JP2007250249A - シール一体型膜電極接合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】電解質膜の使用量を削減し、かつ電解質膜の膜面の破損の可能性を低減する技術を提供する。
【解決手段】2枚の四角枠状の補強フィルム22と、補強フィルム22の内周より外周の大きい電解質膜20を準備し、電解質膜20の外周縁部を補強フィルム22の内周縁部により両面から挟持する。その際、電解質膜20と補強フィルム22および補強フィルム22同士は接着フィルム50により接着される。補強フィルム22の電解質膜20が存在しない部位を打ち抜くことでマニホールド孔16a〜16fを形成し、電解質膜20の両面に電極触媒層26を配置する。こうして出来た膜電極接合体54の外周縁に、電極触媒層26に接し、電解質膜20の露出部位を被覆するようにシールガスケット24を射出成形する。
【選択図】図5

Description

この発明は、燃料電池に使用される膜電極接合体に関する。
燃料電池は、膜電極接合体をセパレータで挟持した単セルを積層して構成される。膜電極接合体は、電解質膜と、電解質膜を両側から挟持する一対の電極触媒層とで構成される。膜電極接合体の外周縁には、燃料ガスや水などの流体流路となるマニホールド孔が形成される。また、セパレータで挟持された膜電極接合体のシール性を向上させるために、膜電極接合体の両面にシールガスケットを形成する技術が知られている。
こうした膜電極接合体においては、アノード電極層に供給された燃料ガスが、電気化学反応に供されることなくカソード電極層へと漏洩すること(以下、「クロスリーク」と呼ぶ)を防ぐため、アノード側の電極層とカソード側の電極層とを隔てる必要がある。そのため電解質膜の外周縁を2つの電極層の外周縁より突出させ、その突出した部位の外端部をシールガスケットでシールすることでクロスリークを防ぐ技術も知られている(特許文献1等)。
WO01−017048 特開2001−102072 特開2003−68319 特開2002−329512
しかし、この方法においては、材料費の高い電解質膜の使用量が増加するという問題があった。また、電解質膜は強度の低い薄膜であるため、電解質膜を電極層より突出させていることにより生じた露出膜面が破損する可能性が高いという問題があった。
そこで本発明は、電解質膜の使用量を削減し、かつ電解質膜の膜面の破損の可能性を低減する技術を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明は、電解質膜と、前記電解質膜を両側から挟む一対の電極層とを含む膜電極接合体と、前記電極層の発電部位の周囲をシールするための第1のシールラインを含むシールガスケットとを備えており、前記シールガスケットを構成するシール部材は、前記電解質膜が露出しないように前記電極層と接した状態で形成されており、前記電解質膜は、前記第1のシールラインに囲まれた範囲内にのみ配置されていることを特徴とする。
この構成によれば、電解質膜の使用量の削減が可能であり、また、電解質膜の露出部位が無いので、その破損の可能性を低減することができる。
前記電極層は、ガス拡散層を備えているとしても良い。
この構成によれば、各電極層に供給される燃料ガスを、電極層全体に均一に拡散させることが可能となり、燃料電池の発電効率が向上する。
前記シールガスケットは、前記シール部材の内部に前記シール部材よりも剛性の高い補強部材を包んでおり、前記第1のシールラインは、前記シール一体型膜電極接合体を表面に対し垂直な方向から見たときに、前記補強部材が存在する位置に形成されているものとしても良い。
この構成によれば、補強部材によってシール一体型膜電極接合体自体の強度を向上できる。また、シールラインの形成部位におけるシール部材の剛性を補強部材が補い、シールラインの変形を防ぐことができる。
前記シールガスケットにおいて前記第1のシールラインが形成される位置にある前記補強部材が、前記第1のシールラインのリップの幅方向に、前記リップの幅より大きい幅を有しているものとしても良い。
この構成によれば、シールラインの形成部位におけるシール部材の剛性を補強部材により補い、リップの形状が崩れることを防ぎ、シール性を向上できる。
前記電解質膜の外周が、前記電極層の外に突出した突出部を有しており、前記補強部材が、前記電解質膜の突出部を両側から挟持するとともに、2つの前記補強部材が、前記電解質膜の外周縁において互いに接しており、前記シールガスケットが、前記電解質膜の突出部を被覆しているものとしても良い。
