JP2007059348A - 燃料電池システムおよび燃料電池システムの起動方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】過大な酸化剤ガス供給に伴う騒音や振動を抑制しつつ、ガス圧力制御と、酸化剤極に透過した燃料ガスの希釈との両立を図る。
【解決手段】ガス圧力制御部56は、燃料電池スタック1の起動処理として、水素圧力を通常の発電時のそれよりも増加させるとともに、空気圧力を増加させるガス圧力制御を行う。昇圧用空気流量演算部51は、ガス圧力制御における昇圧用空気流量として演算する。水素量推定部52は、クロスオーバ水素量を推定する。希釈用空気流量演算部53は、クロスオーバ水素量に基づいて、希釈用空気流量を演算する。ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、酸化剤ガスの供給流量が、騒音条件または振動条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、ガス圧力制御の開始タイミングを規定する。
【選択図】図2
【解決手段】ガス圧力制御部56は、燃料電池スタック1の起動処理として、水素圧力を通常の発電時のそれよりも増加させるとともに、空気圧力を増加させるガス圧力制御を行う。昇圧用空気流量演算部51は、ガス圧力制御における昇圧用空気流量として演算する。水素量推定部52は、クロスオーバ水素量を推定する。希釈用空気流量演算部53は、クロスオーバ水素量に基づいて、希釈用空気流量を演算する。ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、酸化剤ガスの供給流量が、騒音条件または振動条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、ガス圧力制御の開始タイミングを規定する。
【選択図】図2
Description
本発明は、燃料電池システムおよびその起動方法に関する。
従来より、燃料極に燃料ガス(例えば、水素)を供給するとともに、酸化剤極に酸化剤ガス(例えば、空気)を供給することにより、水素と空気とを電気化学的に反応させて発電を行う燃料電池が知られている。例えば、特許文献1には、起動時に、燃料極に供給する水素圧力を通常の発電時のそれよりも高く設定し、燃料極に残留している酸素を短時間で排出して水素に置換することにより、燃料電池の劣化を抑制する技術が開示されている。
特開2004−139984号公報
ところで、燃料極の水素圧力を増加させた場合には、燃料電池の膜間差圧を抑制するといった観点から、酸化剤極側にも空気を供給し、水素圧力と対応させて空気圧力も増加させる必要があるが、このようなガス圧力制御の概念については特許文献1には開示されていない。また、酸化剤極に空気を供給する場合には、空気圧力を増加させるために必要な流量を供給するのみならず、燃料電池が起動を開始する以前(すなわち、停止中)には、酸化剤極には水素極から透過した水素が残留しているため、この水素を希釈するために必要な流量も供給しなければならない。
しかしながら、単純に希釈用の空気流量と昇圧用の空気流量との和を酸化剤極に供給した場合には、供給される空気流量が過大となり、空気を供給するコンプレッサ等の騒音や振動が大きくなってしまうという問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、過大な酸化剤ガス供給に伴う騒音や振動を抑制しつつ、ガス圧力制御と、酸化剤極に透過した燃料ガスの希釈との両立を図ることである。
かかる課題を解決するために、本発明は、燃料極に燃料ガスを供給するとともに、酸化剤極に酸化剤ガスを供給することにより、燃料ガスと酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う燃料電池を有する燃料電池システムを提供する。この燃料電池システムは、ガス圧力制御手段と、昇圧用流量演算手段と、燃料ガス量推定手段と、希釈用流量演算手段と、ガス圧力制御開始タイミング規定手段と、目標流量演算手段と、酸化剤ガス流量制御手段とを有する。ガス圧力制御手段は、燃料電池の起動処理として、燃料極のガス圧力を通常の発電時のガス圧力よりも増加させるとともに、燃料極のガス圧力と対応させて、酸化剤極のガス圧力を増加させるガス圧力制御を行う。昇圧用流量演算手段は、ガス圧力制御において、酸化剤極のガス圧力を増加させるために必要な酸化剤ガスの流量を、昇圧用流量として演算する。燃料ガス量推定手段は、燃料電池が起動を開始する以前に、燃料極から酸化剤極に透過した燃料ガス量を推定する。希釈用流量演算手段は、推定された燃料ガス量に基づいて、酸化剤極に透過した燃料ガスを希釈するために必要な酸化剤ガスの流量を、希釈用流量として演算する。ガス圧力制御開始タイミング規定手段は、酸化剤極に供給する酸化剤ガスの流量が、騒音条件または振動条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、演算された昇圧用流量および希釈用流量に基づいて、ガス圧力制御手段によるガス圧力制御の開始タイミングを規定する。目標流量演算手段は、ガス圧力制御の開始タイミングと、演算された昇圧用流量および希釈用流量とに基づいて、酸化剤極へ供給する酸化剤ガスの目標流量を演算する。酸化剤ガス流量制御手段は、演算された目標流量に基づいて、酸化剤極に供給される酸化剤ガスの流量を制御する。
