JP2007224459A - 表面酸化炭素繊維束の製造方法 - Google Patents

表面酸化炭素繊維束の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
本発明は、電解表面処理工程での炭素繊維束長手方向の処理斑を解消し、マトリックス樹脂との接着性に優れ、安定したコンポジット特性を提供することができる炭素繊維束の製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の炭素繊維束の製造方法は、ポリアクリロニトリル系炭素繊維束を、電解液を満たした単数もしくは複数の槽内に走行せしめる電解表面処理装置を用いて、炭素繊維の表面を処理する炭素繊維束の製造方法において、該槽内の電解液の平均温度が5℃以上60℃以下で、かつ、該槽内の該電解液の最高温度と最低温度の差が5℃以下であることを特徴とするものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、マトリックス樹脂との接着性およびコンポジット特性の優れた炭素繊維を提供するための表面酸化炭素繊維束の製造方法に関する。
炭素繊維は他の補強用繊維に比べて高い比強度および比弾性率を有することから航空宇宙、スポーツおよび自動車・船舶・土木建築などの一般産業用途において、複合材料の補強繊維として工業的に幅広く利用されている。炭素繊維は一般的に熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂をマトリックスとする複合材料として使用される。かかる複合材料において、炭素繊維の強度や弾性率などの優れた機械的性能を有効に利用するためには、炭素繊維束とマトリックス樹脂とが強固に接着し一体化する必要がある。そのために炭素繊維束の製造工程において、焼成後、電解表面処理を施して炭素繊維束表面に酸素含有官能基を導入して表面酸化炭素繊維束とすることが行われている。
しかしながら、その電解表面処理工程においては、炭素繊維束の長手方向に不均一な電解表面処理を受けてしまうことが多く、このような場合、コンポジットにしたときに、電解表面処理が不均一な部分がマトリックス樹脂との接着が弱く、剥離しやすい状態となるため安定したコンポジット特性を得ることができないという問題があった。
これまでにも電解表面処理工程での炭素繊維束の処理斑を解消するために、特許文献1に記載されているように、電解表面処理工程以前にあらかじめ電解液を浸漬させることによって、炭素繊維束内部まで十分に電解液を浸透させるなどの検討がなされてきた。
しかしながら、この方法でも、日単位、更には月単位、年単位の長期的期間で見ると、炭素繊維束長手方向についての処理斑改善は十分でないという問題が残されたままであるのが実状である。
特開2003−64577号公報
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、電解表面処理工程での炭素繊維束長手方向の処理斑を解消し、マトリックス樹脂との接着性に優れ、安定したコンポジット特性を提供することができる表面酸化炭素繊維束の製造方法を提供せんとするものである。
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の表面酸化炭素繊維束の製造方法は、被処理炭素繊維束を、電解液を満たした単数もしくは複数の槽内に走行せしめる電解表面処理装置を用いて、炭素繊維の表面を処理する表面酸化炭素繊維束の製造方法において、該槽内の電解液の平均温度が5℃以上60℃以下で、かつ、該槽内の該電解液の最高温度と最低温度の差を5℃以下とすることを特徴とするものである。
かかる表面酸化炭素繊維束の製造方法の好ましい態様は、
(1)該電解表面処理装置が、該電解液を槽内へ供給する電解液供給装置を有し、かつ、該供給装置の供給ラインに加熱および冷却手段を有し、供給する電解液温度を制御すること、
(2)該電解表面処理装置が、断熱材で構成された囲いにより、周囲の雰囲気と遮断されており、かつ、該囲いの中の温度が制御されていること、
(3)該電解表面処理装置に導入される被処理炭素繊維束が、絶縁されたローラを通して導入されるものであること、
である。
本発明によれば、炭素繊維束長手方向の処理斑を解消し、炭素繊維束のマトリックス樹脂との接着性に優れた表面酸化炭素繊維束を提供することができるので、品質の安定化した複合材料を提供することができる。
