JP2007261593A - チップ状電子部品用キャリアテープ紙 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、容器リサイクル法に対応したチップ状電子部品用キャリアテープ紙において、薄型としても、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を少なく抑え、こしの強さを持たせ、寸法精度を高めることを目的とする。
【解決手段】本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙100a,100bは、木材パルプの配合率が50質量%より大きく、表層1a、中層1b及び裏層1cを有する多層抄き板紙1からなり、角穴3a又は凹部3bが所定間隔16をおいて形成されているチップ状電子部品用キャリアテープ紙において、多層抄き板紙1は、厚さが1.10mm以下で、針葉樹晒クラフトパルプと熱溶融性の合成パルプを主体として含有し、且つ、表層1a及び裏層1cにおける合成パルプの配合率が0質量%を超えて30質量%未満で、中層1bにおける合成パルプの配合率が30質量%以上100%未満である。
【選択図】図2

Description

本発明は、電子機器のプリント回路板に用いるチップ状電子部品のキャリア用のチップ型電子部品収納台紙となるチップ状電子部品用キャリアテープ紙に関する。
各種の電子機器の自動生産化を図るために、回路基板に対してチップ状電子部品の自動装着がなされるようになっている。このチップ状電子部品の自動装着の工程での電子部品の取り扱いを容易に行ない得るように、個々のチップ状電子部品をテープ状の搬送体で包装したテーピング包装体(キャリアテープ)が利用されており、包装体の形態で順次送り出されてくるチップ状電子部品を、自動的に所定の回路基板に装着させる自動装着が行われている。
係るチップ状電子部品用キャリアテープには、プラスチック製のものと紙製のものがあるが、製造コスト、テープの重量による取り扱い容易性、使用後の廃棄処理容易性及び帯電防止等の点において、紙製のキャリアテープ(以下、「キャリアテープ紙」という。)の方が優れている。
キャリアテープ紙には、チップ状電子部品を収容するために角穴を設けたタイプがある(例えば、特許文献1又は特許文献2を参照。)。角穴を設けたタイプのキャリアテープ紙は、以下のように加工処理及び使用をすることで、キャリアとしての役割を持つ。(1)スリッターにてキャリアテープ用原紙を幅8mmにスリット(裁断)してテープを作る。(2)チップ状電子部品収納用の角穴及びキャリアテープの充填機内送り用の丸穴をテープに開ける。これらの作業をパンチングと呼ぶ。(3)テープの裏面(ボトム側)にカバーテープを接着する。(4)前記角穴にチップ状電子部品を収納する。(5)テープの表面(トップ側)にカバーテープを接着する。(6)カセットリールに巻きつけて出荷する。(7)ユーザーにてトップ側のカバーテープを剥がし、チップ状電子部品を取り出し、自動的に回路基板に装着させる。
角穴を設けたタイプのキャリアテープ紙によって、チップ状電子部品の搬送及び回路基板への装着は、従来のバルク包装(バラ詰め)あるいはマガジン詰め包装(重畳整列状)に比べ、効率化されコストダウンされた。そして、更なる効率化並びにコストダウンを図るべく、エンボス加工、即ちキャリアテープ用原紙に角穴の代わりにエンボシングによる型押しによって凹部を形成せしめ、この凹部にチップ状電子部品を収納する方法も試みられている(例えば、特許文献3を参照。)。
凹部を設けたタイプのキャリアテープ紙は、以下のように加工処理及び使用をすることで、キャリアとしての役割を持つ。(1)スリッターにてキャリアテープ用原紙を幅8mmにスリット(裁断)してテープを作る。(2)チップ状電子部品収納用の凹部を形成する。この作業をエンボシングと呼ぶ。また、同時にキャリアテープの充填機内送り用の丸穴をテープに開ける。この作業をパンチングと呼ぶ。(3)前記凹部にチップ状電子部品を収納する。(4)テープの表面(トップ側)にカバーテープを接着する。(5)カセットリールに巻きつけて出荷する。(6)ユーザーにてトップ側のカバーテープを剥がし、チップ状電子部品を取り出し、自動的に回路基板に装着させる。
しかし、従来のキャリアテープ用原紙にパンチング加工によって角穴を形成せしめたり、エンボス加工等の型押しによって凹部を形成せしめたりした場合には、角穴の内壁や凹部の内壁に繊維状の毛羽が出やすいため、チップ状電子部品を角穴又は凹部に収納する時に、この繊維状の毛羽にチップ状電子部品が引っ掛かりチップ状電子部品の収納不良が発生し易いという難点があった。また、チップ状電子部品を回路基板へ装着するためにチップ状電子部品を角穴又は凹部から取り出す時にも、繊維状の毛羽が障害となってチップ状電子部品の取り出し不良が発生し易いという難点もあった(例えば、特許文献4又は特許文献5を参照。)。
毛羽立ちを抑える技術として、熱溶融物質を含有させる技術が開示されている(例えば、特許文献6を参照。)。特許文献6には、熱溶融繊維の割合を5重量%以上とすることによって、キャビティ部等のパンチ加工時の、毛羽や粉塵の発生をほぼ完全に防止できるとの記載がある。
毛羽立ちを抑える技術が特許文献6に開示されているものの、この繊維状の毛羽によるチップ状電子部品の収納不良又は取り出し不良等の不具合は、対象となるチップ状電子部品が小型になるほど発生し易くなる(例えば、特許文献7を参照。)。例えば、特許文献7には、係る小型のチップ状電子部品を収納するキャリアテープ紙としては、チップ状電子部品の収納効率等の観点から、一般に、厚さ0.75mm以下の薄型品が用いられることが記載されている。そして、角穴や凹部の内壁の繊維状の毛羽によるチップ状電子部品の収納不良又は取り出し不良等の不具合は、厚さ0.75mm以下の薄型のキャリアテープ紙において特に問題となっていると指摘されている。そこで特許文献7には、原料パルプの種類及び多層抄板紙の密度を規定することによって、部品収容用の凹部を形成する際に、加工方法によらず、容易に凹部内壁の毛羽を極めて少なくすることが可能なチップ状電子部品用キャリアテープ紙が開示されている。
特許第3383935号公報 特開2003−175966号公報 特開2005−112424号公報 特許第3289244号公報 特許第3268522号公報 特開2003−54627号公報 特許第3289245号公報
しかし、特許文献6で記載されたキャリアテープ素材のように熱溶融物質を含有させた場合、キャリアテープ紙のこしの低下が生じる。キャリアテープ紙に十分なこしの強さがない場合、パンチング加工やエンボス加工の際に、角穴又は凹部が形成されなかったり、角穴又は凹部が歪んだ形状で形成されたりする問題が生じる。特許文献6には、コシが低下すると、キャビティ部等のパンチ加工が困難となり、パンチの失敗や歪んだキャビティ部等が形成される可能性が高くなるとの記載がある。例えば、特許文献6の実施例8では、中間層として、パルプスラリー40部に熱溶融繊維60部を混合して使用しており、そのキャリアテープ素材は、熱溶融繊維を60部と比較的多量に含ませたため、コシがなくパンチ加工時やエンボス加工時に歪みが発生したとの結果が得られている。
また、キャリアテープ紙に十分なこしの強さがない場合、トップ側のカバーテープを剥がす際に、キャリアテープ紙がバタついてしまいスムーズに剥がすことができず、チップ状電子部品が収容部から脱落し、実装率を低下させる問題が生じる。
このように薄型のキャリアテープ紙では、薄型である故にこしが強くないため、熱溶融物質を含有することによるわずかなこしの低下によっても、パンチング加工やエンボス加工の際に、角穴又は凹部が形成されなかったり、角穴又は凹部が歪んだ形状で形成されたりする問題や、実装率を低下させる問題を引き起こしやすい。
また、薄型のキャリアテープ紙では、収容するチップ状電子部品が小さいため、パンチング加工によって角穴を形成せしめたりエンボス加工等の型押しによって凹部を形成せしめたりした際に、その角穴や凹部の成形保持性が低いと、チップ状電子部品の収容不良や取り出し不良等の不具合が発生しやすくなる。また、キャリアテープ紙が、温湿度変化によって寸法、形状変化を起こし易い場合も、チップ状電子部品の収容不良や取り出し不良等の不具合が発生しやすくなる。
従って、繊維状の毛羽が少ない、所定間隔をおいたチップ状電子部品収納用の角穴又は凹部が形成された、こしが強く、寸法精度の良いチップ状電子部品用キャリアテープ紙の開発が急務となった。
