JP2007196519A - ヘッド圧制御方法及びインクジェット方式画像形成装置 - Google Patents

ヘッド圧制御方法及びインクジェット方式画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】操作性やメンテナンス性を犠牲にせずにヘッド圧を適正な範囲内に常に保てるヘッド圧制御方法を提供する。
【解決手段】記録ヘッド12aの上昇の際、記録ヘッド12aの位置が所定範囲内(適切な水頭差Hを保てる範囲内)から外れるに先立って加圧弁70と待機弁72を密閉してインク供給チューブ60a及びインク回帰チューブ62aを遮断する。この遮断によって、記録ヘッド12aからインクタンク52aまでの間ではインクの流れが遮断されるので、記録ヘッド12a内のインクに作用する圧力(ヘッド圧)は変動しない。この結果、記録ヘッド12aとインクタンク52aの相対的な移動によるヘッド圧の変動をなくし、記録ヘッド12a内が一定範囲内の負圧に保たれて、水頭差Hに起因する圧力変化の影響を記録ヘッド12a内のインクが受けないこととなる。
【選択図】図5

Description

本発明は、記録ヘッド内のインクに作用する圧力(ヘッド圧)を制御するヘッド圧制御方法、及びこのヘッド圧制御方法が実施されるインクジェット方式画像形成装置に関する。
記録ヘッド(印字ヘッド)から記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置(インクジェット記録装置)が知られている。このインクジェット方式画像形成装置では、一般に、インクを吐出する複数のノズルが高密度に形成された小型の記録ヘッドを用いて高精細な画像を形成できる。また、この小型の記録ヘッドを複数配置して、各記録ヘッドから異なる色のインクを吐出させることにより、比較的安価で小型な構成で記録媒体にカラー画像を形成できる。インクジェット方式画像形成装置は上記のような利点を有するので、業務用、家庭用を問わず、プリンタ、ファクシミリ及び複写機など、様々な画像出力装置に用いられている。
上記のようなインクジェット方式画像形成装置では、記録ヘッドからのインク吐出動作を安定化させるために、記録ヘッド内のインクを所定の負圧に維持する(記録ヘッド内のインクに作用する圧力を所定の負圧に保つ)ことが重要である。このため、一般には、記録ヘッドよりも下方にインクタンクを配置して水頭差を一定範囲内に保っておき、この一定範囲内に保たれた水頭差を利用してインクに負圧を作用させる構成となっている(例えば、特許文献1参照。)。
上記のように水頭差を利用して一定の負圧が付与されたインクは、記録ヘッドからのインク吐出に伴って上昇する記録ヘッド内の負圧との差圧によってインクタンクから記録ヘッド内に引き込まれるように供給される。この結果、記録ヘッド内が一定の負圧に保たれることになる。
特開2003−11380号公報
ところが、インクジェット方式画像形成装置の装置構成によっては記録媒体の詰まり除去等を考慮した操作性やメンテナンスのために、水頭差が上記の一定範囲から外れるように(一定範囲外になるように)記録ヘッド又はサブクタンクを移動(上下動)せざるをえない場合がある。このような場合、記録ヘッド内のインクに作用する圧力(ヘッド圧)は、記録ヘッドとインクタンクの垂直距離(即ち、水頭差)に応じて変化する。ヘッド圧が変化して上記の一定範囲外となった場合、ヘッド圧が大気圧以上になったときは記録ヘッドのインク吐出口からインクが漏れ出したり、ヘッド圧が低すぎるときは記録ヘッド内のインクがインクタンクに逆流したりすることがある。このようなトラブルを防止するためにヘッド圧を予め決められた一定範囲内に保つには、記録ヘッドとインクタンクの上下動の範囲(距離)を規制させざるをえず、この結果、上述したような操作性やメンテナンス性が低下することがあるという問題点がある。
本発明は、上記事情に鑑み、操作性やメンテナンス性を犠牲にせずにヘッド圧を適正な範囲内に常に保てるヘッド圧制御方法及びインクジェット方式画像形成装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明のヘッド圧制御方法は、インクを吐出する記録ヘッドに供給されるインクが貯められたインク容器よりも高い所定範囲内の位置に前記記録ヘッドを保持しておき、前記インク容器からインク流路を経由して前記記録ヘッドにインクを供給すると共に前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力を水頭差によって制御するヘッド圧制御方法において、
