よく予測することが極めて困難な固相率に基づくのではなく、容易に把握可能な実際の鋳造条件に基づいて圧下条件を設定するので、ザク欠陥を十分且つ確実に抑制でき、製品のUT不良率を低減できる。当該効果は、最終製品厚み[mm]が90〜200であるように圧延時圧下比の小さな鋼材を製造する場合において特に有用である。
また、ザク欠陥が抑制されるので、連続鋳造後に行われる均熱拡散処理に要する時間を短縮できる。
なお、完全凝固後においてのみ圧下するものであるから、中心偏析を一切圧下させることがない。
即ち、前記第1実施形態に係る鋼材の製造方法において、メニスカスを基準とし下記式(4)で求められる第1メニスカス距離Lrから前記圧下開始メニスカス距離Lsに至るまでの区間における、鋳造方向に対する前記ロール対の面間距離の、減少勾配[mm/m]を0.6±0.2とする。
Lr=(D/61)2×Vc・・・(4)
即ち、前記の第1実施形態又は前記第2実施形態に係る鋼材の製造方法において、前記圧下終了メニスカス距離Lfにおける前記鋳片の表面温度が700[℃]以上となるように鋳造条件を設定する。
2 タンディッシュ
3 ロール
4 圧下ロール対
5 圧下ロール
8 ロール対
100 連鋳機
G ロール面間距離
Ls 圧下開始メニスカス距離
Lf 圧下終了メニスカス距離
Lr 第1メニスカス距離
Claims (3)
- 炭素含有量[wt%]が0.03〜0.60であり、鋳片厚みD[mm]が240〜310である鋳片を、
鋳造速度Vc[m/min]を0.8〜1.4とし、
溶鋼加熱度[℃]を10〜45とし、
比水量[L/kg鋼]を0.5〜1.5として複数のロール対で挟持しながら連続鋳造し、
最終製品厚み[mm]を90〜200とする鋼材の製造方法において、
メニスカスを基準として、前記鋳片を前記ロール対で圧下し始める地点に至るまでの距離である圧下開始メニスカス距離Ls[m]を下記式(1)で求め、
メニスカスを基準として、前記鋳片を前記ロール対で圧下し終える地点に至るまでの距離である圧下終了メニスカス距離Lf[m]を下記式(2)で求め、
前記圧下開始メニスカス距離Lsから前記圧下終了メニスカス距離Lfに至るまでの区間における、鋳造方向に対する前記ロール対の面間距離の、減少量X[mm]を下記式(3)で求められる範囲とする、ことを特徴とする鋼材の製造方法。
Ls=(D/52)2×Vc・・・(1)
Lf=(D/49)2×Vc・・・(2)
X>0.015×D・・・(3) - 請求項1に記載の鋼材の製造方法において、
メニスカスを基準とし下記式(4)で求められる第1メニスカス距離Lrから前記圧下開始メニスカス距離Lsに至るまでの区間における、鋳造方向に対する前記ロール対の面間距離の、減少勾配[mm/m]を0.6±0.2とする、ことを特徴とする鋼材の製造方法。
Lr=(D/61)2×Vc・・・(4) - 請求項1又は2に記載の鋼材の製造方法において、
前記圧下終了メニスカス距離Lfにおける前記鋳片の表面温度が700[℃]以上となるように鋳造条件を設定する、ことを特徴とする鋼材の製造方法。
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