しかし、上記従来の燃料電池の起動方法及び燃料電池システムでは、燃料電池を起動させる前の状態が考慮されていないため、安定して起動させることができない場合が起こり得る。すなわち、これらの燃料電池の起動方法及び燃料電池システムでは、燃料電池を停止した直後に再起動させる場合(ホットスタート)には、改質器が高温になっていることから改質水を投入した直後に水蒸気が多量に発生し、この水蒸気が燃焼器に戻って燃焼器の火が消える原因となり得る。また、これらの燃料電池の起動方法及び燃料電池システムでは、燃料電池の通常の起動(コールドスタート)であっても停止直後の再起動(ホットスタート)であっても同じシーケンスを採用しているため、燃焼を維持するための許容空気比の範囲が狭く、ロバスト性の低い燃料電池の起動方法及び燃料電池システムとなっている。
本発明は係る従来の問題点に鑑みてなされたものであり、安定して起動させることができる燃料電池の起動方法及び燃料電池システムを提供するものである。
上記の課題を解決するために、請求項1に係る燃料電池の起動方法の特徴は、改質用燃料および改質水から水素を含む燃料ガスを生成する改質器と、該改質器を加熱する燃焼器と、前記燃料ガスと酸化剤ガスとによって発電する燃料電池とを備え、前記燃焼器に燃焼用燃料および燃焼エアを供給して着火する第1工程と、前記燃焼器に前記燃焼用燃料および前記燃焼エアを継続して供給するとともに、前記改質器に前記改質水を供給する第2工程とを有し、前記第2工程で前記改質器から導出されたガスが前記燃焼器に導入される燃料電池の起動方法において、前記第2工程は、着火前の前記燃焼器の温度が所定温度以下である場合のコールドスタートルーチンと、着火前の前記燃焼器の温度が所定温度より高い場合は、前記コールドスタートルーチンよりも空気比が小さくなるように前記燃焼用燃料および前記燃焼エアの供給をするホットスタートルーチンと、を有することである。
請求項2に係る燃料電池の起動方法の特徴は、請求項1において、前記コールドスタートルーチンで、前記燃焼用燃料の供給を前記第1工程より減少させるとともに前記燃焼エアの供給を前記第1工程より増加させることである。
請求項3に係る燃料電池の起動方法の特徴は、請求項1または2において、前記第2工程で前記改質器に前記改質用燃料を供給することなく前記改質水を供給することである。
請求項4に係る燃料電池の起動方法の特徴は、請求項1〜3のいずれか一項において、前記ホットスタートルーチンにおける前記燃焼用燃料の供給は一定量に維持されることである。
請求項5に係る燃料電池システムの特徴は、改質用燃料および改質水から水素を含む燃料ガスを生成する改質器と、該改質器を加熱する燃焼器と、前記燃料ガスと酸化剤ガスとによって発電する燃料電池と、前記燃焼器に燃焼用燃料および燃焼エアを供給して着火する第1工程と、前記燃焼器に前記燃焼用燃料および前記燃焼エアを継続して供給するとともに、前記改質器に前記改質水を供給する第2工程とを有し、前記第2工程で前記改質器から導出されたガスを前記燃焼器に導入させる制御手段を備える燃料電池システムにおいて、前記制御手段は、前記第2工程で、着火前の前記燃焼器の温度が所定温度以下である場合のコールドスタートルーチンと、着火前の前記燃焼器の温度が所定温度より高い場合は、前記コールドスタートルーチンよりも空気比が小さくなるように前記燃焼用燃料および前記燃焼エアの供給をするホットスタートルーチンと、を実施することである。
請求項6に係る燃料電池システムの特徴は、請求項5において、前記コールドスタートルーチンで、前記燃焼用燃料の供給を前記第1工程より減少させるとともに前記燃焼エアの供給を前記第1工程より増加させることである。
請求項7に係る燃料電池システムの特徴は、請求項5または6において、前記第2工程で前記改質器に前記改質用燃料を供給することなく前記改質水を供給することである。
請求項8に係る燃料電池システムの特徴は、請求項5〜7のいずれか一項において、前記ホットスタートルーチンにおける前記燃焼用燃料の供給は一定量に維持されることである。
