JP2007237951A - ブレーキ制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ABS制御時におけるマスタシリンダ圧推定を高精度に行うことが可能なブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】 ABS制御手段を備えたブレーキ制御装置において、ABS制御における今回の増圧サイクルにおける増圧制御量と前回の増圧サイクルにおける増圧制御量を検出するとともに、今回の増圧制御における平均増圧制御量と前回の増圧制御における平均増圧制御量を演算し、増圧制御量の今回値と前回値の差分および平均値に基づき、前記マスタシリンダの圧力を演算することとした。
【選択図】 図8

Description

本発明は、ABS制御を実行するブレーキ制御装置に関する。
従来、特許文献1に記載される技術にあっては、精度のよいABS制御を実現するためホイルシリンダ圧およびマスタシリンダ圧を推定し、推定されたホイルシリンダ圧およびマスタシリンダ圧を用いてホイルシリンダの目標液圧を演算している。その際、マスタシリンダ圧の推定は、推定ホイルシリンダ圧に基づいて行われる。
特開平9−323634号公報
しかしながら上記従来技術にあっては、マスタシリンダ圧の推定は運転者による踏力変化は考慮されていないため、マスタシリンダ圧を高精度に推定することができない、という問題があった。
本発明は上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、ABS制御時におけるマスタシリンダ圧推定を高精度に行うことが可能なブレーキ制御装置を提供することにある。
上述の目的を達成するため、本発明では、運転者のブレーキ操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、導入液圧により各車輪において制動力を発生させるホイルシリンダと、前記マスタシリンダと前記各ホイルシリンダとを結ぶブレーキ回路の途中に介装され、各ブレーキ回路の開閉を行う増圧制御弁と、前記ブレーキ回路における前記各増圧制御弁と各ホイルシリンダとの間に接続されるとともに前記マスタシリンダと接続された還流回路と、各還流回路に設けられ、各還流回路の開閉を行う減圧制御弁と、前記還流回路における減圧制御弁とマスタシリンダとの間に介装され、ホイルシリンダからの流出作動液を一時蓄えるリザーバと、前記還流回路上であって前記リザーバと前記マスタシリンダとの間に設けられ、リザーバに蓄えられた作動液をマスタシリンダ側へ還流させる液圧ポンプと、車輪速を検出する車輪速検出手段と、車輪速に基づき擬似車体速を演算する擬似車体速演算手段と、前記車輪速検出手段により検出された車輪速と、前記擬似車体速演算手段により演算された擬似車体速に基づいてスリップ率を演算し、ホイルシリンダ圧を制御するABS制御手段と、を備えたブレーキ制御装置において、ABS制御における今回の増圧サイクルにおける増圧制御量と前回の増圧サイクルにおける増圧制御量を検出するとともに、今回の増圧制御における平均増圧制御量と前回の増圧制御における平均増圧制御量を演算し、増圧制御量の今回値と前回値の差分および平均値に基づき、前記マスタシリンダの圧力を演算することとした。
よって、踏力変化に伴う増圧量の変化を考慮してマスタシリンダ圧推定を行うことで、ABS制御時におけるマスタシリンダ圧推定を高精度に行うことが可能なブレーキ制御装置を提供できる。
以下、本発明のブレーキ制御装置を実現する最良の形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
[ブレーキ制御装置のシステム構成]
実施例1につき図1ないし図4に基づき説明する。図1は、本願ブレーキ制御装置のシステム構成図である。ABS制御は各輪毎に行われるため、図1に示す構成が各輪に設けられているものとする。
ブレーキペダル1には、運転者の踏力に応じたブレーキ液圧を発生させるマスタシリンダM/Cが設けられている。マスタシリンダM/Cには、主通路10を介して増圧回路11及び還流回路14が接続されている。
増圧回路11上には、常開電磁弁である増圧制御弁2が設けられている。増圧回路11には、制動力を発生させるホイルシリンダW/Cに接続されたホイルシリンダ回路12と、ホイルシリンダW/Cから減圧時にブレーキ液を流出させる減圧回路13が接続されている。
