JP2007263788A - マクロ的電気化学系の解析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】分極曲線が時間の経過とともに変化することを考慮した、より正確な金属の腐食・防食問題の解析が可能なモニタリングシステムを提供する。
【解決手段】アノード表面とカソード表面とを含む面によって囲まれた解析対象となる領域内の電位および電流密度分布を、前記アノード表面およびカソード表面の初期データの分極曲線φeoから数値解析により求め、前記領域内の電気化学的状態のモニタリングを行い、一定時間経過後に、前記解析対象となる実際の領域内の複数の計測点で、実際の表面の電位または電流密度を計測し、計測した電位または電流密度に基づいて前記数値解析の逆解析により初期データから修正した分極曲線φenを求め、前記修正した分極曲線φenから、前記領域内の電位および電流密度分布を再度数値解析により求め、修正した分極曲線φenに基づいて前記領域内の電気化学的状態のモニタリングを行う。
【選択図】図3
【解決手段】アノード表面とカソード表面とを含む面によって囲まれた解析対象となる領域内の電位および電流密度分布を、前記アノード表面およびカソード表面の初期データの分極曲線φeoから数値解析により求め、前記領域内の電気化学的状態のモニタリングを行い、一定時間経過後に、前記解析対象となる実際の領域内の複数の計測点で、実際の表面の電位または電流密度を計測し、計測した電位または電流密度に基づいて前記数値解析の逆解析により初期データから修正した分極曲線φenを求め、前記修正した分極曲線φenから、前記領域内の電位および電流密度分布を再度数値解析により求め、修正した分極曲線φenに基づいて前記領域内の電気化学的状態のモニタリングを行う。
【選択図】図3
Description
本発明は、マクロ的なアノードとカソードが電解質を介して存在し、電位場を形成するマクロ的電気化学系の予測を行うためのコンピュータを用いたモニタリングシステムに関するものである。例えば、異種金属接触腐食、カソード防食などの金属の腐食・防食問題のほか、めっき、電池等、マクロ的なアノードとカソードが電解質を介して存在し、電位場を形成する系についての電気化学現象のモニタリングシステムに関するものである。
例えば、ポンプ等においては、例えば海水のような高い電気伝導度を持つ溶液を取り扱うと、異種金属材料を混用することによって生じる異種金属接触腐食などのマクロセル腐食の被害を受けやすく、これらの腐食を事前に正確に予測し、対策を施すことが望まれている。一方、マクロ的なアノードとカソードが電解質を介して存在したマクロセルにおける、カソード側の腐食抑制現象を積極的に利用した「カソード防食」は最も基本的な防食方法として広く採用されている。このため、陽極の材料および設置位置、防食対象機器の形状、材料構成および溶液条件(電気伝導度、流速など)に応じて、防食範囲および犠牲陽極の消耗速度などをモニタリングして予測することが要求されている。
しかしながら、実際の金属の腐食現象は数年乃至数十年と長年月をかけて進行するものであり、加速試験も難しく、金属の腐食・防食の予測を行うためのコンピュータを用いたモニタリングシステムが開発されている(特許文献1)。
特許第3335884号
コンピュータを用いたモニタリングシステムにおいては、通常、腐食・防食問題の数値解析を行う場合、実験的に測定された分極曲線データを使用する。しかしながら、実際の分極曲線は時間とともに変化するため、それに伴い、電位や電流密度も変化し、初期状態の分極曲線データに基づく数値解析結果は必ずしも現在の状況を反映したものとはいえない。また、実際のポンプ等の構造物では腐食の生じる箇所は確認が容易でない場合が多く、離れた場所での電位・電流密度の計測結果から腐食挙動を推定できることが望ましい。
本発明は上述した事情に鑑みて為されたもので、分極曲線が時間の経過とともに変化することを考慮した、より正確な金属の腐食・防食問題の解析が可能なモニタリングシステムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明のマクロ的電気化学系の解析方法は、アノード表面とカソード表面とを含む面によって囲まれた解析対象となる領域内の電位および電流密度分布を、前記アノードおよびカソード表面の初期データの分極曲線φeoから数値解析により求め、前記領域内の電気化学的状態のモニタリングを行い、一定時間経過後に、前記解析対象となる実際の領域内の複数の計測点で、実際の表面の電位または電流密度を計測し、計測した電位または電流密度に基づいて前記数値解析の逆解析により初期データから修正した分極曲線φenを求め、前記修正した分極曲線φenから、前記領域内の電位および電流密度分布を再度数値解析により求め、修正した分極曲線φenに基づいて前記領域内の電気化学的状態のモニタリングを行うことを特徴とするものである。
