JP2007193969A - 密閉型電池及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 長期にわたり確実に注液孔が封止された密閉性の高い密閉型電池、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の密閉型電池100は、電解液を収容する電池ケース110を備えている。この電池ケース110は、樹脂からなり、電解液を電池ケース110の内部に注入する注液孔141を有する注液部材140と、金属からなり、注液孔141を封止する封止部材160とを備えている。注液部材140をなす樹脂が、封止部材160に液密に溶着して、注液孔141が封止されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、電解液を収容する電池ケースを備える密閉型電池、及びその製造方法に関する。
従来より、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの密閉型電池、及びその製造方法について、多数提案されている。この密閉型電池の製造方法としては、例えば、電池ケース内に発電要素(正極、負極、セパレータなど)を収容した後、予め電池ケースに形成しておいた注液孔を通じて、電池ケース内に電解液を注入する。その後、注液孔を封止することで電池を密閉し、密閉型電池を製造する。このため、注液孔の封止の程度が、密閉型電池の密閉性に大きな影響を及ぼすこととなる。
これに対し、近年、密閉性の高めるために注液孔の封止を工夫した密閉型電池、及びその製造方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開平11−317240号公報 特開2000−90891号公報 特開2002−298832号公報
特許文献1の密閉式電池は、注液孔をなす電池ケースの内壁面に雌ネジを形成し、これと螺合する雄ネジを有する栓体(ボルト)を螺着することで、注液孔を閉塞した密閉式電池である。さらに、密閉性を高めるため、注液孔と栓体との間に、金属製ワッシャ兼パッキンを介在させると共にシール剤を配している。
特許文献2の密閉電池の製造方法は、電池ケースに穿孔されている注液孔を閉塞する位置に、封口栓(封止用の平板)を配置し、これをレーザー溶接する手法である。詳細には、注液孔を閉塞する位置に配置した封口栓(封止用の平板)を、垂直上方向から押圧し固定した状態で、レーザー照射ヘッドを、封口栓に対し垂直上方向から5〜30度傾けた円錐面または角錐面上を移動させて溶接する。これにより、溶接時に封口栓が微小変形した場合でも、溶接部位に隙間が生じることがないので、溶接部隙間による穴あき不良を防止できると記載されている。
特許文献3の密閉型電池の封止方法は、注液孔に、樹脂製の凹型ガスケットを挿入配置した後、この凹型ガスケットの凹部の内径よりも僅かに径大な球状の封止栓を、凹型ガスケットの凹部内に圧入する。これにより、封止栓と注液孔の内周面との間で、凹型ガスケットが挟持されて、注液孔を封止することができると記載されている。
しかしながら、特許文献1では、シール剤及びワッシャを配した上で、栓体(ボルト)を注液孔に螺着して注液孔を封止するため、作業性が悪く、部品点数も多いという課題があった。さらに、螺着した栓体(ボルト)が緩んで、電池の密閉性が低下する虞もあった。
また、特許文献2の手法では、可燃性を有する電解液を電池ケース内に注入した後、レーザー溶接を行うため、発火等する危険性があり、安全面において問題がある。また、レーザー溶接により、クラックやブローホールが生じ、封止不良が発生する虞もあった。
また、特許文献3の密閉型電池では、時間の経過と共に、樹脂製の凹型ガスケットのうち封止栓に押圧されている部位がクリープし、封止栓と注液孔の内周面との間に、凹型ガスケットを適切に挟持できなくなる虞がある。これにより、電池の密閉性が低下してしまう課題があった。
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、長期にわたり確実に注液孔が封止された密閉性の高い密閉型電池、及びその製造方法を提供することを目的とする。
その解決手段は、電解液を収容する電池ケースを備える密閉型電池であって、上記電池ケースは、樹脂からなり、上記電解液を当該電池ケースの内部に注入する注液孔を有する注液部と、金属からなり、上記注液孔を封止する封止部材と、を備え、上記注液部をなす樹脂が、上記封止部材に液密に溶着して、上記注液孔が封止されてなる密閉型電池である。
本発明の密閉型電池では、注液部をなす樹脂が封止部材に溶着することで、注液孔が封止されている。これにより、長期にわたり確実に注液孔が封止された、密閉性の高い密閉型電池となる。