本発明は、前記課題、つまり電解表面処理工程での炭素繊維束長手方向の処理斑を解消し、マトリックス樹脂との接着性に優れ、安定したコンポジット特性を提供することができる表面酸化炭素繊維束の製造方法について、鋭意検討し、電解表面処理工程において、炭素繊維束自身の発熱や工程周辺の雰囲気温度の影響を受けて、電解表面処理装置内の電解液の温度が安定しないこと突き止め、また、電解液の電導度は温度に依存するため、液温変動に伴い電導度も変動することに鑑み、該電解表面処理するに際して、該電解液の液温変動を特定な条件内に抑制してみたところ、前記課題を一挙に解決することを究明したものである。
本発明でいう被処理炭素繊維は、通常ポリアクリロニトリル系繊維束から、たとえば次のようにして製造することができる。まず、炭素繊維の前駆体としてアクリロニトリルが90重量%以上でアクリロニトリルと共重合可能なモノマーが10重量%未満の構成であるポリアクリロニトリル系繊維束を使用する。上述の共重合可能なモノマーとしてはアクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸またはこれらのメチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびこれらのアルカリ金属塩からなるグループから選択される少なくとも1種を用いることが可能である。
このポリアクリロニトリル系前駆体繊維束を空気などの酸化性雰囲気中にて200℃から300℃の温度範囲で加熱耐炎化することで耐炎化繊維を製造した後に、炭化処理前に窒素などの不活性雰囲気中にて300℃から800℃の温度範囲内で前炭化処理を行う。
このように前炭化処理を施した後で窒素などの不活性雰囲気中で最高温度が1000℃から2500℃の温度範囲で炭化処理することで炭化糸を製造することができ、更に窒素などの不活性雰囲気中で最高温度が2000℃から3300℃の温度範囲で黒鉛化処理することで黒鉛化糸が製造することができる。本発明では、被処理炭素繊維束として、炭化糸、黒鉛化糸のいずれも使用することができる。
かかる炭化または黒鉛化処理後に施す表面処理として、炭素繊維表面に官能基を生成してマトリックス樹脂との接着性を高めることを目的として酸化表面処理がある。その方法には、薬液を用いる液相酸化、電解液溶液中で炭素繊維を陽極として処理する電解表面処理、および相状態でのプラズマ処理などによる気相酸化表面処理等があるが、本発明では、比較的取り扱い性がよく、製造コスト的に有利な電解表面処理方法が採用される。
ここで本発明における電解表面処理方法は、図1で示されるような電解表面処理装置を用いて実施される。図1は、該装置の一例を示すフロー図であるが、この図1を用いて本発明の電解表面処理装置を説明する。かかる電解表面処理装置では、陽極槽2と陰極槽3に中にそれぞれ陽極4、陰極5を配し、それぞれの槽内に電解液6が満たされている構成を有するものである。電解液6は、酸性水溶液またはアルカリ水溶液のいずれも使用可能であるが、酸性水溶液としては強酸性を示す硫酸または硝酸が好ましく、またアルカリ水溶液としては炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムや重炭酸アンモニウム等の無機アルカリの水溶液が好ましく用いられる。先述の方法で焼成した炭化糸または黒鉛化糸を電解液6に浸漬させ、電解表面処理を施す。槽への電解液の供給手段は特に限定されることなく、電解液調整タンクから直接供給したり、あるいは循環槽7から供給して循環させる方法を採っても良い。ここで言う循環槽7とは槽からオーバーフローした電解液を一旦貯液し、かかる電解液を槽へ送るための機構を有した貯槽である。循環槽7から槽へ電解液を送る機構としては、送液ポンプ8等を用いることができる。
電解液の温度は、該電解表面処理装置において、炭素繊維束自身の発熱や電解表面処理装置周辺の雰囲気温度の影響で、季節変動やさらにはまた昼夜変動を発生することがある。炭素繊維束自身の発熱は糸条本数や糸条繊度、糸条走行速度、電解処理槽の容量、電気量などの条件によって発熱量は異なり、これに加え雰囲気温度の変動は予測が極めて困難である。特に内陸性気候を有する場所に製造工程がある場合、昼夜間での温度変動幅が大きい季節において、炭素繊維表面に施される電解表面処理量への影響は深刻なものとなる。
本発明において、かかる電解液温度の中心温度は、5℃以上60℃以下の範囲内に制御することが重要であり、好ましくは10℃以上50℃以下、更に好ましくは20℃以上40℃以下の範囲内に制御するのがよい。