減圧回路13上にはノーマルクローズ型の減圧制御弁3、およびホイルシリンダW/Cから流出したブレーキ液を一時的に貯留するリザーバ4が設けられている。また、減圧回路13には、ポンプモータ5aにより駆動するポンプ5及びポンプ5からの流れのみ許容するチェック弁6を介して還流回路14が接続されている。
ABSコントロールユニット20は、各車輪に設けられた車輪速センサ21からのセンサ信号に基づいて、増圧制御弁2、減圧制御弁3及びポンプモータ5aに対し制御信号を出力する。
このABSコントロールユニット20には、ABS制御部20a、スリップ判断部20b、増圧制御時間変化量演算部20c、平均増圧制御変化量演算部20d、および推定マスタシリンダ(M/C)圧演算部20eが設けられている。
ABS制御部20aは、車輪速VWと演算された擬似車体速Vに基づいてスリップ率Sを減少させるように、増圧制御弁2,減圧制御弁3に対して増圧・減圧・保持指令を出力する。
なお、スリップ率Sとは擬似車体速Vに対して車輪速VWが路面に対してどの程度すべっているかを表しており、スリップ率S=(V−VW)/V で表される。車輪速VWが擬似車体速Vに一致すればスリップ率は0となり、車輪速VWと擬似車体速Vがかけ離れるほどスリップ率は増大する。
スリップ判断部20bは、ABS制御部20aからの減圧時間と、車輪速VWと、擬似車体速Vに基づいてスリップ判断を行う。増圧制御時間変化量演算部20cはABS制御による今回増圧時間T1と前回増圧時間T2の値の変化量を演算し、平均増圧制御変化量演算部20dは、T1およびT2に基づき増圧制御量の平均値を演算する。
推定M/C圧演算部20eは、増圧時間の今回値および前回値T1,T2、演算された増圧時間変化量および平均増圧制御変化量に基づき、マスタシリンダ圧を推定する。
[ABS制御]
実施例1のABS制御における基本的な制御ロジックを説明する。擬似車体速Vから予め設定された車速VOを差し引いた点(タイヤの摩擦係数特性が最大となる点)に最適スリップ値Voptを設定し、この値に基づいて最適スリップ率Soptを設定する。
スリップ率Sが最適スリップ率Soptを上回ったときには減圧制御に移行し、ロック傾向による車輪速VWの低下、すなわちスリップ率Sの増大を防止する。スリップ率Sの増大が防止されると保持制御に移行し、スリップ率Sを減少させる。スリップ率Sが減少し、最適スリップ率Soptを下回ると増圧制御に移行し、車輪速VWの増大、すなわちスリップ率Sの減少を防止する。
このとき、減圧指令における減圧制御量は、車体減速度等に基づくフィードフォワード量として演算される。最初の減圧制御から次の減圧制御開始までを増減圧制御周期とすると、最初の減圧制御量によっておおむね増減圧制御周期は決定される。
減圧制御時は、増圧制御弁2を閉じ、減圧制御弁3を開くことでホイルシリンダW/Cからブレーキ液を減圧回路13へ流出させ、リザーバ4へ一時的に貯留する。
保持制御時は、増圧制御弁2及び減圧制御弁3の両方を閉じ、ホイルシリンダW/Cの液圧を保持する。
増圧制御時は、減圧制御弁3を閉じ、増圧制御弁2を開くことでマスタシリンダM/Cから高圧のブレーキ液を、主通路10,増圧回路11及びホイルシリンダ回路12を介してホイルシリンダW/Cへ供給する。
リザーバ4に貯留されたブレーキ液が所定量以上になると、ポンプモータ5aに対し駆動指令を出力し、リザーバ4から還流回路14へブレーキ液をくみ上げ、主通路10を介してマスタシリンダM/C側に戻すことでブレーキ液量収支を確保する。
[ABS制御基本制御処理]
図2は、ABS制御の基本制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップにつき説明する。
ステップS1では、制御周期ごとに発生する各車輪速センサ21のセンサパルス数と周期とからセンサ周波数を求め、車輪速VW及び車輪加速度VWDを演算してステップS2へ移行する。
ステップS2では、車輪速VWに基づき擬似車体速VIが演算され、ステップS3へ移行する。
ステップS3では、擬似車体速VIに基づき制御目標速度VWS(減圧開始閾値)が演算され、ステップS100へ移行する。ここで、従来例のように擬似車体速に減速度オフセット値を加算した速度を一律に減圧開始閾値とした場合、減圧開始閾値が低下してスリップ過多制御となってしまう。
したがって、本願実施例においては擬似車体速VIに対するスリップ率を求め、このスリップ率が所定値を超過する場合は減圧開始閾値を従来よりも引き上げる制御を行う。すなわち、スリップ率が所定値以下の場合、従来どおり擬似車体速VIからオフセット値を減じた値を減圧開始閾値とし、ステップS100へ移行する。
