JP2007242312A - シート状固体電池およびその製造方法 - Google Patents

シート状固体電池およびその製造方法 Download PDF

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正春 宮久
Tomohiro Ueda
智博 植田
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Abstract


【課題】一層の薄型化およびフレキシブル化を図りながらも、短絡発生を確実に防止できる高い信頼性と電池相互の接続や機器への接続を容易に行える構成を備えた密閉構造のシート状固体電池およびその電池を高精度に、且つ容易に製造できる方法を提供する。
【解決手段】金属箔からなる正極集電体1と負極集電体3とが、正極および負極活物質2,4とポリマー電解質7とからなる発電要素と、この発電要素を取り囲む枠状の熱融着シート8,9とを介在して積層されて、両集電体1,3における熱融着シート8,9を介在して互いに相対向する環状部分が相互に熱融着されて、発電要素が密閉空間の内部に封止されている。両集電体1,3の各々の一部がそれぞれ熱融着シート8,9の熱融着された端縁よりも外方に突出され、熱融着シート8,9における両集電体1,3が突出する箇所を除く全端縁が、両集電体1,3の熱溶着された端縁よりも外方に突出されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ペースメーカーなどの医療機器、ICカードまたは小型センサといった小型で薄型の電子機器の駆動電源として好適に用いることができるシート状固体電池およびそのシート状固体電池を容易、且つ高精度に製造できる方法に関するものである。
近年の電子機器は小型化、薄型化および軽量化の傾向が著しく、このような電子機器の駆動電源としてはコイン型電池が主に用いられてきた。このコイン型電池は、薄型化が一層促進されて、現在では0.4mm程度にまで薄型化されたものが実用化されているが、液状の電解質を用いることに起因して薄型化するのに限界があるとともに、フレキシブルな配線基板に組み込んで使用する用途などには不適である。
これに対し、近年では、上記液状の電解質に代えて固体電解質を用いることにより、一層の薄型化および小型化を図った薄型固体電池が開発されている。この薄型固体電池は、ペーパー電池、薄型偏平電池、プレート状電池またはシート状電池などと様々に呼称されており、ICチップと組み合わせて内蔵することによってICカードに構成されて、医療機器、入退場管理、自動改札および情報通信などの分野に好適に用いられて極めて顕著な効果を得ている。
従来の薄型固体電池としては、図12(a)〜(c)に示すような構成を備えたものが知られている。同図(a)の薄型固体電池は、正極30、負極31およびシート状隔膜32の積層物である発電要素が、2枚の外装材33,34とこれらの間に介在した樹脂フレーム37とからなる容器内に収容されているとともに、シート状隔膜32の両端部が樹脂フレーム37に固定された構成になっている(例えば、特許文献1参照)。
また、同図(b)の薄型固体電池は、内部に高分子固体電解質をそれぞれ含有する複合正極38および複合負極39と上記両電極38,39を離間するイオン電導性高分子化合物からなる電解質層40とから構成される発電要素が、正極端子および負極端子をそれぞれ兼用する正極側外装体41および負極側外装体42との間に挟持されているとともに、正極側外装体41と複合正極38との間に正極集電体43が配設され、負極側外装体42と複合負極39との間に負極集電体44が配設され、両外装体41,42の周縁部の間に未架橋フッ素ゴム樹脂からなる封口部材47,48が介在されて、この封口部材47,48同士が熱プレス法により互いに熱溶着されて封口された構成を備えている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、同図(c)の薄型固体電池は、正極端子板49と負極端子板50との間に、二酸化マンガンを活物質とする正極合剤51、電解液を浸漬したセパレータ52および金属リチウム53を順次積層した発電要素が挟持され、両端子板49,50の周縁部を、これらの対向面の間に介在させた封口部材54によって互いに熱融着することにより、封口された構成を有している(例えば、特許文献3参照)。
また、従来の他の薄型固体電池として、正極集電体箔の表面に正極活物質を塗着した正極シートと、負極集電体の表面に負極活物質を塗着した負極シートとが、これらの間にポリマー電解質層を介在するとともに、正極集電体箔の一方の側縁が負極集電体箔の一方の側縁から突出され、且つ負極集電体箔の他方の側縁が正極集電体箔の他方の側縁から突出された状態で互いに積層され、ポリマー電解質層の対向両側縁に、フィルム状の絶縁性部材が対向両側縁に対しこれの全長から突出して設けられていることにより、絶縁性部材によって内部ショートの発生を防止するように図ったリチウムイオンポリマー二次電池が知られている(例えば、特許文献4参照)。
さらに、上記特許文献4のリチウムイオンポリマー二次電池の基本構成と同様の構成を備えているのに加えて、絶縁性部材の一部または全部を、融点若しくは電池内部構成物に溶解または軟化される温度が80℃〜180℃である温度感応部材で形成するとともに、正極活物質の側縁と負極活物質の側縁の全部または一部を温度感応部材を介して積層した構成を付設したリチウムイオンポリマー二次電池が提案されている(例えば、特許文献5参照)。この電池は、過充電または過放電の発生による発熱に伴って温度が絶縁性部材の融点を越えたときに、ポリマー電解質層の両側縁にその全長にわたって設けられた絶縁性部材が溶融流出して、絶縁性部材を介して積層された正極活物質の側縁と負極活物質の側縁の全部または一部が接触して短絡状態が生じる結果、電池の一部が通電体となり、過充電または過放電の状態が一定以上進行しないように図って、電池の発熱を抑制するように図ったものである。