(1)前記記録ヘッドの位置が前記所定範囲内の位置から外れるに先立って前記インク流路を遮断して、前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように制御することを特徴とするものである。
また、上記目的を達成するための本発明の他のヘッド圧制御方法は、インクを吐出する記録ヘッドに供給されるインクが貯められたインク容器よりも高い所定範囲内の位置に前記記録ヘッドを保持しておき、前記インク容器からインク流路を経由して前記記録ヘッドにインクを供給すると共に前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力を水頭差によって制御するヘッド圧制御方法において、
(2)前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力から外れるに先立って前記インク流路を遮断して、該記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように制御することを特徴とするものである。
ここで、
(3)前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように制御する際に、前記記録ヘッドと前記インク容器との相対高さを検知して、この検知結果に基づいて前記インク流路を遮断してもよい。
さらに、
(4)前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように制御する際に、外部からの制御信号に基づいて前記インク流路を遮断してもよい。
また、上記目的を達成するための本発明のインクジェット方式画像形成装置は、インクを吐出する記録ヘッドに供給されるインクが貯められたインク容器よりも高い所定範囲内の位置に前記記録ヘッドを保持しておき、前記インク容器からインク流路を経由して前記記録ヘッドにインクを供給しながら該記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置において、
(5)前記インク流路を遮断する遮断手段と、
(6)前記記録ヘッドの位置が前記所定範囲内の位置から外れるに先立って、前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように前記遮断手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
また、上記目的を達成するための本発明の他のインクジェット方式画像形成装置は、インクを吐出する記録ヘッドに供給されるインクが貯められたインク容器よりも高い所定範囲内の位置に前記記録ヘッドを保持しておき、前記インク容器からインク流路を経由して前記記録ヘッドにインクを供給しながら該記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置において、
(7)前記インク流路を遮断する遮断手段と、
(8)前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力から外れるに先立って、該記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように前記遮断手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とするものである。
ここで、
(9)前記記録ヘッドと前記インク容器との相対高さを検知する高さ検知手段を備え、
(10)該検知手段の検知結果に基づいて前記遮断手段を制御してもよい。
さらに、
(11)前記遮断手段は、電力によって駆動するものであり、
(12)該遮断手段に電力が供給されないときは該遮断手段は前記インク流路を遮断しているものであってもよい。
なお、本明細書でいう、「記録」(画像形成とも称する)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も含むものとする。
また、「記録媒体」(シートとも称する)とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも含むものとする。
さらに、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様に広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を含むものとする。
