JP2007237090A - 陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体 - Google Patents

陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は脱臭、揮発性有機化合物、さらに自動車排気ガス、焼却燃焼ガス等々の有害ガスを分解する環境浄化用装置等に適用される陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体(アルマイト触媒体)に関するもので、本発明のアルマイト触媒体はその普及ためにコストの低減、生産工程の省エネルギー化、省資源化を図るものである。
【解決手段】本発明では、アルミニウム成分が99.3%以上であるアルミニウム基板の表面に特定形状のエッチングピットを形成すると共に陽極酸化皮膜の厚さをより5μm以下に薄くして、かつ少量の触媒担持量で、充分な触媒分解反応性をもつ低コストのアルマイト触媒体である。
【選択図】 図3

Description

本発明は臭気、揮発性有機化合物、自動車排気ガス、焼却燃焼ガス等々の有害ガスを分解し、有害ガスの排出を抑制・削減するための低価格で軽量小型の環境浄化装置に適用する「陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた」(以下、アルマイト触媒体と略す)およびその製造方法に関するものである。
アルマイト触媒体は脱臭装置、揮発性有機化合物分解装置、さらに自動車排気ガス、焼却燃焼ガス等の有害ガスの分解装置等の触媒反応体として負荷変動の減少、省エネルギー化、反応装置のコンパクト化等に非常に優れており、アルマイト触媒体を環境浄化装置に適用することによって、装置の小型軽量化が可能になる。
アルマイト触媒体はアルミニウムを陽極酸化し、その微細で表面積が大きい多孔質皮膜
により多くの触媒を担持することができるので触媒反応効率が非常に高く、触媒反応体をコンパクトに設計することができる非常に優れた触媒体である。
したがって、環境保護、環境改善の見地からも有害ガスの分解性能に優れたアルマイト触媒体を活用した脱臭装置、揮発性有機化合物分解装置、自動車排気ガス分解装置、焼却燃焼ガス浄化装置等が広く普及することが求められている。
しかし、アルミニウムに微細な多孔質の皮膜を形成するための陽極酸化処理は電解処理
によるものであり、電気量を多く消費する。そのために処理コストが高い。さらに、触媒に用いる金属類も高価であり、実用化のための量産化には支障がある。
まず、アルマイト触媒体に関しては、特許文献1において既に開示されている。このアルマイト触媒体は多孔質アルミナ層表面に触媒を担時させ、触媒活性を高めたものである。
本発明はこのアルマイト触媒体の実用化技術として位置づけるもので、前記の有害ガス等の分解装置の開発、実用化に資するためにコストの低減、さらに触媒効率を高めるための新たな提案である。
触媒担体としてのアルミニウム等表面皮膜を活用した事例としては、たとえば、特許文献2および特許文献3においては、浄水、脱臭、有害ガス等の分解のために光触媒の触媒効率を高めるために、マグネシウム、マグネシウム合金を中心にマグネシウム系金属材料をまず機械的、化学的に粗面化加工をし、次いで陽極酸化皮膜を形成して、それに光触媒を担持させて、触媒効率を増大させる技術手段が提案されている。
しかし、ここには本発明の目的である陽極酸化処理時の電気量、電気エネルギーの節減、製造コスト削減をした上で、かつ、触媒反応効率を維持向上させるための対応技術は開示されていない。すなわち、陽極酸化処理に先立って行なわれる機械的、化学的粗面化加工の方法が示されているのみで、その粗面の状態、性状と触媒反応機能との関連は不明である。この触媒体の機械的、化学的粗面化の状態や性状が後処理である陽極酸化皮膜の状態、性状を決めることになる重要な要素である。
また、特許文献4におけるエキスバンド、エッチング等いずれかの加工をした薄板の不織性多孔性アルミニウム含有耐熱合金のAl23を含む酸化層に触媒を担持した排ガス浄化装置のAl23を含む酸化層は、陽極酸化による皮膜とはその皮膜構造が異なり、微細孔をもつ多孔質ではない。また、アルミニウム含有耐熱金属はAl含有量が3〜7%の実質的にはFe-Cr合金であり、本発明のアルミニウム成分が99.3%以上の純アルミニウムではなく、その酸化層はアルミニウム陽極酸化皮膜の性状とは大きく異なる。