本発明によれば、希釈用の酸化剤ガスの流量と、昇圧用の酸化剤ガスの流量とに基づいて、ガス圧力制御の酸化剤ガスを供給する開始タイミングを適切に調整することができるので、酸化剤極に供給される酸化剤ガスの流量が流量上限値を上回るといった事態を抑制することができる。これにより、過大な酸化剤ガス供給に伴う騒音や振動を抑制しつつ、ガス圧力制御と、燃料ガスの希釈との両立を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。この燃料電池システムは、固体高分子電解質膜を挟んで酸化剤極と燃料極とを対設した燃料電池構造体をセパレータで挟持して(燃料電池セル)、これを複数積層した燃料電池スタック1を備える。この燃料電池スタック1は、燃料極に燃料ガスが供給され、酸化剤に酸化剤ガスが供給されることにより、これらのガスを電気化学的に反応させて発電電力を発生する。なお、本実施形態では、燃料ガスとして水素を燃料極(水素極)に導入すると共に、酸化剤ガスとして酸素を含む空気を酸化剤極(空気極)に導入するケースについて説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池システムの全体構成図である。この燃料電池システムは、固体高分子電解質膜を挟んで酸化剤極と燃料極とを対設した燃料電池構造体をセパレータで挟持して(燃料電池セル)、これを複数積層した燃料電池スタック1を備える。この燃料電池スタック1は、燃料極に燃料ガスが供給され、酸化剤に酸化剤ガスが供給されることにより、これらのガスを電気化学的に反応させて発電電力を発生する。なお、本実施形態では、燃料ガスとして水素を燃料極(水素極)に導入すると共に、酸化剤ガスとして酸素を含む空気を酸化剤極(空気極)に導入するケースについて説明する。
この燃料電池システムは、燃料電池スタック1の水素極に水素を導入するとともに起動時や不純物排出時に水素極からのガスを排出する水素系10と、燃料電池スタック1の空気極に空気を導入するとともにこれを空気極から排出する空気系20と、燃料電池スタック1を冷却する冷却系30とを備えている。
水素系10において、燃料ガスである水素は、燃料タンク11である高圧水素ボンベに貯蔵された状態から、水素供給流路を介して燃料電池スタック1の燃料極に供給される。水素供給流路には、水素タンク元弁12、減圧弁13、水素調圧弁14が設けられている。水素タンク元弁12が開状態となると、燃料タンク11からの高圧水素は、減圧弁13によって機械的に所定の圧力まで減圧された後に、水素調圧弁14によって更に調圧される。この水素調圧弁14は、燃料電池スタック1へ供給される水素流量と水素圧力とが所望の値となるように、後述する制御部50によってその開度が制御される。
燃料電池スタック1の燃料極からの排出ガス(未使用の水素を含むガス)は、水素排出流路へと排出される。この水素排出流路には、水素供給流路へと連通する水素循環流路が接続されており、水素循環流路には、燃料ガス循環装置としての水素循環装置(例えば、循環ポンプ)15が設けられている。この水素循環装置15を駆動することにより、燃料極から排出された排出ガスは燃料電池スタック1の燃料極へと循環され、これにより、安定した発電を維持することができるとともに、反応効率の向上を図ることができる。
また、水素排出流路には、水素循環流路との接続部位よりも下流に、パージ弁16が設けられている。このパージ弁16は、燃料電池スタック1の運転状態に応じて、その開閉状態が制御部50によって制御される。パージ弁16は、基本的に、閉状態に制御されているが、燃料電池スタック1の燃料極内や水素循環流路内の窒素濃度が上昇した場合には、閉状態から開状態へと切り替えられ、これにより、水素とともに窒素が水素系10内から排出される。また、パージ弁16は、これ以外にも、後述する起動処理において、水素系10を水素で置換すべく、系内の空気を排出するために、閉状態から開状態へと切り替えられる。さらに、このパージ弁16は、燃料電池スタック1の発電によって生成された生成水が、燃料電池スタック1内のガス流路に詰まった場合には、この生成水の詰まりを解消するために、必要に応じて閉状態から開状態へと切り替えられる。
パージ弁16から排出された水素を含む排出ガスは、パージ弁16の下流に設けられた水素処理装置17に供給される。この水素処理装置17は、後述する空気系20からの排出ガス(空気)を利用して、排出ガスが所定の水素濃度(例えば、可燃濃度)未満となるように希釈した後に、或いは、燃焼させた後に、これを外部へ排出する。
空気系20において、酸化剤ガスである空気は、大気がコンプレッサ21によって加圧され、空気供給流路を介して燃料電池スタック1の酸化剤極に供給される。この空気供給流路には、加湿装置22が設けられており、酸化剤極に供給される空気は、燃料電池スタック1の発電性能を低下させない程度に必要に応じて加湿される。燃料電池スタック1の空気極の排出口には、空気排出流路が接続されており、この空気排出流路には、空気調圧弁23が設けられている。この空気調圧弁23は、燃料電池スタック1へ供給される空気流量と空気圧力とが適正な値となるように、その開度が、コンプレッサ21の回転数とともに制御部50によって制御される。
冷却系30には、燃料電池スタック1を冷却する冷却媒体(本実施形態では、冷却水)が循環する冷却水流路が備えられている。この冷却水流路には、ラジエータ31およびこのラジエータ31に送風する冷却ファン32が設けられており、冷却水流路内の冷却水は、ラジエータ31によって冷却される。冷却された冷却水は、冷却水流路に設けられた冷却水ポンプ33によって燃料電池スタック1へと供給される。冷却水流路は、燃料電池スタック1内においてその流路が細かく分岐しており、これにより、燃料電池スタック1は、その内部が全体に亘り冷却されるようになっている。燃料電池スタック1の冷却によって温度が上昇した冷却水は、冷却水流路を経由して、ラジエータ31へと再度供給される。また、この冷却水流路には、燃料電池スタック1から排出される冷却水を、ラジエータ31を経由せずに燃料電池スタック1へと循環させるバイパス流路が設けられている。このバイパス流路と冷却水流路との接続部位には、三方弁34が設けられており、冷却水の流路を、ラジエータ31方向、或いは、バイパス流路に切り替えたり、ラジエータ31方向およびバイパス流路に分流したりすることができる。この三方弁34による流路の切り替えは、燃料電池スタック1が所望の温度で冷却されるように、制御部50によって制御される。
このような燃料電池システムにおいて、燃料電池スタック1には出力取出装置40が接続されている。出力取出装置40は、燃料電池スタック1からの出力(電流或いは電力)を取り出して、例えば、車両を駆動するモータ(図示せず)へ供給する。
制御部50は、燃料電池システムの運転状態に応じて、制御信号を各種のアクチュエータ(図示せず)に出力することにより、水素調圧弁14、パージ弁16、コンプレッサ21、空気調圧弁23などを制御する。制御部50としては、例えば、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースを主体に構成されるマイクロコンピュータを用いることができる。この制御部50には、燃料電池システムの運転状態を検出すべく、各種のセンサ60〜65からの検出信号が入力されている。
