JP2007250277A - 燃料電池の運転停止装置及び燃料電池の運転停止方法 - Google Patents

燃料電池の運転停止装置及び燃料電池の運転停止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】燃料極を減圧している途中に水素ストイキ不足の発生を回避する燃料電池の運転停止装置及び方法を提供する。
【解決手段】燃料電池3が発電した電力を取り出すことによって燃料極を減圧する減圧部41と、燃料極を減圧している途中で、燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測する水素不足予測部42と、水素量の不足が予測される時、燃料極内の水素置換を促進する水素置換促進部43とを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、運転を停止する際に電流を取り出して残水素を消費する燃料電池の運転停止装置及びその方法に関する。
従来から、燃料電池自動車等に搭載される燃料電池として、アノード(燃料極)に燃料ガスとして水素ガスを供給し、カソード(酸化剤極)に酸化剤ガスとして酸素を含む空気を供給して発電を行うものが知られている。
この燃料電池の発電を停止する時に、燃料電池のカソードから排出される排出ガスをコンプレッサで再循環してカソードに供給し、排出ガス中の残留酸素により発電を継続し、発電電圧が所定値以下になった時に発電を停止する燃料電池の発電停止方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−115317号公報
上記のような運転停止方法(VLC)においては、排出ガス中の残留酸素により発電を継続する時、アノード内を負圧にする。これにより、アノード内から水素ガスが漏れることを防ぎ、水素安全を確保している。
アノード内を負圧にするためには燃料電池から電流を取り出してアノード内に残留する水素を消費しなければならない。しかし、燃料電池システムを起動した後の一定期間は、アノードの水素置換が不十分であるため、水素ストイキが不足してしまい、燃料電池の劣化原因となる。
上記課題を解決するために、本発明の第1の特徴は、水素が燃料極に供給され、酸素が酸化剤極に供給されて発電する燃料電池の運転を停止する装置であって、燃料電池が発電した電力を取り出すことによって燃料極を減圧する減圧手段と、燃料極を減圧している途中で、燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測する水素不足予測手段と、水素量の不足が予測される時、燃料極内の水素置換を促進する水素置換促進手段とを備える燃料電池の運転停止装置であることである。
本発明の第2の特徴は、水素が燃料極に供給され、酸素が酸化剤極に供給されて発電する燃料電池の運転停止方法であって、燃料電池が発電した電力を取り出すことによって燃料極を減圧する段階と、燃料極を減圧している途中で、燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測する段階と、水素量の不足が予測される時、燃料極内の水素置換を促進する段階とを備える燃料電池の運転停止方法であることである。
本発明によれば、燃料極を減圧している途中で、燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測して、燃料極内の水素置換を促進することにより、燃料極を減圧している途中に水素ストイキ不足の発生を回避する燃料電池の運転停止装置及び運転停止方法を提供することができる。
以下図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付している。
<燃料電池システム>
図1を参照して、本発明の実施の形態に係わる燃料電池の運転停止装置を含む燃料電池システム全体の構成を示すブロック図である。
燃料電池システムは、水素を含む燃料ガス(水素ガス)が燃料極に供給され、酸素を含む酸化剤ガス(空気)が酸化剤極に供給されて発電する燃料電池スタック(燃料電池)3と、燃料電池スタック3へ水素ガスを供給する燃料ガス系と、酸素を供給する酸化剤ガス系と、燃料電池スタック3が発電した電力を取り出す電力制御系と、発電に伴い発熱する燃料電池スタック3を冷却する冷却系と、これらの系の動作を制御することにより燃料電池システム全体を制御するコントローラ13とを備える。
