JP2007254257A - ジルコニアゾルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
水酸化ジルコニウム、酸及び水からなるスラリーを加熱することによりジルコニアゾルを製造する方法において、ジルコニア粒子の共存下で行うことを特徴とし、好ましくは、(ジルコニア粒子に含まれるジルコニウム)/(水酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウム)のモル比を0.01以上とする。
【選択図】なし
Description
従来ジルコニアゾルは平均粒子径として数nm〜500nm程度までのものが得られることが公知であるが、任意の平均粒子径を持つ単分散なジルコニアゾルの工業的に利用可能な製造方法が十分に開示されているとはいえない。
特許文献1には、水酸化ジルコニウムと酸とを含むスラリー状の混合物の酸濃度を制御して加熱処理することを特徴とする平均粒径0.05〜0.3μmの水和ジルコニアゾルの製造方法が記載されている。
この方法によればさまざまな平均粒子径のジルコニアゾルを得ることが可能だが、このジルコニアゾルの単分散性は十分とはいえない。
さらに、所望の平均粒子径によって酸濃度を変える必要があるため生成するジルコニアゾルの酸濃度が一定しないことも問題である。
また、ジルコニアゾルの生成に非常に長時間を要する点で非効率である。
なお、上記特許文献2では加水分解に先立ちジルコニウム塩水溶液の調整のために、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリの添加、または、陰イオン交換樹脂によるジルコニウム塩の陰イオンの一部の水酸イオンへの置換が必要であることが述べられている。
このアルカリの添加は生成するゾルの不純物が多くなるため好ましくなく、陰イオン交換樹脂による置換は工程が煩雑になり、かつ、専用の設備が必要となる面で不利である。
この方法は工程が煩雑であり非効率である。また、粉砕によって得られる粒子は多分散となる傾向が強く好ましくない。
この方法ではジルコニウム塩を加水分解するため生成するゾルに酸などの不純物が多く含まれるという問題がある。また、ゾルの平均粒子径100〜300nmの範囲において特定の平均粒子径を狙うにはこの方法の精度は低い。
即ち本発明は下記のジルコニアゾルの製造方法に係る。
(1)水酸化ジルコニウム、酸及び水からなるスラリーを加熱することによりジルコニアゾルを製造する方法において、ジルコニア粒子の共存下で行うことを特徴とするジルコニアゾルの製造方法。
(2)(ジルコニア粒子に含まれるジルコニウム)/(水酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウム)のモル比が0.01以上であることを特徴とする前記(1)記載のジルコニアゾルの製造方法。
(3)ジルコニア粒子の平均粒子径が30〜300nmであることを特徴とする前記(1)または前記(2)記載のジルコニアゾルの製造方法。
(4)ジルコニア粒子がジルコニアゾルであることを特徴とする前記(1)〜前記(3)いずれかに記載のジルコニアゾルの製造方法。
(5)スラリー中に含まれる酸濃度が0.1〜1.5N(規定)、好ましくは0.3〜1.0Nであることを特徴とする前記(1)1〜前記(4)いずれかに記載のジルコニアゾルの製造方法。
(6)酸が硝酸であることを特徴とする前記(1)〜前記(5)いずれかに記載のジルコニアゾルの製造方法。
また、本発明の製造方法によって作製されたジルコニアゾルは不純物イオンが少ないことやジルコニウム濃度が高いことも特徴であり、用途によっては不純物を取り除くことなくそのままの状態で適用できるといった高効率、低環境負荷であるという優位性もある。
なお、本発明において平均粒子径とは動的光散乱法で測定した粒子径分布の累積頻度が50体積%となる粒子径を言う。
また、本発明でいう水酸化ジルコニウム、ジルコニアとは一般的なものであり、ハフニアを含めた10重量%以下の不純物金属化合物を含むものである。
本発明は、水酸化ジルコニウム、酸及び水からなるスラリーを加熱することによりジルコニアゾルを製造する方法において、ジルコニア粒子の共存下で行うことを特徴とする。具体的には、特に限定されるものではないが、以下の手順で行うことが好ましい。
まず、種結晶であるジルコニア粒子(以下、単にジルコニア粒子という)と水酸化ジルコニウムと酸および水からなるスラリーを調製する。
すなわち、反応容器に必要量の水を入れ、それを適度に攪拌しながら、次に所定量の水酸化ジルコニウムを投入した後、酸、ジルコニア粒子の順で添加することで上記スラリーを調製する。水酸化ジルコニウム、酸、水、ジルコニア粒子の投入順序は特に限定されないが、作業性を考慮すると上記が好ましい。
ジルコニア粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、30〜300nmが好ましい。また、単分散である必要があるためジルコニアゾルを使用することが好ましい。使用するジルコニアゾルは一般的な方法によって作製したもの、あるいは本発明の方法によって作製したものでよい。例えば、ジルコニウム塩の水溶液の加水分解によってジルコニアゾルを作製することができる。
ジルコニウム塩類としては、特に限定されず、塩基性硫酸塩、オキシ塩化物、硝酸塩、酢酸塩、その他有機酸塩等が例示され、オキシ塩化物が安価で純度が高いという点で好ましい。
上記ジルコニア粒子として上記スラリーに加えられるスラリーやジルコニアゾルの酸の含有量にかかわらず、最終的にジルコニア粒子と水酸化ジルコニウムと酸および水からなるスラリーの酸濃度が0.1〜1.5N(規定)、好ましくは0.3〜1.0Nとなるように酸を添加する。
上記スラリーの酸濃度0.1〜1.5Nというのは、水酸化ジルコニウムが効率よく結晶化する量であり、この範囲を外れた場合、結晶化反応の速度が低下しジルコニアゾルの製造効率が著しく低下するため好ましくない。
酸濃度が1.5Nを超える、過剰な酸を用いることは水酸化ジルコニウムの結晶化効率が悪いだけでなく、コスト、環境負荷、不純物を増大させるため好ましくない。