水素圧力センサ60は、水素供給流路に設けられており、燃料電池スタック1の水素極におけるガス圧力(水素圧力)を検出する。空気圧力センサ61は、空気供給流路に設けられており、燃料電池スタック1の空気極におけるガス圧力(空気圧力)を検出する。スタック入口冷却水温度センサ62は、燃料電池スタック1の入口側における冷却水の温度(スタック入口冷却水温度)を検出し、スタック出口冷却水温度センサ63は、燃料電池スタック1の出口側における冷却水の温度(スタック出口冷却水温度)を検出し、これにより、燃料電池スタック1の温度(スタック温度)を検出することができる。総電圧センサ64は、燃料電池スタック1の総体的な発電電圧(総電圧)を検出するセンサであり、セル電圧センサ65は、燃料電池スタック1を構成する個々のセルに関する発電電圧(セル電圧)を検出するセンサである。
本実施形態との関係において、制御部50は、燃料電池システムの起動時には、燃料電池スタック1の起動処理として、以下の第1および第2の処理を行う。第1の処理は、燃料電池スタック1の水素極に存在する酸素を排出する観点から、パージ弁16を開状態に制御した後に、水素調圧弁14を制御して、水素極の水素圧力を通常の発電時の水素圧力よりも増加させるとともに、水素循環装置15を駆動させる。なお、この第1の処理では、パージ弁16は閉状態のままで行ってもよく、水素極の水素圧力を通常の発電時の水素圧力よりも増加させる処理であれば足りる。第2の処理は、第1の処理に伴う燃料電池スタック1の膜間差圧の抑制といった観点から、コンプレッサ21および空気調圧弁23を制御して、水素極の水素圧力と対応させて、空気極の空気圧力を増加させる。制御部50は、起動時には、これらの第1および第2の処理(高圧起動処理)に対応するガス圧力制御を行うが、空気極に供給する空気流量は、以下に示す要素を加味して決定する必要がある。具体的には、ガス圧力制御において、空気極の空気圧力を増加させるために必要な空気流量を供給することであり、さらには、システム停止中に水素極から空気極へと透過した水素を希釈するために必要な空気流量を供給することである。
図2は、制御部50を示すブロック構成図である。本実施形態の制御部50は、これを機能的に捉えた場合、昇圧用空気流量演算部(昇圧用流量演算手段)51と、水素量推定部(燃料ガス量推定手段)52と、希釈用空気流量演算部(希釈用流量演算手段)53と、ガス圧力制御開始タイミング規定部(ガス圧力制御開始タイミング規定手段)54と、目標空気流量演算部(目標流量演算手段)55と、ガス圧力制御部(ガス圧力制御手段)56と、空気流量制御部(酸化剤ガス流量制御手段)57とを有している。昇圧用空気流量演算部51は、高圧起動処理時のガス圧力制御において、空気極の空気圧力を増加させるために必要な空気の流量を、昇圧用流量(昇圧用空気流量)として演算する。水素量推定部52は、燃料電池システムが起動を開始する以前に、水素極から空気極へと透過した燃料ガス量(水素量)を、クロスオーバ水素量として推定する。希釈用空気流量演算部53は、水素量推定部52によって推定されたクロスオーバ水素量に基づいて、空気極へと透過した水素を希釈するために必要な空気の流量を、希釈用流量(希釈用空気流量)として演算する。ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、空気極に供給する空気の流量が、騒音条件から規定される許容可能な流量の上限値(流量上限値)以下となるように、演算された昇圧用空気流量および希釈用空気流量に基づいて、ガス圧力制御部56によるガス圧力制御の開始タイミングを規定する。目標空気流量演算部55は、ガス圧力制御の開始タイミングと、演算された昇圧用空気流量および希釈用空気流量に基づいて、空気極へ供給する空気の目標流量を、目標流量(目標空気流量)として演算する。ガス圧力制御部56は、水素調圧弁14および空気調圧弁23の開度を制御することにより、燃料電池システムの起動処理として、ガス圧力制御を行う。具体的には、ガス圧力制御部56は、水素極の水素圧力を通常の発電時のそれよりも増加させるとともに、水素極の水素圧力と対応させて、空気極の空気圧力を増加させる。空気流量制御部57は、コンプレッサ21の回転数を制御することにより、演算された目標空気流量に基づいて、空気極へ供給される空気の流量を制御する。
このような構成を有する燃料電池システムにおいて、以下、燃料電池システムの起動処理について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態にかかる燃料電池システムの起動処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば、車両のイグニッションスイッチがオンされることによって呼び出され、制御部50によって実行される。
まず、ステップ10において、昇圧用空気流量演算部51は、ガス圧力制御における昇圧用空気流量を演算する。このガス圧力制御において、水素極の水素圧力をどの程度まで増加させるかということは予め設定されているので、その水素圧力の目標値に対応して、空気極に供給する空気の目標圧力も知得となる。そのため、昇圧用空気流量演算部51は、予め設定されている水素圧力の目標値に応じて、必要な昇圧用空気流量を演算する。
ステップ11において、水素量推定部52は、システムの停止中に水素極から空気極に透過したクロスオーバ水素量を推定する。ここで、図4は、空気極におけるクロスオーバ水素量の傾向を示す説明図である。同図において、(a)は、燃料電池スタック1が発電を停止してからの経過時間(以下「停止時間」という)に応じたクロスオーバ水素量の推移を示し、(b)は、燃料電池スタック1が発電を停止した以降のスタック温度、或いは、燃料極における水素圧力に応じたクロスオーバ水素量の傾向を示す。また、(c)は、停止時における水素極におけるガス組成(例えば、水素濃度)に応じたクロスオーバ水素量の傾向を示し、(d)は、起動時の水素循環装置15の負荷状態、例えば、循環ポンプを駆動する電動機のトルク、消費電流、或いは、消費電力に応じたクロスオーバ水素量の傾向を示す。同図から分かるように、空気極におけるクロスオーバ水素量は、システムの停止時間の増加とともに一旦増加し、その後、減少する傾向にある。また、スタック温度或いは燃料極の水素濃度に対しては、これらの値の増加とともにクロスオーバ水素量も増加する傾向にある。同様に、停止時の水素濃度に対しては、値の増加とともにクロスオーバ水素量も増加する傾向にある。さらに、水素循環装置の負荷状態に対しては、値の増加とともにクロスオーバ水素量が減少する傾向にある。