この構成によれば、電解質膜と補強部材との密着性を向上でき、補強部材同士の密着性によってさらにクロスリークを低減することができる。また、単層構造となる電解質膜の突出部をシール部材が被覆するので、そこにおける電解質膜の破損を防ぐことができる。
前記シール一体型膜電極接合体を貫通するマニホールド孔が形成されており、前記マニホールド孔は、前記電解質膜が存在しない位置を貫通しており、前記シールガスケットは、前記マニホールド孔の周囲をシールするための第2のシールラインを有するものとしても良い。
この構成によれば、マニホールド孔形成工程において、電解質膜が打ち抜かれることがなくなり、電解質膜の使用量をさらに削減できる。またマニホールド孔の周囲は、第2のシールラインによりさらにシール性が向上する。
前記シールガスケットが、射出成形により形成されているものとしても良い。
この構成によれば、膜電極接合体の周縁部に容易にシールガスケットを形成することができる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、シール一体型膜電極接合体、そのシール一体型膜電極接合体を備えた燃料電池、その燃料電池を備えた車両等の形態で実現することができる。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.燃料電池の概略構成:
B.シール一体型膜電極接合体の製造工程(比較例):
C.実施例1:
D.実施例2:
E.実施例3:
F.実施例4:
G.実施例5:
H.実施例6:
I.変形例:
A.燃料電池の概略構成:
図1は本実施例におけるシール一体型膜電極接合体が用いられる燃料電池10の概略構成を示す説明図である。なお、本実施例の燃料電池10は、燃料ガス(水素ガスおよび空気)の供給を受け、水素と酸素との電気化学反応により発電する固体高分子型燃料電池である。
燃料電池10は単セル11を複数積層したスタック構造を有している。単セル11は、シール一体型膜電極接合体12を備えており、シール一体型膜電極接合体12をセパレータ14により挟持した構成である。
燃料電池10は、水素ガス(アノードガス)と、空気(カソードガス)と、冷却水の、それぞれの供給・排出を担う流路である、貫通するマニホールド孔を有している。それに伴い、セパレータ14と、シール一体型膜電極接合体12の周縁部にもそれぞれマニホールド孔16a〜16fが形成されている。具体的には以下の構成となる。マニホールド孔16aは水素ガスの供給口であり、マニホールド孔16bは水素ガスの排出口である。マニホールド孔16cは冷却水の供給口であり、マニホールド孔16dは冷却水の排出口である。また、マニホールド孔16eは空気の供給口であり、マニホールド孔16fは空気の排出口である。なお、マニホールド孔16a〜16fは、これ以外の構成であっても良い。
シール一体型膜電極接合体12の周縁部には、シールガスケット24が射出成形されている。シールガスケット24は、セパレータ14がシール一体型膜電極接合体12を挟持した際に、セパレータ14に密着し、燃料ガスや冷却水の漏洩を防止する。シールガスケット24の材料としては、熱硬化型シリコン系材料を用いても良く、熱可塑性樹脂を用いても良い。シールガスケット24は、射出成形以外の方法で成形されるものとしても良い。
このシールガスケット24は、電極触媒層26の発電部位を含む領域を取り囲む第1のシールラインSL1と、個々のマニホールド孔の周囲に形成された第2のシールラインSL2とを、シール一体型膜電極接合体12の両面に有している。第1のシールラインSL1は、ガスが燃料電池10の外に漏洩するのを防止する為のものである。
セパレータ14は、3枚の金属の薄板、すなわち、カソードプレート14aと、中間プレート14bと、アノードプレート14cとを積層して形成される三層積層型セパレータである。カソードプレート14aはシール一体型膜電極接合体12のカソード電極触媒層側(図1における下面)に接し、アノードプレート14cはシール一体型膜電極接合体12のアノード電極触媒層側(図1における上面)に接するように積層される。セパレータ14は、フラットメタルやプレスメタルで構成されるものとしても良い。
セパレータ14は、マニホールド孔16aを介して供給されたアノードガスを各単セル層のアノード電極触媒層に供給し、マニホールド孔16eを介して供給されたカソードガスを各単セル層のカソード電極触媒層に供給する構造を有する。またセパレータ14は、シール一体型膜電極接合体12で発生した電気の集電機能と、マニホールド孔16cを介して冷却水を中間プレート14bに供給して、冷却を行う機能も実現する。さらに、セパレータ14は、燃料ガスや冷却水をそれぞれの排出用マニホールド孔へ導く構造を有する。なお、セパレータ14としては、三層積層型以外の任意の構造のものを使用可能である。