ここで言う電解液温度は、該電解表面処理装置内の複数箇所の液温を連続的に測定・記録したものである。具体的には槽の機幅方向に均等に5点、長手方向に均等に2点を測定点とした。槽が複数の場合は各槽に同様に測定点に温度計13を設置して温度測定した。中心温度とは全測定点での最高温度と最低温度の算術平均の値を指す。液温が60℃を超えると電解表面処理が過剰になり、ストランド強度が低下し、ひいてはコンポジット特性の低下を引き起こす。また、電解液の種類にもよるが、液温が60℃を超えると電解液のミストが発生して作業環境が悪化するという問題も引き起こす。逆に液温が5℃未満であると電解表面処理が不十分でマトリックス樹脂との接着性の低下を引き起こしてしまう。
雰囲気温度の影響を考慮し、炭素繊維束長手方向の電解表面処理の処理斑を抑制するためには、電解表面処理装置内の電解液温度の季節間および昼夜間での温度変動幅を5℃以下に制御することが、本発明の前記効果を相乗的に助長させる上から重要である。ここで言う温度変動幅とは、1時間おきに24時間先述の測定方法にて電解液温度を測定した計24回測定データの中での最高温度と最低温度の差を指す。
かかる電解表面処理においては、炭素繊維束の炭化度に合わせて電解表面処理量を設定するのが一般的で、黒鉛化糸はより大きな電解表面処理が必要である。そのため、特に黒鉛化糸では電解液の液温変動による電解表面処理の処理斑が顕著に現れるため、電解表面処理装置内の電解液温度の季節間および昼夜間での温度変動幅を3℃以下にすることが好ましい。電解液温度の季節間および昼夜間での温度変動幅が5℃を超えると、電解表面処理量に大きな差が生じ、ひいてはマトリックス樹脂との接着性変動を招く。
かかる電解表面処理装置内の電解液温度の変動を抑制する手段の一つとして、電解液を槽内へ供給装置を制御する手段を採用するのが、簡単・容易かつ安定的で好ましい。
すなわち、本発明では電解表面処理装置として、電解液を槽内へ供給する電解液供給装置を有しているものを使用するが、この供給装置の供給ラインに加熱および冷却手段を設けることにより、かかる電解表面処理装置内の電解液温度の変動を抑制することができる。設置する場所は限定しないが、制御精度を勘案すると供給ラインの中でも槽近傍に設置するのが好ましい。また加熱および冷却手段やその数については限定されるものではない。加熱手段としてはヒーターや図1に示した加熱蒸気11などが、冷却手段としては図1に示した冷却水10などが一般的加熱・冷却手段として好適に採用される。また、温度計13と制御弁12を設け、加熱・冷却を制御する構成になっている。
また、さらに雰囲気温度の影響を更に抑制する手段の他の一つとして、該電解表面処理装置に断熱材で構成された囲いを設置する方法が挙げられる。更にはかかる囲いの中の雰囲気温度を加熱および冷却手段を設けて所定の温度に制御することも好ましい方法である。かかる囲いを設置する方法は限定されないが、かかる断熱材としては、熱の良導体でなければよく、たとえばナイロン樹脂や塩化ビニールなどのプラスチック類のカーテンなどは簡易に設置することができ、十分な効果も得られるので好ましい。中でも塩化ビニールなど安価で耐薬品性が優れているという点で好ましい。
一方、電解表面処理装置の直前に設置したローラ9から、該装置内の槽へ導入し、かつ次工程にローラ9を介しながら導出するときに、かかるローラ本数や材質については限定しないが、該ローラ9を介し、電流が外部へ流れ無効電流を生じることがあることから、かかるローラ9を絶縁することが好ましい。つまり、該電解表面処理装置に導入される炭素繊維束は、絶縁されたローラを通して導入されるものであることが好ましい。かかる絶縁手段は限定されないがローラ材質をナイロン樹脂や塩化ビニールなどのプラスチック類を用いたり、ローラの接続部分に、“テフロン(登録商標)”シートのような絶縁性のシートを挟むなどの方法が容易且つ安価で実施可能な方法であり、好ましく採用される。
上記電解表面処理を施された表面酸化炭素繊維束は、そのあと、必要に応じて水洗工程を経て100〜400℃に温調された乾燥機で水分を蒸発させ、さらにかかる炭素繊維束にサイジング剤を付与することによってサイジング剤付炭素繊維束として成形品に供することができる。ここでいうサイジング剤の種類は特に限定するものではないが、エポキシ樹脂を主成分とするビスフェノールA型エポキシ樹脂や直鎖状構造を有する両端に2個以上のエポキシ基を有する脂肪族化合物が好ましく用いられる。エポキシ基としては、反応性の高いグリシジル基が好ましい。本発明におけるエポキシ基を有する脂肪族化合物の具体例としては、グリシジルエーテル化合物ではグリセリンポリグリシジルエーテル類、またジグリシジルエーテル化合物ではポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類が挙げられる。
