JP2007247674A - 逆入力遮断クラッチ - Google Patents

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Abstract

【課題】ロック解除に際し、弾性部材の異常な変形や曲げ部からの折損の発生を未然に防止する。
【解決手段】入出力軸22,23と、固定外輪21と、固定外輪21と出力軸23間に係合離脱可能に設けられたローラ30a,30b、およびローラ30a,30b間に配設されて両側のローラ30a,30bを固定外輪21と出力軸23間に係合させる方向に付勢する弾性部材42からなり、出力軸23からの逆入力トルクに対して出力軸23をロックし、入力軸22からの回転トルクに対してロックを解除するロック手段44と、ロック解除状態の時に、入力軸22からの回転トルクを出力軸23に伝達するトルク伝達手段45と、各対のローラ30a,30bに作用する弾性部材42の押圧力を独立させる遮蔽板43とを備え、ロック解除時に弾性部材42の弾性力に抗して移動するローラ30a,30bの位置を規制する突起部43a,43bを遮蔽板43に設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、入力側からの入力トルクを出力側に伝達する一方、出力側からの逆入力トルクをロックして入力側に還流させない機能を具備した逆入力遮断クラッチに関する。
例えば、駆動源からの入力トルクを出力側機構に伝達して所要の動作を行なう装置では、駆動源の停止時、出力側機構の位置が変動しないようにこれを保持する機能が求められる場合がある。電動シャッターを例にとると、駆動モータからの正方向または逆方向の入力トルクを出力側の開閉機構に入力して、シャッターの開閉動作を行なうが、その開閉動作の途中で何等かの事情(停電など)により駆動源が停止した場合、シャッターの自重下降による逆入力トルクが入力側に還流すると、入力側機器に損傷が生じる可能性がある。そのため、シャッターの位置を保持し、シャッターからの逆入力トルクを入力側に還流させない機能を持った機構が必要になる。
このような出力側からの逆入力トルクをロックして入力側に還流させない機能を具備した機構の一つに逆入力遮断クラッチがある(例えば、特許文献1参照)。
従来の逆入力遮断クラッチは、図8および図9に示すように静止状態にある固定外輪1に入力軸2と出力軸3を転がり軸受4,5を介して正逆回転自在に支承した構造を具備する。入力軸2には、軸中心から径方向外側へずれた位置にピン8が軸方向に突設され、出力軸3には、入力軸2と対向する端面に径方向に沿う凹溝7が形成されている。前述したピン8の先端を出力軸3と対向する端面から突出させて、出力軸3の端面に形成された凹溝7に嵌入させることにより、入力軸2からの回転トルクを出力軸3に伝達可能としている。
一方、入力軸2の出力軸側端部には径方向外側へ拡径したフランジ部2aが一体的に形成され、そのフランジ部2aの外周から軸方向の出力軸側へ延びる複数(図では四つ)の柱部2bが円周方向等間隔に形成されている。この円周方向に隣接する柱部2b間の空間は、軸方向の一方に向かって開口したポケット9を構成し、各ポケット9に一対のローラ10a,10bがそれぞれ配される。図9の符号14は、入力軸2と出力軸3および転がり軸受5との間に配設され、ポケット9内に収容されたローラ10a,10bの軸方向移動を規制する間座である。
出力軸3の入力軸側外周には、前述した入力軸2の柱部2a間に位置するポケット9と対応させて複数対(図では四対)のカム面11a,11bが円周方向等間隔に形成されている。この出力軸3のカム面11a,11bと固定外輪1の内周面との間に、複数対(図では四対)のローラ10a,10bがそれぞれ配され、入力軸2の柱部2a間に形成されたポケット9に収容される。一対のローラ10a,10bのうち、一方のローラ10aは一対のカム面11a,11bのうちの一方のカム面11aに位置し、他方のローラ10bは他方のカム面11bに位置するように配されている。
一対のローラ10a,10b間にはN字状をなす一対の弾性部材12a,12bが介挿され、それぞれの弾性部材12a,12bが一対のローラ10a,10bを互いに離間させる方向に弾性的に押圧する。また、入力軸2からのトルク伝達時に一方のローラ10aに作用する弾性部材12aの押圧力と他方のローラ10bに作用する弾性部材12bの押圧力とを独立させる仕切部材としての遮蔽板13を一対のローラ10a,10b間に配設し、その遮蔽板13の両面に弾性部材12a,12bをそれぞれ固着している。