図2は、シール一体型膜電極接合体12の断面図(図1におけるI−I切断面)である。シール一体型膜電極接合体12の電解質膜20をアノード電極触媒層26aとカソード電極触媒層26c(双方含めて「電極触媒層26」と呼ぶ)により挟持されており、電解質膜20の外周縁は、補強フィルム22により挟持されている。さらに、シール一体型膜電極接合体12の外周縁には、補強フィルム22と電極触媒層26の外周縁とを覆うようにシールガスケット24が成形されている。シールガスケット24は、シール一体型膜電極接合体12の両面にシールラインSL1、SL2をそれぞれ設けるために成形されたものである。シールラインSL1、SL2はリップ(突起部)を形成している。なお、補強フィルム22は省略されても良い。
電解質膜20はプロトン伝導性を備え、湿潤状態において良好な電気伝導性を示す固体高分子材料からなる薄膜(例えばフッ素系膜や、炭化水素(HC)膜)である。電極触媒層26には、電気化学反応を促進する触媒(例えば白金)が担持されている。また、電極触媒層26は、電解質膜20と接しない外面をそれぞれガス拡散層28で覆われている。ガス拡散層28はカーボン製の多孔体であり、その厚み方向にガスを拡散する性質により各電極触媒層の全面に燃料ガスを供給する機能を持つ。ガス拡散層28は、カーボンペーパーやカーボンクロスにより構成されるものとしても良い。
本明細書において「電極触媒層」とは、触媒層とガス拡散層とで構成される層構造を意味する。また、燃料電池の技術分野において、「電極層」という用語は、電極触媒層(触媒層+ガス拡散層)を意味するものとして使用される場合と、ガス拡散層を含まない触媒層のみを意味するものとして使用される場合がある。そこで、本明細書においても、「電極層」という用語は、これら2つの意味を包含し、少なくとも触媒層を含むものを意味する用語として使用する。また、「膜電極接合体」とは、少なくとも電解質膜と、電解質膜を両側から挟持する一対の電極触媒層とで構成されたものを意味する用語として使用し、「シール一体型膜電極接合体」とは、膜電極接合体の両面にシールガスケットが成形されたものを意味する用語として使用する。
B.シール一体型膜電極接合体の製造工程(比較例):
図3(A)〜(D)は、膜電極接合体の製造工程の一部を示す説明図である。図3(A)において、電解質膜20は、四角枠状の一対の補強フィルム22により、その周縁部を両側から挟持される。補強フィルム22は、例えばポリイミドやポリエチレンナフタレート(PEN)により形成され、25〜250μmの厚みを持つことが好ましい。
なお、電解質膜20および補強フィルム22のそれぞれ同じ位置には、対角となる2隅に一対の貫通孔30が設けられている。この貫通孔30は、電解質膜20と補強フィルム22との位置合わせや、シール一体型膜電極接合体が完成した後、燃料電池への組み付けの際の取り扱い性を向上するためのものである。この貫通孔30はなくても良く、以下の工程におけるいずれで設けるものとしても良い。
図3(B)は、電解質膜20が補強フィルム22で挟持され、圧着された状態を示す。なお、電解質膜20と補強フィルム22は、熱圧着されるものとしても良い。
図3(C)は、マニホールド孔を形成するための打ち抜き工程を示しており、図3(B)におけるIII−III断面を示している。図3(C)において、電解質膜20が補強フィルム22により挟持された部位を打ち抜かれ、貫通孔であるマニホールド孔16a〜16fが形成される。その際に打ち抜かれた端材CPは、そのまま作業屑として廃棄されることになる。なお、図3(C)および図3(D)からも理解できるように、端材CPは形成されるマニホールド孔の数だけ発生する。
図3(D)は、電解質膜20の両面に電極触媒層26が接合された膜電極接合体32を示す。なお、電極触媒層26は、図3(A)〜(D)のいずれの工程で接合されるものとしても良い。
次に、膜電極接合体32は、その周縁部にシールガスケット24が射出成形される。図4(A)は完成したシール一体型膜電極接合体40を示している。シールガスケット24上に二条線で示しているのは流体漏洩を防ぐためのシールラインSL1、SL2である。シールラインSL1、SL2は、電解質膜20と電極触媒層26とを囲むように形成される第1のシールラインSL1と、個々のマニホールド孔を個別にシールする第2のシールラインSL2とで構成され、ともにシール一体型膜電極接合体40の両面に形成されている。
