以下、この発明の実施形態に係る格納システムについて説明する。なお、本実施形態では、認証システムが格納システムに組込まれた例で説明するが、認証システム自体の適用例はこれに限られない。
<A:全体構成>
まず、本格納システムの全体構成について説明する。図1は格納システムの全体を概略的に示す図であり、図2は格納システムの要部拡大図である。
この格納システムは、格納手段として複数のキャビネット10(図1では3つのキャビネット10を図示)を備えている。これらの各キャビネット10には、自己発電して所定の認証動作及び解錠動作を行う自己発電式の認証錠装置20が組込まれている。この認証錠装置20は、ID要求指令を無線送信すると共に無線受信したIDに基づいて認証を行う認証装置として機能する。
また、このキャビネット10の利用者に対しては、IDカード60が付与される。このIDカードは、記憶部に識別符号(ID)が記憶されており無線受信した識別符号要求指令に応じて識別符号を無線送信する認証端末装置として機能する。
この格納システムはおおよそ次のようにして利用される。すなわち、利用者が所定のキャビネット10の格納部位を利用するにあたって、該キャビネット10に設けられた引手部12a,15aを操作する。すると、その操作力を受けて認証錠装置20は、その内部で自己発電を行う。この発電力を受けて認証錠装置20が動作して、利用者に付与されたIDカード60との間で無線通信を行って利用者が該キャビネット10を利用可能であるか否かを判断する認証を行う。そして、認証錠装置20は、利用者が利用可能であると認証したときに、解錠動作する。一方、認証錠装置20は、利用者が利用不可であると判断したときに施錠状態を保つ。これにより、利用者は該利用権限あるキャビネット10の格納部位だけを利用できるようになる。
なお、これらの利用履歴は、認証錠装置20から管理コンピュータ70に送信され、その利用履歴が管理コンピュータ70にて管理記憶されるようになっている。
<B:キャビネットの構成>
キャビネット10の構成についてより詳細に説明する。図1及び図2に示すように、キャビネット10は、書類等の格納物を格納する手段である。ここでは、キャビネット10は、上半部と下半部とに分割されており、それぞれに、扉12で開閉自在とされた扉式収納部13又は引出し押込自在とされた複数段(ここでは3段)の引出し部15を有する引出式収納部16を有している。これらの扉12及び引出し部15は、開閉自在な開閉部として機能する。
もっとも、キャビネット10の全体が一組の扉で開閉される構成であってもよいし、又は、全体が引出式の収納部であってもよい。
また、格納手段の例は、キャビネット10のように一定位置に設置される固定タイプのものに限られず、可動式の脇机等、可動タイプのものであってもよい。
例えば、図3に示すキャビネット10Bは、複数段(ここでは)の引出し部15Bを有する本体の底面に転動体を有するキャスタ11Bが取付けられた構成となっている。
上記扉12や引出し部15,15Bには、それらが開かれるのに先立って開放操作される引手部12a,15a,15Baを備えている。ここでは、引手部12a,15a,15Baは、略板状部材であり、扉12や引出し部15,15Bの正面の窪み部位に設けられている。また、引手部12a,15a,15Baは、該正面部位と略水平な初期姿勢から該正面部位から突出する方向に傾斜した操作姿勢との間で揺動自在に取付けられると共に、ねじりコイルバネ等の弾性手段によって操作姿勢から初期姿勢に向けて付勢されている。
そして、利用者が扉12や引出し部15,15Bを開くにあたっては、引手部12a,15a,15Baに手をかけるようにして、その引手部12a,15a,15Baを初期姿勢から操作姿勢に姿勢変更させるようにしつつ、扉12や引出し部15,15Bを引出すようになっている。
これらの各引手部12a,15a,15Baのそれぞれに、認証錠装置20が組込まれている。
このような引手部12a,15a,15Ba自体の構成は、従来のキャビネットの扉や引出しに設けられているものと同様構成であるため、詳細な説明は省略する。
勿論、引手部12a,15a,15Baとしては上記構成に限らず、利用者が利用しようとする場合にごく自然に手をかけて何らかの操作を加えようとする全ての構成、例えば、一般的なドアのノブのような構成も含む。
<C:認証錠装置の構成>