請求項1に係る燃料電池の起動方法においては、第1工程において燃焼用燃料および燃焼エアを燃焼器に供給して着火した後、第2工程において着火前の燃焼器の温度により燃焼用燃料および燃焼エアの供給の比率を変えている。すなわち、着火前の燃焼器の温度が所定温度より高い場合、ホットスタートルーチンにおいてコールドスタートルーチンよりも空気比が小さくなるように燃焼用燃料および燃焼エアの供給をしている。これにより、燃料電池を停止した直後に再起動させる場合には、ホットスタートルーチンにおいて十分な燃焼用燃料が供給されているため、改質水が水蒸気となって改質器から送出され燃焼器に戻っても燃焼器の火が消えにくい。また、コールドスタートルーチンとホットスタートルーチンとにおいて異なるシーケンスを採用しているため、燃焼を維持するための許容空気比の範囲を広くすることができる。したがって、この燃料電池の起動方法によれば、燃料電池を安定して起動することができる。
請求項2に係る燃料電池の起動方法においては、着火前の燃焼器の温度が所定温度以下である場合、コールドスタートルーチンにおいて燃焼用燃料の供給を減少させるとともに燃焼エアの供給を増加させるため、燃焼用燃料が燃焼するために十分な燃焼エアが供給され、燃焼排ガス中のCOやNOxを低減することができる。
請求項3に係る燃料電池の起動方法においては、第2工程で改質器に改質用燃料を供給することなく改質水を供給しているため、改質器内の触媒にカーボンが付着するのを防止することができる。
請求項4に係る燃料電池の起動方法においては、ホットスタートルーチンにおける燃焼用燃料の供給が一定量に維持されるため、燃焼器の火が消えないための十分な燃焼用燃料が供給される。
請求項5に係る燃料電池システムにおいては、第1工程において燃焼用燃料および燃焼エアを燃焼器に供給して着火した後、第2工程において着火前の燃焼器の温度により燃焼用燃料および燃焼エアの供給の比率を変えている。すなわち、着火前の燃焼器の温度が所定温度より高い場合、ホットスタートルーチンにおいてコールドスタートルーチンよりも空気比が小さくなるように燃焼用燃料および燃焼エアの供給をしている。これにより、燃料電池を停止した直後に再起動させる場合には、ホットスタートルーチンにおいて十分な燃焼用燃料が供給されているため、改質水が水蒸気となって改質器から送出され燃焼器に戻っても燃焼器の火が消えにくい。また、コールドスタートルーチンとホットスタートルーチンとにおいて異なるシーケンスを採用しているため、燃焼を維持するための許容空気比の範囲を広くすることができる。したがって、この燃料電池システムによれば、燃料電池を安定して起動することができる。
請求項6に係る燃料電池システムにおいては、着火前の燃焼器の温度が所定温度以下である場合、コールドスタートルーチンにおいて燃焼用燃料の供給を減少させるとともに燃焼エアの供給を増加させるため、燃焼用燃料が燃焼するために十分な燃焼エアが供給され、燃焼排ガス中のCOやNOxを低減することができる。
請求項7に係る燃料電池システムにおいては、第2工程で改質器に改質用燃料を供給することなく改質水を供給しているため、改質器内の触媒にカーボンが付着するのを防止することができる。
請求項8に係る燃料電池システムにおいては、ホットスタートルーチンにおける燃焼用燃料の供給が一定量に維持されるため、燃焼器の火が消えないための十分な燃焼用燃料が供給される。
本発明に係る燃料電池の起動方法及び燃料電池システムを具体化した実施形態を図面に基づいて以下に説明する。この燃料電池の起動方法及び燃料電池システムでは、図1に示す燃料電池システムを用いている。この燃料電池システムは、改質用燃料および改質水から水素を含む燃料ガスとしての改質ガスを生成する改質器10と、改質器10を加熱する燃焼器としてのバーナ20と、改質ガスと酸化剤ガスとしての空気とによって発電する燃料電池30と、燃料電池システムを制御する制御装置1とを備えている。
改質器10は改質部11、蒸発部12、一酸化炭素シフト反応部(以下、COシフト部という。)13、および一酸化炭素選択酸化部(以下、CO選択酸化部という)14から構成されている。
改質部11は、外部から供給された燃料と水蒸気との混合ガスから改質ガスを生成して導出するものである。燃料としては天然ガス、LPG、灯油、ガソリン、メタノールなどがあり、本実施形態においては天然ガスにて説明する。改質部11内には、触媒(例えば、RuまたはNi系の触媒)が充填されており、燃料供給管41から導入された改質用燃料と水蒸気供給管52から導入された水蒸気との混合ガスが触媒によって反応し改質されて水素ガスと一酸化炭素ガスが生成されている(いわゆる水蒸気改質反応)。これと同時に、水蒸気改質反応にて生成された一酸化炭素と水蒸気が反応して水素ガスと二酸化炭素とに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。