ここで、注液部をなす樹脂を、封止部材に液密に溶着させる手法としては、金属からなる封止部材の表面に注液部をなす樹脂を液密に溶着できる手法であれば、いずれの手法でも良い。例えば、封止部材として、その表面に多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜を形成した封止部材を用い、熱溶着により、注液部をなす樹脂と、封止部材の多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜とを結合させる手法を挙げることができる。また、他の手法としては、例えば、封止部材として、その表面を粗化処理した封止部材を用い、注液部をなす樹脂を、封止部材の粗化処理した部位(粗化処理層)に溶着させる手法を挙げることができる。
さらに、上記の密閉型電池であって、前記封止部材は、少なくとも前記注液部をなす樹脂が溶着する溶着部の表面に、上記注液部をなす樹脂が溶着し易くなる処理が施された易溶着処理層を備える密閉型電池とすると良い。
樹脂は、金属に対し、適切に溶着しないことがある。これに対し、本発明の密閉型電池では、金属製の封止部材のうち、少なくとも注液部をなす樹脂が溶着する溶着部の表面に、注液部をなす樹脂が溶着し易くなる処理が施された易溶着処理層を設けている。これにより、注液部をなす樹脂を金属製の封止部材に適切に溶着させることができるので、本発明の密閉型電池は、注液部をなす樹脂が封止部材に適切に溶着し、確実に注液孔が封止された密閉型電池となる。
なお、易溶着処理層としては、封止部材の金属表面に形成された多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜や、封止部材の表面を粗化処理してなる粗化処理層を例示することができる。
さらに、上記の密閉型電池であって、前記封止部材は、前記易溶着処理層として、多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜を有し、前記電池ケースは、前記注液部をなす樹脂が、上記封止部材の多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜と結合して、上記注液孔が封止されてなる密閉型電池とすると良い。
本発明の密閉型電池では、封止部材が、易溶着処理層として、多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜を有している。このため、熱溶着により、注液部をなす樹脂と、封止部材の多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜と結合させることができる。注液部をなす樹脂と、封止部材の多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜とは強固に結合するため、本発明の密閉型電池は、長期にわたり確実に注液孔が封止された、密閉性の高い密閉型電池となる。
さらに、上記いずれかの密閉型電池であって、前記封止部材は、球状をなし、当該封止部材の少なくとも一部が前記注液孔内に挿入配置されてなる密閉型電池とすると良い。
球には向きがないため、球状の封止部材を用いることで、密閉型電池を製造する際、封止部材の向きを定めることなく、容易に、封止部材を注液孔内に挿入することができると共に、一定の封止性能を得ることができる。従って、本発明の密閉型電池は、適切に注液孔が封止された密閉型電池となる。
他の解決手段は、電解液を収容する電池ケースを備える密閉型電池の製造方法であって、上記電池ケースとして、樹脂からなり、上記電解液を当該電池ケースの内部に注入する注液孔を有する注液部と、金属からなり、上記注液孔を封止する封止部材と、を含む電池ケースを用い、上記注液孔に対する所定位置に、上記封止部材を配置する配置工程と、上記封止部材を通じた加熱により、上記注液部をなす樹脂を溶融させ、当該樹脂を上記封止部材に液密に溶着させて、上記注液孔を封止する封止工程と、を備える密閉型電池の製造方法である。
本発明の製造方法では、樹脂からなる注液部の注液孔に対する所定位置に、金属からなる封止部材を配置し、封止部材を通じた加熱により、注液部をなす樹脂を封止部材に液密に溶着させて、注液孔を封止する。このように、注液部をなす樹脂を封止部材に溶着することで、確実に、注液孔を封止することができると共に、長期にわたり高い密閉性を保持することができる。しかも、金属製の封止部材を加熱するだけで、金属製の封止部材を通じて注液部の樹脂を加熱し、溶融できるので、注液孔の封止が簡易となる。