特開平6−89705号公報 特開平10−74496号公報 特許第2807292号公報 特開2001−15171号公報 特開平2003−109668号公報
しかしながら、図12(a)の薄型固体電池は周囲を樹脂フレーム37で封口しているので、薄型化するのに限界がある。図12(b),(c)の薄型固体電池では、正極41,49と負極44,50との絶縁距離は、熱融着シートである封口部材47,48,54の厚み相当分しかなく、正極41,49と負極44,50とが極めて近接しているため、正極41,49や負極44,50に切断バリが存在した場合や、絞り加工によって側周端に形成されたフランジ部分が外圧を受けて変形した場合、あるいは導電性微小異物が存在した場合に、内部短絡が起こるおそれがあり、信頼性に問題がある。特に、これらの薄型固体電池は、全周を熱融着して密閉構造するので、僅かな間隔で対向する正,負極が接触して内部短絡が生じ易く、さらに、熱融着した部分に沿って任意の形状に打ち抜くトリミング工程を経て製造されるので、そのトリミング工程において切断バリが発生して内部短絡が生じ易い。また、側周端に絞り加工が施されているとともに内部短絡が発生するおそれがある構造から、例えば、外装体を兼ねる正極および負極の集電体を金属箔などにより形成して一層の薄型化を図るといったことが難しく、更なる薄型化やフレキシブル化といった近年のニーズに対応することができない。
また、図12(b),(c)の各薄型電池は、外装材33,34、41,42、49,50が薄型化されているのに伴い、レーザースポット溶接でもピンホールが生じるので、機器に接続する場合の接続リードなどを介しての出力端子の取り出しが難しく、また、何れも単体として使用する目的で構成されているので、電池相互を直列または並列接続するのが困難である。
また、特許文献4および5にそれぞれ開示のリチウムイオンポリマー二次電池は、外装体を兼ねる極めて薄い正極集電体箔および負極集電体箔にそれぞれ塗着した正極活物質および負極活物質の各々の表面に電解質スラリーをそれぞれ塗布乾燥して形成した正極シートと負極シートとを、両電解質スラリを互いに重ね合わせた積層状態で熱圧着することにより、両電解質スラリーが熱溶解したのちに硬化する過程を経て互いに融合し、固体化されたポリマー電解質層となるものである。したがって、この電池は、固体化されたポリマー電解質層を備えたものであるから、このポリマー電解質層の周囲を熱融着によりシールする必要がないので、この電池における正,負極の短絡の発生を絶縁性部材によって防止する構成は、一層の薄型化およびフレキシブル化を図ることが可能な密閉構造の電池における短絡発生の防止手段として適用することができない。
詳述すると、上記リチウムイオンポリマー二次電池では、正極活物質および負極活物質の各々の表面に塗布乾燥した電解質スラリーの各々の対向両端部の各間にシート状の2枚の絶縁性部材の側部をそれぞれ挟み込んだ状態で熱圧着することにより、各絶縁性部材がポリマー電解質層に対し外方に突出した状態で設けられている。この対向両端部の2枚の絶縁性部材は、積層時に発生する正,負極シートのずれにより、または積層後に加わる外力により、正,負極シートまたは正,負極の活物質が接触するのを防止する目的で設けられているが、各絶縁性部材は、ポリマー電解質層における正,負極シートのそれぞれの突出方向である対向両端部の各側縁に設けられているだけであるから、その対向両端部に対する左右両側部分での正,負極の内部ショートの発生防止については何ら考慮されていない。
換言すれば、上記電池は、固体状のポリマー電解質層に対してはこれの周囲を熱融着によりシールする密閉構造とする必要のないものであるから、上述の左右両側部分での正,負極の内部ショートの発生防止について、何ら考慮する必要がない。これに対し、正,負極の集電体をポリマー電解質の周囲を取り囲むように熱融着する密閉構造の電池では、正,負極の集電体が何れの方向にもずれる可能性があるのに加えて、正,負極の集電体が僅かな間隙を存して互いに近接した配置で積層されて接触し易い状態であることから、このような電池における正,負極の短絡の発生を防止するに際しては、上記特許文献4,5に開示の技術を応用することすらできない。
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、一層の薄型化およびフレキシブル化を図りながらも、短絡発生を確実に防止できる高い信頼性と電池相互の接続や機器への接続を容易に行える構成を備えた密閉構造のシート状固体電池およびその電池を高精度に、且つ容易に製造することができる方法を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明のシート状固体電池は、外装体を兼ねる金属箔からなる正極集電体と負極集電体とが、正極活物質、ポリマー電解質および負極活物質からなる発電要素と、この発電要素の周囲を取り囲むように配置された枠状の熱融着シートとを、前記両集電体の間に介在して積層され、前記正極集電体および負極集電体における前記熱融着シートを介在して互いに相対向する環状部分が、前記熱融着シートを介し相互に熱融着されて、前記発電要素が、前記正極および負極集電体と前記熱融着シートとで囲まれた密閉空間の内部に封止され、前記正極集電体および負極集電体の各々の一部がそれぞれ前記熱融着シートの熱融着された端縁よりも外方に向け突出され、前記熱融着シートにおける前記正極集電体および負極集電体が突出する箇所を除く全端縁が、前記正極集電体および負極集電体の熱溶着された端縁よりも外方に向け突出されていることを特徴としている。
請求項2に係る発明は、請求項1の発明のシート状固体電池における前記正極集電体および負極集電体が、互いに反対方向に向けて前記熱融着シートの端縁よりも外方に向け突出されている。