さらに、特許文献5においては、空気調和機、熱交換機器の空気側伝熱表面のアルミニウム面にエッチング処理によりマクロ凹凸を施し、次いで水和処理によりミクロ凹凸の水和酸化物層をなし、その上に触媒層が形成される技術が開示されている。触媒を担持する水和酸化物層の皮膜の厚さは実施例では約0.2μmで、多孔間の連通はなく単純な凹凸状である。したがって、アルミニウムの陽極酸化による微細孔の多孔質皮膜とは性状が異なる。
また、特許文献6では、アルミニウムの陽極酸化による微細孔化、または、エッチングのいずれかの処理による表面積の増大によって触媒効率の向上を図るもので、本発明とは本質的に異なる手段である。
特開昭62−237947号公報 特開2005−103504号公報 特開2005−103505号公報 特開2005−325756号公報 特開10−281690号公報 特開2002−301381号公報
本発明のアルマイト触媒体は臭気、揮発性有機化合物、自動車排気ガス、焼却燃焼ガス等の有害ガスの分解に非常に有益なことが知られている。このアルミニウムの陽極酸化皮膜に生成された微細孔に触媒を担持したアルマイト触媒体を適用した上記の有害ガス等を分解する触媒反応装置の実用化を進めている。本触媒体の優れた有害ガス分解性能を触媒反応装置に適用し実用化、普及するには従来のアルマイト触媒体の触媒反応効率の向上させることによって、アルマイト触媒体の材料面、生産工程面からのコスト低減、さらに省エネルギー化が課題として解決が求められる。
そこで、従来の技術的手段では上記の課題を解決することは困難であったが、鋭意、研究の結果、従来の技術的手段に改善を加えることによって上記の課題を解決できることが判明した。
本発明はアルミニウム基板をエッチング処理によりピットを形成し、次いでエッチングピットを形成したアルミニウム基板を陽極酸化処理し、皮膜を形成し、そこに生成した多孔質の微細孔に触媒を担持したアルマイト触媒体とその製造方法に関するものである。
(図1参照)
アルミニウム成分が99.3wt%以上であるアルミニウム基板をエッチング処理によってアルミニウム基板面に垂直にピットを形成し、さらに、陽極酸化処理によって皮膜を形成し、当該皮膜に生成した微細孔に触媒を担持した陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体である。
この陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体はエッチング処理によってアルミニウム基板面に深さが15μm以上で、径が0.3μm以上のピットを形成し、さらに、陽極酸化処理によって皮膜の厚さが5μm以下であり、皮膜に生成された微細孔の径が0.005μm以上である陽極酸化皮膜を形成する。
このような陽極酸化皮膜に生成された微細孔に、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、亜鉛、金、銀、レニウム、マンガン、および錫、またはこれらの合金もしくは混合物のいずれかからなる触媒を担持して環境浄化装置用触媒体をなす。
本発明においては、このアルミニウム基板に触媒を担持するアルミニウム皮膜の多孔質の微細孔を生成させるために陽極酸化処理を行なう。電解処理としての陽極酸化処理は電気量を多量に消費する。したがって、生産工程における生産コスト削減のためには電気量の消費を削減することが必要になるが、そのためには陽極酸化皮膜を薄くすることになる。
また、電気量の削減は省エネルギーの観点からも環境保全に非常に望ましい。陽極酸化皮膜を薄くすると、必然的に当該皮膜の微細孔が少なくなり、触媒の担持容量も減少し、触媒担持量が少なくなる。したがって、そのままでは触媒反応性が維持できず、本来の機能である触媒効果が発揮できない。そこで、触媒担時量を削減した状態で、かつ触媒効果を従来と同等以上にすることが本発明の重要な技術的手段である。
したがって、陽極酸化皮膜の厚さを従来よりも薄くすること、そして、その薄い陽極酸化皮膜に担持可能な触媒量で、従来と同等以上の触媒効果が発揮できれば、陽極酸化処理コスト、触媒コストの両面でアルマイト触媒体のコスト低減が可能になる。
そこでまず、陽極酸化処理に伴う電気量の削減のために、それに伴う陽極酸化皮膜の厚さを薄くすることを検討した。前出のように陽極酸化皮膜を薄くすると触媒が担持される表面積が減少し、当該皮膜に生成する多孔質微細孔の数も減少する。そこで、この陽極酸化皮膜の表面積を拡大し、それによって多孔質の微細孔を増加させる方法として、陽極酸化処理に先立ってエッチング処理によるピット形成を検討した。
このようなエッチング処理によるピットを形成させ、それをさらに陽極酸化処理をすることによって、陽極酸化皮膜の表面積を増大させることができ、前記の有害ガスと触媒との反応面積が増大することになり、触媒効率が向上することも可能になり、少ない触媒担持量でも従来と同等以上の触媒効率が発揮できると考えられる。