これら生成されたガス(いわゆる改質ガス)はCOシフト部13に導出されるようになっている。なお、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、一酸化炭素シフト反応は発熱反応である。また、改質部11には、バーナ20から噴出す燃焼ガスが直接当たる内壁の内側に温度センサ11aが配設されている。この温度センサ11aによりバーナ20の燃焼温度すなわち改質部11の内壁温度Tを検出することができる。温度センサ11aの検出結果は、制御装置1に出力されるようになっている。
改質部11には燃料供給源Sf(例えば都市ガス管)に接続された燃料供給管41が接続されており、燃料供給源Sfから改質用燃料が供給されている。燃料供給管41には、上流から順番に第1燃料バルブ42、改質用燃料ポンプ43、脱硫器44および第2燃料バルブ45が設けられている。第1および第2燃料バルブ42、45は制御装置1の指令によって燃料供給管41を開閉するものである。改質用燃料ポンプ43は燃料供給源Sfから供給される改質用燃料を吸い込み改質部11に吐出するものであり、制御装置1の指令に応じて改質用燃料供給量を調整するものである。脱硫器44は改質用燃料中の硫黄分(例えば、硫黄化合物)を除去するものである。これにより、改質用燃料は硫黄分が除去されて改質部11に供給される。
また、燃料供給管41の第2燃料バルブ45と改質部11との間には蒸発部12に接続された水蒸気供給管52が接続され、蒸発部12から供給された水蒸気が改質用燃料に混合されて改質部11に供給されている。蒸発部12には改質水供給源Swに接続された給水管51が接続されている。給水管51には、上流から順番に水ポンプ53および水バルブ54が設けられている。水ポンプ53は改質水供給源Swから供給される改質水を吸い込み蒸発部12に吐出するものであり、制御装置1の指令に応じて改質水供給量を調整するものである。水バルブ54は制御装置1の指令によって給水管51を開閉するものである。
蒸発部12は、改質水を加熱して沸騰させて水蒸気を生成して改質部11に供給するものである。この蒸発部12には、給水管51および水蒸気供給管52がそれぞれ接続されており、給水管51から導入された水が蒸発部12内を流通し加熱されて水蒸気となって水蒸気供給管52に導出するようになっている。
COシフト部13は、改質部11から供給された改質ガス中の一酸化炭素を低減するもの、すなわち一酸化炭素低減部である。COシフト部13には触媒(例えば、Cu−Zn系の触媒)が充填されており、改質部11から導出された改質ガスは触媒を通ってCO選択酸化部14に導出される。このとき、導入した改質ガスに含まれる一酸化炭素と水蒸気が触媒により反応して水素ガスと二酸化炭素ガスとに変成するいわゆる一酸化炭素シフト反応が生じている。この一酸化炭素シフト反応は発熱反応である。
CO選択酸化部14は、COシフト部13から供給された改質ガス中の一酸化炭素をさらに低減して燃料電池30に供給するもの、すなわち一酸化炭素低減部である。このCO選択酸化部14の内部には触媒(例えば、RuまたはPt系の触媒)が充填されている。また、CO選択酸化部14には改質ガス供給管71が接続され、COシフト部13から供給された改質ガスがCO選択酸化部14内を流通し改質ガス供給管71から導出するようになっている。
また、CO選択酸化部14に供給される改質ガスには、酸化用空気が混合されるようになっている。すなわち、CO選択酸化部14には、空気供給源Saに接続された酸化用空気供給管61が接続されており、空気供給源Sa(例えば大気)から酸化用空気が供給されている。酸化用空気供給管61には、上流から順番にフィルタ62、空気ポンプ63および空気バルブ64が設けられている。フィルタ62は空気を濾過するものである。空気ポンプ63は空気供給源Saから供給される空気を吸い込みCO選択酸化部14に吐出するものであり、制御装置1の指令に応じて空気供給量を調整するものである。空気バルブ64は制御装置1の指令によって酸化用空気供給管61を開閉するものである。これにより、酸化用空気がCOシフト部13からの改質ガスに混合されてCO選択酸化部14に供給される。
