JP2007205452A - 自動変速機の制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】路面の勾配状況に関わらずニュートラル制御を確実に実行し、燃費向上を達成する自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】ニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値P(S)が、路面勾配の傾斜度Gと予め記憶されたマップとに基づいて設定される。マップには、しきい値P(S)が、登坂路であって傾斜度Gが大きいほど小さくなるように、かつ車両後方に働く重力加速度による力よりも大きなブレーキ力を発生させるブレーキ圧になるように、記憶される。
【選択図】図5

Description

本発明は、自動変速機の制御装置に関し、特に、ニュートラル制御を実行する自動変速機の制御装置に関する。
車両に搭載される自動変速機は、エンジンとトルクコンバータ等を介して繋がるとともに複数の動力伝達経路を有してなる変速機構を有して構成され、たとえば、アクセル開度および車速に基づいて自動的に動力伝達経路の切り換えを行なう、すなわち自動的に変速比(走行速度段)の切り換えを行なうように構成される。一般的に、自動変速機を有した車両には運転者により操作されるシフトレバーが設けられ、シフトレバー操作に基づいて変速ポジション(たとえば、後進走行ポジション、ニュートラルポジション、前進走行ポジション)が設定され、このように設定された変速ポジション内(通常は、前進走行ポジション内)において自動変速制御が行なわれる。
このような自動変速機を有した車両において、前進走行ポジションが設定されて車両が停止している状態では、アイドリング回転するエンジンの出力軸のトルクがトルクコンバータを介して変速機に伝達され、これが車輪に伝達されるため、いわゆるクリープ現象が発生する。クリープ現象は、登坂路での停車からの発進をスムーズに行なわせることができるなど、所定条件下では非常に有用なのであるが、車両を停止保持したいときには不要な現象であり、車両のブレーキを作動させてクリープ力を抑えるようになっている。すなわち、エンジンからのクリープ力をブレーキにより抑えるようになっており、その分エンジンの燃費が低下するという問題がある。
このようなことから、前進走行ポジションにおいて、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキが作動されるとともにアクセルがほぼ全閉となって車両が停止している状態では、前進走行ポジションのまま変速機をニュートラルに近いニュートラル状態として、燃費の向上を図ることが提案されている。すなわち、ニュートラル状態として、クリープ力の発生を防止している。特開平5−87236号公報(特許文献1)は、前進走行ポジションにおいて所定の条件が成立したときに車両のクリープを防止する、車両のクリープ制御装置を開示する。
特許文献1に開示されたクリープ制御装置は、自動変速機のシフトレンジが前進走行レンジとされているときであっても、フットブレーキ踏込みの条件を含む所定の条件が成立したときにはニュートラル状態を形成してクリープを防止するように構成した車両のクリープ制御装置であって、フットブレーキの操作量を検知する検知部と、クリープ防止制御を開始するときのフットブレーキの操作量の閾値を、クリープ防止制御から復帰するときのフットブレーキの操作量の閾値よりも大きく設定する設定部とを含む。フットブレーキの操作量を検知する検知部としてブレーキ油圧センサが用いられ、このブレーキ油圧センサにより検知された油圧が所定値A以上であると、フットブレーキ踏込みの条件が成立して、クリープ防止制御(ニュートラル制御)が行なわれる。
この公報に開示された発明によると、ニュートラル制御開始時と復帰時とでブレーキ操作量の閾値に差を設け、制御開始と復帰とにいわゆるヒステリシスを設けるようにしたため、運転者の意図せぬときにニュートラル制御に入ってしまうのを防止できる。また、フットブレーキをかなり踏込まないとニュートラル制御に入らないため、特にクリープ車速以下での走行が要求される縦列駐車や車庫入れ等の運転操作が非常に容易となる。
特開平5−87236号公報
ところで、車両が登坂路を走行している場合、車両が後退する方向に重力加速度が働くため、平坦路や降坂路を走行している場合よりも低いブレーキ圧で停止できる。このように、車両停止時に必要となるブレーキ圧は路面の勾配状況によって異なる。