具体的には、燃料ガス系として、水素ガスを高圧状態で貯蔵する水素タンク23と、水素タンク23内の圧力から燃料電池スタック3へ供給する水素ガスの圧力まで減圧する水素圧力制御弁14と、燃料電池スタック3から排出された水素ガスを水素ガス供給口へ循環させる水素循環流路2と、水素循環流路2内の水素ガスを上流側へ送り出す水素循環ポンプ25と、水素循環流路2内の水素ガスを水素タンク23からの水素ガスに混合させるエゼクタ1と、燃料電池スタック3の燃料極内のガス及び液体を排出する水素パージ弁4と、水素入口温度センサ8と、水素入口圧力センサ9と、タンク圧力センサ21と、タンク温度センサ22とを備える。
水素タンク23から供給される水素ガスは水素圧力制御弁14を経由して、エゼクタ1に供給される。エゼクタ1において、水素循環流路2に設置された水素循環ポンプ25によって循環されてきた水素ガスが、水素タンク23から供給される水素ガスと混合される。この混合水素ガスが、燃料電池スタック3に供給される。燃料電池スタック3の入口での水素ガスの温度と圧力はそれぞれ、水素入口温度センサ8及び水素入口圧力センサ9で測定される。水素圧力制御弁14の開度は、水素入口圧力センサ9で測定される圧力に基づいてコントローラ13が制御する。通常は水素パージ弁4は閉じており、燃料電池スタック3から排出される水素ガスを水素循環流路2に流して水素ガスを循環させる。また、水素タンク23内の温度及び圧力はそれぞれタンク圧力センサ21、タンク温度センサ22によって測定される。
燃料極の内部を水素ガスで置換することである水素置換を促進したい(窒素濃度を下げたい)場合や、燃料電池スタック3内に水溢れ(以下「フラッディング」という)等が発生した場合や、燃料電池スタック3の運転圧を低下させる場合などには、水素パージ弁4を開けて水素循環流路2および燃料電池スタック3に存在する水素を排出する。排出された水素は後述する空気圧力制御弁12を通過した空気によって希釈され可燃濃度以下の水素濃度に希釈され、燃料電池システムの外部へ排出する。
酸化剤ガス系として、空気を圧縮して送出するコンプレッサ6と、送出された空気を燃料電池スタック3の酸化剤極まで導く空気供給流路7と、燃料電池スタック3から排出された空気を外部へ排出する排空気流路11と、燃料電池スタック3内の空気の圧力を調整する空気圧力制御弁12と、燃料電池スタック3の入口での空気の圧力を測定する空気入口圧力センサ15と、燃料電池スタック3の入口での空気の流量を測定する空気流量センサ16とを備える。
酸化剤ガスとしての空気は、コンプレッサ6により供給される。コンプレッサ6により供給された空気は空気流量センサ16で計量された後、燃料電池スタック3へ供給される。燃料電池スタック3入口での空気の圧力は空気入口圧力センサ15で測定され、空気圧力制御弁12で制御される。なお、コンプレッサ6はここには図示しない電圧センサと電流センサを内蔵している。
本実施例では燃料電池スタック3の運転圧力(水素ガス及び空気の圧力)は可変圧である。即ち、燃料電池スタック3から取り出す出力や温度によって圧力を適切に設定する。
電力制御系として、燃料電池スタック3から電力を取り出す電力制御装置24と、電力制御装置24が取り出す電流値を測定する燃料電池スタック取出電流センサ17と、電力制御装置24が取り出す電圧値を測定する燃料電池スタック電圧センサ18と、
燃料電池スタック3から取り出される出力電流は燃料電池スタック取出電流センサ17で測定され、出力電圧は燃料電池スタック電圧センサ18で測定される。また、燃料電池スタック3から取り出す電力は、電力制御装置24によって制御される。
電力制御装置24は、昇降圧型のDC/DCコンバータであり、燃料電池スタック3と電気負荷の間に配置され、燃料電池スタック3の発電電力を制御する。DC/DCコンバータの昇圧変換と降圧変換とでは、動作させるスイッチング素子がそれぞれ異なっており、スイッチング素子へ加える制御信号のデューティ比に応じて所望の電圧を出力させることができる。昇圧時には、入力電圧以上の電圧を出力するようにスイッチング素子が制御される。また、降圧時には、入力電圧以下の電圧を出力するようにスイッチング素子が制御される。電力制御装置24の出力電流は電力制御装置出力電流センサ31、出力電圧は電力制御装置出力電圧センサ32で測定される。
冷却系として、冷却水温度センサ28と、冷却水循環ポンプと、熱交換器30とを備える。燃料電池スタック3を冷やす冷却水は、冷却水循環ポンプ29により循環され、燃料電池スタック3へ供給されて暖められる。燃料電池スタック3より暖められた冷却水は冷却水温度センサ28にて温度を計測し、熱交換器30にて冷却される。
これらすべてのセンサの出力、および、水素パージ弁4等のアクチュエータ駆動信号、および、電気負荷で使用したい要求ネット電力の情報を伝える信号はコントローラ13に接続されている。
<燃料電池の運転停止装置>
次に、燃料電池システムに含まれる燃料電池スタックの運転を停止する装置(運転停止装置)について説明する。
