JP2007214064A - 固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜、膜−電極接合体及び燃料電池 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜、膜−電極接合体及び燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】経済的で、環境に優しく、高いイオン伝導度と優れたメタノールバリア性を有する固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜及びその利用。
【解決手段】α−炭素原子に結合した水素原子が非置換であるか炭素数1〜4のアルキル基で置換され、かつ、芳香環に直接結合した水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜8のアルキル基で置換された芳香族ビニル系化合物単位を繰返し単位として有する重合体ブロック(A)及び柔軟な重合体ブロック(B)を構成成分とし、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜、並びに膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池。

Description

本発明は、固体高分子型燃料電池好ましくは固体高分子型直接型メタノール燃料電池に用いられる高分子電解質膜、並びに該高分子電解質膜を使用した膜−電極接合体及び燃料電池に関する。
固体高分子型燃料電池は、一般に次のように構成される。まず、イオン伝導性を有する高分子電解質膜の両側に、白金属の金属触媒を担持したカーボン粉末と高分子電解質からなるイオン伝導性バインダーとを含む触媒層がそれぞれ形成される。各触媒層の外側には、燃料ガス及び酸化剤ガスをそれぞれ通気する多孔性材料であるガス拡散層がそれぞれ形成される。ガス拡散層としてはカーボンペーパー、カーボンクロスなどが用いられる。触媒層とガス拡散層を一体化したものはガス拡散電極と呼ばれ、また一対のガス拡散電極をそれぞれ触媒層が電解質膜と向かい合うように電解質膜に接合した構造体は膜−電極接合体(MEA;Membrane Electrode Assembly)と呼ばれている。この膜−電極接合体の両側には、導電性と気密性を備えたセパレータが配置される。電極面に燃料ガス又は酸化剤ガス(例えば空気)を供給するガス流路が膜−電極接合体とセパレータの接触部分又はセパレータ内に形成されている。一方の電極(燃料極)に水素やメタノールなどの燃料ガスを供給し、他方の電極(酸素極)に空気などの酸素を含有する酸化剤ガスを供給して発電する。すなわち、燃料極では燃料がイオン化されてプロトンと電子が生じ、プロトンは電解質膜を通り、電子は両電極をつなぐことによって形成される外部電気回路を移動して酸素極へ送られ、酸化剤と反応することで水が生成する。このようにして、燃料の化学エネルギーを電気エネルギーに直接変換して取り出すことができる。
固体高分子型燃料電池、特にメタノールを改質せずに直接燃料電池の陽極に供給する直接型メタノール燃料電池では、これまで電解質膜に膜厚が約175μmのナフィオン(Nafion)117(デュポン社の登録商標。以下同様)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜が一般的に用いられており、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯機器電源としての開発が進められている。これらの電解質膜は、膜のイオン伝導度が高いという特徴を有するが、燃料であるメタノールが一方の電極側から他方の電極側へ電解質膜を透過してしまう現象(メタノールクロスオーバー)が生じやすく、そのため、発電効率が低くなることが指摘されている。
そこで、メタノールの透過性の小さい非パーフルオロカーボンスルホン酸系の高分子電解質膜が検討されている(特許文献1、特許文献2、非特許文献1)。
特許文献1、特許文献2に記載されている、エンジニアリングプラスチック系高分子電解質膜は、パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜と異なり、イオンチャンネルを形成しにくいため、メタノール透過性を低減することが可能である。しかしながら、膜の電気抵抗が高い傾向にあるという欠点を有しており、またイオン基導入量を高くして膜の電気抵抗を小さくすると膨潤しやすくなる傾向にある。また、電極との接合不良がおきやすいという欠点も知られている。したがって、エンジニアリングプラスチック系高分子電解質膜は直接型メタノール燃料電池に使用する電解質膜として十分な性能を発現できていないのが現状である。
非特許文献1に記載されているスルホン化したポリスチレン−b−ポリイソブチレン−b−ポリスチレントリブロック共重合体(スルホン化SiBuS)もパーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜に比べてメタノールバリア性が高いことが記載されているが、直接型メタノール燃料電池用として満足できる性能を有する電解質膜は未だ得られていないのが現状である。
特開2003−288916号公報 特開2003−331868号公報 J. Membrane Science 217(2003)227
本発明の目的は、高いイオン伝導度、優れたメタノールバリア性及び電極との良好な接合性を兼ね備えた高分子電解質膜、並びに該電解質膜を用いた膜−電極接合体及び固体高分子型燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のブロック共重合体からなるかもしくはこれを主成分として含有する電解質膜である電解質膜が上記課題を解決し得るものであることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、α−炭素原子に結合した水素原子が非置換であるか炭素数1〜4のアルキル基で置換され、かつ、芳香環に直接結合した水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜8のアルキル基で置換された芳香族ビニル系化合物単位を繰返し単位として有する重合体ブロック(A)及び柔軟な重合体ブロック(B)を構成成分とし、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜に関する。
上記ブロック共重合体において、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とはミクロ相分離を起こし、重合体ブロック(A)同士と重合体ブロック(B)同士とがそれぞれ集合する性質があり、重合体ブロック(A)はイオン伝導性基を有するので重合体ブロック(A)同士の集合によりイオンチャンネルが形成され、プロトンの通り道となる。また、重合体ブロック(B)の存在により、ブロック共重合体が全体として弾力性を帯びかつ柔軟になり、膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製に当たって成形性(組立性、接合性、締付性など)が改善される。フレキシブルな重合体ブロック(B)はアルケン単位や共役ジエン単位などから構成される。また、イオン伝導性基はスルホン酸基及びホスホン酸基並びにそれらの塩を包含し、重合体ブロック(A)に結合している。
本発明はまた、上記電解質膜を用いた膜−電極接合体及び燃料電池に関する。
本発明の高分子電解質膜は経済的で、環境に優しく、高イオン伝導度と優れたメタノールバリア性を兼ね備えており、固体高分子型燃料電池、特に直接型メタノール燃料電池において優れた性能を発揮する。本発明の高分子電解質膜は、また、接合性及び成形性に優れる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体は、α−炭素原子に結合した水素原子が非置換であるか炭素数1〜4のアルキル基で置換され、かつ、芳香環に直接結合した水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜8のアルキル基で置換された芳香族ビニル系化合物単位(以下、該芳香族ビニル系化合物を芳香族ビニル系化合物(a)、該芳香族ビニル系化合物単位を芳香族ビニル系化合物(a)単位という場合がある)を繰返し単位として有し、かつ、少なくとも1つのイオン伝導性基を有する重合体ブロック(A)を構成成分とする。
