JP2007177936A - スラスト受け機構 - Google Patents
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Abstract
【課題】長寿命化を図ったスラスト受け機構を提供する。
【解決手段】スラスト受け機構は、前記第一のころ、前記第二のころ、前記第一の軌道輪、前記第二の軌道輪および前記中間輪の少なくとも一つの表面には、微小の凹形状くぼみが設けられている。くぼみが設けられた表面の表面粗さパラメータRyniは、0.4〜1.0μmの範囲内である。表面粗さパラメータRyniとは、基準長毎最大高さの平均値、すなわち、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値である。
【選択図】図1
【解決手段】スラスト受け機構は、前記第一のころ、前記第二のころ、前記第一の軌道輪、前記第二の軌道輪および前記中間輪の少なくとも一つの表面には、微小の凹形状くぼみが設けられている。くぼみが設けられた表面の表面粗さパラメータRyniは、0.4〜1.0μmの範囲内である。表面粗さパラメータRyniとは、基準長毎最大高さの平均値、すなわち、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値である。
【選択図】図1
Description
この発明は、スラスト受け機構に関する。
スクロール型圧縮機等に使用され、スラスト荷重を受けるスラスト受け機構は、偏心回転運動によるスラスト荷重を受ける必要があるため、玉軸受が使用されていた。
しかし、玉軸受は点接触で荷重を受ける構造であるため、高荷重を受けるには不向きである。ここで、線接触で荷重を受けるころ軸受によりスラスト荷重を受けるスラスト受け機構が、特開2000−186680号公報(特許文献1)、特開2002−242927号公報(特許文献2)に開示されている。
特許文献1および特許文献2によると、ころ軸受の転動軸心を、互いに垂直な方向に向きを変えて上下に2列に配列し、偏心回転運動によるスラスト荷重を受けることにしている。図10は、この場合のスラスト受け機構の基本構造を示す分解斜視図である。また、図11は、この場合のスラスト受け機構の一部を示す断面図である。図10および図11を参照して、スラスト受け機構101は、2つの軌道輪102a、102bと、軌道輪102a、102bとの間に配置される中間輪103とを含む。軌道輪102aと中間輪103との間には、ころ104aが配置され、図10において縦方向(紙面上下方向)に転動軸心を有するように保持器105aによって保持されている。また、軌道輪102bと中間輪103との間には、ころ104bが配置され、図10において横方向(紙面左右方向)に転動軸心を有するように保持器105bによって保持されている。すなわち、ころ104aところ104bとの転動軸心は、互いに垂直な方向に配列されている。このように構成することにより、スラスト受け機構101は、偏心回転運動によるスラスト荷重を受けている。また、このようなスラスト受け機構101は、高荷重を受けることができる。
特開2000−186680号公報(段落番号0019〜0021、図3)
特開2002−242927号公報(段落番号0021〜0025、図1、図2)
上記したスラスト受け機構を、たとえば、給湯機用スクロール圧縮機に用いた場合、冷却能力の向上に伴うオイル量の削減等により、希薄潤滑下で使用されることになる。そうすると、スラスト受け機構に含まれるころや軌道輪等が油膜切れを引き起こし、潤滑不良となって、金属接触による異常摩耗を引き起こすおそれがある。また、ころ等の表面性状が悪い場合も、偏摩耗等が発生し、寿命が短くなるおそれがある。
特許文献2によると、上記した構成において、ころ、軌道輪および中間輪の少なくとも一つの表面に、表面処理を施し、表面粗さに関するパラメータを規定することにより、ころの耐摩耗性を向上させている。具体的には、ころ等の表面に、表面処理によって微小凹形状のくぼみを設け、くぼみを設けた表面の回転方向の表面粗さパラメータRMS(L)と、これに直交する方向の表面粗さパラメータRMS(C)との比であるRMS(L)/RMS(C)の値を、1.0以上とし、かつ、表面粗さパラメータSk値を、−1.6以下と規定している。