この逆入力遮断クラッチでは、図10に拡大して示す中立状態で、出力軸3に時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材12aの弾性力により反時計方向(回転方向後方)のローラ10aがその方向の楔隙間と係合して、出力軸3が固定外輪1に対して時計方向にロックされる。逆に、出力軸3に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材12bの弾性力により時計方向(回転方向後方)のローラ10bがその方向の楔隙間と係合して、出力軸3が固定外輪1に対して反時計方向にロックされる。従って、出力軸3からの逆入力トルクは、一対のローラ10a,10bによって正逆両回転方向にロックされる。
一方、入力軸2に回転トルクが入力されて例えば時計方向に回動すると、図11に拡大して示すように、まず、入力軸2の反時計方向(回転方向後方)の柱部2bがその方向(回転方向後方)のローラ10aと係合して、これを一方の弾性部材12aの弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ10aがその方向の楔隙間から離脱して、出力軸3のロック状態が解除されてその出力軸3が時計方向に回動可能となる。
入力軸2がさらに時計方向が回動すると、入力軸2のピン8が出力軸3の凹溝7の壁面に当接することにより、入力軸2からの時計方向の回転トルクがピン8と凹溝7との係合部分を介して出力軸3に伝達され、出力軸3が時計方向に回動する。この時、時計方向(回転方向前方)のローラ10bは、その方向の楔隙間と係合せず、出力軸3のカム面11bと固定外輪1の内周面に接触した状態で空転する。
入力軸2に反時計方向の回転トルクが入力された場合は、前述とは逆の動作で出力軸3が反時計方向に回動する。従って、入力軸2からの正逆両回転方向の回転トルクは、ピン8と凹溝7との係合部分を介して出力軸3に伝達され、出力軸3が正逆両回転方向に回動する。
この入力軸2からのトルク伝達時、一対のローラ10a,10b間に配設された遮蔽板13により、一方のローラ10aに作用する弾性部材12aの押圧力と他方のローラ10bに作用する弾性部材12bの押圧力とを独立させている。従って、回転方向後方に位置するローラ10a(図10参照)を押圧する弾性部材12aのみが遮蔽板13との間で変形するだけで、回転方向前方に位置するローラ10bを押圧する弾性部材12bは変形しない。
このように一方のローラ10aに作用する弾性部材12aの押圧力が他方のローラ10bに作用する弾性部材12bの押圧力の大きさに影響することがないので、その他方のローラ10bに作用する弾性部材12bのばね荷重が増加することはない。その結果、入力軸2から出力軸3への回転伝達におけるトルク損失を低減させることができる。
特開2003−343601号公報
ところで、前述した逆入力遮断クラッチでは、入力軸2に連結された駆動モータが回転停止している状況の場合、固定外輪1の内周面と出力軸3のカム面11a,11bとの間に形成された楔隙間でローラ10a,10bが係合することによりその逆入力トルクを遮断するロック状態を保持している。この逆入力トルクを遮断するロック状態を維持しつつ、駆動モータの回転開始により入力軸2に回転トルクが入力されて前述のロック状態を解除するに際しては、逆入力トルクが負荷され続けている状況であり、固定外輪1あるいは出力軸3とローラ10a,10b間の摩擦力や楔隙間内での構成部品の弾性変形もあるため、逆入力トルクよりも大きな解除力、つまり、入力軸2からの回転トルクが必要である。従って、駆動モータからの大きな出力を必要とする。
このロック解除時、固定外輪1あるいは出力軸3とローラ10a,10b間の摩擦力や楔隙間内での構成部品の弾性変形が一気に開放されることから、ローラ10a,10bが楔隙間の狭い方から広い方へはじき出され、弾性部材12a,12bに勢いよく衝突する現象(ポッピング現象)が生じることがある。この現象が繰り返されると、弾性部材12a,12bは許容応力を超えた曲げ荷重が負荷され、弾性部材12a,12bの異常な変形や曲げ部からの折損が発生する可能性がある。図12では、時計方向の回転トルクにより弾性部材12aの異常な変形や曲げ部からの折損が発生した場合を例示する。