ステップS100では目標増減圧パルス時間PBを求めるPI演算制御処理が実行され、ステップS4へ移行する。
ステップS4では、車輪速VWが制御目標速度VWSを下回り、かつ増圧実施フラグZFLAG=1であるかどうかが判断され、YESであればステップS7へ移行し、NOであればステップS5へ移行する。ここで、増圧実施フラグZFLAGは増圧制御が行われていることを示す。
ステップS5では、
(1)フィードフォワード減圧時間FFGが実減圧時間タイマDECTを超過(フィードフォワード減圧制御終了条件)
(2)保持制御時間THOJIが所定時間Taを超過し、かつ目標増減圧パルス時間PB−(実減圧時間タイマDECT−フィードフォワード減圧時間FFG)の値すなわちPB−(DECT−FFG)の値が所定時間Tbを超過(Ta保持後におけるPI減圧制御要求条件)
(3)保持制御時間THOJIが所定時間Tcを超過し、かつ目標増減圧パルス時間PBと(実減圧時間タイマDECT−フィードフォワード減圧時間FFG)の差分PB−(DECT−FFG)の値が所定時間Tdを超過(Tc保持後におけるPI減圧制御要求条件)
この(1)〜(3)の3条件のうちいずれか1つでも成立するかどうかが判断され、YESであればステップS7へ移行して減圧制御を行い、NOであればステップS6へ移行する。ここで目標増減圧パルス時間PBは減圧パルスを継続する時間の目標値であり、減圧時間タイマDECTは減圧処理時間の積分値である。
ステップS6では、
(4)目標増減圧パルス時間PB+増圧時間タイマ値INCTの値が−Tdを超過
(5)保持制御時間THOJIがTcを超過
この(4),(5)の2条件がともに成立するかどうかが判断され、YESであればステップS9(ソレノイド保持制御)へ移行し、NOであればステップS8(ソレノイド増圧制御)へ移行する。ここで、増圧時間タイマ値INCTは増圧制御時間の積算値である。
ステップS7では、減圧制御実施時間ASを所定時間Te、保持制御時間THOJIを0とし、減圧実施フラグGFLAGを1としてステップS7(ソレノイド保持制御)へ移行する。
ステップS8ではソレノイド増圧制御を実行し、ステップS11へ移行する。
ステップS9ではソレノイド保持制御を行い、ステップS12へ移行する。
ステップS10ではソレノイド減圧制御を実行し、ステップS13へ移行する。
ステップS11では、増圧実施フラグZFLAGを1、保持制御時間THOJIを0とし、ステップS13へ移行する。
ステップS12では保持制御時間THOJIをインクリメントし、ステップS13へ移行する。
ステップS13では、保持制御時間THOJIのインクリメント後の時間が10msを経過したかどうかが判断され、YESであればステップS14へ移行し、NOであれば時間計測を繰り返す。
ステップS14では減圧制御実施時間ASをデクリメントし、ステップS1へ戻る。
[PI制御演算処理]
図3は、PI制御演算処理の流れを示すフローチャートである。図2の基本制御フローにおけるステップS100に相当する。
ステップS101では、目標車輪速VWMと車輪速VWの偏差ΔVWを演算し、ステップS102へ移行する。
ステップS102では、偏差ΔVWに偏差積分パルス係数(圧力比例ゲイン)KPを乗じ、偏差比例分(偏差圧力時間)PPを演算してステップS103へ移行する。
ステップS103では、偏差積分分IPを演算する。偏差積分パルス係数KPに偏差ΔVWを乗じ、10ms前のIPに加算して現在の偏差積分分IPとし、ステップS104へ移行する。
ステップS104では、車輪加速度VWDの値が正から負に変化したかどうかが判断され、YESであればステップS106へ移行し、NOであればステップS105へ移行する。
ステップS105では、車輪速VWが制御目標速度VWSよりも大きい状態から小さい状態に変化したかどうか、すなわち、VW>VWSからVW≦VWSに変化したかどうかが判断され、YESであればステップS106へ移行し、NOであればステップS107へ移行する。
ステップS106では、偏差積分分IPを0としてステップS107へ移行する。
ステップS107では、偏差比例分PPと偏差積分分IPの和を目標増減圧パルス時間PBとし、図2のステップS6へ移行する。
[推定マスタシリンダ圧演算]
本実施例の構成におけるABS制御にあっては、上述したように、リザーバ4に貯留されたブレーキ液をくみ上げ、主通路10を介してマスタシリンダM/C側に戻すことでブレーキ液量収支を確保する。