ここで、表面粗さパラメータRMSとは、粗さ中心線から粗さ曲線までの高さの偏差の自乗を測定長さの区間で積分し、その区間で平均した値の平方根である。別名、自乗平均平方根粗さともいう(ISO4287:1997)。また、後述する表面粗さパラメータRqniと同義である。
また、表面粗さパラメータSk値とは、粗さ曲線の歪み度(スキューネス)を指し(ISO4287:1997)、凹凸分布の非対称性を知る目安の統計量であり、ガウス分布のような対称な分布ではSk値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合は負、逆の場合は正の値をとることになる。
このように表面粗さパラメータRMSの比等を規定することにより、相手面が粗面または仕上げられた面であっても、ころ等の耐摩耗性を向上させ、寿命を長くしている。
しかし、低粘度のオイルが使用される等、形成される油膜厚さが極端に薄くなる状況においては、耐摩耗性を十分に確保できず、スラスト受け機構の長寿命化を図ることができない。
この発明は、長寿命化を図ったスラスト受け機構を提供することを目的とする。
この発明に係るスラスト受け機構は、相互間で偏心回転運動を行う第一の部材と第二の部材との間に介在してスラスト荷重を支持する。また、スラスト受け機構は、第一の部材に装着される第一の軌道輪と、その軌道面が第一の軌道輪の軌道面と対向するよう、第二の部材に装着される第二の軌道輪と、両面に軌道面を有し、第一の軌道輪および第二の軌道輪との間に配置される中間輪と、第一の軌道輪と中間輪との間に配置され、転動軸心方向が揃えられた複数の第一のころと、第二の軌道輪と中間輪との間に配置され、第一のころの転動軸心方向と垂直な方向に転動軸心方向が揃えられた複数の第二のころと、第一のころを保持する複数のポケットを含む第一の保持器と、第二のころを保持する複数のポケットを含む第二の保持器と、第一の部材から第一の軌道輪および第一の保持器を貫通して中間輪まで延在する第一のガイドピンと、第二の部材から第二の軌道輪および第二の保持器を貫通して中間輪まで延在する第二のガイドピンとを備え、第一の保持器および中間輪は、それら自身の許容範囲内で、第一のころの転動軸心方向と垂直な方向に移動可能であり、第二の保持器および中間輪は、それら自身の許容範囲内で、第二のころの転動軸心方向と垂直な方向に移動可能である。ここで、第一のころ、第二のころ、第一の軌道輪、第二の軌道輪および中間輪の少なくとも一つの表面には、微小の凹形状のくぼみが設けられており、くぼみが設けられた表面の表面粗さパラメータRyni(基準長毎最大高さの平均値)は、0.4〜1.0μmの範囲内である。
表面粗さパラメータRyniとは、基準長毎最大高さの平均値、すなわち、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値である(ISO4287:1997)。
表面粗さパラメータRyniの値を上記の範囲内に規定することにより、くぼみが設けられた表面と相手面との間の油膜厚さが薄くても、適切に油膜を形成することができる。したがって、潤滑性が良好となり、摩耗量を低減し、長寿命を図ることができる。
好ましくは、くぼみが設けられた表面の表面粗さパラメータSk値は、−1.6以下である。さらに、表面粗さパラメータSk値をこのような範囲に規定することにより、いわゆる潤滑油を溜める凹状部分を有効な範囲に規定することができ、形成される油膜の厚みを確保し、耐摩耗性を向上させ、長寿命を図ることができる。