上記で、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基等が挙げられ、炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert−ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。α−炭素原子に結合するアルキル基としてはメチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。芳香環に直接結合するアルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。また、上記芳香環は炭素環式芳香環であるのが好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環等が挙げられる。上記で置換するアルキル基の数は1〜3個であるのが好ましい。芳香族ビニル系化合物(a)の好適な具体例としてはp−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、α,p−ジメチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン等が挙げられる。
芳香族ビニル系化合物(a)は各単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック(A)は芳香族ビニル系化合物単位(a)以外に他の芳香族ビニル系化合物単位を含んでいてもよい。他の芳香族ビニル系化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、α−メチルビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン等が挙げられる。
2種以上の芳香族ビニル系化合物(a)を共重合させる場合や芳香族ビニル系化合物(a)と他の芳香族ビニル系化合物とを共重合させる場合の形態はランダム共重合でもブロック共重合でもグラフト共重合でもテーパード共重合でもよい。
重合体ブロック(A)は、本発明の効果を損わない範囲内で、1種もしくは複数の、芳香族ビニル系化合物単位以外の他の単量体単位を含んでいてもよい。かかる他の単量体単位を与える単量体としては、例えば炭素数4〜8の共役ジエン(具体例は後述の重合体ブロック(B)の説明におけると同様)、炭素数2〜8のアルケン(具体例は後述の重合体ブロック(B)の説明におけると同様)、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられる。芳香族ビニル系化合物と芳香族ビニル系化合物以外の他の単量体との共重合形態は、ミクロ相分離を起こさせるため、ランダム共重合である必要がある。
重合体ブロック(A)中の芳香族ビニル系化合物(a)単位は、イオンチャンネルを形成させるため及びメタノールクロスオーバーを抑制するために、重合体ブロック(A)の10質量%以上を占めることが好ましく、15質量%以上を占めることがより好ましく、20質量%以上を占めることがより一層好ましい。また、重合体ブロック(A)中の芳香族ビニル系化合物単位以外の他の単量体単位の含有量は50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのがより一層好ましい。
重合体ブロック(A)の分子量は、高分子電解質膜の性状、要求性能、他の重合体成分等によって適宜選択される。分子量が大きい場合、高分子電解質膜の引張強度等の力学特性が高くなる傾向にあり、分子量が小さい場合、高分子電解質膜の電気抵抗が小さくなる傾向にあり、必要性能に応じて分子量を適宜選択することが重要である。ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、100〜1,000,000の間から選択されるのが好ましく、1,000〜100,000の間から選択されるのがより好ましい。
本発明の高分子電解質膜で使用するブロック共重合体は、重合体ブロック(A)以外にフレキシブルな重合体ブロック(B)を有する。重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とはミクロ相分離を起こし、重合体ブロック(A)同士と重合体ブロック(B)同士とがそれぞれ集合する性質があり、重合体ブロック(A)はイオン伝導性基を有するので重合体ブロック(A)同士の集合によりイオンチャンネルが形成され、プロトンの通り道となる。かかる重合体ブロック(B)を有することによってブロック共重合体が全体として弾力性を帯びかつ柔軟になり、膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製に当たって成形性(組立性、接合性、締付性など)等が改善される。ここでいうフレキシブルな重合体ブロック(B)はガラス転移点あるいは軟化点が50℃以下、好ましくは20℃以下、より好ましくは10℃以下のいわゆるゴム状重合体ブロックである。
フレキシブルな重合体ブロック(B)を構成する繰返し単位を構成することかできる単量体としては炭素数2〜8のアルケン、炭素数5〜8のシクロアルケン、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン、炭素数4〜8の共役ジエン及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン、炭素−炭素二重結合の1つが水素添加された炭素数7〜10のビニルシクロアルケン、炭素−炭素二重結合の1つが水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン、炭素−炭素二重結合の1つが水素添加された炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。2種以上を重合(共重合)させる場合の形態はランダム共重合でもブロック共重合でもグラフト共重合でもテーパード共重合でもよい。また、(共)重合に供する単量体が炭素−炭素二重結合を2つ有する場合にはそのいずれが重合に用いられてもよく、共役ジエンの場合には1,2−結合であっても1,4−結合であってもよく、またガラス転移点あるいは軟化点が50℃以下であれば、1,2−結合と1,4−結合との割合にも特に制限はない。
重合体ブロック(B)を構成する繰返し単位が、ビニルシクロアルケン単位や共役ジエン単位や共役シクロアルカジエン単位である場合のように炭素−炭素二重結合を有している場合には、本発明の高分子電解質膜を用いた膜−電極接合体の発電性能、耐熱劣化性の向上などの観点から、かかる炭素−炭素二重結合はその30モル%以上が水素添加されているのが好ましく、50モル%以上が水素添加されているのがより好ましく、80モル%以上が水素添加されているのがより一層好ましい。炭素−炭素二重結合の水素添加率は、一般に用いられている方法、例えば、ヨウ素価測定法、H−NMR測定等によって算出することができる。
重合体ブロック(B)は、得られるブロック共重合体に、弾力性ひいては膜−電極接合体や固体高分子型燃料電池の作製に当たって良好な成形性を与える観点から、炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位、炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位、及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックであることが好ましく、炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックであることがより好ましく、炭素数2〜6のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位、及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックであることがより一層好ましい。上記で、アルケン単位として最も好ましいのは、イソブテン単位であり、共役ジエン単位として最も好ましいのは1,3−ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位である。