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、容器リサイクル法に対応したチップ状電子部品用キャリアテープ紙において、薄型としても、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を少なく抑え、こしの強さを持たせ、寸法精度を高めることを目的とする。そして、この薄型のチップ状電子部品用キャリアテープ紙を用いることによって、チップ状電子部品の収容不良及び取り出し不良等の不具合を抑えることを目的とする。また、角穴又は凹部の成形保持性があり、成形時の作業性に優れたチップ状電子部品用キャリアテープ紙とすることを目的とする。
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、表層、中層及び裏層を有する多層抄き板紙に針葉樹晒クラフトパルプと合成パルプを主体として含有させ、針葉樹晒クラフトパルプと合成パルプのそれぞれの配合率を各層ごとに異なった配合率とすることによって、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生が少なく、こしが強く、寸法精度の高いキャリアテープ紙を完成した。即ち、本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙は、木材パルプの配合率が紙質量を基準として50質量%より大きく、表層、中層及び裏層を有する多層抄き板紙からなり、チップ状電子部品の運搬のための、該チップ状電子部品の収納用の角穴又は凹部が所定間隔をおいて形成されているチップ状電子部品用キャリアテープ紙において、前記多層抄き板紙は、JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」で規定される厚さが1.10mm以下で、針葉樹晒クラフトパルプと熱溶融性の合成パルプを主体として含有し、且つ、前記表層及び前記裏層における前記合成パルプの配合率が前記表層若しくは前記裏層の全パルプ質量を基準としていずれも0質量%を超えて30質量%未満で、前記中層における前記合成パルプの配合率が前記中層の全パルプ質量を基準として30質量%以上100質量%未満であることを特徴とする。
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙では、前記合成パルプは、融点が100〜180℃である多分岐状のポリオレフィン系合成パルプであることが好ましい。合成パルプとその合成パルプと接触している他の合成パルプ又は針葉樹晒クラフトパルプ等のパルプ(以下、接触パルプという)との交絡点が多く、合成パルプの熱溶融時における合成パルプと接触パルプとの接着性が優れる。
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙では、前記角穴又は前記凹部は、前記多層抄き板紙が前記合成パルプの融点以上の温度に加熱された状態で、パンチング加工によって形成された角穴であるか或いはエンボス加工によって形成された凹部であることが好ましい。繊維状の毛羽の発生が抑えられた状態で、角穴又は凹部の内壁を合成パルプで固めることができる。また、多層抄き板紙全体において、合成パルプと接触パルプとが接着した状態となることで、温湿度変化による寸法、形状変化が起こりにくくなる。
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙では、前記角穴又は前記凹部は、角穴形成打ち抜き機の先端部又は凹部形成エンボス機の先端部を前記合成パルプの融点以上の温度に加熱した状態で、パンチング加工することによって形成された角穴であるか或いはエンボス加工することによって形成された凹部であることが好ましい。繊維状の毛羽の発生が抑えられた状態で、角穴又は凹部の内壁を合成パルプで固めることができる。また、角穴又は凹部の周辺の合成パルプと当該周辺の接触パルプとを合成パルプの融点以上の温度で接着させ、それ以外の部分の合成パルプと接触パルプとの接着の強度を調整することによって、キャリアテープ紙のこしの強さを調整することができる。
本発明に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙では、角穴又は凹部は、多層抄き板紙が前記合成パルプの融点以上の温度に加熱された後、融点未満の温度まで降温された状態で、パンチング加工によって形成された角穴であるか或いはエンボス加工によって形成された凹部であることが好ましい。例えば、原紙の乾燥時に原紙を合成パルプの融点以上の温度に加熱して、角穴又は凹部を形成する前に、合成パルプが熱溶融によって接触パルプと接着した状態としておくことによって、角穴又は凹部を形成する際の角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を少なく抑えることができる。
本発明の容器リサイクル法に対応したチップ状電子部品用キャリアテープ紙は、薄型としても、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生が少なく、こしが強く、寸法精度が高い。そして、この薄型のチップ状電子部品用キャリアテープ紙を用いることによって、チップ状電子部品の収容不良及び取り出し不良等の不具合を抑えることができる。また、本発明のチップ状電子部品用キャリアテープ紙は、角穴又は凹部の成形保持性があり、成形時の作業性に優れる。
以下、本発明について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されない。本実施形態のキャリアテープ紙の構成、その構成要素、使用する材料及びその製法について項分けして説明する。
図1に本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙の平面図を示す。図2は、図1におけるA−A’線の破断面図であり、(a)はパンチング加工によって角穴が形成された場合、(b)はエンボス加工によって凹部が形成された場合を示す。図1に示したチップ状電子部品用キャリアテープ紙100の角穴等3は、図2(a)に示したチップ状電子部品用キャリアテープ紙100aの角穴3aであるか、或いは図2(b)に示したチップ状電子部品用キャリアテープ紙100bの凹部3bである。図1及び図2に示すように、本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙100(100a,100b)は、木材パルプの配合率が紙質量を基準として50質量%より大きく、表層1a、中層1b及び裏層1cを有する多層抄き板紙1からなり、チップ状電子部品10の運搬のための、チップ状電子部品10の収納用の角穴3a又は凹部3bが所定間隔16をおいて形成されているチップ状電子部品用キャリアテープ紙において、多層抄き板紙1は、JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」で規定される厚さが1.10mm以下で、針葉樹晒クラフトパルプと熱溶融性の合成パルプを主体として含有し、且つ、表層1a及び裏層1cにおける合成パルプの配合率が表層1a若しくは裏層1cの全パルプ質量を基準としていずれも0質量%を超えて30質量%未満で、中層1bにおける合成パルプの配合率が中層1bの全パルプ質量を基準として30質量%以上100%未満である。
本実施形態に係るキャリアテープ紙100(100a,100b)は、木材パルプと合成パルプを混抄して得られる、表層1a、中層1b及び裏層1cを有する多層抄き板紙1からなる。そして、チップ状電子部品10の収納用の角穴3a又は凹部3bが所定間隔16をおいて形成されている。さらに、キャリアテープの充填機内送り用の丸穴5が開けられている。
図2(a)に示したキャリアテープ紙100aは、パンチング加工によって角穴3aが形成されたキャリアテープ紙である。角穴3aは、多層抄き板紙1を貫通した穴である。角穴3aの内壁4は、表層1aの内壁4a、中層1bの内壁4b及び裏層1cの内壁4cから形成されている。キャリアテープ紙100aの裏層1c側の表面7aにはボトムテープ12が貼り付けられており、キャリアテープ紙100aの表層1a側の表面7bにはトップテープ15が貼り付けられている。そして、角穴3aの内壁4、ボトムテープ12及びトップテープ15により空間20が形成されている。空間20には、チップ状電子部品10が収納されている。