認証錠装置20について説明する。この認証錠装置20は、上記各扉12及び各引出し部15,15Bに取付けられている(図2参照)。各認証錠装置20は、各扉12及び各引出し部15,15B毎を管理単位として、後述する認証動作及び解錠動作を行う。
図4は認証錠装置のブロック図である。この認証錠装置20は、発電部22と、認証制御ユニット50と、錠装置30とを備えている。そして、上記引手部12a,15a,15Baに加えられる操作を受けて発電部22が発電するようになっている。また、この発電部22からの電力供給を受けて認証制御ユニット50が起動して認証動作を行い、利用可と判断された場合に錠装置30を駆動して扉12及び引出し部15,15Bを開放可能な状態に切替えるようになっている。
各部についてより詳細に説明する。
<C−1:発電部>
図5は発電部の機構を説明する図である。図4及び図5に示すように、発電部22は、引手部12a,15a,15Baの動きを伝達する伝達機構23と、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電本体部26とを備えている。
ここでは、伝達機構23は、ラック24aとピニオン24bとの組合わせにより構成されている。また、発電本体部26は、直流発電機により構成されている。
ラック24aと引手部12a,15a,15Baとは、線状部材等の連結部材25を介して連結されており、引手部12a,15a,15Baが初期姿勢から操作姿勢に姿勢変更されるのに伴ってラック24aが逐次引張られるように移動するようになっている。ピニオン24bは、発電本体部26の回転軸に取付けられており、上記ラック24aと噛合うようになっている。そして、引手部12a,15a,15Baの姿勢変更によりラック24aが移動すると、ラック24aとピニオン24bとの噛合い機構により、直線運動が回転運動に変換されて発電本体部26に伝達され、発電本体部26が直流電力を生じるようになっている。この電力は、定電圧回路を介して認証制御ユニット50及び錠装置30に供給される。
なお、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電本体部26としては、磁石とコイルとを適宜組合わせたもの等、電磁誘導を利用した種々の構成を用いることができる。また、その他、圧電素子等、圧電効果を利用して発電するものを用いることもできる。
また、引手部12a,15a,15Baの動きを発電本体部26に伝達する機構としても、種々のリンク機構やギヤ等を用いた様々な構成のものを用いることができる。
<C−2:錠装置>
図6は錠装置を示す図である。図4及び図6に示すように、錠装置30は、ロック部32と、解錠駆動部36とを備えている。
ロック部32は、扉12及び引出し部15,15Bと閉状態に保つロック状態とそれらを開放可能にするアンロック状態との間で切替可能に構成されている。
ここでは、ロック部32は、扉12及び引出し部15,15Bに揺動自在に取付けられたロック爪33と、ロック爪33を付勢するコイルバネ等の付勢手段34とを有している。
ロック爪33は、基端部が軸部33bを介して扉12及び引出し部15,15Bに揺動自在に取付けられると共に、先端部にキャビネット10の本体側に形成されたロック孔10hに係脱自在なロック突部33aを有している。そして、ロック爪33は、ロック突部33aをロック孔10hに係合させたロック姿勢(図6参照)と、ロック孔10hから係合解錠可能な非ロック姿勢(図6で矢符A1方向に姿勢変更した姿勢)との間で姿勢変更自在とされている。
また、上記付勢手段34は、ロック爪33をロック姿勢に向けて(図6の矢符A2参照)常時付勢している。この付勢手段34の付勢力により、扉12及び引出し部15,15Bが閉じられた状態では、ロック突部33aはロック孔10hに係合した状態に保たれ、ロック部32がロック状態を保つようになっている。
また、ロック爪33は、軸部33bを介して引手部12a,15a,15Baの取付軸に連結されている。この軸部33bと引手部12a,15a,15Baの取付軸との間には、クラッチ部35が介在している。クラッチ部35は、解錠駆動部36の駆動により、引手部12a,15a,15Baの取付軸から軸部33bへの回転力の伝達経路を確立した状態と遮断した状態とに切替可能に構成されている。そして、その伝達経路が確立された状態では、引手部12a,15a,15Baを操作姿勢に姿勢変更することで、ロック爪33が非ロック姿勢に姿勢変更し、ロック状態からアンロック状態に切り替るようになっている。