請求項3に係る発明のシート状固体電池の製造方法は、集電体材料に穿設した位置決め基準孔を基準に割り出した位置に正極活物質およびポリマー電解質または負極活物質を形成したのち、所定の幅を有する帯状に切断して正極集電体用素体および負極集電体用素体をそれぞれ形成する工程と、熱融着シート材料に穿設した位置決め基準孔を基準に割り出した位置に発電要素の逃げ孔を穿設して熱融着シート用素体を形成する工程と、前記正極集電体用素体および前記負極集電体用素体の各々の位置決め基準孔に嵌入した位置決めピンと前記熱融着シート用素体の位置決め基準孔に嵌入した位置決めピンとの相対位置を調整することにより、前記正極集電体用素体と正極側の前記熱融着シート用素体および負極集電体用素体と負極側の前記熱融着シート用素体とをそれぞれ所定の相対位置に位置決めした状態で、前記各熱融着シート用素体の前記逃げ孔の周囲箇所を前記正極集電体用素体および負極集電体用素体にそれぞれ熱融着して前記両集電体用素体を互いに結合する工程と、互いに結合した前記正極集電体用素体、負極集電体用素体および各熱融着シート用素体における各々の所定箇所を切断して打ち抜く工程と、を備えていることを特徴としている。
請求項4に係る発明は、請求項3の発明のシート状固体電池の製造方法において、正極集電体用素体と熱融着シート用素体および負極集電体用素体と熱融着シート用素体とをそれぞれ直交する配置で相互に結合したのち、前記正極集電体用素体と前記負極集電体用素体とが互いに反対方向に向け突出する配置で前記2枚の熱融着シート用素体を互いに合致する位置決め状態で重ね合わせるようにした。
請求項5に係る発明は、請求項3または4の発明のシート状固体電池の製造方法において、2枚の熱融着シート用素体を互いに結合する工程において、前記各熱融着シート用素体の各々の逃げ孔の周囲3方のコ字状の箇所と、このコ字状の箇所の両端部をそのまま前記各熱融着シート用素体の端部までそれぞれ延長させた帯状の2箇所とを熱融着により結合して、前記帯状の2箇所の結合により筒状に形成された箇所の内部空間を真空引きしながら前記各熱融着シート用素体の未結合箇所を互いに結合するようにした。
請求項1の発明によれば、熱融着シートにおける正極集電体および負極集電体が突出する箇所を除く全端縁が、正極集電体および負極集電体の各々の端縁よりも外方に向け突出されているので、正極集電体と負極集電体との絶縁距離を、各熱融着シートの突出長さ分だけ長く設定することができる。これにより、例えば、全体の厚さを100μm程度にまで薄型化を図った場合においても、正極集電体と負極集電体とが上記薄型化に伴い極めて小さな間隔で相対向する配置に積層されているにも拘らず、密閉構造に熱融着するための枠状の熱融着シートを短絡防止用部材として効果的に利用することにより、正極集電体と負極集電体との間の全周端にわたり微小短絡が発生するのを確実に防止できる絶縁距離を確保することができ、高い信頼性を得ることができる。また、正極集電体および負極集電体における熱融着シートからそれぞれ突出された各々の一部は、電池の主体に対し独立的な接続片部となるので、この接続片部をかしめ手段や溶接などの一般的接合手段により、電池相互の直列接続または並列接続あるいは電池と機器との接続リードを用いた接続を容易に行うことができる。
しかも、このシート状固体電池は、全体の厚さを極めて薄型とできるのに加えて、金属箔からなる正極および負極集電体に外装体としての機能を兼備させた構成になっているので、外装体としてラミネートシートなどを別途用いる場合に比較して優れたフレキシブル性を備えており、さらに、正極活物質,ポリマー電解質および負極活物質からなる発電要素が正極および負極集電体と各熱融着シートとにより形成された密閉空間の内部に封止された密閉構造となっていることから、高い安全性および信頼性を有しているので、例えばICカードやメモリカードなどの薄型電子機器の駆動電源として極めて好適に用いることができる他に、フレキシブルな配置による使用形態にも容易に対応することができる。
請求項2の発明によれば、正極集電体と負極集電体とを互いに反対方向に向け突出させているので、電池相互の接続および電池と機器との接続リードを介しての接続が一層容易となる利点がある。
請求項3の発明によれば、正負極の集電体用素体および熱融着シート用素体を、これらに形成した位置決め基準孔に位置決めピンを嵌入して、その位置決めピンの相対位置を調整することにより相互の位置決めを行うようにしたので、極めて薄く、いわゆる腰のない金属箔からなる集電体用素体および熱融着シート用素体を位置決め対象としているにも拘らず、例えば真空吸着して外形に基づく位置決めを行うような場合とは異なり、高精度な位置決めを行って寸法ばらつきのないシート状固体電池を容易に、各高精度に製造することができる。
請求項4の発明によれば、正極集電体用素体と負極集電体用素体とを互いに反対方向に延びる相対位置で組み合わせて位置決めしたのに伴い、正極集電体用素体と負極集電体用素体とを重ね合わせ状態で同時に切断していないように図ることができ、正極集電体用素体と負極集電体用素体とを同時に切断した場合に発生し易い切断バリを介して短絡が生じるのを回避することができる。
請求項5の発明によれば、発電要素を収容する内部空間を真空引きしながら熱融着して密閉することにより、発電要素を構成する正極活物質、ポリマー電解質および負極活物質の各間に高い密着性が得られて、電池としたときに、その内部抵抗を低く抑えることができ、両集電体の剥離や水分の内部浸入といった不具合の発生を確実に防止でき、外装体としての機能を兼備する正負極の各集電体を薄い金属箔で形成しながらも充放電に伴う発電要素の膨潤や外圧などに起因する発電要素の変形に対して高い回復力を維持することができるなどの効果を得ることができる。