この発明の他の局面においては、スラスト受け機構は、相互間で偏心回転運動を行う第一の部材と第二の部材との間に介在してスラスト荷重を支持する。また、スラスト受け機構は、第一の部材に装着される第一の軌道輪と、その軌道面が第一の軌道輪の軌道面と対向するよう、第二の部材に装着される第二の軌道輪と、両面に軌道面を有し、第一の軌道輪および第二の軌道輪との間に配置される中間輪と、第一の軌道輪と中間輪との間に配置され、転動軸心方向が揃えられた複数の第一のころと、第二の軌道輪と中間輪との間に配置され、第一のころの転動軸心方向と垂直な方向に転動軸心方向が揃えられた複数の第二のころと、第一のころを保持する複数のポケットを含む第一の保持器と、第二のころを保持する複数のポケットを含む第二の保持器と、第一の部材から第一の軌道輪および第一の保持器を貫通して中間輪まで延在する第一のガイドピンと、第二の部材から第二の軌道輪および第二の保持器を貫通して中間輪まで延在する第二のガイドピンとを備え、第一の保持器および中間輪は、それら自身の許容範囲内で、第一のころの転動軸心方向と垂直な方向に移動可能であり、第二の保持器および中間輪は、それら自身の許容範囲内で、第二のころの転動軸心方向と垂直な方向に移動可能である。ここで、第一のころ、第二のころ、第一の軌道輪、第二の軌道輪および中間輪の少なくとも一つの表面には、微小の凹形状のくぼみが設けられており、くぼみが設けられた転動面または軌道面の表面粗さパラメータRymax(基準長毎最大高さの最大値)は、0.4〜1.0の範囲内である。
表面粗さパラメータRymaxとは、基準長毎最大高さの最大値である(ISO4287:1997)。表面粗さパラメータRymaxをこのような範囲に規定することによっても、くぼみが設けられた表面と相手面との間の油膜を適切に形成し、摩耗量を低減させ、長寿命を図ることができる。
好ましくは、くぼみが設けられた表面のくぼみの面積率は、5〜20%の範囲内である。くぼみの面積率は、ころの転動面に微小凹形状のくぼみを設けた場合、転動面全体の面積に示すくぼみの面積の割合を意味する。全体に対するくぼみの面積率をこのように規定することによっても、潤滑性が良好となる面積の範囲を規定することができ、長寿命を図ることができる。
より好ましくは、くぼみが設けられた表面のくぼみの平均面積は、30〜100μm2の範囲内である。くぼみが設けられた表面の平均面積の値をこのように規定することによっても、潤滑性が良好となる面積の範囲を規定することができ、長寿命を図ることができる。
さらに好ましくは、くぼみが設けられた表面の表面粗さを、表面粗さパラメータRqni(自乗平均平方根粗さ)で表した場合に、軸方向の表面粗さパラメータRqni(L)と円周方向の表面粗さパラメータRqni(C)との比であるRqni(L)/Rqni(C)は、1.0以下である。上記した表面粗さパラメータRyni等を規定し、さらに、表面粗さパラメータRqniの値についても、このような範囲に規定することにより、長寿命を図ることができる。
この発明によれば、ころ、軌道輪および中間輪の少なくとも一つの表面に、微小の凹形状のくぼみを設け、くぼみが設けられた表面の表面粗さパラメータRyniを0.4〜1.0μmの範囲内とすることにより、くぼみが設けられた表面と相手面との間の油膜厚さが薄くても、適切に油膜を形成することができる。したがって、潤滑性が良好となり、摩耗量を低減することができる。
その結果、長寿命を図ったスラスト受け機構を提供することができる。
以下、この発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図2は、この発明の一実施形態に係るスラスト受け機構11を示す分解斜視図である。図3は、スラスト受け機構11に含まれる第一の保持器15aを、軸に沿う方向からみた図である。また、図4は、第一の保持器15aに、第一のころ14aを保持させた状態を表す図である。
図2、図3および図4を参照して、スラスト受け機構11は、第一の部材であるハウジング20aと、ハウジング20aに対して偏心回転運動を行う第二の部材として回転部材20bとの間に介在して、ハウジング20aと回転部材20bとの間に発生するスラスト荷重を支持する。
スラスト受け機構11は、平板状の環状部材であって片面に軌道面を有し、軌道面と反対側の面がハウジング20aに取り付けられる第一の軌道輪12aと、平板状の環状部材であって片面に軌道面を有し、軌道面と反対側の面が回転部材20bに取り付けられる第二の軌道輪12bと、平板状の環状部材であってその両面に軌道面を有する中間輪13とを備える。第一の軌道輪12aと第二の軌道輪12bとは、軌道面が対向するように配置される。中間輪13は、双方の軌道面が、第一の軌道輪12aの軌道面および第二の軌道輪12bの軌道面と対向するように、第一の軌道輪12aと第二の軌道輪12bとの間に配置される。