上記で炭素数2〜8のアルケンとしてはエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、1−ヘプテン、2−ヘプテン、1−オクテン、2−オクテン等が挙げられ、炭素数5〜8のシクロアルケンとしてはシクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン及びシクロオクテンが挙げられ、炭素数7〜10のビニルシクロアルケンとしてはビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン、ビニルシクロヘプテン、ビニルシクロオクテンなどが挙げられ、炭素数4〜8の共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、1,3−ヘキサジエン、2,4−ヘキサジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、3,5−ヘプタジエン等が挙げられ、炭素数5〜8の共役シクロアルカジエンとしてはシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン等が挙げられる。
また、重合体ブロック(B)は、上記単量体以外に、ブロック共重合体に弾力性を与えるという重合体ブロック(B)の目的を損なわない範囲で他の単量体、例えばスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系化合物;塩化ビニル等のハロゲン含有ビニル化合物等を含んでいてもよい。この場合上記単量体と他の単量体との共重合形態はランダム共重合であることが必要である。かかる他の単量体の使用量は、上記単量体と他の単量体との合計に対して、50質量%未満であるのが好ましく、30質量%未満であるのがより好ましく、10質量%未満であるのがより一層好ましい。
重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とを構成成分とするブロック共重合体の構造は特に限定されないが、例としてA−B−A型トリブロック共重合体、B−A−B型トリブロック共重合体、A−B−A型トリブロック共重合体あるいはB−A−B型トリブロック共重合体とA−B型ジブロック共重合体との混合物、A−B−A−B型テトラブロック共重合体、A−B−A−B−A型ペンタブロック共重合体、B−A−B−A−B型ペンタブロック共重合体、(A−B)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基を表す)、(B−A)nX型星形共重合体(Xはカップリング剤残基を表す)等が挙げられる。これらのブロック共重合体は、各単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比は95:5〜5:95であるのが好ましく、90:10〜10:90であるのがより好ましく、50:50〜10:90であるのがより一層好ましい。この質量比が95:5〜5:95である場合には、ミクロ相分離により重合体ブロック(A)の形成するイオンチャンネルがシリンダー状ないし連続相となるのに有利であって、実用上十分なイオン伝導性が発現し、また疎水性である重合体ブロック(B)の割合が適切となって優れた耐水性が発現する。
本発明の高分子電解質膜で使用するブロック共重合体は、重合体ブロック(A)や重合体ブロック(B)と異なる他の重合体ブロック(C)を含んでいてもよい。
重合体ブロック(C)は、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)とミクロ相分離する成分であれば特に限定されない。重合体ブロック(C)を構成する単量体単位としては、例えば芳香族ビニル系化合物[芳香環に結合した水素原子が1〜3個の炭素数1〜4アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基もしくはtert−ブチル基等)で置換されていてもよいスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルピレン等]単位、炭素数4〜8の共役ジエン(具体例は既述の重合体ブロック(B)の説明におけると同様)単位、炭素数2〜8のアルケン(具体例は既述の重合体ブロック(B)の説明におけると同様)単位、(メタ)アクリル酸エステル((メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等)単位、ビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)単位、ビニルエーテル(メチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等)単位等が挙げられる。重合体ブロック(C)を構成する単量体単位は1種であっても複数であってもよい。
重合体ブロック(C)に、重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)とミクロ相分離し、実質的にイオン伝導性基を含有せず、拘束相として働く機能を持たせる場合には、かかる重合体ブロック(C)を有する本発明の電解質膜は、形態安定性、耐久性、湿潤下での力学特性が優れる傾向にある。この場合の重合体ブロック(C)を構成する単量体単位の好ましい例としては、上記した芳香族ビニル系化合物単位が挙げられる。また、重合体ブロック(C)を結晶性にすることによっても上記した機能を持たせることができる。
上記した機能を芳香族ビニル系化合物単位に依存する場合、重合体ブロック(C)中の芳香族ビニル系化合物単位は、重合体ブロック(C)の50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることがより一層好ましい。また、上記と同じ観点から、重合体ブロック(C)中に含まれ得る芳香族ビニル系化合物単位以外の単位はランダム共重合していることが好ましい。
重合体ブロック(C)を重合体ブロック(A)及び重合体ブロック(B)とミクロ相分離させ、かつ拘束相として機能させる観点から特に好適な重合体ブロック(C)の例としては、ポリp−メチルスチレンブロック、ポリp−(tert−ブチル)スチレンブロック等のポリスチレン系ブロック;任意の相互割合の、スチレン、p−メチルスチレン及びポリp−(tert−ブチル)スチレンの2種以上からなる共重合体ブロック;結晶性水添1,4−ポリブタジエンブロック;結晶性ポリエチレンブロック;結晶性ポリプロピレンブロック等が挙げられる。