一般的に炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性評価は、炭素繊維束にマトリックス樹脂を含浸させた試験片の層間剪断強度が用いられる。本発明における炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性評価にも後述するように層間剪断強度で評価する方法を用いる。



このように本発明によれば電解液温度の変動を抑制することで、炭素繊維束のマトリックス樹脂との接着性を安定化せしめ、その結果、マトリックス樹脂と組み合わせた複合材料の品質安定化を達成することができる。
以下本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明で用いる各種特性は次のようにして測定することができる。
(炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性)
炭素繊維束に、硬化剤として三フッ化ホウ素モノエチルアミンを添加したビスフェノールA型エポキシ樹脂をそれぞれの重量比6:4の比率となるように調整した処理液に含浸し、170℃オーブンで1時間硬化させ試験片を作製する。作製した試験片についてASTM−D−2344に基づき3点曲げ方式で測定し層間剪断強度を求める。なお、層間剪断強度は次式で求められる。
層間剪断強度(ζ:Pa)=(3×P)/(4×b×t)
Pは最大荷重(kg)、bは試験片の幅(mm)、tは試験片の厚さ(mm)
なお、実施例では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、“エピコート(登録商標”828を用いた。
(炭素繊維束のストランド強度およびストランド弾性率)
日本工業規格(JIS)−R−7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」を採用する。
(実施例1)
アクリル系重合体をジメチルスルホキシドの溶媒に溶かして紡糸原液を調整した後、乾湿式紡糸方法により単繊維繊度0.74dtex、フィラメント数24000本からなるアクリルニトリル系前駆体繊維を得た。これを200〜270℃の温度の空気中にて加熱して耐炎化繊維束とし、次いで窒素雰囲気中300〜800℃の温度領域で縦型前炭化炉にて前炭化処理を行った。続いて1000〜1800℃の温度領域で炭化して被処理炭素繊維束を得た。
その後、図1の電解表面処理装置を用いて表面処理を行い表面酸化炭素繊維束を得た。なお、硫酸水溶液を電解液として炭素繊維束1gあたり10クーロンの電気量で表面処理を行った。
また、該電解表面処理装置には、電解液の供給装置として、該電解液の送液ラインの途中には加熱蒸気と冷却水のラインを用いた温度制御設備を設け、電解液温度を制御した。そのときの槽内の電解液の中心温度は25℃、液温変動は3℃であった。
また、該電解表面処理装置の前後で炭素繊維束を導入・導出するにあたり、塩化ビニル製のローラを用い、該ローラについて他部分との絶縁処置を施した。
かくして得られた表面酸化炭素繊維束は、さらに水洗洗浄した後、200〜300℃の温度領域で一度乾燥させ、ディップ方式でポリエチレングリコールジグルシジルエーテルを主成分とするサイジング剤を、炭素繊維に対して0.5重量%になるように付着させて、サイジング剤付炭素繊維束を得た。得られたサイジング剤付炭素繊維束について、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性を評価した。
なお、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の評価については、経時的変動を調べるために1時間おきに24時間炭素繊維束をサンプリングして接着性を評価し、その最大値と最小値を求めた。


得られたサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。

ストランド強度 :5886MPa
ストランド弾性率 :294GPa
層間剪断強度(最小値):80.0MPa
層間剪断強度(最大値):80.4MPa
(実施例2)
実施例1の電解液温の制御において、電解液の送液ライン中に加熱・冷却手段を設けず、該電解表面処理装置をプラスチック製カーテンで囲い、そのカーテン内の雰囲気温度を制御した点だけが実施例1と異なる構成として、それ以外については実施例1と同様の方法でサイジング剤付炭素繊維束を製造した。
そのときの槽内の電解液の中心温度は25℃、液温変動は5℃であった。得られたサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :5984MPa