図2に示すように、本発明の実施の形態に係わる燃料電池の運転停止装置は、コントローラ13の一部分を構成する。つまり、コントローラ13は、燃料電池スタック3が発電した電力を取り出すことによって燃料極を減圧する減圧部41(減圧手段)と、燃料極を減圧している途中で、燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測する水素不足予測部42(水素不足予測手段)と、水素量の不足が予測される時、燃料極内の水素置換を促進する水素置換促進部43(水素置換促進手段)とを備える。
燃料電池スタック3の発電を停止する時に、燃料電池スタック3の酸化剤極から排出される排出ガスをコンプレッサで再循環して酸化剤極に供給し、排出ガス中の残留酸素により発電を継続し、発電電圧が所定値以下になった時に発電を停止する。排出ガス中の残留酸素により発電を継続する時、燃料極内を負圧にする。減圧部41は、燃料極内を負圧にするためには燃料電池スタック3から電流を取り出して燃料極内に残留する水素を消費する。
しかし、燃料電池システムが停止している時、燃料極内は窒素に置換されている。よって、燃料電池システムを起動した直後の一定期間は、燃料極を窒素から水素へ十分に置換されていない。このため、減圧部41が燃料電池スタック3から電流を取り出している最中に、水素ストイキが不足してしまい、燃料電池スタック3が劣化してしまうおそれがある。
そこで、水素不足予測部42が、燃料極を減圧している途中で、燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測して、水素置換促進部43が、燃料極内の水素置換を促進する。これにより、燃料極を減圧している途中に水素ストイキ不足の発生を回避することができる。
水素置換促進部43は、水素置換促進時に、少なくとも電力の取り出しによって燃料極が減圧していく速度を遅らせる量の水素を燃料極に供給する。つまり、水素量の不足が予測される時、燃料極の圧力を下げない、または減圧していく速度を遅くする。或いは燃料極の圧力を上昇させても構わない。具体的には、水素圧力制御弁14を開いて水素圧力を高めればよい。これにより、水素ガスの圧力をできるだけ高い値にすることができる。よって、水素パージ弁4を開けて水素循環流路2および燃料電池スタック3から排出される窒素量が増え、水素置換が促進される。
水素置換促進部43は、水素置換促進時に、燃料極から排出する流体量を増やしてもよい。つまり、水素パージ弁4から排出されるガス量を増やしてもよい。水素パージ弁4を開いている時間を通常よりも長くすればよい。この場合も同様に、水素循環流路2および燃料電池スタック3から排出される窒素量が増え、水素置換が促進される。
水素置換促進部43は、水素置換促進時に、酸化剤極の圧力を上げないか、または上げる速度を遅くしてもよい。具体的には、空気圧力制御弁12をできるだけ開くか、コンプレッサ6の回転数を低くすればよい。水素置換時に酸化剤極内の空気圧力をできるだけ低く抑えることにより、酸化剤極から燃料極への窒素クロスオーバ量を減らすことができ、燃料極の水素置換が促進される。
水素置換促進部43は、水素置換促進時に、燃料電池スタック3から取り出す電力量を増加させないようにしてもよい。つまり、取り出す電流量をできるだけ低く抑えるように電力制御装置24を制御する。これにより、無駄に燃料極内の水素ガスが消費されることを避けることができる。
水素置換促進部43は、燃料極を循環するガスの流量を低下させてもよい。つまり、水素循環ポンプ25の回転数を下げて水素循環流量を下げてもよい。これにより、水素循環ポンプ25の騒音を低減することができる。
燃料電池の運転停止装置は、水素量の不足が予測される時、燃料極の減圧を停止する減圧停止部44(減圧停止手段)を更に備えていても構わない。水素不足が予測される場合、電力制御装置24による電流取り出しを停止して燃料極の減圧を停止することにより、水素ストイキ不足を回避して燃料電池スタック3の劣化を防止できる。
水素不足予測部42は、燃料極内の水素置換を促進することにより、水素量の不足が解消されたか否かを判断し、水素量の不足が解消されたと判断した時、減圧部41は、燃料極の減圧を再開するようにしてもよい。水素不足予測部42は、不足するか否かの判断と同様の或いは異なる基準に基づいて、水素不足解消の判断を実施することができる。これにより、水素不足発生を回避しつつ、効率良く燃料極の減圧を実施することができる。
減圧部41は、燃料極の圧力が大気圧以下になるまで前記燃料極を減圧する。具体的には、水素入口圧力センサ9が測定した圧力に基づいて燃料極の減圧を制御すればよい。水素安全が確保できる圧力まで減圧した上でVLCを実施することができる。