本発明で用いるブロック共重合体が重合体ブロック(C)を含む場合の形態としては、A−B−C型トリブロック共重合体、A−B−C−A型テトラブロック共重合体、A−B−A−C型テトラブロック共重合体、B−A−B−C型テトラブロック共重合体、A−B−C−B型テトラブロック共重合体、C−A−B−A−C型ペンタブロック共重合体、C−B−A−B−C型ペンタブロック共重合体、A−C−B−C−A型ペンタブロック共重合体、A−C−B−A−C型ペンタブロック共重合体、A−B−C−A−B型ペンタブロック共重合体、A−B−C−A−C型ペンタブロック共重合体、A−B−C−B−C型ペンタブロック共重合体、A−B−A−B−C型ペンタブロック共重合体、A−B−A−C−B型ペンタブロック共重合体、B−A−B−A−C型ペンタブロック共重合体、B−A−B−C−A型ペンタブロック共重合体、B−A−B−C−B型ペンタブロック共重合体等が挙げられる。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体が重合体ブロック(C)を含む場合、ブロック共重合体に占める重合体ブロック(C)の割合は40質量%以下であるのが好ましく、35質量%以下であるのがより好ましく、30質量%以下であるのがより一層好ましい。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体のイオン伝導性基が導入されていない状態での数平均分子量は特に制限されないが、ポリスチレン換算の数平均分子量として、通常、10,000〜2,000,000が好ましく、15,000〜1,000,000がより好ましく、20,000〜500,000がより一層好ましい。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体は重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有することが必要である。本発明でイオン伝導性に言及する場合のイオンとしてはプロトンなどが挙げられる。イオン伝導性基としては、該高分子電解質膜を用いて作製される膜−電極接合体が十分なイオン伝導度を発現できるような基であれば特に限定されないが、中でも−SOM又は−POHM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表されるスルホン酸基、ホスホン酸基又はそれらの塩が好適に用いられる。イオン伝導性基としては、また、カルボキシル基又はその塩も用いることができる。イオン伝導性基の導入位置を重合体ブロック(A)にするのは、イオン伝導性基の導入が容易なため及びイオンチャンネル形成を容易にするためである。
イオン伝導性基の重合体ブロック(A)中への導入位置については特に制限はなく、芳香族ビニル系化合物単位(a)に導入しても、その他の芳香族ビニル系化合物単位に導入しても、芳香族ビニル系化合物単位以外の他の単量体単位に導入してもよい。しかし、イオンチャンネル形成を容易にする観点やメタノールクロスオーバーの抑制の観点から、芳香族ビニル系化合物単位(a)の芳香環や、他の芳香族ビニル系化合物単位、例えばスチレン単位、α−メチルスチレン単位、ビニルナフタレン単位もしくはα−メチルビニルナフタレン単位の芳香環に導入するのが好ましい。
イオン伝導性基の導入量は、高いイオン伝導度と優れたメタノールバリア性を兼ね備えた高分子電解質膜の性能を決める上で重要である。固体高分子型燃料電池、特に直接メタノール型燃料電池用の高分子電解質膜として使用するのに十分なイオン伝導性を発現するためには、本発明の高分子電解質膜のイオン交換容量は0.30meq/g以上となるような量であることが好ましく、0.40meq/g以上であることがより好ましい。イオン交換容量の上限については、イオン交換容量が大きくなりすぎると親水性が高まり、水と共に燃料であるメタノールも透過しやすい傾向となるので、2.0meq/g以下であるのが好ましい。
また、本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体の構成成分であるイオン伝導性基を有する重合体ブロック(A)は、本発明の効果を損わない範囲内で架橋させてもよい。架橋を導入することにより、膜の形態安定性が増し、更にメタノールクロスオーバーも抑制できる傾向にある。架橋させる手段としては、熱架橋法等が挙げられる。熱架橋法としては、熱架橋部位を有するモノマーを重合体ブロック(A)中に共重合させることにより熱架橋が可能となる。好適なモノマーとしては、p−メチルスチレン等が例示できる。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体の製造法に関しては主に次の2つの方法に大別される。すなわち、(1)まずイオン伝導性基を有さないブロック共重合体を製造した後、イオン伝導性基を結合させる方法、(2)イオン伝導性基を有する単量体を用いてブロック共重合体を製造する方法である。
まず第1の製造法について述べる。
重合体ブロック(A)又は(B)を構成する単量体の種類、分子量等によって、重合体ブロック(A)又は(B)の製造法は、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、配位重合法等から適宜選択されるが、工業的な容易さから、ラジカル重合法、アニオン重合あるいはカチオン重合法が好ましく選択される。特に、分子量、分子量分布、重合体の構造、フレキシブルな成分からなる重合体ブロック(B)又は(A)との結合の容易さ等からいわゆるリビング重合法が好ましく、具体的にはリビングラジカル重合法あるいはリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法が好ましい。
製造法の具体例として、p−メチルスチレン単位等のα−炭素が3級炭素である芳香族ビニル系化合物単位(a)を繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びブタジエン単位等の共役ジエン単位からなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体の製造法;p−メチルスチレン単位等のα−炭素が3級炭素である芳香族ビニル系化合物単位(a)を繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びイソブテン単位等のアルケン単位からなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体の製造法;α,p−ジメチルスチレン単位等のα−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位(a)を繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びブタジエン単位等の共役ジエン単位からなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体の製造法;及びα,p−ジメチルスチレン単位等のα−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位(a)を繰返し単位とする重合体ブロック(A)及びイソブテン単位等のアルケン単位からなる重合体ブロック(B)を成分とするブロック共重合体の製造法について述べる。この場合、工業的容易さ、分子量、分子量分布、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との結合の容易さ等からリビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法で製造するのが好ましく、次のような具体的な合成例が示される。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体をアニオン重合によって製造するに際し、p−メチルスチレン等のα−炭素が3級炭素である芳香族ビニル系化合物単位(a)を重合体ブロック(A)の繰返し単位とする場合には、
(1)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、20〜100℃の温度条件下で、p−メチルスチレン等のα−炭素が3級炭素である芳香族ビニル系化合物を重合し、その後共役ジエンを重合させた後、p−メチルスチレン等のα−炭素が3級炭素である芳香族ビニル系化合物を逐次重合させA−B−A型ブロック共重合体を得る方法、
(2)シクロヘキサン溶媒中でアニオン重合開始剤を用いて、20〜100℃の温度条件下でp−メチルスチレン等のα−炭素が3級炭素である芳香族ビニル系化合物を重合し、その後共役ジエンを重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加してA−B−A型ブロック共重合体を得る方法、
などの公知の方法を採用/応用することができる。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体をアニオン重合によって製造するに際し、α,p−ジメチルスチレン単位等のα−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位(a)を重合体ブロック(A)の繰返し単位とする場合には、