本発明のヘッド圧制御方法によれば、記録ヘッド又はインク容器を移動させることにより記録ヘッドの位置が所定範囲内から外れる(一定範囲外となる)ことがあっても、この一定範囲内から外れるに先立って(外れる前に)インク流路を遮断して、記録ヘッド内のインクに作用する圧力(ヘッド内圧力)が一定範囲内の圧力になるように制御する。このため、例えば、記録ヘッドが装着されたプリンタ等のメンテナンスの際に記録ヘッドを移動させることによって記録ヘッドが上記の所定範囲外の位置に移動することがあっても、ヘッド内圧力が一定範囲内の圧力になるように制御される。この結果、ヘッド内圧力が一定範囲外となって記録ヘッドのインク吐出口からインクが漏れ出したり記録ヘッド内のインクがインク容器に逆流したりすることが防止される。また、このようなインクの漏れ出しや逆流を防止するために、記録ヘッドやインク容器の移動範囲を規制するなどメンテナンス性を犠牲にする必要が無い。
本発明は、インクジェット方式のプリンタに実現された。
図1と図2を参照して、本発明が適用されたプリンタを説明する。
図1は、本発明が適用されたインクジェット方式画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す正面図である。図2は、図1のプリンタの概略構成を示す斜視図である。
プリンタ10には、記録紙などの記録媒体にインクを吐出して画像を形成する記録ヘッド12a,12b,12c,12d,12e,12fが搭載された画像形成ユニット(記録ヘッドユニット)20と、記録媒体を矢印A方向(記録媒体搬送方向)に搬送する搬送ユニット40とが備えられている。記録ヘッド12a,12b,12c,12d,12e,12fからはそれぞれ、ブラック、シアン、ライトシアン、マゼンタ、ライトマゼンタ、イエローのインクが吐出される。画像形成ユニット20は、各記録ヘッド12a〜12fをキャップ位置、印字位置、ワイプ位置に移動させるヘッド昇降モータ118(図3参照)等を備えている。画像形成ユニット20は板状のエンジンベース30に固定されており、後述するようにエンジンベース30と共に上下動(昇降)する。
画像形成ユニット20が固定されているエンジンベース30は長方形状のものであり、その四隅はナット32に固定されている。これらナット32はねじ軸34に嵌め込まれており、ねじ軸34が回転することによりナット32は上下動する。4本のねじ軸34の下部にはスプロケット36が固定されており、これら4つのスプロケット36にはチェーン38が掛け渡されている。このチェーン38をヘッド昇降モータ118(図3参照)で回転させることによってねじ軸34が同期して回転し、エンジンベース30と共に画像形成ユニット20が上下動する。
搬送ユニット40は、画像形成ユニット20の下方を、記録媒体を通過させる4本の搬送ベルト42を備えている。搬送ベルト42は、従動ローラ44,45,46とエンコーダローラ47、駆動ローラ48とに掛け渡されており、テンショナ49によって張力が与えられている。この搬送ベルト42は、駆動モータ41よって周回運動するタイミングベルト43が駆動ローラ48を回転させることによって、記録媒体搬送方向(矢印A方向)に周回運動するように構成されている。
また、プリンタ10には、画像形成ユニット20にインクを供給するインク供給ユニット50が備えられている。インク供給ユニット50の内部には、各記録ヘッド12a〜12fに供給するインクが貯められたインクタンク52a〜52fと、各記録ヘッド12a〜12fから排出されたインク(廃インク)を貯めておく廃インクタンク53a(図5参照)などが配置されている。
インク供給ユニット50から画像形成ユニット20までは、インク供給チューブ60a〜60fとインク回帰チューブ62a〜62fを束ねて構成されたインク流路によって着脱自在に繋がれて(接続されて)いる。インク供給チューブ60a〜60fには、各インクタンク52a〜52fから各記録ヘッド12a〜12fに供給されるインクが通る。インク回帰チューブ62a〜62fには、各記録ヘッド12a〜12fから各インクタンク52a〜52fに回帰される(戻される)インクが通る。
図3を参照して、プリンタ10の電気的な系統を説明する。
図3は、プリンタの電気的な系統を示すブロック図である。
ホストPC101から送信された記録データやコマンドはインターフェイスコントローラ102を介してCPU100(本発明にいう制御手段の一例である)に受信される。CPU100は、プリンタ10の記録データの受信、記録動作等全般の制御を掌る演算処理装置である。CPU100では、受信したコマンドを解析した後に、記録データの各色成分のイメージデータをイメージメモリ106にビットマップ展開して描画する。記録前の動作処理としては、入出力ポート114、モータ駆動部116を介してキャッピングモータ(図示せず)とヘッド昇降モータ118を駆動し、各記録ヘッド12a〜12fをキャッピング機構(図示せず)から離して記録位置(画像形成位置)に移動させる。