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、入力軸からのトルク伝達時のロック解除に際して、ローラの押圧による弾性部材の異常な変形や曲げ部からの折損の発生を未然に防止し得る逆入力遮断クラッチを提供することにある。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明の逆入力遮断クラッチは、回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、その静止側部材と出力側部材との間に係合離脱可能に設けられた複数対の係合子、および各対の係合子間に配設されて両側の係合子をそれぞれ静止側部材と出力側部材に係合させる方向に付勢する弾性部材からなり、出力側部材からの逆入力トルクに対して出力側部材をロックし、入力側部材からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段と、入力側部材と出力側部材との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段と、各対の係合子の一方に作用する弾性部材の押圧力と他方に作用する弾性部材の押圧力を独立させる仕切部材とを備え、ロック手段によるロック解除時に弾性部材の弾性力に抗して移動する係合子の位置を規制する突起部を仕切部材に設けたことを特徴とする。
本発明の逆入力遮断クラッチでは、入力側部材からの回転トルクが入力されていない状況の場合、静止側部材と出力側部材間に形成された楔隙間で係合子が係合することによりその逆入力トルクを遮断するロック状態を保持している。この逆入力トルクを遮断するロック状態を維持しつつ、入力側部材からの回転トルクが入力されて前述のロック状態を解除するに際しては、逆入力トルクが負荷され続けている状況であり、静止側部材あるいは出力側部材と係合子間の摩擦力や楔隙間内での構成部品の弾性変形のため、逆入力トルクよりも大きな解除力が必要となる。その結果、入力側部材からの大きな回転トルクにより、ロック解除時、静止側部材あるいは出力側部材と係合子間の摩擦力や楔隙間内での構成部品の弾性変形が一気に開放されることから、係合子が楔隙間の狭い方から広い方へはじき出される。
本発明では、ロック手段によるロック解除時に弾性部材の弾性力に抗して移動する係合子の位置を規制する突起部を仕切部材に設けたことにより、楔隙間の狭い方から広い方へはじき出された係合子は、前述の仕切部材の突起部により位置規制される。これにより、係合子が弾性部材に勢いよく衝突することを未然に防止することができるので、弾性部材は許容応力を超えた曲げ荷重が負荷されることなく、弾性部材の異常な変形や曲げ部からの折損が発生することもない。
本発明における各対の係合子のうちの一方の係合子を押圧する弾性部材と他方の係合子を押圧する弾性部材とを一体的に形成した構造とすることが望ましい。このようにすれば、部品点数の削減が図れると共に製品コストの低減化が図れ、構成部品の組み立ても容易となる。
本発明における仕切部材の突起部は弾性部材の切欠き部に配設されていることが望ましい。このようにすれば、ロック解除時に弾性部材の弾性力に抗して移動する係合子にその切欠き部を介して突起部を当接させることが可能な構造となり、その突起部は、係合子の位置を規制する機能を発揮する。なお、この切欠き部の形成は、弾性部材の任意の箇所でよい。
ロック手段には、楔係合力、凹凸係合力、摩擦力、磁気力、電磁力、流体圧力、流体粘性抵抗力、微粒子媒体などによって回転拘束力を付与するものが含まれるが、構造や制御機構の簡素化、動作の円滑化、コストの面などから、楔係合力によって回転拘束力を付与するものが好ましい。具体的には、出力側部材と静止側部材との間に楔隙間を形成し、この楔隙間に対して係合子を係合・離脱させることによって、ロック・空転を切り替える構成とするのがよい。
また、この構成には、楔隙間を形成するためのカム面を出力側部材または静止側部材に設けた構成(係合子としてローラ、ボール等の円形断面のものを用いる)、楔隙間を形成するためのカム面を係合子に設けた構成(係合子としてスプラグ等を用いる)が含まれる。
本発明によれば、ロック手段によるロック解除時に弾性部材の弾性力に抗して移動する係合子の位置を規制する突起部を仕切部材に設けたことにより、楔隙間の狭い方から広い方へはじき出された係合子は、前述の仕切部材の突起部により位置規制される。これにより、係合子が弾性部材に勢いよく衝突することを未然に防止することができるので、弾性部材は許容応力を超えた曲げ荷重が負荷されることなく、弾性部材の異常な変形や曲げ部からの折損が発生することもない。その結果、逆入力遮断クラッチにおける品質の安定化や信頼性の向上が図れる。
本発明に係る逆入力遮断クラッチの実施形態を以下に詳述する。図1〜図3は本発明の実施形態における逆入力遮断クラッチの全体構成を示す。なお、図3は、入力軸、出力軸、ローラ、弾性部材および遮蔽板の組み立て分解状態を示す。