図2(b)に示したキャリアテープ紙100bは、エンボス加工によって凹部3bが形成されたキャリアテープ紙である。凹部3bは、多層抄き板紙1に形成された凹みである。凹部3bの底6は、多層抄き板紙1がエンボス加工により圧縮されて形成されている。そのため、木材パルプや合成パルプ等の含有物が圧縮されて密に詰まった状態となっている。キャリアテープ紙100bの表層1a側の表面7bにはトップテープ15が貼り付けられている。そして、凹部3bの底6と内壁4及びトップテープ15により空間20が形成されている。空間20には、チップ状電子部品10が収納されている。
本実施形態における合成パルプとしては、熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。例えば汎用の板紙抄紙機による湿式抄造プロセスに適した多分岐状の繊維性状を有するポリエチレンやポリプロピレンからなるポリオレフィン系合成パルプが好ましい。特に、合成パルプは、融点が100〜180℃である多分岐状のポリオレフィン系合成パルプであることが好ましい。多分岐状の合成パルプを用いると、合成パルプと接触パルプとの交絡点が多く、合成パルプの熱溶融時における合成パルプと接触パルプとの接着性が優れる。また、これらの合成パルプは、安価であることから、好適に用いられる。例えば、三井化学(株)からSWPの商品名で市販されているものを使用できるが、本実施形態はこのSWPに限定されるものではない。
これらの合成パルプの形態は、抄紙機で抄紙できる範囲にあれば短繊維でも長繊維でもよいが、平均繊維長が0.1〜10mmの範囲内であることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。0.1mm未満では繊維間の絡み合いが少なく実質的にシート化することが難しく、10mmを超えると抄紙で均一なシートとすることが難しい。
本実施形態で使用する木材パルプとしては、主に針葉樹晒クラフトパルプ(N−BKP)に代表される木材漂白化学パルプが使用される。必要に応じて広葉樹晒クラフトパルプ(L−BKP)、砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、晒ケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ、古紙パルプを適宜配合してもよい。N―BKPを主体とした木材パルプを使用することで、こしが強い多層抄き板紙が得られやすい。例えば、N―BKPの配合率が90質量%以上の木材パルプを使用することが好ましい。さらに、木材パルプとしてN−BKPの配合率が100質量%の木材パルプを使用することがより好ましい。
木材パルプの形態は、抄紙機で抄紙できる範囲にあれば短繊維でも長繊維でもよいが、平均繊維長が0.1〜10mmの範囲内であることが好ましく、1〜5mmであることがより好ましい。0.1mm未満では繊維間の絡み合いが少なく実質的にシート化することが難しく、10mmを超えると抄紙で均一なシートとすることが難しい。特にN―BKPについては、平均繊維長をこの範囲内とすることで、十分なこしの強さを有する多層抄き板紙が得られやすく、また合成パルプを含有している場合には、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生が抑えられやすい。
また、合成パルプと木材パルプ含む全パルプのJIS P8121−1995「パルプのろ水度試験方法」に規定されるカナダ標準ろ水度(CSF)が、300〜800mlであることが好ましく、400〜600mlであることがより好ましい。この範囲内まで叩解されることで、繊維が短縮化するとともに、繊維のフィブリル化が促進し、繊維間結合力が強まって、均質で強度特性が良好なシートが得られやすい。また、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生が抑えられる。繊維状の毛羽が発生しやすいN―BKPにおいては、フィブリル化の促進は特に有効である。
紙料中には、内添サイズ剤、紙力剤、填料、硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、歩留まり向上剤、染料、蛍光染料等の添加薬品が適宜用いられる。
内添サイズ剤としては、例えばアルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水琥珀酸(ASA)、中性ロジンが用いられる。
紙力剤としては、例えば澱粉、変性澱粉、ポリアクリルアミドが用いられる。しかし、多量に用いすぎると剛度が強くなりすぎて、充分な層間強度を有しているにもかかわらず、カセットリール巻付け時等に曲げ、しごき等の力を受けて、層間剥離や折れじわを発生しやすくなる。このため、紙力剤の添加量は、その種類によって異なるが、パルプに対して固形分で1〜10質量%程度が好ましい。
填料としては、不透明度の観点から酸化チタンが好ましい。必要に応じて例えば炭酸カルシウム、タルク、クレー、合成ゼオライト、珪酸カルシウムを適宜配合する事もできる。
粗大な填料は、その填料自体が硬ければ、角穴又は凹部を形成する際に使用する金型の磨耗の原因となり、その金型の磨耗は、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生の原因となる。そのため、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を少なく抑えるために、填料の平均粒子径は、0.1〜10μmが好ましい。
歩留まり向上剤としては、例えばコロイダルシリカ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミンが用いられる。
合成パルプと木材パルプは混抄されるため、合成パルプと木材パルプは各層において、それぞれ均質に分布している。
本実施形態に係るキャリアテープ紙では、多層抄き板紙の全体若しくは一部分の合成パルプが、その合成パルプと接触している他の合成パルプ又は針葉樹クラフトパルプ等のパルプと、熱溶融によって接着した状態となっている。この合成パルプと接触パルプとの接着は、合成パルプと接触パルプとの交絡点でなされている。合成パルプの溶融の程度によって合成パルプと接触パルプとの接着性が異なるが、本実施形態では合成パルプの溶融の程度に制限されない。
例えば、多層抄き板紙全体において、合成パルプと接触パルプとが熱溶融によって接着した状態となることで、温湿度変化による寸法、形状変化が起こりにくくなる。また、接着の強度は、加熱の際に加える熱量によって調整することができる。そして、接着の強度を調整することによって、キャリアテープ紙のこしの強さを調整することができる。例えば、角穴又は凹部の周辺の合成パルプと当該周辺の接触パルプとを合成パルプの融点以上の温度で接着させ、それ以外の部分の合成パルプと接触パルプとの接着の強度を調整することによって、キャリアテープ紙のこしの強さを調整することができる。このとき、少なくとも角穴又は凹部の周辺の合成パルプは、当該周辺の接触パルプと熱溶融によって接着した状態となっている。
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙では、例えば、角穴又は凹部は、多層抄き板紙が合成パルプの融点以上の温度に加熱された状態で、パンチング加工によって形成された角穴であるか或いはエンボス加工によって形成された凹部であることが好ましい。或いは、本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙では、角穴又は凹部は、角穴形成打ち抜き機の先端部又は凹部形成エンボス機の先端部を合成パルプの融点以上の温度に加熱した状態で、パンチング加工することによって形成された角穴であるか或いはエンボス加工することによって形成された凹部であっても良い。繊維状の毛羽の発生が抑えられた状態で、角穴又は凹部の内壁を合成パルプで固めることができる。
また、本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙では、例えば、角穴又は凹部は、多層抄き板紙が合成パルプの融点以上の温度に加熱された後、融点未満の温度まで降温された状態で、パンチング加工によって形成された角穴であるか或いはエンボス加工によって形成された凹部であることが好ましい。例えば、原紙の乾燥時に原紙を合成パルプの融点以上の温度に加熱して、角穴又は凹部を形成する前に、合成パルプが熱溶融によって接触パルプと接着した状態としておくことによって、角穴又は凹部を形成する際の角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を少なく抑えることができる。
