JP6365862B2 - 金属製構造物の電気防食診断方法及び診断装置 - Google Patents
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Description
複数の犠牲陽極を取り付けて電解質中に沈設させた金属製構造物の電気防食診断方法であって、
任意に選んだ前記犠牲陽極による防食効果が現れる前記金属製構造物の電位を計測するために、金属製構造物に沿って、鉛直方向に照合電極を移動させて、複数深度の測定点で、電解質の電位を電位測定値として取得する第1ステップと、
電位測定値及び電気防食状態の事前情報と第1の数値解析を用いることにより、個別の犠牲陽極の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)を同定する第2ステップと、
同定した個別の犠牲陽極の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)と犠牲陽極分極モデルを適用した偏微分方程式の離散化手法による順解析(第2の数値解析)を用いることにより、金属製構造物全体について各部の表面電位(推定値)及び個別の犠牲陽極の電流値(推定値)を推定する第3ステップと、
第2の数値解析によって推定された個別の犠牲陽極の電流値(推定値)から個別の犠牲陽極の消耗量を算出する第4ステップと、
予め定められた各基準値と前記金属製構造物全体について各部の表面電位(推定値)、個別の犠牲陽極の電流値(推定値)及び個別の犠牲陽極の消耗量とをそれぞれ比較し、金属製構造物の電気防食診状態を診断する第5ステップと、
を有することを特徴とする、と云うものである。
第3ステップでは、金属製構造物全体について個別の犠牲陽極分極モデル(犠牲陽極の近似式)を適用して第2の数値解析を行うものとした、との構成を加えたものである。
第3ステップでは金属製構造物全体について、上限値、平均値及び下限値を通る犠牲陽極の近似式(犠牲陽極分極モデル)を適用して第2の数値解析を行う、との構成を加えたものである。
任意に選んだ犠牲陽極による防食効果が現れる金属製構造物の電位を計測するために、金属製構造物に沿って、鉛直方向に照合電極を移動させて、複数深度の測定点で、電解質の電位を電位測定値として取得すると共に電位測定値を得て所定の計算を行う演算手段と金属製構造物に関する事前情報を入力する情報入力手段とを有して構成され、
演算手段が少なくとも、電位測定値及び電気防食状態の事前情報と第1の数値解析を用いることにより、個別の犠牲陽極の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)を同定する手段と、
同定した個別の犠牲陽極の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)と犠牲陽極分極モデルを適用した偏微分方程式の離散化手法による順解析(第2の数値解析)を用いることにより、金属製構造物全体について各部の表面電位(推定値)及び個別の犠牲陽極の電流値(推定値)を推定する手段と、
第2の数値解析によって推定された個別の犠牲陽極の電流値(推定値)から個別の犠牲陽極の消耗量を算出する手段と、
予め定められた各基準値と金属製構造物全体について各部の表面電位(推定値)、個別の犠牲陽極の電流値(推定値)及び個別の犠牲陽極の消耗量とをそれぞれ比較し、金属製構造物の電気防食診状態を診断する手段と、を有することを特徴とする、と云うものである。
本発明の金属製構造物の電気防食診断方法及び診断装置では、電位計測数を少なくすることができるため、金属製構造物の電気防食状態の診断を経済的及び効率的に行うことが可能となり、電位測定に要する作業時間や労力を抑えることができ、これに伴うコストを軽減することができる。
第3ステップでは、金属製構造物全体について個別の犠牲陽極分極モデル(犠牲陽極の近似式)を適用して第2の数値解析を行うものとした構成では、少ない電位測定数であっても精度の高い金属製構造物各部の表面電位及び個別の犠牲陽極の電流値を算出することができ、さらにはこの犠牲陽極の電流値から個別の犠牲陽極の消耗量を算出することができる。
第3ステップでは金属製構造物全体について、上限値、平均値及び下限値を通る犠牲陽極の近似式(犠牲陽極分極モデル)を適用して第2の数値解析を行うものとした構成では、最も危険寄りの推定結果、平均的な推定結果及び最も安全寄りの推定結果を得ることができる。