この実施形態の逆入力遮断クラッチは、図1〜図3に示すように回転が拘束される静止側部材としての固定外輪21と、固定外輪21の内周に先端部が挿入され、回転トルクが入力される入力側部材としての入力軸22と、固定外輪21の内周に入力軸22と対向する状態で挿入され、回転トルクが出力される出力側部材としての出力軸23と、その固定外輪21と出力軸23との間に係合離脱可能に設けられた複数対(図では四対)の係合子としてのローラ30a,30b、および各対のローラ30a,30b間に配設されて両側のローラ30a,30bを固定外輪21と出力軸23間に係合させる方向に付勢する弾性部材42からなり、出力軸23からの逆入力トルクに対して出力軸23と固定外輪21とをロックし、入力軸22からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段44と、入力軸22と出力軸23との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力軸22からの入力トルクを出力軸23に伝達するトルク伝達手段45と、各対のローラ30a,30bのうち、一方のローラ30aに作用する弾性部材42の押圧力と他方のローラ30bに作用する弾性部材42の押圧力を独立させる仕切部材としての遮蔽板43とを備え、固定外輪21に入力軸22と出力軸23を転がり軸受24,25を介して正逆回転自在に支承した構造を具備する。
トルク伝達手段45の構造は次のとおりである。入力軸22には、軸中心から径方向外側へずれた位置にピン28が軸方向に突設され、出力軸23には、入力軸22と対向する端面に径方向に沿う凹溝27が形成されている。前述したピン28の先端を出力軸23と対向する端面から突出させて、出力軸23の端面に形成された凹溝27に嵌入させることにより、入力軸22からの回転トルクを出力軸23に伝達可能としている。
一方、ロック手段44の構造は以下のとおりである。入力軸22の出力軸側端部には径方向外側へ拡径したフランジ部22aが一体的に形成され、そのフランジ部22aの外周から軸方向の出力軸側へ延びる複数(図では四つ)の柱部22bが円周方向等間隔に形成されている。この円周方向に隣接する柱部22b間の空間は、軸方向の一方に向かって開口したポケット29を構成し、各ポケット29に一対のローラ30a,30bがそれぞれ配される。図2の符号34は、入力軸22と出力軸23および転がり軸受25との間に配設され、ポケット29内に収容されたローラ30a,30bの軸方向移動を規制する間座である。
出力軸23の入力軸側外周には、前述した入力軸22の柱部22b間に位置するポケット29と対応させて複数対(図では四対)のカム面31a,31bが円周方向等間隔に形成されている。この出力軸23のカム面31a,31bと固定外輪21の内周面との間に、複数対(図では四対)のローラ30a,30bがそれぞれ配され、入力軸22の柱部22b間に形成されたポケット29に収容される。一対のローラ30a,30bのうち、一方のローラ30aは一対のカム面31a,31bのうちの一方のカム面31aに位置し、他方のローラ30bは他方のカム面31bに位置するように配されている。
一対のローラ30a,30b間には弾性部材42が介挿され、この弾性部材42が一対のローラ30a,30bを互いに離間させる方向に弾性的に押圧する。この弾性部材42は、図4(a)に示すように伸縮方向中央のU字状の基部42cと、その基部42cの両側から延びる略N字状の折曲部42a,42bとを一体的に形成した構造を具備する。また、弾性部材42のローラ軸方向中央部位には切欠き部33a,33bが形成されており、この切欠き部33a,33bの形成により折曲部42a,42bのそれぞれがローラ軸方向に沿って二つずつ配されることになる。
また、入力軸22からのトルク伝達時に一方のローラ30aに作用する弾性部材42の折曲部42aの押圧力と他方のローラ30bに作用する弾性部材42の折曲部42bの押圧力とを独立させる弾性変形可能な遮蔽板43は、図4(b)に示すようにU字状の基部43cと、その基部43cのローラ軸方向中央部位に形成された舌片を外側へ彎曲させることにより形成された突起部43a,43bとからなる。この突起部43a,43bは、ロック手段44によるロック解除時に弾性部材42a,42bの弾性力に抗して移動するローラ30a,30bの位置を規制する機能を発揮する。なお、突起部43a,43bの断面形状は、彎曲した曲面形状に限らず、折曲した形状なども可能であって任意である。