ストランド弾性率 :293GPa
層間剪断強度(最小値):79.5MPa
層間剪断強度(最大値):80.4MPa
(比較例1)
実施例1において、電解液の送液ラインに加熱・冷却手段を設けず、囲いも施さず、電解液の中心温度が10℃、液温変動が10℃とすること以外、実施例1と同様の方法でサイジング剤付炭素繊維束を製造した。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :5850MPa
ストランド弾性率 :295GPa
層間剪断強度(最小値):78.0MPa
層間剪断強度(最大値):80.0MPa
(比較例2)
比較例1において、電解液の中心温度が3℃であること以外、比較例1と同様の方法でサイジング剤付炭素繊維束を製造した。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :5788MPa
ストランド弾性率 :295GPa
層間剪断強度(最小値):77.5MPa
層間剪断強度(最大値):78.4MPa
(実施例3)
アクリル系重合体をジメチルスルホキシドの溶媒に溶かして紡糸原液を調整した後、乾湿式紡糸方法により単繊維繊度1.1dtex、フィラメント数12000本からなるアクリルニトリル系前駆体繊維を得た。この前駆体繊維を用いて、実施例1に示す方法で被処理炭素繊維束を得た。
その後、図1の電解表面処理装置を用いて表面処理を行い表面酸化炭素繊維束を得た。なお、硫酸水溶液を電解液として炭素繊維束1gあたり3クーロンの電気量で表面処理を行った。
また、該電解表面処理装置には、電解液の供給装置として、該電解液の送液ラインの途中には加熱蒸気と冷却水のラインを用いた温度制御設備を設け、電解液温度を制御した。そのときの槽内の電解液の中心温度は25℃、液温変動は4℃であった。
また、実施例1と同様に該電解表面処理装置の前後で炭素繊維束を導入・導出するにあたり、塩化ビニル製のローラを用い、該ローラについて他部分との絶縁処置を施した。
かくして得られた表面酸化炭素繊維束は、さらに水洗洗浄した後、200〜300℃の温度領域で一度乾燥させ、ディップ方式でビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤を炭素繊維に対して1.0重量%になるように付着させて、サイジング剤付炭素繊維束を得た。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。
このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :5000MPa
ストランド弾性率 233GPa
層間剪断強度(最小値):79.9MPa
層間剪断強度(最大値):81.0MPa
(比較例3)
実施例3において、電解液の送液ラインに設けた加熱蒸気・冷却水ラインを用いて、年間季節間の電解液温の変動を擬似的に発生させた。すなわち、電解液の中心温度が21℃、液温変動は30℃となるように調整したこと以外、実施例3と同様の方法でサイジング剤付炭素繊維束を製造した。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :5020MPa
ストランド弾性率 290GPa
層間剪断強度(最小値):78.5MPa
層間剪断強度(最大値):81.4MPa
(実施例4)
アクリル系重合体をジメチルスルホキシドの溶媒に溶かして紡糸原液を調整した後、湿式紡糸方法により単繊維繊度0.82dtex、フィラメント数6000本からなるアクリルニトリル系前駆体繊維を得た。これを200〜270℃の温度の空気中にて加熱して耐炎化繊維束とし、次いで窒素雰囲気中300〜800℃の温度領域で縦型前炭化炉にて前炭化処理を行った後、続いて1000〜1800℃の温度領域で炭化して炭素繊維束とした。更にこの炭素繊維束を窒素雰囲気中で2000〜3000℃の温度領域で黒鉛化した被処理炭素繊維束を得た。
その後、図1の電解表面処理装置を用いて表面処理を行い表面酸化炭素繊維束を得た。なお、硫酸水溶液を電解液として炭素繊維束1gあたり150クーロンの電気量で表面処理を行った。
また、該電解表面処理装置には、電解液の供給装置として、該電解液の送液ラインの途中には加熱蒸気と冷却水のラインを用いた温度制御設備を設け、電解液温度を制御した。そのときの槽内の電解液の中心温度は35℃、液温変動は4℃であった。
また、実施例1と同様に該電解表面処理装置の前後で炭素繊維束を導入・導出するにあたり、塩化ビニル製のローラを用い、該ローラについて他部分との絶縁処置を施した。