本発明では、非特許文献3に開示された逆解析手法をさらに発展させて実環境における金属製構造物(即ち、海水、淡水、土壌等の電解質に接する金属製構造物)に適用できる解析モデル(数理モデル)の構築、電解質と、電解質に接する金属製構造物近傍(例えば、電解質が海水であるという海洋環境と、海洋環境における金属製構造物近傍)の電位測定に起因する解析パラメータの不確定性を考慮した逆問題の設定(観測方程式の構築)、及び、電気防食状態の事前情報を利用するベイズ推定による逆問題の適切化を行う(構築した観測方程式により、電気防食状態を反映する未知の解析パラメータを同定する)ことにより、既存の電気防食状態の診断方法に替わる、金属製構造物の電気防食状態を簡単、定量的、経済的かつ効率的に診断できるようにした、新たな電気防食診断技術を開発した。
つまり、本発明は、電解質に接している金属製構造物の電気防食状態を診断する金属製構造物の診断方法に関し、金属製構造物に取り付けられている犠牲陽極から所定の距離離れた複数の測定点で測定された電位測定値、及び電気防食状態の事前情報から、ベイズ推定を用いて、観測方程式の電気防食状態を反映する未知の解析パラメータを同定し、同定した解析パラメータを数値解析により金属製構造物全体に適用し、金属製構造物全体の電気防食状態を診断するようにしている。
ここで、本発明で使用する電気防食状態の事前情報とは、犠牲陽極の電流量、金属製構造物の表面抵抗、解析領域のオフセット電位、及び、解析領域を囲む仮想境界を通して流れる電流に関する統計的情報である。また、統計的情報とは、平均値、標準偏差若しくは確率密度の分布関数である。
また、電気防食状態を反映する未知の解析パラメータ(即ち、電気防食状態を表す未知の解析パラメータ)とは、犠牲陽極の電流量、解析領域のオフセット電位、及び、解析領域を囲む仮想境界を通して流れる電流量である。これらのパラメータのうち犠牲陽極の電流量以外のパラメータは一部を省略して観測方程式を構築してもよい。
本発明で行われるベイズ推定は、次の2つの工程で構成される。
工程(1):
電位測定値及び電位の標準偏差を考慮して観測方程式を解いて、電気防食状態を表す未知の解析パラメータの計測値から得られた統計情報による平均値及び標準偏差を求める。
工程(2):
電気防食状態を表す未知の解析パラメータの事前情報及び、電気防食状態を表す未知の解析パラメータの計測値から得られた統計情報による平均値及び標準偏差から、事後の尤度分布の平均値及び標準偏差を求める。
ここで、電気防食状態を表す未知の解析パラメータの計測値から得られた統計情報とは、電位測定値から観測方程式を逆に解いて求めた未知の解析パラメータの平均値及び標準偏差若しくは尤度分布のことである。
図1は本発明の対象となる金属製構造物の一例としてのジャケット式桟橋を示す正面図ある。
金属製構造物1としては、例えば図1に示すような大井埠頭ジャケットに使用されたようなジャケット式桟橋である。この金属製構造物1は、主として鉄製の鋼材からなり、垂直方向に延びる複数の支柱2と、水平方向に延びて支柱2同士を連結する横桁3(上横桁3aと下横桁3b)と、支柱2と上横桁3aとの格点4aと支柱2と下横桁3bとの格点4bの間に斜めに設置された補強部材5などを溶接等の手段により組み立てられた骨組構造からなり、複数の支柱2の上端に床組6を載置させた状態で一体に構築されている。
このような金属製構造物1の電気防食状態の診断は、例えば図2に示すような電気防食診断装置100を用いて行うことができる。電気防食診断装置100は、事前情報などのデータ情報を入力する情報入力手段110と、以下に説明する各種のステップでの計算を行う演算手段120とを有して構成され、コンピュータシステム(汎用コンピュータ)に専用のソフトウェアを組み込んで実現するようにしても良いし、情報入力手段を備える専用処理装置(専用ユニット)で構成するようにしても良い。
図4は本発明の金属製構造物の電気防食診断方法における第1の実施形態を示すフローチャートである。
<第1ステップS1>
第1ステップS1として、多数の犠牲陽極の中から任意に選択した数の犠牲陽極(例えば3個程の犠牲陽極(以下、対象犠牲陽極という))について、対象犠牲陽極から所定の距離離れた海中の電位(金属製構造物近傍の海水の電位)を測定する。ここで測定される電位の値を電位測定値という。
次の第2ステップS2では、対象犠牲陽極について電流量、より好ましくは電流密度の同定を行う。
照合電極(電位測定手段)10を用いて取得した電位測定値を電気防食診断装置100に入力することにより行う。