一方、その伝達経路が遮断された状態では、引手部12a,15a,15Baの姿勢に拘らず、ロック爪33はロック姿勢と非ロック姿勢との間で姿勢変更可能で、かつ、ロック姿勢に向けて付勢された状態となっている。つまり、この状態では、引手部12a,15a,15Baを操作姿勢に姿勢変更しても、ロック姿勢に保たれる。また、ロック爪33の先端部を直接押すことで付勢手段34の付勢力に抗してロック爪33をロック姿勢から非ロック姿勢に姿勢変更させることができるようになっている。
また、ロック突部33aの先端部はロック爪33の先端側に向けて順次先細りとなる傾斜形状に形成されている。そして、扉12及び引出し部15,15Bが開かれた状態から扉12及び引出し部15,15Bを閉じると、ロック突部33aの傾斜状の先端部がロック孔10hの周縁部に摺接することで、ロック爪33が非ロック姿勢に姿勢変更するようになる。また、ロック突部33aがロック孔10hの周縁部を乗越えると、付勢手段34の付勢力によりロック爪33がロック姿勢に姿勢変更し、ロック突部33aがロック孔10hに係合し、ロック状態となるようになっている。
解錠駆動部36は、発電部22からの電力供給を受けて上記ロック部32をロック状態からアンロック状態へ切替駆動するように構成されている。
ここでは、解錠駆動部36は、自己吸着型プランジャ37を有している。自己吸着型クランプは、マグネット37aを有する略U字状のヨーク37bと、ヨーク37bに巻回されたコイル37cと、略U字状の可動片37dとを有している。ヨーク37bは固定位置に設けられており、可動片37dはヨーク37bに吸着した位置(吸着位置)とヨーク37bから離れた位置(離間位置)との間で移動自在に構成されている(矢符A3参照)。
ヨーク37bは固定位置に設けられており、そのコイル37cはスイッチング素子29を介して発電部22に電気的に接続されている。また、可動片37dは、コイルバネ等の弾性伝達手段を介して引手部12a,15a,15Baに連結されている。そして、引手部12a,15a,15Baを引張ると、可動片37dを吸着位置から離間位置に向けて移動させる力が作用するようになっている。
この自己吸着型プランジャ37は、コイル37cに電流が流されない通常状態では、可動片37dはマグネット37aの磁力によりヨーク37bに吸着保持されている。この状態で、コイル37cに、スイッチング素子29をオン状態にして、発電部22からパルス波等の開放電圧を印加すると、コイル37cによりマグネット37aの磁束を相殺する磁束が発生し、可動片37dの吸着力がキャンセルされる。すると、可動片37dは、引手部12a,15a,15Baから弾性伝達手段を介して伝達される力により、離間位置に向けて移動するようになる。
可動片37dが吸着位置から離間位置に向けて移動すると、その移動が移動伝達機構を介してクラッチ部35に伝達され、クラッチ部35は、引手部12a,15a,15Baの取付軸から軸部33bへの回転力の伝達経路が確立された状態になる。その移動を伝達する移動伝達機構自体は、周知のリンク機構を利用して構成することができる。
また、この自己吸着型プランジャ37は、吸着位置が下方、離間位置が上方になる位置関係で配設されている。そして、可動片37dが吸着位置から離間位置した後、開放電圧を遮断すると、重力によって可動片37dが吸着位置に復帰する。これにより、クラッチ部35は、引手部12a,15a,15Baの取付軸から軸部33bへの回転力の伝達経路が遮断された状態になる。
なお、可動片37dを吸着位置に復帰させる構成としては、重力を利用した構成に限らず、例えば、コイルバネ等の弾性手段を用いた構成であってもよい。
<C−3:認証制御ユニット>
図7は認証制御ユニットとIDカードとの電気的構成を示すブロック図である。
認証制御ユニット50は、発電部22からの電力供給を受けて起動してIDカード60と通信を行ってIDを取得し、そのIDに基づいて認証を行い、利用可と判断された場合に、扉12や引出し部15,15Bを開放可能なアンロック状態に切替える手段として機能する。
より詳細に説明すると、認証制御ユニット50は、制御回路部52と、無線通信回路部56と、電波発生部54とを備えている。これらの制御回路部52と、無線通信回路部56と、電波発生部54は、全て発電部22からの直接的又は間接的な電力供給により動作する。