図4(A)の例では、2つのシールラインSL1、SL2に共有部分が存在するが、共有部分のない別々のシールラインとして構成することも可能である。これらの例からも理解できるように、通常は、シールガスケットは、個々のマニホールド孔の周囲をシールするための個別のシールラインと、少なくとも電極触媒層26の発電部位を含む領域をシールするためのガス用シールラインとを有するように構成される。但し、シールガスケット24としては、後者のガス用シールラインのみを有するものも採用可能である。
図4(B)は、図4(A)におけるIV−IV切断面を示しており、図4(C)は、シール一体型膜電極接合体40をセパレータ42により挟持した際のIV−IV切断面を示している。シールラインSL1、SL2はリップを形成しており、装着されたセパレータ42にその頂点が圧着することで流体をシールする。
本比較例によってシール一体型膜電極接合体は製造可能であるが、以下のような問題点がある。
問題点1:
図3(C)において発生する端材CPには、電解質膜20が含まれており、電解質膜20が無駄に廃棄されることになる。さらに言えば、図4(B)において、マニホールド孔16bとシール一体型膜電極接合体40の外周縁の間にも、補強フィルム22に挟持された電解質膜20が存在する。しかし、シール一体型膜電極接合体40が燃料電池10に使用される際においても、その部位に存在する電解質膜20は、燃料電池10の発電には寄与することなく、無駄になっている。
問題点2:
図4(B)において、電解質膜20と、シールガスケット24と、補強フィルム22との接触面CSを破線で示している。電解質膜20は、本来、化学的性質上密着性が悪いため、他の構成部材との密着性は低い。たとえ電解質膜20と補強フィルム22とが熱圧着されていたとしても、電解質膜20が多少溶融したにすぎない非常に弱い結合となる。また、補強フィルム22は、耐熱性の高い材料で構成されるため、溶融する可能性は低い。従って、接触面CSに隙間が生じ、この隙間を介したクロスリークが発生しやすくなる。さらに、電解質膜20は、補強フィルム22に挟持され、シールガスケット24によって保持されていても、その密着性が低いために、電解質膜20自体の膨潤や収縮によるうねりが発生する可能性がある。
問題点3:
図4(B)において電解質膜20は、電極触媒層26とシールガスケット24との間の露出部位NPにおいて露出している。電解質膜20は強度が低いため、露出部位NPにおいて破損しやすい傾向にある。
上記問題点1〜3をふまえ、本発明の実施例を記述する。
C.実施例1:
図5(A)〜(D)は、本実施例1における膜電極接合体の製造工程の一部を示す説明図である。これらの工程は、図5(A)において、電解質膜20が、補強フィルム22の外周よりも小さいことと、電解質膜20と補強フィルム22の間に四角枠状の接着フィルム50を挿入すること以外は、図3(A)〜(D)とほぼ同じである。
接着フィルム50は、電解質膜20と補強フィルム22とを接着し、また、補強フィルム22同士を接着するためのものである。接着フィルム50は、補強フィルム22と同じ大きさとしても良いし、その外周が補強フィルム22より小さいものとしても良い。ただし、接着フィルム50は、電解質膜20の外縁部を挟持できる大きさであることが好ましい。また、接着フィルム50の厚みは10〜50μmであることが好ましい。
接着フィルム50は、シリコン系またはアクリル系の粘着フィルムとしても良い。粘着フィルムであれば、電解質膜20と補強フィルム22との圧着の際に、熱加工する工程を必要としない。また、接着フィルム50は、熱可塑性材料(例えば、ポリプロピレンやポリエチレン)で形成しても良く、熱硬化性材料(例えば、アクリルやエポキシあるいはウレタン)で形成しても良い。これらの場合は、熱加工する工程が必要となるが、密着性の向上が期待できる。
図5(B)において、挟持されている電解質膜20の外周端20Lを破線で示してある。電解質膜20の外周端20Lは、マニホールド孔形成部位より内側であることが好ましい。これによって、図5(C)において、マニホールド孔16a〜16fを形成する際に打ち抜かれた端材CP2には、電解質膜20が含まれることがなくなり、上記問題点1において指摘した電解質膜20の無駄が低減される。
図6(A)は、膜電極接合体54(図5(D))の外周縁にシールガスケットを射出成形し、完成したシール一体型膜電極接合体60を示しており、図6(B)は、図6(A)におけるVI−VI切断面を示している。図6(A)〜図6(B)はそれぞれ、図4(A)〜図4(B)に対応した図である。図6(A)〜(B)において、破線20Lは電解質膜20の外周端を示しており、破線26Lは電極触媒層26の外周端を示している。また、図6(B)において、電解質膜20のうちで、電極触媒層26と補強フィルム22のいずれにも覆われていない部位を単層部位SPとして示し、電解質膜20が補強フィルム22で補強されている部位を補強部位RPとして示している。なお、図6(B)において、接着フィルム50は省略してある。