したがって、CO選択酸化部14内に導入された改質ガス中の一酸化炭素は、酸化用空気中の酸素と反応して二酸化炭素になる。この反応は発熱反応であり、触媒によって促進される。これにより、改質ガスは酸化反応によって一酸化炭素濃度がさらに低減されて(10ppm以下)導出され、燃料電池30の燃料極31に供給されるようになっている。
バーナ20は、可燃性ガス(燃焼用燃料、改質ガスおよびアノードオフガス)が供給され、その可燃性ガスを燃焼させることにより改質部11を加熱するものであり、燃焼排ガスは排気管81を通って排気される。このバーナ20には、改質用燃料ポンプ43の上流にて燃料供給管41から分岐した燃焼用燃料供給管47が接続されており、燃焼用燃料が供給されるようになっている。燃焼用燃料供給管47には燃焼用燃料ポンプ48が設けられている。燃焼用燃料ポンプ48は、ダイヤフラム式のポンプであり、燃料供給源Sfから供給される燃焼用燃料を吸い込みバーナ20に吐出するものであり、制御装置1の指令に応じて燃焼用燃料供給量を調整するものである。
さらにバーナ20には空気ポンプ63の上流にて酸化用空気供給管61から分岐した燃焼エア供給管65が接続されており、燃焼用燃料、改質ガスまたはアノードオフガスを燃焼させるための燃焼エアが供給されるようになっている。燃焼エア供給管65には燃焼エアポンプ66が設けられており、燃焼エアポンプ66は空気供給源Saから供給される燃焼エアを吸い込みバーナ20に吐出するものであり、制御装置1の指令に応じて燃焼エア供給量を調整するものである。バーナ20が制御装置1の指令によって着火されると、バーナ20に供給された燃焼用燃料、改質ガスまたはアノードオフガスは燃焼されて高温の燃焼ガスが発生する。
燃料電池30は燃料極31および酸化剤極32を有するセルが多数積層されている。燃料電池30の燃料極31の導入口には改質ガス供給管71を介してCO選択酸化部14が接続されており、燃料極31に改質ガスが供給されるようになっている。燃料極31の導出口にはオフガス供給管72を介してバーナ20が接続されており、燃料電池30から排出されるアノードオフガスをバーナ20に供給するようになっている。バイパス管73は燃料電池30をバイパスして改質ガス供給管71およびオフガス供給管72を直結するものである。改質ガス供給管71にはバイパス管73との分岐点と燃料電池30との間に第1改質ガスバルブ74が設けられている。オフガス供給管72にはバイパス管73との合流点と燃料電池30との間にオフガスバルブ75が設けられている。バイパス管73には第2改質ガスバルブ76が設けられている。第1および第2改質ガスバルブ74、76およびオフガスバルブ75はそれぞれの管を開閉するものであり、制御装置1により制御されている。
また、燃料電池30の酸化剤極32の導入口には、空気ポンプ66の上流にて燃焼エア供給管65から分岐したカソード用空気供給管67の先端が接続されており、酸化剤極32内に酸化剤ガスであるカソード用空気が供給されるようになっている。カソード用空気供給管67には上流から順にカソード用空気ポンプ68およびカソード用空気バルブ69が設けられている。カソード用空気ポンプ68は空気供給源Saから供給されるカソード用空気を吸い込み燃料電池30の酸化剤極32に吐出するものであり、制御装置1の指令に応じてカソード用空気供給量を調整するものである。カソード用空気バルブ69は制御装置1の指令によってカソード用空気供給管67を開閉するものである。さらに、燃料電池30の酸化剤極32の導出口には、他端が外部に開放されている排気管82の一端が接続されている。
制御装置1には、温度センサ11a、各ポンプ43、48、53、63、66、68、各バルブ42、45、54、64、69、74、75、76、およびバーナ20が電気的に接続されている。制御装置1により燃料電池システムが制御される。
上記の構成の燃料電池システムの作動について図2〜図4を参照して説明する。図2は起動運転プログラムのフローチャートである。また、図3は起動運転がホットスタートである場合の改質部11の内壁温度Tと燃焼用燃料、燃焼エア、および改質水の供給量を示すタイムチャートである。さらに、図4は起動運転がコールドスタートである場合の改質部11の内壁温度Tと燃焼用燃料、燃焼エア、および改質水の供給量を示すタイムチャートである。制御装置1は、図3および図4に示す時刻t0にて図示しない起動スイッチがオンされると、図2に示す起動運転プログラムの実行を開始する。