制御回路部52は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータであり、その演算動作はすべて予め格納されたソフトウェアプログラムによって実行されるものである。この制御回路部52は、発電部22から電力供給を受けると起動し、その電力により認証制御部52aと錠制御部52bとしての機能を実行するようになっている。
認証制御部52aは、自己のメモリ内に、自己が取付けられた扉12又は引出し部15,15Bを利用可能なIDリストが登録された構成となっている。そして、認証制御部52aは、起動により電波発生部54を通じて起動信号付与用の電波を発すると共に、無線通信回路部56を通じてIDカード60との間で無線通信を行うことで、IDカード60を所持した利用者が、自己が取付られた扉12及び引出し部15,15Bを利用可能であるかどうかの認証動作を行い、その認証結果を錠制御部52bに与えるようになっている。
錠制御部52bは、認証制御部52aの認証結果に基づいて、スイッチング素子29をオンオフすることで、解錠駆動部36を駆動制御するようになっている。
電波発生部54は、起動信号付与用の電波を発する手段であり、高周波発振回路54aと、高周波増幅器54bと、アンテナ部54cとを備えている。そして、認証制御部52aからの出力信号に応じて、高周波発振回路54aで所定周波数f1の信号が得られ、この信号が高周波増幅器54bで増幅された後、アンテナ部54cから外部に向けて発せられるようになっている。
無線通信回路部56は、アンテナ、受信回路及び送信回路を備えた無線通信手段であり、認証制御部52aは無線通信回路部56を通じてIDカード60等の外部端末と無線通信を行うようになっている。
図8は認証制御ユニットの動作を示すフローチャートである。
同図に示すように、発電部22が発電すると、ステップS1に示すように、制御回路部52は発電部22からの電力供給を受けて起動し、ステップS2に移行する。
ステップS2では、認証制御部52aは、電波発生部54を介して起動信号付与用の電波を発する。この電波により後述するようにIDカード60が起動するようになる。なお、起動信号付与用の電波を発する継続時間は、後述する端末制御回路部62の起動端子62cが起動信号として認識し得る1パルスの継続時間以上であることが好ましい。
続くステップS3では、認証制御部52aは、無線通信回路部56を通じてID要求指令を無線送信する。
次ステップS4では、IDを取得できたか否か、即ち、ID要求指令に応じてIDが返信されたか否かを確認する。ここで、IDを取得できなかった場合には処理を終了する。一方、ステップS2の処理によって起動したIDカード60が自己のIDを無線で返信してきたような場合には、IDを取得できたと判断され、ステップS5に進む。
ステップS5では、取得したID及び利用可能なIDリストに基づいて、取得したIDが利用可能なIDか否かを判定することによって認証を行う。取得したIDが利用可能なIDではなく、認証不合格である場合には処理を終了する。一方、取得したIDが利用可能なIDであり認証合格である場合にはステップS6に進む。
ステップS6では、スイッチング素子29にオン信号を与え、スイッチング素子29をオン状態にする。これにより、錠装置30はアンロック状態になり、利用者が該当する扉12及び引出し部15,15Bを利用できるようになる。
ステップS6で解錠動作を行った後、次ステップS7で、認証制御部52aは、自己の扉12及び引出し部15,15Bを識別する符号と共に利用者のIDを、無線通信回路部56を通じて外部に向けて無線通信する。この無線通信は、外部に設けられた管理コンピュータ70で受信される。
これにより、認証制御ユニット50はスリープ状態等に移行して処理を終了する。
なお、管理コンピュータ70は、複数の認証制御ユニット50との間で通信を行い、利用者のIDと自己の扉12及び引出し部15,15Bの識別符号と利用時間等を対応づけたテーブルを生成更新し、このテーブルを本システムの利用履歴として記憶する。
<D:IDカード>
図7に戻ってIDカード60について説明しておく。このIDカード60は、本システムの利用者に付与されており、利用者は、このIDカード60を所持して引手部12a,15a,15Baを初期姿勢から操作姿勢に向けて引張るように操作する。
IDカード60は、端末制御回路部62と、無線通信回路部64と、電源66と、起電力発生部68とを備えている。