(3)非極性溶媒中有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30℃〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させた後、安息香酸フェニル等のカップリング剤を添加して、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法、
(4)非極性溶媒中有機リチウム化合物を開始剤として用い、0.1〜10質量%の濃度の極性化合物の存在下、−30℃〜30℃の温度にて、5〜50質量%の濃度のα−メチルスチレンを重合させ、得られるリビングポリマーに共役ジエンを重合させ、得られるα−メチルスチレン重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックからなるブロック共重合体のリビングポリマーに重合体ブロック(C)を構成する単量体を重合させてA−B−C型ブロック共重合体を得る方法、
などの公知の方法に準じて製造することができる。上記ブロック共重合体の具体的製造方法中、(3)の方法がより一層好ましい。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体をカチオン重合によって製造するに際し、p−メチルスチレン等のα−炭素が3級炭素である芳香族ビニル系化合物単位(a)を重合体ブロック(A)の繰返し単位とする場合には、
(5)ハロゲン系/炭化水素系混合溶媒中、−78℃で、2官能性ハロゲン化開始剤を用いて、ルイス酸の存在下、イソブテンをカチオン重合させた後、スチレンを重合させ、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Makromol.Chem.,Macromol.Symp.32,119(1990))などのスチレンを用いた公知の方法に準じて製造することができる。
本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体をカチオン重合によって製造するに際し、α,p−ジメチルスチレン等のα−炭素が4級炭素である芳香族ビニル系化合物単位(a)を重合体ブロック(A)の繰返し単位とする場合には、
(6)ハロゲン系/炭化水素系混合溶媒中、−78℃で、2官能性ハロゲン化開始剤を用いて、ルイス酸の存在下、イソブテンをカチオン重合させた後、ジフェニルエチレンを付加させ、さらにルイス酸を後添加後、α−メチルスチレンを重合させ、A−B−A型ブロック共重合体を得る方法(Macromolecules,(1995),28,4893−4898)
などの公知の方法に準じて製造することができる。
次に、得られたブロック共重合体にイオン伝導性基を結合させる方法について述べる。
まず、得られたブロック共重合体にスルホン酸基を導入する方法について述べる。スルホン化は、公知のスルホン化の方法で行える。このような方法としては、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や縣濁液を調製し、スルホン化剤を添加し混合する方法やブロック共重合体に直接ガス状のスルホン化剤を添加する方法等が例示される。
使用するスルホン化剤としては、硫酸、硫酸と脂肪族酸無水物との混合物系、クロロスルホン酸、クロロスルホン酸と塩化トリメチルシリルとの混合物系、三酸化硫黄、三酸化硫黄とトリエチルホスフェートとの混合物系、さらに2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸に代表される芳香族有機スルホン酸等が例示される。また、使用する有機溶媒としては、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ヘキサン等の直鎖式脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類等が例示でき、必要に応じて複数の組合せから、適宜選択して使用してもよい。
得られたブロック共重合体にホスホン酸基を導入する方法について述べる。ホスホン化は、公知のホスホン化の方法で行える。具体的には、例えば、ブロック共重合体の有機溶媒溶液や懸濁液を調製し、無水塩化アルミニウムの存在下、該共重合体をクロロメチルエーテル等と反応させ、芳香環にハロメチル基を導入後、これに三塩化リンと無水塩化アルミニウムを加えて反応させ、さらに加水分解反応を行ってホスホン酸基を導入する方法などが挙げられる。あるいは、該共重合体に三塩化リンと無水塩化アルミニウムを加えて反応させ、芳香環にホスフィン酸基を導入後、硝酸によりホスフィン酸基を酸化してホスホン酸基とする方法等が例示できる。
スルホン化又はホスホン化の程度としては、すでに述べたごとく、本発明の高分子電解質膜のイオン交換容量が0.30meq/g以上、特に0.40meq/g以上となるように、しかし、2.0meq/g以下であるようにスルホン化またはホスホン化することが望ましい。これにより実用的なイオン伝導性能が得られる。最終的に得られる高分子電解質膜のイオン交換容量やスルホン化もしくはホスホン化されたブロック共重合体のイオン交換容量、又はブロック共重合体における重合体ブロック(A)中のスルホン化率又はホスホン化率は、酸価滴定法、赤外分光スペクトル測定、核磁気共鳴スペクトル(H−NMRスペクトル)測定等の分析手段を用いて算出することができる。
本発明で用いられるブロック共重合体の、第2の製造法は、イオン伝導性基を有する少なくとも1つの単量体を用いてブロック共重合体を製造する方法である。
イオン伝導性基を有する単量体としては、芳香族系ビニル化合物にイオン伝導性基が結合した単量体が好ましい。具体的には、o、mもしくはp−アルキルスチレンスルホン酸、α−アルキル−o、mもしくはp−アルキル−スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸、α−アルキル−スチレンスルホン酸、o、mもしくはp−アルキルスチレンホスホン酸、α−アルキル−o、mもしくはp−アルキル−スチレンホスホン酸、スチレンホスホン酸、α−アルキル−スチレンホスホン酸等が挙げられる。
イオン伝導性基を含有する単量体としては、共役ジエン化合物にイオン伝導性基が結合した単量体も用いることができる。具体的には、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、1,3−ブタジエン−2−スルホン酸、イソプレンー1−スルホン酸、イソプレン−2−スルホン酸、1,3−ブタジエンー1−ホスホン酸、1,3−ブタジエン−2−ホスホン酸、イソプレン−1−ホスホン酸、イソプレン−2−ホスホン酸等が挙げられる。
イオン伝導性基を含有する単量体としてはまた、ビニルスルホン酸、α−アルキル−ビニルスルホン酸、ビニルアルキルスルホン酸、α−アルキル−ビニルアルキルスルホン酸、ビニルホスホン酸、α−アルキル−ビニルホスホン酸、ビニルアルキルホスホン酸、α−アルキル−ビニルアルキルホスホン酸等も用いることができる。
イオン伝導性を含有する単量体としては、さらに、イオン伝導性基が結合した(メタ)アクリル系単量体も用いることができる。具体的には、メタクリル酸、アクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
イオン伝導性基は、適当な金属イオン(例えばアルカリ金属イオン)あるいは対イオン(例えばアンモニウムイオン)で中和されている塩の形で導入されていてもよい。例えば、o、mもしくはp−アルキルスチレンスルホン酸ナトリウム、あるいはα−メチルーo、mもしくはp−アルキルスチレンスルホン酸ナトリウムを用いて重合体を製造することで、所望のイオン伝導性基を導入できる。又は、適当な方法でイオン交換することにより、スルホン酸基を塩型にしたブロック共重合体を得ることができる。