図5に示すように、遮蔽板43の基部43cを弾性部材42の基部42cに内挿することにより、遮蔽板43の突起部43a,43bを弾性部材42の切欠き部33a,33b嵌め込む。これにより、遮蔽板43の突起部43a,43bは、弾性部材42の二つの折曲部42a,42b間に配されると共に、弾性部材42の基部42cから突出した状態となる。これら弾性部材42および遮蔽板43は、弾性部材42の基部42cを出力軸23の外周面に形成されたスリット溝32に嵌め込むことにより出力軸23に組み付けられる。その結果、固定外輪21と出力軸23間に配された弾性部材42の折曲部42a,42bの最外側部位がローラ30a,30bにそれぞれ接触する。
なお、この実施形態では、弾性部材42のローラ軸方向中央部位に切欠き部33a,33bを設けて遮蔽板43の突起部43a,43bを配置しているが、切欠き部はローラ軸方向中央部位に限らず、ローラ軸方向端部などに形成することも可能であり、その位置および数は任意である。
この逆入力遮断クラッチでは、図6に拡大して示す中立状態で、出力軸23に時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材42の折曲部42aの弾性力により反時計方向(回転方向後方)のローラ30aがその方向の楔隙間と係合して、出力軸23が固定外輪21に対して時計方向にロックされる。逆に、出力軸23に反時計方向の逆入力トルクが入力されると、弾性部材42の折曲部42bの弾性力により時計方向(回転方向後方)のローラ30bがその方向の楔隙間と係合して、出力軸23が固定外輪21に対して反時計方向にロックされる。従って、出力軸23からの逆入力トルクは、一対のローラ30a,30bによって正逆両回転方向にロックされる。
一方、入力軸22に回転トルクが入力されて例えば時計方向に回動すると、図7に拡大して示すように、まず、入力軸22の反時計方向(回転方向後方)の柱部22bがその方向(回転方向後方)のローラ30aと係合して、これを一方の弾性部材42の折曲部42aの弾性力に抗して時計方向(回転方向前方)に押圧する。これにより、反時計方向(回転方向後方)のローラ30aがその方向の楔隙間から離脱して、出力軸23のロック状態が解除されてその出力軸23が時計方向に回動可能となる。
入力軸22がさらに時計方向が回動すると、入力軸22のピン28が出力軸23の凹溝27の壁面に当接することにより、入力軸22からの時計方向の回転トルクがピン28と凹溝27との係合部分を介して出力軸23に伝達され、出力軸23が時計方向に回動する。この時、時計方向(回転方向前方)のローラ30bは、その方向の楔隙間と係合せず、出力軸23のカム面31bと固定外輪21の内周面に接触した状態で空転する。
入力軸22に反時計方向の回転トルクが入力された場合は、前述とは逆の動作で出力軸23が反時計方向に回動する。従って、入力軸22からの正逆両回転方向の回転トルクは、ピン28と凹溝27との係合部分を介して出力軸23に伝達され、出力軸23が正逆両回転方向に回動する。
この入力軸22からのトルク伝達時、一対のローラ30a,30b間に配設された遮蔽板43により、一方のローラ30aに作用する弾性部材42の折曲部42aの押圧力と他方のローラ30bに作用する弾性部材42の折曲部42bの押圧力とを独立させるようにしたことから、一方のローラ30aに作用する弾性部材42の折曲部42aの押圧力が他方のローラ30bに作用する弾性部材42の折曲部42bの押圧力の大きさに影響することがないので、その他方のローラ30bに作用する弾性部材42の折曲部42bのばね荷重が増加することはない。その結果、入力軸22から出力軸23への回転伝達におけるトルク損失を低減させることができる。
この逆入力遮断クラッチでは、入力軸22からの回転トルクが入力されていない状況の場合、固定外輪21と出力軸23間に形成された楔隙間でローラ30a,30bが係合することによりその逆入力トルクを遮断するロック状態を保持している。この逆入力トルクを遮断するロック状態を維持しつつ、入力軸22からの回転トルクが入力されて前述のロック状態を解除するに際しては、逆入力トルクが負荷され続けている状況であり、固定外輪21あるいは出力軸23とローラ30a,30b間の摩擦力や楔隙間内での構成部品の弾性変形のため、逆入力トルクよりも大きな解除力が必要となる。このロック解除時、固定外輪21あるいは出力軸23とローラ30a,30b間の摩擦力や楔隙間内での構成部品の弾性変形が一気に開放されることから、ローラ30a,30bが楔隙間の狭い方から広い方へはじき出される。