端末制御回路部62は、CPU、ROMおよびRAM等を備える一般的なマイクロコンピュータ、特に、ワンチップマイコンにより構成されており、その演算動作はすべて予め格納されたソフトウェアプログラムによって実行される要素である。
この端末制御回路部62に内蔵された不揮発性のメモリ62aには、各IDカード60に割振られたIDが記憶されている。そして、端末制御回路部62は、無線通信回路部64を通じて受信したID要求指令に応じて、メモリ62aに記憶されたIDを無線通信回路部64を通じて無線送信する。
また、この端末制御回路部62は、電源端子62bと、この電源端子62bとは別の起動端子62cとを備えている。端末制御回路部62は、電源端子62bを通じた電源供給を受けて、処理動作を実行する。また、端末制御回路部62は、後述する認証処理等を実行する起動状態と、この起動状態よりも低消費電力状態で認証処理等を行わないスリープ状態との間で切替自在であり、起動端子62cに起動信号入力が入力されることによって、スリープ状態から起動して起動状態に移行するようになっている。
無線通信回路部56は、アンテナ、受信回路及び送信回路を備えた無線通信手段であり、端末制御回路部62は無線通信回路部64を通じて認証制御部52aと無線通信を行うようになっている。
電源66は、一次電池又は二次電池であり、電源端子62bを通じて端末制御回路部62に動作電源を供給すると共に、IDカード60内の他の要素に対しても電源を供給する。
起電力発生部68は、電波により起電力を生じる手段であり、この起電力によって得られる信号が起動信号として端末制御回路部62に与えられるようになっている。
より具体的には、起電力発生部68は、アンテナ部68aと、整流回路68bと、定電圧回路68cとを有している。
アンテナ部68aは、主として周波数f1(電波発生部54で発せられる電波の周波数と同じ)の電波を吸収する特性を有するように設定されている。そして、主として周波数f1の電波がアンテナ部68aで吸収されると、周波数f1の交流電圧が整流回路68bに印加され、整流された直流電圧として出力される。次に、整流回路68bからの出力電圧は次に定電圧回路68cに印加されて定電圧化される。最後に、定電圧回路38bからの正(+)出力端子からの出力が起動信号として端末制御回路部62の起動端子62cに入力される。
このように構成されたIDカード60の動作について図9のフローチャートを参照して説明する。
すなわち、IDカード60は通常状態でスリープ状態となっている。
そして、認証制御ユニット50側より起動信号付与用の電波が発せられると、IDカード60側の起電力発生部68で起電力を生じ、この起電力によって得られる信号が起動信号として端末制御回路部62の起動端子62cに入力される。
すると、ステップS11に示すように、端末制御回路部62はスリープ状態から起動し、電源66を動作電源として以下の諸処理を実行する通常状態に移行し、次ステップS12に進む。
ステップS12では、端末制御回路部62は、ID要求指令の有無を判定する。ここで、ID要求指令が無いと判断されると、ステップS14に進む。一方、認証制御ユニット50側より無線送信されたID要求指令が無線通信回路部64を通じて端末制御回路部62で受信され、ID要求指令有りと判断されると、ステップS13に進む。
ステップS13では、端末制御回路部62は、自己のIDを、無線通信回路部64を通じて無線送信した後、ステップS14に進む。
ステップS14では、端末制御回路部62は、通常状態からスリープ状態に移行して、処理を終了する。
<E:全体動作の説明>
本システムの全体動作を説明する。図10は引手部の状態と本システムの動作内容との関係を示す図である。
まず、利用者は自己に付与されたIDカード60を所持して、引手部12a,15a,15Baを引張って初期姿勢から操作姿勢に向けて姿勢変更させる。
引手部12a,15a,15Baの操作を開始すると、発電部22は発電する。すると、引手部12a,15a,15Baの操作開始後初期(動作ストローク初期区間)で、認証制御ユニット50は電力供給を受けて起動し上記認証動作を実行する。認証制御ユニット50での認証が合格になると、引手部12a,15a,15Baの操作中期(動作ストローク中期区間)で、解錠駆動部36が動作してロック部32をロック状態からアンロック状態へ切替駆動する。この後、引手部12a,15a,15Baの操作開始後終期(動作ストローク終期区間)で、ロック部32による実際のロックが解除されると共に、認証制御ユニット50から管理コンピュータ70に向けて履歴データが送信される。