本実施形態の多層抄き板紙は、木材パルプの配合率が50質量%超、例えば51質量%以上であり、容器包装リサイクル法に対応している。なお、木材パルプの配合率とは、紙質量に対する木材パルプの含有量の割合である。
また、この多層抄き板紙には、N−BKPと合成パルプを主体として含有させる。N−BKPと合成パルプの合計量の配合率は、例えば75質量%以上98質量%以下である。好ましくは85質量%以上95質量%以下である。N−BKPと合成パルプの合計量の配合率とは、紙質量に対するN−BKPと合成パルプの合計含有量の割合である。N−BKPと合成パルプの他には、前記内添サイズ剤等の添加薬品が添加されている。
本実施形態の多層抄き板紙において、N−BKPの各層での配合率及び合成パルプの各層での配合率は、表層及び裏層と中層では異なる。N−BKPの配合率とは、各層における全パルプ質量に対するN−BKPの含有量の割合であり、合成パルプの配合率とは、各層における全パルプ質量に対する合成パルプの含有量の割合である。N−BKPと合成パルプのそれぞれの適正な配合率は、熱成形時の角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生の有無、熱成形時の角穴又は凹部の成形保持性、並びに原紙のこしの強さ及び寸法精度、並びに製造時の作業性をみながら決定される。
多層抄き板紙にN―BKPを主体として含有させた場合、多層抄き板紙のこしを強くすることができる。しかし、多層抄き板紙にN―BKPを主体として含有させた場合、繊維状の毛羽が発生しやすくなる。例えば特許文献7では、多層抄板紙中の針葉樹系晒クラフトパルプの含有率は、固形分で0〜40質量%、好ましくは0〜30質量%であることが開示されている。そして、その含有率が40質量%を超えた場合は、エンボス等の型付けによって凹部を形成せしめた際に、該凹部の内壁に毛羽が出やすく、チップ状電子部品の収納及び取り出し不良等の不具合を発生しやすいことが記載されている。本実施形態の多層抄き板紙では、N−BKPと合成パルプを主体として含有させ、N−BKPと合成パルプのそれぞれの配合率を各層ごとに異なる配合率とすることによって、薄型であっても、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を少なく抑えた状態で、十分なこしの強さを有する。
具体的には、表層及び裏層においては、合成パルプの配合率は、0質量%を超えて30質量%未満とする。好ましくは2質量%以上20質量%以下、より好ましくは5質量%以上10質量%以下とする。そして、N―BKPの配合率は、70質量%以上100質量%未満とすることが好ましい。より好ましくは80質量%以上98質量%以下、さらに好ましくは90質量%以上95質量%以下とする。表層における合成パルプの配合率及びN−BKPの配合率は、表層の全パルプ質量を基準とし、裏層における合成パルプの配合率及びN−BKPの配合率は、裏層の全パルプ質量を基準とする。合成パルプの配合率は、表層及び裏層においては、30質量%以上であると熱成形加工時に金型にくっつきやすくなり、離型性が劣る。これにより作業性が劣る。
同時に、中層においては、合成パルプの配合率は、30質量%以上100質量%未満とする。好ましくは50質量%以上95質量%以下、より好ましくは70質量%以上90質量%以下とする。そして、N―BKPの配合率は、0質量%を超えて70質量%以下とする。好ましくは5質量%以上50質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下とする。中層における合成パルプの配合率及びN−BKPの配合率は、中層の全パルプ質量を基準とする。中層においては、合成パルプが30質量%未満では熱成形加工後の角穴又は凹部の成形保持性が劣る。また、合成パルプの含有量を増やすことで角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を抑えることができる。特に、合成パルプを70質量%以上とした場合に、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を抑えつつ、かつ、十分なこしの強さを有する多層抄き板紙とすることができる。
本実施形態に係るキャリアテープ用原紙である多層抄き板紙の厚さは、近年、チップ状電子部品が一段と小型化・極小化される傾向にあり、係る小型のチップ状電子部品を効率良く収納するために、多層抄き板紙の厚さを1.10mm以下とする。0.75mm以下とさらに薄くても良い。このように薄型のキャリアテープ紙としても、角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生が抑えられている。
表層、裏層、中層の坪量は、特に限定されるものではないが、多層抄き板紙の全層の坪量としては200〜1200g/mの範囲が極小から汎用タイプの寸法を有するチップ状電子部品の収納用容積を確保するために好ましい。
表層、裏層、中層の厚さの比率は、特に限定されるものではないが、表層及び裏層が薄く、中層が厚いことが好ましい。例えば、表層:中層:裏層=1:2:1〜1:10:1が好ましく、表層:中層:裏層=1:5:1〜1:8:1がより好ましい。中層を厚くすることによって、即ち合成パルプを多く含有している層を厚くすることによって、熱成形加工後の角穴又は凹部の成形保持性が良好になる。同時に、表層及び裏層を薄くすることによって、即ちN−BKPを多く含有している層を薄くすることによって、チップ状電子部品の収容不良や取り出し不良等の不具合を引き起こしにくくすることができる。
キャリアテープ紙の表層はテープと接着されるため、且つ、チップ状電子部品の回路基板への装着のときにトップ側のカバーテープをバタつかせずスムーズに剥がすために表面強度と適度な平滑性が必要である。表面強度は、ワックス強度(Tappi Test Method,T459om−83,“Surface strength of paper(wax pick test)”)として2A以上、平滑性はベック平滑度で5秒以上が好ましい。なお、トップ側のカバーテープをバタつかせてスムーズに剥がすことができないと、極小のチップ状電子部品がキャリアテープ収納部から脱落し、実装率を低下させる原因となる。
また、本実施形態の多層抄き板紙は、収容したチップ状電子部品に金属腐食などの悪影響を及ぼさないように中性紙とすることが好ましい。中性紙とするためには、硫酸バンドを使用せず、AKDやASAを使用するサイズ処方や、抄紙時に薬品処理をして中性化する方法や、填料として炭酸カルシウムを使用する方法等の一般的な方法を用いることができる。
キャリアテープ用原紙の製法は、特に限定されるものではなく、公知の抄紙機、すなわち長網、丸網、ハイブリッドフォーマー、ギャップフォーマー等で抄造し、プレス工程、乾燥工程を経てキャリアテープ用原紙を作製する。
キャリアテープ用原紙の抄造で使用する原料は、合成パルプと木材パルプとを混合してパルプスラリーを調製し、そのパルプスラリーにさらに添加薬品を適宜添加し、混合して調製する。合成パルプと木材パルプとを混合した状態のパルプスラリーのJIS P8121−1995「パルプのろ水度試験方法」に規定されるカナダ標準ろ水度(CSF)を、好ましくは300〜800mlとし、より好ましくは400〜600mlとする。このとき、必要に応じて合成パルプと木材パルプとを混合した状態のパルプスラリーを叩解してCSFを調整しても良い。
乾燥は、例えばシリンダードライヤー等の抄紙機に付属するドライヤー又は抄紙機から独立した紙の非接触のドライヤーを使用して行なうことができる。また、乾燥工程の中間に設置されるサイズプレス装置で澱粉を主体とする表面サイズ処理を行なうのが好ましい。通常の2本ロールサイズプレスの他、ゲートロールサイズプレスやメタリングサイズプレスも使用できるが、表面強度、紙層強度向上効果とカバーテープの接着性の観点からは2本ロールサイズプレスの使用が好ましい。
表面サイズ処理用の澱粉としては、酸化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉、酵素変性澱粉などが使用できる。その他の薬品としてポリビニルアルコール、ポリアクリルアマイド、樹脂ポリマーなどを適宜添加してもよい。サイズプレスでの塗布量は両面で乾燥固形分質量0.5〜4g/m、好ましくは1〜3g/mの範囲である。
また、抄造後には、スーパーキャレンダー、マシンキャレンダー、ソフトキャレンダー等のキャレンダー装置を用いて平滑化処理を行なうことができる。
