JP2007230836A - 酸化アルミニウム単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炉体内のルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、単結晶用原料を加熱溶融する際に、炉体内を0.01MPa以下に維持しつつ、加熱によって単結晶用原料から発生するガスを除去しながら溶融し、引き続き、原料融液を0.01〜0.1MPaの減圧に維持して成長結晶を引き上げることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法により提供する。これにより原料に吸着または内包しているガスが容易に排除でき、融液中に含まれる過剰なガスが減少し、単結晶育成時に結晶内に取り込まれる微小な気泡が少なくなり、微小な気泡を起因とするピットやマイクロバブルが大幅に減少する。
【選択図】なし
Description
しかし、酸化アルミニウム単結晶をチョクラルスキー法で成長させると、結晶中に無数の微小な気泡が発生しやすい。この微小な気泡には、エピ成長基板となるウエハーをポリッシュ研磨したときに、ピット(直径数μmの微小な窪み)を発現させる相対的に大きな気泡と光散乱レーザートモグラフ法(非特許文献1参照)に従い、レーザー光を照射したときに雲状に確認できるマイクロバブルといわれるものがある。これらの中でマイクロバブルの影響は、未だ確定されていないものの、ピットと共にLED特性に悪影響を与えると言われている。
これにより融液中に存在する酸素原子(O)や酸素分子(O2)が水素ガスや一酸化炭素ガスと反応して除去されるため、育成した単結晶中への気泡の取り込み量は確かに減少する。しかしながら、育成された単結晶からウエハーを切り出し、ポリッシュ研磨したときに、ウエハー表面には多数のピットが存在しており、前記気泡の取り込み量を十分に抑制することはできていない。
したがって、まず、原料に含まれるガス成分を融解前にできるだけ除去して融液中に存在する過飽和のガス成分を減少させ、融解後は対流を強化し攪拌の効果を増加させることで、単結晶育成時に結晶内に取り込まれる微小な気泡の量を少なくすれば、ピツトやマイクロバブルの発生を抑えることができるものと考えられる。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、単結晶用原料を加熱後、温度が1000℃に達してから減圧を始めることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、混合雰囲気の酸素濃度が、0.01〜0.5%であることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、前記ルツボの材料がイリジウムであることを特徴とする単結晶製造方法が提供される。
こうして得られた単結晶は、微小な気泡に起因するピット、マイクロバブル、結晶欠陥等が低減しており、さらにルツボ材料からのインクルージョン(内包物)がなくなるために、高品質なものとなり、この単結晶を用いれば優れた特性を有する電子部品材料、光学用部品材料を提供できる。
炉体内の酸化アルミニウム単結晶原料を常圧状態で加熱溶融し、チョクラルスキー法で成長させると、結晶中に無数の微小な気泡が発生しやすい。酸化アルミニウム気泡の原因となるガスは、酸化アルミニウムの分解によっても発生するが、原料に吸着または内包しているガス成分が原料の融解前に完全に除去されず融液内に残り、これが結晶に取り込まれて気泡となっているものが多い。そこで、単結晶用原料をルツボ内で加熱中および溶融中に炉体を減圧し、原料に吸着または内包しているガスを強制的に排除する。この工程では、原料が融解する前に減圧作業を終了してしまうと、ガス成分の除去が不十分となるので原料が実質的に融解し終わるまで行う。
このような減圧度をモニターするために、10〜60min間隔、好ましくは20〜50min間隔で圧力を測定することが望ましい。この減圧作業を原料が融解するまで繰り返す。真空引き停止による炉内の真空度劣化は、原料が融解するまでは通常0.001〜0.002MPaとわずかであるが、原料融解時になると劣化の度合いが0.005〜0.01MPaまで増加することがある。
こうした問題は、特許文献2に記載のように、例えば育成中に結晶の回転数を大きく上げて結晶成長速度を調節してもよいが、例えば、本出願人による特開2005−231958に開示されているルツボ底部に加熱ヒーターを有する育成炉を用いて融液の対流を調節すれば、回転数を大きく上げることなく解決できる。
この単結晶からウエハーをスライスし、ポリッシュ研磨することで、エピ結晶基板とすることができる。単結晶中には微小な気泡が極めて少ないので、ピット数もマイクロバブルも少なくなり優れた特性を有する電子部品材料、光学用部品材料を提供できる。
育成した単結晶に取り込まれた微小な気泡は、前記光散乱レーザートモグラフ法に従って観察した。具体的には、図1に示したように、円筒状に加工した酸化アルミニウム単結晶の側面にレーザー光を照射して、酸化アルミニウム単結晶端面より射出される散乱光をCCDカメラに取り込み、画像処理装置で散乱光強度を算出した。この結果、散乱光強度が140以下であれば、育成した単結晶中のマイクロバブル量は少ないと判断される。
育成した単結晶から50枚のウエハーをスライスし、ポリッシュ研磨して、ピットがどの程度あるか測定した。ピット数は少ないほど良好な単結晶が育成されていることを示している。
特開2005−231958に開示されているルツボ底部に加熱ヒーターを有する育成炉を用い、イリジウム製ルツボに4N(99.99%)のAl2O3原料を10kg投入した。装置には、炉体内を減圧する手段、減圧度をモニターする手段、および酸素および窒素または不活性ガスの混合ガス供給手段を設けている。Al2O3原料はクラックルとよばれるもので、これはベルヌーイ法で育成した酸化アルミニウム単結晶を20mm角程度の大きさに粉砕したものである。
この原料を融点に達するまで12時間かけて徐々に加熱した。原料が1000℃以上で真空引きを開始し、炉内の圧力が0.005MPaまで減圧したところで真空引きを一旦停止した。この温度以上では原料に吸着しているガス成分が排出されるため炉内の真空度は徐々に低下し、30min後に0.006MPaとなった。そこで30min後、炉内の圧力が0.005MPaとなるまで再度真空引きを行った。30minに一度、この減圧作業を原料が融解するまで繰り返した。真空引き停止による炉内の真空度は、原料が融解するまでは停止後30minで0.006MPaへ劣化する程度であったが、原料融解時には0.008MPaまで劣化した。融解後も引き続き30min毎に上記減圧作業を行った結果、劣化の度合いは改善され、3時間後にほぼ真空度の劣化は融解前と同程度となり、30min後での真空度は0.006MPaとなった。