本発明の高分子電解質膜は、本発明用いるブロック共重合体に加え、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、軟化剤を含有していてもよい。軟化剤としては、パラフィン系、ナフテン系もしくはアロマ系のプロセスオイル等の石油系軟化剤、パラフィン、植物油系軟化剤、可塑剤等があり、これらは各単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明の高分子電解質膜は、さらに、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、各種添加剤、例えば、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、難燃剤、発泡剤、顔料、染料、増白剤、カーボン繊維等を各単独で又は2種以上組み合わせて含有していてもよい。安定剤の具体例としては、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスチリル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2,−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロジナマミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等のフェノール系安定剤;ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ジステアリル3,3’−チオジプロピオネート、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート等のイオウ系安定剤;トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジアステリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等のリン系安定剤等が挙げられる。これら安定剤は各単独で用いても、2種以上組み合わせても用いてもよい。
本発明の高分子電解質膜は、さらに、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、無機充填剤を添加することができる。かかる無機充填剤の具体例としては、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス繊維、マイカ、カオリン、酸化チタン、モンモリロナイト、アルミナ等が挙げられる。
本発明の高分子電解質膜における上記ブロック共重合体の含有量は、イオン伝導性の観点から、50質量%以上であるのが好ましく、70質量%以上であるのがより好ましく、90質量%以上であるのがより一層好ましい。
本発明の高分子電解質膜は、燃料電池用電解質膜として必要な性能、膜強度、ハンドリング性等の観点から、その膜厚が5〜500μm程度であることが好ましい。膜厚が5μm未満である場合には、膜の機械的強度やガスの遮断性が不充分となる傾向がある。逆に、膜厚が500μmを超えて厚い場合には、膜の電気抵抗が大きくなり、充分なプロトン伝導性が発現しないため、電池の発電特性が低くなる傾向がある。該膜厚はより好ましくは10〜300μmである。
本発明の高分子電解質膜の調製方法については、かかる調製のための通常の方法であればいずれの方法も採用できる。例えば、本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体又は該ブロック共重合体及び上記したような添加剤を適当な溶媒と混合して該ブロック共重合体を溶解もしくは懸濁せしめ、PET、ガラス等の板状体にキャストするか又はコーターやアプリケーター等を用いて塗布し、適切な条件で溶媒を除去することによって、所望の厚みを有する電解質膜を得る方法や、熱プレス成形、ロール成形、押し出し成形等の公知の方法を用いて製膜する方法などを用いることができる。
また、得られた電解質膜層の上に、新たに、同じもしくは異なるブロック共重合体溶液を塗布して乾燥することにより積層化させてもよい。また、上記のようにして得られた、同じもしくは異なる電解質膜同士を熱ロール成形等で圧着させて積層化させてもよい。
このとき使用する溶媒は、ブロック共重合体の構造を破壊することなく、キャストもしくはコートが可能な程度の粘度の溶液を調製することが可能なものであれば特に限定されない。具体的には、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ヘプタン等の直鎖式脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン等の環式脂肪族炭化水素類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブチルアルコール等のアルコール類、あるいはこれらの混合溶媒等が例示できる。ブロック共重合体の構成、分子量、イオン交換容量等に応じて、上記に例示した溶媒の中から、1種又は2種以上の組合せを適宜選択し、使用することができる。
また、溶媒除去の条件は、本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体のスルホン基等のイオン伝導性基が脱落する温度以下で、溶媒を完全に除去できる条件であれば任意に選択することが可能である。所望の物性を発現させるため、複数の温度を任意に組み合わせたり、通風気下と真空下等を任意に組み合わせてもよい。具体的には、室温〜60℃程度の真空条件下で、数時間予備乾燥した後、100℃以上の真空条件下、好ましくは100〜120℃で12時間程度の乾燥条件で溶媒を除去する方法等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
次に、本発明の高分子電解質膜を用いた膜−電極接合体について述べる。膜−電極接合体の製造については特に制限はなく、公知の方法を適用することができ、例えば、イオン伝導性バインダーを含む触媒ペーストを印刷法やスプレー法により、ガス拡散層上に塗布し乾燥することで触媒層とガス拡散層との接合体を形成させ、ついで2対の接合体をそれぞれ触媒層を内側にして、高分子電解質膜の両側にホットプレスなどによりと接合させる方法や、上記触媒ペーストを印刷法やスプレー法により高分子電解質膜の両側に塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、それぞれの触媒層に、ホットプレスなどによりガス拡散層を圧着させる方法がある。さらに別の製造法として、イオン伝導性バインダーを含む溶液又は懸濁液を、高分子電解質膜の両面及び/又は2対のガス拡散電極の触媒層面に塗布し、電解質膜と触媒層面とを張り合わせ、熱圧着などにより接合させる方法がある。この場合、該溶液又は懸濁液は電解質膜及び触媒層面のいずれか一方に塗付してもよいし、両方に塗付してもよい。さらに他の製造法として、まず、上記触媒ペーストをポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製などの基材フィルムに塗布し、乾燥して触媒層を形成させ、ついで、2対のこの基材フィルム上の触媒層を高分子電解質膜の両側に加熱圧着により転写
し、基材フィルムを剥離することで電解質膜と触媒層との接合体を得、それぞれの触媒層にホットプレスによりガス拡散層を圧着する方法がある。これらの方法においては、イオン伝導性基をNaなどの金属との塩にした状態で行い、接合後の酸処理によってプロトン型に戻す処理を行ってもよい。
上記膜−電極接合体を構成するイオン伝導性バインダーとしては、例えば、「Nafion」(登録商標、デュポン社製)や「Gore−select」(登録商標、ゴア社製)などの既存のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーからなるイオン伝導性バインダー、スルホン化ポリエーテルスルホンやスルホン化ポリエーテルケトンからなるイオン伝導性バインダー、リン酸や硫酸を含浸したポリベンズイミダゾールからなるイオン伝導性バインダー等を用いることができる。また、本発明の高分子電解質膜を構成するブロック共重合体からイオン伝導性バインダーを作製してもよい。なお、高分子電解質膜とガス拡散電極との密着性を一層高めるためには、高分子電解質と同一もしくは類似の材料から形成したイオン伝導性バインダーを用いることが好ましい。