なお、配置工程において封止部材を配置する「注液孔に対する所定位置」とは、後の封止工程において、「封止部材を通じた加熱により注液部をなす樹脂を溶融させ、当該樹脂を封止部材に液密に溶着させて注液孔を封止できる位置」であれば、いずれも位置でも良い。具体的には、例えば、注液孔の内部、外部、または内部及び外部(封止部材の一部が注液孔内に位置する)であって、注液孔を閉塞する位置を挙げることができる。また、この場合、配置したときには注液孔を閉塞しなくとも、注液部の樹脂が封止部材に溶着したときに注液孔が閉塞される位置であっても良い。
また、「封止部材を通じた加熱により、注液部をなす樹脂を溶融させる」手法としては、例えば、配置工程において、加熱していない封止部材を所定位置に配置し、その後、封止工程において封止部材を加熱することで、封止部材を通じて注液部をなす樹脂を加熱し溶融させる手法が挙げられる。この場合、封止部材を加熱する手法としては、非接触で封止部材を加熱できる点で、誘導加熱やレーザー光照射による加熱が好ましい。このうち、封止部材の加熱ムラを小さくできる点で、誘導加熱が好ましく、特に、封止部材の表面を集中的に加熱できる点で、高周波誘導加熱(例えば、200kHz以上の高周波誘導加熱)が好ましい。
また、他の手法として、例えば、配置工程において、予め加熱された封止部材を注液孔を閉塞する位置に配置することで、封止工程において、加熱されている封止部材を通じて注液部をなす樹脂を加熱し溶融させる手法が挙げられる。
さらに、上記の密閉型電池の製造方法であって、前記封止工程において、前記封止部材を、前記注液部をなす樹脂に向けて押圧する密閉型電池の製造方法とすると良い。
封止工程において、封止部材を、注液部をなす樹脂に向けて押圧することで、封止部材を、注液部をなす樹脂に密着させることができるので、より確実に、注液孔を封止することができる。なお、封止部材を押圧するタイミングは、封止部材を加熱しつつ押圧するようにしても良いし、封止部材を加熱した後に押圧するようにしても良い。また、封止工程において、封止部材の押し込み量を所定量に管理することで、各電池について、封止部材と注液部をなす樹脂との密着の程度(封止の程度)を一定にすることも可能となる。
さらに、上記いずれかの密閉型電池の製造方法であって、前記封止部材は、その表面の少なくとも一部に、前記注液部をなす樹脂が溶着し易くなる処理が施された易溶着処理層を有してなり、前記封止工程において、上記注液部をなす樹脂を、上記易溶着処理層に溶着させる密閉型電池の製造方法とすると良い。
樹脂は、金属に対し、適切に溶着しないことがある。これに対し、本発明の製造方法では、封止部材として、易溶着処理層を有する封止部材を用い、封止工程において、注液部をなす樹脂を易溶着処理層に溶着させる。これにより、注液部をなす樹脂を、金属製の封止部材に適切に溶着させることができるので、注液孔を確実に封止することができる。
さらに、上記の密閉型電池の製造方法であって、前記封止部材は、前記易溶着処理層として、多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜を有してなる密閉型電池の製造方法とすると良い。
本発明の製造方法では、封止部材として、多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜(易溶着処理層)を有する封止部材を用いる。熱溶着により、注液孔をなす注液部の樹脂と、封止部材の多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜とは強固に結合するため、本発明の製造方法によれば、より確実に、注液孔を封止することができると共に、長期にわたり高い密閉性を保持することができる。
さらに、上記いずれかの密閉型電池の製造方法であって、前記封止工程において、誘導加熱により前記封止部材を加熱し、前記注液部をなす樹脂を溶融させる密閉型電池の製造方法とすると良い。
本発明の製造方法では、誘導加熱により封止部材を加熱するので、封止部材の加熱ムラを小さくできる。これにより、封止部材と接触する注液部をなす樹脂を、ほぼ均一に、加熱し溶融させて、封止部材に溶着することができる。従って、本発明の製造方法によれば、注液部をなす樹脂の溶着ムラに起因する封止不良を防止できる。
なお、誘導加熱のうち、特に、高周波誘導加熱が好ましい。
さらに、上記いずれかの密閉型電池の製造方法であって、前記封止部材は、球状である密閉型電池の製造方法とすると良い。
本発明の製造方法では、封止部材として、球状の封止部材を用いる。球には向きがないため、球状の封止部材を用いることで、封止部材の向きを定めることなく、容易に、封止部材を配置できると共に、一定の封止性能を得ることができる。従って、本発明の製造方法によれば、適切に注液孔を封止することができる。