スラスト受け機構11は、第一の軌道輪12aと中間輪13との間に配置され、第一の軌道輪12aおよび中間輪13の軌道面と接する複数の第一のころ14aと、第二の軌道輪12bと中間輪13との間に配置され、第二の軌道輪12bおよび中間輪13の軌道面と接する複数の第二のころ14bとを備える。第一のころ14aは、上下方向に配置される第一の軌道輪12aの軌道面および中間輪13の軌道面を転動する。第二のころ14bは、上下方向に配置される第二の軌道輪12bの軌道面および中間輪13の軌道面を転動する。
スラスト受け機構11は、平板状の環状部材であって複数の第一のころ14aを保持する第一の保持器15aと、平板状の環状部材であって複数の第二のころ14bを保持する第二の保持器15bとを備える。複数の第一のころ14aは、その転動軸心が矢印Xの方向に整列して向くように、第一の保持器15aに設けられた各ポケット21aによって保持されている。同様に、第二のころ14bは、その転動軸心が矢印Xの方向と直交する矢印Yの方向に整列して向くように、第二の保持器15bに設けられた各ポケットによって保持されている。
第一の軌道輪12aには、180度間隔で相互に対向する位置に一対の丸孔17aが設けられており、中間輪13および第一の保持器15aには、180度間隔で相互に対向し、長手方向が揃うように、一対の長孔18a、19aが設けられている。一対の長孔18a、19aは、半径方向に延びており、第一のころ14aの転動軸心方向(矢印Xの方向)と垂直な方向へのそれら自身の移動を許容し、その寸法関係は19a<18aとなっている。
スラスト受け機構11は、ハウジング20aから第一の軌道輪12aおよび第一の保持器15aを貫通して中間輪13まで延在するよう、一対の第一のガイドピン16aを備える。一対の第一のガイドピン16aを、丸孔17a、長孔18a、19aに挿通することにより、各部材の周方向が位置決めされるとともに、第一の軌道輪12aはハウジング20aに固定される。また、中間輪13および第一の保持器15aは、長孔18a、19aの許容範囲内で、第一のころ14aの転動軸心方向と垂直な方向、すなわち、矢印Yの方向またはその逆の方向に移動可能である。
同様に、第二の軌道輪12bには、180度間隔で相互に対向する位置に一対の丸孔17bが設けられており、中間輪13および第二の保持器15bには、180度間隔で相互に対向し、長手方向が揃うように、一対の長孔18b、19bが設けられている。なお、中間輪13に設けられた一対の長孔18a、18bは、相互に90度間隔で設けられている。一対の長孔18b、19bは、半径方向に延びており、第二のころ14bの転動軸心方向(矢印Yの方向)と垂直な方向へのそれら自身の移動を許容し、その寸法関係は19b<18bとなっている。
スラスト受け機構11は、回転部材20bから第二の軌道輪12bおよび第二の保持器15bを貫通して中間輪13まで延在するよう、一対の第二のガイドピン16bを備える。一対の第二のガイドピン16bを、丸孔17b、長孔18b、19bに挿通することにより、各部材の周方向が位置決めされるとともに、第二の軌道輪12bは回転部材20bに固定され、中間輪13および第二の保持器15bは、長孔18b、19bの許容範囲内で、第二のころ14bの転動軸心方向と垂直な方向、すなわち、矢印Xの方向またはその逆の方向に移動可能である。
このような構成により、ハウジング20aが固定された状態で、回転部材20bが偏心回転運動を行っても、第一の保持器15a、第二の保持器15bおよび中間輪13は、矢印X、Yの方向またはその逆の方向への移動が許容され、第一のころ14aおよび第二のころ14bが転動することにより、スラスト受け機構11は、回転部材20bと、ハウジング20aとの間の偏心スラスト荷重を支持することができる。