しかしながら、特許文献1に開示されたクリープ制御装置においては、路面の勾配状況に関わらず一律のブレーキ圧(所定値A)をニュートラル制御開始の条件としている。これにより、車両が登坂路を走行していて停止した場合、検知されたブレーキ圧が所定値Aより低くなり、ニュートラル制御が行なわれず、燃費向上が図れないおそれがある。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、路面の勾配状況に関わらずニュートラル制御が実行される頻度を上昇させて燃費向上を達成する、自動変速機の制御装置を提供することである。
第1の発明に係る自動変速機の制御装置は、車両発進時に係合される係合要素を有する自動変速機の制御装置であって、車両が前進走行ポジションで停止した場合に、少なくとも車両のブレーキ圧に基づいて、係合要素を解放させるニュートラル制御が実行される。制御装置は、車両が停止した路面の勾配を検知するための検知手段と、検知手段により路面の勾配が、登坂路であることが検知された場合は登坂路であることが検知されない場合に比べて、ニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値を小さく設定するための設定手段とを含む。
第1の発明によると、車両が前進走行ポジションで停止した場合に、少なくとも車両のブレーキ圧に基づいて、車両発進時に係合される係合要素を解放させるニュートラル制御が実行される。たとえば、車両停止時のブレーキ圧がニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値より大きい場合にニュートラル制御が実行される。ところで、車両停止時に必要なブレーキ圧は、車両が登坂路を走行している場合、車両が後退する方向に重力加速度が働くため、平坦路や降坂路を走行している場合よりも低い。そのため、車両が停止状態であるにも関わらず、ブレーキ圧がしきい値を越える頻度が減少して、ニュートラル制御の実行回数が減少し、燃費向上が図れないおそれがある。そこで、車両が停止した路面の勾配が検知される。路面の勾配が、登坂路であることが検知された場合は登坂路であることが検知されない場合に比べて、ニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値が小さく設定される。そのため、車両が登坂路を走行している場合における車両停止時のブレーキ圧がしきい値を越える頻度が、しきい値が一定の場合と比べて増加し、ニュートラル制御の実行回数が減少するのを抑制することができる。その結果、路面の勾配状況に関わらずニュートラル制御が実行される頻度を上昇させて燃費向上を達成する、自動変速機の制御装置を提供することができる。
第2の発明に係る自動変速機の制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、検知手段は、車両が停止した路面の勾配の傾斜度を検知するための手段を含み、設定手段は、検知手段により検知された路面の勾配の傾斜度が大きいほど、しきい値をより小さく設定するための手段を含む。
第2の発明によると、車両が停止した路面の勾配の傾斜度が検知される。登坂路の傾斜度が大きいほど車両が後退する方向に働く重力加速度が大きくなるため、車両停止時に必要なブレーキ圧は、登坂路の傾斜度が大きいほど低くなる。そこで、検知された路面の勾配の傾斜度が大きいほど、しきい値がより小さく設定される。そのため、登坂路の傾斜度に関わらず、車両停止時のブレーキ圧がしきい値を越える頻度が減少するのを抑制し、ニュートラル制御の実行回数が減少するのを抑制することができる。
第3の発明に係る自動変速機の制御装置は、第1または2の発明の構成に加えて、設定手段は、しきい値を、ニュートラル制御の実行後において、車両が停止した状態を維持するブレーキ力を発生させるブレーキ圧に設定するための手段を含む。
第3の発明によると、しきい値が、ニュートラル制御の実行後において、車両が停止した状態を維持するブレーキ力を発生させるブレーキ圧に設定される。そのため、登坂路における車両停止時にニュートラル制御が実行された場合であっても、車両が後退する方向に働く重力加速度の影響により車両が後退することを抑制することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1を参照して、本発明の実施の形態に係る自動変速機の制御装置を搭載した車両について説明する。この車両は、FF(Front engine Front drive)車両である。なお、本実施の形態に係る自動変速機の制御装置を搭載した車両は、FF以外の車両であってもよい。