続いて、搬送される記録媒体にインクを吐出し始めるタイミング(記録タイミング)を決定するための先端検知センサ(図示せず)で記録媒体の先端位置を検出する。その後、エンコ−ダ(図示せず)からの出力信号によって記録媒体の搬送に同期して、CPU100はイメージメモリ106から対応する色の記録データを順次に読み出し、この読み出したデータを各記録ヘッド12a〜12fに記録ヘッド制御回路112を経由して(介して)転送する。
なお、先端検知センサ及びエンコ−ダは搬送装置40(図1参照)に備えられており、この搬送装置40に備えられた搬送コントロ−ラ(図示せず)から、プリンタ10に備えられた搬送装置インタ−フェ−ス(図示せず)に情報を伝達する。
CPU100の動作はプログラムROM104に記憶された処理プログラムに基づいて実行される。プログラムROM104には、制御フローに対応する処理プログラム及びテーブルなどが記憶されている。また、作業用のメモリとしてワークRAM108を使用する。各記録ヘッド12a〜12fのクリーニングや回復動作、及びプリンタ10のメンテナンス作業などの際には、CPU100は、入出力ポート114を介してモータ駆動部116、センサ駆動部120、バルブ駆動部124に信号を伝達して、ヘッド昇降モータ118、高さセンサ122、バルブ126を駆動させてインクの加圧や吸引等の制御を行う。ヘッド昇降モータ118は、各記録ヘッド12a〜12fを昇降させるためのモータである。高さセンサ122は、記録ヘッド12a〜12fとインクタンク52a〜52fとの相対高さを検知するためのセンサであり、本発明にいう高さ検知手段の一例である。この高さセンサ122は、各記録ヘッド12a〜12fが上限位置まで移動したことを検知する上限センサ16(図4参照)と、各記録ヘッド12a〜12fが印字位置(又は待機位置)から上昇し始めたこと(及び、印字位置に戻ったこと)を検知する昇降検知センサ18(図4参照)とで構成されている。また、バルブ126は、上記のインク供給チューブ60a〜60f及びインク回帰チューブ62a〜62fを遮断する2つのバルブ(図5に示す加圧バルブと待機バルブ)の総称であり、本発明にいう遮断手段の一例である。
図4と図5を参照して、図1に示す記録ヘッド12a〜12f内のインクに作用する圧力を一定範囲内に保つヘッド圧制御方法を説明する。
図4は、一つの記録ヘッドと一つのインクタンクの接続状態を示す模式図である。図5は、図4を詳細に示す模式図である。これらの図では、図1と図2に示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号が付されている。また、ヘッド圧制御方法は、各記録ヘッド12a〜12fとも同じであり、ここでは、一つの記録ヘッド12aについて説明する。
プリンタ10のインク供給ユニット50(図1と図2参照)には、インクタンク52aから記録ヘッド12aにインクを送り出す(供給する)ための加圧ポンプ56と、回復桶14aに貯められた廃インクを吸引して廃インクタンク53aに排出するための吸引ポンプ58が備えられている。加圧ポンプ56は、インク供給チューブ60aに取り付けられており、インクタンク52aから記録ヘッド12aにインクが流入する方向(矢印C方向)にのみインクを送ることができる。また、吸引ポンプ58は、回復桶14aから廃インクタンク53aに廃インクを流す方向(矢印D方向)にのみインクを送ることができる。2つのポンプ56,58では、これらが非駆動時にはインクの流通性が保たれている。
記録ヘッド12aとインクタンク52aは2つのインク流路60a(インク供給チューブ)、62a(インク回帰チューブ)で接続されている。インク供給チューブ60aの途中部分には、この流路を開閉する加圧バルブ(加圧弁)70が設けられている。加圧弁70は、インク供給チューブ60aのうち加圧ポンプ56よりも記録ヘッド12aに近い側に取り付けられている。インク回帰チューブ62aの途中部分には、この流路を開閉する待機バルブ(待機弁)72が設けられている。これら2つのバルブ70,72は、図3を参照して説明したように、CPU100(図3参照)によって入出力ポート114を介してバルブ駆動部124に信号を伝達することによって駆動される。即ち、これら2つのバルブ70,72はCPU100によって制御されており、これらのバルブ70,72に電力が供給されていないときにはこれらのバルブ70,72は閉まっており、2つのインク流路60a、62aは遮断されている。この逆に、これらのバルブ70,72に電力が供給されているときにはこれらのバルブ70,72は開いており、2つのインク流路60a、62aにインクが流れる。なお、インクタンク52aには、その内部の圧力を大気圧と平均化するために大気開放口53aが形成されている。また、記録ヘッド12aの近傍には、記録ヘッド12aが上限位置まで移動したことを検知する上限センサ16と、記録ヘッド12aが印字位置(又は待機位置)から上昇し始めたこと(及び、印字位置に戻ったこと)を検知する昇降検知センサ18が配置されている。
