JP2007196174A - 不均一系リン酸ジルコニウム触媒、脱水反応方法、5−ヒドロキシメチルフルフラール製造方法、セルロース分解方法、及び不均一系リン酸ジルコニウム触媒の再生方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明のリン酸ジルコニウムを用いると、生成物の収率が高く、しかも触媒の回収、再生が容易である。
【選択図】 なし
Description
本発明の不均一系リン酸ジルコニウム触媒は、下記一般式(1)であらわされる。本発明の不均一系リン酸ジルコニウム触媒は、その分子内に、触媒活性に対応すると考えられる、2つの異なる位置を有する。1つ目の位置は、水酸基に属し(ブレンステッド位置)、2つ目の位置は、必ずしも明確ではないが、ルイス酸型の可能性を有する。本発明においては、この触媒は、ルイス酸位置が触媒活性に関連していると考えられる。あるいは、今まで知られていない新しい相が機能している可能性もある。また、ジルコニウムは、同属のチタニウムに比べ、毒性がないので取り扱いが容易である。
本発明の不均一系リン酸ジルコニウム触媒は、以下のようにして製造される。
本発明のリン酸ジルコニウム触媒を用いると、糖類を脱水反応することができる。また、ヘキソースを、亜臨界状態または超臨界状態の水と接触させて、5−ヒドロキシメチルフルフラールを選択的に生成できる。特に、分解物から、レブリン酸や蟻酸などの副生物の生成や、フミンなどの重合物の生成が起こらないので、純度の高いHMFを得ることができる。
本発明のリン酸ジルコニウム触媒は固体酸触媒であるので、反応溶液中に溶解しない。したがって、反応終了後に濾過等の公知の固液分離により、リン酸ジルコニウム触媒を容易に回収することができる。
塩化ジルコニウム0.5gを2Nの塩酸3mlに溶解した。次に、この溶液を、室温で攪拌しながら、約7Nのリン酸を3ml加えた。得られたリン酸ジルコニウムゲルを、2Nのリン酸で洗浄し、さらに遊離のリン酸イオンと塩素イオンとがなくなるまで、蒸留水で洗浄した。洗浄液中から、リン酸イオンが存在しなくなったことは、誘導結合(ICP)プラズマ原子発光分析装置(セイコー(株)製、SPS−7800)を用いて行った。洗浄液中から遊離の塩素イオンが検出されなくなるのは、銀滴定法を用いて確認した。次に、上記洗浄後のリン酸ジルコニウム塩を、343Kで72時間乾燥させ、最終的に粉砕して本発明のリン酸ジルコニウム触媒を得た。
(表面積の測定)
測定前に、全てのサンプルを、343Kで9時間排気した。表面積は、高精度ガス吸着装置(日本ベル株式会社製、BELSORP 18−PLUS−TSP)を用いて、77Kにおける窒素ガスの吸収により測定した。表面積は、比表面積測定式を用いて決定した。
リン酸ジルコニウム触媒の細孔の大きさは、水銀圧式ポロシメーター(サーモフィンガン社製、パスカル140,240)を用いて測定した。
リン酸ジルコニウム触媒のリン酸とジルコニウムの元素分析は、誘導結合(ICP)プラズマ原子発光分析装置(セイコー(株)製、SPS−7800)を用いて行った。具体的には、サンプル5〜7gを、ポリ塩化ビニル製のフラスコ中で、0,2Nのフッ化水素酸2mlに溶解し、ICPプラズマ原子発光分析装置で測定した。結果を、表1に示す。なお、以下において、リン酸ジルコニウム触媒をZrP触媒ということがある。
反応容器として、ステンレススチールチューブ(SUS316、内径:8mm、全体積:7.7mm3)と、スウェージロックフィッテング(スウェージロック社製)とを用いて、513Kにおいて、バッチ式の亜臨界反応実験を行った。
亜臨界反応の生成物は、284nmにセットされたフォトダイオードアレイ検出器を接続したCSPAK ナローボアカラム(2.1×284mm)に、2つの溶媒送液モジュール(バリアンテクノロジーズジャパンリミテッド製、Varian proStar210)を用いて、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。流速は0.1ml/minで、グラディエント溶離プログラムは、表2にしたがって行った。