このとき、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態であれば、ポンプモータ5aをさほど駆動する必要が無く、一方、ブレーキペダルが踏み込まれている状態のときは、ポンプモータ5aをマスタシリンダ圧以上となるように駆動しなければリザーバ4からマスタシリンダM/C側に還流することができない。
ABS制御時にリザーバ4が満杯になると、減圧ができず、ひいてはABS制御自体を続行できないこととなり、好ましくない。この状態を回避するために、常に高い駆動力を発生させることも考えられるが、電力消費が大きく、また異音の原因ともなり、好ましくない。
そこで、マスタシリンダ圧を推定し、確実にリザーバ4からマスタシリンダM/C側に還流可能であって、不要な電力消費を回避することが可能なポンプモータ駆動量を算出し、安定したABS制御を確保している。
実施例1では、増圧サイクルのうち今回増圧時間T1と前回増圧時間T2を計測し、積分によって平均増圧制御量D1,D2を演算する。これらの差分ΔT=T1−T2およびΔD=D1−D2に基づき、マスタシリンダ圧を推定する。
なお、増圧制御時間Tは増圧制御弁2のソレノイドに対する通電指令であるため、増圧制御弁2の駆動方式にかかわらずマスタシリンダ圧の推定を可能とするものである。
[推定マスタシリンダ圧演算制御処理]
図4は実施例1における推定マスタシリンダ圧演算制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップにつき説明する。
ステップS201ではABS制御による増圧が開始されたかどうかが判断され、YESであればステップS202へ移行し、NOであればこの判断を繰り返す。
ステップS202では今回増圧制御サイクルにおける増圧時間T1の計測を開始し、ステップS203へ移行する。
ステップS203ではABS制御による増圧が終了したかどうかが判断され、YESであればステップS204へ移行し、NOであればステップS202へ戻る。
ステップS204では今回増圧制御サイクルにおける平均増圧制御量D1を積分し、ステップS205およびS206へ移行する。
ステップS205では、前回増圧制御サイクルにおける増圧時間T2が存在するかどうかが判断され、YESであればステップS206へ移行し、NOであればステップS208へ移行する。
ステップS206では今回と前回の増圧制御時間の変化量ΔT=T1−T2を演算し、ステップS207へ移行する。
ステップS207では、ΔT−ΔPtマップ(図6参照)から、時間変化量ΔTに基づくマスタシリンダM/CとホイルシリンダW/Cの差圧ΔPの補正係数ΔPtを演算し、ステップS213へ移行する。
ステップS208では前回増圧制御時間T2の値として今回増圧制御時間T1の値を代入し、制御を終了する。
ステップS209では前回増圧制御サイクルにおける平均増圧制御時間D2が存在するかどうかが判断され、YESであればステップS210へ移行し、NOであればステップS212へ移行する。
ステップS210では前回と今回の平均増圧制御量の変化量ΔD=D1−D2を演算し、ステップS211へ移行する。
ステップS211では、ΔD−ΔPtマップ(図7参照)から、平均制御量変化量ΔDに基づくマスタシリンダM/CとホイルシリンダW/Cの差圧ΔPの補正係数ΔPdを演算し、ステップS213へ移行する。
ステップS212では前回平均増圧制御時間D2の値として今回平均増圧制御時間D1の値を代入し、制御を終了する。
ステップS213では、今回推定マスタシリンダ圧Pm(n)=前回推定マスタシリンダ圧Pm(n-1)+ΔT・ΔPt+ΔD・ΔPdの式に基づき推定マスタシリンダ圧Pmを補正し、制御を終了する。
[推定マスタシリンダ圧演算制御の経時変化]
図5は、実施例1における推定マスタシリンダ圧演算制御のタイムチャートである。実線は実マスタシリンダ圧、破線は本願における推定マスタシリンダ圧、一点鎖線は従来例における推定マスタシリンダ圧である。
(時刻t1)
時刻t1においてABS制御における増圧制御サイクル開始され、前回増圧サイクルにおける制御時間T2の計測が開始される。上述のPI制御(図3のフローチャート参照)にしたがって増圧制御量が演算され、増圧制御弁2に対する電流値(PWM制御)が制御される。
(時刻t2)
時刻t2において前回サイクルにおける増圧が終了し、前回増圧サイクルにおける増圧制御時間T2が決定する。このT2に基づき前回サイクルの平均制御量D2が演算される。