ここで、記録ヘッド12aをクリーニングする際の動作について説明する。
2つのインク流路60a、62aに存在するインク中の気泡(泡)を除去する目的で行う循環クリーニングは、加圧弁70と待機弁72を開放した状態で加圧ポンプ56を駆動させる。これにより、インクがインクタンク52aからインク供給チューブ60a内を記録ヘッド12aに向かって流れて加圧ポンプ56、加圧弁70を通過して記録ヘッド12aに到達し、その後、インク回帰チューブ62aに流入して待機弁72を通過してインクタンク52aに戻る。このインクの循環によって2つのインク流路60a、62a中の泡をインクと共にインクタンク52aに押し流して除去する。
次に、記録ヘッド12aに形成されたノズル(図示せず)、フェイス面(インク吐出口が形成された面)、及びその周辺部分に存在する気泡や異物等を除去するために行うインク加圧クリーニングの動作について説明する。
このインク加圧クリーニングの際は、待機弁72を閉じておき、加圧弁70を開放しておき、加圧ポンプ56を駆動させる。これにより、インクがインクタンク52aからインク供給チューブ60a内を記録ヘッド12aに向かって流れて加圧ポンプ56、加圧弁70を通過して記録ヘッド12aに圧送される。待機弁72は閉じているので、記録ヘッド12aに圧送されたインクは記録ヘッド12aのノズル(図示せず)から排出される。この結果、記録ヘッド12aの液室やノズルに存在する気泡や、インク吐出口に付着している異物が押し流される。
上記のクリーニングによってノズルから排出された廃液は回復桶14aに貯められて、吸引ポンプ58の吸引力によって廃インクタンク53aに貯蔵される。廃インクタンク53aには吸引ポンプ58が円滑に廃インクを輸送できるよう大気開放口53bが形成されている。また、廃インクタンク53aには、2本の導電性端子で構成される上限センサ53cが設けられており、この上限センサ53cが、上限位置まで廃インクが貯蔵されたことを検知した時点でユ−ザ−に交換が促される。廃インクタンク53aは、ジョイント53dによって容易に脱着可能であり、交換に伴う廃インクの外部への漏れを防止するために、廃インクを保持するための吸収体53eが内部に収容されている。
上記したような各クリーニングが行われた後に印字動作に移行する。実際に印字を行う際には、加圧弁70、待機弁72が開放状態にあり、インク供給チューブ60a及びインク回帰チューブ62aによって、主に記録ヘッド12aのノズルによる毛細管現象の作用によってインクがインクタンク52aから記録ヘッド12aに自動的に供給されて印字に使用される。
上記したような毛細管現象により記録ヘッド12aに好適なインク供給を実施するためには、記録ヘッド12a内を水頭差H(図5)等の圧力発生手段により、記録ヘッド12a内のインクに作用する圧力(ヘッド圧)を一定の圧力状態に保持しておく必要がある。このヘッド圧にはある一定の最適な圧力範囲があり、この範囲を超えてしまう(又は、この範囲を下回る)ときは印字不良等につながる。
図5に示す水頭差Hが0(ゼロ)又は記録ヘッド12aがインクタンク52aよりも下方に位置している(ヘッド圧が一定範囲内の圧力よりも高い)場合、即ち、記録ヘッド12aに正の圧力が付与されている(正確には、記録ヘッド12a内のインクに大気圧よりも高い圧力が作用している)場合、記録ヘッド12aのノズルからインクが染み出てくるのでフェイス面はインクで濡れた状態となる。この状態で印字を行った場合、濡れたインクの影響で正常にインクが吐出されずに画像不良が発生する。さらに、この状態で待機している場合、毛細管現象によってインクタンク52a内のインクが記録ヘッド12aに引っ張られ続け、最終的に回復桶14aの中の許容範囲を超えるのでインク漏れが発生する。
上記の例とは反対に、図5に示す水頭差Hが最適な圧力範囲よりも大きい(ヘッド圧が一定範囲内の圧力よりも低い)場合、即ち、記録ヘッド12aに過度の負圧が付与している場合、インク吐出口からノズルの内部(奥)に外気(空気)が入り込むので、記録ヘッド12aのノズルにインクが十分に満たされていない状態となる。このため、印字を続けたときはノズル内にインクが無くなって印字不良となる。また、最悪の状態では、記録ヘッド12a内のインク保持力よりも水頭差Hが大きくなった場合、記録ヘッド12a及び2本のチューブ60a、チューブ62a内のインクがすべてインクタンク52aの方に引っ張られる(流動する)ので、戻されたインクがインクタンク52aから溢れ出るおそれがある。
