本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、制御プログラムの実行により、織機停止時あるいは織機の起動時に行われる織機主軸の自動回転工程中に何らかの異常が発生してその自動回転工程が中止されたとき、作業者の操作により、織機主軸を適切な位置まで確実に復帰できるようにすることにある。
そこで、本発明が前提とする織機は、所定の回転位相まで織機主軸を回転させるプログラムが1以上記憶される制御器と、織機主軸の回転にともなって駆動される経糸開口装置とを含み、前記制御器は、織機の連続運転中における停止信号の発生により織機運転を停止してからその後織機を起動して再び緯入れをともなう連続運転が開始されるまでの期間内で、前記プログラムを1以上実行して前記プログラムに対応される所定の回転位相に至るまで織機主軸を回転させる織機とすることができる。そのような前提織機に対し、本発明では、前記制御器は、前記プログラムの実行中に異常信号が入力されると、織機主軸を停止させて前記プログラムの実行を中止するとともに、織機主軸が前記所定の回転位相に回転されるまでの間にわたり、織機の操作ボタンとしての低速正転ボタンおよび低速逆転ボタンのうち前記プログラム実行中における主軸の回転方向に対応する操作ボタンからの操作信号のみを前記所定の回転位相に至るまで有効とすることを要旨とする。
上記要旨によれば、上記期間内で、織機主軸を回転させるプログラムの実行中に異常信号が入力されると、織機主軸を停止させて前記プログラムの実行を中止するとともに、織機主軸が前記所定の回転位相に回転されるまでの間にわたり、織機の操作ボタンとしての低速正転ボタンおよび低速逆転ボタンのうち前記プログラム実行中における主軸の回転方向に対応する操作ボタンからの操作信号のみを前記所定の回転位相に至るまで有効とし、これ以外の操作ボタンからの操作信号を無効化する。このため作業者は、ボタン操作により織機が回転されるか否かにより、織機主軸の回転をともなう処理が中断されたか否かを認識することができるから、復帰のための手動操作を誤りなく確実に実行できる。なお、所定の回転位相まで織機主軸を回転させるプログラムについて、糸切れ修復などのために作業者が手動操作により遂行される低速正転や低速逆転は、本件発明の技術的範囲に含まれない。
本発明では、前記プログラムにより実行される織機主軸の自動回転について、具体的には、停止信号の発生により織機主軸の回転を停止させた後、経糸開口を中口閉口状態にして織工待機状態にする、あるいは運転開始時に織機を起動させつつ緯入れを伴わない空織り運転を行って筬打ち力を高めた状態にする、のいずれも対象とすることができ、また制御器の働きにより自動的に実行されるものを対象とすることができる。
上記前者について、具体的には、前記プログラムは、連続運転中における停止信号の発生により織機主軸の回転が停止された後に開始されるプログラムであって、経糸開口装置の経糸クロスタイミングまたはその近傍に定められる前記所定の回転位相まで織機主軸を低速逆転させる処理を含むことができる。より好適な例としては、前記プログラムには、織機主軸を前記逆転させるに際し、前記制御器が開口装置に対しレベリング指令を出力する処理を含む。そして、前記経糸開口装置は、予め複数ステップにわたって設定された開口パターンに従ってアクチュエータを作動させて経糸開口運動を切り換え可能にされる一方、前記レベリング指令の出力により、現在の開口パターンに対して各綜絖枠の上下位置が反転された反転開口パターンに基づいて経糸開口運動を切り換え可能にされており、前記制御器は、前記プログラムを開始して前記レベリング指令の出力および織機主軸を前記定められる所定の回転位相へ逆転させることにより、経糸開口を中口閉口状態にする。
このようなレベリング動作に関係するプログラムに適用することにより、作業者は、操作信号が上記制限されるもとで必然的に低速逆転ボタンを操作することになって、レベリング動作を確実に完遂できる。従って作業者が行う手動操作について、一旦レベリング動作を完遂させてからレベリング動作を解除するように統一されることになり、従来誤操作によって発生しがちな柄ズレ等の不都合が確実に防止される。
上記後者について、具体的には、前記プログラムは、織機を起動するに際して開始されるプログラムであって、空織り運転期間の終了時期に定められる前記所定の回転位相まで緯入れを伴わないで織機主軸を高速正転させることにより織前に対する筬打ち力を高めた状態にする空織り運転処理と、前記織機主軸の高速正転処理に先立って開始され、前記空織り運転期間を考慮して定められる第1の回転位相まで織機主軸を低速回転させる低速回転処理とを含む。そして、前記制御器は、前記プログラムを開始して織機主軸を第1の回転位相まで低速回転させ、その後織機主軸を高速正転させるとともに、前記所定の回転位相に達することにより緯入れをともなう連続運転に移行する。
また、空打ちスタートに関係するプログラムに適用することにより、作業者は、操作信号が上記制限されるもとで、低速回転ボタン(つまり、低速逆転ボタン、低速正転ボタンのうち上記中止された処理に対応される操作ボタン)を必然的に操作することになって、織機主軸を上記中止された空打ちスタートの空織り運転処理が完遂される位置に相当する回転位相、すなわち織機主軸を再運転可能な回転位相まで確実に回転させることができる。従って、従来発生しがちな1回転以上ずれた回転位相より誤って運転操作することに起因する柄ズレ等の不都合が確実に防止される。
より好ましくは、前記制御器は、前記有効な操作信号の入力にともなう織機主軸の回転駆動中に、前記プログラムに対応される前記所定の回転位相に達したことにより織機主軸を自動的に停止させる。これにより作業者は、織機主軸に対する復帰のための回転操作を、先に中止されたプログラムのもとで実行された主軸の回転状況を把握し、その後の復帰のための主軸の回転量を意識して操作する必要がなく、制御器側で判断して自動的に停止させるため、作業者の負担が軽減される。なお、プログラムの実行による織機主軸の回転量が1回転未満である場合のように、先に中止されたプログラムによる主軸の回転状況から今後行うべき主軸の回転量が容易に把握できる場合には、そのような自動停止機能を省いた構成も考えられる。
これに対し、さらに作業者の負担を減らすようにすることも可能である。より具体的には、前記制御器には、さらに復帰ボタンが接続され、前記制御器は復帰ボタンからの復帰操作信号が入力されると、織機主軸を前記所定の回転位相まで自動的に回転させるとともに、特定の操作信号のみを有効とする前記処理を解除するようにしてもよい。
なお、開口装置について、例えば電子ドビーや電子ジャカード装置のように、回転方向の反転禁止角度が存在する開口装置、つまり開口運動選択機構の都合上回転方向を反転させることに起因するいわゆる綾落ちを防止するために反転禁止区間が設けられる開口装置がある。仮にそのような開口装置を備えた織機で、異常信号の発生により前記プログラムの実行が中止されたとしても、その後の復帰操作では、目的とする所定の回転位相に至るまで、織機主軸の回転方向が反転される駆動は存在しない。従ってそのような開口装置を備える織機であっても、作業者は、反転禁止区間(いわゆる禁止帯)を意識することなく、復帰のための操作を円滑に実行できる。
制御器が記憶するプログラムについて、所定の回転位相まで織機主軸を回転させる上記プログラムが複数記憶され、一連の動作の過程で上記複数の中から選択的に実行する形態であっても良い。しかし、織機の制御プログラムの中に上記複数のプログラムを選択可能なサブルーチンとして複数含み、一連の動作の過程で対応するルーチンを選択的に実行する形態としても良く、本件発明としては、いずれの形態も含む。
本発明の実施形態について、以下図面を用いて説明する。
図1には、織機10の全体図を示す。織機10では、複数の経糸12は、複数組の耳糸(図示せず)とともに、これらが巻かれている経糸ビーム14からシート状に引出され、またバックローラ16,複数の綜絖18および筬20を経て織前22に連なっている。また経糸12は、複数の綜絖枠19に取り付けられる各綜絖18,18にそれぞれ挿通されており、各綜絖枠19の往復運動により開口される。経糸12の開口24内には、緯糸が図示しない緯入れ装置を介して緯入れされる。緯入れされた緯糸は、筬20によって織前22に打ち付けられて織布26が形成される。そして織布26は、織前22からガイドロール28を経て服巻ロール30に達し、服巻ロール30と一対のプレスロール32とにより送り出され、布巻ロール34に巻取られる。
筬20および複数の綜絖枠19は、筬打ち駆動装置36および開口駆動機構38によりそれぞれ駆動される。筬打ち装置36および開口駆動機構38は、織機の主軸42に連結されるとともに、主軸42の回転運動を所望の往復運動に変換する公知の機構で構成され、筬20および複数の綜絖枠19を介し所定の筬打ち運動および経糸開口運動を行わせる。また、織幅方向に光軸を形成するセフティガードセンサ43が筬20の前進端位置よりもやや前方に配置されており、筬20の運動範囲付近に障害物が進入し遮光されたことを検出して異常信号を発生する。なお、本実施例では、開口駆動機構38を予め設定された電気的に記憶された開口パターンにしたがって綜絖枠の駆動態様を切り換えるいわゆる電子ドビー装置で構成する。