さらに3時間、上記減圧作業を行った後、炉体内に酸素および窒素を0.1MPaになるまで導入した。ここで、酸素濃度は0.3%となるよう調整しながら、毎分3リットルの流量でフローさせた。その後、a軸方向に切り出した酸化アルミニウム単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液近くまで降下させた。この種結晶を毎分2回転の速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させて温度を徐々に降下させながら引上速度2mm/hで種結晶を上昇させて結晶成長を行った。
その結果、直径102mm、直胴部の長さ118mmで目視では気泡が観察されない結晶を得た。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、22mm凸であった。さらに、この結晶に波長532nmのレーザーを照射し、結晶内部の散乱光を観察したところ、ほとんど散乱はなく(散乱光強度85)、結晶内部に微小な気泡が少ないことがわかった。また、この結晶をウエハーにし、ポリッシュ研磨したところ微小な窪みは確認できなかった。
結晶原料をルツボに投入後、原料を加熱溶融する前に真空引きを開始した以外は実施例1と同様にして行った。すなわち、原料が常温の状態にあるうちに真空引きを開始した。その結果、直径102mm、直胴部の長さ118mmで目視では気泡が観察されない結晶が得られた。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、22mm凸であった。さらに、この結晶に波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光を観察したところ、ほとんど散乱はなく(散乱光強度84)、結晶内部に微小な気泡が少ないことがわかった。また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ微小な窪みは確認できなかった。
減圧作業を行って原料を加熱溶融した後、炉体内に酸素および窒素を導入し、その酸素濃度を0.01%となるよう調整した以外は実施例1と同様にして行った。
その結果、直径102mm、直胴部の長さ118mmで目視では気泡が観察されない結晶が得られた。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、48mm凸であった。さらに、この結晶に波長532nmのレーザーを照射し、結晶内部の散乱光を観察したところ、ほとんど散乱はなく(散乱光強度68)、結晶内部に微小な気泡が少ないことがわかった。また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ微小な窪みは確認できなかった。
比較のために、原料を加熱溶融する際に減圧操作を行わなかった以外は実施例1と同様にして行った。
その結果、得られた結晶は、直径98mm、直胴部の長さ121mm、結晶底部の成長界面は21mm凸であった。この結晶に波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光を観察したところ、散乱光強度が強く(散乱光強度124)、結晶内部に微小な気泡が多いことがわかった。また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ微小な窪みが数多く観察された。
比較のために、原料を加熱溶融する際に減圧操作を行わなかった以外は実施例1と同様にして行った。また、原料の溶融後は酸素および不活性ガスを導入せず、低酸素分圧で結晶を育成した。
出発原料としてイリジウム製ルツボに4N(99.99%)のAl2O3原料を10kg投入し、炉体内に窒素を毎分3リットルの流量でフローさせ、原料を12時間かけて徐々に融点まで加熱し、融点よりやや高い温度で6時間放置後、a軸方向に切り出した酸化アルミニウム単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液近くまで降下させた。この種結晶を毎分2回転の速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させて温度を徐々に降下させながら、引上速度2mm/hの速度で種結晶を上昇させて結晶成長を行った。
その結果、直径100mm、直胴部の長さ115mmの結晶を得たところで、ルツボ底に結晶底部が接触したので育成を中止した。結晶底部の成長界面を測定したところ、88mm凸と大きかった。この結晶に波長532nmのレーザーを照射し、結晶内部の散乱光を観察した。微小な散乱はほとんど観察されなかったが(散乱光強度45)、比較的大きな散乱体が観測され、結晶内部に微小な気泡が少ないがインクルージョン(内包物)が存在する可能性があることがわかった。
また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ、微小な窪みは確認できなかったが、どのウエハーにも差し渡し数μmの大きさの突起状異物が数個程度ウエハー上に観測された。これをEPMAで分析したところイリジウムであった。低酸素分圧下で育成すると、アレキサンドライトやGGGではイリジウムのインクルージョンが発生することが報告されているが、酸化アルミニウムでも同様に観測されることがわかった。
これに対して、比較例では、原料をルツボ内で加熱中および溶融中に、炉体を減圧していないので、原料に吸着または内包しているガスを強制的に排除できなかった。また、また、低酸素分圧で結晶を育成したためインクルージョンの偏析を抑制することができなかった。
2 レーザー光
3 散乱光
4 CCDカメラ
5 画像処理装置
Claims (6)
- 炉体内のルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、
単結晶用原料を加熱溶融する際に、炉体内を0.01MPa以下に維持しつつ、加熱によって単結晶用原料から発生するガスを除去しながら溶融し、引き続き、原料融液を0.01〜0.1MPaの減圧に維持して成長結晶を引き上げることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法。 - 単結晶用原料が、10時間以上かけて徐々に加熱溶融されることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 単結晶用原料を加熱後、温度が1000℃に達してから減圧を始めることを特徴とする請求項1又は2に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 原料融液が、酸素および窒素または不活性ガスの混合雰囲気に維持されることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 混合雰囲気の酸素濃度が、0.01〜0.5%であることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 前記ルツボの材料がイリジウムであることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
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