次に、本実施形態に係る多層抄き板紙に、所定間隔をおいて、部品収納用の角穴を形成せしめる方法について説明する。本実施形態に係る多層抄き板紙に、所定間隔をおいて、部品収納用の角穴を形成せしめるには、例えばパンチング加工法によればよく、角穴形成打ち抜き機など通常使用される形式のパンチング方法を適用できる。
また、本実施形態に係る多層抄き板紙に、所定間隔をおいて、部品収納用の凹部を形成せしめる方法について説明する。本実施形態に係る多層抄き板紙に、所定間隔をおいて、部品収納用の凹部を形成せしめるには、例えばエンボス加工法によればよい。エンボス等による型押しの方法としては、エンボスロール機、油圧式プレス機など通常使用される形式の型押し方法を適用できる。また、本実施形態に係る多層抄き板紙に、所定間隔をおいて、部品収納用の凹部を形成せしめるには、ハーフカットとそれに続くプレス加工によってもよい。即ち、凹部の形状をした金型の外周先端についた刃によって、凹部の深さに相当する深さまで多層抄き板紙に切り込みを入れ、これと同時あるいは引続きプレスによって凹部を形成せしめる。
ここで、パンチング加工又はエンボス加工時に幅8mmのスリット(裁断)テープ紙自体に間接加熱処理を行う。また、パンチング加工又はエンボス加工時に角穴又は凹部に直接加熱処理を行うこともできる。
例えば、加工段階でパンチング加工によって角穴を形成せしめたり、エンボス等の型押しによって凹部を形成する直前に、幅8mmにスリット(裁断)したテープ紙を合成パルプの融点以上の温度に加熱された状態として、通常のパンチング加工又はエンボス加工によって角穴又は凹部を形成することが好ましい。
このようにして加工されたテープ紙は、パンチング加工により角穴を形成する際又はエンボス等の型押しによって凹部を形成する際に合成パルプが溶融しているため、テープ紙に加わる応力が小さくなり、角穴又は凹部の内壁を平滑にすることができる。また、繊維状の毛羽の発生が抑えられた状態で、角穴又は凹部の内壁を合成パルプで固めることができる。
また、加工段階でパンチングによって角穴を形成せしめたり、エンボス等の型押しによって凹部を形成する直前に、打ち抜き機の先端部やエンボス機の先端部を合成パルプの融点以上の温度に加熱された状態として、角穴又は凹部を形成することが好ましい。
このようにして加工されたテープ紙は、角穴又は凹部を形成する際に、加熱された状態の角穴形成打ち抜き機の先端部又は凹部形成エンボス機の先端部により、角穴又は凹部を形成する部分及びその周辺の部分が加熱されるため、それらの加熱された部分において合成パルプが溶融する。そのため、多層抄き板紙全体を融点以上に加熱処理した場合と同様に、角穴又は凹部の内壁を平滑にすることができる。また、繊維状の毛羽の発生が抑えられた状態で、角穴又は凹部の内壁を合成パルプで固められる。なお、角穴又は凹部を形成する際に、加熱された状態の角穴形成打ち抜き機の先端部又は凹部形成エンボス機の先端部とテープ紙とが接触する時間は短い。そのため、角穴又は凹部を形成する場所を合成パルプの融点以上の温度とするために、角穴形成打ち抜き機の先端部又は凹部形成エンボス機の先端部は、合成パルプの融点よりも高い温度、例えば150〜230℃としておくことが好ましい。
また、多層抄き板紙全体を融点以上に加熱処理した場合と異なり、角穴又は凹部の周辺のみしか加熱されないため、角穴又は凹部の周辺以外の場所においては、合成パルプと接触パルプは、紙力剤によって、互いに接着した状態となっている。したがって、テープ紙自体への間接加熱処理及び角穴又は凹部への直接加熱処理を行なうことで、中間状態の多層抄き板紙を形成すれば、キャリアテープ紙のこしの強さを調整することができる。
即ち、本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙では、加工段階でパンチングによって角穴を形成せしめたり、エンボス等の型押しによって凹部を形成する直前に、幅8mmにスリット(裁断)したテープを合成パルプの融点以上の温度に加熱された状態とし、且つ、打ち抜き機の先端部又はエンボス機の先端部も合成パルプの融点以上の温度で加熱された状態として、角穴又は凹部を形成することとしても良い。
また、キャリアテープ原紙を作製する際の乾燥工程において、乾燥温度を合成パルプの融点以上とし、そして多層抄き板紙が融点未満の温度まで降温された状態となってから、パンチング加工によって角穴を形成するか或いはエンボス加工によって凹部を形成することも好ましい。このとき、乾燥工程においては合成パルプが熱溶融することで紙の表面が接着性を有するため、紙に非接触のドライヤーを使用することが好ましい。角穴又は凹部を形成する前に、合成パルプが接触パルプと熱溶着によって接着した状態としておくことによって、角穴又は凹部を形成する際の角穴又は凹部の内壁における繊維状の毛羽の発生を少なく抑えることができる。また、キャリアテープ原紙を作製する際の乾燥工程において、乾燥温度を合成パルプの融点以上とし、さらに前述したパンチング加工又はエンボス加工時の加熱処理を行っても良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」は特に断らない限り、固形分の「質量部」を示す。
(キャリアテープ用原紙1)
<表、裏層の原料の配合>
ポリエチレン系合成パルプ(商品名:SWP E790、三井化学社製;融点135℃)20部とN−BKP80部とからなるカナダ標準ろ水度(CSF)500mlのパルプスラリーに、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック40T、日本食品化工社製)0.8部、酸化チタン5部、アルキルケテンダイマー系内添サイズ剤(商品名:AD1600、星光PMC社製)0.3部を添加し、原料とした。
<中層の原料の配合>
ポリエチレン系合成パルプ(商品名:SWP E790、三井化学社製;融点135℃)50部とN−BKP50部とからなるCSF500mlのパルプスラリーに、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック40T、日本食品化工社製)0.8部、酸化チタン5部、アルキルケテンダイマー系内添サイズ剤(商品名:AD1600、星光PMC社製)0.3部を添加し、原料とした。
<サイズプレス液の配合>
スチレンアクリル系樹脂(商品名:ST−5000、荒川化学工業社製)146Lに50℃の温水を投入し1500Lとした。
<原紙の抄造>
上記原料を用いて、円網抄紙機にて表層坪量80g/m、中層坪量200g/m、裏層坪量80g/mの湿紙を抄き合わせ抄紙後、上記の配合のサイズプレス液を使ってサイズプレス処理を行ない(2g/m)、原紙全体の紙厚0.41mm、原紙全体の坪量が362g/m、のキャリアテープ用原紙を抄造した。原紙の乾燥は、シリンダードライヤーにて、100℃で行った。
[キャリアテープ用原紙の白紙物性評価]
原紙全体の紙厚及び坪量は、得られたキャリアテープ用原紙についてJIS P 8111:1998「紙,板紙及びパルプ−調湿及び試験のための標準状態」に準じて前処理を行なった後、以下のJISに準拠して測定した。また、原紙全体の密度も以下のJISに準拠して算出した。他のキャリアテープ用原紙においても同様に、原紙全体の紙厚、坪量及び密度を測定又は算出した。それぞれの測定値及び算出値は、表1又は表2に示した。
(1)坪量:JIS P 8124:1998「紙及び板紙−坪量測定方法」。
(2)厚さ、密度:JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」。
(比較例1−1)
キャリアテープ用原紙1を幅8mmにスリットした後、送り用丸穴を開けるとともに、縦1mm、横0.5mmの金型を用いてエンボス型付けを行ない、深さ0.35mmの凹部を所定間隔をおいて形成せしめ、比較例1−1のキャリアテープ紙を作製した。
(比較例1−2)
キャリアテープ用原紙1を幅8mmにスリットした後、送り用丸穴を開けるとともに、縦1mm、横0.5mmの角穴を所定間隔をおいて形成せしめ、比較例1−2のキャリアテープ紙を作製した。
(実施例1−1)
キャリアテープ用原紙1を幅8mmにスリットした後、得られたスリット(裁断)テープ紙自体を150℃に加熱された状態として、送り用丸穴を開けるとともに、縦1mm、横0.5mmの金型を用いてエンボス型付けを行ない、深さ0.35mmの凹部を所定間隔をおいて形成せしめ、実施例1−1のキャリアテープ紙を作製した。
(実施例1−2)