図6(B)からも理解できるように、マニホールド孔16bとシール一体型膜電極接合体60の外周縁との間には、シールガスケット24の中に電解質膜20は存在しておらず、上記問題点1(電解質膜の無駄)が改善されている。
図7は、図6(B)において、単層部位SPと補強部位RPとを含む部位を拡大して示している。
電解質膜20の補強部位RPにおいては、接着フィルム50が存在するため、電解質膜20と補強フィルム22との間の密着性は向上している。これによって、上記問題点2におけるクロスリークの発生の可能性が低減する。また、電解質膜20の膨潤、収縮による、電解質膜20のうねりの発生も低減される。
図6(B)および図7において、電解質膜20の単層部位SPは、シールガスケット24によって被覆されている。これによって、比較例において図4(B)で説明した露出部位NPにおける電解質膜20の破損の可能性を低減することができ、上記問題点3が解消される。
なお、本実施例1によれば、上記問題点1〜3に対する効果以外にも、次のような効果が得られる。
シールガスケット24は剛性(ヤング率)の低いシール部材によって構成されるため、シールラインSL1、SL2の変形により、そのシール性を悪化させる場合がある。また、本実施例1のように、シールラインにリップを形成した場合、そのリップが形状を崩し倒れてしまい(リップ倒れ)、さらにシール性を悪化させる可能性がある。
そこで本実施例1で示すように、シール一体型膜電極接合体60の表面から垂直な方向から見たとき(即ち図6(A))に、補強フィルム22が、シールラインSL1、SL2の形成される位置でシールガスケット24に包まれた構成としても良い。補強フィルム22はシール部材よりも剛性が高いので、このような構成をとることで、シールラインSL1、SL2の形成部位におけるシールガスケット24の剛性が向上する。この結果、シールラインSL1、SL2が変形する可能性を低減できる。
また、図6(B)に示すように、シールラインSL1、SL2の形成される部位にある補強フィルム22は、シールガスケット24に形成されるリップの幅より広い幅を有することが好ましい。この構成では、さらに、シールラインの形成部位におけるシールガスケット24の剛性が向上し、リップ倒れ発生の可能性を低減できる。
D.実施例2:
図8は、本実施例2におけるシール一体型膜電極接合体の一部切断面を示しており、図7に対応している。
本実施例2においては、電極触媒層26の外周端26Lとシールガスケット24とが接しているが、シールガスケット24は、電極触媒層26は覆っていない。このような構成であっても、上記実施例1とほぼ同じ効果を得ることができる。さらに、実施例1に較べ、シール部材の使用量を少なくできる。
E.実施例3:
図9(A)は、本実施例3におけるシール一体型膜電極接合体の一部切断面を示しており、図6(B)に対応している。
本実施例3においては、シール一体型膜電極接合体は、補強フィルム22を有していない。また、図9(A)で示すように、電解質膜20の外周端と電極触媒層26の外周端とが破線LLの位置において重なっており、電解質膜20が電極触媒層26の外側に突出していない。そして、これらの層20、26の外周縁部にシールガスケット24が形成されている。シールガスケット24には、上記実施例1、2同様に、シールラインSL1、SL2とマニホールド孔16a〜16fとが形成されている。
本実施例3の構成によれば、上記実施例1、2と同様に、電解質膜20の使用量を削減できる。また本実施例3では補強フィルム22を使用しないため、材料費のコストを上記実施例1、2よりも削減できる。以下において、本実施例3の構成によるシール一体型膜電極接合体を燃料電池に使用する場合を考察する。
図9(B)は、本実施例3のシール一体型膜電極接合体に対してセパレータ42を装着した状態を示す。本実施例3の構成では、電解質膜20と電極触媒層26の外周端が同じ位置(破線LL)にあるため、実際に燃料電池に使用した場合、図9(B)において矢印CLで示される経路でクロスリークが発生する可能性が上記実施例1、2よりも高いと推測される。即ち、上記実施例1、2においては、図7で示したように、補強フィルム22が電解質膜20を補強部位RPにおいて挟持しており、さらに、電解質膜20と補強フィルム22との密着性が、接着フィルム50によって向上している。そのため、クロスリークの発生の可能性は低減されており、この点においては、本実施例3に較べ上記実施例1、2の方が好ましい。