上記した第一のころ14a、第二のころ14b、第一の軌道輪12a、第二の軌道輪12bおよび中間輪13の少なくとも一つの表面には、微小凹形状のくぼみが設けられている。微小凹形状のくぼみは、バレル処理等の表面処理によって設けることができる。バレル処理とは、表面処理を行う軌道輪等と、メディアとをバレルに投入し、バレルを回転させることにより行う表面処理をいう。バレル処理条件、すなわち、バレルの回転数や回転時間、投入するメディアの粒度や量等によって、表面処理状態が異なる。バレル処理による表面処理によって、軌道輪等の表面粗さは変化するが、バレル処理条件を特殊な条件とすることにより、後述する表面粗さパラメータRyni等を、規定の範囲内とすることができる。
なお、表面粗さパラメータRyni、Rymax、Sk、Rqniの算出方法は、以下の通りである。
パラメータ算出規格 :JIS B0601:1994(サーフコム JIS1994)
カットオフ種別 :ガウシアン
測定長さ :5λ
カットオフ波長 :0.25mm
測定倍率 :×10000
測定速度 :0.30mm/s
測定装置 :面粗さ測定器サーフコム1400A(東京精密社製)
また、バレル処理による表面処理によって設けられた微小凹形状のくぼみの面積率、平均面積の定量的測定については、以下の方法で行った。
カットオフ種別 :ガウシアン
測定長さ :5λ
カットオフ波長 :0.25mm
測定倍率 :×10000
測定速度 :0.30mm/s
測定装置 :面粗さ測定器サーフコム1400A(東京精密社製)
また、バレル処理による表面処理によって設けられた微小凹形状のくぼみの面積率、平均面積の定量的測定については、以下の方法で行った。
まず、軌道輪等の表面を拡大し、その画像から市販されている画像解析システムにより定量化する。ここで、特開2001−183124号公報に開示されている表面性状検査方法および表面性状検査装置を用いれば、精度よく測定することができる。なお、画像の白い部分は表面平坦部、黒い部分は微小凹形状のくぼみとして解析する。
評価方法は、以下の通りである。
面積率 :観察視野範囲で2値化しきい値((明部の輝度+暗部の輝度)/2)よりも小さい画素(黒)の占める割合
平均面積 :黒の面積の合計/総数
観察視野 :826μm×620μm(ころの場合、ころの直径が4未満は、413μm×310μmが望ましい)
ここで、表面処理を施していないころおよび軌道輪、従来の表面処理を施したころおよび軌道輪、表面処理条件を変更したころおよび軌道輪の表面形状を測定した。図5(A)〜図5(C)は、ころの表面の粗さ曲線を表す図であり、ころに対して表面処理を行わなかった場合(図5(A))、従来の表面処理を行った場合(図5(B))、処理条件を変更して表面処理を行った場合(図5(C))を示す。また、図6(A)〜図6(C)は、軌道輪の表面の粗さ曲線を表す図であり、軌道輪に対して表面処理を行わなかった場合(図6(A))、従来の表面処理を行った場合(図6(B))、処理条件を変更して表面処理を行った場合(図6(C))を示す。
平均面積 :黒の面積の合計/総数
観察視野 :826μm×620μm(ころの場合、ころの直径が4未満は、413μm×310μmが望ましい)
ここで、表面処理を施していないころおよび軌道輪、従来の表面処理を施したころおよび軌道輪、表面処理条件を変更したころおよび軌道輪の表面形状を測定した。図5(A)〜図5(C)は、ころの表面の粗さ曲線を表す図であり、ころに対して表面処理を行わなかった場合(図5(A))、従来の表面処理を行った場合(図5(B))、処理条件を変更して表面処理を行った場合(図5(C))を示す。また、図6(A)〜図6(C)は、軌道輪の表面の粗さ曲線を表す図であり、軌道輪に対して表面処理を行わなかった場合(図6(A))、従来の表面処理を行った場合(図6(B))、処理条件を変更して表面処理を行った場合(図6(C))を示す。
また、表1は、比較例1として、表面処理を行わなかったころおよび軌道輪、比較例2として、従来の表面処理を行ったころおよび軌道輪、実施例1として、処理条件を変更して表面処理を行ったころおよび軌道輪の表面粗さパラメータRyni等を算出した表である。