本実施の形態では、事前情報を利用するベイズ推定を用いた逆解析(第1の数値解析)により、構築した観測方程式により、電位測定値から未知の解析パラメータ(電流量、より好ましくは電流密度)を同定することにより行う。以下にベイズ推定を用いた逆解析について説明する。
図5は海洋環境における金属製構造物の解析モデルを示す図1同様の図である。
図5に示すように、金属製構造物周辺(即ち、ジャケット式桟橋周辺)の海水及び海底土で満たされた領域Ωを解析領域とする。また、解析領域Ωは、境界Γa、境界Γc1、境界Γc2、境界Γc3、境界Γsea、境界Γair、及び境界Γsoilで囲まれる領域と規定する。
ここで、境界Γa、境界Γc1、境界Γc2、境界Γc3、境界Γsea、境界Γair、及び境界Γsoilの境界条件を下記数2のようにそれぞれ与える。
は外向き法線方向微分を表す。
そして、上記数2で示されたように、境界Γc1では、金属境界条件として、金属製構造物を構成する海中の鋼材の分極曲線を線形近似したものを用いる。
分極曲線の傾きRの事前分布は、鋼材試験片を用いた実験により得られた分極曲線を、測定データの電位域で線形近似することにより、取得した。
また、φoffsetは領域Ω内のオフセット電位を表しているため、各境界からの電流量と同じように、未知の解析パラメータとして扱う。
本実施形態では、電気防食状態の検査対象となる金属製構造物の近傍を電位の測定点(以下、単に「測定点」とも言う。)とする。
ここで、本実施形態では、複数の測定点で測定された、誤差を含んだ電位の測定値(以下、単に「測定値」とも言う。)を
とする。つまり、
は複数箇所(m箇所)の測定点で測定された、複数個(m個)の測定値φ’1、φ’2、・・・、φ’mからなる列ベクトルである。
また、本実施形態では、同定値である、領域Ωの境界を構成する複数種類の境界のうち、n種類の境界(仮想境界)からの電流量(又は電流密度)、犠牲陽極の電流量、及び、領域Ω内のオフセット電位からなる列ベクトルを
とする。つまり、同定値である列ベクトル
は、本実施形態で同定する未知の解析パラメータである。
本実施形態では、電位の測定値
を、電位の真の値
と、測定誤差やモデル誤差などの誤差をまとめた誤差(以下、単に「電位の測定誤差」と言う。)
の2つに分離する。
解析領域Ω内の電位は、上記数1で表す支配方程式を満足しているため、測定値
と同定値
の間には、下記数3で表される観測方程式が成立する。
はRに依存するm行(n+1)列の観測行列であり、即ち、数3で表す観測方程式の係数行列である。ちなみに、Rは金属製構造物の海中部分の表面抵抗を表し、mは電位を測定する測定点の個数を表し、そして、nは未知の解析パラメータである境界の個数を表し、また、
は電位の測定誤差である。
本実施形態では、有限要素法、境界要素法、差分法、有限体積法などの偏微分方程式の離散化手法に基づいて計算を行うことで観測行列
の各成分を求めることにより、観測方程式を構築する。
以上のように、本実施形態では、観測行列
の各成分を求めて数3で表す観測方程式を構築することにより、解析パラメータの不確定性を考慮した逆問題を設定した。
次に、本実施形態では、事前情報を利用するベイズ推定を用いた逆解析を構築した観測方程式に適用し、電位の測定値
から未知の解析パラメータ
を同定する。
なお、犠牲陽極の正確な設計電流値は3.5[A]であるが、一般的に犠牲陽極電流量は通電開始数年で設計値の50%弱まで低減する傾向がある。大井埠頭の場合、供用開始から10年が過ぎており、電流が低減していることが想定されることから、本実施形態では事前情報としての犠牲陽極の設計電流値の平均値を1.5[A]としている。
、金属製構造物(鋼材)の表面抵抗R、及び未知の解析パラメータ(即ち、各境界の電流値(又は電流密度)、オフセット電位、犠牲陽極の電流量)の事前情報を事前分布として、正規分布
とし、電位の測定値
を得たときの同定値
X
の尤度関数の事後分布
は下記数4と表せる。
また、上記数9は、事前情報として与える未知の解析パラメータの事前分布(正規分布)
、及び、事前情報として与える電位の測定誤差
の事前分布(正規分布)を表しており、
は、未知の解析パラメータの事前分布
の平均値と分散行列(標準偏差)であり、
は電位の測定誤差
の事前分布の平均値と分散行列(標準偏差)である。
の平均値)
、及び、未知の解析パラメータの推定尤度分布の分散共分散行列(即ち、同定値
の分散共分散行列)Pを未知の解析パラメータの同定値として算出(同定)し、算出(同定)した
とPに基づいて、金属製構造物1の電気防食状態を把握するようにしている。