図10(A)は、図9(B)に示したシール一体型膜電極接合体のマニホールド孔16bに流体が流入した際にかかる圧力を矢印で示している。実際に各マニホールド孔16a〜16fにガスや水が流入する際には、その内壁面にかなりの圧力がかかる為、本実施例3のようにシールガスケット24が剛性の低いシール部材のみで構成されている場合、図10(B)に示すように、シールガスケット24の外周縁部がセパレータ42から脱落する可能性がある。一方、実施例1および実施例2においては、図6(B)に示すように、シールガスケット24の中には補強フィルム22が存在し、各マニホールド孔16a〜16fの周囲を囲んでいるため、その内壁面の強度が向上している。従って、図9(B)で示すようなシールガスケット24の脱落の可能性が低減されており、この点においても、本実施例3に較べ上記実施例1、2の方が好ましい。
さらに上記実施例1、2では、補強フィルム22により、シール一体型膜電極接合体自体の強度が向上し、シール一体型膜電極接合体を燃料電池に組み付ける際の取り扱い性(ハンドリング)が向上している。この点においても、本実施例3に較べ上記実施例1、2の方が好ましい。
F.実施例4:
図11(A)〜(B)は、本実施例4におけるシール一体型膜電極接合体の製造工程の一部を示す説明図である。図11(A)〜(B)は、実施例1の図5(A)〜(B)とほぼ同じである。但し、図11(A)では、図5(A)における接着フィルム50がなく、さらに、補強フィルム22には予めマニホールド孔16a〜16fが形成されている点で図5(A)と異なっている。図11(B)の後の工程は、図5(C)〜図5(D)と同じなので省略する。なお、マニホールド孔16a〜16fは、実施例1と同様に、シールガスケット24の射出成形の前に形成するものとしても良い。
本実施例4においては、図11(A)の工程の前に、補強フィルム22に表面加工を施すことで、電解質膜20と補強フィルム22の密着性および補強フィルム22同士の密着性を向上している。
図12は、図11(B)における膜電極接合体110のA−A切断面を示しており、膜電極接合体110には、シールガスケット24が射出成形してある。また、補強フィルム22の表面と裏面の表層には上述の表面加工により、被加工面FSが形成されている。被加工面FSに対して行う表面加工処理としては、プラズマ処理や、コロナ処理、あるいはプライマー処理(カップリング処理)を採用することができる。これにより、本実施例4は、上記実施例1、2とほぼ同じ効果を実現できる。さらに本実施例4では接着フィルム50を用いないので、上記実施例1、2に較べ、接着フィルム50と補強フィルム22との位置あわせをする手間を省くことが出来る。本実施例4における補強フィルム22は、厚さが100〜250μmであることが好ましく、ポリプロピレンや、ポリエチレンで構成されるものとしても良い。
なお、被加工面FSに、又は、表面加工されていない補強フィルム22の表面に、別材料(例えば、アクリル、エポキシ、ウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)を付加することで接着層を形成するとしても良い。接着層の厚さとしては、20〜50μm程度が好ましい。接着の際の溶着方法としては、熱圧着や、超音波溶着、高周波溶着などで良い。また、この場合における補強フィルム22は、厚さは80〜200μmが好ましく、構成材料としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)や、ポリエチレンテフタレート(PET)や、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)や、ポリエーテルスルフォン(PES)や、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが好ましい。
G.実施例5:
図13(A)〜(B)は、本実施例5におけるシール一体型膜電極接合体の製造工程の一部を示す説明図である。図13(A)において、四角枠状の補強板材130を準備する。この補強板材130には、予めその周縁部にマニホールド孔16a〜16fが形成されている。また、補強板材130の内周縁より小さい電解質膜20と、電解質膜20をその両側から挟持する電極触媒層26を準備する。
補強板材130は、厚さ50〜250μm程度であることが好ましい。また、補強板材130の材料としては、PENや、PETや、PPSや、PEEKや、ポリエーテルイミド(PEI)や、ポリプロピレン(PP)や、ポリイミド(PI)や、ポリアミドイミド(PAI)などが好ましい。なお、上記実施例1、2では、2枚の補強フィルム22を用いていたのに対して、本実施例5では、補強板材130は単体であるため、より曲げ強度の高い板材を使用することが好ましい。