一方、経糸ビーム14は、送出モータ44の出力軸の回転が公知の減速機構を介し減速されて駆動され、経糸12をシート状に送り出す。他方、服巻ロール30では、巻取モータ46の回転が公知の減速機構を介して減速駆動され、対となるプレスロール32,32と共同して織布26を布巻ロール34に向けて送り出す。
織機主軸42には、主軸モータ40および電磁ブレーキ48に連結されており、織機主軸42は、主軸モータ40により駆動されるとともに電磁ブレーキ48の作動により制動される。
図2には、織機の制御装置50ならびに経糸開口運動を発生させる開口装置90のブロック図を示している。織機の制御装置50は、大まかに言えば、各種製織用のパラメータを設定する設定器52と、設定器52に入力された設定パラメータおよび他の入力データを用いて織機を制御する主制御装置54とを含む。なお主制御装置54は、上記した制御器に対応している。
主制御装置54には、入力信号を受ける入力ポート56と、出力信号を出力する出力ポート58と、各種の回路装置に制御信号を出力する中央処理ユニット(CPU)60と、各種の情報などを記憶する記憶器62とを備えている。記憶器62には、機械メーカ側で作成された複数の制御プログラム(制御ルーチン)が予め格納されるとともに、現在の制御値等の制御データが一時的に格納可能にされている。
主制御装置54には、さらに主軸モータ40を駆動する駆動回路64と、電磁ブレーキ48を駆動する駆動回路66と、巻取モータ46を駆動する巻取制御回路68と、送出モータ44を駆動する送出制御回路70と、緯入れを制御する緯入れ制御装置72と、緯入れされた緯糸を検知して緯入れの正否を判定して緯入れミス信号を発生する緯糸検知回路74が接続されている。これらの回路装置64〜74は、主制御装置54から出力される信号により制御される。
さて主制御装置54には、織機を運転させる際に操作される運転ボタン81,寸動正転させる際に操作される低速正転ボタンとしての寸動ボタン82,逆転させる際に操作する低速逆転ボタンとしての逆転ボタン83、連続運転中の織機を停止させる際に操作される停止ボタン85,および後述される織機主軸の自動回転工程が中止されたときに織機主軸を運転操作可能な回転位相まで回転させる際に操作される復帰ボタン84が接続されており、各操作ボタンからの操作信号、すなわち運転操作信号S1、寸動操作信号S2、逆転操作信号S3、停止操作信号S5および復帰操作信号S4がそれぞれ入力されている。また、主制御装置54には、上記操作信号のほか、緯糸検知回路74からの緯入れミス信号S12、織機主軸42に連結された角度信号発生器76からの主軸角度信号θ、および織前に配置されるセフティガードセンサ43からの異常信号S0などを入力ポート56に受け、CPU60は記憶器62に格納される制御プログラム(制御ルーチンを実行し、制御信号を出力ポート58を介して出力して回路64〜74を制御する。
主軸42には、回転位相としての角度θを検出するために、例えばアブソリュート形エンコーダやインクリメンタル形エンコーダのような公知の角度信号発生器(ENC)76が連結される。主軸角度信号θは、主制御装置54では織機の運転や停止のほか織機の全体動作の制御などに用いられ、また後述されるように停台原因の発生にともなって織機を中口閉口状態に待機させる制御、織機を運転する際に所定回数の空織りを実行する空打ちスタートにおいて各処理工程を切り換える制御等にも用いられる。
駆動回路64は、主制御装置54から出力される信号の種類(運転信号S6,正転信号S7,逆転信号S8)に応じて、主軸モータ40に、これの駆動態様(高速正転、低速正転、低速逆転等)に応じた電力を供給する。例えば、主軸モータ40が誘導電動機で構成される場合、駆動回路64は、主軸モータ40の駆動態様に対応する周波数の交流電力を発生する公知のインバータ装置で構成することができるし、また低速駆動用電源としての低周波数出力のインバータ装置と、高速駆動用電源としての商用電源と、これらの出力を主軸モータ40の一次巻線に選択的に給電したり、あるいは起動トルクを異ならせるべく主軸モータ40の一次巻線に給電する電圧を切換可能に設けられる電磁開閉器とからなる公知の駆動回路で構成することができる。
織機の運転中、駆動回路64は、主制御装置54からの運転信号S6のオン出力(オンの運転信号S6)により主軸モータ40を高速正転させて、織機を通常運転に維持する。また駆動回路64は、織機の正転時に正転信号S7のオン出力(オンの正転信号S7)により主軸モータ40を低速で正転させ、織機の逆転時に逆転信号S8のオン出力(オンの逆転信号S8)により主軸モータ40を低速で逆転させる。
駆動回路66は、織機の正転、逆転および運転を終了する際に、主制御装置54からの制動信号S9のオン出力(オンの制動信号S9)により、電磁ブレーキ48に主軸42の制動に必要な電力を送る。電磁ブレーキ48は、制動指令の出力により制動力を発生するものであれば良く、励磁によりディスクを吸着して制動力を発生するものに限らない。
巻取制御回路68は、巻取モータ46を主制御装置54から出力される信号に応じて駆動させる。具体的には、織機の運転中(運転信号S6のオン出力中)、巻取制御回路68は、巻取モータ46を設定器52に設定された緯糸密度に対応する速度で主軸42の回転に同期して駆動させる。また、起動準備信号S10の発生時には、巻取制御回路68は、作業者の設定に応じて織機にキックバック動作(巻取モータ46を所定量だけ、正転方向又は逆転方向に回転させる動作)を実行させることにより、織前22の位置を前後方向に移動させて、織段を防止する。さらに、巻取制御回路68は、空織り期間中(空織り信号S11がオン出力中)においては、運転信号S6がオンであっても巻取モータ46を停止させる。
送出制御回路70は、送出モータ44を主制御装置54から出力される信号に応じて駆動させる。具体的には、織機の運転中(運転信号S6のオン出力中)、送出制御回路70は、経糸の張力を所定の値に維持するように、送出モータ44を駆動させる。また、送出制御回路70は、巻取制御回路68と同様に、起動準備信号S10の発生時には、作業者の設定に応じたキックバック動作を織機にさせ、空織り期間中(空織り信号S11がオン出力中)においては、運転信号S6がオンであっても送出モータ44を停止させる。
緯入れ制御装置72は、例えば、エアージェット織機の場合、緯糸測長貯留装置、緯入れノズル(メインノズル及び複数のサブノズル)、これらの装置や緯入れノズルからの流体噴射を制御する緯入れ制御回路を含む。緯入れ制御装置72は、織機の運転中(運転信号S6のオン出力中)は、緯糸測長貯留装置から緯入れ1ピック分の緯糸を緯糸測長貯留装置から解舒しつつ、緯入れ用の圧力流体をメインノズル及び複数のサブノズルからリレー式に噴射させて、緯糸を経糸開口内に緯入れする。しかし、空織り期間中(空織り信号S11がオン出力中)は、運転信号S6が出力オンされていても、緯糸の解舒や緯入れノズルの噴射をせず緯入れをしない。
緯糸検知回路74は、反給糸側の織端付近に設けられた図示しないH1フィーラ及びH2フィーラのようなフィーラヘッドからの糸信号により、織機の通常運転中における緯入れの正否を判定し、緯入れミスの場合にそれを表す緯入れミス信号S12を発生する公知の回路である。この緯糸検知回路74は、空織り期間中(空織り信号S11がオン出力中)は、運転信号がオン出力であっても、緯糸検知動作を行わない(すなわち、緯入れミス信号S12を発生しない)。
このような制御装置50の各回路に対し、設定器52は、例えば各設定パラメータの設定状況や織機の制御情報などを文字・数字あるいはグラフィック表示する表示機能と設定器としての情報入力機能とを兼ね備えた、いわゆるタッチパネルで構成され、主制御装置54や各回路装置64〜74、後述される開口コントローラ96との間で情報送受可能にされている。設定器52に設定されるパラメータは、織機起動用や織機停止用などの設定パラメータ(その具体的な動作については図4、図8、図10、図11にて説明する)のほか、製織用の各種パラメータが含まれており、製織用の各種パラメータについて、例えば緯糸密度、経糸張力、緯糸や経糸の糸種情報、緯入れ制御装置72や緯糸検知回路74に対する設定値のほか、経糸開口装置90に対する経糸開口パターンや緯糸選択態様などの情報が含まれる。作業者は、そのような設定器52に設定値を入力するに際し、設定値の表示欄に触れ、表示される図示しない選択メニュー、数値入力するためのテンキーなどの画面に触れることにより設定することができる。また設定器52には、上記した電子ドビー装置に対する制御機能、例えば後述されるレベリング機能を使用するか否かの選択情報が図示しない画面を操作することにより予め設定されている。
このような織機10には、経糸開口装置90が設けられる。本実施例では、経糸開口装置として、予め開口ステップ番号毎に作成され電気的に記憶された開口パターンに従って電気的な選択信号を出力し、各綜絖枠の開口運動を任意に選択可能である電子ドビー装置が設けられる織機を示す。