上記本発明によれば、実際の金属表面の電位または電流密度を計測し、計測した電位または電流密度に基づいて数値解析の逆解析により初期データから修正した分極曲線φenを求めるので、一定時間経過後の分極曲線の変化を正確に推定することが可能となる。そして、修正した分極曲線に基づいて電位および電流密度分布を再度数値解析により求めるので、分極曲線の変化を考慮したより精度の高い電気化学的状態のモニタリングを行うことができる。測定点は実際に腐食等が生じる場所から離れたサンプル点でよいので、ポンプ等の構造物を分解することなく、離れた場所での電位・電流密度からポンプ等の構造物内部の腐食挙動を推定できる。
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、各図中、同一の作用または機能を有する部材または要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態の金属の腐食・防食モニタリングシステムによるポンプの電位分布のモニタリング結果例を示す。ここで、図1(a)は、初期状態としてのポンプ内面の電位・電流密度分布を模式的に示し、図1(b)は、一定時間経過後のポンプ内面の電位・電流密度分布を模式的に示す。図1(a),(b)において、図中の黒点の密度の高い部分は電位・電流密度の高い部分を示し、黒点の密度の低い部分は電位・電流密度の低い部分を示す。図1(a)と図1(b)とは、電位・電流密度分布に変化があるが、この変化はポンプ内面における金属表面の分極曲線の変化に基づくものである。
図2は、上記ポンプの断面構成例を示す。この図は、ポンプの吐出管付近の構成例を示すもので、炭素鋼からなるポンプケーシング11に、吐出管としてのステンレス鋼からなるパイプ12が取り付けられたもので、ケーシング11とパイプ12との接合部の表面に、犠牲陽極としての円筒状の亜鉛リング13を配置している。ケーシング11とパイプ12とからなるポンプ内部には、ポンプ取扱液としての水14が存在し、水14の上部空間には、空気15が存在している。
係る構成のポンプ内面では、亜鉛と炭素鋼および亜鉛とステンレス鋼との異種金属接触電位差により、亜鉛表面がアノードとなり、炭素鋼またはステンレス鋼表面がカソードとなるマクロセル(電池)が形成され、アノードからカソードに向かう電流が電解質(水)内部に形成される。このため、亜鉛リング13が犠牲陽極となり、炭素鋼11およびステンレス鋼12の表面がカソードとなり、電流は炭素鋼11およびステンレス鋼12の表面に向かう方向に流れるので、炭素鋼11およびステンレス鋼12の表面がカソード防食される。従って、図1に示すように、亜鉛リング13の表面が最も電位・電流密度の高い部分となり、ケーシング11とパイプ12の表面においては、亜鉛リング13から離れるに従い電位・電流密度が低くなっている。
ここで、炭素鋼の部分(ケーシング11の内周面)では、水14との界面において、
分極特性 φe=fss(i)
ステンレス鋼の部分(吐出管12の内周面)では、水14との界面において、
分極特性 φe=fsus(i)
亜鉛リング13の部分(内周面)では、水14との界面において、
分極特性 φe=fzn(i)
を有している。
分極特性 φe=fss(i)
ステンレス鋼の部分(吐出管12の内周面)では、水14との界面において、
分極特性 φe=fsus(i)
亜鉛リング13の部分(内周面)では、水14との界面において、
分極特性 φe=fzn(i)
を有している。
分極曲線は、分極特性を示す曲線であり、電位φが電流密度iの関数として表され、炭素鋼の場合、図3に示すように、カソード側分極曲線φe=fc(i)、φe=fc'(i)として表される特性を有している。また、亜鉛の場合、アノード側分極曲線φe=fa(i)として表される特性を有している。