車両は、エンジン102と、自動変速機104と、ドライブシャフト120,122と、前輪124,126と、ブレーキブースタ136と、マスタシリンダ106と、ブレーキアクチュエータ108と、ブレーキ油圧回路110と、ブレーキ機構112と、ECU(Electronic Control Unit)100とを含む。
エンジン102は、インジェクタ(図示せず)から噴射された燃料と空気との混合気を、シリンダの燃焼室内で燃焼させる内燃機関である。燃焼によりシリンダ内のピストンが押し下げられて、クランクシャフトが回転させられる。なお、内燃機関の代わりに外燃機関を用いても良い。また、エンジン102の代わりに回転電機などを用いてもよい。
自動変速機104は、トルクコンバータと、プラネタリーギヤユニット3000とを含む。プラネタリーギヤユニット3000には、クラッチおよびブレーキなどの複数の摩擦係合要素が設けられる。それぞれの要素における係合力はECU100からの制御信号に基づいて油圧回路4000により制御される。それぞれの要素における係合力が変化することにより、所望のギヤ段が形成され、クランクシャフトの回転数を所望の回転数に変速する。自動変速機104の出力ギヤは、ディファレンシャルギヤと噛合っている。
ディファレンシャルギヤにはドライブシャフト120,122がスプライン嵌合などによって連結されている。ドライブシャフト120,122を介して、左右の前輪124,126に動力が伝達される。
ドライブシャフト122の前輪126側の一方端には、ブレーキディスク138が設けられる。ブレーキディスク138には、ブレーキ機構112が設けられる。ブレーキ機構112は、ホイールシリンダを有し、ホイールシリンダは、ブレーキパッド(図示せず)を介してブレーキディスク138を挟み込むように設けられる。ブレーキ機構112は、ブレーキ油圧回路110の一方端に接続され、ブレーキ油圧回路110内の油圧が上昇すると、ホイールシリンダにかかる油圧が上昇する。油圧の上昇に応じて、ホイールシリンダがブレーキパッドを介してブレーキディスク138を挟み込む力が増加する。ブレーキパッドとブレーキディスク138との間に生じる摩擦力が増加すると、前輪126の回転が制限される。したがって、ブレーキ機構112における油圧が上昇すると、車両には、上昇した油圧に応じた制動力が発生する。なお、ブレーキ機構112は、車両の車輪にそれぞれ設けられる。また、本実施の形態において、ブレーキ機構112は、ディスクブレーキであるとして説明したが、たとえば、ドラムブレーキであってもよい。
マスタシリンダ106は、ブレーキ油圧回路110の他方端に接続される。マスタシリンダ106は、内部にピストン(図示せず)が設けられている。そして、ブレーキブースタ136からの入力に応じて、ピストンが移動することにより、マスタシリンダ106内の油圧が上昇し、それに応じて、ブレーキ油圧回路110内の油圧が上昇する。
ブレーキブースタ136は、エンジン102の運転時の吸気側の負圧を利用して、ブレーキペダル132に入力された踏力を倍力させて、マスタシリンダ106に伝達する。なお、ブレーキブースタ136の構造、作用については、周知の技術であるため詳細な説明はここでは行なわない。
マスタシリンダ106とブレーキ油圧回路110とは、ブレーキアクチュエータ108を介して接続される。ブレーキアクチュエータ108は、電磁弁と電動ポンプとを含む。ブレーキアクチュエータ108は、ECU100からの制御信号を受信して、電磁弁と電動ポンプとを作動させて、ブレーキ油圧回路110内の液圧を上昇させたり下降させたりする。ブレーキ油圧回路110は、ブレーキアクチュエータ108からブレーキ機構112に接続され、内部にブレーキ液が充填される液体通路(配管)である。
ECU100には、車速センサ118と、シフトレバー114のポジションスイッチ116と、ブレーキぺダル132に設けられたストップランプスイッチ130と、マスタシリンダ106の液圧センサ128と、Gセンサ140とがハーネスなどを介して電気的に接続されている。
車速センサ118は、ドライブシャフト120の回転数から車両の速度を検知し、車速を表わす信号をECU100に送信する。車速センサ118は、車両の各車輪に設けられる。