水素不足予測部42は、燃料電池スタック3の運転開始から燃料極の減圧開始までの経過時間に基づいて燃料極内の水素濃度を推測し、この水素濃度に基づいて水素量の不足を予測する。つまり、燃料電池スタック3が発電を開始してからの経過時間が長くなるにしたがって、燃料極内は窒素よりも水素の分圧の方が高くなる。つまり、発電時間に従って水素置換が促進される。よって、この経過時間に基づいて燃料極内の水素濃度を推測することができる。
水素不足予測部42は、水素循環ポンプ25の消費電力に基づいて燃料極内の水素濃度を推測し、この水素濃度に基づいて水素量の不足を予測する。ガスはその種類(元素)が異なれば重さが異なる。よって、同じ流量が水素循環流路2内を流れていても流体の種類により消費電力が異なる。このことから、水素循環ポンプ25の消費電力に基づいて燃料極内の水素濃度を推測ことができる。このように、水素循環ポンプ25が備える既存のアクチュエータやセンサから減圧時の水素不足を予測することができる。
水素不足予測部42は、燃料極内の水素置換を促進した時間に基づいて、水素量の不足が解消されたか否かを判断する。上述したような水素置換促進部43が実施する様々な方法について、その実施時間に応じた水素置換量が実験或いは計算上求めることができる。よって、水素置換を促進した時間に基づいて水素濃度を推測することは可能である。
<燃料電池の運転停止方法>
次に、図3を参照して、図1の燃料電池システムにおける燃料電池の運転停止方法を説明する。これから説明する処理は燃料電池システムの停止時やアイドルストップ時などで燃料極を減圧する際に実施される。
(イ)先ず、S01にて、水素不足予測部42は、燃料電池システムが起動してからアノード減圧を開始するまでの経過時間に基づき、燃料極を減圧する際に水素不足が発生するかどうかを判断する。水素不足発生が予測される場合(S01にてYES)、S02へ進んで水素置換促進部43が水素置換を促進させる。一方、水素不足発生が予測されない場合(S01にてNO)、S08へ進んで減圧部41が燃料極の減圧処理を実施する。あらかじめ実験や机上検討によって、燃料電池システムがどれだけ起動していれば水素置換が行われ、燃料極の減圧時の運転状態で水素不足が発生しないかを得ておくことでS01の推定が可能となる。
(ロ)S02にて、水素パージ弁4を開く。S03にて水素置換促進時の目標水素圧力を設定する。水素置換促進時の目標水素圧力は、燃料電池システムの許容できる最大の圧力をあらかじめ実験や机上検討によって決定する。
(ハ)S04にて水素置換促進時の目標空気圧力を設定する。水素置換促進時の目標空気圧力は、燃料電池システムの許容できる最低の圧力をあらかじめ実験や机上検討によって決定する。
(ニ)S05にて水素置換促進時の目標取り出し電力を設定する。水素置換促進時の目標取り出し電力は、燃料電池システムの許容できる最低の値をあらかじめ実験や机上検討によって決定する。
(ホ)S06にて水素置換促進時における水素循環ポンプ25の目標回転数を設定する。水素置換促進時の目標回転数はシステムの許容できる最低の値をあらかじめ実験や机上検討によって決定する。
(ヘ)S07にて、水素不足予測部42は、水素置換促進を実施している時間に基づいて、燃料極を減圧する際に水素不足が発生するかどうかを判断する。これはS02〜S06で設定する燃料電池の状態量をどれだけ維持すると、どれだけの水素置換が行われるかをあらかじめ実験や机上検討によって得ておくことで推定できる。このように、水素不足予測部42は、S02〜S06で燃料極内の水素置換を促進することにより、水素量の不足が解消されたか否かを判断する。水素量の不足が解消されたと判断した時(S07にてNO)、S08に進み、減圧部41は、燃料極の減圧を再開する。
(ト)S08にて、燃料極の減圧時の目標水素圧力を設定する。燃料極減圧時の目標水素圧力は最終的に到達させたい水素圧力を設定する。S09にて燃料極減圧時の水素循環ポンプ25の目標回転数を設定する。水素置換促進時の水素循環ポンプ25の目標回転数はシステムの許容できる最高の値をあらかじめ実験や机上検討によって決定する。
(チ)S10にて燃料極減圧時の目標取り出し電力を設定する。燃料極減圧時の目標取り出し電力はあらかじめ実験や机上検討によって決定する。S11にて水素圧力が燃料極減圧時の目標水素圧力相当になったかどうか、つまり燃料極の減圧が完了したかどうかを判断する。目標水素圧力まで減圧が完了している場合には燃料極の減圧を終了する。
なお、S03及びS08にて設定した目標水素圧力は水素入口圧力との偏差に基づいて、フィードバック制御により水素圧力制御弁14の指令開度を決定する。なお、このフィードバック制御は、PI制御やモデル規範型制御など一般的によく知られている方法により構成することができる。また、ここで算出された水素圧力制御弁14の指令開度は、コントローラ13から水素圧力制御弁14の駆動回路に対して指示されて、水素圧力制御弁14が指令開度に従って駆動される。