(時刻t3)
時刻t3において減圧制御が開始され、車輪速VWが増加する。
(時刻t4)
時刻t4においてブレーキペダルが踏み込まれ、実マスタシリンダ圧が上昇する。
(時刻t5)
時刻t5において今回増圧サイクルが開始され、今回増圧制御時間T1の計測が開始される。
(時刻t6)
時刻t6において今回増圧制御が終了し、今回増圧制御時間T2が決定され、平均制御量D1が演算されて推定マスタシリンダ圧の演算が行われる。これにより推定マスタシリンダ圧が実マスタシリンダ圧に追従して増加する。
マスタシリンダ圧が上昇すると、増圧制御弁2を開弁した際のホイルシリンダ圧が上昇しやすく、車輪速が所定スリップ率以上となりやすい。すなわち、増圧制御時間の変化はマスタシリンダ圧の変化と相関を持っていることを利用して制御するものである。
一方、従来例では平均制御量に基づくマスタシリンダ圧推定は行われないため、推定マスタシリンダ圧は上昇せず実マスタシリンダ圧との乖離が縮小しない。
(時刻t7)
時刻t7において減圧制御が開始され、車輪速VWが増加する。
(時刻t8)
時刻t8において本願推定マスタシリンダ圧が実マスタシリンダ圧と同一値となる。従来例の推定マスタシリンダ圧は実マスタシリンダ圧に追従せず、一定値のままである。
(時刻t9以降)
時刻t4〜t7を繰り返す。
[実施例1の効果]
実施例1では、ABS制御を行うブレーキ制御装置において、ABS制御における増圧サイクルのうち、今回の増圧サイクルにおける増圧制御量T1と前回の増圧サイクルにおける増圧制御量T2を検出するとともに、今回の増圧制御における平均増圧制御量D1と前回の増圧制御における平均増圧制御量D2を演算し、増圧制御量の今回値T1と前回値T2の差分ΔTおよび平均値D1,D2の差ΔDに基づき、マスタシリンダM/Cの圧力を演算することとした。
これにより、ブレーキ踏力変化に伴う増圧制御量の変化に基づきマスタシリンダ圧推定を行うことで、ブレーキ踏力に基づいたマスタシリンダ圧推定を行い、ABS制御中であっても実踏力に基づいた制御を行うことが可能となり、高精度なABS制御を実行することができる。
実施例2につき図6ないし図9に基づき説明する。基本構成は実施例1と同様である。実施例1では増圧時間の今回値と前回値T1,T2の差分ΔT=T1−T2、および平均増圧制御量D1,D2の差分ΔD=D1−D2に基づきマスタシリンダ圧を推定した。
これに対し実施例2では、マスタシリンダM/CとホイルシリンダW/Cの差圧ΔP、および車輪がロックするホイルシリンダW/C液圧(ロック液圧Pr)に基づきマスタシリンダ圧を推定する点で実施例1と異なる。
[推定マスタシリンダ圧演算]
実施例2では、平均増圧制御量DからマスタシリンダM/CとホイルシリンダW/Cの差圧ΔPを演算する。また、車体減速度VIKに基づきロック液圧Prを演算し、このロック液圧Prと差圧ΔPの和 Pr+ΔPを推定マスタシリンダ圧として演算する。実施例1と同様、ブレーキ踏力の変化に従属して変化する増圧制御量(増圧制御時間T1)の平均値D1に基づいて推定を行うことで、実ブレーキ踏力を考慮した制御が可能となる。
なお、差圧ΔPは平均増圧制御量D−ΔPマップ(図6参照)から読み込み、ロック液圧Prは車体減速度VIK−Prマップ(図7参照)から読み込むこととする。車体減速度VIKは車輪速VSPや車体の前後Gから演算するが、車体減速度VIKを用いず、ホイルシリンダW/Cの実液圧を差圧ΔPの和を推定マスタシリンダ圧としてもよく特に限定しない。
[推定マスタシリンダ圧演算制御処理]
図8は実施例2における推定マスタシリンダ圧演算制御処理の流れを示すフローチャートである。以下、各ステップにつき説明する。
ステップS301ではABS制御による増圧が開始されたかどうかが判断され、YESであればステップS302へ移行し、NOであればこの判断を繰り返す。
ステップS302では今回サイクルにおける増圧制御時間T1の計測を開始し、ステップS303へ移行する。
ステップS303ではABS制御による増圧が終了したかどうかが判断され、YESであればステップS304へ移行し、NOであればステップS306へ移行する。
ステップS304では今回増圧サイクルにおける平均増圧制御量D1を演算し、ステップS305へ移行する。
ステップS305では推定マスタシリンダ圧を保持し、制御を終了する。
ステップS306では前回増圧サイクルにおける制御時間T2があるかどうかが判断され、YESであればステップS307へ移行し、NOであればステップS310へ移行する。