さらに、上記の密閉型電池の製造方法であって、前記注液孔は、前記電池ケースの外部から内部に向かって縮経するテーパ形状であり、前記配置工程において、前記球状の封止部材を、上記注液孔内に挿入配置する密閉型電池の製造方法とすると良い
本発明の製造方法では、配置工程において、電池ケースの外部から内部に向かって縮経するテーパ形状の注液孔内に、球状の封止部材を挿入配置する。このようにすれば、封止部材を挿入する際、封止部材の挿入位置を位置決めしなくても、単に、封止部材を注液孔内に挿入しさえすれば、確実に、封止部材を注液孔内の所定位置に配置することができる。従って、本発明の製造方法によれば、簡易に且つ確実に、注液孔を封止することができる。
なお、テーパ形状の注液孔内に、球状の封止部材を加熱することなく挿入配置すると、封止部材により注液孔を仮閉塞することができるので、封止工程において注液孔を封止するまでの間、外部から水分や異物が電池内に侵入することを防止できる。さらに、封止工程において注液孔を封止するまでの間に、何らかの理由(例えば、電池のコンディショニング)で、電池ケース内にガスが発生し、内圧が所定値を超えて上昇したときには、封止部材が僅かに押し上げられることで注液孔の仮閉塞を開放し、封止部材と注液孔との間に生じた隙間から発生したガスを外部に排出することができる。
さらに、上記いずれかの密閉型電池の製造方法であって、前記配置工程は、前記封止部材を、加熱することなく前記注液孔に対する所定位置に配置して、前記電池ケースの内圧が所定値を超えたときに、上記封止部材による上記注液孔の閉塞が開放されるように、上記注液孔を仮閉塞する仮閉塞配置工程であり、前記封止工程は、上記封止部材を加熱して、前記注液部をなす樹脂を溶融させる封止工程であり、上記仮閉塞配置工程の後、上記封止工程の前に、電池のコンディショニングを行うコンディショニング工程を備える密閉型電池の製造方法とすると良い。
本発明の製造方法では、仮閉塞配置工程の後、封止工程の前に、電池のコンディショニングを行う。ここで、コンディショニングとは、電池の初期性能を安定化させるための処理をいい、具体的には、初期充電や充放電の繰り返しなどの処理である。
本発明の製造方法では、コンディショニング工程の前の仮封止配置工程において、封止部材を、加熱することなく注液孔に対する所定位置に配置して、注液孔を仮閉塞する。このように注液孔を仮閉塞することで、注液孔を封止するまでの間、外部から水分や異物が電池内に侵入することを防止できる。
しかも、電池ケースの内圧が所定値を超えたときに、封止部材による注液孔の閉塞が開放されるように、封止部材により注液孔を仮閉塞する。この状態で、電池のコンディショニングを行うため、コンディショニングを行うことにより電池内にガス発生した場合には、そのガスの圧力で封止部材が僅かに押し上げられるので、封止部材と注液孔との間に生じた隙間から発生したガスを外部に排出することができる。これにより、適切に、電池のコンディショニングを行うことができる。
次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態の密閉型電池100は、図1に示すように、直方体形状の電池ケース110と、正極端子120と、負極端子130とを備える密閉型電池である。
電池ケース110は、金属(アルミニウム)製で直方体形状の収容空間をなす角形収容部111と、金属(アルミニウム)製の蓋部112とを有している。電池ケース110(角形収容部111)の内部には、捲回体150、正極集電部材122、負極集電部材132などが収容されている。正極集電部材122及び負極集電部材132は、細長板形状の金属部材であり、それぞれ、正極端子120及び負極端子130に接続されている。
捲回体150は、断面長円状をなし、シート状の正極板155、負極板156、及びセパレータ157を捲回してなる扁平型の捲回体である。この捲回体150は、その軸線方向(図1において左右方向)の一方端部(図1において右端部)に位置し、正極板155の一部のみが渦巻状に重なる正極捲回部155bと、他方端部(図1において左端部)に位置し、負極板156の一部のみが渦巻状に重なる負極捲回部156bとを有している。なお、正極板155には、正極捲回部155bを除く部位に、活物質を含む正極合材が塗工されている。同様に、負極板156には、負極捲回部156bを除く部位に、活物質を含む負極合材が塗工されている。また、正極捲回部155bは正極集電部材122と、負極捲回部156bは負極集電部材132と、それぞれ電気的に接続されている。