S04にて設定した目標空気圧力は空気入口圧力との偏差に基づいて、フィードバック制御により空気圧力制御弁12の指令開度を決定する。なお、このフィードバック制御は、PI制御やモデル規範型制御など一般的によく知られている方法により構成することができる。また、ここで算出された空気圧力制御弁12の指令開度は、コントローラ13から空気圧力制御弁12の駆動回路に対して指示されて、空気圧力制御弁12が指令開度に従って駆動される。
S05及びS10にて設定した目標取り出し電力は、コントローラ13から電力制御装置24に対して指示され、燃料電池スタック3から電力が取り出される。
S06及びS09にて設定した水素循環ポンプ25の目標回転数は、コントローラ13から水素循環ポンプ25の駆動回路に対して指示され、水素循環ポンプ25が目標回転数に従って駆動される。
本発明の実施の形態によれば、以下の作用効果が得られる。作用効果を図4(a)及び図4(b)のタイムチャートを参照して説明する。
燃料電池システムを停止状態で放置していると、燃料極内は空気で置換される。この状態で燃料電池システムを起動して燃料極への水素供給を開始すると、燃料電池スタック3の触媒で酸素と水素の反応が発生し、燃料極内の酸素はすぐに消費される。このため、図4(a)に示すように、燃料電池システムを起動した直後の燃料極は、水素と窒素が支配的な成分となっている。ここで、水素パージ弁4が開かれていれば徐々に窒素分圧は下がっていき、燃料極は水素で置換されることになる。しかし、図4(a)の「システム停止」の時から、十分に水素置換を行う前に燃料極を減圧する処理を開始してしまうと、燃料極内の水素ストイキが不足してしまうこととなる。なお、PHは、燃料極を減圧する時の目標水素圧力である。
これを解消するため、図4(b)に示すように、燃料極減圧時に水素不足が予測される場合には水素置換を促進させ、水素置換が十分に行われた後に燃料極の減圧を開始する。このため、燃料極を減圧する際に水素不足が生じることがない。
つまり、水素不足予測部42が、燃料極を減圧している途中で、燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測して、水素置換促進部43が、燃料極内の水素置換を促進する。これにより、燃料極を減圧している途中に水素ストイキ不足の発生を回避することができる。
以下に、水素置換を促進する方法についてそれぞれの効果を記述する。
水素圧力を上げる。燃料極内の水素圧力が高ければ高いほど水素パージ弁4から排出される流体の流量が増加し、結果、燃料極内の窒素分圧が下がり、水素分圧が上がる速度が向上し、水素置換が促進されることとなる。しかしながら、燃料極の圧力は燃料電池システムが許容できる上限があり、それを超えた圧力を供給することはできない。
水素パージ弁4から排出されるガス量を増やしてもよい。この場合も同様に、水素循環流路2および燃料電池スタック3から排出される窒素量が増え、水素置換が促進される。
空気圧力を下げる。空気圧力を下げれば下げるほど酸化剤極から燃料極へクロスリークする窒素の量が低下する。結果、燃料極内の窒素量を増加させる要因が減り水素置換が促進されることになる。しかしながら、酸化剤極と燃料極との圧力差は燃料電池システムが許容できる上限があり、それを超えて空気圧力を下げることはできない。
取り出し電力を下げる。取り出し電力は水素置換に何ら寄与しない。このため、水素置換促進時に取り出し電力を下げることで、発電による水素消費を低減させ、燃料電池システムの燃費を向上することができる。
水素循環ポンプ25の回転数を下げる。水素循環ポンプ25の回転数は水素置換に何ら寄与しない。このため、水素循環ポンプ25の回転数を下げることで、水素循環ポンプ25の騒音を低減させることができる。
水素不足が予測される場合、電力制御装置24による電流取り出しを停止して燃料極の減圧を停止することにより、水素ストイキ不足を回避して燃料電池スタック3の劣化を防止できる。
燃料極内の水素置換を促進することにより、水素量の不足が解消されたか否かを判断し、水素量の不足が解消されたと判断した時、燃料極の減圧を再開する。これにより、水素不足発生を回避しつつ、効率良く燃料極の減圧を実施することができる。
燃料極の圧力が大気圧以下になるまで燃料極を減圧する。水素安全が確保できる圧力まで減圧した上でVLCを実施することができる。
燃料電池スタック3の運転開始から燃料極の減圧開始までの経過時間に基づいて燃料極内の水素濃度を推測し、この水素濃度に基づいて水素量の不足を予測する。簡易な方法に基づいて燃料極内の水素濃度を推測することができる。