アルミニウム基板の表面積を拡大するためのエッチング処理は次のようなプロセスで行なわれる。まず、エッチング処理の前段で、塩素イオンを含む溶液(ex.塩酸)中での電気化学反応によって、アルミニウム基板の表面からトンネルピットを発生させ、後段で、酸性溶液(塩酸)中での化学溶解もしくは中性または酸性溶液中での電気化学反応(電解)によってトンネルピットの径を拡大させる。
エッチング処理によってアルミニウム表面積の増大に有効なピット、特にピット深さはアルミニウムの材質、すなわち、アルミニウム成分(純度)に大きく左右されることが判明した。それはアルミニウムでは99.3%以上の純度が所望のピット深さを得るために必要条件であった。(図2参照)すなわち、触媒反応性を発揮するために必要なアルミニウム表面積のエッチングピット深さはアルミニウム純度とほぼ連動する。
さらに、エッチング処理により形成されるピットの形状は陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体として前出の有害ガス等を高効率で、少量の触媒担持量でも有害ガスを分解するには有害ガスと触媒とが充分接触すること、かつ有害ガスがピットに充分入り込むこと、そして触媒反応で分解されたガスが容易に当該ピットから排出されることが必要な条件であった。そのためには、当該ピットがアルミニウム基板面に垂直方向に形成されていること、さらに当該ピット径が適正に確保されていることが要件であった。
当該ピット径は前出の有害ガスの分解を充分に行うこと、および触媒担持するためのアルミニウムの表面積を確保することを勘案し、当該ピット径の最適範囲が求められる。
実験の結果、当該ピット径が0.3μm未満では孔が細すぎて反応ガスの出入が充分ではなく、触媒効率を低下が低下する。他方、当該ピット径が4μm以上の場合は充分な表面積が得られず、触媒担持量が減少し触媒機能が低下する場合があるので望ましくはない。
ただし、絶対条件ではない。
このような現象は当該ピットの深さにも同様である。すなわち、エッチング処理によるピット径が一定以下であると、やはり反応ガスの出入が速やかではなくなり、触媒の反応速度の低下や触媒反応効率が低下する。陽極酸化皮膜の触媒担持する表面積を充分に確保するためにはアルミニウム基板からのピット深さは15μm以上が必要であることが判明した。他方、アルミニウム基板のピット深さの最長は、できるだけ、アルミニウム基板の厚さにおいて片側厚さの40%程度が望ましい。この根拠はピット深さがアルミニウム基板の厚さにおいて片側40%以上ではアルミニウム基板の強度が不足し、破壊しやすくなったことによるものである。
アルミニウムの陽極酸化処理によって形成されたアルマイト皮膜はそこに生成した多孔質微細孔に微細な粒子の触媒をより多く、かつ強固に担持が可能である。
このアルミニウムの陽極酸化処理は次ぎのようなプロセスで行われる。陽極酸化の電解浴は酸性浴のみならず、アルカリ浴、あるいはホルムアルデヒドと硼酸系の非水浴によっても多孔質皮膜を形成することができる。陽極酸化処理の酸性電解浴としては、燐酸、硫酸、蓚酸、クロム酸、スルフォサルチル酸、ピロリン酸、スルファミン酸、リンモリブデン酸、硼酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、フタル酸、イタコン酸、リンゴ酸、グリコール酸,等一種類以上を溶解した水溶液である。
この酸性浴における電解方法は定電流、定電圧、定電力、および連続、断続あるいは電流回復などを応用した高速アルマイト法などである。さらに電解時の電流波形は直流、交流、交直重畳、交直併用、不完全整流波形、パルス波形、三角波形、あるいは周期波形等が用いられる。他方、アルカリ電解浴としては、苛性ソーダ、苛性カリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、アンモニア水等一種類以上を溶解した水溶液である。アルカリ電解用に場合も電解方法、電流波形は酸性電解浴の場合と同様である。
そこで、この陽極酸化処理工程のコスト削減のために陽極酸化皮膜の厚さをより薄くすることによって消費電気量の削減、それによる生産コストの低減を検討した。本発明では、エッチング処理によるピットと陽極酸化皮膜とを併用することによってアルミニウム基板の陽極酸化皮膜の表面積を増大することができる。すなわち、エッチング処理によるピットのマクロポアの中に陽極酸化処理による皮膜に生成された多孔質微細孔のミクロポアが存在して、表面積が増大するものである。(図3、図4参照)