開口装置90は、大まかに言えば、織機の主軸42に連結される開口装置の駆動軸92と、開口コントローラ96と、開口コントローラ96からの出力を受けて各綜絖枠に設けられ電気信号により選択的に駆動するアクチュエータとしての選択ソレノイド97を有する開口駆動機構38とを含む。駆動軸92は、開口駆動機構38に機械的に連結されて主軸42の回転力を伝達して各綜絖枠運動の動力源として寄与する一方、2つのステップ信号S16,S17を発生するためのドグ93が一体に取付けられており、またドグ93の検出体を互いに角度的に遅延して検出するセンサ94,95が配置されている。センサ94,95からのステップ信号S16,S17は、開口コントローラ96に送られている。
開口コントローラ96には、各綜絖枠に対する運動態様(綜絖枠の上がり下がりの選択)のほか、多色緯入れや打込密度の切替に用いられる各種選択信号の出力態様などの情報が開口ステップ番号毎に設定器52を介して予め設定されており、これらの情報が内蔵される図示しない記憶器に格納されている。このため、開口コントローラ96は、センサ94,95からのステップ信号S16,ステップ信号S17により、駆動軸92(言い換えれば織機主軸42)の回転方向を検出し、その回転回数により開口ステップ番号を1ずつ増減させて開口パターンや選択パターンを更新し、これに基づいて図示しない電子回路を介し、綜絖枠毎に設けられるアクチュエータとしての選択ソレノイドに綜絖枠の運動態様の選択信号S18を出力するほか、緯糸選択信号などの各種選択信号S13を織機上の各回路に出力したり、電子ドビー装置の機構上によりやむを得ず存在する回転方向の反転禁止区間に突入したとき、回転方向の反転を禁止する旨の反転禁止信号S15a、S15bを主制御装置54に出力することができる。なお、主制御装置54からのレベリング指令S14を受けると、逆転用の開口パターンを現在の開口ステップ番号に対応するものに対して反転された反転パターンに基づいて信号S18を出力することにより、経糸開口状態を中口閉口状態に可能ないわゆるレベリング機能を備えている。
主制御装置54は、後述される第3実施例以降に対応される空織り信号S11を緯入れ制御装置72や緯糸検知回路74に供給している。この信号は緯入れを伴わない空織り運転期間にオン出力される信号であり、その詳細は後述する。
さて図3には、連続運転状態の織機において、緯入れミス信号S12が発生してから織機が停止され、その後糸修復などの必要な処理が行われてから織機が再運転されるまでの間の一連の処理フローを示している。また図4には、織機主軸角度θを横軸とし、各信号の出力態様や経糸の実開口パターンを縦軸として織機動作状態の移り換わりをチャートを用いて示している。図4についてより詳しくは、紙面上部より順に、経糸実開口パターンと、開口コントローラ96が正転用および逆転用にそれぞれ出力する各綜絖枠パターンのパターン番号とともに、センサ94,95からのステップ信号S16,S17の出力論理を示しており、また織機主軸の回転にともなう動作状態の角度的な移り変わりとして、緯入れミス信号S12が発生した角度(タイミング)を中心として、下方に向かって時系列的に示している。さらにその下部には、開口コントローラ96にレベリング指令S14が出力されたときにおける経糸実開口パターンと、開口コントローラ96が出力する逆転用綜絖枠パターンの出力論理をともに並べて示している。
ここで、緯入れをともなう高速運転された連続運転状態の織機において、停止原因の一つである緯糸の吹切れが発生してから、織機が再運転されるまでの処理を一例として説明する。また、緯糸吹き切れについて、いわゆる自動修復装置を用いるのではなく作業者自ら修復するものとし、作業者が到着されるまでの間織機は経糸開口状態をいわゆる中口閉口状態にして待機するものとする。さらに、詳細は後述する電子ドビーのレベリング機能を用いて中口閉口状態に待機させる例を一例として示している。なお、これら各動作は、主として主制御装置54が出力する各種指令により実行されるものであり、これらは主制御装置54や開口コントローラ96に格納される各制御プログラム(制御ルーチン)を実行することにより実現される。以降、図3および図4を用いて以下具体的に説明する。
先ず、図3を参照するに、織機は緯入れをともなう連続運転状態において、緯糸検知回路74が緯入れ糸の吹切れを検知して緯入れミス信号S12を角度310°で発生したとき(ST001)、主制御装置54は、複数入力される各種センサの信号から停台原因がいずれの要因によるものかを判別し(ST002)、各要因に対応する処理ステップに進むことになるが、本事例においては、緯糸吹き切れが発生したときを一例として想定し、対応する処理ステップST003に進むこととする。主制御装置54は、運転信号S6の出力を直ちにオフ状態にするとともに、所定期間にわたり制動信号S9を発生する(ST003)。これにより駆動回路64は、主軸モータ40に対する給電を中止し、また駆動回路66は、電磁ブレーキ48に給電してこれを作動状態にして、織機主軸42を停止させる。この結果、図4に示すように、織機主軸42は緯入れミスを検知してから約1回転後の320°で停止している。なお図示例には、経糸切れの処理ステップについてST0XXとして簡略的に示しているが、これ以外の停台原因に対応する処理ステップが複数用意されることは言うまでもない。
次いで主制御装置54は、織機10を織工待機状態にすべく、制動信号S9をオフ出力するとともに逆転信号S8をオン出力して、織機主軸42を経糸開口が中口閉口状態になる角度300°まで約1回転逆転させる(ST004)。ここで待機状態にする主軸角度は、綜絖枠が中口閉口位置となる主軸角度、すなわち開口装置90の設定クロスタイミングである300°であり、この逆転動作は、予め決定される所定の回転位相としての角度300°に至るまで織機主軸42を逆転させるルーチンを実行することにより実現される。なお、このようなクロスタイミングは、織機主軸42と駆動軸92との同期位置(角度)を調節することにより設定されるものであり、織物仕様により織機主軸角度に換算して前後数十°の範囲で適宜調節される。
ここで電子ドビー装置(開口コントローラ96)の動作について、簡単に触れておく。図4に示す例は、実開口パターンは3→4→5→6→1・・として6サイクル、つまり織機の6回転毎に1繰り返しの状態として設定されている。そしてセンサ94、センサ95からのステップ信号S16、ステップ信号S17の入力により正転方向回転時の開口パターンに寄与する正転枠パターンを、実開口パターンに対して1サイクル先行させて4→5→6→1→2・・として順次発生することにより実現される。また、織機主軸が逆転方向に回転されたとき、言い換えれば実開口パターンは紙面右側より左側に向かって6→5→4→3・・と変化されるとき、ステップ信号S16、信号S17の入力により逆転方向回転時の開口パターンに寄与する逆転枠パターンを、実開口パターンに対して1サイクル先行させて紙面右側より左側に向かって5→4→3→2・・として順次発生することにより実現される。なお、ソレノイド選択開口パターンの信号が出力される期間は、あるサイクルの閉口動作から次のサイクルの開口動作に移動する所定の期間つまり経糸のクロスタイミングの近くにのみ限られている。
またセンサ94、センサ95からのステップ信号S16、ステップ信号S17は、開口コントローラ96から出力される反転禁止信号S15a,S15bの元になっている。なぜなら、電子ドビー装置について、綜絖枠運動の選択機構上、駆動軸92換言すれば織機主軸42の回転方向の反転が禁止される区間が存在し、そのような禁止区間において駆動軸92の回転が反転されると柄ズレ(綜絖枠の選択ミス)が発生するからである。このため開口コントローラ96は、そのような反転禁止信号S15a,S15bを、主制御装置54からの運転信号S6,正転信号S7、および逆転信号S8の出力がオンされたことにより回転方向を判定するとともに、ステップ信号S16またはステップ信号S17と同期する信号を判定した回転方向により選択的に出力することにより行われる。より具体的には、正転方向に回転されると、逆転方向への反転禁止信号S15bのみがステップ信号S17に同期して出力され、また逆転方向に回転されると、正転方向への反転禁止信号S15aのみがステップ信号S16に同期して出力される。反転禁止信号S15a,S15bは、主制御装置54に入力され、主制御装置54が手動操作ボタン操作時や自動的な回転動作開始時に、これらの信号入力状態に応じて織機主軸の回転の反転が発生しないかを監視し、仮にそのようなときには回転動作を禁止して、上記柄ズレを防止する。
図6(A)は、製織用の通常開口パターンの設定状態の一例を6つの綜絖枠H1,H2,‥、H6との関係で示している。同図で×印部分は、綜絖枠の上方位置を示しており、また空白部分は、綜絖枠の下方位置の状態を示している。パターン「1」からパターン「6」に変化する過程で、2つの綜絖枠が下方位置に設定され、他のものが上方位置に設定されるパターンとなっている。
開口コントローラ96がレベリング動作時に織機主軸を1回転だけ逆転させることでレベリング状態にするが、それに先だって現在のソレノイド選択パターンを現在の実開口パターンの反転パターンに変更する。図面中、反転パターンは、数字の上にバーを付して表示している。図6(B)は、通常開口パターンに対する反転パターンを示している。ここでいう反転パターンは、通常開口パターンの綜絖枠の上下の関係を逆に設定することを意味する。