以下、本発明の最良の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係るシート状固体電池を示し、同図(a)は正面図、同図(b),(c)はそれぞれ同図(a)のA−A線およびB−B線に沿った断面図である。このシート状固体電池は、金属箔からなる正極集電体1の一面に正極活物質2が形成されているとともに、金属箔からなる負極集電体3の一面に負極活物質4が形成され、正極活物質2と負極活物質4との間にポリマー電解質7を介在させ、且つポリマー電解質7の周囲を取り囲むように配置された2枚の枠状の熱融着シート8,9を正極集電体1と負極集電体3との各々の各周縁部の間に介在して互いに積層された状態で、加圧および加熱する熱接着手段により正極集電体1と負極集電体3とが熱融着シート8,9を介して互いに互いに接合されて、正極集電体1および負極集電体3と枠状の熱融着シート8,9とで囲まれた密閉空間の内部に、正極活物質2、ポリマー電解質7および負極活物質4からなる発電要素が封止されてなる密閉構造に形成されている。
前記シート状固体電池は、ラミネートシートなどの外装体を別途用いることなく、共に金属箔からなる正極集電体1と負極集電体3とにそれぞれ外装体としての機能を兼備させた構成としているので、偏平な矩形状の外形を有する形状と良好なフレキシブル性を備えている。
上記正極集電体1には、厚さが20μm程度と極めて薄いアルミニウム箔やステンレス箔が用いられ、負極集電体3には、やはり厚さが20μm程度と極めて薄い銅箔やステンレス箔が用いられる。正極活物質2には、例えば、二酸化マンガンやフッ化黒鉛などが用いられ、負極活物質4およびポリマー電解質7の形成材料としては、例えば、金属リチウムやポリエチレンオキサイドなどが好適に用いられる。熱融着シート8,9としては、例えば、変性ポリプロピレンなどを用いるのが好ましく、この変性ポリプロピレンは厚さが25μm程度に設定される。このシート状固体電池は、上述のように極めて薄い金属箔からなる正極集電体1および負極集電体3を外装体に兼用して構成されていることから、従前の固体電池に比較して、一層の薄型化が促進されているのに加えて、良好なフレキシブル性を備えたものになっている。
上記シート状固体電池の分解斜視図である図2に明示するように、枠状の各熱融着シート8,9は、正極活物質2、ポリマー電解質7および負極活物質4からなる発電要素を各々に形成された逃げ孔8a,9a内に収容する配置で、各々の周縁部が互いに熱接着されている。換言すれば、上記発電要素は、周端部が間隙を存して各熱融着シート8,9により取り囲まれている。
図1に示すように、上記正極集電体1は、矩形状の一辺(この実施形態では左辺)の端部が各熱融着シート8,9から突出されているとともに、負極集電体3は、矩形状の一辺(この実施形態では右辺)の端部が正極集電体1の突出方向とは反対方向に向けて各熱融着シート8,9から突出されている。さらに、熱融着シート8,9は、正極集電体1および負極集電体3の上述した突出箇所を除く各々の三辺よりもそれぞれ外方に突出されている。この熱融着シート8,9の正極集電体1および負極集電体3の各々の端縁からの突出長さLは1mm以上で、2mm以下に設定されている。
上記シート状固体電池は、厚さが共に20μm程度の正極および負極集電体1,3と、厚さが25μm程度の2枚の熱融着シート8,9とが積層されて、厚さが約100μmと極めて薄型になっているのに加え、金属箔からなる正極および負極集電体1,3に外装体としての機能を兼備させた構成になっているので、優れたフレキシブル性を備えており、これに加えて、正極活物質2,ポリマー電解質7および負極活物質4からなる発電要素が、正極および負極集電体1,3と各熱融着シート8,9とにより形成された密閉空間の内部に封止されていることにより、高い安全性および信頼性を有している。その結果、このシート状固体電池は、例えばICカードやメモリカードなどの薄型電子機器の駆動電源として極めて好適に用いることができる他に、フレキシブルな配置による使用形態にも容易に対応することができる。
ところで、上記シート状固体電池は、薄型化を図ることを目的として、正極および負極集電体1,3が2枚の熱融着シート8,9の合計厚みである僅か50μmの極めて小さな間隔で積層されているのに加え、厚さが20μm程度と薄い金属箔からなる正極集電体1および負極集電体3が自体が有する柔軟性によってその周辺部が小さな力で変形を起こすので、何らかの対策を施さない限り、正極および負極集電体1,3との間に微小短絡が発生するおそれがある。
そこで、上記シート状固体電池では、上記密閉構造とするために用いられる枠状の熱融着シート8,9を短絡防止用部材に利用して、この熱融着シート8,9を正極集電体1および負極集電体3の各々の三辺からそれぞれ1mm程度突出させた構成とすることにより、正極集電体1と負極集電体3との絶縁距離として、熱融着シート8,9の突出長さLである1mmを少なくとも確保できるようにしている。ここで、熱融着シート8,9は、正極集電体1と負極集電体3とで挟持状態で熱融されているので、たとえ折り曲げられた場合であっても上述の1mm以上の絶縁距離を常に保つように機能する。また、正極集電体1および負極集電体3における各々の突出箇所においても、これらの箇所に対応する負極集電体3および正極集電体1の端部が熱融着シート8,9の端部に対し1mm程度内方に退避した配置となっているので、やはり絶縁距離として少なくとも1mm程度を確保できる。
したがって、上記シート状固体電池は、100μm程度の厚さまで薄型化を図りながらも、正極集電体1と負極集電体3との各々の全周端部間の絶縁距離が少なくとも1mm以上に常に確保されていることにより、正極集電体1と負極集電体3との間の微小短絡の発生を確実に防止できるので、高い信頼性を有したものとなる。もしも、上述のように熱融着シート8,9を正極および負極集電体1,3の三辺から突出させる構成を設けなかったと仮定した場合には、正極および負極集電体1,3間の絶縁距離が2枚の熱融着シート8,9の厚みの合計の50μm程度と短いものとなるため、例えば、集電体1,3に切断バリが存在したり、組立工程でのハンドリング時に集電体1,3の周辺部に不用意な力が加わって集電体1,3を変形させたりすると、正極および負極集電体1,3の間に微小短絡が発生してしまうおそれがある。