フルクトースの触媒を用いた脱水反応から、以下の亜臨界状態におけるリン酸ジルコニウムの転換率、活性、選択性、及び他の関連する情報を得た。
亜臨界状態中におけるZrPに触媒活性が存在することを示すために、触媒の有無による実験を行った。図3は、513Kの亜臨界状態において、ZrP触媒(表1のA1)の有無によるフルクトースからのHMFを産出する経時変化を示す図である。この図からわかるように、触媒がなくても、フルクトースが脱水され、HMFになる。亜臨界反応時間が長くなると、HMFの産生量は、120秒までは増加し、その後減少する。これは、HMFが分解され、分解物の重合を生ずるためだと思われる。この図から、触媒がない場合に比べ、産出量が3倍に増加することから、ZrP(0:0)は、触媒として機能することがわかる。
亜臨界反応における種々のZnP触媒の構造による効果を試験するために、同一条件(滞留時間:120秒、温度:513K、触媒:フルクトース比=1:2、フルクトース濃度:1質量%)において、固体酸を用いて、一連の実験を行った。触媒を用いない比較例を含めた、フルクトースの転換率、HMFとフルフラールの選択性、HMFの絶対産出量を、表3に示す。
アモルファス状態のZrP(0:0)触媒を用いて、以下の実験を行った。より良い反応条件を得るために、表4に示すように、513Kにおける亜臨界状態で、種々の滞留時間と触媒と基質の比(1:1、1:2、1:4)とを変えて、一連の実験を行った。基質として、それぞれケトヘキソースとアルドヘキソースの例として、フルクトースとグルコースとを用いた。表4から、基質の変換と選択性とは、滞留時間と触媒量とによることがわかる。
回収した固体を、2Nのリン酸中で、30分攪拌し、次に乾燥させた。これにより、反応の選択性や活性などの触媒能力を失うことなく、リン酸ジルコニウム触媒を再生することができた。
ZrP(0:0)とpH2のリン酸をそれぞれ不均一系と均一系酸触媒として用いて、2種類のフルクトース脱水反応を行った。513Kで120秒反応させた後の反応容器の鉄含有量を、反応容器の腐食量として、分析した。ZrP固体酸触媒を用いたものでは、鉄は確認されなかった。リン酸を用いたものでは、約10ppmの鉄を含有していた。これから、本発明のリン酸ジルコニウム触媒は、反応容器を腐食しないことがわかった。
Claims (5)
- 塩化ジルコニウムを塩酸に溶解する工程と、
前記溶液に、過剰のリン酸を滴下して、リン酸ジルコニウムゲルを生成する工程と、
生成したリン酸ジルコニウムゲルを遠心分離する工程と、
遠心分離したリン酸ジルコニウムゲルをリン酸で洗浄し、次にリン酸イオンと塩素イオンとがなくなるまで蒸留水で洗浄する工程と、
得られたリン酸ジルコニウムを一定量にまで乾燥する工程とを
含み製造される不均一系リン酸ジルコニウム触媒。 - 糖類を、不均一系リン酸ジルコニウム触媒の存在下、亜臨界状態または超臨界状態の水と接触させて、脱水反応を行う脱水反応方法。
- ヘキソースを、不均一系リン酸ジルコニウム触媒の存在下、亜臨界状態または超臨界状態の水と接触させて、5−ヒドロキシメチルフルフラールを得る5−ヒドロキシメチルフルフラール製造方法。
- セルロース又はセルロース含有物質を、不均一系リン酸ジルコニウム触媒の存在下、亜臨界状態または超臨界状態の水と接触させて、ヘキソースに分解し、
さらに得られたヘキソースから、5−ヒドロキシメチルフルフラールを得るセルロース分解方法。 - 反応終了後の前記不均一系リン酸ジルコニウム触媒を、リン酸中で攪拌し、乾燥させる不均一系リン酸ジルコニウム触媒の再生方法。
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