図13(B)は、補強板材130の枠内に電解質膜20と電極触媒層26とを配置した、本実施例5における膜電極接合体132を示している。電解質膜20は、その周縁部が電極触媒層26の外周から突出するように、電極触媒層26に両側から挟持されている。また、電解質膜20の周縁部は補強板材130に接触しないように配置されている。
図14(A)は、膜電極接合体132の周縁部にシールガスケット24を射出成形し、完成したシール一体型膜電極接合体140を示しており、図6(A)に対応する図である。
図14(B)は、図14(A)におけるB−B切断面を示している。図14(B)は、図6(B)とほぼ同じであるが、2枚の補強フィルム22の代わりに1枚の補強板材130がシールガスケット24の中に存在する点、および補強板材130が電解質膜20に接していない点が図6(B)と異なっている。
本実施例5によれば、実施例1とほぼ同じ効果が得られる。しかも、電解質膜20と補強板材130が接していないため、実施例1および実施例4における電解質膜20と補強板材130の圧着工程(あるいは接着工程)は不要である。なお、電解質膜20の外周縁と補強板材130とは互いに接していても良い。
H.実施例6:
図15(A)は、本実施例6における膜電極接合体152を示す。図15(A)は、補強板材130の代わりに補強部材150を使用していること以外は、図13(B)と同じである。
補強部材150は、シール一体型膜電極接合体の外周縁を補強する外枠部150aと、各マニホールド孔16a〜16fの外周縁を囲む孔枠部150bと、外枠部150aと孔枠部150bとを接続する接続部150cとから構成される連続した形状を有している。補強部材150の厚みは、50〜500ミクロン程度が好ましい。また、補強部材150は、前述した補強板材130と同じ材料で形成しても良く、あるいは、ガラスエポキシ樹脂やフェノール樹脂で形成しても良い。なお、補強部材150は、連続した一体的な形状を有していなくとも良く、複数の部材に分割されていても良い。
図15(B)は、膜電極接合体152の外周縁にシールガスケット24を射出成形し、完成したシール一体型膜電極接合体154である。図15(B)は、図14(A)に対応した図である。図15(C)は、図15(B)におけるC−C切断面を示しており、補強部材150以外は、図14(B)と同じである。
図15(C)から理解できるように、外枠部150aはシール一体型膜電極接合体154の外周縁の端面を構成しており、孔枠部150bは、マニホールド孔16a〜16fの内壁面を構成している。また、両者はシールガスケット24から露出している。このような構成であっても、リップ倒れを防ぐ効果を除き、実施例5とほぼ同じ効果が得られる。また、本実施例6の構成によれば、実施例5における補強板材130よりも、補強部材150は材料の使用量を少なくでき、コストの低減が可能である。なお、外枠部150aおよび孔枠部150bは、シールガスケット24に被覆されるものとしても良い。
I.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
変形例1:
実施例1において、補強フィルム22は1枚でも良く、電解質膜20を挟持することなく、電解質膜20の片面のみに設けるようにしても良い。このような構成であっても、実施例1とほぼ同じ効果が得られる。
変形例2:
図7および図8において、補強フィルム22および接着フィルム50が電解質膜20の単層部位SPを被覆するものとしても良い。この変形例によれば、単層部位SPが無くなるので、さらなる強度の向上を期待できる。また、シールガスケット24と電解質膜20との密着性より、接着フィルム50と電解質膜20との密着性が高いため、クロスリークの発生の可能性をさらに低減できる。
変形例3:
図15において、補強部材150は、シールラインSL1、SL2と同じ形状を有する針金状の補強枠としても良く、その各構成部はリップの形成される幅より広い幅を有するように構成されるものとしても良い。これにより、実施例6で得られる効果に加え、リップ倒れの発生の可能性を低減できる。
燃料電池の概略構成を示す説明図。 シール一体型膜電極接合体の断面図。 比較例における膜電極接合体の製造工程を示す説明図。 比較例におけるシール一体型膜電極接合体を示す説明図。 実施例1における膜電極接合体の製造工程を示す説明図。 実施例1におけるシール一体型膜電極接合体を示す説明図。 実施例1におけるシール一体型膜電極接合体の一部拡大断面図。 実施例2におけるシール一体型膜電極接合体の一部拡大断面図。 実施例3におけるシール一体型膜電極接合体の一部断面図。 実施例3におけるシールガスケットのセパレータからの脱落を説明する模式図。 実施例4における膜電極接合体の製造工程を示す説明図。 実施例4におけるシール一体型膜電極接合体の一部拡大断面図。 実施例5における膜電極接合体の製造工程を示す説明図。 実施例5におけるシール一体型膜電極接合体を示す説明図。 実施例6におけるシール一体型膜電極接合体を示す説明図。