実施の形態では、水素不足が発生するかどうかを燃料電池システムの起動してから燃料極減圧を開始するまでの経過時間に基づき判断したが、水素循環ポンプ25の消費電力を検出するセンサを設け、この検出結果に基づき判断を行っても良い。水素に比べて窒素は重い気体のため、水素循環ポンプ25を同じ回転数で回していたとしても燃料極に含まれる窒素濃度が高ければ高いほど消費電力が高くなる。この特性をあらかじめ実験や机上検討によって取得することで燃料極の水素濃度を推定し、燃料極減圧時の水素不足が発生するかどうかの判断を行うことが出来る。
燃料極内の水素置換を促進した時間に基づいて、水素量の不足が解消されたか否かを判断する。水素置換を促進した時間という簡単な方法によって水素濃度を推測することができる。
上記のように、本発明は、1つの実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。即ち、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ限定されるものである。
本発明の実施の形態に係わる燃料電池の運転停止装置を含む燃料電池システム全体の構成を示すブロック図である。 図1のコントローラの構成を示すブロック図である。 本発明の実施の形態に係わる燃料電池の運転停止方法を示すフローチャートである。 図4(a)は、燃料電池システムを起動してからシステムを停止し、その直後から燃料極の減圧を開始した場合の燃料極内の水素と窒素の分圧の変化を示すグラフであり、図4(b)は、燃料電池システムを起動してからシステムを停止し、水素置換を促進させてから燃料極の減圧を開始した場合の燃料極内の水素と窒素の分圧の変化を示すグラフである。
符号の説明
1…エゼクタ
2…水素循環流路
3…燃料電池スタック(燃料電池)
4…水素パージ弁
6…コンプレッサ
7…空気供給流路
8…水素入口温度センサ
9…水素入口圧力センサ
11…排空気流路
12…空気圧力制御弁
13…コントローラ
14…水素圧力制御弁
15…空気入口圧力センサ
16…空気流量センサ
17…燃料電池スタック取出電流センサ
18…燃料電池スタック電圧センサ
21…タンク圧力センサ
22…タンク温度センサ
23…水素タンク
24…電力制御装置
25…水素循環ポンプ
28…冷却水温度センサ
29…冷却水循環ポンプ
30…熱交換器
31…電力制御装置出力電流センサ
32…電力制御装置出力電圧センサ
41…減圧部(減圧手段)
42…水素不足予測部(水素不足予測手段)
43…水素置換促進部(水素置換促進手段)
44…減圧停止部(減圧停止手段)

Claims (24)

  1. 水素が燃料極に供給され、酸素が酸化剤極に供給されて発電する燃料電池の運転を停止する装置であって、
    前記燃料電池が発電した電力を取り出すことによって前記燃料極を減圧する減圧手段と、
    前記燃料極を減圧している途中で、前記燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測する水素不足予測手段と、
    前記水素量の不足が予測される時、前記燃料極内の水素置換を促進する水素置換促進手段と
    を備えることを特徴とする燃料電池の運転停止装置。
  2. 前記水素置換促進手段は、少なくとも電力の取り出しによって燃料極が減圧していく速度を遅らせる量の水素を燃料極に供給することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  3. 前記水素置換促進手段は、燃料極から排出する流体量を増やすことを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  4. 前記水素置換促進手段は、少なくとも酸化剤極の圧力を上げる速度を遅くすることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  5. 前記水素置換促進手段は、前記燃料電池から取り出す電力量を増加させないことを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  6. 前記水素置換促進手段は、燃料極を循環する流量を低下させることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  7. 水素量の不足が予測される時、前記燃料極の減圧を停止する減圧停止手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  8. 前記水素不足予測手段は、前記燃料極内の水素置換を促進することにより、水素量の不足が解消されたか否かを判断し、