そこで、主制御装置54は、レベリング指令S14を開口コントローラ96に出力して、開口コントローラ96に選択ソレノイド97に出力する信号すなわちソレノイド選択開口パターンを反転させるとともに、制動信号S9をオフ出力しつつ逆転信号S8をオン出力して織機主軸を約1回転逆転させる。このときの1回転の逆転によって、実開口パターンは反転パターンに従って変化する。これによって、全ての綜絖枠H1,H2‥H6が上下方向に移動する。すなわち通常の実開口パターン「5」では、4つの綜絖枠H1,H4,H5,H6が上方に設定されており、他の2つの綜絖枠H2,H3が下方に設定されているが、1回転の逆転過程で、反転パターン「5」によって、上側の綜絖枠H1,H4,H5,H6が下側に移動し、また下側の綜絖枠H2,H3が上方に移動するため、上下の綜絖枠が互いに交錯する織機主軸角度付近(角度300°)で、全ての綜絖枠H1,H2,‥H6がレベリング位置つまり上下の中間に設定できることになる。なお、このような機能は6サイクルで1繰り返しの通常開口パターンに限らず、平織り開口パターンやその他の開口パターンでも同様である。
そこで図3に戻り、主制御装置54は、処理ステップST004にて織機主軸を逆転させるに際し、織機主軸角度に換算してクロスタイミングの1/2回転前(180°前)よりレベリング指令S14を開口コントローラ96に出力してレベリング機能を実行させ、これにより現在の開口パターンに対して反転される開口パターンを選択ソレノイド97に出力しつつ制動信号S9をオフ出力する一方、逆転信号S8をオン出力して織機主軸を低速で逆転させる。そのような逆転により主軸角度θが角度300°に達すると、綜絖枠19,19が全て中間位置に移動され経糸開口の中口閉口状態(中口レベリング)が実現される。さらに主制御装置54は、織機主軸42を停止させ、さらに作業者に待機状態であることを報知すべく図示しないタワーランプを点灯させたり設定器52の表示画面にその旨の表示を行わせる(ST005)。
作業者は停台した機台に到着し、吹切れ緯糸の修復や起動位置までの逆転動作などを手動で行なうことになる。しかし先ず作業者は、経糸開口を上記した反転パターンに基づく中口閉口状態から正規の開口パターンに基づく開口状態に戻すべく、寸動ボタン82を操作して織機主軸42を低速正転させる(ST006)。このときの手動正転を終了する角度について、正規の開口パターンによって綜絖枠駆動が開始される時期であれば良く、具体的には電子ドビー装置における回転方向の反転禁止区間を脱出するまで(具体的にはステップ信号S16に同期出力される信号S15bがオフされる210°以降まで)主制御装置54が正転信号S7を継続的に出力して織機主軸42を低速正転させる。そのような反転禁止区間からの脱出動作について、開口コントローラ96より発生される反転禁止信号S15a,S15bの出力状態の切換りを検出することにより自動的に終了させることができる。
次いで、作業者は逆転ボタン83を操作し、上記した吹切れ緯糸が織前22に露出されるまで(具体的には織機主軸が180°に達するまで)主制御装置54が継続的に逆転信号S8を出力して織機主軸を低速逆転させ、吹切れ緯糸を経糸開口内から除去する(ST007)。そして、作業者は、逆転ボタン83を再び操作して、所定の運転操作開始位置である300°まで織機主軸42を低速逆転させる(ST008)。そして作業者は、運転ボタン81を押下すると、主制御装置54は制動信号S9をオフ出力しつつ運転信号S6をオン出力することにより、織機主軸42は起動されて高速正転状態になるとともに緯入れを開始し(ST009)し、その後緯入れを連続的に遂行する連続運転状態に至る(ST010)。このようにして停止信号としての緯入れミス信号S12が発生されてから織機が再運転されるまでの一連の処理が実行される。
さて、上記図3で示したように、経糸開口を中口閉口状態にするための処理として、処理ステップST004からST005に至るまでの間に実行される処理、すなわち織機主軸の低速逆転動作および開口コントローラ96のレベリング動作を実行させる処理が、本件発明の前提である「プログラムを実行してプログラムに対応される所定の回転位相に至るまで織機主軸を回転させる動作」に対応している。そして、本発明の第1の実施例として、主制御装置54は、ルーチンの実行にともなって上記ST004における自動低速逆転中に、織機上で何らかの異常が発生したことにより、主制御装置54は、直ちにそのルーチンの実行を中止して織機主軸42の低速逆転を停止させ、作業者が来るまで待機状態にするとともに、本実施例では、復帰のために、作業者の逆転ボタン83の操作により、先に目標としていた所定の回転位相としての角度300°まで低速逆転させて先に中止されたレベリング処理動作のための逆転処理を完遂させる例である。その詳細処理について、図4および図5を用いて、以下より具体的に説明する。
先ず図4を参照するに、連続運転されている織機で、実開口パターンが「4」のサイクルにおいて緯入れ中に停止要因としての緯糸吹き切れが発生したときを想定する。緯糸検知回路74は、これを検知して緯入れミス信号S12を出力し、また、この信号が停止信号として入力される主制御装置54は、制動信号S9をオン出力し運転信号S6をオフ出力して織機主軸42を停止させるため、図4に示すように、停止信号が発生されてから約1回転後の角度320°で停止した状態にある。そこで主制御装置54は、レベリング指令S14を開口コントローラ96に出力しつつ織機主軸を約1回転前の中口閉口状態となるクロスタイミングである300°まで逆転させるいわゆるレベリング動作ルーチンを実行する。
このルーチンについて、詳しくは図5に示す処理フローに従って処理される。より詳しくは、レベリング動作ルーチンが開始されると、主制御装置54は、レベリング指令S14をオン出力するとともに、駆動回路64に対し逆転信号S8を出力して織機主軸42を低速逆転を開始させ(ST021)、次ステップである異常信号発生の監視処理(ST022)に進む。処理ステップST022では、織機上で何らかの異常発生にともなう異常信号が出力されなければそのまま処理ステップST023に進む。そして主制御装置54は、織機主軸角度θが目的とする1回転前の角度300°に達したか否かを監視し(ST023)、判定結果が「NO」のときには、処理ステップST022に戻って異常信号S0の発生の監視ならびに主軸角度θの停止位置への到達監視を、以降継続的に行う。そして主軸角度θが目標とする角度300°に達したことにより次ステップに進み、主制御装置54はレベリング指令S14をオフ出力するとともに逆転信号S8をオフ出力して織機主軸を停止させる結果、経糸開口を中口閉口状態(すなわち中口レベリング状態)にして一連の処理を完遂し(ST024)、その後図3に示した処理ステップST005に移行して織機10を織工待機状態に移行させる。
ここで織機主軸角度θが角度300°に逆転されるまでの間(つまり処理ステップST021〜ST023の間)に、上記異常信号として、セフティガードセンサ43が何らかの障害物を検出して異常信号S0を発生したときを想定する。主制御装置54は、処理ステップST022の判定処理において、異常信号S0の発生により「YES」と判定して次ステップに進み、制動信号S9をオン出力しつつ逆転信号S8を直ちにオフ出力して、織機主軸42を直ちに停止させるとともに、図示しないタワーランプや設定器52における表示画面等により、レベリング動作中に異常が発生した旨の表示を行って作業者に修復を促す(ST025)。この結果図4に示すように、織機主軸42は主軸角度θが角度150°で停止している。そして主制御装置54は、手動操作ボタンの入力待ち状態となっており、作業者は、中断されたレベリング動作を先ず完遂させるべく逆転ボタン83を操作する(ST026)。そこでこの実施例では、制御器としての主制御装置54が、織機の操作ボタンとしての寸動ボタン82および逆転ボタン83のうち、前記ルーチン実行中における主軸の回転方向に対応する操作ボタンからの操作信号のみを前記所定の回転位相に至るまで有効とする、以下処理ステップST027以降の処理を実行する。
先ず操作ボタン信号S1ないしS5のうちいずれか信号が入力されると、主制御装置54はその操作ボタン信号の種類を判別し(ST027)、仮にその信号が逆転ボタン83以外のときには、設定器52に対してエラー表示させるべく対応する指令を出力して必要なエラー表示を行わせ(ST028)、そのまま処理ステップST026に戻り、作業者の認識を促しつつ再度の操作ボタン入力待ち状態になる。これに対し、処理ステップST027の判別工程にて、その信号が逆転操作信号S3のとき、次ステップに進んで主制御装置54は制動信号S9をオフ出力しつつ逆転信号S8をオン出力して主軸42の低速逆転を開始し(ST029)、さらに逆転操作信号S3がオフされていないか(換言すればオン状態が継続されているか)を判定し(ST030)、仮に逆転操作信号S3がオフされているとき(つまり判定結果が「YES」のとき)、次ステップに進みレベリング指令S14、逆転信号S8をオフ出力しつつ制動信号S9をオン出力して織機主軸42を直ちに停止させ(ST031)、処理ステップST026の操作ボタン信号の入力待ち状態に戻る。これに対し、処理ステップST030にて、逆転操作信号S3がオン出力されているとき(つまり判定結果が「NO」のとき)、先に説明したST023と同様の判別処理ステップST032に進んで、主軸角度θが所定の回転位相である角度300°に到達したか否かの判定処理を行い(ST032)、最終的に目標となる角度300°に達して判定結果が「yes」と判定されることにより次ステップに進んで、制動信号S9をオン出力しつつ逆転信号S8およびレベリング指令S14をそれぞれオフ出力して織機主軸42の低速逆転を終了し(ST033)、そのような復帰ルーチンの実行を完了することになる。この結果、織機は、図4に示すように、当初レベリング動作させるルーチンが目的としていた角度300°で停止され、これら一連の処理を終了する。