上記分極曲線は、スケールの付着、皮膜の成長、塗膜の劣化・剥離、溶液環境の変化、腐食の進行に伴う表面状態の変化等の要因により変化する。分極曲線が上記要因などにより変化すると、電位分布および電流密度分布が変化する。例えば、図3に示すように、カソードの分極曲線φe=fc(i)がφe=fc'(i)に変化し、アノードの分極曲線φe=fa(i)が変化しなかったとすると、アノード・カソード間の電位差VはV’となり、電流密度iはi'となる。
ここで、電位差Vは、電流密度iにおけるアノードの分極曲線による電位φasとカソードの分極曲線による電位φcsとの差であり、電位差V'は、電流密度i'におけるアノードの分極曲線による電位φas'とカソードの分極曲線による電位φcs'との差である。なお、図4に示すように、アノード・カソード間の溶液部分は液抵抗Rsが一定であり、
V=Rs×i、V'=Rs×i'
なる関係にあり、アノード・カソード間の溶液部分では電位φが電流密度iに対して傾きRsで略直線的に変化する。
V=Rs×i、V'=Rs×i'
なる関係にあり、アノード・カソード間の溶液部分では電位φが電流密度iに対して傾きRsで略直線的に変化する。
マクロ的電気化学系の電位・電流密度分布の予測を行うためのコンピュータを用いたモニタリングシステムにおいては、上述したように分極曲線が変化すると、図1(a),(b)に示すように、系についての電位分布および電流密度分布が異なったものとなる。そこで、マクロ的電気化学系の電位・電流密度分布の予測を行うためのコンピュータを用いたモニタリングシステムにおいては、図5に示す数値解析手段を備えている。すなわち、金属表面の分極曲線φeを入力する手段と、形状・材料データの入力手段等の入力手段と、分極曲線φeおよび形状・材料データ(境界条件)に基づいて、金属表面を含む面によって囲まれた領域内の電位および電流密度分布を、ラプラス方程式を積分処理して離散化した離散化境界積分方程式から数値解析により求める手段を備えている。そして、モニタリング対象の実際の領域内において計測した電位または電流密度を入力する手段と、計測した電位または電流密度から、前記数値解析の逆解析により修正した分極曲線φenを求める手段と、を備える。
従って、本発明においては、解析対象の領域内の電位および電流密度分布を、初期データの分極曲線φeoから数値解析により求め、一定時間経過後に、領域内の計測点の電位または電流密度を計測し、計測結果から逆解析により修正した分極曲線φenを求め、修正した分極曲線φenから、領域内の電位および電流密度分布を再度数値解析により求めることができる。これにより、測定の容易な計測点の電位または電流密度のデータから、一定時間経過後の金属表面の分極曲線を求めることができ、その分極曲線に基づいて再度数値解析することで、変化した分極曲線に基づく電位分布および電流密度分布を求めることができ、領域内の電気化学的状態の正確なモニタリングを行うことができる。なお、修正した分極曲線φenは、アノード表面またはカソード表面のいずれか、または両方の表面について求める。
以下に、上記解析手順について詳細に説明する。まず、既知の実験的に求めた分極曲線初期データから、領域内の電位分布および電流密度分布を求める。
マクロセル腐食およびカソード防食のいずれの系も、アノードおよびカソードが電解質を介して構成する電池と考えることができる。電解質内の電位(φ)分布はラプラス方程式に支配される。
図6のように、電解質が金属表面、絶縁壁、基準面に囲まれているとする。ここで基準面は電位φの値がφ0に指定された境界(電位既定の境界)、絶縁壁は法線方向の電流密度iの値がioに指定された境界(電流密度既定の境界)、金属表面はそれぞれアノードおよびカソードとなる表面である。各境界における境界条件は次式で与えられる。図2に示すポンプの例では、ケーシング(炭素鋼)11と水14の界面A、吐出管(ステンレス鋼)12と水14の界面B、犠牲陽極(亜鉛)13と水14の界面C、空気15と水14の界面Dとが電解質を囲む界面となる。
ここで、κは電解質の電気伝導度、∂/∂nは外向き法線方向の微分であり、f(i)はアノードおよびカソードの分極特性を表す非線形の関数である。上記ラプラス方程式を上記境界条件(数2参照)のもとで解けば、表面近傍の電位および電流密度分布を求めることができる。
境界要素法の通常の定式化に従い、上記ラプラス方程式より境界積分方程式が導かれる。
ここで、φ*は3次元ラプラス方程式の基本解であり、
i*=κ∂φ/∂n