キャリアテープ用原紙1を幅8mmにスリットした後、得られたスリット(裁断)テープ紙自体を150℃に加熱された状態として、送り用丸穴を開けるとともに、縦1mm、横0.5mmの角穴を所定間隔をおいて形成せしめ、実施例1−2のキャリアテープ紙を作製した。
(実施例2−1)
キャリアテープ用原紙1を幅8mmにスリットした後、エンボス機の先端部を150℃に加熱された状態として、送り用丸穴を開けるとともに、縦1mm、横0.5mmの金型を用いてエンボス型付けを行ない、深さ0.35mmの凹部を所定間隔をおいて形成せしめ、実施例2−1のキャリアテープ紙を作製した。
(実施例2−2)
キャリアテープ用原紙1を幅8mmにスリットした後、打ち抜き機の先端部を150℃に加熱された状態として、送り用丸穴を開けるとともに、縦1mm、横0.5mmの角穴を所定間隔をおいて形成せしめ、実施例2−2のキャリアテープ紙を作製した。
(キャリアテープ用原紙2)
原紙の抄造において、表層坪量を80g/mから50g/mに変更し、中層坪量を200g/mから260g/mに変更し、裏層坪量を80g/mから50g/mに変更した以外はキャリアテープ用原紙1と同様の方法でキャリアテープ用原紙2を作製した。
(比較例2−1,2−2,実施例3−1,3−2,4−1,4−2)
キャリアテープ用原紙2を使用し、比較例1−1と同様の方法で比較例2−1のキャリアテープ紙を作製し、比較例1−2と同様の方法で比較例2−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−1と同様の方法で実施例3−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−2と同様の方法で実施例3−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−1と同様の方法で実施例4−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−2と同様の方法で実施例4−2のキャリアテープ紙を作製した。
(キャリアテープ用原紙3)
表、裏層の原料の配合において、ポリエチレン系合成パルプ(商品名:SWP E790、三井化学社製;融点135℃)10部とN−BKP90部とからなるCSF500mlのパルプスラリーに変更し、中層の原料の配合において、ポリエチレン系合成パルプ(商品名:SWP E790、三井化学社製;融点135℃)70部とN−BKP30部とからなるCSF500mlのパルプスラリー変更した以外はキャリアテープ用原紙1と同様の方法でキャリアテープ用原紙3を作製した。
(比較例3−1,3−2,実施例5−1,5−2,6−1,6−2)
キャリアテープ用原紙3を使用し、比較例1−1と同様の方法で比較例3−1のキャリアテープ紙を作製し、比較例1−2と同様の方法で比較例3−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−1と同様の方法で実施例5−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−2と同様の方法で実施例5−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−1と同様の方法で実施例6−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−2と同様の方法で実施例6−2のキャリアテープ紙を作製した。
(キャリアテープ用原紙4)
原紙の抄造において、表層坪量を80g/mから139g/mに変更し、中層坪量を200g/mから349g/mに変更し、裏層坪量を80g/mから139g/mに変更し、紙厚を0.41mmから0.75mmに変更し、原紙全体の坪量を362g/mから629g/mに変更した以外はキャリアテープ用原紙1と同様の方法でキャリアテープ用原紙4を作製した。
(比較例4−1,4−2,実施例7−1,7−2,8−1,8−2)
キャリアテープ用原紙4を使用し、比較例1−1と同様の方法で比較例4−1のキャリアテープ紙を作製し、比較例1−2と同様の方法で比較例4−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−1と同様の方法で実施例7−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−2と同様の方法で実施例7−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−1と同様の方法で実施例8−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−2と同様の方法で実施例8−2のキャリアテープ紙を作製した。
(キャリアテープ用原紙5)
<表、裏層の原料の配合>
ポリエチレン系合成パルプ(商品名:SWP E790、三井化学社製;融点135℃)10部とN−BKP90部とからなるCSF500mlのパルプスラリーに、カチオン化澱粉(商品名:ネオタック40T、日本食品化工社製)0.8部、酸化チタン5部、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:AD1600、星光PMC社製)0.3部を添加し、原料とした。
<中層の原料の配合>
ポリエチレン系合成パルプ(商品名:SWP E790、三井化学社製;融点135℃)90部とN−BKP10部とからなるCSF500mlのパルプスラリーに、アルキルケテンダイマー系サイズ剤(商品名:AD1600、星光PMC社製)を0.3部添加し、原料とした。
<原紙の抄造>
上記原料を用いて、円網抄紙機によって表層坪量60g/m、中層坪量240g/m、裏層坪量60g/mの湿紙を抄き合わせ抄紙後、キャリアテープ用原紙1で使用したサイズプレス液を使ってサイズプレス処理(2g/m)を行ない、原紙全体の紙厚0.41mm、原紙全体の坪量が362g/mのキャリアテープ用原紙5を抄造した。原紙の乾燥は、シリンダードライヤーにて、100℃で行った。
(比較例5−1,5−2,6−1,6−2,7−1,7−2)
キャリアテープ用原紙5を使用し、比較例1−1と同様の方法で比較例5−1のキャリアテープ紙を作製し、比較例1−2と同様の方法で比較例5−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−1と同様の方法で比較例6−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−2と同様の方法で比較例6−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−1と同様の方法で比較例7−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−2と同様の方法で比較例7−2のキャリアテープ紙を作製した。
(キャリアテープ用原紙6)
表、裏層の原料の配合において、ポリエチレン系合成パルプ(商品名:SWP E790、三井化学社製;融点135℃)40部とN−BKP60部とからなるCSF500mlのパルプスラリーに変更し、中層の原料の配合において、ポリエチレン系合成パルプ(商品名:SWP E790、三井化学社製;融点135℃)20部とN−BKP80部とからなるCSF500mlのパルプスラリー変更した以外はキャリアテープ用原紙1と同様の方法でキャリアテープ用原紙6を抄造した。
(比較例8−1,8−2,9−1,9−2,10−1,10−2)
キャリアテープ用原紙6を使用し、比較例1−1と同様の方法で比較例8−1のキャリアテープ紙を作製し、比較例1−2と同様の方法で比較例8−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−1と同様の方法で比較例9−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−2と同様の方法で比較例9−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−1と同様の方法で比較例10−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−2と同様の方法で比較例10−2のキャリアテープ紙を作製した。
(キャリアテープ用原紙7)
表、裏層の原料の配合において、ポリエチレン系合成パルプを配合せずに、N−BKP100部からなるCSF500mlのパルプスラリーに変更し、中層の原料の配合において、ポリエチレン系合成パルプを配合せずに、N−BKP100部からなるCSF500mlのパルプスラリーに変更した以外はキャリアテープ用原紙1と同様の方法でキャリアテープ用原紙7を抄造した。