ステップS1においては、温度センサ11aから入力した着火前の改質部11の内壁温度Tすなわちバーナ20の温度が100℃より大きいか否かをチェックする。改質部11の内壁温度Tが100℃より大きい場合(YES)、燃料電池システムを停止した直後の再起動すなわちホットスタートであると判断して、ステップS2に進む。また、改質部11の内壁温度Tが100℃以下である場合(NO)、通常の燃料電池システムの起動すなわちコールドスタートである判断して、ステップS3に進む。
ステップS2においては、ホットスタートフラグをON(1)にし、ホットスタートであることを記憶してステップS4に進む。ステップS3においては、ホットスタートフラグをOFF(0)にし、コールドスタートであることを記憶してステップS4に進む。
ステップS4においては、バーナ20に着火する。具体的には、燃焼エアポンプ66を駆動して、空気供給源Saから燃焼エア供給管65を通って燃焼エアをバーナ20に供給する。また、燃焼用燃料ポンプ48を駆動するとともに第1燃料バルブ42を開いて、燃料供給源Sfから燃焼用燃料供給管47を通って燃焼用燃料をバーナ20に供給して着火する。また、第2改質ガスバルブ76を開き、バイパス管73を介して改質ガス供給管71とオフガス供給管72とを直結する。バーナ20が着火されると、バーナ20から噴出す燃焼ガスにより改質部11の温度が上昇する。また、燃焼排ガスは排気管81を通って排気される。そして、ステップS5においては、改質部11の内壁温度Tが300℃を超えるまで待ち、温度Tが300℃を超えた場合、ステップS6に進む。ここで、ステップS4およびS5が第1工程である。この第1工程は、図3の時刻t0〜t1の間および図4の時刻t0〜t4の間である。
ステップS6においては、ホットスタートであるかコールドスタートであるかをチェックする。ホットスタートフラグがON(1)の場合(YES)、ホットスタートであると判断して、ステップS7に進む。また、ホットスタートフラグがOFF(0)の場合(NO)、コールドスタートである判断して、ステップS8に進む。
ステップS7においては、起動運転がホットスタートである場合の処理を行う。すなわち、図3の時刻t1〜t2の間で示すように、燃焼エアポンプ66を制御して、空気供給源Saから燃焼エア供給管65を通ってバーナ20に供給される燃焼エアの供給量を徐々に増加させる。また、燃料供給源Sfから燃焼用燃料供給管47を通ってバーナ20に供給される燃焼用燃料の供給量は一定に保っておく。これにより、バーナ20の火が消えないための十分な燃焼用燃料が供給される。なお、図3において、GT1、GF1、GA1、GW1、GR1は各々改質部11の内壁温度T、燃焼用燃料の供給量、燃焼エアの供給量、改質水の供給量、改質用燃料の供給量を示している。ステップS7の実行後、ステップS9に進む。
ステップS8においては、起動運転がコールドスタートである場合の処理を行う。すなわち、図4の時刻t4〜t5の間で示すように、燃焼エアポンプ66を制御して、空気供給源Saから燃焼エア供給管65を通ってバーナ20に供給される燃焼エアの供給量を徐々に増加させる。また、燃焼用燃料ポンプ48を制御して、燃料供給源Sfから燃焼用燃料供給管47を通ってバーナ20に供給される燃焼用燃料の供給量を徐々に減少させる。これにより、燃焼用燃料を完全燃焼させて燃焼排ガス中のCOやNOxを低減することができるとともに、改質部11の内壁温度Tをなだらかに上昇させることができる。ここで、ソフトウェアタイマを使用することにより、燃焼エアの供給量を徐々に増加させたり、燃焼用燃料の供給量を徐々に減少させたりすることができる。なお、図4において、GT2、GF2、GA2、GW2、GR2は各々改質部11の内壁温度T、燃焼用燃料の供給量、燃焼エアの供給量、改質水の供給量、改質用燃料の供給量を示している。ステップS8の実行後、ステップS9に進む。
ステップS9においては、改質部11の内壁温度Tが400℃を超えるまで待ち、温度Tが400℃を超えた場合、ステップS10に進む。ステップS10においては、図3(時刻t2)および図4(時刻t5)で示すように、水ポンプ53を駆動するとともに水バルブ54を開いて、改質水供給源Swから給水管51を通って蒸発部12に改質水をV1cm3/分(本実施形態ではV1=3)供給する。この改質水は、蒸発部12において加熱され水蒸気とされて、水蒸気供給管52を通って改質部11に供給される。これにより、改質触媒に温度むらが生じ難く、燃料ガスの品質が安定し易くなる。また、改質部11に改質用燃料を供給することなく改質水を供給しているため、改質触媒にカーボンが付着するのを防止することができる。ここで、ホットスタートルーチンでは投入された改質水は直ちに水蒸気化するため、改質水の投入と同時に改質用燃料を供給しても問題は生じない。そのため、ホットスタートルーチンではステップS10において改質用燃料を投入してもよい。ステップS10の実行後、ステップS11に進む。