蓋部112には、図1に示すように、貫通孔112bが形成されている。この蓋部112は、貫通孔112bの位置に、樹脂(PPS)製の注液部材140が一体成形されている。注液部材140は、円柱状をなし、その軸線方向(図1において上下方向)に貫通する注液孔141を有している。さらに、注液部材140の注液孔141内には、金属(鉄)製の球状をなす封止部材160が固着されている。詳細には、注液部材140をなす樹脂が、金属製の封止部材160に液密に溶着して、注液孔141が封止されている。
ところで、樹脂は、金属に対し、適切に溶着しないことがある。すなわち、注液部材をなす樹脂が、金属製の封止部材に適切に溶着しないことがある。これに対し、本実施形態の密閉型電池100では、金属製の封止部材160の表面に、注液部材140をなす樹脂が溶着し易くなる処理が施された易溶着処理層161を設けている。具体的には、易溶着処理層161として、多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜を設けている。注液部材140をなす樹脂と、封止部材160の多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜(易溶着処理層161)とは強固に結合するため、本実施形態の密閉型電池100は、長期にわたり確実に注液孔141が封止された、密閉性の高い密閉型電池となる。
このような本実施形態の密閉型電池100は、次のようにして製造する。
まず、2種類の金属シートに、それぞれ異なる活物質を含む電極合材(正極合材と負極合材)を塗布して、シート状の正極板155及び負極板156を製造する。次いで、正極板155、負極板156、及びセパレータ157を積層し、これを捲回して捲回体150を形成する。
なお、正極板155、負極板156、及びセパレータ157を積層する際には、捲回体150の一端部に、正極板155のうち正極合材を塗工していない未塗工部(正極捲回部155bとなる部位)のみが位置するように、正極板155を配置しておく。さらには、負極板156のうち負極合材を塗工していない未塗工部(負極捲回部156bとなる部位)が、正極板155の未塗工部とは反対側に位置するように、負極板156を配置しておく。これにより、正極捲回部155b及び負極捲回部156bを有する捲回体150が形成される。
また、正極集電部材122と正極端子120とが一体となった金属部材、及び負極集電部材132と負極端子130とが一体となった金属部材を用意する。次いで、正極集電部材122を正極捲回部155bに溶接すると共に、負極集電部材132を負極捲回部156bに溶接する。
また、これとは別に、角形収容部111と、貫通孔112bの位置に樹脂(PPS)製の注液部材140が一体成形された蓋部112とを用意する。
次いで、正極端子120及び負極端子130を、蓋部112の所定位置に配置すると共に、捲回体150を角形収容部111内に挿入する。次いで、角形収容部111と蓋部112との間の位置で、全周溶接することにより、電池ケース110を成形する。
次いで、注液部材140の注液孔141を通じて、電池ケース110の内部に電解液を注入する。この時点では、注液部材140の注液孔141は、図2に示すように、電池ケース110の外部から内部に向かって(図2において上方から下方に向かって)縮経するテーパ形状をなし、電池ケース110の内部と外部とを連通している。
また、これとは別に、公知の手法により、鉄球の表面に、多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜(易溶着処理層161)を形成した、球状の封止部材160を用意する(図2参照)。
次いで、仮閉塞配置工程に進み、図3に示すように、球状の封止部材160を、加熱することなく、テーパ形状(詳細には、円錐台形状)の注液孔141内に挿入配置して、注液孔141を仮閉塞する。このように注液孔141を仮閉塞することで、注液孔141を封止するまでの間、外部から水分や異物が電池内に侵入することを防止できる。
なお、仮閉塞配置工程では、封止部材160を、注液孔141内に押し込んで圧入することなく、封止部材160の自重で、注液孔141の閉塞状態を保持するように配置する。これにより、電池ケース110の内圧が所定値を超えたときに、封止部材160による注液孔141の閉塞が開放されるように、注液孔141を仮閉塞することができる。これにより、図4に示す、仮閉塞電池102を形成することができる。
ところで、本実施形態では、封止部材として、球状の封止部材160を用いている。球には向きがないため、図2,図3に示すように、封止部材160を注液孔141内に挿入する際、封止部材160の向きを定めることなく、容易に、封止部材160を注液孔141内に挿入配置できる。