このように、上記中止された回転工程が完遂されて経糸開口が中口閉口状態にされた織機に対し、作業者は、図3の処理ステップST006以降の処理を順次実行することになる。より具体的には、作業者は、寸動ボタン82を操作して、織機主軸42が電子ドビー装置における回転方向の反転禁止区間を脱出する角度以降まで(具体的には主軸角度θが角度210°以降まで)正転させてレベリング状態を解除し、次いで作業者は逆転ボタン83を操作し、織機主軸42を上記吹切れ緯糸が織前に露出されるまで(具体的には織機主軸θが角度180°に達するまで)低速逆転させて吹切れ緯糸を経糸開口内から除去し、その後作業者は逆転ボタン83を再び操作して、所定の運転操作開始位置である角度300°まで織機主軸42を低速逆転させ、最終的に運転ボタン81を押下して織機を再運転する。
以上のように、停止信号の発生により織機主軸42の回転を停止させた後、レベリング指令S14を出力しつつ織機主軸を自動的にクロスタイミングを考慮して予め設定された所定の回転位相としての角度300°まで自動的に低速逆転させることにより、経糸開口を中口閉口状態にして織工待機状態にする織機で、そのようなレベリングを遂行するためのルーチンの実行中に異常信号が入力されると、織機主軸を停止させて前記ルーチンの実行を中止する。そして織機主軸42が主軸角度θが前記所定の回転位相に回転されるまでの間にわたり、織機の操作ボタンとしての低速正転ボタンおよび低速逆転ボタンのうち前記ルーチン実行中における主軸の回転方向に対応する低速逆転ボタンとしての逆転ボタン83からの逆転操作信号S3のみを前記所定の回転位相としての角度300°に至るまで有効とする。このため、作業者が仮に逆転ボタン以外の操作ボタン、例えば運転ボタン81,寸動ボタン82を操作しても、主制御装置54は、これら操作信号に対し主軸の正転させる処理をしないため、作業者は必然的に角度300°に達するまで逆転ボタンを操作することになるから、レベリング動作を完遂することができる。この結果、従来発生しがちな柄ズレ等の不都合が確実に防止される。
さて、上記した第1実施例では、レベリング動作のためのルーチンの実行中に、何らかの異常信号が発生して当該ルーチンの実行を中止したとき、操作ボタンからの操作信号を制限する例を示したが、これに限らず、上記した低速逆転動作を、復帰操作ボタン84を操作することにより、織機主軸を自動的に逆転させてこれを実現してもよい。以下第2実施例は、上記第1実施例に対し、さらに復帰ボタン84の操作により織機主軸42を所定の回転位相としての角度300°に至るまで自動的に低速逆転させる機能が追加された例である。
そこで図5の処理ステップST026以降の処理について、部分的に変更・追加された処理フローである図7を用いて、第2の実施例を説明する。図5との相違点について大まかに言えば、操作信号の判別処理、および織機主軸42の角度300°への低速逆転が自動処理となる点で相違する。異常信号の発生によりレベリング動作が中断された状態で待機状態となっている織機に対し、主制御装置54は、手動操作ボタンの入力待ち状態になっており、作業者は手動操作ボタンとして復帰ボタン84を操作することになる(ST026)。このため主制御装置54は、操作信号の入力により、次ステップに進んで操作信号の判別処理を実行する(ST041)。この処理ステップST041では、入力された操作信号により、処理フローを分岐させるものであり、第1の実施例のように、逆転操作信号S3が入力されたときには、図5に示した処理ステップST029に進んで逆転ボタンの継続的操作による低速逆転処理が行われ、仮に逆転ボタン83および復帰ボタン84以外の操作ボタンからの操作信号が入力されたとき(具体的には、運転操作信号S1、寸動操作信号S2や停止操作信号S5が入力されたときには)、図5の処理ステップST028に進んで、操作ボタンのエラー処理に移る(すなわち織機主軸の回転を行わない)。
これに対し、先の処理ステップST026で復帰ボタン84の操作によって復帰操作信号S4が入力されたとき、主制御装置54では、以降自動的に復帰させる際の復帰ルーチンである処理ステップST042からST046を順次実行することになる。より具体的には、制動信号S9をオフ出力しつつレベリング指令S14および逆転信号S8をともにオン出力することにより低速逆転を開始し(ST042)する。そして主制御装置54は、さらに次のステップに進み、図5における処理ステップST022、ST023と同様の処理である、異常信号の発生の有無を判定する処理ステップST043、および主軸角度が先のレベリング動作時に目標としていた停止角度300°に到達したか否かを判定する処理ステップST044をそれぞれ実行し、主軸角度θが角度300°に達したことにより、次ステップに進んで制動信号S9をオン出力しつつレベリング信号S14および逆転信号S8をオフ出力することにより織機主軸の逆転を停止させ(ST046)、丸英字Aに示されるフローにより、図5の該当箇所に移行して一連の復帰のための自動逆転処理を終了する。このように図5および図7の処理を終えることにより、処理ステップST041の遂行にともなう、特定の操作信号のみを有効とし、それ以外の操作信号を無効とする処理を解除することができる。
なお、復帰のための低速逆転中において、先の処理ステップST043でセフティガードセンサ43等からの異常信号S0が発生した旨の判定を行ったとき、図5における処理ステップST025と同様に、制動信号S9をオン出力しつつレベリング信号S14および逆転信号S8をオフ出力することにより、織機主軸の逆転を停止させ(ST045)、丸英字Bに示されるフローに従って、図5の処理ステップST026に戻って操作ボタンの入力待ち状態となるため、再度作業者の操作を待つことになる。
以上のように、第2の実施例では、先のルーチンの実行中に発生された異常信号によりレベリング動作が中止されたとき、作業者は復帰ボタン84を操作することにより、主制御装置54は、復帰のためのルーチンを実行して、織機主軸を先のルーチンが目的としていた所定の回転位相としての角度300°まで自動的に低速逆転され、先に中断されたレベリング動作を完遂できる。従って上記第1の実施例と同様、従来発生していた手動復帰において発生しがちであった柄ズレ等の問題を防止できる。しかも、第1実施例に比べ、作業者は実機の状況を把握して復帰のための回転方向を判断する必要がなくなるため、作業者の負担がより軽減されるため、より好適である。
さて上記実施例では、織機10を織工待機状態する際の織機主軸42の低速逆転動作中に、異常信号S0の発生による回転中止に対する復帰操作を対象とする例を具体的に示した。しかし、それ以外の主軸42の回転工程の中止時に対する復帰操作にも適用可能である。例えば、上記織機では、経糸開口を中口閉口状態にして織工待機状態になったあと、作業者は、寸動ボタン82を操作して織機主軸42を所定角度まで低速正転し、先のレベリング状態を解除している。しかし、そのような復帰のための低速正転を自動化すべく、復帰ボタン84からの復帰操作信号S4の発生により先のルーチンとは別のルーチンを実行し、織機主軸42を上記反転禁止期間から脱出された角度で自動的に停止させることも考えられる。そのような低速正転中の異常信号S0発生にともなう中止に対し、復帰ボタン84の操作により上記第1実施例に類似する別の復帰のためのルーチンを実行して、主軸角度θが上記所定角度である210°まで自動的に低速正転させるようにしてもよい。あるいは上記中断されたレベリング動作の復帰を完遂させるべく、上記所定角度に達するまでの間にわたり、第2の実施例のように作業者が行う押しボタン操作について、反転禁止信号S15a,S15bの出力がオフされるまでの間、寸動ボタン82からの寸動操作信号S2のみを有効とし、これ以外の操作ボタンからの信号(例えば逆転ボタン83からの逆転操作信号S3)を無効にすることにより、作業者に確実にレベリングの解除操作を実行させることも可能である。
上記2つの実施例では、プログラムとしてのルーチンの実行による織機主軸42の自動回転動作について、織機の連続運転中に織機を停止させる際にその対象となる停止信号として、緯糸吹き切れにより発生される緯入れミス信号S12の場合を例示したが、これ以外の停止信号を上記動作の対象としてもよい。そのような停止信号として、これ以外の緯入れミス信号すなわち反緯入れ側に緯糸の先端が到達しないことによる緯入れミス信号、あるいは経糸切れ信号や耳糸切れ信号、停止ボタン85からの停止操作信号S5、あるいは織機のトラブル信号などの信号とすることもできる。また、主軸を所定回転位相まで回転させるプログラムの実行を中止する際の異常信号について、上記実施例ではセフティガードセンサ43からの異常信号S0としているが、そのような信号に限らず、停止ボタン85からの停止操作信号S5、織機上の駆動装置や機械装置での異常により出力されるトラブル信号などを対象とし、これらの信号により自動回転動作を中止するようにしてもよい。