(比較例11−1,11−2,12−1,12−2,13−1,13−2)
キャリアテープ用原紙7を使用し、比較例1−1と同様の方法で比較例11−1のキャリアテープ紙を作製し、比較例1−2と同様の方法で比較例11−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−1と同様の方法で比較例12−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−2と同様の方法で比較例12−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−1と同様の方法で比較例13−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−2と同様の方法で比較例13−2のキャリアテープ紙を作製した。
(キャリアテープ用原紙8)
原紙の抄造において、表層坪量を80g/mから139g/mに変更し、中層坪量を200g/mから336g/mに変更し、裏層坪量を80g/mから139g/mに変更し、紙厚を0.41mmから0.75mmに変更し、原紙全体の坪量を362g/mから616g/mに変更した以外はキャリアテープ用原紙7と同様の方法でキャリアテープ用原紙8を抄造した。
(比較例14−1,14−2,15−1,15−2,16−1,16−2)
キャリアテープ用原紙8を使用し、比較例1−1と同様の方法で比較例14−1のキャリアテープ紙を作製し、比較例1−2と同様の方法で比較例14−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−1と同様の方法で比較例15−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−2と同様の方法で比較例15−2のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−1と同様の方法で比較例16−1のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−2と同様の方法で比較例16−2のキャリアテープ紙を作製した。
(キャリアテープ用原紙9)
キャリアテープ用原紙1を使用し、原紙抄造後、紙に非接触のドライヤーにて、150℃で乾燥してキャリアテープ用原紙9を作製した。
(実施例9−1,9−2)
キャリアテープ用原紙9を使用し、比較例1−1と同様の方法で実施例9−1のキャリアテープ紙を作製し、比較例1−2と同様の方法で実施例9−2のキャリアテープ紙を作製した。
このようにして得られたキャリアテープ紙において、成形加工適性及びチップ状電子部品の収容及び取り出し適性をそれぞれ下記の方法で評価した。また、実施例及び比較例で抄造したキャリアテープ用原紙を使用して別途キャリアテープ紙を作製し、寸法安定性を下記の方法で評価した。それぞれの評価結果は表1又は表2に示した
(1)凹部形成適性:
得られたキャリアテープ紙の凹部内壁の繊維状の毛羽の出具合を目視で観察した。評価は次に示す評価基準に基づいて行った。
○:繊維状の毛羽の発生はほとんど無し。
△:繊維状の毛羽の発生がわずかに有り、実用に耐えない。
×:繊維状の毛羽の発生がかなり有り、実用に耐えない。
(2)角穴形成適性:
得られたキャリアテープ紙の内壁の繊維状の毛羽の出具合を目視で観察した。評価は次に示す評価基準に基づいて行った。
○:繊維状の毛羽の発生はほとんど無し。
△:繊維状の毛羽の発生がわずかに有り、実用に耐えない。
×:繊維状の毛羽の発生がかなり有り、実用に耐えない。
(3)凹部へのチップ状電子部品の収納及び取り出し適性:
凹部形成適性の欄で記載した方法で得たキャリアテープ紙をチップ状電子部品の自動収納用装置に通してチップ状電子部品の収納試験を実施し、次いでチップ状電子部品を収納せしめたキャリアテープ紙にトップ側カバーテープを貼合した後、チップ状電子部品の自動取り出し装置を通してチップ状電子部品の取り出し試験を実施した。評価は次に示す評価基準に基づいて行った。
○:チップ状電子部品の収納及び取り出し不具合の発生はほとんど無し。
△:チップ状電子部品の収納及び取り出し不具合の発生がわずかに有り、実用に耐えない。
×:チップ状電子部品の収納及び取り出し不具合の発生がかなり有り、実用に耐えない。
(4)角穴へのチップ状電子部品の収納及び取り出し適性:
角穴形成適性の欄で記載した方法で得たキャリアテープ紙にボトム側カバーテープを貼合した後、チップ状電子部品の自動収納用装置に通してチップ状電子部品の収納試験を実施し、次いでチップ状電子部品を収納せしめたキャリアテープ紙にトップ側カバーテープを貼合した後、チップ状電子部品の自動取り出し装置を通してチップ状電子部品の取り出し試験を実施した。評価は次に示す評価基準に基づいて行った。
○:チップ状電子部品の収納及び取り出し不具合の発生はほとんど無し。
△:チップ状電子部品の収納及び取り出し不具合の発生がわずかに有り、実用に耐えない。
×:チップ状電子部品の収納及び取り出し不具合の発生がかなり有り、実用に耐えない。
(5)寸法安定性:
[水中試験用のキャリアテープ紙の作製]
(比較例1−3)
キャリアテープ用原紙1を湿度50%RHの条件下で23℃としてから、幅15mm、長さ150mmで裁断した。裁断は長手方向が横目となるように行った。このようにして比較例1−3のキャリアテープ紙を作製した。
(実施例1−3)
キャリアテープ用原紙1を幅20mm、長さ200mmで裁断してシートを得た。裁断は、長手方向が横目となるよう行った。次に、得られたシートを150℃に加熱された状態とした。次に、シートを湿度50%RHの条件下で23℃まで冷ましてから、幅15mm、長さ150mmで裁断した。裁断は長手方向が横目となるように行った。このようにして、実施例1−3のキャリアテープ紙を作製した。
(実施例2−3)
キャリアテープ用原紙1を幅20mm、長さ200mmで裁断してシートを得た。裁断は、長手方向が横目となるよう行った。次に、得られたシートの表面に、150℃に加熱された状態の縦1mm、横0.5mmの金型を、実施例2−1又は2−2のキャリアテープ紙で形成した凹部又は角穴の間隔と同じ間隔で接触させた。このとき、凹部又は角穴は形成しないが、金型を接触させた部分で合成パルプを熱溶融させた。次に、シートを湿度50%RHの条件下で23℃まで冷ましてから、幅15mm、長さ150mmで裁断した。裁断は長手方向が横目となるように行った。このようにして、実施例2−3のキャリアテープ紙を作製した。
(比較例2−3、実施例3−3,4−3)
キャリアテープ用原紙2を使用し、比較例1−3と同様の方法で比較例2−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−3と同様の方法で実施例3−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−3と同様の方法で実施例4−3のキャリアテープ紙を作製した。
(比較例3−3、実施例5−3,6−3)
キャリアテープ用原紙3を使用し、比較例1−3と同様の方法で比較例3−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−3と同様の方法で実施例5−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−3と同様の方法で実施例6−3のキャリアテープ紙を作製した。
(比較例4−3、実施例7−3,8−3)
キャリアテープ用原紙4を使用し、比較例1−3と同様の方法で比較例4−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−3と同様の方法で実施例7−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−3と同様の方法で実施例8−3のキャリアテープ紙を作製した。
(比較例5−3,6−3,7−3)
キャリアテープ用原紙5を使用し、比較例1−3と同様の方法で比較例5−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−3と同様の方法で比較例6−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−3と同様の方法で比較例7−3のキャリアテープ紙を作製した。