また、上記シート状固体電池は、正極集電体1および負極集電体3の各々の一辺の端部を熱融着シート8,9から突出させて、この突出部分により接続片部1a,3aを形成している。この接続片部1a,3aは、電池の主体に対し突出状態で独立的に設けられていることから、かしめ手段や溶接などの一般的接合方法により、電池相互の直列接続または並列接続あるいは電池と機器との接続リードを用いた接続を容易に行うことができる。例えば、集電体1,3がステンレス箔で形成され、且つ接続リードにニッケルを用いる場合には、接続片部1a,3aを抵抗溶接により容易に接続することが可能となる。
もしも、上記接続片部1a,3aが設けられていないと仮定した場合には、従来のコイン型電池のように外装体を兼ねる集電体が0.1〜0.2mm程度の比較的大きな厚みを有しているのに伴い抵抗溶接やレーザー溶接などで容易に接続できるものとは異なり、薄型化とフレキシブル性の確保とを図ることを目的として、外装体を兼ねる集電体1,3として厚さが20μm程度の金属箔で用いているため、レーザースポット溶接などの如何なる接合法を用いたとしても、ピンホールが発生して電池自体が不良となってしまう不具合が発生する。これに対し、接触方式による接続法を採用した場合には、接触抵抗が大きくなることから、大きな電流を取り出せない不具合が生じるだけでなく、フレキシブル性が要求される機器や振動が大きい機器で使用する場合に接触部での接触状態が不安定となり、出力電圧にばらつきが生じる。
さらに、上記シート状固体電池では、正極集電体1と負極集電体3とを互いに反対方向に向け突出させていることにより、電池相互の接続および電池と機器との接続リードを介しての接続が容易となる利点があり、この接続法について、図3を参照しながら説明する。同図では、図示の便宜上、正極集電体1を実線で、且つ負極集電体3を破線でそれぞれ図示するとともに、接続部Cを丸印で図示してある。複数個(この実施形態では3個の場合を例示)のシート状固体電池を直列接続する場合には、図3(a)に示すように、各シート状固体電池を、正極集電体1および負極集電体3の突出方向がそれぞれ交互に逆となる配置で積み重ねることにより、各電池の正極集電体1の接続片部1aと負極集電体3の接続片部3aとが2箇所において互いに重合される相対配置となるので、この2箇所の両接続片部1a,3aを抵抗溶接などにより互いに接合すればよい。このとき、上記接続箇所の内面側に絶縁テープ10を貼着すれば、内部短絡を確実に防止することができる。
また、複数個(この実施形態では3個の場合を例示)のシート状固体電池を並列接続する場合には、図3(b)に示すように、各シート状固体電池を、各々の正極集電体1が同一方向を向き、且つ各々の負極集電体3がそれぞれ同一方向を向く配置で積み重ねることにより、各電池の正極集電体1の接続片部1aを抵抗溶接などにより相互に接合するとともに、各電池の負極集電体3の接続片部3aを抵抗溶接などにより相互に接合すればよい。このとき、互いに接合される各2つの接続片部1aの間の負極集電体3の端縁部および互いに接合される各2つの接続片部3aの間の正極集電体1の端縁部にそれぞれ絶縁テープ10を貼着すれば、内部短絡を確実に防止することができる。さらに、上記電池を機器に接続する場合には、図3(c)に示すように、正極および負極集電体1,3の互いに反対方向に突出している接続片部1a,3aに、一端部を機器に接続した接続リード11の他端部を抵抗溶接などにより接合すればよい。
また、上記実施形態では、図1に示すように矩形状の外形を有する形状としたが、図4に示すような外形とすることもできる。同図において、図1と同一若しくは同等のものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。同図(a)のシート状固体電池は、同図(b)に示すように電池としての基本的構成が図1と同一であり、その外形においてのみ相違する。すなわち、このシート状固体電池は、正極集電体1、正極活物質2、負極集電体3、負極活物質4、ポリマー電解質7および熱融着シート8、9がそれぞれ、矩形状の四隅の角部がアール形状となった外形を有するとともに、正極および負極集電体1,3の接続片部1a、3aを、ほぼ三角形状としたものであり、図1の実施形態のものに比較して、外形を一層小型化しながらも同等の効果を得ることができる。
同図(c)のシート状固体電池は、同図(d)に示すように電池としての基本的構成が図1と同一であり、その外形においてのみ相違する。すなわち、このシート状固体電池は、正極活物質2、負極活物質4、ポリマー電解質7および熱融着シート8、9がそれぞれ円形の外形に形成されているとともに、正極および負極集電体1,3が、全体としてほぼ円形状であって、その円形状における対向2箇所の一方側が直線でカットされ、且つ他方側が三角形状の接続片部1a,3aとして突出された外形を有するものであり、図3(a),(b)の実施形態のものに比較して、外形を一層小型化しながらも同等の効果を得ることができる。
ところで、上記シート状固体電池は、上述した顕著な効果を奏するものであるが、その製造に際して、かなりの工夫が必要となる。すなわち、上記シート状固体電池は、熱融着シート8,9の三辺の端部が正極負極集電体1,3から突出しているとともに、正極および負極集電体1,3の一辺の端部が熱融着シート8,9から突出した構成を有していることから、各構成パーツ1〜4、7〜9の組み付け完了後にこれを所定形状に打ち抜くといった製造工程を採用することができず、各構成パーツ1〜4、7〜9を所定の相対配置に位置決めしながら順次積層していく製造工程を採用せざるおえない。ところが、薄い金属箔からなる正極および負極集電体1,3並びに薄い熱融着シート8,9は、いわゆる腰がないために、例えば真空吸着などにより保持しながら位置決めする手段を採用した場合に正確な位置出しを期待することができない。そこで、本発明では、各構成パーツ1〜4、7〜9をこれらの外形に基づき所定の相対位置に正確に位置決めしながら積層していくことにより、上述の構成を備えた本発明のシート状固体電池を高精度に製造することを可能とした製造方法を提供する。