ステップS307では、D−ΔPマップに基づき、ステップS304で演算された平均増圧制御量D1からホイルシリンダW/CとマスタシリンダM/Cの差圧ΔPを読み込み、ステップS308へ移行する。
ステップS308では擬似車体速VIK−ロック液圧Prマップに基づきロック液圧Prを読み込み、ステップS309へ移行する。
ステップS309ではPr+ΔP=推定マスタシリンダ圧とし、制御を終了する。
ステップS310では今回増圧サイクルの増圧制御時間T1をクリアし、ステップS311へ移行する。
ステップS311では今回増圧サイクルにおける平均増圧制御量D1をクリアし、制御を終了する。
[推定マスタシリンダ圧演算制御の経時変化]
図9は、実施例2における推定マスタシリンダ圧演算制御のタイムチャートである。実線は実マスタシリンダ圧、破線は本願における推定マスタシリンダ圧、一点鎖線は従来例における推定マスタシリンダ圧である。なお、図9では時刻t11以前に既にABS制御による増圧が行われているものとする。
(時刻t11)
時刻t11においてABS制御における増圧制御サイクル開始され、今回増圧サイクルにおける制御時間T1の計測が開始される。上述のPI制御(図3のフローチャート参照)にしたがって増圧制御量が演算され、増圧制御弁2に対する電流値(PWM制御)が制御される。
(時刻t12)
時刻t12においてブレーキペダルが踏み込まれ、実マスタシリンダ圧が上昇する。
(時刻t13)
時刻t13において今回増圧制御が終了し、今回増圧制御時間T1が決定されて平均制御量D1が演算され、推定マスタシリンダ圧の演算が行われる。これにより推定マスタシリンダ圧が実マスタシリンダ圧に追従して増加する。
マスタシリンダ圧が上昇すると、増圧制御弁2を開弁した際のホイルシリンダ圧が上昇しやすく、車輪速が所定スリップ率以上となりやすい。すなわち、増圧制御時間の変化はマスタシリンダ圧の変化と相関を持っていることを利用して制御するものである。
一方、従来例では平均制御量に基づくマスタシリンダ圧推定は行われないため、推定マスタシリンダ圧は上昇せず実マスタシリンダ圧との乖離が縮小しない。
(時刻t14)
時刻t14において減圧制御が開始され、車輪速VWが増加する。
(時刻t15)
時刻t15において本願推定マスタシリンダ圧が実マスタシリンダ圧と同一値となる。従来例の推定マスタシリンダ圧は実マスタシリンダ圧に追従せず、一定値のままである。
(時刻t16以降)
時刻t11〜t15を繰り返す。
[実施例2の効果]
実施例2にあっては、ABS制御を実行するレーキ制御装置において、ABS制御の今回の増圧制御サイクルにおける増圧制御時間T1および平均増圧制御量D1を演算し、この平均増圧制御量D1に基づき、マスタシリンダ圧を推定することとした。
これにより、実施例1と同様、ブレーキ踏力の変化に従属して変化する増圧制御量(増圧制御時間T1)の平均値D1に基づいて推定を行うことで、ブレーキ踏力に基づいたマスタシリンダ圧推定を行うことができる。
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を実施例に基づいて説明してきたが、本発明の具体的な構成は各実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
更に、上記各実施例から把握しうる請求項以外の技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
(イ)請求項1または請求項2に記載のブレーキ制御装置において、
前記増圧制御量は、前記増圧制御弁に対する制御指令であること
を特徴とするブレーキ制御装置。
増圧制御弁の駆動方式にかかわらず、マスタシリンダ圧の推定を行うことができる。
本願ブレーキ制御装置のシステム構成図である。 ABS制御の基本制御処理の流れを示すフローチャートである。 PI制御演算処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1における推定マスタシリンダ圧演算制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1におけるマスタシリンダ圧演算制御のタイムチャートである。 増圧制御時間の変化量ΔT−差圧ΔPマップである。 車体減速度VIK−ロック液圧Prマップである。 実施例2における推定マスタシリンダ圧演算制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例2におけるマスタシリンダ圧演算制御のタイムチャートである。