上記膜−電極接合体の触媒層の構成材料について、導電材/触媒担体としては特に制限はなく、例えば炭素材料が挙げられる。炭素材料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、活性炭、黒鉛などが挙げられ、これら単独であるいは2種以上混合して使用される。触媒金属としては、水素やメタノールなどの燃料の酸化反応及び酸素の還元反応を促進する金属であればいずれのものでもよく、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、鉄、コバルト、ニッケル、クロム、タングステン、マンガン、パラジウム等、あるいはそれらの合金、例えば白金−ルテニウム合金が挙げられる。中でも白金や白金合金が多くの場合用いられる。触媒となる金属の粒径は、通常は、10〜300オングストロームである。これら触媒はカーボン等の導電材/触媒担体に担持させた方が触媒使用量は少なくコスト的に有利である。また、触媒層には、必要に応じて撥水剤が含まれていてもよい。撥水剤としては例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリエーテルエーテルケトン等の各種熱可塑性樹脂が挙げられる。
上記膜−電極接合体のガス拡散層は、導電性及びガス透過性を備えた材料から構成され、かかる材料として例えばカーボンペーパーやカーボンクロス等の炭素繊維よりなる多孔性材料が挙げられる。また、かかる材料には、撥水性を向上させるために、撥水化処理を施してもよい。
上記のような方法で得られた膜−電極接合体を、極室分離と電極へのガス供給流路の役割を兼ねた導電性のセパレータ材の間に挿入することにより、固体高分子型燃料電池が得られる。本発明の膜−電極接合体は、燃料ガスとして水素を使用した純水素型、メタノールを改質して得られる水素を使用したメタノール改質型、天然ガスを改質して得られる水素を使用した天然ガス改質型、ガソリンを改質して得られる水素を使用したガソリン改質型、メタノールを直接使用する直接メタノール型等の固体高分子型燃料電池用膜−電極接合体として使用可能である。
本発明の高分子電解質膜を用いた燃料電池は、経済的で、環境に優しく、高いイオン伝導度と優れたメタノールバリア性を兼ね備えており、固体高分子型燃料電池、特に直接型メタノール燃料電池として優れた発電性能を発現することができる。
以下、参考例、実施例及び比較例、並びに固体高分子型燃料電池用プロトン伝導性電解質膜としての性能試験(イオン交換容量、膜の電気抵抗、メタノール透過速度)及びその結果を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
参考例1
ポリ(p−メチルスチレン)(重合体ブロック(A))と水添ポリブタジエン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体の製造
重合体ブロック(A)を合成する際に、芳香族ビニル系化合物(a)として、p−メチルスチレンを用い、重合体ブロック(B)を合成する際にブタジエンを用いて、既報の方法(特開2005−281373号公報)と同様の方法で、ポリ(p−メチルスチレン)−b−ポリブタジエン−b−ポリ(p−メチルスチレン)(以下、pmSBpmSと略記する)を合成した。得られたpmSBpmSの数平均分子量は78000であり、H−NMR測定から求めた1,4−結合量は58.5%、p−メチルスチレン単位の含有量は30質量%であった。
合成したpmSBpmSのシクロヘキサン溶液を調製し、十分に窒素置換を行った耐圧容器に仕込んだ後、Ni/Al系のZiegler系水素添加触媒を用いて、水素雰囲気下において50℃で7時間水素添加反応を行い、ポリ(p−メチルスチレン)−b−水添ポリブタジエン−b−ポリ(p−メチルスチレン)トリブロック共重合体(以下pmSEBpmSと略記する)を得た。得られたpmSEBpmSの水素添加率をH−NMRスペクトル測定により算出したところ、99.7%であった。
参考例2
ポリ(スチレン/4−tert−ブチルスチレン)(重合体ブロック(A))と水添ポリイソプレン(重合体ブロック(B))とからなるブロック共重合体の製造
重合体ブロック(A)を合成する際に、芳香族ビニル系化合物(a)として4−tert−ブチルスチレン及び他の芳香族ビニル系化合物としてスチレンを質量比が50/50になるように混合して用い、重合体ブロック(B)を合成する際にイソプレンを用いて、既報の方法(特開2005−281373号公報)と同様の方法で、ポリ(スチレン/4−tert−ブチルスチレン)−b−ポリイソプレン−b−ポリ(スチレン/4−tert−ブチルスチレン)(以下(S/tBS)I(S/tBS)と略記する)を合成した。得られた(S/tBS)I(S/tBS)の数平均分子量は51800であり、H−NMR測定から求めた1,4−結合量は94.0%、スチレン単位の含有量は15.6質量%、4−tert−ブチルスチレン単位の含有量は15.6質量%であった。
合成した(S/tBS)I(S/tBS)を用いて、水素添加反応を9時間行ったことを除いて参考例1と同様にして、水素添加率99.9%のポリ(スチレン/4−tert−ブチルスチレン)−b−水添ポリイソプレン−b−ポリ(スチレン/4−tert−ブチルスチレン)トリブロック共重合体(以下(S/tBS)EP(S/tBS)と略記する)を得た。
実施例1
(1)スルホン化pmSEBpmSの合成
参考例1で得られたブロック共重合体(pmSEBpmS)51gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン658mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン18.9ml中、0℃にて無水酢酸9.40mlと硫酸4.20mlとを反応させて得られたスルホン化試薬を、5分かけて徐々に滴下した。35℃にて6時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化pmSEBpmSを得た。得られたスルホン化pmSEBpmSのp−メチルスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から29mol%であった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
(1)で得られたスルホン化pmSEBpmSの5質量%のTHF溶液を調製し、ポリテトラフルオロエチレンシート上に約1000μmの厚みでキャストし、室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させることで、厚さ52μmの膜を得た。
実施例2
(1)スルホン化(S/tBS)EP(S/tBS)の合成
参考例2で得られたブロック共重合体((S/tBS)EP(S/tBS))30gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン30mlを加え、35℃にて2時間攪拌して溶解させた。溶解後、塩化メチレン11.1ml中、0℃にて無水酢酸5.53mlと硫酸2.47mlとを反応させて得られたスルホン化試薬を、5分かけて徐々に滴下した。35℃にて6時間攪拌後、1Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分を90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化(S/tBS)EP(S/tBS)を得た。得られたスルホン化(S/tBS)EP(S/tBS)のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から31.0mol%であった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
(1)で得られたスルホン化(S/tBS)EP(S/tBS)の23質量%のトルエン/イソブチルアルコール(質量比8/2)溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」]上に約450μmの厚みでコートし、室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させることで、厚さ49μmの膜を得た。