(比較例8−3,9−3,10−3)
キャリアテープ用原紙6を使用し、比較例1−3と同様の方法で比較例8−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−3と同様の方法で比較例9−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−3と同様の方法で比較例10−3のキャリアテープ紙を作製した。
(比較例11−3,12−3,13−3)
キャリアテープ用原紙7を使用し、比較例1−3と同様の方法で比較例11−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−3と同様の方法で比較例12−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−3と同様の方法で比較例13−3のキャリアテープ紙を作製した。
(比較例14−3,15−3,16−3)
キャリアテープ用原紙8を使用し、比較例1−3と同様の方法で比較例14−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例1−3と同様の方法で比較例15−3のキャリアテープ紙を作製し、実施例2−3と同様の方法で比較例16−3のキャリアテープ紙を作製した。
(実施例9−3)
キャリアテープ用原紙9を使用し、比較例1−3と同様の方法で実施例9−3のキャリアテープ紙を作製した。
[水中伸度試験]
得られた水中伸度試験用のキャリアテープ紙について、J.TAPPI 紙パルプ試験方法No27「紙及び板紙−水中伸度試験方法」に準拠して、横目の水中伸度であるキャリアテープ紙の長手方向の水中伸度を求めた。評価は次に示す評価基準に基づいて行った。
○:水中伸度(%)が0以上2.0未満で実用上問題なし。
×:水中伸度(%)が2.0以上で実用に耐えない。
Figure 2007261593
Figure 2007261593
いずれのキャリアテープ用原紙を使用しても、加熱処理を行なわなかった場合は、凹部又は角穴の内壁において繊維状の毛羽の発生がほとんど無いキャリアテープ紙とはならなかった。凹部又は角穴の内壁において繊維状の毛羽の発生を抑えるためには、キャリアテープ紙の全体若しくは一部分を、凹部又は角穴を形成する前或いは凹部又は角穴を形成する際に、合成パルプの融点以上の温度に加熱することが好ましい。
次に、加熱処理を行った場合、凹部を形成した場合と角穴を形成した場合で、その内壁における繊維状の毛羽の発生具合及びチップ状電子部品の収容及び取り出し適性にほとんど差がなかった。そのため、加熱処理を行った実施例1−1、1−2及び1−3について以下、実施例1とまとめて記載する。他の実施例及び比較例についても同様とする。
実施例1,2,3,4,5,6,7,8及び9では、凹部又は角穴のいずれの内壁においても繊維状の毛羽の発生はほとんど無かった。また、凹部又は角穴のいずれを形成した場合も、チップ状電子部品の収容及び取り出し不具合の発生もほとんど無かった。また、寸法安定性も実用上問題なかった。
比較例6及び7では、全層における木材パルプの配合率が50質量%以下のキャリアテープ用原紙を使用しているため、包装容器リサイクル法に対応せず、チップ状電子部品の収容及び取り出し適性に問題があった。
比較例12,13,15及び16では、全層における木材パルプの配合率が50質量%超のキャリアテープ用原紙を使用したが、凹部又は角穴のいずれの内壁においても繊維状の毛羽の発生がかなりあり、実用に耐えなかった。合成パルプを含有していないキャリアテープ用原紙を使用した場合は、凹部又は角穴のいずれの内壁においても繊維状の毛羽の発生を少なく抑えることができなかった。
比較例9及び10では、全層における木材パルプの配合率が50質量%超で、合成パルプを含有しているキャリアテープ用原紙を使用したが、凹部又は角穴のいずれの内壁においても繊維状の毛羽の発生がかなりあり、実用に耐えなかった。表層及び裏層における合成パルプの配合率が大きく、中層における合成パルプの配合率が小さいキャリアテープ用原紙を使用した場合は、凹部又は角穴のいずれの内壁においても繊維状の毛羽の発生を少なく抑えることができなかった。
実施例の結果が示す通り、N−BKPと合成パルプを主体として含有させ、N−BKPと合成パルプのそれぞれの配合率を各層ごとに異なった配合率とすることによって、薄型としても、凹部又は角穴の内壁における繊維状の毛羽の発生がほとんど無く、寸法精度の高いキャリアテープ紙とすることができた。そして、このキャリアテープ紙を使用することで、チップ状電子部品の収容及び取り出し不具合をほとんど発生させないことができた。
特許文献6の実施例8では、中間層として、パルプスラリー40部に熱溶融繊維60部を混合して使用しており、そのキャリアテープ素材は、熱溶融繊維を比較的多量に含ませたため、コシが無く、パンチング加工時やエンボス加工時に歪みが発生したとの結果が得られている。一方、本実施例5及び6では、中層の合成パルプの配合率が70質量%であるが、チップ状電子部品の収容及び取り出しの不具合をほとんど発生せず、十分なコシの強さがあったと考えられる。本実施例5及び6のキャリアテープ紙は、木材パルプとしてN−BKPのみを含有しているため、十分なこしの強さが得られたと考えられる。
本実施形態に係るチップ状電子部品用キャリアテープ紙の平面図である。 図1におけるA−A’線の破断面図であり、(a)はパンチング加工によって角穴が形成された場合、(b)はエンボス加工によって凹部が形成された場合を示す。
符号の説明
1 多層抄き板紙
1a 表層
1b 中層
1c 裏層
3 角穴等
3a 角穴
3b 凹部
4 内壁
4a 表層の内壁
4b 中層の内壁
4c 裏層の内壁
5 丸穴
6 底
7a 裏層側の表面
7b 表層側の表面
10 チップ状電子部品
12 ボトムテープ
15 トップテープ
16 所定間隔
20 空間
100,100a,100b チップ状電子部品用キャリアテープ紙

Claims (5)

  1. 木材パルプの配合率が紙質量を基準として50質量%より大きく、表層、中層及び裏層を有する多層抄き板紙からなり、チップ状電子部品の運搬のための、該チップ状電子部品の収納用の角穴又は凹部が所定間隔をおいて形成されているチップ状電子部品用キャリアテープ紙において、
    前記多層抄き板紙は、JIS P 8118:1998「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」で規定される厚さが1.10mm以下で、針葉樹晒クラフトパルプと熱溶融性の合成パルプを主体として含有し、且つ、前記表層及び前記裏層における前記合成パルプの配合率が前記表層若しくは前記裏層の全パルプ質量を基準としていずれも0質量%を超えて30質量%未満で、前記中層における前記合成パルプの配合率が前記中層の全パルプ質量を基準として30質量%以上100質量%未満であることを特徴とするチップ状電子部品用キャリアテープ紙。
  2. 前記合成パルプは、融点が100〜180℃である多分岐状のポリオレフィン系合成パルプであることを特徴とする請求項1に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ紙。
  3. 前記角穴又は前記凹部は、前記多層抄き板紙が前記合成パルプの融点以上の温度に加熱された状態で、パンチング加工によって形成された角穴であるか或いはエンボス加工によって形成された凹部であることを特徴とする請求項1又は2に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ紙。
  4. 前記角穴又は前記凹部は、角穴形成打ち抜き機の先端部又は凹部形成エンボス機の先端部を前記合成パルプの融点以上の温度に加熱した状態で、パンチング加工することによって形成された角穴であるか或いはエンボス加工することによって形成された凹部であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ紙。
  5. 前記角穴又は前記凹部は、前記多層抄き板紙が前記合成パルプの融点以上の温度に加熱された後、融点未満の温度まで降温された状態で、パンチング加工によって形成された角穴であるか或いはエンボス加工によって形成された凹部であることを特徴とする請求項1、2又は4に記載のチップ状電子部品用キャリアテープ紙。
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