上記した最適な圧力範囲とは、通常、−70mmAq〜−200mmAqである。なお、1mmAqは9.8Paである。また、上記の過度の負圧とは、例えば、−400mmAq〜−500mmAqである。また、記録ヘッド12aとインクタンク52aとの高低差の許容範囲は実験などによって予め決めておく。
プリンタ10(図1参照)を通常に使用する場合、プリンタ10の設置時に各記録ヘッド12a〜12fとインクタンク52a〜52fとの間の水頭差Hを最適な範囲内に設定することによって、水頭差Hの影響を受けることはない。しかし、紙詰まりやメンテナンス時に、これらを上下方向(図5の矢印B方向)に移動(上下動)せざるを得ない場合がある。この上下動によって適正範囲を外れた(一定範囲外の)圧力が各記録ヘッド12a〜12f内のインクに付与されることとなるので、印字不良やインク漏れが発生するおそれがある。
このような問題に対応すべく、本発明のヘッド圧制御方法では上記の水頭差Hが適正範囲外(一定範囲外)になった状態においても、各記録ヘッド12a〜12f内を一定の圧力に制御して過度な圧力の変動をなくした。本発明のヘッド圧制御方法について、図6を参照して説明する。
図6は、記録媒体の詰まり除去などのメンテナンスの際にベースプレートと共に記録ヘッドが上昇した状態を示す模式図である。
図4に示すようにプリンタ10(図1参照)の待機時又は印字時の状態では、記録ヘッド12aからインクタンク52aまでの間においてインクの行き来が出来る状態である。この状態にて、図6に示すように印記録媒体の詰まり除去などメンテナンス時にエンジンベース30が上昇した状態になったときは、上述したように過渡な水頭差H1が記録ヘッド12a内のインクに付与することとなる。このような過渡な水頭差H1に起因するトラブルを防止するために、ベースプレート30の上昇(即ち、記録ヘッド12aの上昇)の際、記録ヘッド12aの位置が所定範囲内(適切な水頭差Hを保てる範囲内)から外れるに先立って加圧弁70と待機弁72を密閉してインク供給チューブ60a及びインク回帰チューブ62aを遮断する。この遮断によって、記録ヘッド12aからインクタンク52aまでの間ではインクの流れが遮断されるので、記録ヘッド12a内のインクに作用する圧力(ヘッド圧)は変動しない(ヘッド圧は一定範囲内を保つ)。この結果、記録ヘッド12aとインクタンク52aの相対的な移動によるヘッド圧の変動をなくし、記録ヘッド12a内が一定範囲内の負圧に保たれて、水頭差Hに起因する圧力変化の影響を記録ヘッド12a内のインクが受けないこととなる。即ち、インク供給チューブ60a及びインク回帰チューブ62aを遮断した状態では、記録ヘッド12aとインクタンク52aをどのように動かしても記録ヘッド12a内は一定範囲内の圧力に保たれてこの一定範囲外の圧力にはならない。この結果、ヘッド圧が一定範囲外となって記録ヘッド12aのインク吐出口からインクが漏れ出したり記録ヘッド12a内のインクがインクタンク52aに逆流したりすることが防止される。また、このようなインクの漏れ出しや逆流を防止するために、記録ヘッド12aやインクタンク52aの移動範囲を規制するなどメンテナンス性を犠牲にする必要が無い。
図7と図8を参照して、記録ヘッドの上下動に伴う待機弁及び加圧弁の動作を説明する。
図7は、記録ヘッドの上昇に伴う待機弁及び加圧弁の動作手順を示すフロー図である。図8は、記録ヘッドの下降に伴う待機弁及び加圧弁の動作手順を示すフロー図である。
図7のフローは、エンジンベース30(図1等参照)が上昇し始めることにより起動する。プリンタ10(図1参照)の保守点検などの際にエンジンベース30と共に記録ヘッド12a(図1等参照)を上昇させ始める(S701)。記録ヘッド12aが上昇し始めたことを昇降検知センサ18が検知したか否かが判定され(S702)、記録ヘッド12aの上昇を昇降検知センサ18が検知したときは、この検知信号はCPU100(図3参照)に送信されて入出力ポート114(図3参照)を経由してバルブ駆動部124(図3参照)に伝達され、加圧弁70(図5参照)及び待機弁72(図5参照)が閉じられる(S703)。従って、記録ヘッド12aの位置が所定範囲内から外れるに先立ってインク供給チューブ60a及びインク回帰チューブ62aが遮断されることとなる。この結果、水頭差H1(図6参照)による圧力変動が記録ヘッド12aに付与されなくなるので、記録ヘッド12a内のインクに作用する圧力は一定範囲内の圧力を保つ。この一定範囲内の圧力とは、記録ヘッド12aのインク吐出口からインクが漏れ出したり記録ヘッド12a内のインクがインクタンク52aに逆流したりしない圧力である。