ポジションスイッチ116は、シフトレバー114の位置を検知する。ポジションスイッチ116は、シフトレバー114の位置を表す信号をECU100に送信する。シフトレバー114の位置に対応して、自動変速機104のギヤ段が自動で形成される。
ストップランプスイッチ130は、ブレーキペダル132のオン/オフ状態を検知し、検知結果を表す信号をECU100に送信する。なお、ストップランプスイッチ130の代わりに、ブレーキペダル132のストローク量を検知するストロークセンサを設けてもよい。
液圧センサ128は、マスタシリンダ106内部の液圧(ブレーキマスタシリンダ圧P)を検知し、液圧を表わす信号をECU100に送信する。
Gセンサ140は、車両が走行あるいは停止する路面勾配の傾斜度Gを表わす信号をECU100に送信する。
ECU100は、車速センサ118、ポジションスイッチ116、ストップランプスイッチ130、液圧センサ128およびGセンサ140などから送られてきた信号、ROM(Read Only Memory)に記憶されたマップおよびプログラムに基づいて、車両が所望の状態となるように、機器類を制御する。本実施の形態に係る自動変速機の制御装置は、ECU100により実現される。
図2を参照して、プラネタリーギヤユニット3000について説明する。プラネタリーギヤユニット3000は、クランクシャフトに連結された入力軸3100を有するトルクコンバータ3200に接続されている。プラネタリーギヤユニット3000は、遊星歯車機構の第1セット3300と、遊星歯車機構の第2セット3400と、出力ギヤ3500と、ギヤケース3600に固定されたB1ブレーキ3610、B2ブレーキ3620およびB3ブレーキ3630と、C1クラッチ3640と、C2クラッチ3650と、ワンウェイクラッチF3660とを含む。
第1セット3300は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。第1セット3300は、サンギヤS(UD)3310と、ピニオンギヤ3320と、リングギヤR(UD)3330と、キャリアC(UD)3340とを含む。
サンギヤS(UD)3310は、トルクコンバータ3200の出力軸3210に固定されている。ピニオンギヤ3320は、キャリアC(UD)3340に回転自在に支持されている。ピニオンギヤ3320は、サンギヤS(UD)3310およびリングギヤR(UD)3330と係合している。
リングギヤR(UD)3330は、B3ブレーキ3630によりギヤケース3600に固定される。キャリアC(UD)3340は、B1ブレーキ3610によりギヤケース3600に固定される。
第2セット3400は、ラビニヨ型の遊星歯車機構である。第2セット3400は、サンギヤS(D)3410と、ショートピニオンギヤ3420と、キャリアC(1)3422と、ロングピニオンギヤ3430と、キャリアC(2)3432と、サンギヤS(S)3440と、リングギヤR(1)(R(2))3450とを含む。
サンギヤS(D)3410は、キャリアC(UD)3340に連結されている。ショートピニオンギヤ3420は、キャリアC(1)3422に回転自在に支持されている。ショートピニオンギヤ3420は、サンギヤS(D)3410およびロングピニオンギヤ3430と係合している。キャリアC(1)3422は、出力ギヤ3500に連結されている。
ロングピニオンギヤ3430は、キャリアC(2)3432に回転自在に支持されている。ロングピニオンギヤ3430は、ショートピニオンギヤ3420、サンギヤS(S)3440およびリングギヤR(1)(R(2))3450と係合している。キャリアC(2)3432は、出力ギヤ3500に連結されている。
サンギヤS(S)3440は、C1クラッチ3640によりトルクコンバータ3200の出力軸3210に連結される。リングギヤR(1)(R(2))3450は、B2ブレーキ3620により、ギヤケース3600に固定され、C2クラッチ3650によりトルクコンバータ3200の出力軸3210に連結される。また、リングギヤR(1)(R(2))3450は、ワンウェイクラッチF3660に連結されており、1速ギヤ段の駆動時に回転不能となる。
図3に、各変速ギヤ段と、各クラッチおよび各ブレーキの作動状態との関係を表した作動表を示す。「○」は係合を表している。「×」は解放を表している。「◎」はエンジンブレーキ時のみの係合を表している。「△」は駆動時のみの係合を表している。この作動表に示された組合わせで各ブレーキおよび各クラッチを作動させることにより、1速〜6速の前進ギヤ段と、後進ギヤ段が形成される。