つぎに、本発明の一実施形態に係るシート状固体電池の製造方法について、図5ないし図11を参照しながら説明する。先ず、図5に示すように、例えば、20μm程度の厚さを有するステンレス箔からなる集電体材料12の所定位置に位置決め基準孔13を穿設する。位置決め基準孔13の形成位置は、例えば、集電体材料12の一端縁を基準点Rとして、この基準点Rから一定距離Pだけ離間し、且つ形成すべき正極または負極集電体1,3の幅Wの半分W/2の距離だけ基準点Rから集電体材料12の一端縁に沿った方向に離間した位置に設定され、この設定位置に基づき2個の位置決め基準孔13が穿設される。集電体材料12には、上記穿設工程を繰り返して、必要個数の位置決め基準孔13が順次形成される。なお、同図には、後段の切断工程における切断線を2点鎖線で図示してある。
つぎに、図6に示すように、各位置決め基準孔13に位置決めピン14をそれぞれ嵌入して、その各2本の位置決めピン14を基準として集電体材料12を所定の位置決め状態とした上で、その集電体材料12における予め設定された所定箇所に正極活物質2または負極活物質4を塗着形成する。ここで、正極活物質2は、スクリーン印刷機を用いて集電体材料12に塗工することにより形成し、一方、負極活物質4は、例えば金属リチウムを超音波加圧で集電体材料12に固定することにより形成する。この工程では、集電体材料12を、これの位置決め基準孔13に嵌入した2本の位置決めピン14を基準として位置出しするので、集電体材料を、厚さが20μm程度で腰のないものであるにも拘らず、活物質2,4の形成ステーションの所定の塗工位置に正確に位置決めすることができる。なお、正極活物質2および負極活物質4の塗工寸法は、縦横10mm程度に設定される。
図7に示すように、上記正極活物質2が形成された集電体材料12は、そのまま電解質形成ステーションに移送して、各2本の位置決めピン14を基準として集電体材料12を所定の位置決め状態とした上で、その集電体材料12に形成された正極活物質2の表面を被覆する状態にポリマー電解質7をスクリーン印刷機を用いて重ね塗りする。この工程においても、集電体材料12を、これの位置決め基準孔13に嵌入した2本の位置決めピン14を基準として位置出しするので、集電体材料を電解質形成ステーションの所定の塗工位置に正確に位置決めすることができる。なお、ポリマー電解質7の塗工寸法は、縦横12mm程度である。
続いて、図8に示すように、正極活物質2およびポリマー電解質7を形成した集電体材料12は、切断工程に移送して、各2本の位置決めピン14を基準として集電体材料12を所定の位置決め状態とした上で、2点鎖線で図示した所定の切断線に沿って切断することにより、シート状固体電池の1セル分に相当する正極集電体用素体17に個々に分割される。この切断工程においても、集電体材料12を、これの位置決め基準孔13に嵌入した2本の位置決めピン14を基準として位置出ししているので、集電体材料12の予め設定した切断線に沿った正確な切断を行うことができる。また、シート状固体電池の1セル分に相当する後述の負極集電体用素体も上述と同様の切断工程を経て形成される。
さらに、図9(a),(b)に示すように、所定幅を有する帯状の所定位置に2個の位置決め基準孔19と逃げ孔8aとが予め穿設された熱融着シート用素体18を、上記正極集電体用素体17に対し、逃げ孔8a内に正極活物質2およびポリマー電解質7を配置し、且つ互いの長手方向が直交する相対配置で重ねて、この位置決め状態で、横平行線で図示する箇所における正極集電体用素体17と熱融着シート用素体18とを互いに熱接着することより、正極集電体用素体17と熱融着シート用素体18とを相互に結合する。上記熱融着シート用素体18は、集電体材料12で説明したと同様の方法で位置決め基準孔19および逃げ孔8aを形成したのちに、シート状固体電池の1セル分に相当する幅を有する帯状に切断したものである。なお、逃げ孔8aは14mm程度に設定され、熱融着シート用素体18は20mm程度の幅に設定される。また、横平行線で図示する熱融着箇所は、熱融着シート用素体18の逃げ孔8aを除く箇所と正極集電体用素体17との重ね合わせ部分である。
上述の熱融着シート用素体18と正極集電体用素体17との相対的な位置合わせは、各々の位置決め基準孔19,13に嵌入した位置決めピン14を介して熱融着シート用素体18または正極集電体用素体17の少なくとも一方を動かしながら、位置決めピン14を基準として割り出される各々の特定箇所が所定の位置関係になるように調整する手法で行う。これにより、外形による位置決め手段とは異なり、共に極めて薄いことから腰のない熱融着シート用素体18と正極集電体用素体17との相対位置を高精度に位置決めすることができる。例えば、この位置決めピン14に基づく位置決め手段では、正極集電体用素体17の先端を、熱融着シート用素体18の側縁に対し小さな所定距離L(図1で説明した熱融着シート8の正極集電体1からの突出長さLに相当)だけ離間した位置に正確に位置決めすることができる。