この実施形態では、弾性部材42の二つの折曲部42a,42b間に遮蔽板43の突起部43a,43bを配したことにより、ロック解除時、楔隙間の狭い方から広い方へはじき出されたローラ30a,30bは、弾性部材42の基部42cから突出した突起部43a,43bに当接して位置規制される(図7参照)。
なお、図7では、入力軸22からの回転トルクが図示矢印で示すように時計方向に作用した場合を例示しているため、楔隙間の狭い方から広い方へはじき出されたローラ30aが、弾性部材42の基部42cから突出した遮蔽板43の突起部43aで位置規制された状態を示している。入力軸22からの回転トルクが反時計方向に作用した場合には、楔隙間の狭い方から広い方へはじき出されたローラ30bが、弾性部材42の基部42cから突出した遮蔽板43の突起部43bで位置規制されることになる。
これにより、ローラ30a,30bが楔隙間の狭い方から広い方へはじき出される現象(ポッピング現象)が発生しても、ローラ30a,30bを突起部43a,43bで係止することができるので、ローラ30a,30bが弾性部材42の折曲部42a,42bに勢いよく衝突することを未然に防止することができる。その結果、弾性部材42の折曲部42a,42bは許容応力を超えた曲げ荷重が負荷されることなく、弾性部材42の折曲部42a,42bの異常な変形や曲げ部からの折損が発生することもない。
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
本発明に係る逆入力遮断クラッチの実施形態で、図2のB−B線に沿う断面図である。 図1のA−A線に沿う断面図である。 入力軸、出力軸、ローラ、弾性部材および遮蔽板を示す組み立て分解斜視図である。 (a)は弾性部材を示す斜視図、(b)は遮蔽板を示す斜視図である。 図4(b)の遮蔽板を図4(a)の弾性部材に組み付けた状態を示す斜視図である。 図1の中立状態を示す要部拡大断面図である。 入力軸から回転トルクが入力された状態を示す要部拡大断面図である。 逆入力遮断クラッチの従来例で、図9のD−D線に沿う断面図である。 図8のC−C線に沿う断面図である。 図8の中立状態を示す要部拡大断面図である。 入力軸から回転トルクが入力された状態を示す要部拡大断面図である。 入力軸から回転トルクが入力された状態で、ローラが弾性部材に勢いよく衝突する現象を示す要部拡大断面図である。
符号の説明
21 静止側部材(固定外輪)
22 入力側部材(入力軸)
23 出力側部材(出力軸)
30a,30b 係合子(ローラ)
42 弾性部材
43 仕切部材
43a,43b 突起部
44 ロック手段
45 トルク伝達手段

Claims (4)

  1. 回転トルクが入力される入力側部材と、回転トルクが出力される出力側部材と、回転が拘束される静止側部材と、その静止側部材と前記出力側部材との間に係合離脱可能に設けられた複数対の係合子、および各対の係合子間に配設されて両側の係合子をそれぞれ静止側部材と出力側部材に係合させる方向に付勢する弾性部材からなり、出力側部材からの逆入力トルクに対して出力側部材をロックし、入力側部材からの入力トルクに対してロック状態を解除するロック手段と、前記入力側部材と出力側部材との間に設けられ、ロック解除状態の時に、入力側部材からの入力トルクを出力側部材に伝達するトルク伝達手段と、前記各対の係合子の一方に作用する弾性部材の押圧力と他方に作用する弾性部材の押圧力を独立させる仕切部材とを備えた逆入力遮断クラッチであって、
    前記ロック手段によるロック解除時に弾性部材の弾性力に抗して移動する係合子の位置を規制する突起部を前記仕切部材に設けたことを特徴とする逆入力遮断クラッチ。
  2. 前記各対の係合子のうちの一方の係合子を押圧する弾性部材と他方の係合子を押圧する弾性部材とを一体的に形成した請求項1に記載の逆入力遮断クラッチ。
  3. 前記仕切部材の突起部を弾性部材の切欠き部に配設した請求項1又は2に記載の逆入力遮断クラッチ。
  4. 前記係合子がローラあるいはスプラグのいずれかである請求項1〜3のいずれか一項に記載の逆入力遮断クラッチ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2018021354A1 (ja) * 2016-07-26 2018-02-01 並木精密宝石株式会社 回転位置保持機構
CN115163692A (zh) * 2022-08-08 2022-10-11 中南大学 一种应用非等长楔块的缓接型斜撑离合器

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