また、レベリング動作時における織機主軸の逆転回数について、上記した1回転未満のものに限らず、1回転以上の逆転動作をともなうものも考えられる。なぜなら、このような逆転回数は、先の緯入れミス信号発生してから織機主軸の回転が停止されるまでの回転量に依存しており、織機回転数がより高速に設定される場合には、1回転以上の惰走回転を経て停止されることがあるからである。このような場合、処理ステップST044等における低速逆転を停止させる際の織機主軸の停止制御については、後述される第3実施例以降と同様に、目標となる主軸角度の通過回数をカウントする処理を採用することにより実現すればよい。
また、2つの実施例では、停止信号の発生により織機主軸の回転を停止させた後、織機10を織工待機状態にする際に、主軸42の回転をともなうルーチンを実行して経糸開口を中口閉口状態にしているが、本発明が対象とするルーチンは、そのような織機停止時に実行されるものに限らず、緯入れ運転が開始されるまでの間に実行されるものにも適用可能である。
例えば、織機の運転開始直後における筬打ち力が低下した状況下で、緯入れ糸を筬打ちすることで発生する織段を防止するために、通常と異なる起動方法をとる織機に適用することができる。より詳しくは、織機の運転開始時に、所定の起動開始位置まで織機主軸42を低速正転あるいは低速逆転させ、その後織機主軸を起動(高速正転)させて、所定期間緯入れを伴わない空織り運転を行って筬打ち力を回復し、その後緯入れをともなう通常運転に移行される、いわゆる空打ちスタートと呼ばれる起動方法を用いる織機に適用できる。そのような織機を空打ちスタートで起動する際に実行される起動プログラム(起動ルーチン)も、本発明が対象とする制御プログラム(制御ルーチン)として捉えられる。
以下に示す第3の実施例は、そのような空打ちスタートの一例として、織機主軸の起動(高速正転)処理に先立って行われる織機主軸の低速回転が、逆転方向に回転される、いわゆる逆転をともなう空打ちスタートの例である。なお、停止原因が発生してから織機が再運転されるまでの処理フローについて上記図3に対し、連続運転中に緯入れミス信号が発生してから(ST001)、待機位置まで逆転する(ST004)までの処理ステップについては同じであるが、第1ないし第2実施例のような現在の開口パターンに対して反転した開口パターンを用いた中口閉口状態にするいわゆるレベリング動作を実行しない点で相違する。このため、本実施例では、図3において作業者がレベリング状態を解除するために実行する低速正転操作(ST006)が省略されている。また、緯入れミス糸を除去し(ST007)織機の運転操作開始位置まで逆転させる(ST008)までの処理ステップについては同じであるが、運転操作したとき(ST009 )の織機主軸回転動作の細部について相違する。このため、以降の実施例については、図4と同様の織機動作状態の移り換わりを図8に示すチャートを用いて説明する。
図8を参照するに、織機は緯入れをともなう連続運転状態において、実開口パターンが「4」のサイクルにおいて緯糸検知回路74が緯入れ糸の吹切れを検知して緯入れミス信号S12を出力したことにより、主制御装置54は、運転信号S6をオフ出力にするとともに、制動信号S9をオン出力する。これにより駆動回路64は、主軸モータ40に対する給電を中止し、また駆動回路66は、電磁ブレーキ48に給電してこれを作動状態にし、織機主軸42を停止させる。これにより、例えば図8に示すように織機主軸42は、緯入れミス信号S12を出力してから約1回転後の角度320°で停止している。次いで主制御装置54は、織機10を織工待機状態にすべく、制動信号S9をオフ出力しつつ逆転信号S8をオン出力して織機主軸42を経糸開口が中口閉口状態になる角度まで逆転させて織工待機状態にする一方、図示しないタワーランプを点灯させるなどして、当該機台に緯入れミスが発生した旨の報知を行う。(この実施例では第1〜第2実施例のようにレベリング動作は実行しない。)当該機台に到着した作業者は、逆転ボタン83を操作し、主制御装置54が同様に制動信号S9をオフ出力しつつ逆転信号S8をオン出力して、織機主軸42を当該ミス糸が露出する実開口パターンが「4」の角度180°まで低速逆転させ、吹切れ緯糸を織前から除去する。その後逆転ボタン83を操作し、主制御装置54が同様に制動信号S9をオフ出力しつつ逆転信号S8をオン出力して運転操作開始位置であるクロスタイミングである実開口パターン「3」が終了される角度300°までさらに低速逆転させ、その後作業者は運転ボタン81を押下して織機10を再運転することになる。
そこで、運転ボタン81が押下されて運転操作信号S1が入力されると、主制御装置54は、図9に示される織機起動のためのルーチンを実行して逆転をともなう空打ちスタートを実行して織機を再運転する。ここで「逆転をともなう空打ちスタート」について、空織り運転期間の終了時期に定められる前記第1の角度まで緯入れを伴わないで織機主軸42を高速正転させることにより、織前に対する筬打ち力を高めた状態にする処理を行うとともに、そのような高速正転に先立ち、上記空織り運転期間を考慮して定められる第1の回転位相(180°)まで織機主軸42を低速逆転させる処理を実行するものである。
言い換えれば、先ず織機主軸42を現在の運転開始位置の300°から約1回転半逆転された位置(第1の回転位相である)である180°まで低速逆転させ、次いで織機主軸42を起動(高速正転)させつつ上記逆転量以上正転された(所定の回転位相としての)角度300°まで緯入れを伴わないいわゆる空織り運転を行ってこの間の起動(高速正転)にともなう加速により筬打ち力を高めた状態にし、その後緯入れを開始して連続運転に移行するように運転される。この場合、「プログラムを実行してプログラムに対応する所定の回転位相に至るまで織機主軸を回転させる」動作には、上記低速逆転、ならびに空織り運転をともに含んでいる。以下第3の実施例では、上記低速逆転を実行するためのルーチンの実行中に何らかの異常が発生したとき、織機10の主軸42を再運転可能な位置に復帰させるまでの処理するまでの過程を一例として説明する。
ここで織機10では、先に発生された緯入れミス糸を除去し、織機10を運転操作位置であるクロスタイミング300°まで逆転された状態にあることを想定する。(ここに至るまでの処理について、既に説明済につきこれらの説明を省略する。)そこで作業者は、運転ボタン81を押下することにより、主制御装置54は、織機起動のためのルーチンとして図9に示される一連の処理フローを開始する。図9を参照するに、運転ボタン81を押下して運転操作信号S1を入力することにより、主制御装置54は、制動信号S9をオフ出力しつつ逆転信号S8をオン出力して織機主軸42の低速逆転を開始させ(ST051)、次ステップに進んで織機上で異常信号の発生を監視する処理を行い(ST052)、異常信号S0や停止操作信号S5の発生がなければ、主軸角度θの第1の回転位相である角度180°への到達判定の処理を行う(ST053)。この判定処理について、先の逆転量の設定により上記1回転半前の180°が停止位置になるため、この判定処理は、180°の通過回数をカウントすることにより行うことができ、より詳しくは、角度180°を「2」回通過したことを検知すると、判定結果が「yes」となって逆転停止位置に到達したと判定し、次処理ステップST054に進むことになる。
これに対し、主制御装置54は、この主軸角度θに達していなければ判定結果「NO」としてもとの処理ステップST052に戻り、異常信号S0発生の監視処理ならびに主軸角度θの停止位置への到達監視の各処理ステップを繰り返すことになる。このような低速逆転により図8に示すように目標とする約1回転半後の角度180°に達すると、主制御装置54は、制動信号S9をオン出力しつつ逆転信号S8をオフ出力して低速逆転を停止し(ST054)する。そして、主制御装置54は、巻取制御回路68や送出制御回路70を介し、いわゆるキックバック動作と呼ばれる織前位置を補正する動作を必要に応じて実行させ、次いで運転信号S6をオン出力して織機主軸42の起動(高速正転)を開始させるとともに、空織り信号S11をオン出力して緯入れを伴わないいわゆる空織り運転状態にし(ST055)、次ステップに進む。そして、織機主軸42が空織り運転終了する位置(角度)に達したか否かの判定処理ステップであるST056を行う。処理ステップST056について、より具体的には、主軸角度θがその後の緯入れを開始するタイミングである約1回転半弱回転後の角度300°を「2」回通過したことを検出することにより行われる。この判定処理において、仮にこの状況に達していなければ(すなわち判定結果が「NO」であるとき)、そのまま織機10の起動を維持しつつその判定処理を継続し(ST056)、また起動を開始してから約1回転半後の空織り運転を終了する上記所定の回転位相としての角度300°に達したことにより、次ステップに進んで空織り信号S11をオフ出力して緯入れ装置および緯糸検知回路を作動状態にして緯入れを開始して(実質的にはその後角度0°を通過したことにより)通常運転に移行し(ST057)、一連の空打ちスタートによる織機起動のためのルーチン処理を終えることになる。