記録ヘッド12aはエンジンベース30と共に、上限センサ16が検知するまで上昇し、上限センサ16が記録ヘッド12aを検知したとき(S704)は、この検知信号はCPU100(図3参照)に送信されて入出力ポート114(図3参照)を経由してモータ駆動部116に伝達され、ヘッド昇降モータ118が停止してこの上昇が停止して(S705)このフローが終了する。この状態で保守点検などが実施される。このような保守点検などが終了した後、エンジンベース30と共に記録ヘッド12aを下降させる。
図8のフローは、エンジンベース30(図1等参照)が下降し始めることにより起動する。記録ヘッド12aと共にエンジンベース30が上限位置から下降し始め(S801)、記録ヘッド12aが印字位置の近傍に到達したときには昇降検知センサ18が、エンジンベース30が所定の位置に戻ったことを検知する(S802)。記録ヘッド12aの下降を昇降検知センサ18が検知したときは、この検知信号はCPU100(図3参照)に送信されて入出力ポート114(図3参照)を経由してモータ駆動部116に伝達され、ヘッド昇降モータ118が停止してこの下降が停止する(S803)。続いて、記録ヘッド12aの下降を昇降検知センサ18が検知した検知信号はCPU100(図3参照)に送信されて入出力ポート114(図3参照)を経由してバルブ駆動部124(図3参照)に伝達され、加圧弁70(図5参照)及び待機弁72(図5参照)が開かれる(S804)。従って、記録ヘッド12aの位置が所定範囲内に戻ってからインク供給チューブ60a及びインク回帰チューブ62aが開放されてこれらのチューブにインクが流通できることとなる。この結果、水頭差H(図5参照)による適切な圧力が記録ヘッド12a内のインクに付与される。
なお、本実施例では加圧ポンプ56として、非駆動時においてもインクの流通性が保たれているポンプを使用しているので、記録ヘッド12aから加圧ポンプ56までの間に加圧弁70を取り付けているが、例えばチューブポンプのようなポンプと流路遮断可能な手段を一体化した構成のものであっても、所定の効果が得られることは明らかである。また、上記した例では、昇降検知センサ18からの検知信号に基づいて加圧弁70と待機弁72を自動で開閉したが、手動で行ってもよい。すなわち、操作者が手動でプリンタ10の操作盤(図示せず)から制御信号(外部からの制御信号の一例である)を送って加圧弁70と待機弁72を開閉する構成にしてもよいし、パソコンのオペレータがホストPC101から制御信号(外部からの制御信号の一例である)を送って加圧弁70と待機弁72を開閉する構成にしてもよい。また、インクを吐出する為のエネルギーとして発熱素子から発生される熱エネルギーを用いた、いわゆるバブルジェット記録方式を採用したインクジェット記録ヘッドに本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明には他の方式(例えば、圧電素子を用いた方式等)のインクジェット記録ヘッドにも適用できることは明らかである。また、本発明に係るインクジェット記録ヘッドを用いて記録媒体に記録を行うインクジェット記録装置の機械的構成としては、記録ヘッドを搭載したキャリッジを移動させる間に記録を行うシリアル記録方式であっても、記録媒体の幅に対応した長さの記録ヘッドに対して記録媒体を相対的に移動させつつ記録を行うフルライン記録方式であってもよい。
本発明が適用されたインクジェット方式画像形成装置の一例であるプリンタの概略構成を示す正面図である。 図1のプリンタの概略構成を示す斜視図である。 プリンタの電気的な系統を示すブロック図である。 一つの記録ヘッドと一つのインクタンクの接続状態を示す模式図である。 図4を詳細に示す模式図である。 記録媒体の詰まり除去などのメンテナンスの際にベースプレートと共に記録ヘッドが上昇した状態を示す模式図である。 記録ヘッドの上昇に伴う待機弁及び加圧弁の動作手順を示すフロー図である。 記録ヘッドの下降に伴う待機弁及び加圧弁の動作手順を示すフロー図である。
符号の説明
10 プリンタ
12a〜12f 記録ヘッド
16 上限センサ
18 昇降検知センサ
52a〜52f インクタンク
56 加圧ポンプ
60a インク供給チューブ
62a インク回帰チューブ
70 加圧弁
72 待機弁
100 CPU

Claims (8)