また、図9(a),(c)に示すように、負極集電体用素体20と熱融着シート用素体21との所定の相対位置に位置決めした上での相互結合についても、上述と同様の手段で行う。すなわち、所定幅を有する帯状の所定位置に2個の位置決め基準孔22と逃げ孔9aとが予め穿設された熱融着シート用素体21を、負極集電体用素体20に対し、逃げ孔9a内に負極活物質4を配置し、且つ互いの長手方向が直交する相対配置で重ねて、この位置決め状態で、縦平行線で図示する箇所における負極集電体用素体20と熱融着シート用素体21とを互いに熱接着することより、負極集電体用素体20と熱融着シート用素体21とを相互に結合する。上記熱融着シート用素体21は、上記熱融着シート用素体18で説明したと同様の工程を経て形成されたものであり、負極集電体用素体20は、図6の工程で負極活物質4を塗着した集電体材料12を図8の切断工程でシート状固体電池の1セル分に相当する幅を有する帯状に切断したものである。縦平行線で図示する熱融着箇所は、熱融着シート用素体21の逃げ孔9aを除く箇所と負極集電体用素体20との重ね合わせ部分である。
上述の熱融着シート用素体21と負極集電体用素体20との相対的な位置合わせは、各々の位置決め基準孔22,13に嵌入した位置決めピン14を介して熱融着シート用素体21または負極集電体用素体20の少なくとも一方を動かしながら、位置決めピン14を基準として割り出される各々の特定箇所が所定の位置関係になるように調整する手法で行う。これにより、外形による位置決め手段とは異なり、共に極めて薄いことから腰のない熱融着シート用素体21と負極集電体用素体20との相対位置を高精度に位置決めすることができる。例えば、この位置決めピン14に基づく位置決め手段では、負極集電体用素体20の先端を、熱融着シート用素体21の側縁に対し小さな所定距離L(図1で説明した熱融着シート9の負極集電体3からの突出長さLに相当)だけ離間した位置に正確に位置決めすることができる。
つぎに、図10に示すように、負極集電体用素体20に相互結合した熱融着シート用素体21を、図9(a)の配置から表裏反転させた状態に変更したのちに、正極集電体用素体17と相互結合した熱融着シート用素体18上に重ね合わせる。続いて、正極集電体用素体17および負極集電体用素体20の各々の位置決め基準孔13に嵌入した位置決めピン14を所定の相対位置になるように調整することにより、正極活物質2と負極活物質4とを所定の相対位置に位置決めする。この正極活物質2と負極活物質4とが所定の相対位置に正確に位置決めされたときには、図示のように両熱融着シート用素体21,18の各々の位置決め基準孔19,22が完全な合致状態となる。
上記位置決めを行った状態で、各熱融着シート用素体21,18を介して正極集電体用素体17と負極集電体用素体20とを相互に熱融着する。この熱融着に際しては、先ず、2点鎖線による横平行線で図示する箇所、つまり逃げ孔9a,8aの周囲3方のコ字状の箇所と、このコ字状の箇所の両端部をそのまま各熱融着シート用素体21,18の長手方向に沿って端部までそれぞれ延長させた帯状の箇所とを加圧および加熱して、熱融着する。このとき、各熱融着シート用素体21,18における帯状の熱融着箇所とは反対側(図の左側)の箇所は、集電体用素体20,17の側縁から小さな所定距離L(図1で説明した熱融着シート9,8の集電体3,1からの突出長さLに相当)だけ離間した位置まで熱融着する。
つぎに、両熱融着シート用素体21,18における帯状の箇所を熱融着することによって筒状に形成された箇所に、これの端部開口から真空ノズル23を挿入して、両熱融着シート用素体21,18の間における正極活物質2、負極活物質4およびポリマー電解質7からなる発電要素を収容している空間を真空引きしながら、2点鎖線による縦平行線で図示する箇所、つまり逃げ孔9a,8aの周囲の未熱融着の箇所を熱融着して、両集電体用素体20,17および両熱融着シート用素体21,18により形成されて上記発電要素を収容する内部空間内に密閉する。このとき、各熱融着シート用素体21,18の熱融着箇所は、集電体用素体20,17の側縁から小さな所定距離L(図1で説明した熱融着シート9,8の集電体3,1からの突出長さLに相当)だけ離間した箇所まで設定する。
上述のように発電要素を収容する内部空間を真空引きしながら熱融着して密閉することにより、発電要素を構成する正極活物質2、ポリマー電解質7および負極活物質4の各間に高い密着性が得られて、電池としたときに、その内部抵抗を低く抑えることができ、両集電体1,3の剥離や水分の内部浸入といった不具合の発生を確実に防止でき、外装体としての機能を兼備する集電体1,3を薄い金属箔で形成しながらも充放電に伴う発電要素の膨潤や外圧などに起因する発電要素の変形に対して高い回復力を維持することができる種々の効果を得ることができる。また、2枚の熱融着シート用素体18,21を正極および負極集電体用素体17,20に予め熱融着したのちに、両熱融着シート用素体18,21を互いに熱融着しているので、1枚の熱融着シート用素体を用いる場合に比較して、次工程での真空中での熱融着を容易に行える利点がある。
最後に、図11に示すように、1点鎖線で図示する穿孔工具の打ち抜き孔24で打ち抜くことにより、図1に示した本発明の一実施形態のシート状固体電池を得ることができる。すなわち、各集電体用素体17,20を打ち抜くことにより集電体1,3を形成でき、各熱融着シート用素体18,21を打ち抜くことにより熱融着シート8,9を形成できる。なお、このトリミングの寸法は28mm×20mm程度に設定される。
また、各熱融着シート用素体18,21は熱融着箇所に沿って切断するが、各集電体用素体17,20は熱融着箇所から所定距離だけ離間した箇所を切断することにより、図1で説明した接続片部1a,3aを形成する。この打ち抜き工程では、正極集電体用素体17と負極集電体用素体20とを互いに反対方向に延びる相対位置で組み合わせて位置決めしたのに伴い、正極集電体用素体17と負極集電体用素体20とを重ね合わせ状態で同時に切断していないように図っており、これにより、正極集電体用素体17と負極集電体用素体20とを同時に切断した場合に発生し易い切断バリを介して短絡が生じるのを回避することができる。