しかも、注液孔141の形状を、電池ケース110の外部から内部に向かって(図3において上方から下方に向かって)縮経するテーパ形状としている。このため、球状の封止部材160を注液孔141内に挿入する際、封止部材160の挿入位置を位置決め(例えば、封止部材の中心を注液孔141の中心軸上に配置)しなくても、単に、封止部材160を注液孔141内に挿入しさえすれば、確実に、封止部材160を注液孔141内の所定位置に配置することができる。
次いで、コンディショニング工程に進み、電池の初期性能を安定化させるための処理を施した。具体的には、仮閉塞電池102に初期充電を施し、さらに、充放電を所定回数繰り返し行った。ところで、コンディショニングを行うことにより、電池ケース110内に多量のガス発生することがある。
これに対し、本実施形態では、上述のように、電池ケース110の内圧が所定値を超えたときに、封止部材160による注液孔141の閉塞が開放されるように、注液孔141を仮閉塞した状態で、コンディショニングを行っている。このため、図5に破線の矢印で示すように、電池ケース110内にガスG発生した場合には、そのガスGの圧力で封止部材160が僅かに押し上げられ、封止部材160と注液孔141との間に生じた隙間から、発生したガスGを外部に排出することができる。これにより、適切に、電池のコンディショニングを行うことができる。
次いで、封止工程に進み、図6に示すように、公知の高周波誘導加熱(例えば、20〜200kHzの高周波誘導加熱)により、注液孔141内に配置した封止部材160を加熱しつつ、封止部材160を電池ケース110の内部に向かって押し込む。これにより、封止部材160を通じた加熱により、注液部材140をなす樹脂を溶融させ、図7に示すように、当該樹脂を封止部材160に液密に溶着させて、注液孔141を封止することができる。このようにして、図1に示す密閉型電池100が完成する。
ところで、本実施形態の封止工程では、誘導加熱により封止部材160を加熱するので、封止部材160の加熱ムラを小さくできる。これにより、封止部材160と接触する注液部材140をなす樹脂を、ほぼ均一に、加熱し溶融させて、封止部材160に溶着することができる。従って、注液部材140をなす樹脂の溶着ムラに起因する封止不良を防止できる。特に、高周波誘導加熱により封止部材160を加熱するので、封止部材160の表面を集中的に加熱することができる。このため、効率良く、注液部材140をなす樹脂を溶融させて、封止部材160に溶着することができる。
さらに、封止部材160の材質として鉄を選択し、電池ケース110(蓋部112)の材質としてアルミニウムを選択している。鉄の体積固有抵抗がアルミニウムの体積固有抵抗に比べて大きいため、高周波誘導加熱を施すと、アルミニウム製の電池ケース110(蓋部112)に比べて、鉄製の封止部材160が大きく温度上昇することとなる。このため、注液部材140をなす樹脂のうち、蓋部112に接触している樹脂よりも、封止部材160に接触している樹脂を優先的に溶融させることができる。これにより、適切に、封止部材160に接触している樹脂を封止部材160に溶着させて、注液孔141を封止することができる。
さらに、図7に示すように、封止工程において、注液部材140の外側面142からの封止部材160の挿入深さを、所定寸法Hと一定にしている。これにより、注液部材140をなす樹脂が封止部材160に溶着する程度を適切な範囲とし、適切に注液孔141を封止することができる。さらに、複数の密閉型電池100を製造する場合には、各々の密閉型電池100について、注液孔141の封止の程度のバラツキを抑制することができる。さらに言えば、各々の密閉型電池100のいずれについても、注液部材140をなす樹脂が封止部材160に溶着する程度を、適切な範囲内で統一できるので、適切に注液孔141を封止することができる。
次に、本発明の変形形態1,2について、図面を参照しつつ説明する。
変形形態1にかかる密閉型電池200は、図1に示すように、実施形態の密閉型電池100と同様に、直方体形状の電池ケース110と、正極端子120と、負極端子130とを備える密閉型電池である。本変形形態1の密閉型電池200は、図8に拡大して示すように、実施形態の密閉型電池100と比較して、注液孔141内に樹脂充填体180を追加して設けた点のみが異なり、その他については同様(図1参照)である。
実施形態の密閉型電池100では、前述のように、注液孔141内に配置した封止部材160に注液部材140をなす樹脂を溶着させて、注液孔141を封止した。これに対し、本変形形態1の密閉型電池200では、注液孔141内に配置した封止部材160に注液部材140をなす樹脂を溶着させることに加え、注液孔141を閉塞する樹脂充填体180を注液孔141内に設けている。これにより、より一層、電池の密閉性を高めることができる。