なお、上記例では引手部12a,15a,15Baが操作されて発電が継続している期間内に、認証錠装置20の動作が全て終了するようになっているが必ずしもその必要はない。例えば、引手部12a,15a,15Baと発電部22との間に、バネ等の弾性手段を用いた蓄力機構を介在させたり、或は、給電回路に電力を一時的に蓄えるキャパシタを設ける等して、引手部12a,15a,15Baの操作終了後に認証錠装置20の動作が行われるようにしてもよい。
これにより、利用者は、操作姿勢に姿勢変更された引手部12a,15a,15Baを引張りつつ、扉12及び引出し部15,15Bを引いて開くことができる。そして、利用者は扉12及び引出し部15,15Bで閉じられていた収納空間に収納された収納物にアクセスして利用できる。
利用を終了すると、利用者は、扉12及び引出し部15,15Bを押してそれらを閉じる。この際には、上記したように、発電部や解錠駆動部36の動作状況と関わりなく、ロック部32をロック孔10hに係合させて、元の閉じた状態、即ち、扉12及び引出し部15,15Bを閉状態に保つロック状態にすることができる。
図11は認証錠装置の動作タイミングとIDカードの動作タイミングとの関係を示す図である。同図を用いて認証錠装置20とIDカード60とが無線通信を介して認証を行う流れを説明する。
すなわち、認証錠装置20は、引手部12a,15a,15Baに操作が加えられると自己発電し、この発電電力を受けて起動する。この後、認証錠装置20は、起動信号付与用の電波を発する。この電波は、認証錠装置20近傍領域(認証錠装置20による認証を欲する利用者によって所持されるIDカード60が存在するであると予定される領域)に存在するIDカード60だけを起動させ得る程度の出力であることが好ましい。認証錠装置20による認証の必要がない離れた位置にあるIDカード60を誤って起動させないようにするためである。
すると、起動信号付与用の電波を受けて、IDカード60が起動する。
この後のタイミングで、認証錠装置20からIDカード60に対してID要求指令が送信される。ID要求指令を受信したIDカード60は、これに応答して自己のIDを認証錠装置20に向けて送信する。なお、キャビネット10を利用しようとする利用者が存在するであろうと予定される正面エリアにIDカード60がある状態で、それらの間で無線通信が成立するように設定されていることが好ましい。具体的には、そのような距離範囲(例えば、50cm)の範囲内で無線通信が成立するような電波出力に設定されていることが好ましい。
この後、IDカード60はスリープ状態に移行する。また、認証錠装置20は、応答されたIDに基づいて認証処理を行った後、認証合格の場合には解錠動作(扉12や引出し部15,15Bをアンロック状態にする)して、以降の処理を実行する。
以上のように構成された認証システムによると、認証錠装置20に電波を発する電波発生部54が設けられると共に、IDカード60に起電力発生部68が設けられ、認証制御部52aは、認証動作を行う場合に、ID要求指令を無線送信するにあたって電波発生部54を通じて電波を発している。そして、この電波によって起電力発生部68で起電力が生じると、この起電力によって得られる信号が起動信号として端末制御回路部62の起動端子62cに与えられる。このため、認証錠装置20が認証動作を行う際に電波を発することで、IDカード60の端末制御回路部62が起動して認証動作を行うことができる。
従って、認証を行うタイミングだけで端末制御回路部62を起動させ、その他の期間は端末制御回路部62をスリープ状態で待機させておくことができ、省電力化を図ることができる。また、端末制御回路部62は、一定周期毎に起動するのではなく、認証錠装置20からの電波を起因として起動するため、認証を迅速に行うこともできる。
なお、起動信号付与用として発せられる電波の周波数f1と認証錠装置20とIDカード60との間の無線通信で用いられる電波の周波数f2とはと同じであってもよいが、異なるように設定されていることが好ましい。