このようにアルミニウム基板にエッチング処理によるマクロポアと陽極酸化処理によるミクロポアとを形成させた場合には、そのミクロポアの総表面積は陽極酸化皮膜のみの微細孔の表面積に比べて、10倍から100倍に増大することになる。すなわち、アルミニウム基板の陽極酸化皮膜の厚さはエッチング処理によるピット形成によって表面積が増大する分だけ薄くできることになる。
次ぎに、陽極酸化皮膜の微細孔に担持する触媒とその担持方法は次のとおりである。脱臭、揮発性有機化合物、自動車排気ガス等の有害ガス分解処理に適用できる触媒はパラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、亜鉛、金、銀、レニウム、マンガン、および錫、またはこれらの合金もしくは混合物のいずれか、である。これらの触媒、たとえば、白金触媒の場合には、塩化白金酸にアルミニウム基板を低圧で含浸させることによって担持させる。このような触媒担持は、その他に、加圧含浸、減圧含浸、ゾルゲル法、電気泳動法等々により行われる。
このような触媒担持方法によって、アルミニウム基板のエッチング処理ピットに形成された従来の陽極酸化皮膜の1/10〜1/100の皮膜の微細孔に触媒を担持し、触媒量と触媒反応効果を検討した。理論的には陽極酸化皮膜の総表面積が増大した分に応じて触媒反応に必要な触媒担持量は増加すると考えられる。
なお、この場合に触媒金属の粒子径が1nm〜4nmであるので、陽極酸化皮膜に生成した微細孔の径は0.005μm〜0.1μmであることが必要である。
しかし、他方、触媒が有害ガスを分解するために触媒が有害ガスと接触する接触面積、すなわち、触媒と有害ガスとの反応点は陽極酸化皮膜の表面積増大と共に増加するので、触媒の反応効率は向上する。さらに、陽極酸化皮膜が薄くなることによって、そこに生成した微細孔は皮膜の表層部に存在するので、皮膜の深さ方向の下層に触媒が担持される量は少なくなる、すなわち、陽極酸化皮膜の下層に担持された触媒は有害ガスとの接触が非常に少なく、分解反応への寄与は小さいものである。換言すれば、この陽極酸化皮膜の厚さが厚いために生じた皮膜の下層に担持された触媒は不要なものであった。
従来の触媒担持量が平均的に0.5g/mであったが、実施例のように本発明の事例では、触媒担持量が0.2g/mにおいて従来のアルマイト触媒体とほぼ同等の触媒効果を示した。
実施例にて、前記のアルミニウム基板のエッチング処理によるピット性状、さらに陽極酸化皮膜の厚さを有するアルマイト触媒体に触媒を担持し、触媒効率を評価検討した。
本発明は臭気、揮発性有機化合物、自動車排気ガス等の有害ガスの分解装置に適用するアルマイト触媒体であり、そのアルマイト触媒体のコスト低減を目的にしたものである。
製造工程コストに関しては、消費電気量が高いアルミニウムの陽極酸化処理について検討した。
従来のアルマイト触媒体の陽極酸化皮膜の厚さは40μm〜50μmであった。これに比して、本発明におけるアルマイト触媒体の陽極酸化皮膜の厚さは5μm以下で、最良の陽極酸化皮膜の厚さは0.8μmである。すなわち、本発明の陽極酸化皮膜の厚さは従来の陽極酸化皮膜の厚さの1/10〜1/100になる。したがって、このアルミニウムの一連の処理において陽極酸化処理に掛かる電気量は非常に大きく、そのコストは電気量に左右されるので、陽極酸化処理コストの低減ができる。
そこで、従来の陽極酸化処理に掛かる電気量と本発明の表面処理工程、すなわち、「エッチング処理(電気量+薬品量等)+陽極酸化処理(電気量)」の消費電気量をベースに比較すると、本発明のコストは1/40であった。
さらに、従来の陽極酸化皮膜のみのアルマイト触媒体への担持量よりも少ない触媒担持量によって、ほぼ同等の触媒効果を上げることができる。本発明では触媒担持量が従来の2/5であり、その分だけ材料費のコスト低減が可能である。
このようなエッチング処理によるピットの形成と陽極酸化処理皮膜の形成によって、図4に示すように、エッチング処理によるピットのマクロポアと陽極酸化処理によるミクロポアとの両者が形成され、さらに表面積が増大によって、従来の2/5の触媒担持量でも触媒効果を充分に発揮できることが判明した。
この方法によって、製造コストと触媒コストを合わせると約40のコスト低減が可能になる。かつ、陽極酸化処理や触媒担持処理時間の短縮による電気量の省エネルギー、そして、エッチング処理(ピット)と陽極酸化皮膜(多孔質微細孔)による表面積の増大で触媒担持力の増強なども可能になり、実用的に優れた触媒体が得られ、前記の有害ガスの分解処理装置の普及に資する。
本発明におけるアルマイト触媒体の最良の形態は、アルミニウム純度が99.9%以上で厚さが110μmのアルミニウム基板をエッチング処理し、エッチングピット深さが30μm、ピット孔径が2μmで、そのエッチング処理したアルミニウム基板を陽極酸化した皮膜の厚さが0.8μmであり、そこに生成した微細孔の径が0.03μm、担持した触媒量が0.2g/m2であるアルマイト触媒体である。