  1. インクを吐出する記録ヘッドに供給されるインクが貯められたインク容器よりも高い所定範囲内の位置に前記記録ヘッドを保持しておき、前記インク容器からインク流路を経由して前記記録ヘッドにインクを供給すると共に前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力を水頭差によって制御するヘッド圧制御方法において、
    前記記録ヘッドの位置が前記所定範囲内の位置から外れるに先立って前記インク流路を遮断して、前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように制御することを特徴とするヘッド圧制御方法。
  2. インクを吐出する記録ヘッドに供給されるインクが貯められたインク容器よりも高い所定範囲内の位置に前記記録ヘッドを保持しておき、前記インク容器からインク流路を経由して前記記録ヘッドにインクを供給すると共に前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力を水頭差によって制御するヘッド圧制御方法において、
    前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力から外れるに先立って前記インク流路を遮断して、該記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように制御することを特徴とするヘッド圧制御方法。
  3. 前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように制御する際に、前記記録ヘッドと前記インク容器との相対高さを検知して、この検知結果に基づいて前記インク流路を遮断することを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッド圧制御方法。
  4. 前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように制御する際に、外部からの制御信号に基づいて前記インク流路を遮断することを特徴とする請求項1又は2に記載のヘッド圧制御方法。
  5. インクを吐出する記録ヘッドに供給されるインクが貯められたインク容器よりも高い所定範囲内の位置に前記記録ヘッドを保持しておき、前記インク容器からインク流路を経由して前記記録ヘッドにインクを供給しながら該記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置において、
    前記インク流路を遮断する遮断手段と、
    前記記録ヘッドの位置が前記所定範囲内の位置から外れるに先立って、前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように前記遮断手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。
  6. インクを吐出する記録ヘッドに供給されるインクが貯められたインク容器よりも高い所定範囲内の位置に前記記録ヘッドを保持しておき、前記インク容器からインク流路を経由して前記記録ヘッドにインクを供給しながら該記録ヘッドから記録媒体にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式画像形成装置において、
    前記インク流路を遮断する遮断手段と、
    前記記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力から外れるに先立って、該記録ヘッド内のインクに作用する圧力が一定範囲内の圧力になるように前記遮断手段を制御する制御手段を備えたことを特徴とするインクジェット方式画像形成装置。
  7. 前記記録ヘッドと前記インク容器との相対高さを検知する高さ検知手段を備え、
    該検知手段の検知結果に基づいて前記遮断手段を制御することを特徴とする請求項5又は6に記載のインクジェット方式画像形成装置。
  8. 前記遮断手段は、電力によって駆動するものであり、
    該遮断手段に電力が供給されないときは該遮断手段は前記インク流路を遮断しているものであることを特徴とする請求項5,6,又は7に記載のインクジェット方式画像形成装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2009131974A (ja) * 2007-11-29 2009-06-18 Brother Ind Ltd 液体吐出装置
CN102555501A (zh) * 2011-12-21 2012-07-11 深圳市润天智数字设备股份有限公司 一种负压自动调节系统及方法

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