ここで、このような比較例1、比較例2、実施例1に示されるころおよび軌道輪を含むスラスト受け機構を使用して、軌道輪の摩耗量を測定する試験を行った。図7は、摩耗量を測定する際に使用したスラスト摩耗試験機22の概略図である。図7を参照して、ハウジングとしての固定輪24と、旋回輪25との間に取り付けられたスラスト受け機構23は、回転軸26の中心軸線27から寸法Cだけ離れた位置に、矢印Aで示す方向からスラスト荷重が加えられる。また、スラスト受け機構23の中心軸線28と、回転軸26の中心軸線27とは、寸法Bだけ偏心している。
なお、寸法B、寸法Cを含む具体的な試験条件は以下の通りである。
スラスト荷重 :1000N(荷重位置:中心軸線から12.5mmの位置)
回転速度 :1500r/min(公転半径2.5mm)
潤滑剤 :PAG+白灯油
油膜パラメータA :0.09
図7に示すスラスト摩耗試験機を使用し、軌道輪の摩耗量を測定した結果を、図1(A)〜図1(C)に示す。図1(A)〜図1(C)は、軌道輪の断面曲線であり、比較例1のころ等を用いた場合(図1(A))、比較例2のころ等を用いた場合(図1(B))、実施例1のころ等を用いた場合(図1(C))を示す。なお、図1(A)〜図1(C)中の太い実線29で示す部分は、摩耗部以外の母線に対応する部分を示す。図1(A)〜図1(C)を参照して、まず、図1(A)において、軌道輪の摩耗量は、10μm程度に達している。次に、図1(B)を参照して、軌道輪の摩耗量は、表面処理を施さない比較例1に比べて少ないが、4μm程度摩耗している。一方、図1(C)を参照すると、比較例1、2に比べて、軌道輪はほとんど摩耗しておらず、断面曲線は、フラットな形状となっている。
回転速度 :1500r/min(公転半径2.5mm)
潤滑剤 :PAG+白灯油
油膜パラメータA :0.09
図7に示すスラスト摩耗試験機を使用し、軌道輪の摩耗量を測定した結果を、図1(A)〜図1(C)に示す。図1(A)〜図1(C)は、軌道輪の断面曲線であり、比較例1のころ等を用いた場合(図1(A))、比較例2のころ等を用いた場合(図1(B))、実施例1のころ等を用いた場合(図1(C))を示す。なお、図1(A)〜図1(C)中の太い実線29で示す部分は、摩耗部以外の母線に対応する部分を示す。図1(A)〜図1(C)を参照して、まず、図1(A)において、軌道輪の摩耗量は、10μm程度に達している。次に、図1(B)を参照して、軌道輪の摩耗量は、表面処理を施さない比較例1に比べて少ないが、4μm程度摩耗している。一方、図1(C)を参照すると、比較例1、2に比べて、軌道輪はほとんど摩耗しておらず、断面曲線は、フラットな形状となっている。
したがって、PAGオイルを含む潤滑剤で、油膜パラメータAが0.09という過酷な潤滑条件にも関わらず、実施例1に示すころおよび軌道輪を含むスラスト受け機構、すなわち、表面粗さパラメータRyni等が上記の範囲内にあるころ等を含むスラスト受け機構は、耐摩耗性が良好である。
また、このようなスラスト受け機構について、金属接触率を測定するピーリング試験を行った。図8は、金属接触率を測定する際に使用した2円筒試験機31の概略図である。図8を参照して、駆動側円筒32と従動側円筒33は、各々の回転軸の片端に取り付けられ、2本の回転軸34、35はそれぞれプーリ36、37を介して別々のモータで駆動できるようになっている。駆動側円筒32側の回転軸34をモータで駆動し、従動側円筒33は駆動側円筒32に従動させる自由転がりにした。従動側円筒33は、表面処理に関して、比較例3と実施例2の2種類を用意した。
また、詳細な試験条件については、表2に示す。
このような条件で行った金属接触率の試験結果を図9(A)、図9(B)に示す。図9(A)は、比較例3における金属接触率と経過時間を表す図である。図9(B)は、実施例2における金属接触率と経過時間を表す図である。なお、縦方向、横方向の目盛は、図9(A)および図9(B)中に示す。図9(A)および図9(B)を参照して、実施例2中の黒色で表示されている部分、すなわち、金属接触している部分は、比較例3に比べて、少なくなっている。具体的には、比較例3に比べて、実施例2は、油膜形成率(=100%−金属接触率)が、運転開始時で10%程度、試験終了時(2時間経過後)で2%程度、向上している。