及び数8に基づいて同定されたP、即ち、同定値
の平均値及び分散共分散行列(分散)を、本実施形態で同定する未知の解析パラメータの最終的な同定値とすることにより、各境界(鋼材、ステンレス鋼、犠牲陽極など)の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)が計算される。
そして、同定値として得られた犠牲陽極表面の電流密度を積分することにより、犠牲陽極の電流量(同定値)を同定することができる。ここで同定される電流量は、水深ごとに3つのグループ(グループ1(G1)、グループ2(G2)、グループ3(G3))(図1参照)に区切り、個別の犠牲陽極の電流量は同一グループ内では同じであると仮定して、グループ毎に電流量(平均値)を同定する。
本実施形態において、同定された電流量(同定値)の一例は以下の通りである。
G1:0.835[A]
G2:1.070[A]
G3:0.785[A]
なお、同定された犠牲陽極の電流量(同定値)は、シャント抵抗を用いて計測した犠牲陽極の電流値のそれぞれ平均値から標準偏差(1σ)以内に収まる精度であることが検証実験によって実証されている。
図6は同定した犠牲陽極の電流密度(同定値)と表面電位(同定値)とをプロットすると共に各グループに属する犠牲陽極の近似式(犠牲陽極分極モデル)の一例を示すグラフである。
条件1:電位分布を示すプロット点群中のいずれかの点(電位)を通ること。
条件2:切片φ0は犠牲陽極9を構成する陽極部9aに採用されるアルミニウム合金の自然電位1.06[V]と仮定すること。
表1に犠牲陽極の近似式(犠牲陽極分極モデル)から求めた個別の犠牲陽極の分極抵抗Raの計算結果の一例を示す。
第3ステップS3では、金属製構造物1全体についての各部の表面電位(推定値)及びそれぞれの犠牲陽極の電流値(推定値)を計算する。
例えば、上記第2ステップS2におけるベイズ推定において同定された表面電位・電流密度(同定値)を基に、金属製構造物1全体についての各部の表面電位(推定値)及びそれぞれの犠牲陽極の電流値(推定値)を計算することができる。
次の第4ステップS4では、上記第3ステップS3で推定した個別の犠牲陽極の電流量(推定値)と犠牲陽極の表面積との関係から電流密度(推定値)を計算し、続いて犠牲陽極の消耗量を以下の数14の方法で推定する。
係数は犠牲陽極の種類により決定される値である。
第5ステップS5では、予め定められている金属製構造物の表面電位、犠牲陽極の電流値及び犠牲陽極の消耗量と、推定された金属製構造物全体についての各部の表面電位(推定値)、個別の犠牲陽極の電流値(推定値)及び個別の犠牲陽極の消耗量とがそれぞれ比較され、金属製構造物の電気防食の状態について診断を行う。
ところで、数10乃至数12に示す個別の犠牲陽極の近似式(犠牲陽極分極モデル)は平均を採ったものであり、この平均値のみを使用しての有限要素法による順解析(第2の数値解析)では、犠牲陽極や土中鋼材のばらつきが考慮されておらず、金属製構造物の電気防食診断について安全性や信頼性を高めることに限界がある。
上記実施の形態では、アルミニウム合金の自然電位φとして1.06[V]を用いて計算(同定)を行ったが、自然電位φの誤差を考慮し、例えばφ=1.04[V]及び1.08[V]の場合についても同様の計算を行って診断することが好ましく、これにより金属製構造物の電気防食診断方法の安全性及び信頼性を更に高めることが可能となる。
2 ; 支柱
3 ; 横桁
3a ; 上横桁
3b ; 下横桁
4a ; 格点
4b ; 格点
5 ; 補強部材
6 ; 床組
7 ; 海底
9 ; 犠牲陽極
9a ; 陽極部
9b ; 固定部
10 ; 照合電極(電位測定手段)
100; 電気防食診断装置
110; 情報入力手段
120; 演算手段
Claims (8)
- 複数の犠牲陽極が取り付けられた電解質中の金属製構造物の電気防食診断方法であって、
任意に選んだ前記犠牲陽極による防食効果が現れる前記金属製構造物の電位を計測するために、前記金属製構造物に沿って、鉛直方向に照合電極を移動させて、複数深度の測定点で、電解質の電位を電位測定値として取得する第1ステップ(S1)と、
前記電位測定値及び電気防食状態の事前情報と第1の数値解析を用いることにより、個別の犠牲陽極の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)を同定する第2ステップ(S2)と、