なお、1.5N(規定)の酸とは、硝酸、塩酸等のプロトンを1個放出する酸の場合は1.5mol/Lと同義であり、硫酸等の2個のプロトンを放出する酸では0.75mol/Lと同義である。
保持温度が100℃以下ではオートクレーブのような特別な設備を使用せずジルコニアゾルを製造できる点で有利だが、保持温度が100℃より高くても特に問題とならない。80℃未満ではジルコニアゾルの生成速度が著しく低下するため好ましくない。
保持時間は特に限定されず、ジルコニアゾルが生成すれば保持を終了すればよく、保持温度100℃において12〜48時間の保持が適当な条件として挙げられる。
生成したジルコニアゾルの分散媒は水であるが、この分散媒の一部乃至全部を有機溶媒とすることもでき、この有機溶媒に可溶な成分がジルコニアゾルの安定性を損なわない程度にふくまれていても構わない。上記有機溶媒としてはメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、エーテル等が例示される。
上記(ジルコニア粒子に含まれるジルコニウム)/(水酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウム)のモル比および種結晶として添加するジルコニア粒子の平均粒子径によって生成するジルコニアゾルの平均粒子径を制御できる。
後述の実施例に示すように、ジルコニア粒子としてジルコニアゾルを使用し、種々の条件で本発明の方法によってジルコニアゾルを作製した。なお、ジルコニアゾルの作製に用いたスラリーの酸濃度は、全て0.7N(0.7mol/L硝酸)であった。
この結果及び下記で記載する理論平均粒子径の計算結果を、(ジルコニア粒子に含まれるジルコニウム)/(水酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウム)のモル比と生成したジルコニアゾルの平均粒子径及びその理論値との関係として表すと図1の通りとなる。
先ず、生成するジルコニアゾルの平均粒子径は、下記の▲1▼〜▲3▼のジルコニアの存在比と平均粒子径の影響を受けると考えられる。
▲1▼水酸化ジルコニウムからジルコニアの核が生成しそれが成長したジルコニア
▲2▼初期添加されるジルコニア粒子が成長したジルコニア
▲3▼初期添加されるジルコニア粒子同士が合体したジルコニア
そして、(ジルコニア粒子に含まれるジルコニウム)/(水酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウムの)のモル比によって、上記▲1▼〜▲3▼のジルコニアの存在比と平均粒子径が変化することが考えられる。
この理論値計算においては、ジルコニア粒子が密度一定の完全な球体であり、所定の平均粒子径をもつ単分散粒子で、ジルコニアゾルの生成前後でその個数が変化せず、その成長はすべての粒子に対し均等に起こると仮定した。
上記ジルコニア粒子の体積が11倍になるとき、平均粒子径は11の立方根をとって2.2倍となり、成長し終えた上記ジルコニア粒子の平均粒子径の理論値は77nm×2.2=171nmと算出される。
初期添加されたジルコニア粒子の平均粒子径が77nm、(ジルコニア粒子に含まれるジルコニウム)/(水酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウム)のモル比が0.1のとき、生成したジルコニアゾルの平均粒子径は107nmで、理論値は171nmであった。
このことから、上記▲1▼が比較的多く生成したと推測される。初期添加されたジルコニア粒子の平均粒子径が153nmの場合も同様の傾向であった。
このことから、上記▲3▼の生成が活発であったと推測される。初期添加されたジルコニア粒子の平均粒子径が153nmの場合も同様の傾向であった。
生成するジルコニアゾルの平均粒子径は上記▲1▼の存在比が増えれば小さくなり、上記▲3▼が増えると大きくなる。
以上より、(ジルコニア粒子に含まれるジルコニウム)/(水酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウム)のモル比によって様々な平均粒子径のジルコニアゾルを得ることが可能といえる。
初期添加されたジルコニウム粒子が成長する過程では個々のジルコニア粒子の粒子径比は小さくなる傾向にある。それは個々の粒子についてみた場合、粒子径の小さい粒子でも大きい粒子でも成長する粒子径の絶対値が同じとなるため、小さい粒子ほど成長倍率が高くなり結果的に大きい粒子と小さい粒子の比は小さくなり単分散化する。
該スラリーを100℃で40時間保持してジルコニアゾルを得た。該ジルコニアゾルの平均粒子径は107nmであった。
Claims (6)
- 水酸化ジルコニウム、酸及び水からなるスラリーを加熱することによりジルコニアゾルを製造する方法において、ジルコニア粒子の共存下で行うことを特徴とするジルコニアゾルの製造方法。
- (ジルコニア粒子に含まれるジルコニウム)/(水酸化ジルコニウムに含まれるジルコニウム)のモル比が0.01以上であることを特徴とする請求項1記載のジルコニアゾルの製造方法。
- ジルコニア粒子の平均粒子径が30〜300nmであることを特徴とする請求項1または2記載のジルコニアゾルの製造方法。
- ジルコニア粒子がジルコニアゾルであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のジルコニアゾルの製造方法。
- スラリー中に含まれる酸濃度が0.1〜1.5N(規定)、好ましくは0.3〜1.0Nであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のジルコニアゾルの製造方法。
- 酸が硝酸であることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載のジルコニアゾルの製造方法。
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