水素量推定部52は、各種のセンサ60〜65や内蔵されたカウンタなどの値を参照した上で、同図に示す傾向に基づいて、クロスオーバ水素量を推定する。例えば、水素量推定部52は、各パラメータ(停止時間、スタック温度等)から特定される種々のクロスオーバ水素量の中から、一番大きな値をその推定値として決定するといった如くである。また、停止時間に応じたクロスオーバ水素量のみを「量」のデータとして、残りのパラメータの縦軸は全て係数(例えば、最大値を1とする)として扱い、これらの全ての積算値をクロスオーバ水素量の推定値としてもよい。さらには、水素量推定部52は、空気極における水素濃度を直接的に検出し、これをクロスオーバ水素量の推定値としてもよい。
ステップ12において、希釈用空気流量演算部53は、水素量推定部52によって推定されたクロスオーバ水素量に基づいて、希釈用空気流量を演算する。この演算は、例えば、以下のような手法で行うことができる。クロスオーバ水素量と、これを空気極から希釈して排出するために必要な空気流量との対応関係を、実験やシミュレーションを通じて予め取得しておき、これをテーブルとして制御部50のROMに格納しておく。そして、希釈用空気流量演算部53は、このテーブルを参照した上で、推定されたクロスオーバ水素量に対応する希釈用空気流量を特定する。
ステップ13において、目標空気流量演算部55は、目標空気流量を演算する。本実施形態では、希釈用の空気供給を、ガス圧力制御における昇圧用の空気供給よりも優先的に行うことを前提に、空気極に透過した水素の希釈が終了するタイミングが、ガス圧力制御の開始タイミングに規定される。そのため、空気極における水素の希釈が終了するタイミング、すなわち、ガス圧力制御の開始タイミングに到達するまでは、目標空気流量演算部55は、演算された希釈用空気流量をそのまま目標空気流量として設定する。そして、空気流量制御部57は、目標空気流量演算部55によって設定された目標空気流量に基づいて、空気極へ供給される空気の流量を制御する。換言すれば、このステップ13以降は、空気極におけるクロスオーバ水素を希釈するための空気の供給が開始されることとなる。
ステップ14において、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、希釈シーケンス、すなわち、クロスオーバ水素を希釈する一連の流量制御(水素希釈制御)が終了したか否かを判断する。ステップ12の処理において希釈用空気流量が演算されているので、この流量に基づいて、クロスオーバ水素が希釈して排出される程度の時間(希釈時間)を設定することができる。これにより、希釈シーケンスの終了タイミングは、ステップ13において希釈用空気の供給が開始されたタイミングからの経過時間が、この希釈時間に到達したか否かにより、判断することができる。なお、空気排出流路に水素濃度センサを設けておけば、ガス圧力制御部56は、水素濃度が所定値まで低下したタイミングにおいて、希釈シーケンスの終了を判断してもよい。
ステップ14において否定判定された場合、すなわち、希釈シーケンスが終了していない場合には、所定時間後にステップ14に戻り、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、再度、希釈シーケンスが終了したか否かを判定する。一方、ステップ14において肯定判定された場合、すなわち、希釈シーケンスが終了した場合には、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、ステップ14の判定結果が否定から肯定へと切り替わったタイミングを、ガス圧力制御の開始タイミングに規定した上で、ステップ15に進む。
ステップ15において、目標空気流量演算部55は、目標空気流量を演算する。このステップ15では、上述したステップ13の処理とは異なり、ガス圧力制御の開始タイミングが規定され後となり、目標空気流量演算部55は、演算された昇圧用空気流量をそのまま目標空気流量として設定する。そして、空気流量制御部57は、目標空気流量演算部55によって設定された目標空気流量に基づいて、空気極へ供給される空気の流量を制御する。換言すれば、このステップ15以降は、ガス圧力制御のための空気が供給されることとなる。
ステップ16において、ガス圧力制御部56は、水素極の水素圧力を通常の発電時のそれよりも増加させるとともに、この水素圧力と対応させて、空気極の空気圧力を増加させる(高圧起動処理に伴うガス圧力制御)。このガス圧力制御では、ガス圧力制御部56は、水素極の水素圧力と、空気極の空気圧力が所定の許容差圧以下となるように空気圧力を制御する。具体的には、ガス圧力制御部56は、水素極の水素圧力と同じ目標圧力に従って、空気極の空気圧力を制御してもよいし、実際の水素極の水素圧力(水素圧力センサ60からの検出値)を目標値として空気圧力を制御してもよい。
ステップ17において、ガス圧力制御部56は、起動処理が完了したか否か、すなわち、発電開始の条件が成立しているか否かを判断する。発電開始の条件としては、燃料電池スタック1の総電圧(総電圧センサ64からの検出値)が所定値以上であること、個々のセル電圧(セル電圧センサ65からの検出値)のうちの最も低いセル電圧が所定値以上となっていること、冷却水が所定値以上流れていること(すなわち、冷却水ポンプ33が所定の回転数以上回転していること)が挙げられる。また、これ以外にも、水素極における水素濃度分布の均一化の観点から、水素の供給を開始してからの経過時間が所定の時間以上経過していること、循環ポンプ15が所定の回転数以上であること等が挙げられる。
このステップ17において否定判定された場合、すなわち、発電開始の条件が成立していない場合には、所定時間後にステップ17に戻り、ガス圧力制御部56は、再度、発電開始の条件が成立しているか否かを判定する。一方、ステップ17において否定判定された場合、すなわち、発電開始の条件が成立している場合には、ステップ18に進む。そして、ステップ18において、ガス圧力制御部56は、高圧起動処理にともなうガス圧力制御を終了して、通常状態のガス圧力へと移行させた後に、燃料電池スタック1による通常の発電動作を開始する。