前記同定した個別の犠牲陽極の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)と犠牲陽極分極モデルを適用した偏微分方程式の離散化手法による順解析(第2の数値解析)を用いることにより、前記金属製構造物全体について各部の表面電位(推定値)及び個別の犠牲陽極の電流値(推定値)を推定する第3ステップ(S3)と、
前記第2の数値解析によって推定された前記個別の犠牲陽極の電流値(推定値)から個別の犠牲陽極の消耗量を算出する第4ステップ(S4)と、
予め定められた各基準値と前記金属製構造物全体について前記各部の表面電位(推定値)、前記個別の犠牲陽極の電流値(推定値)及び前記個別の犠牲陽極の消耗量とをそれぞれ比較し、前記金属製構造物の電気防食状態を診断する第5ステップ(S5)と、を有することを特徴とする金属製構造物の電気防食診断方法。 - 第2ステップ(S2)の直後に、第1の数値解析によって同定された個別の犠牲陽極の電流密度(同定値)及び表面電位(同定値)をグラフ上にプロットし、個別の犠牲陽極について所定の要件を満たす近似式を個別の犠牲陽極分極モデルとして計算する追加ステップ(Sa)が設けられ、
第3ステップ(S3)では、金属製構造物全体について前記個別の犠牲陽極分極モデル(犠牲陽極の近似式)を適用して第2の数値解析を行うものとした請求項1記載の金属製構造物の電気防食診断方法。 - 第1の数値解析によって同定された個別の犠牲陽極の電流密度(同定値)及び表面電位(同定値)について上限値、平均値及び下限値を通る犠牲陽極の近似式(犠牲陽極分極モデル)をそれぞれ計算し、
第3ステップ(S3)では金属製構造物全体について、前記上限値、平均値及び下限値を通る犠牲陽極の近似式(犠牲陽極分極モデル)を適用して第2の数値解析を行う請求項2記載の金属製構造物の電気防食診断方法。 - 海底に埋設された鋼材について、上限値、平均値及び下限値に関する土中鋼材の近似式(土中鋼材分極モデル)をそれぞれ計算し、第3ステップ(S3)では金属製構造物全体について、前記上限値、平均値及び下限値を通る土中鋼材の近似式(土中鋼材分極モデル)の組み合わせを適用して第2の数値解析を行う請求項3記載の金属製構造物の電気防食診断方法。
- 電気防食状態の事前情報は、犠牲陽極の電流量、金属製構造物の表面抵抗、解析領域のオフセット電位、及び解析領域を囲む仮想境界を通して流れる電流に関する統計的情報である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属製構造物の電気防食診断方法。
防食診断方法。 - 第1の数値解析としてベイズ推定を用いる請求項1乃至4のいずれか一項に記載の金属製構造物の電気防食診断方法。
- 偏微分方程式の離散化手法による順解析(第2の数値解析)として、有限要素法、境界要素法、差分法、有限体積法のいずれかを用いる請求項1乃至6のいずれか一項に記載の金属製構造物の電気防食診断方法。
- 複数の犠牲陽極が取り付けられた電解質中の金属製構造物の電気防食診断装置であって、
任意に選んだ前記犠牲陽極による防食効果が現れる前記金属製構造物の電位を計測するために、前記金属製構造物に沿って、鉛直方向に照合電極を移動させて、複数深度の測定点で、電解質の電位を電位測定値として取得すると共に前記電位測定値を得て所定の計算を行う演算手段と前記金属製構造物に関する事前情報を入力する情報入力手段とを有して構成され、
前記演算手段が少なくとも、前記電位測定値及び電気防食状態の事前情報と第1の数値解析を用いることにより、個別の犠牲陽極の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)を同定する手段と、
前記同定した個別の犠牲陽極の表面電位(同定値)及び電流密度(同定値)と犠牲陽極分極モデルを適用した偏微分方程式の離散化手法による順解析(第2の数値解析)を用いることにより、前記金属製構造物全体について各部の表面電位(推定値)及び個別の犠牲陽極の電流値(推定値)を推定する手段と、
前記第2の数値解析によって推定された前記個別の犠牲陽極の電流値(推定値)から個別の犠牲陽極の消耗量を算出する手段と、
予め定められた各基準値と前記金属製構造物全体について各部の表面電位(推定値)、前記個別の犠牲陽極の電流値(推定値)及び前記個別の犠牲陽極の消耗量とをそれぞれ比較し、前記金属製構造物の電気防食診状態を診断する手段と、を有することを特徴とする金属製構造物の電気防食診断装置。
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