かくして得られた表面酸化炭素繊維束は、さらに水洗洗浄した後、200〜300℃の温度領域で一度乾燥させ、ディップ方式でビスフェノールA型エポキシ樹脂を主成分とするサイジング剤を炭素繊維に対して1.2重量%になるように付着させて、サイジング剤付炭素繊維束を得た。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :4022MPa
ストランド弾性率 :540GPa
層間剪断強度(最小値):65.7MPa
層間剪断強度(最大値):66.7MPa
(実施例5)
実施例4において、電解液温の制御において、電解液の送液ライン中に加熱・冷却手段を設けず、該電解表面処理装置をプラスチック製カーテンで囲い、そのカーテン内の雰囲気温度を制御した点だけが実施例4と異なり、それ以外については実施例4と同様の方法でサイジング剤付炭素繊維束を製造した。そのときの槽内の電解液の中心温度は35℃、液温変動は5℃であった。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :4020MPa
ストランド弾性率 :545GPa
層間剪断強度(最小値):65.7MPa
層間剪断強度(最大値):66.2MPa
(比較例4)
実施例4において、電解液の送液ラインに加熱・冷却手段を設けず、電解液の中心温度が28.5℃、液温変動は13℃とすること以外、実施例4と同様の方法でサイジング剤付炭素繊維束を製造した。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :4020MPa
ストランド弾性率 :542GPa
層間剪断強度(最小値):61.8MPa
層間剪断強度(最大値):66.7MPa
(比較例5)
実施例4において、電解液の中心温度が65℃、液温変動が4℃であること以外、実施例4と同様の方法でサイジング剤付炭素繊維束を製造した。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :3826MPa
ストランド弾性率 :538GPa
層間剪断強度(最小値):69.7MPa
層間剪断強度(最大値):70.6MPa
なお、このときに電解表面処理装置に硫酸の臭気が立ちこめた。
(比較例6)
実施例5において、電解表面処理装置前後で炭素繊維束を導入・導出するにあたり、用いた塩化ビニル製のローラに対し絶縁処置を施さなかったこと以外は、実施例5と同様の方法で炭素繊維束を製造した。サイジング剤付炭素繊維束について、実施例1と同様に、ストランド強度、ストランド弾性率を測定するとともに、炭素繊維束とマトリックス樹脂との接着性の経時的変動を評価した。このときのサイジング剤付炭素繊維束の特性は以下のとおりであった。
ストランド強度 :4025MPa
ストランド弾性率 :541GPa
層間剪断強度(最小値):63.3MPa
層間剪断強度(最大値):66.2MPa
図1は、本発明における炭素繊維束の電解表面処理装置の一例を示すフローチャート図である。
符号の説明
1 炭素繊維束
2 陽極槽
3 陰極槽
4 陽極
5 陰極
6 電解液
7 循環槽
8 送液ポンプ
9 ローラ
10 冷却水
11 加熱蒸気
12 制御弁
13 温度計

Claims (4)

  1. 被処理炭素繊維束を、電解液を満たした単数もしくは複数の槽内に走行せしめる電解表面処理装置を用いて、炭素繊維の表面を処理する表面酸化炭素繊維束の製造方法において、該槽内の電解液の平均温度が5℃以上60℃以下で、かつ、該槽内の該電解液の最高温度と最低温度の差を5℃以下とすることを特徴とする表面酸化炭素繊維束の製造方法。
  2. 該電解表面処理装置が、該電解液を槽内へ供給する電解液供給装置を有し、かつ、該供給装置の供給ラインに加熱および冷却手段を有し、供給する電解液温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の表面酸化炭素繊維束の製造方法。
  3. 該電解表面処理装置が、断熱材で構成された囲いにより、周囲の雰囲気と遮断されており、かつ、該囲いの中の温度が制御されていることを特徴とする請求項1または2に記載の表面酸化炭素繊維束の製造方法。
  4. 該電解表面処理装置に導入される被処理炭素繊維束が、絶縁されたローラを通して導入されるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面酸化炭素繊維束の製造方法。
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