さて、処理ステップST051の実行により、低速逆転が開始されてから目標となる1回転半弱後の第1の回転位相としての角度180°に逆転されるまでの間に、例えば、上記した第1の実施例時と同様、異常信号として、セフティガードセンサ43からの異常信号S0が発生して角度180°を1回通過した状態の実開口パターンが「3」の角度330°で停止されたことを想定する。このような角度180°の通過状態(つまり通過回数のカウント値「1」)は、制御データとして記憶器62に記憶させ、後の復帰のためのルーチンの処理ステップで用いられる。この場合、主制御装置54は、処理ステップST052より分岐される次ステップに進んで、低速逆転を直ちに停止する結果、例えば図8に示すように320°で停止され、当該ルーチンの実行を中止している(ST058)。なお主制御装置54は、図示しないタワーランプを点灯させ、あるいは発生した異常情報などを設定器52の画面を介して表示するなどにより作業者に報知する。なお設定器52に表示させる情報として、空打ちスタートのうちいずれの工程で異常が発生したか、それを復帰させる際の手順などの詳細情報を表示させることが望ましい。
そこで到着した作業者は、逆転ボタン83を操作すると(ST059)、主制御装置54は、操作されたボタンが逆転ボタン83であるか否かを入力される操作信号から判定し(ST060)、仮に逆転操作信号S3を除く操作信号S1〜信号S5のいずれかが入力されているとき(すなわち判定結果「NO」のとき)、設定器52の表示画面上にエラー操作である旨の図示しない表示をしつつその信号に対する織機主軸の回転動作を不処理として(ST061)、その後処理ステップST058に戻って再び手動操作ボタン信号の入力待ち状態となる。
これに対し、先の処理ステップST059にて操作されたボタンが逆転ボタン83のとき(すなわち判定結果が「YES」のとき)次ステップに進み、主制御装置54は、先のルーチンとは別のルーチンである、以下処理ステップST062からST068までの処理を実行することになる。
より詳しくは、先のルーチンの中止時に記憶された角度180°の通過回数を記憶器62から読み出しつつ、復帰のための低速逆転を停止させるための角度180の通過回数を、先のルーチンが目標としていた通過回数「2」と、上記記憶器62から読み出した値「1」との減算結果である閾値を「1」と決定する一方、制動信号S9をオフ出力しつつ逆転信号S8をオン出力して、図8に示すように先のルーチンが目標としていた第1の回転位相としての角度180°までの低速逆転を開始する(ST062)。次いで、主制御装置54は、主軸角度θが角度180°を通過した回数をカウントすると共にそのカウント値が上記決定された閾値「1」に達したか否かにより、先に中断されたルーチンが目標としていた逆転位置である180°に達したか否かを判定し、上記角度180°の通過カウント値が上記決定された閾値「1」に達したことにより、制動信号S9をオン出力しつつ逆転信号S8をオフ出力して織機主軸42の低速逆転を停止する(ST063)。この結果、織機主軸は先の運転操作開始時から約1回転半逆転された状態の角度180°で停止される。以上のようにして先に中止された空打ちスタートにおける低速逆転処理を完遂して、特定の操作信号である逆転操作信号S3のみを有効とし、それ以外の操作信号を無効とする処理を解除する。なお、上記処理ステップST063における処理について、本来ならば第1実施例の図5における処理ステップST030のように、逆転操作信号S3がオフされていないか判定する処理や、ST031のような信号S3がオフされたときの処理およびその後操作ボタンの入力待ち状態に戻す処理も当然実行されるが、説明の都合上それら細部の図示を省略している。
その後、主制御装置54は、次ステップに進んで、再び操作ボタン信号の入力待ち状態になり、これに対し作業者は寸動ボタン82を操作することになる(ST064)。これに際し、設定器52の画面などを通じてさらに復帰のための寸動ボタン操作を促す旨のメッセージ情報を表示させればより好ましい。そして、操作信号が入力されると主制御装置54は、次ステップに進み、入力された操作信号が寸動操作信号S2であるか否かを判定し(ST065)、仮に寸動操作信号S2を除く操作信号S1〜信号S5のいずれかが入力されているとき(すなわち判定結果「NO」のとき)、設定器52の表示画面上にエラー操作である旨の図示しない表示をしつつその信号に対する織機主軸の回転処理を不作動として(ST066)、その後処理ステップST064に戻って再び手動操作ボタン信号の入力待ち状態となる。
これに対し、先の処理ステップST064にて入力された操作信号が寸動操作信号S2のとき(すなわち判定結果が「YES」のとき)、次ステップに進み、空織り運転が終了される角度、つまり所定の回転位相としての実開口パターンが「3」の角度300°への低速正転を開始する(ST067)。より詳しくは、先に中止されたルーチンの実行中には空織り運転が全く行われない状態で終了されているため、復帰のための低速正転を停止させるための角度300°の通過回数には、先のルーチンが目標としていた通過回数「2」がそのまま決定する一方、制動信号S9をオフ出力しつつ正転信号S7をオン出力して、図8に示すように先のルーチンが目標としていた角度300°までの低速正転を開始する。次いで、主制御装置54は、主軸角度θが角度300°を通過した回数をカウントするとともに、そのカウント値が上記決定された閾値「2」に達したか否かにより、先に中断されたルーチンが目標としていた角度である角度300°に達したか否かを判定し、上記角度300°の通過カウント値が上記決定された閾値「2」に達したことにより、制動信号S9をオン出力しつつ逆転信号S8をオフ出力して織機主軸42の低速正転を停止する(ST068)。この結果織機主軸を低速正転が開始されてから約1回転半正転後の、所定の回転位相としての実開口パターンが「3」が終了される角度300°で停止した状態になる。
以上のようにして、先に中止された空打ちスタートにおける空織り運転に対応する主軸の正転処理を低速正転により完遂し、特定の操作信号である寸動操作信号S2のみを有効とし、それ以外の操作信号を無効とする処理を解除する。このようにして、織機主軸角度を、先の運転操作開始位置に相当する位置に戻しているため、その後作業者は、問題がなければ再度運転ボタン81を押下して、織機10を再運転することになる。
その後の再運転操作について、詳しくは、運転操作信号S1の入力により、主制御装置54は、起動ルーチンを再び実行して織機主軸42を現在の運転開始位置から約1回転半前の実開口パターンが「2」の角度180°まで低速逆転させ、その後巻取制御回路68や送出制御回路70を通じいわゆるキックバック動作と呼ばれる織前位置を補正する動作を必要に応じて実行させ、その後織機主軸42の起動(高速正転)を開始しつつ空織り信号S11をオン出力して緯入れを伴わないいわゆる空織り運転状態にして筬打ち力を高めた状態で筬打ちし、さらに主軸42の起動を開始してから約1回転半後の空織り運転を終了する角度300°に達したことにより、空織り信号S11の出力をオフにして緯入れ制御装置72および緯糸検知回路74を作動状態にして(より正確にはその後の筬打ちタイミングである角度0°を通過したあとより)緯入れ開始して通常運転に移行し、一連の起動ルーチン実行による織機10の起動処理を終える。
なお、処理ステップST068の処理について、上記処理ステップST063の場合と同様、本来ならば寸動操作信号S2がオフされていないか判定する処理や、信号S2がオフされたときの処理およびその後操作ボタンの入力待ち状態に戻す処理も実行されるが、説明の都合上より細部の図示を省略する。
以上のように、空打ちスタートによる起動が異常信号の発生により中止された織機に対し、主制御装置54は、まず、操作信号に対して逆転操作信号S3のみを、前記第1の回転位相としての角度180°まで有効とする。これにより作業者は、必然的に逆転ボタン83を操作することになって、織機主軸を第1の回転位相としての角度180°まで低速逆転させる処理が完遂される。次いで、主制御装置54は、操作信号に対して寸動操作信号S2のみを、前記所定の回転位相としての角度300°まで有効とする。これにより作業者は、必然的に寸動ボタン82を操作することになって、織機主軸を所定の回転位相としての角度300°まで低速正転させる処理が完遂される結果、織機主軸を当初の運転操作を開始した回転位相に戻すことができる。従って、従来発生しがちな1回転以上ずれた回転位相より誤って運転操作することに起因する柄ズレ等の不都合が確実に防止される。