本発明のアルマイト触媒体の具体的な実施形態を実施例により説明する。ただし、本発明はこれら実施例によって、何らの制限をうけるものではない。
このアルマイト触媒体の生成過程について、本発明の実施例と従来の比較例とを図1に示す。
(比較例)
触媒を担持する純度99.9wt%アルミニウム板(平板)に陽極酸化皮膜を浴温25℃で燐酸濃度7wt%の水溶液中で直流により電流密度0.07A/cmで89,375秒間電解した。その結果、陽極酸化皮膜厚さが約50μm、微細孔径が平均0.03μである陽極酸化皮膜が生成していることを確認した。そのアルミニウム板を塩化白金酸に定圧で浸漬し、白金を担持してアルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.5g/mであった。
触媒を担持する純度99.5wt%アルミニウム板をエッチング浴温80℃、5wt%塩酸+20wt%硫酸の浴で電流密度0.20A/cm2で50秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cmで500秒間、いずれも直流で電解した。その場合のエッチング深さは片面約30μm、ピット径の平均は1.0μmのアルミニウム板を得た。その後、このエッチング処理したアルミニウム板を浴温25℃で燐酸濃度7wt%の水溶液中で直流により電流密度0.07A/cmで1,430秒間電解した。その結果、陽極酸化皮膜の厚さが0.8μm、微細孔径が平均0.03μmの陽極酸化皮膜が生成していることを確認した。このエッチング処理および陽極酸化処理をしたアルミニウム板を塩化白金酸に定圧で浸漬し、白金を担持してアルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.2g/mであった。
実施例1において、触媒担持のアルミニウム純度を99.3wt%にして、その後の処理を同様に行なった。その結果、エッチング深さが平均20μmのアルミニウム板を得た。その後の陽極酸化処理、白金担持処理については実施例1と同様に行い、アルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.18g/mであった。
実施例1において、触媒担持のアルミニウム純度を99.0wt%にして、その後の処理を同様に行なった。その結果、エッチング深さが平均8μmのアルミニウム板を得た。その後の陽極酸化処理、白金担持処理については実施例1と同様に行い、アルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.08g/mであった。
実施例1において、エッチング浴温80℃、5wt%塩酸+20wt%硫酸の浴で電流密度0.20A/cm2で50秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cmで100秒間、いずれも直流で電解した。その結果、エッチング深さが片面平均30μm、ピット径は平均0.25μmのアルミニウム板を得た。陽極酸化処理、白金担持処理については実施例1と同様に行い、アルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.16g/mであった。
実施例1において、エッチング浴温80℃、5wt%塩酸+20wt%硫酸の浴で電流密度0.20A/cm2で50秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cmで200秒間、いずれも直流で電解した。その結果エッチング深さが片面平均30μm、ピット径は平均0.5μmのアルミニウム板を得た。その後の陽極酸化処理、白金担持処理については実施例1と同様に行い、アルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.15g/mであった。
実施例1において、エッチング処理は実施例1と同様に行い、陽極酸化処理を浴温25℃で硫酸濃度7wt%の水溶液中で直流により電流密度0.07A/cmで5,300秒間電解した。その結果、陽極酸化皮膜の厚さが3μm、微細孔径が平均0.003μmの陽極酸化皮膜が生成していることを確認した。その後の白金担持処理については実施例1と同様に行いアルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.2g/mであった。