このように本実施形態によれば、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、空気極に供給する空気の流量が、騒音条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、昇圧用空気流量と、希釈用空気流量とに基づいて、ガス圧力制御の開始タイミングを規定する。そして、目標空気流量演算部55は、ガス圧力制御の開始タイミングと、昇圧用空気流量と、希釈用空気流量とに基づいて、目標空気流量を演算する。これにより、空気流量制御部57は、演算された目標空気流量に基づいて、空気極へ供給される空気の流量を制御する。また、ガス圧力制御部56は、規定されたガス圧力制御の開始タイミングに応じて、水素極の水素圧力を起動完了後の通常状態よりも増加させるとともに、水素極の水素圧力と対応させて、空気極の空気圧力を増加させるガス圧力制御を行う。燃料電池スタック1の起動時には、希釈用空気流量とともに、昇圧用空気流量を空気極に供給する必要があるが、単純に両者の総和を供給した場合には、図5に示すように、空気流量が過大となり、騒音や振動といった観点で問題がある。しかしながら、本実施形態によれば、図6に示すように、空気極に供給する空気の流量が、騒音条件または振動条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、ガス圧力制御の開始タイミングが規定されている。そのため、希釈用空気を供給する開始タイミング(水素希釈制御の開始タイミング)に対して、昇圧用空気の供給の開始タイミング(ガス圧力制御の開始タイミング)が適切に調整されるので、空気極に供給される空気流量が流量上限値を上回るといった事態を抑制することができる。これにより、過大な空気供給に伴う騒音や振動を抑制しつつ、高圧起動処理に伴うガス圧力制御と、水素希釈制御との両立を図ることができる。
特に、本実施形態によれば、ガス圧力制御開始タイミング規定手段は、クロスオーバ水素の希釈が終了した後に、ガス圧力制御の開始タイミングを規定している。この場合、目標空気流量演算部55は、ガス圧力制御の開始タイミングに到達するまでは、希釈用空気流量を目標空気流量とし、ガス圧力制御の開始タイミングに到達した後は、昇圧用空気流量を目標流量としている。すなわち、本実施形態では、希釈用空気供給と昇圧用空気供給とがタイミング的にオーバラップしないように、ガス圧力制御の開始タイミングが規定されている。そのため、希釈用空気供給と、昇圧用空気供給とが同時になされ、これらにともうな供給流量が流量上限値を超えてしまうといった事態を抑制することができる。これにより、過大な空気供給に伴う騒音や振動を抑制しつつ、高圧起動処理に伴うガス圧力制御と、水素希釈制御との両立を図ることができる。
また、本実施形態によれば、水素量推定部52は、燃料電池スタック1が発電を停止してからの経過時間に基づいて、クロスオーバ水素量を推定している。これにより、簡単な演算でクロスオーバ水素量を推定することができる。
さらに、本実施形態によれば、水素量推定部52は、燃料電池スタック1が発電を停止した以降のスタック温度、水素圧力、および、停止時における燃料極のガス組成のうちの少なくとも1つに基づいて、クロスオーバ水素量を推定している。これにより、より精度よくクロスオーバ水素量を推定することができる。
また、本実施形態によれば、燃料電池スタック1は、燃料極から排出された排出ガスを、この燃料極に対して水素を供給する供給側へと循環させる水素循環装置15をさらに有し、水素量推定部52は、起動時の水素循環装置15の負荷状態に基づいて、クロスオーバ水素量を推定している。これにより、システム停止後の経過時間中の状態変化を考慮することが不要となり、起動時の状態に応じて精度よくクロスオーバ水素量を推定することができる。ここで、水素循環装置15は、電動機によって駆動される循環ポンプであり、この場合、水素量推定部52は、電動機のトルク、電動機の消費電流、或いは、電動機の消費電力に基づいて、クロスオーバ水素量を推定している。これにより、簡単な処理で精度よくクロスオーバ水素量を推定することができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態にかかる燃料電池システムの起動処理について説明する。この第2の実施形態にかかる処理が、第1の実施形態のそれと相違する点は、起動時間の短縮の観点から、希釈用空気流量と昇圧用空気流量との和に応じて、ガス圧力制御の開始タイミングを適切に規定することである。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
以下、本発明の第2の実施形態にかかる燃料電池システムの起動処理について説明する。この第2の実施形態にかかる処理が、第1の実施形態のそれと相違する点は、起動時間の短縮の観点から、希釈用空気流量と昇圧用空気流量との和に応じて、ガス圧力制御の開始タイミングを適切に規定することである。なお、第1の実施形態と同様の構成については同一符号を付することによりその詳細な説明を省略する。
図7は、本発明の第2の実施形態にかかる燃料電池システムの起動処理の手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、例えば、車両のイグニッションスイッチがオンされることによって呼び出され、制御部50によって実行される。まず、ステップ20〜22において、第1の実施形態に示すステップ10〜12の処理と同様に、昇圧用空気流量、クロスオーバ水素量、および、希釈用空気流量を演算する。そして、ステップ23において、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、流量総和、すなわち、希釈用空気流量と昇圧用空気流量との和を演算する。