以上のような車両のパワートレーンにおいて、ECU100は、車両の状態が停止した状態(たとえば、車速Vが略ゼロであってブレーキマスタシリンダ圧Pが予め定められた値以上など)であると、ニュ−トラル制御非実行モード(前進走行ポジションに対応する変速モード)からニュートラル制御開始モードに移行する。具体的には、ECU100は、シフトポジションが前進走行ポジションであって、車両の状態が予め定められた状態であると判断すると、C1クラッチ3640を所定のスリップ状態(半係合状態)または解放状態に制御するニュートラル制御を実行する。ニュートラル制御により、C1クラッチ3640が解放状態(スリップ状態を含む)にされるため、エンジン102の、トルクコンバータ3200による負荷が低減される。
また、ECU100は、ニュートラル制御を実行しているときに、車両の状態が別途定められた条件(たとえば、ブレーキマスタシリンダ圧Pが予め定められた値以下など)が成立すると判定すると、ニュートラル制御復帰モードに移行して、ニュートラル制御から復帰するようにC1クラッチ3640が係合状態になるように制御する。
また、ECU100は、ニュートラル制御を実行するとともに、ヒルホールド制御を実行する。ニュートラル制御により自動変速機104がニュートラル状態に近い状態にされると、登坂路などの勾配を有する路面においては、車両が後退する場合がある。ニュートラル制御実行中は運転者がブレーキペダルを踏んでいるため車両後退の恐れは少ないが、ブレーキペダルが解除側に操作されてのニュートラル制御復帰時にはニュートラル状態が継続しているために、車両が後退する場合がある。そこで、ECU100は、ニュートラル制御を実行するとともに、自動変速機104の出力軸の逆回転(車両後退側の回転)を制限するように係合される後退防止用摩擦係合要素の係合油圧を上昇させるヒルホールド制御を実行する。後退防止用摩擦係合要素の係合油圧が上昇すると、自動変速機104の出力軸の逆回転が制限されるため、車両の後退が防止される。また、ECU100は、ニュートラル制御からの復帰時において、上昇させた後退防止用摩擦係合要素の係合油圧を低下させる。このとき、ECU100は、後退防止用摩擦係合要素の係合油圧を初期値から予め定められた変化量で減少させる。初期値は、ニュートラル制御実行中における後退防止用摩擦係合要素の係合油圧以下に設定されれば、特に限定されるものではない。なお、ヒルホールド制御として後退防止用摩擦係合要素を係合させることにより自動変速機104の出力軸の逆回転を制限して車両後退を防止しているが、自動変速機104の出力軸の回転(逆転、正転共に)を制限する摩擦係合要素が備えられ、このような摩擦係合要素をニュートラル制御中に係合させて、車両の移動を防止するようにしてもよい。
本実施の形態においては、後退防止用摩擦係合要素は、B1ブレーキ3610である。B1ブレーキ3610が係合状態になると、サンギヤS(D)3410の回転が制限される。このとき、出力ギヤ3500に車両が後退しようする逆回転の力が加わると、ワンウェイクラッチF3660がリングギヤR(1)(R(2))の回転を固定するため、車両の後退が制限される。
図4を参照して、本実施の形態に係る自動変速機の制御装置であるECU100が、車両が前進走行ポジションで走行している場合に実行するプログラムの制御構造について説明する。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ECU100は、車速センサ118からの信号に基づいて車速Vを検知する。
S102にて、ECU100は、車両が停止状態であるか否かを判断する。ECU100は、車速Vが略ゼロの場合に車両が停止状態であると判断する。車両が停止状態である場合(S102にてYES)、処理はS104に移される。そうでない場合(S102にてNO)、処理はS100に戻される。
S104にて、ECU100は、Gセンサ140からの信号に基づいて路面勾配の傾斜度Gを検知する。傾斜度Gは、登坂路である場合はプラス、降坂路である場合にはマイナスの値となる。また、傾斜度Gの絶対値は、路面の傾斜度が大きいほど大きな値となる。なお、傾斜度Gは路面が登坂路であるか否かと路面勾配の傾斜度とがわかる値であれば、このような値に限定されない。