    水素量の不足が解消された時、前記減圧手段は、前記燃料極の減圧を再開することを特徴とする請求項7記載の燃料電池の運転停止装置。
  9. 前記減圧手段は、前記燃料極の圧力が大気圧以下になるまで前記燃料極を減圧することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  10. 前記水素不足予測手段は、燃料電池の運転開始からの経過時間に基づいて燃料極内の水素濃度を推測し、この水素濃度に基づいて水素量の不足を予測することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  11. 前記水素不足予測手段は、燃料極でガスを循環させる装置の消費電力に基づいて燃料極内の水素濃度を推測し、この水素濃度に基づいて水素量の不足を予測することを特徴とする請求項1記載の燃料電池の運転停止装置。
  12. 前記水素不足予測手段は、前記燃料極内の水素置換を促進した時間に基づいて、水素量の不足が解消されたか否かを判断することを特徴とする請求項8記載の燃料電池の運転停止装置。
  13. 水素が燃料極に供給され、酸素が酸化剤極に供給されて発電する燃料電池の運転停止方法であって、
    前記燃料電池が発電した電力を取り出すことによって前記燃料極を減圧する段階と、
    前記燃料極を減圧している途中で、前記燃料極内の水素量が発電を維持するための必要量よりも少なくなるか否かを予測する段階と、
    前記水素量の不足が予測される時、前記燃料極内の水素置換を促進する段階と
    を備えることを特徴とする燃料電池の運転停止方法。
  14. 前記水素置換を促進する段階では、少なくとも電力の取り出しによって燃料極が減圧していく速度を遅らせる量の水素を燃料極に供給することを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  15. 前記水素置換を促進する段階では、燃料極から排出する流体量を増やすことを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  16. 前記水素置換を促進する段階では、少なくとも酸化剤極の圧力を上げる速度を遅くすることを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  17. 前記水素置換を促進する段階では、前記燃料電池から取り出す電力量を増加させないことを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  18. 前記水素置換を促進する段階では、燃料極を循環する流量を低下させることを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  19. 水素量の不足が予測される時、前記燃料極の減圧を停止する段階を更に備えることを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  20. 前記燃料極内の水素置換を促進することにより、水素量の不足が解消されたか否かを判断する段階と、
    水素量の不足が解消された時、前記燃料極の減圧を再開する段階と
    を更に備えることを特徴とする請求項19記載の燃料電池の運転停止方法。
  21. 前記燃料極の減圧は、前記燃料極の圧力が大気圧以下になるまで実施することを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  22. 水素量の不足を予測する段階では、
    燃料電池の運転開始からの経過時間に基づいて燃料極内の水素濃度を推測し、
    この水素濃度に基づいて水素量の不足を予測する
    ことを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  23. 水素量の不足を予測する段階では、
    燃料極でガスを循環させる装置の消費電力に基づいて燃料極内の水素濃度を推測し、
    この水素濃度に基づいて水素量の不足を予測する
    ことを特徴とする請求項13記載の燃料電池の運転停止方法。
  24. 前記水素量の不足が解消されたか否かは、前記燃料極内の水素置換を促進した時間に基づいて判断することを特徴とする請求項20記載の燃料電池の運転停止方法。
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JP2016095999A (ja) * 2014-11-14 2016-05-26 トヨタ自動車株式会社 燃料電池システム

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