比較例1
(1)スルホン化SEBSの合成
塩化メチレン34.2ml中、0℃にて無水酢酸17.1mlと硫酸7.64mlとを反応させてスルホン化試薬を調製した。一方、SEBS(スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレン)ブロック共重合体[(株)クラレ製「セプトン8007」]100gを、攪拌機付きのガラス製反応容器中にて1時間真空乾燥し、ついで窒素置換した後、塩化メチレン1000mlを加え、35℃にて4時間攪拌して溶解させた。溶解後、スルホン化試薬を5分かけて徐々に滴下した。35℃にて5時間攪拌後、2Lの蒸留水の中に攪拌しながら重合体溶液を注ぎ、重合体を凝固析出させた。析出した固形分は、90℃の蒸留水で30分間洗浄し、ついでろ過した。この洗浄及びろ過の操作を洗浄水のpHに変化がなくなるまで繰り返し、最後にろ集した重合体を真空乾燥してスルホン化SEBSを得た。得られたスルホン化SEBSのスチレン単位のベンゼン環のスルホン化率はH−NMR分析から29.0mol%であった。
(2)燃料電池用電解質膜の作製
(1)で得られたスルホン化SEBSの5質量%のTHF溶液を調製し、ポリテトラフルオロエチレンシート上に約1000μmの厚みでキャストし、室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させることで、厚さ52μmの膜を得た。
比較例2
(2)燃料電池用電解質膜の作製
比較例1の(1)で得られたスルホン化SEBSの18質量%のトルエン/イソブチルアルコール(質量比8/2)溶液を調製し、離形処理済みPETフィルム[(株)東洋紡製「東洋紡エステルフィルムK1504」] 上に約550μmの厚みでコートし、室温で十分乾燥させたのち、十分真空乾燥させることで、厚さ50μmの膜を得た。
比較例3
パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜
パーフルオロカーボンスルホン酸系高分子電解質膜として、DuPont社ナフィオンフィルム(Nafion117)を選択した。
実施例1及び2並びに比較例1〜3の高分子膜の固体高分子型燃料電池用電解質膜としての性能試験
以下の1)〜3)の試験において試料としては各実施例又は比較例で得られたスルホン化ブロック共重合体から調製した膜又はナフィオン膜を使用した。
1)イオン交換容量の測定
試料を密閉できるガラス容器中に秤量(a(g))し、そこに過剰量の塩化ナトリウム飽和水溶液を添加して一晩攪拌した。系内に発生した塩化水素を、フェノールフタレイン液を指示薬とし、0.01NのNaOH標準水溶液(力価f)にて滴定(b(ml))した。イオン交換容量は、次式により求めた。
イオン交換容量=(0.01×b×f)/a
2)膜の電気抵抗の測定
1cm×4cmの試料を一対の白金電極で挟み、開放系セルに装着した。測定セルを温度60℃、相対湿度90%に調節した恒温恒湿器内に設置し、交流インピーダンス法により膜の電気抵抗を測定した。
3)メタノール透過速度
メタノール透過速度は、電解質膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に55mlの10M(モル/リットル)のメタノール水溶液を、他方のセルに55mlの純水を注入し、25℃で攪拌しながら、電解質膜を通って純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフィーを用いて測定することで算出した(電解質膜の面積は、4.5cm)。
高分子電解質膜としての性能試験の結果
実施例1及び2並びに比較例1及び2で作製した膜、及び比較例3のナフィオン膜の膜の電気抵抗及び10M−MeOH水溶液のメタノール透過速度を測定した結果を表1に示す。
Figure 2007214064
実施例1及び2と比較例1及び2との比較から、ベンゼン環に直接結合した水素原子がアルキル基で置換された場合、置換されていない場合に比し、膜の電気抵抗は大きく変わらないものの、メタノール透過性は大幅に抑制されることが明らかとなった。アルキル基で置換されたスチレン誘導体の場合、スチレンに比べ疎水性が高いため、重合体ブロック(A)が形成するイオンチャンネル内の疎水性が高くなり、メタノール透過速度が小さくなったものと考えられる。
また、実施例1及び2と比較例3との比較から、本発明の高分子電解質膜は、燃料電池用の電解質膜の代表例であるナフィオン膜に比べ、膜の電気抵抗もメタノール透過性も大幅に低下していることが明らかとなった。
したがって、本発明の高分子電解質膜は固体高分子型燃料電池用分子電解質膜として、特に直接型メタノール燃料電池用高分子電解質膜として、非常に有用であるといえる。

Claims (10)

  1. α−炭素原子に結合した水素原子が非置換であるか炭素数1〜4のアルキル基で置換され、かつ、芳香環に直接結合した水素原子の少なくとも1つが炭素数1〜8のアルキル基で置換された芳香族ビニル系化合物単位を繰返し単位として有する重合体ブロック(A)及び柔軟な重合体ブロック(B)を構成成分とし、重合体ブロック(A)にイオン伝導性基を有するブロック共重合体を含有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用高分子電解質膜。
  2. 重合体ブロック(A)に占める該芳香族ビニル系化合物単位の割合が10質量%以上である請求項1記載の電解質膜。
  3. 重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との質量比が95:5〜5:95である請求項請求項1又は2記載の電解質膜。
  4. フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数5〜8のシクロアルケン単位、炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位、並びに炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数7〜10のビニルシクロアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素数5〜8の共役シクロアルカジエン単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解質膜。
  5. フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数2〜8のアルケン単位、炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項4記載の電解質膜。
  6. 該芳香族ビニル系化合物単位がp−メチルスチレン単位又は4−tert−ブチルスチレン単位であり、フレキシブルな重合体ブロック(B)が炭素数4〜8の共役ジエン単位及び炭素−炭素二重結合の一部もしくは全部が水素添加された炭素数4〜8の共役ジエン単位から選ばれる少なくとも1種の繰返し単位からなる重合体ブロックである請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解質膜。
  7. イオン伝導性基が−SOM基、−POHM(式中、Mは水素原子、アンモニウムイオン又はアルカリ金属イオンを表す)で表される基である請求項1〜6のいずれか1項に記載の電解質膜。
  8. イオン交換容量が、0.30meq/g以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載の電解質膜。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の電解質膜を使用した膜−電極接合体。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の電解質層膜を使用した固体高分子型燃料電池。

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