符号の説明
10…燃料電池
11…単セル
12…シール一体型膜電極接合体
14…セパレータ
14a…カソードプレート
14b…中間プレート
14c…アノードプレート
16a〜16f…マニホールド孔
20…電解質膜
20L…電解質膜の外周端
22…補強フィルム
24…シールガスケット
26…電極触媒層
26a…アノード電極触媒層
26c…カソード電極触媒層
26L…電極触媒層の外周端
28…ガス拡散層
30…貫通孔
32…膜電極接合体(比較例)
40…シール一体型膜電極接合体(比較例)
42…セパレータ
50…接着フィルム
54…膜電極接合体(実施例1)
60…シール一体型膜電極接合体(実施例1)
110…膜電極接合体(実施例3)
130…補強板材(実施例5)
132…膜電極接合体(実施例5)
140…シール一体型膜電極接合体(実施例5)
150…補強部材(実施例6)
152…膜電極接合体(実施例6)
154…シール一体型膜電極接合体(実施例6)
CL…クロスリークを示す矢印
CP、CP2…端材
CS…接触面
FS…被加工面
LL…外周縁を示す破線
NP…露出部位
RP…補強部位
SL1…第1のシールライン
SL2…第2のシールライン
SP…単層部位

Claims (7)

  1. 燃料電池に使用されるシール一体型膜電極接合体であって、
    電解質膜と、前記電解質膜を両側から挟む一対の電極層とを含む膜電極接合体と、
    前記電極層の発電部位の周囲をシールするための第1のシールラインを含むシールガスケットと、
    を備えており、
    前記シールガスケットを構成するシール部材は、前記電解質膜が露出しないように前記電極層と接した状態で形成されており、
    前記電解質膜は、前記第1のシールラインに囲まれた範囲内にのみ配置されていることを特徴とするシール一体型膜電極接合体。
  2. 請求項1に記載のシール一体型膜電極接合体であって、
    前記電極層は、ガス拡散層を備えている、
    シール一体型膜電極接合体。
  3. 請求項1または請求項2に記載のシール一体型膜電極接合体であって、
    前記シールガスケットは、前記シール部材の内部に前記シール部材よりも剛性の高い補強部材を包んでおり、
    前記第1のシールラインは、前記シール一体型膜電極接合体を表面に対し垂直な方向から見たときに、前記補強部材が存在する位置に形成されている、
    シール一体型膜電極接合体。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のシール一体型膜電極接合体であって、
    前記シールガスケットにおいて前記第1のシールラインが形成される位置にある前記補強部材が、前記第1のシールラインのリップの幅方向に、前記リップの幅より大きい幅を有している、
    シール一体型膜電極接合体。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のシール一体型膜電極接合体であって、
    前記電解質膜の外周が、前記電極層の外に突出した突出部を有しており、
    前記補強部材が、前記電解質膜の突出部を両側から挟持するとともに、
    2つの前記補強部材が、前記電解質膜の外周縁において互いに接しており、
    前記シールガスケットが、前記電解質膜の突出部を被覆している、
    シール一体型膜電極接合体。
  6. 請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のシール一体型膜電極接合体であって、
    前記シール一体型膜電極接合体を貫通するマニホールド孔が形成されており、
    前記マニホールド孔は、前記電解質膜が存在しない位置を貫通しており、
    前記シールガスケットは、前記マニホールド孔の周囲をシールするための第2のシールラインを有する、
    シール一体型膜電極接合体。
  7. 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のシール一体型膜電極接合体であって、
    前記シールガスケットが、射出成形により形成されている、
    シール一体型膜電極接合体。
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