符号の説明
1 ブレーキペダル
2 増圧制御弁
3 減圧制御弁
4 リザーバ
5 ポンプ
5a ポンプモータ
6 チェック弁
10 主通路
11 増圧回路
12 ホイルシリンダ回路
13 減圧回路
14 還流回路
20 コントロールユニット
20a ABS制御部
20b スリップ判断部
20c 増圧制御時間変化量演算部
20d 平均増圧制御変化量演算部
20e 推定マスタシリンダ圧演算部
21 車輪速センサ
D 平均増圧制御量
M/C マスタシリンダ
T 増圧制御時間(増圧制御量)
W/C ホイルシリンダ

Claims (2)

  1. 運転者のブレーキ操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、
    導入液圧により各車輪において制動力を発生させるホイルシリンダと、
    前記マスタシリンダと前記各ホイルシリンダとを結ぶブレーキ回路の途中に介装され、各ブレーキ回路の開閉を行う増圧制御弁と、
    前記ブレーキ回路における前記各増圧制御弁と各ホイルシリンダとの間に接続されるとともに前記マスタシリンダと接続された還流回路と、
    各還流回路に設けられ、各還流回路の開閉を行う減圧制御弁と、
    前記還流回路における減圧制御弁とマスタシリンダとの間に介装され、ホイルシリンダからの流出作動液を一時蓄えるリザーバと、
    前記還流回路上であって前記リザーバと前記マスタシリンダとの間に設けられ、リザーバに蓄えられた作動液をマスタシリンダ側へ還流させる液圧ポンプと、
    車輪速を検出する車輪速検出手段と、
    車輪速に基づき擬似車体速を演算する擬似車体速演算手段と、
    前記車輪速検出手段により検出された車輪速と、前記擬似車体速演算手段により演算された擬似車体速に基づいてスリップ率を演算し、ホイルシリンダ圧を制御するABS制御手段と
    を備えたブレーキ制御装置において、
    ABS制御の今回の増圧サイクルにおける増圧制御量と前回の増圧サイクルにおける増圧制御量を検出するとともに、
    今回の増圧制御における単位時間当たり平均増圧制御量と前回の増圧制御における単位時間当たり平均増圧制御量を演算し、
    増圧制御量の今回値と前回値との差分、および平均値の今回値と前回値との差分に基づき、前記マスタシリンダの圧力を演算すること
    を特徴とするブレーキ制御装置。
  2. 運転者のブレーキ操作に応じて液圧を発生させるマスタシリンダと、
    導入液圧により各車輪において制動力を発生させるホイルシリンダと、
    前記マスタシリンダと前記各ホイルシリンダとを結ぶブレーキ回路の途中に介装され、各ブレーキ回路の開閉を行う増圧制御弁と、
    前記ブレーキ回路における前記各増圧制御弁と各ホイルシリンダとの間に接続されるとともに前記マスタシリンダと接続された還流回路と、
    各還流回路に設けられ、各還流回路の開閉を行う減圧制御弁と、
    前記還流回路における減圧制御弁とマスタシリンダとの間に介装され、ホイルシリンダからの流出作動液を一時蓄えるリザーバと、
    前記還流回路上であって前記リザーバと前記マスタシリンダとの間に設けられ、リザーバに蓄えられた作動液をマスタシリンダ側へ還流させる液圧ポンプと、
    車輪速を検出する車輪速検出手段と、
    車輪速に基づき擬似車体速を演算する擬似車体速演算手段と、
    前記車輪速検出手段により検出された車輪速と、前記擬似車体速演算手段により演算された擬似車体速に基づいてスリップ率を演算し、ホイルシリンダ圧を制御するABS制御手段と
    を備えたブレーキ制御装置において、
    ABS制御の今回の増圧制御サイクルにおける増圧制御量および単位時間あたりの平均増圧制御量を演算し、この平均増圧制御量に基づき、マスタシリンダ圧を推定すること
    を特徴とするブレーキ制御装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009202690A (ja) * 2008-02-27 2009-09-10 Nissin Kogyo Co Ltd バーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置

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