である。Γは電解質を囲む境界を示す。また、cは滑らかな境界ではc=1/2、角度ωの角点ではc=ω/2πである。
i*=κ∂φ/∂n
である。Γは電解質を囲む境界を示す。また、cは滑らかな境界ではc=1/2、角度ωの角点ではc=ω/2πである。
この境界積分方程式を数値的に解くためには離散化を行う必要があり、境界を多くの要素に分割し、φとiをそれぞれの節点における離散的な値と内挿関数により近似すると次の離散化境界積分方程式(連立代数方程式)が導かれる。
ここで、[H]および[G]は境界Γの幾何学的形状によって決まるマトリックスである。この式は非線形であるため、これを解くためには繰り返し計算を必要とし、例えばニュートン・ラフソン法を用いる。以上の手順により、既知の分極曲線初期データfm(ij)(j=1,2,...,s:各金属表面の要素数,m=1,2,…,k:分極曲線数)から、電位分布および電流密度分布を求めることができる。
次に、一定時間経過後に、解析対象となる実際の領域内の複数の計測点で、実際の金属表面の電位または電流密度を計測する。そして、実際の電位の計測は、例えば図7に示すように、ケーシング11の壁面に参照電極16を設置し、電位計17を用いて行うことができる。計測点は多い程、測定精度が上がるが、最低、金属表面の種類の数でも分極曲線の変化を推定することが可能である。例えば、図2に示すポンプにおいては、金属表面の種類は、炭素鋼とステンレス鋼と亜鉛リングの3種類であるので、最低3点の測定結果から分極曲線の変化を推定することが可能である。測定箇所は領域内の任意の場所を選択できるが、一定時間経過後の電位または電流密度分布の変化が大きい、アノード面上およびアノードとの接合面近傍のカソード面上を測定点とすることが好ましい。これにより、測定点から離れた金属表面全体の分極曲線の変化の推定が可能である。
計測した電位または電流密度に基づいて、その変化から逆解析により分極曲線の変化を推定することについて説明する。分極曲線は、初期データφ=f(i)が、φ=f'(i)に変化したと推定するが、その手法は下記のとおりである。
まず、φ=cf(i)、または、φ=cf(i)+d、として、分極曲線の補正を簡略化する。ここで、c、dは、補正係数である。従って、分極曲線の補正は、例えば図2に示すポンプにおいては、炭素鋼表面、ステンレス鋼表面、および亜鉛表面について、3本の分極曲線について、補正係数c、またはcとdを求めることに帰着する。上述したように離散化境界積分方程式(数4)は、連立一次方程式であり、3個の測定点から3本の分極曲線φ=cf(i)の補正係数cを求めることができる。また、6個の測定点から3本の分極曲線φ=cf(i)+dの補正係数cとdを求めることができる。なお、測定点数を増やせば、より高い精度で補正係数c、またはcとdを求めることができる。
補正係数の最適値の選定は、逆解析により次式に従い、上記測定点における電位φeと、補正した分極曲線φn(f)に基づいて数値解析で得られた電位φとの残差のノルム||Rs||を最小とする補正後分極曲線を求めることになる。なお、式中の||・||はノルムを表す。
具体的には、補正係数cまたはcとdを初期値から少しずつ変化させた分極曲線について、離散化境界積分方程式(数4参照)を解き、境界全面について電位および電流密度分布を求め、測定点に対応した電位φを抽出する。測定点がn点あれば、n点について、電位φ1,φ2,・・・φnを抽出する。そして、各測定点について測定値φe1,φe2,・・・φenとの残差R1、R2、・・・Rnを、次式に従い求める。
そして、測定値と解析結果の残差の二乗加算値の平方根であるノルム||R||を次式により計算する。
すなわち、分極曲線f(x)について、補正係数cまたはcとdを少しずつ変化させることで、分極曲線f(x)が変化し、これに伴い測定点の解析結果の電位が変化し、残差のノルム||R||も変化する。
従って、分極曲線f(x)を変化させ、これに伴い測定点の解析結果の電位が変化し、残差のノルム||R||も変化するので、逆解析により、ノルム||R||が最小となる分極曲線f(x)のセットを見いだすことで、各測定点の測定値に一致する各種金属表面の分極曲線f(x)を見出す(推定する)ことができる。
このため、一定時間経過後の各測定点の測定値に一致する各種金属表面の分極曲線f(x)の推定は、以下のステップにより行われる。
ステップ1:
分極曲線f(x)を変化させ、離散化境界積分方程式(数4参照)を解き、境界全面について電位および電流密度分布を求め、測定点に対応した電位φnを求める。測定点がN点あれば、N点について、電位φn1,φn2,・・・φnNを求める。
ステップ2:
各測定点について、解析値の電位と測定値の電位の残差ベクトルRのノルム||R||を算出する。
ステップ3:
ノルム||R||が判定値以上なら、分極曲線f(x)を変化させ、上記ステップ1、ステップ2を繰り返す。
ステップ4:
ノルム||R||が判定値以下なら、その時の分極曲線f(x)のセットによる測定点の解析値の電位と測定値の電位とが一致したことになるので、その時の分極曲線f(x)のセットを初期値データから一定時間経過後の変化した分極曲線と推定する。
ステップ1:
分極曲線f(x)を変化させ、離散化境界積分方程式(数4参照)を解き、境界全面について電位および電流密度分布を求め、測定点に対応した電位φnを求める。測定点がN点あれば、N点について、電位φn1,φn2,・・・φnNを求める。
ステップ2:
各測定点について、解析値の電位と測定値の電位の残差ベクトルRのノルム||R||を算出する。
ステップ3:
ノルム||R||が判定値以上なら、分極曲線f(x)を変化させ、上記ステップ1、ステップ2を繰り返す。
ステップ4:
ノルム||R||が判定値以下なら、その時の分極曲線f(x)のセットによる測定点の解析値の電位と測定値の電位とが一致したことになるので、その時の分極曲線f(x)のセットを初期値データから一定時間経過後の変化した分極曲線と推定する。
以上のステップから、初期値データから一定時間経過後の変化した分極曲線が得られるので、この分極曲線に基づいて、離散化境界積分方程式(数4参照)を再度解くことで、境界全面について電位および電流密度分布を求めることができる。例えばアノード電流密度は犠牲陽極の消耗速度に比例するので、これにより、より正確な金属の腐食・防食問題の解析が可能な、電気化学的現象のモニタリングを行える。
なお、以上の実施形態の説明はポンプの腐食・防食の解析方法の例についてのものであるが、金属のメッキ、電池、或いは電解槽の設計等にも同様に適用可能である。
ここで、これまで本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは勿論である。
11 ケーシング
12 吐出管(パイプ)
13 犠牲陽極
14 水
15 空気
16 参照電極
17 電位計
12 吐出管(パイプ)
13 犠牲陽極
14 水
15 空気
16 参照電極
17 電位計
Claims (4)
- アノード表面とカソード表面とを含む面によって囲まれた解析対象となる領域内の電位および電流密度分布を、前記アノードおよびカソード表面の初期データの分極曲線φeoから数値解析により求め、前記領域内の電気化学的状態のモニタリングを行い、
一定時間経過後に、前記解析対象となる実際の領域内の複数の計測点で、実際の表面の電位または電流密度を計測し、計測した電位または電流密度に基づいて前記数値解析の逆解析により初期データから修正した分極曲線φenを求め、
前記修正した分極曲線φenから、前記領域内の電位および電流密度分布を再度数値解析により求め、修正した分極曲線φenに基づいて前記領域内の電気化学的状態のモニタリングを行うことを特徴とするマクロ的電気化学系の解析方法。 - 前記修正した分極曲線φenは、もとの分極曲線φeo=f(i)に対して、
φen=cf(i)、または、φen=cf(i)+d、 但し、c、dは、補正係数、
として求めることを特徴とする請求項1記載のマクロ的電気化学系の解析方法。 - 前記修正した分極曲線φenは、アノード表面またはカソード表面のいずれか、または両方の表面について求めることを特徴とする請求項1記載のマクロ的電気化学系の解析方法。
- アノードおよびカソード表面の分極曲線φeを入力する手段と、
前記分極曲線φeに基づいて、前記アノードおよびカソード表面を含む面によって囲まれた領域内の電位および電流密度分布を、数値解析により求める手段と、
モニタリング対象の実際の領域内において計測した電位または電流密度を入力する手段と、
前記計測した電位または電流密度から、前記数値解析の逆解析により修正した分極曲線φenを求める手段と、を備えたことを特徴とするマクロ的電気化学系の解析装置。
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