実施例1において、エッチング処理は実施例1と同様に行い、陽極酸化処理を浴温25℃で燐酸濃度7wt%の水溶液中で直流により電流密度0.07A/cmで9,500秒間電解した。その後、浴温60℃、20wt%の燐酸水溶液に300秒浸漬し、微細孔径を拡大した。その結果、陽極酸化皮膜の厚さが5μm、微細孔径が平均0.03μmの陽極酸化皮膜が生成していることを確認した。その後の白金担持処理については実施例1と同様に行いアルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.9g/mであった。
実施例1において、エッチング処理は実施例1と同様に行い、陽極酸化処理を浴温25℃で燐酸濃度3wt%の水溶液中で直流により電流密度0.07A/cmで1,430秒間電解した。その後、浴温60℃、20wt%の燐酸水溶液に300秒浸漬し、微細孔径を拡大した。その結果、陽極酸化皮膜の厚さが0.8μm、微細孔径が平均0.004μmの陽極酸化皮膜が生成していることを確認した。その後の白金担持処理については実施例1と同様に行いアルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は1.0g/mであった。
実施例1において、エッチング処理は実施例1と同様に行い、陽極酸化処理を浴温25℃で燐酸濃度7wt%の水溶液中で直流により電流密度0.07A/cmで1,430秒間電解した。その後、浴温60℃、20wt%の燐酸水溶液に200秒浸漬し、微細孔径を拡大した。その結果、陽極酸化皮膜の厚さが0.8μm、微細孔径が平均0.08μmの陽極酸化皮膜が生成していることを確認した。その後の白金担持処理については実施例1と同様に行いアルマイト触媒を得た。この場合の触媒担持量は0.2g/mであった。
上記、従来例および実施例1〜6のアルマイト触媒担持体を用いて、揮発性有機化合物(VOC)であるトルエンの触媒分解率を実験した。その触媒分解測定データを表1に示す。その結果、本発明のアルマイト触媒体はトルエン分解性能が従来(比較)と同等以上であることが判明した。
これらの実施例によるアミニウム基板の表面処理コストと触媒担持量コストを合わせたアルマイト触媒体のコストは従来のアルマイト触媒体のコストの50%であった。
本発明のアルマイト触媒体は厚さが非常に薄いアルミニウム板を利用し、かつその陽極酸化の皮膜を従来のものよりも非常に薄くし、触媒担持量もさらに削減し、本来の触媒効果を従来のものと同等以上でありながら当該触媒体の生産コストを削減できた。これによって、脱臭、揮発性有機化合物、自動車排気ガス、焼却燃焼ガス等々の有害ガスを分解する環境浄化装置の実用化、普及に資するものである。
図1は、本発明のアルマイト触媒体の生成過程 図2は、本発明のアルミニウム成分とエッチング処理によるピット形成状態 図3は、本発明の陽極酸化皮膜形成の状態 図4は、本発明のアルマイト触媒体の多孔質細孔状態(分析)

Claims (5)

  1. アルミニウム成分が99.3wt%以上であるアルミニウム基板をエッチング処理によってアルミニウム基板面に垂直にピットを形成し、さらに、陽極酸化処理によって皮膜を形成し、当該皮膜に生成した微細孔に触媒を担持した陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体
  2. 請求項1において、エッチング処理によってアルミニウム基板面に深さが15μm以上で、径が0.3μm以上のピットを形成し、さらに、陽極酸化処理によって皮膜を形成し、当該皮膜に生成した微細孔に触媒を担持した陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体
  3. 請求項1〜請求項2において、形成された陽極酸化皮膜の厚さが5μm以下であり、陽極酸化皮膜に生成された微細孔の径が0.005μm以上である陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体
  4. 請求項1〜請求項3において、陽極酸化処理により皮膜に生成された微細孔に、パラジウム、白金、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、コバルト、鉄、銅、亜鉛、金、銀、レニウム、マンガン、および錫、またはこれらの合金もしくは混合物のいずれかからなる触媒を担持した陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた触媒体
  5. 請求項1〜請求項4における陽極酸化アルミニウム皮膜を用いた環境浄化装置用触媒体
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