なお、樹脂充填体180は、いずれの手法により形成しても良いが、例えば、注液孔141内に配置した封止部材160に注液部材140をなす樹脂を溶着させた後、注液部材140と同じ材質(PPS)からなる溶融樹脂を注液孔141内に供給し、硬化させることで形成することができる。
また、変形形態2にかかる密閉型電池300は、図1にカッコ書きで示すように、実施形態の密閉型電池100と比較して、注液部材140を注液部材340に変更した点のみが異なり、その他については同様である。詳細には、図7と図9とを比較するとわかるように、実施形態にかかる注液部材140と本変形形態2にかかる注液部材340とは、注液孔の形状が異なる。
具体的には、実施形態では、図2に示すように、注液孔141の形状を、電池ケース110の外部から内部に向かって(図2において上方から下方に向かって)縮経するテーパ形状とした注液部材140を用いて、密閉型電池100を製造した。
これに対し、本変形形態2では、図10に示すように、注液孔341の形状を、封止部材160の外径より大きな内径を有する第1孔部341bと、封止部材160の外径より小さな内径を有する第2孔部341cとが、この順に、電池ケース110の外部から内部に向かって(図10において上方から下方に向かって)同一軸線上で連なる段差形状とした注液部材340を用いて、密閉型電池300を製造した。
具体的には、図11に示すように、仮閉塞配置工程において、封止部材160を注液孔341内に挿入し、封止部材160を段差部342に当接させることで、封止部材160により注液孔341を仮閉塞することができる。これにより、注液孔341を封止するまでの間、外部から水分や異物が電池内に侵入することを防止できる。さらに、後のコンディショニング工程において、電池ケース110内にガス発生した場合には、そのガスの圧力で封止部材160が僅かに押し上げられ、封止部材160と注液孔341との間に生じた隙間から、発生したガスを外部に排出することができる。
その後、封止工程において、実施形態と同様に、公知の高周波誘導加熱により、注液孔341内に配置した封止部材160を加熱しつつ、封止部材160を電池ケース110の内部に向かって押し込む。これにより、封止部材160を通じた加熱により、注液部材340をなす樹脂を溶融させ、図9に示すように、当該樹脂を封止部材160に液密に溶着させて、注液孔341を封止することができる。
以上において、本発明を実施形態及び変形形態1,2に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態等では、仮閉塞配置工程において、封止部材160を加熱することなく注液孔141,341内に挿入配置した後、封止工程において、封止部材160を加熱して注液部材140,340を溶着させた。しかしながら、本発明の製造方法は、このような製造方法に限定されるものではなく、例えば、予め加熱した封止部材160を、注液孔141,341内に挿入配置することで、加熱されている封止部材160を通じて、注液部材140,340をなす樹脂を加熱し溶融させて、封止部材160に注液部材140,340をなす樹脂を溶着させるようにしても良い。
また、実施形態等では、断面長円状をなす扁平型の捲回体150を用いたが、捲回体の形状は、断面長円状をなす扁平型に限らず、円筒状などいずれの形状であっても良い。さらには、捲回体に限らず、シート状の正極板155、負極板156、及びセパレータ157を積層してなる積層体としても良い。
また、実施形態等では、金属製の電池ケース110(金属製の角形収容部111及び金属製の蓋部112)を用いたが、電池ケースは金属製に限らず、樹脂製であっても良い。
実施形態及び変形形態1,2にかかる密閉型電池100,200,300の縦断面図である。 密閉型電池100の製造方法を説明する説明図である。 密閉型電池100の製造方法を説明する説明図である。 仮閉塞電池102の縦断面図である。 密閉型電池100の製造方法を説明する説明図である。 密閉型電池100の製造方法を説明する説明図である。 密閉型電池100の製造方法を説明する説明図である。 変形形態1にかかる密閉型電池200の部分拡大断面図である。 変形形態2にかかる密閉型電池300の部分拡大断面図である。 密閉型電池300の製造方法を説明する説明図である。 密閉型電池300の製造方法を説明する説明図である。
符号の説明
100,200,300 密閉型電池
110 電池ケース
120 正極端子
130 負極端子
140,340 注液部材(注液部)
141,341 注液孔