ステップ24において、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、演算された流量総和が、騒音条件から規定される許容可能な流量の上限値(流量上限値)以下であるか否かを判断する。このステップ24において否定判定された場合、すなわち、流量総和が流量上限値よりも大きい場合には(流量総和>流量上限値)、ステップ25に進む。一方、ステップ24において肯定判定された場合、すなわち、流量総和が流量上限値以下の場合には(流量総和≦流量上限値)、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、ステップ24の判定結果が否定から肯定へと切り替わったタイミングを、ガス圧力制御の開始タイミングに規定した上で、ステップ26に進む。このステップ24において肯定されるケースとしては、起動開始時における流量総和が流量上限値以下であるケースと、後述するように、起動開始時には流量総和が流量上限値よりも大きいものの、希釈用空気供給が開始されることにより、流量総和が流量上限値以下となるケースとである。
ステップ25において、目標空気流量演算部55は、目標空気流量を演算する。本実施形態では、希釈用の空気供給を、ガス圧力制御における昇圧用の空気供給よりも優先的に行うことを前提に、流量総和が流量上限値以下となるタイミングが、ガス圧力制御の開始タイミングに規定される。そのため、流量総和が流量上限値以下となるタイミング、すなわち、ガス圧力制御の開始タイミングに到達するまでは、目標空気流量演算部55は、演算された希釈用空気流量をそのまま目標空気流量として設定する。そして、空気流量制御部57は、目標空気流量演算部55によって設定された目標空気流量に基づいて、空気極へ供給される空気の流量を制御する。換言すれば、このステップ25以降は、空気極におけるクロスオーバ水素を希釈するための空気が供給されることとなる。
そして、ステップ25に続くステップ22において、希釈用空気流量演算部53は、再度、希釈用空気流量を演算する。このステップ22では、希釈用空気供給が開始されたことを前提に、供給された希釈用空気流量をベースに、既に排出されたクロスオーバ水素量を考慮して、希釈用空気流量を演算する。すなわち、一旦、ステップ25の処理に進み、希釈用空気供給が開始されると、それ以降の処理では、この希釈用空気流量は減少していくこととなる。これにともない、ステップ23の処理において算出される流量総和も除々に減少し、希釈用空気の供給が進むにつれ、流量総和が流量上限値以下となり、ステップ24における判定結果が、否定から肯定へと切り替わる。
ステップ26において、目標空気流量演算部55は、目標空気流量を演算する。このステップ26では、上述したステップ25の処理とは異なり、ガス圧力制御の開始タイミングが規定され後となり、目標空気流量演算部55は、演算された希釈用空気流量および昇圧用空気流量との和(流量総和)を目標空気流量として設定する。そして、空気流量制御部57は、設定された目標空気流量に基づいて、空気極へ供給される空気の流量を制御する。換言すれば、このステップ25以降は、空気極におけるクロスオーバ水素を希釈して排出するための空気が供給されるとともに、ガス圧力制御のための空気が供給されることとなる。
ステップ27において、ガス圧力制御部56は、ガス圧力制御を開始し、水素極の水素圧力を起動完了後の通常状態よりも増加させるとともに、この水素圧力と対応させて、空気極の空気圧力を増加させる(高圧起動処理に伴うガス圧力制御)。このガス圧力制御では、ガス圧力制御部56は、水素極の水素圧力と、空気極の空気圧力が所定の許容差圧以下となるように空気圧力を制御する。具体的には、ガス圧力制御部56は、水素極の水素圧力と同じ目標圧力に従って、空気極の空気圧力を制御してもよいし、実際の水素極の水素圧力(水素圧力センサ60からの検出値)を目標値として空気圧力を制御してもよい。
ステップ28において、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、希釈シーケンスが終了したか否かを判断する。ステップ22の処理において希釈用空気流量が演算されているので、この流量に基づいて、クロスオーバ水素が希釈して排出される程度の時間(希釈時間)を設定することができる。これにより、希釈シーケンスの終了タイミングは、ステップ25(或いは、ステップ26)において希釈用空気の供給が開始されたタイミングからの経過時間が、この希釈時間に到達したか否かにより、判断することができる。なお、空気排出流路に水素濃度センサを設けておけば、ガス圧力制御部56は、水素濃度が所定値まで低下したタイミングにおいて、希釈シーケンスの終了を判断してもよい。
ステップ28において否定判定された場合、すなわち、希釈シーケンスが終了していない場合には、所定時間後にステップ28に戻り、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、再度、希釈シーケンスが終了したか否かを判定する。一方、ステップ28において肯定判定された場合、すなわち、希釈シーケンスが終了した場合には、ステップ29に進む。この場合、目標空気流量演算部55は、希釈シーケンスが終了した後は、流量総和、すなわち、昇圧用空気流量をそのまま目標空気流量として用いることとなる。
ステップ29において、ガス圧力制御部56は、第1の実施形態におけるステップ17の処理と同様、起動処理が完了したか否か、すなわち、発電開始の条件が成立しているか否かを判断する。このステップ29において否定判定された場合、すなわち、発電開始の条件が成立していない場合には、所定時間後にステップ29に戻り、ガス圧力制御部56は、再度、発電開始の条件が成立しているか否かを判定する。一方、ステップ29において否定判定された場合、すなわち、発電開始の条件が成立している場合には、ステップ30に進む。そして、ステップ30において、ガス圧力制御部56は、高圧起動処理にともなうガス圧力制御を終了して、通常状態のガス圧力へと移行させた後に、燃料電池スタック1による通常の発電動作を開始する。
このように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、空気極に供給する空気の流量が、騒音条件または振動条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、ガス圧力制御の開始タイミングが規定されている。そのため、希釈用空気を供給する開始タイミング(水素希釈制御の開始タイミング)に対して、昇圧用空気を供給する開始タイミング(ガス圧力制御の開始タイミング)が適切に調整されるので、空気極に供給される空気流量が流量上限値を上回るといった事態を抑制することができる。これにより、過大な空気供給に伴う騒音や振動を抑制しつつ、高圧起動処理に伴うガス圧力制御と、水素希釈制御との両立を図ることができる。