S106にて、ECU100は、傾斜度Gがニュートラル制御の開始条件を満足するか否かを判断する。ECU100は、傾斜度Gが、予め定められたしきい値G(−)から予め定められた値G(+)(G(−)<G(+))の範囲内である場合に、傾斜度Gがニュートラル制御の開始条件を満足すると判断する。なお、傾斜度Gがニュートラル制御開始条件を満足するか否かを判断する方法はこれに限定されない。傾斜度Gがニュートラル制御の開始条件を満足する場合(S106にてYES)、処理はS108に移される。そうでない場合(S106にてNO)、処理はS100に戻される。
S108にて、ECU100は、液圧センサ128からの信号に基づいて、ブレーキマスタシリンダ圧Pを検知する。
S110にて、ECU100は、傾斜度Gに基づいて、ニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値P(S)を設定する。しきい値P(S)は、図5に示すような、予め記憶されたマップに基づいて設定される。しきい値P(S)は、登坂路であって傾斜度が大きいほど小さくなるように、かつニュートラル制御の実行後において、車両停止状態を維持するブレーキ力(車両が後退する方向に働く重力加速度による力よりも大きなブレーキ力)を発生させるブレーキ圧になるように、傾斜度Gをパラメータとして記憶される。
S112にて、ECU100は、ブレーキマスタシリンダ圧Pがしきい値P(S)より大きいか否かを判断する。ブレーキマスタシリンダ圧Pがしきい値P(S)より大きい場合(S112にてYES)、処理はS114に移される。そうでない場合(S112にてNO)、処理はS100に戻される。S114にて、ECU100は、ニュートラル制御の実行を開始する。
以上のような構造およびフローチャートに基づく本実施の形態に係る自動変速機の制御装置であるECU100の動作について説明する。
車両が傾斜度G(1)の登坂路を前進走行ポジションで走行している場合を想定する。運転者によりブレーキペダル132が踏込まれると、ブレーキマスタシリンダ圧Pが上昇を開始する。ブレーキマスタシリンダ圧Pが上昇すると、ブレーキ油圧回路110における液圧の増加により前輪124,126において制動力が発生し、車速Vが低下する。
車速Vが、車速センサ118からの信号に基づいて検知され(S100)、車速Vが略ゼロでない場合には、車両が停止状態でないと判断され(S102にてNO)、ニュートラル制御は実行されない。
一方、車速Vが略ゼロの場合、車両が停止状態であると判断され(S102にてYES)、Gセンサ140からの信号に基づいて、車両が停止している路面勾配の傾斜度G(1)が検知される(S104)。傾斜度G(1)は、登坂路であることを示すプラスの値であり、傾斜度の大きさに応じた値である。
検知された傾斜度G(1)が、予め定められたしきい値G(−)から予め定められた値G(+)(G(−)<G(+))の範囲内である場合、傾斜度G(1)がニュートラル制御の開始条件を満足すると判断される(S106にてYES)。これにより、水平路で実行させるのが一般的であるニュートラル制御が、Gセンサ140の出力のばらつきを考慮して、多少の勾配状況においても実行されるようになる。
液圧センサ128からの信号に基づいて、ブレーキマスタシリンダ圧Pが検知される(S108)。ここで、車両が後退する方向に働く重力加速度は、登坂路の傾斜度が大きいほど大きくなる。そのため、車両停止時に必要なブレーキマスタシリンダ圧Pは、登坂路の傾斜度が大きいほど低くなる。図6に示すように、車両が傾斜度G(1)の登坂路で停止している場合のブレーキマスタシリンダ圧PがP(1)である場合、しきい値P(S)がP(0)で一定である場合(図6の一点鎖線)には、P(1)がP(0)より低いため、ニュートラル制御が実行されない。
そこで、傾斜度Gに基づいて、ニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値P(S)が設定される。ブレーキ圧のしきい値P(S)は、図5に示すような、予め記憶されたマップに基づいて設定される。しきい値P(S)は、登坂路であって傾斜度が大きいほど小さくなるように、かつニュートラル制御の実行後において、車両停止状態を維持するブレーキ力(車両が後退する方向に働く重力加速度による力よりも大きなブレーキ力)を発生させるブレーキ圧になるように、傾斜度Gをパラメータとして記憶される。