異なるようにすることで、無線通信に用いられる電波によって、IDカード60が誤ったタイミングで起動してしまうことを防止できる。より具体的に説明すると、認証錠装置20とIDカード60との間の無線通信で用いられる電波の周波数f2は、法規上又は汎用性の都合等から、本システムの周辺機器で採用される無線通信電波の周波数帯域と重なる可能性が高い。ここで、周波数f1とf2とが同一であると、IDカード60は本システムの周辺機器から発せられる無線通信電波によって誤って起動してしまう恐れがある。IDカード60が誤ったタイミングで起動してしまうと、IDカード60の消費電力増を招くことになる。そこで、無線電波の周波数f2に対して起動信号付与用の電波周波数f1を異なるように設定しておくことで、IDカード60が誤ったタイミングで起動してしまうことを防止し、IDカード60の消費電力増を防止することができる。
また、上記格納システムは次のようなメリットを有している。すなわち、扉12及び引出し部15,15Bに、引手部12a,15a,15Baに加えられる開放操作を受けて発電する発電部22と、ロック状態とアンロック状態との間で切替可能なロック部32と、発電部22からの電力供給を受けてロック状態からアンロック状態へ切替え可能な解錠駆動部36と、発電部22からの電力供給を受けて起動して認証動作を行い認証合格と判定した場合に解錠駆動部36を駆動制御してアンロック状態に切替える制御回路部52とが設けられているため、外部からの電源供給を受けることなく、認証動作及び解錠動作が行われ、電源用の外部配線を無くするができる。また、停電等の影響を受けることなくキャビネット10を利用できる。
また、制御回路部52は、発電部22からの電力供給を受けて起動し、IDカード60との間で無線通信を行ってIDを取得して認証動作を行う。このため、利用者はIDカード60をリーダにかざす等の格別な認証動作を行うことなく、通常のキャビネット10を利用するのと同様に、引手部12a,15a,15Baを開放操作するだけで、利用権限ある場所を簡便に利用できる。
さらに、実際に引手部12a,15a,15Baの操作を受けたものに対応する認証錠装置20だけが動作を実行するため、無関係な他の認証錠装置20が誤動作をしてしまう恐れも回避できる。
そして、このような格納システムでは、引手部12a,15a,15Baへの操作に応じて認証を行うため、利用者に違和感を与えないためには、迅速な認証を行ってその操作とほぼ同時に扉12及び引出し部15,15Bを解錠可能にする必要性が高い。このため、本認証システムのように認証を迅速に行えるというメリットは大きい。
{変形例}
なお、上記実施形態では、認証システムをキャビネット10等の格納システムに適用した例で説明したが、認証システムの適用例は上記例に限られない。
例えば、建築物や部屋の扉等に、通常の鍵に換えて又は加えて、本認証システムを組込んで、その扉等に対する認証及び開閉制御を行うようにしてもよい。
また、例えば、オフィス等に設置される机や椅子の本認証システムを組込むようにしてもよい。この場合、例えば、感圧センサ等の検知手段やスイッチ等の入力手段を介して椅子への着席状態を取得し、利用者が着席したと判断した場合に、利用者が所持するIDカードとの間で無線通信を行って認証を行うようにするとよい。また、認証結果が合格である場合に、例えば、机上に設置されたパソコンを利用可能にするようにするとよい。
すなわち、本認証システムの認証によって利用可能となる対象は、キャビネット10等の格納手段に限られず、部屋や建築物等より大きな空間であってもよいし、また、パソコン等の何らかの装置であってもよい。また、認証動作は、必ずしも上記のように引手部12a,15a,15Baへの操作に応じて行われる必要はなく、例えば、スイッチ等の入力手段に対する操作に応じて、又は、感圧センサ、接触センサ等の検知手段の検知信号に応じて行われるものであってもよい。
また、上記起電力発生部68は、例えば、定電圧回路68cと起動端子62cとの間に、起動端子62cへの起動信号用に適した電圧に増幅して出力する増幅回路や入力電圧が所定電圧以上である場合にのみ起動用の信号を出力する比較回路等を介在させた構成であってもよい。
すなわち、起電力発生部68は、アンテナ部68aで生じた起電力によって、ソフトウエア処理を施されることなく直接又は間接的に得られた信号を、起動信号として起動端子62cに入力できる全ての構成を含む。このような起電力発生部68は、例えば、マイコン等のソフトウエア処理する回路を含まずに、生じた起電力で得られる信号に対して直接的にアナログ処理やデジタル処理を施す上述したようなハードウエア回路を含む構成によって実現される。