この製造方法では、集電体用素体17,20および熱融着シート用素体18,21を、これらに形成した位置決め基準孔13,19,22に位置決めピン14を嵌入して、その位置決めピン14の相対位置を調整することにより相互の位置決めを行うようにしたので、厚さが20μm程度と極めて薄く、いわゆる腰のない金属箔からなる集電体用素体17,20および熱融着シート用素体18,21を位置決め対象としているにも拘らず、例えば真空吸着して外形に基づく位置決めを行うような場合とは異なり、高精度な位置決めを行って寸法ばらつきのないシート状固体電池を容易に製造することができる。
本発明の一実施形態に係るシート状固体電池を示し、同図(a)は正面図、同図(b),(c)はそれぞれ同図(a)のA−A線およびB−B線に沿った断面図 同上のシート状固体電池の分解斜視図 (a)は同上のシート状固体電池を直列接続する場合の説明図、(b)は同上のシート状固体電池を並列接続する場合の説明図、(c)は同上のシート状固体電池を機器などに接続する場合の説明図 (a)は本発明の実施形態に係るシート状固体電池の外形が異なる変形例を示す正面図、(b)は(a)のC−C線に沿った断面図、(c)は本発明の実施形態に係るシート状固体電池の外形が異なる他の変形例を示す正面図、(d)は(c)のD−D線に沿った断面図 本発明の一実施形態に係るシート状固体電池の製造方法を具現化した位置決め基準孔の製造工程を示す平面図 (a)は同上の製造方法を具現化した活物質の形成工程を示す平面図、(b)は(a)のE−E線に沿った断面図 (a)は同上の製造方法を具現化したポリマー電解質の形成工程を示す平面図、(b)は(a)のF−F線に沿った断面図 同上の製造方法を具現化した集電体用素体の形成工程を示す平面図 (a)は同上の製造方法を具現化した集電体用素体と熱融着シート用素体との結合工程を示す正面図、(b),(c)はそれぞれ(a)のG−G線およびH−H線に沿った断面図 (a)は同上の製造方法を具現化した熱融着シート用素体を介して正極および負極の集電体用素体を合体する工程を示す正面図、(b)は(a)のI−I線に沿った断面図 同上の製造方法を具現化した打ち抜き工程を示す正面図 従来例を示す断面図
符号の説明
1 正極集電体
2 正極活物質
3 負極集電体
4 負極活物質
7 ポリマー電解質
8,9 熱融着シート
8a,9a 逃げ孔
12 集電体材料
13 集電体用素体の位置決め基準孔
14 位置決めピン
17 正極集電体用素体
18,21 熱融着シート用素体
19,22 熱融着シート用素体の位置決め基準孔
20 負極集電体用素体

Claims (5)

  1. 外装体を兼ねる金属箔からなる正極集電体と負極集電体とが、正極活物質、ポリマー電解質および負極活物質からなる発電要素と、この発電要素の周囲を取り囲むように配置された枠状の熱融着シートとを、前記両集電体の間に介在して積層され、
    前記正極集電体および負極集電体における前記熱融着シートを介在して互いに相対向する環状部分が、前記熱融着シートを介し相互に熱融着されて、前記発電要素が、前記正極および負極集電体と前記熱融着シートとで囲まれた密閉空間の内部に封止され、
    前記正極集電体および負極集電体の各々の一部がそれぞれ前記熱融着シートの熱融着された端縁よりも外方に向け突出され、
    前記熱融着シートにおける前記正極集電体および負極集電体が突出する箇所を除く全端縁が、前記正極集電体および負極集電体の熱溶着された端縁よりも外方に向け突出されていることを特徴とするシート状固体電池。
  2. 前記正極集電体および負極集電体が、互いに反対方向に向けて前記熱融着シートの端縁よりも外方に向け突出されている請求項1に記載のシート状固体電池。
  3. 集電体材料に穿設した位置決め基準孔を基準に割り出した位置に正極活物質およびポリマー電解質または負極活物質を形成したのち、所定の幅を有する帯状に切断して正極集電体用素体および負極集電体用素体をそれぞれ形成する工程と、
    熱融着シート材料に穿設した位置決め基準孔を基準に割り出した位置に発電要素の逃げ孔を穿設して熱融着シート用素体を形成する工程と、
    前記正極集電体用素体および前記負極集電体用素体の各々の位置決め基準孔に嵌入した位置決めピンと前記熱融着シート用素体の位置決め基準孔に嵌入した位置決めピンとの相対位置を調整することにより、前記正極集電体用素体と正極側の前記熱融着シート用素体および負極集電体用素体と負極側の前記熱融着シート用素体とをそれぞれ所定の相対位置に位置決めした状態で、前記各熱融着シート用素体の前記逃げ孔の周囲箇所を前記正極集電体用素体および負極集電体用素体にそれぞれ熱融着して前記両集電体用素体を互いに結合する工程と、
    互いに結合した前記正極集電体用素体、負極集電体用素体および各熱融着シート用素体における各々の所定箇所を切断して打ち抜く工程と、
    を備えていることを特徴とするシート状固体電池の製造方法。
  4. 正極集電体用素体と熱融着シート用素体および負極集電体用素体と熱融着シート用素体とをそれぞれ直交する配置で相互に結合したのち、前記正極集電体用素体と前記負極集電体用素体とが互いに反対方向に向け突出する配置で前記2枚の熱融着シート用素体を互いに合致する位置決め状態で重ね合わせるようにした請求項3に記載のシート状固体電池の製造方法。
  5. 2枚の熱融着シート用素体を互いに結合する工程において、前記各熱融着シート用素体の各々の逃げ孔の周囲3方のコ字状の箇所と、このコ字状の箇所の両端部をそのまま前記各熱融着シート用素体の端部までそれぞれ延長させた帯状の2箇所とを熱融着により結合して、前記帯状の2箇所の結合により筒状に形成された箇所の内部空間を真空引きしながら前記各熱融着シート用素体の未結合箇所を互いに結合するようにした請求項3または4に記載のシート状固体電池の製造方法。
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