上記第3の実施例では、空打ちスタートの低速逆転工程において異常信号が発生されたときに対する復帰処理を例として示しているが、空織り運転工程において異常信号が発生されたときに対しても同様に処理できる。より具体的には、図9の処理フローにおいて、処理ステップST055からST056の間に、処理ステップST052と同様の異常信号の発生を監視する処理ステップが追加されるとともに、異常信号が発生されたときに対する処理ステップが追加される。追加される処理ステップについて、具体的には、織機主軸の高速正転を停止するとともに空織り運転中の目標となる所定の回転位相としての角度300°の通過回数情報を記憶する処理ステップ、手動操作ボタン信号の入力待ち状態にするとともに、入力される操作信号が寸動操作信号であるか否かを判別する処理ステップ、仮に寸動操作信号でない場合には、エラー処理を行って元の手動操作ボタン入力待ちの状態に戻る処理ステップ、また上記操作信号の判定処理において寸動操作信号が入力されたときに、予め設定された空織り運転の回転回数から上記記憶された角度300°の通過回数カウント値の減算結果を、後に行われる低速正転に対する停止情報としての閾値として決定するとともに、低速正転を開始する処理ステップ、角度300°の通過回数をカウントするとともにそのカウント値が上記決定された閾値に達したか否かを判定し、これに達したことにより低速正転を終了する処理ステップなどがあり、それぞれ実行される。
また上記第3の実施例では、逆転をともなう空打ちスタートを示しているが、逆転の代わりに正転をともなう空打ちスタートに対して適用することができる。緯糸として伸縮性のある緯糸を使用時に上記逆転をともなう空打ちスタートを採用したとき、低速逆転に伴う経糸開口により既に織り込まれた緯糸に縮みが発生して織物欠点が発生することがある。これを防止すべく上記低速逆転させる代わりに、織機主軸を低速正転させる起動方法があり、第4の実施例として図10を用いて具体的に示す。この実施例における「プログラムを実行してプログラムに対応する所定の回転位相に至るまで織機主軸を回転させる」動作は、上記低速正転、ならびに空織り運転がそれに対応する。なお、このような正転をともなう空打ちスタートでは、空織り運転における回転量を織段解消可能な値に決定し、しかも空織り運転およびこれに先立ち行われる低速正転の各回転量の和が、織物組織上のリピート数の倍数の回転量に合致するように決定して、いわゆる低速正転処理や空織り運転の処理における各回転量の設定ミスに起因する柄ズレが発生しないようにする。
織物組織のリピート数が「4」、すなわち実開口パターンが4ピックで一巡される織機で、織段を考慮した結果、空織り運転における主軸の回転量および低速正転における主軸の回転量がそれぞれ「2」回転に設定されている例を想定する。なお、正転量および空織り運転量の回転量(回転回数、停止位置)は織段の状況に合わせて適宜加減されることは言うまでもない。実行される空打ちスタートの詳細について、以下図10を用いてその概略を説明する。
なお、実開口パターン「4」のときに、緯入れミス信号S12が発生された場合を想定し、その後自動逆転されて織機が待機状態にされたあと、作業者は逆転ボタン83を操作して、先の連続運転中に発生した吹切れ緯糸を織機主軸180°にて除去し、再び逆転ボタン83を操作して運転操作開始位置である300°まで低速逆転させる。次いで、作業者は、運転ボタン81を操作することにより、主制御装置54は、点線にて図示するように、本来、2回転後の位置である実開口パターン「1」が終了される角度300°まで低速正転させ、その後必要に応じてキックバック動作等を行ったあと、織機主軸を起動(高速正転)させつつ緯入れを伴わない空織り運転を2回転実行し、その後の実開口パターンが「3」が終了される角度300°より(実質的には角度0°を通過してから)緯入れをともなう通常運転に移行するものである。しかし、低速正転が完了される前にセフティガードセンサ43からの異常信号S0により、織機主軸42が実開口パターン「1」の角度60゜で停止され、低速正転のルーチンの実行が中止されたときを想定する。そして、作業者は寸動ボタン82を操作することにより、主制御装置54が織機主軸の低速正転を実行して、元の運転開始位置に相当される位置、すなわち先に中断された低速正転、その後当初実行を予定していたルーチンにより空織り運転の終了角度である実開口パターン「3」の角度300°まで約2回転半強低速正転させて、当初の運転操作を行った位置に復帰させる例である。
そのような正転をともなう空打ちスタートのための起動ルーチンについて、先に示した図9の処理ステップST051からST057と同様の処理により行われるが、より詳しくは処理ステップST051,ST053,ST054における「低速逆転」を「低速正転」としてそれぞれ読み替えればよい。また、図9における処理ステップST058からST068までの異常信号発生時に対する処理について、図12に示す処理ステップST070からST077の処理フローとなる。この処理ステップST070からST077は、図9における処理ステップST058からST063における「低速逆転」を「低速正転」としてそれぞれ読み替えたものであるとともに、復帰のための処理を、先の第3実施例のように、低速逆転、および低速正転の2回に分けて織機主軸を低速回転させるのではなく、先の運転操作を行った回転位相である角度300°まで1度で低速正転する点で相違する。そして、処理ステップST076における織機主軸角度の停止位置への到達を監視する点について、その閾値は先のルーチンの実行中における織機主軸42の回転状況のデータをもとに決定される。
例えば、角度300°の通過回数を検出することにより低速正転および空織り運転の終了を制御するように構成される場合、このような回転の監視に用いる閾値には、角度300°の通過回数のカウント値が用いられ、より具体的には、最終的な緯入れ運転開始位置に達したときにおける角度の通過回数のカウント値と、異常信号発生される前に実行中のルーチンにおける上記カウント値との差の値を、復帰ルーチンにおける閾値としてのカウント値として決定して上記処理ステップST076における判定に用いることができる。図10のように先のルーチンの実行中に異常信号の発生により、低速回転を開始してから1回転強回転後の実開口パターン「1」の角度60゜で停止したとき、角度300°のカウント値は「1」となっており、このカウント値は処理ステップST070にて記憶器に記憶されている。そして、復帰ルーチンにおける監視用のカウント値は、低速正転を開始する処理ステップST074にて、当該ルーチンの中に格納される図示しないソフトウエアアルゴリズムにより「3」と決定される。そして、作業者は寸動ボタン82を操作して復帰のための低速正転が実行されると(ST074)、次ステップに進んで、寸動操作信号S2が継続的に入力されているか否かを判定し(ST075)、仮に判定結果が「NO」のとき、前記同様に低速正転を中止させ(ST078)、再度処理ステップST071に戻って作業者の操作ボタン入力待ち状態になる。また判定結果が「YES」のとき、次ステップに進み、処理ステップST076では、角度300°の通過回数が「3」に達するか否かを判定し、これに達したことにより処理ステップST077に進んで低速正転を終了させることになる。このようにして、主制御装置54は、寸動ボタン82が操作されてから3回転弱の回転後の実開口パターン「3」が終了される角度300°まで織機主軸42を自動的に低速正転させ、一連の復帰のための低速正転を終了することができる。これにより織機主軸42は、当初運転操作を開始した主軸角度300°の位置に停止された状態になっている。その後は、作業者は運転ボタン81を操作することにより、再び正転をともなう空打ちスタートにより織機再運転されることになる。
上記第3の実施例では、空打ちスタートにおける低速正転中に異常信号S0が発生したときの復帰処理について示したが、織機起動(高速正転)開始後の空織り運転中に、異常信号S0が発生したときに対する復帰動作にも適用してもよい。図11には、織機起動後1回転弱の回転中に異常信号S0が発生して実開口パターン「2」の角度220°で停止したとき、作業者は、寸動ボタン82を押下することにより、主制御装置54が当初の運転開始位置に相当する約1回転強の回転後の実開口パターン「3」が終了される角度300°まで低速正転させて運転開始可能な位置に復帰させる例を示す。寸動ボタン82により実行される復帰のためのルーチン、角度判定に用いられる閾値の決定について、上記図10における例と同様、ソフトウエアアルゴリズムなどにより決定すればよく、その詳細な説明を省略する。
上記した第3〜第4の実施例のように複数の操作ボタンを操作して織機主軸を低速回転させる代わりに、上記第2の実施例と同様、主制御装置54に自動的に復帰させるのための復帰プログラム(ルーチン)を制御プログラムとして格納しておき、復帰ボタン84の操作により、上記した織機主軸42の低速回転処理を自動的に遂行させるようにしてもよい。
上記した第1〜第2の実施例では、反転パターン出力されるパターンで中口閉口状態にする経糸開口装置について、電子ドビー装置を例として説明した。しかし、同様の機能を有する開口装置、例えば、綜絖枠毎に設けられる専用モータにより開口運動を行わせる電動開口装置などとすることも可能である。さらに上記第1〜第4の実施例では、レベリング動作を行う織機、空打ちスタートにより起動される織機というように、各動作を単独で行う織機について示しているが、上記2以上を行う織機も可能であることは言うまでもない。