特に、本実施形態によれば、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、昇圧用空気流量と希釈用空気流量との和が、流量上限値以下となるタイミングを、ガス圧力制御の開始タイミングに規定する。そして、目標空気流量演算部55は、ガス圧力制御の開始タイミングに到達するまでは、希釈用空気流量を目標空気流量とし、ガス圧力制御の開始タイミングに到達した後は、昇圧用空気流量および希釈用空気流量の和を目標空気流量とし、水素の希釈が終了した後は、昇圧用空気流量を目標空気流量とする。かかる構成によれば、希釈用空気流量と昇圧用空気流量との和が流量上限値よりも大きい場合には、希釈用空気流量を目標空気流量として、希釈用空気供給が開始される。そして、希釈用空気流量と昇圧用空気流量との和が流量上限値以下となると、希釈用空気流量と昇圧用空気流量との和を目標空気流量として、希釈用空気供給と昇圧用空気供給とが開始される。また、希釈用空気供給が終了すると、昇圧用空気流量を目標空気流量として、昇圧用空気供給が開始される。そのため、クロスオーバ水素量が多い場合でも少ない場合でも、すなわち、希釈用空気流量が多い場合でも少ない場合でも、騒音や振動を抑制した起動を行うことができる。これにより、クロスオーバ水素を希釈しつつ、過大な空気供給に伴う騒音や振動を抑制することができる。また、本実施形態によれば、希釈用空気流量と昇圧用空気流量との和をモニタリングし、これが流量上限値以下となったタイミングでガス圧力制御が開始されるので、短時間で燃料電池スタック1の起動を行うことができる。
また、本実施形態によれば、ガス圧力制御開始タイミング規定部54は、図8に示すように、起動開始時(すなわち、最初のステップ24の処理)において、昇圧用空気流量と希釈用空気流量との和が、流量上限値以下の場合には、この起動開始時を、ガス圧力制御の開始タイミングに設定する。これにより、クロスオーバ水素を希釈しつつ、過大な空気供給に伴う騒音や振動を抑制することができるとともに、短時間で燃料電池スタック1の起動を行うことができる。
1 燃料電池スタック
10 水素系
11 燃料タンク
12 水素タンク元弁
13 減圧弁
14 水素調圧弁
15 水素循環装置
16 パージ弁
17 水素処理装置
20 空気系
21 コンプレッサ
22 加湿装置
23 空気調圧弁
30 冷却系
31 ラジエータ
32 冷却ファン
33 冷却水ポンプ
34 三方弁
40 出力取出装置
50 制御部
51 昇圧用空気流量演算部
52 水素量推定部
53 希釈用空気流量演算部
54 ガス圧力制御開始タイミング規定部
55 目標空気流量演算部
56 ガス圧力制御部
57 空気流量制御部
60 水素圧力センサ
61 空気圧力センサ
62 スタック入口冷却水温度センサ
63 スタック出口冷却水温度センサ
64 総電圧センサ
65 セル電圧センサ
10 水素系
11 燃料タンク
12 水素タンク元弁
13 減圧弁
14 水素調圧弁
15 水素循環装置
16 パージ弁
17 水素処理装置
20 空気系
21 コンプレッサ
22 加湿装置
23 空気調圧弁
30 冷却系
31 ラジエータ
32 冷却ファン
33 冷却水ポンプ
34 三方弁
40 出力取出装置
50 制御部
51 昇圧用空気流量演算部
52 水素量推定部
53 希釈用空気流量演算部
54 ガス圧力制御開始タイミング規定部
55 目標空気流量演算部
56 ガス圧力制御部
57 空気流量制御部
60 水素圧力センサ
61 空気圧力センサ
62 スタック入口冷却水温度センサ
63 スタック出口冷却水温度センサ
64 総電圧センサ
65 セル電圧センサ
Claims (10)
- 燃料極に燃料ガスを供給するとともに、酸化剤極に酸化剤ガスを供給することにより、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う燃料電池を有する燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の起動処理として、前記燃料極のガス圧力を通常の発電時のガス圧力よりも増加させるとともに、当該燃料極のガス圧力と対応させて、前記酸化剤極のガス圧力を増加させるガス圧力制御を行うガス圧力制御手段と、
前記ガス圧力制御において、前記酸化剤極のガス圧力を増加させるために必要な前記酸化剤ガスの流量を、昇圧用流量として演算する昇圧用流量演算手段と、
前記燃料電池が起動を開始する以前に、前記燃料極から前記酸化剤極に透過した燃料ガス量を推定する燃料ガス量推定手段と、
前記推定された燃料ガス量に基づいて、前記酸化剤極に透過した前記燃料ガスを希釈するために必要な前記酸化剤ガスの流量を、希釈用流量として演算する希釈用流量演算手段と、
前記酸化剤極に供給する前記酸化剤ガスの流量が、騒音条件または振動条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、前記演算された昇圧用流量および希釈用流量に基づいて、前記ガス圧力制御手段による前記ガス圧力制御の開始タイミングを規定するガス圧力制御開始タイミング規定手段と、
前記ガス圧力制御の開始タイミングと、前記演算された昇圧用流量および希釈用流量とに基づいて、前記酸化剤極へ供給する前記酸化剤ガスの目標流量を演算する目標流量演算手段と、
前記演算された目標流量に基づいて、前記酸化剤極に供給される前記酸化剤ガスの流量を制御する酸化剤ガス流量制御手段と
を有することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記ガス圧力制御開始タイミング規定手段は、前記酸化剤極に透過した前記燃料ガスの希釈が終了するタイミングを、前記ガス圧力制御の開始タイミングに規定し、