ステップS11においては、改質部11の内壁温度Tが600℃を超えるまで待ち、温度Tが600℃を超えた場合、ステップS12を実行する。ステップS12においては、改質用燃料ポンプ43を駆動するとともに第2燃料バルブ45を開いて、燃料供給源Sfから燃料供給管41を通って改質用燃料を改質部11に供給する。また、水ポンプ53を制御して改質水供給源Swから給水管51を通って蒸発部12に改質水をV2cm3/分(本実施形態ではV2=8)供給する。これにより、改質部11において、改質用燃料と水蒸気との混合ガスが触媒によって反応する水蒸気改質反応が起こり、改質ガスが生成される。この改質ガスは、COシフト部13、CO選択酸化部14を通過することにより一酸化炭素が低減され、改質器10から改質ガス供給管71に導出される。さらに、図3(時刻t3)および図4(時刻t6)に示すように、ソフトウェアタイマを使用して燃焼用燃料ポンプ48を徐々に停止して、燃料供給源Sfからバーナ20への燃焼用燃料の供給を徐々に停止する。これにより、改質器10から改質ガス供給管71、バイパス管73およびオフガス供給管72を通ってバーナ20に供給される改質ガスによりバーナ20の燃焼が維持されることになる。ここで、ステップS6〜S12までが第2工程である。また、ステップS7、S9、S10、S11、S12がホットスタートルーチンであり、ステップS8、S9、S10、S11、S12がコールドスタートルーチンである。
ステップS12実行後、起動運転プログラムの実行を終了する。なお、起動運転プログラムの実行が終了すると、図示しない定常運転プログラムの実行が開始され、改質ガスが安定する所定時間が経過した後、第1改質バルブ74、オフガスバルブ75を開き、第2改質ガスバルブ76を閉じる。また、カソード用空気ポンプ68を駆動するとともにカソード用空気バルブ69を開いて、空気供給源Saからカソード用空気供給管67を通ってカソード用空気を燃料電池30の酸化剤極32に供給する。これにより、燃料電池が発電を開始する定常運転になる。
本実施形態の燃料電池の起動方法及び燃料電池システムにおいては、ステップS4において燃焼用燃料および燃焼エアをバーナ20に供給して着火した後、ステップS7、S8において着火前の改質部11の内壁温度Tにより燃焼用燃料および燃焼エアの供給の比率を変えている。具体的には、着火前の改質部11の内壁温度Tが100℃以下である場合、ステップS8において燃焼用燃料の供給を減少させるとともに燃焼エアの供給を増加させ、着火前の改質部11の内壁温度Tが100℃より高い場合、ステップS7において燃焼用燃料の供給が一定量に維持されている。すなわち、着火前の改質部11の内壁温度Tが100℃より高い場合は、100℃以下である場合よりも空気比が小さくなるように燃焼用燃料および燃焼エアの供給をしている。ここで、空気比とは、燃料が完全燃焼するのに必要な空気の量に対する実際の空気の量をいう。これにより、燃料電池を停止した直後に再起動させる場合には、ステップS7において十分な燃焼用燃料が供給されているため、改質水が水蒸気となって改質ガス供給管71、バイパス管73、オフガス供給管72を通ってバーナ20に進入しても、バーナ20の火が消え難い。また、ステップS7とステップS8とにおいて異なるシーケンスを採用しているため、燃焼を維持するための許容空気比の範囲を広くすることができる。したがって、この燃料電池の起動方法及び燃料電池システムによれば、燃料電池を安定して起動することができる。
なお、本発明の燃料電池の起動方法及び燃料電池システムを実施形態に即して説明したが、本発明はこれらに制限されるものではなく、本発明の技術的思想に反しない限り、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
10…改質器、20…燃焼器(バーナ)、30…燃料電池、S4、S5…第1工程、S6〜S12…第2工程、S7、S9、S10、S11、S12…ホットスタートルーチン、S8、S9、S10、S11、S12…コールドスタートルーチン。