そこで、図6に示すように、ニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値P(S)が、傾斜度G(1)に基づいて、P(0)より低い値であるP(2)に設定される。そのため、ブレーキマスタシリンダ圧P(1)がしきい値P(2)より大きくなり(S112にてYES)、ニュートラル制御の実行が開始される(S114)。これにより、C1クラッチ3640の制御指示圧が低下する。C1クラッチ3640の係合油圧が低下することにより、C1クラッチ3640が解放状態(スリップ状態を含む)となり、自動変速機104がニュートラルに近い状態となる。そのため、しきい値P(S)がP(0)で一定の場合と比べて、車両が登坂路を走行している場合における車両停止時のブレーキマスタシリンダ圧Pがしきい値P(S)を越える頻度が増加し、ニュートラル制御の実行回数が減少するのを抑制することができる。また、しきい値P(S)は、ニュートラル制御の実行後において、車両停止状態を維持するブレーキ力を発生させるブレーキ圧になるように設定されるため、車両が後退する方向に働く重力加速度の影響により車両が後退することを抑制することができる。
以上のようにして、本実施の形態に係る自動変速機の制御装置によると、ニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値が、登坂路であって傾斜度が大きいほど小さくなるように設定される。そのため、登坂路の傾斜度が大きく車両停止時に必要なブレーキマスタシリンダ圧が低くなった場合でも、ニュートラル制御が実行される。その結果、路面の勾配状況に関わらずニュートラル制御が実行される頻度を上昇させて燃費向上を達成する、自動変速機の制御装置を提供することができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本実施の形態に係る自動変速機の制御装置が搭載された車両の構成を示す図である。 プラネタリーギヤユニットを示すスケルトン図である。 各ギヤ段と、各ブレーキおよび各クラッチの対応を表した作動表を示す図である。 本実施の形態に係る自動変速機の制御装置であるECUで実行されるプログラムの制御構造を示すフローチャートである。 本実施の形態に係る自動変速機の制御装置に記憶されるブレーキマスタシリンダ圧のしきい値を示すマップ図である。 本実施の形態に係る自動変速機の制御装置であるECUがニュートラル制御を実行する場合のブレーキマスタシリンダ圧としきい値との関係を示す図である。
符号の説明
100 ECU、102 エンジン、104 自動変速機、106 マスタシリンダ、108 ブレーキアクチュエータ、110 ブレーキ油圧回路、112 ブレーキ機構、114 シフトレバー、116 ポジションスイッチ、118 車速センサ、120,122 ドライブシャフト、124,126 前輪、128 液圧センサ、130 ストップランプスイッチ、132 ブレーキペダル、136 ブレーキブースタ、138 ブレーキディスク、140 Gセンサ、3000 プラネタリーギヤユニット、3200 トルクコンバータ、3610 B1ブレーキ、3620 B2ブレーキ、3630 B3ブレーキ、3640 C1クラッチ、3650 C2クラッチ、3660 ワンウェイクラッチF、4000 油圧回路。

Claims (3)

  1. 車両発進時に係合される係合要素を有する自動変速機の制御装置であって、前記車両が前進走行ポジションで停止した場合に、少なくとも前記車両のブレーキ圧に基づいて、前記係合要素を解放させるニュートラル制御が実行され、
    前記制御装置は、
    前記車両が停止した路面の勾配を検知するための検知手段と、
    前記検知手段により前記路面の勾配が、登坂路であることが検知された場合は登坂路であることが検知されない場合に比べて、前記ニュートラル制御の実行を許可するブレーキ圧のしきい値を小さく設定するための設定手段とを含む、自動変速機の制御装置。
  2. 前記検知手段は、前記車両が停止した路面の勾配の傾斜度を検知するための手段を含み、
    前記設定手段は、前記検知手段により検知された路面の勾配の傾斜度が大きいほど、前記しきい値をより小さく設定するための手段を含む、請求項1に記載の自動変速機の制御装置。
  3. 前記設定手段は、前記しきい値を、前記ニュートラル制御の実行後において、前記車両が前記停止した状態を維持するブレーキ力を発生させるブレーキ圧に設定するための手段を含む、請求項1または2に記載の自動変速機の制御装置。
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