前記目標流量演算手段は、前記ガス圧力制御の開始タイミングに到達するまでは、前記希釈用流量を前記目標流量とし、前記ガス圧力制御の開始タイミングに到達した後は、前記昇圧用流量を前記目標流量とすることを特徴とする請求項1に記載された燃料電池システム。 - 前記ガス圧力制御開始タイミング規定手段は、前記昇圧用流量と前記希釈用流量との和が、前記流量上限値以下となるタイミングを、前記ガス圧力制御の開始タイミングに規定し、
前記目標流量演算手段は、前記ガス圧力制御の開始タイミングに到達するまでは、前記希釈用流量を前記目標流量とし、前記ガス圧力制御の開始タイミングに到達した後は、前記昇圧用流量と前記希釈用流量との和を前記目標流量とし、前記酸化剤極に透過した前記燃料ガスの希釈が終了した後は、前記昇圧用流量を前記目標流量として用いることを特徴とする請求項1に記載された燃料電池システム。 - 前記ガス圧力制御開始タイミング規定手段は、起動開始時における前記昇圧用流量と前記希釈用流量との和が前記流量上限値以下の場合には、当該起動開始時を、前記ガス圧力制御の開始タイミングに規定することを特徴とする請求項3に記載された燃料電池システム。
- 前記燃料ガス量推定手段は、前記燃料電池が発電を停止してからの経過時間に基づいて、前記燃料ガス量を推定することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された燃料電池システム。
- 前記燃料ガス量推定手段は、前記燃料電池が発電を停止した以降の前記燃料電池の温度、前記燃料極のガス圧力、および、停止時における前記燃料極のガス組成のうちの少なくとも1つに基づいて、前記燃料ガス量を推定することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載された燃料電池システム。
- 前記燃料電池は、前記燃料電池の燃料極から排出された排出ガスを、当該燃料極に対して前記燃料ガスを供給する供給側へと循環させる燃料ガス循環装置をさらに有し、
前記燃料ガス量推定手段は、起動時の前記燃料ガス循環装置の負荷状態に基づいて、前記燃料ガス量を推定することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載された燃料電池システム。 - 前記燃料ガス循環装置は、電動機によって駆動される循環ポンプであり、
前記燃料ガス量推定手段は、前記電動機のトルク、前記電動機の消費電流、或いは、前記電動機の消費電力に基づいて、前記燃料ガス量を推定することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載された燃料電池システム。 - 燃料極に燃料ガスを供給するとともに、酸化剤極に酸化剤ガスを供給することにより、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う燃料電池を有する燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池の起動処理として、前記燃料極のガス圧力を通常の発電時のガス圧力よりも増加させるとともに、当該燃料極のガス圧力と対応させて、前記酸化剤極のガス圧力を増加させるガス圧力制御と、前記酸化剤極に透過した前記燃料ガスを希釈する燃料ガス希釈制御とを行う際に、前記酸化剤極に供給する前記酸化剤ガスの流量が、騒音条件または振動条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、前記燃料ガス希釈制御の開始タイミングに対して、前記ガス圧力制御の開始タイミングを調整することを特徴とする燃料電池システム。 - 燃料極に燃料ガスを供給するとともに、酸化剤極に酸化剤ガスを供給することにより、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスとを電気化学的に反応させて発電を行う燃料電池を有する燃料電池システムの起動方法において、
前記燃料極のガス圧力を起動完了後の通常状態よりも増加させるとともに、当該燃料極のガス圧力と対応させて、前記酸化剤極のガス圧力を増加させるガス圧力制御を行うステップと、
前記ガス圧力制御において、前記酸化剤極のガス圧力を増加させるために必要な前記酸化剤ガスの流量を、昇圧用流量として演算するステップと、
前記燃料電池システムが起動を開始する以前に、前記燃料極から前記酸化剤極へと透過した燃料ガス量を推定するステップと、
前記推定された燃料ガス量に基づいて、前記酸化剤極へと透過した前記燃料ガスを希釈するために必要な前記酸化剤ガスの流量を、希釈用流量として演算するステップと、
前記酸化剤極に供給する前記酸化剤ガスの流量が、騒音条件から規定される許容可能な流量上限値以下となるように、前記演算された昇圧用流量および希釈用流量とに基づいて、前記ガス圧力制御の開始タイミングを規定するステップと、
前記ガス圧力制御の開始タイミングと、前記演算された昇圧用流量および希釈用流量とに基づいて、前記酸化剤極へ供給する前記酸化剤ガスの目標流量を演算するステップと、
前記演算された目標流量に基づいて、前記酸化剤極へ供給される前記酸化剤ガスの流量を制御するステップと
を有することを特徴とする燃料電池システムの起動方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005246698A JP2007059348A (ja) | 2005-08-26 | 2005-08-26 | 燃料電池システムおよび燃料電池システムの起動方法 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2007059348A true JP2007059348A (ja) | 2007-03-08 |
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Family Applications (1)
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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2005
- 2005-08-26 JP JP2005246698A patent/JP2007059348A/ja active Pending
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