150 捲回体
160 封止部材
161 易溶着処理層(多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜)
180 樹脂充填体

Claims (12)

  1. 電解液を収容する電池ケースを備える密閉型電池であって、
    上記電池ケースは、
    樹脂からなり、上記電解液を当該電池ケースの内部に注入する注液孔を有する注液部と、
    金属からなり、上記注液孔を封止する封止部材と、を備え、
    上記注液部をなす樹脂が、上記封止部材に液密に溶着して、上記注液孔が封止されてなる
    密閉型電池。
  2. 請求項1に記載の密閉型電池であって、
    前記封止部材は、
    少なくとも前記注液部をなす樹脂が溶着する溶着部の表面に、上記注液部をなす樹脂が溶着し易くなる処理が施された易溶着処理層を備える
    密閉型電池。
  3. 請求項2に記載の密閉型電池であって、
    前記封止部材は、
    前記易溶着処理層として、多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜を有し、
    前記電池ケースは、
    前記注液部をなす樹脂が、上記封止部材の多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜と結合して、上記注液孔が封止されてなる
    密閉型電池。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の密閉型電池であって、
    前記封止部材は、
    球状をなし、
    当該封止部材の少なくとも一部が前記注液孔内に挿入配置されてなる
    密閉型電池。
  5. 電解液を収容する電池ケースを備える密閉型電池の製造方法であって、
    上記電池ケースとして、
    樹脂からなり、上記電解液を当該電池ケースの内部に注入する注液孔を有する注液部と、
    金属からなり、上記注液孔を封止する封止部材と、を含む電池ケースを用い、
    上記注液孔に対する所定位置に、上記封止部材を配置する配置工程と、
    上記封止部材を通じた加熱により、上記注液部をなす樹脂を溶融させ、当該樹脂を上記封止部材に液密に溶着させて、上記注液孔を封止する封止工程と、を備える
    密閉型電池の製造方法。
  6. 請求項5に記載の密閉型電池の製造方法であって、
    前記封止工程において、
    前記封止部材を、前記注液部をなす樹脂に向けて押圧する
    密閉型電池の製造方法。
  7. 請求項5または請求項6に記載の密閉型電池の製造方法であって、
    前記封止部材は、その表面の少なくとも一部に、前記注液部をなす樹脂が溶着し易くなる処理が施された易溶着処理層を有してなり、
    前記封止工程において、
    上記注液部をなす樹脂を、上記易溶着処理層に溶着させる
    密閉型電池の製造方法。
  8. 請求項7に記載の密閉型電池の製造方法であって、
    前記封止部材は、前記易溶着処理層として、多官能性トリアジンジチオール誘導体被膜を有してなる
    密閉型電池の製造方法。
  9. 請求項5〜請求項8のいずれか一項に記載の密閉型電池の製造方法であって、
    前記封止工程において、
    誘導加熱により前記封止部材を加熱し、前記注液部をなす樹脂を溶融させる
    密閉型電池の製造方法。
  10. 請求項5〜請求項9のいずれか一項に記載の密閉型電池の製造方法であって、
    前記封止部材は、球状である
    密閉型電池の製造方法。
  11. 請求項10に記載の密閉型電池の製造方法であって、
    前記注液孔は、前記電池ケースの外部から内部に向かって縮経するテーパ形状であり、
    前記配置工程において、
    前記球状の封止部材を、上記注液孔内に挿入配置する
    密閉型電池の製造方法。
  12. 請求項5〜請求項11のいずれか一項に記載の密閉型電池の製造方法であって、
    前記配置工程は、前記封止部材を、加熱することなく前記注液孔に対する所定位置に配置して、前記電池ケースの内圧が所定値を超えたときに、上記封止部材による上記注液孔の閉塞が開放されるように、上記注液孔を仮閉塞する仮閉塞配置工程であり、
    前記封止工程は、上記封止部材を加熱して、前記注液部をなす樹脂を溶融させる封止工程であり、
    上記仮閉塞配置工程の後、上記封止工程の前に、電池のコンディショニングを行うコンディショニング工程を備える
    密閉型電池の製造方法。
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