このような実施例2に示すころ等を含むスラスト受け機構は、比較例3に示すころ等を含むスラスト受け機構と比較して、油膜形成能力に優れ、金属接触による偏摩耗等を引き起こすことは少なく、適切に相手面との間に油膜を形成することができる。
以上より、微小の凹形状のくぼみが設けられた表面の表面粗さパラメータRyni等の値が上記した規定の範囲内であるころおよび軌道輪を含むスラスト受け機構は、長寿命を図ることができる。
なお、上記の実施の形態においては、バレル研摩による表面処理により、軌道輪等に微小凹形状のくぼみを設けたが、これに限らず、ショット、または液体ホーニング処理等の表面処理により、微小凹形状のくぼみを設け、表面粗さパラメータRyni等を上記した範囲内の値にしてもよい。
また、上記の実施の形態において、スラスト受け機構に含まれる保持器については、樹脂製保持器、箱形保持器、アルミ保持器、削り保持器、プレス保持器等、様々な材質、形状、加工方法の保持器を適用することができる。
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
この発明に係るスラスト受け機構は、油膜形成能力に優れ、耐摩耗性を向上させることができるため、希薄潤滑下等、厳しい潤滑条件で使用されるスラスト受け機構に、有効に利用される。
11,23 スラスト受け機構、12a 第一の軌道輪、12b 第二の軌道輪、13 中間輪、14a 第一のころ、14b 第二のころ、15a 第一の保持器、15b 第二の保持器、16a 第一のガイドピン、16b 第二のガイドピン、17a,17b,18a,18b,19a,19b 長孔、20a ハウジング、20b 回転部材、26,34,35 回転軸、21a ポケット、22 スラスト摩耗試験機、24 固定輪、25 旋回輪、27,28 中心軸線、29 実線、31 2円筒試験機、32 駆動側円筒、33 従動側円筒、36,37 プーリ。
Claims (6)
- 相互間で偏心回転運動を行う第一の部材と第二の部材との間に介在してスラスト荷重を支持するスラスト受け機構であって、
前記第一の部材に装着される第一の軌道輪と、
その軌道面が前記第一の軌道輪の軌道面と対向するよう、前記第二の部材に装着される第二の軌道輪と、
両面に軌道面を有し、前記第一の軌道輪および前記第二の軌道輪との間に配置される中間輪と、
前記第一の軌道輪と前記中間輪との間に配置され、転動軸心方向が揃えられた複数の第一のころと、
前記第二の軌道輪と前記中間輪との間に配置され、前記第一のころの転動軸心方向と垂直な方向に転動軸心方向が揃えられた複数の第二のころと、
前記第一のころを保持する複数のポケットを含む第一の保持器と、
前記第二のころを保持する複数のポケットを含む第二の保持器と、
前記第一の部材から前記第一の軌道輪および第一の保持器を貫通して前記中間輪まで延在する第一のガイドピンと、
前記第二の部材から前記第二の軌道輪および第二の保持器を貫通して前記中間輪まで延在する第二のガイドピンとを備え、
前記第一の保持器および前記中間輪は、それら自身の許容範囲内で、前記第一のころの転動軸心方向と垂直な方向に移動可能であり、
前記第二の保持器および前記中間輪は、それら自身の許容範囲内で、前記第二のころの転動軸心方向と垂直な方向に移動可能であり、
前記第一のころ、前記第二のころ、前記第一の軌道輪、前記第二の軌道輪および前記中間輪の少なくとも一つの表面には、微小の凹形状のくぼみが設けられており、
前記くぼみが設けられた表面の表面粗さパラメータRyni(基準長毎最大高さの平均値)は、0.4〜1.0μmの範囲内である、スラスト受け機構。 - 前記くぼみが設けられた表面の表面粗さパラメータSk(粗さ曲線の歪み度)は、−1.6以下である、請求項1に記載のスラスト受け機構。
- 相互間で偏心回転運動を行う第一の部材と第二の部材との間に介在してスラスト荷重を支持するスラスト受け機構であって、
前記第一の部材に装着される第一の軌道輪と、
その軌道面が前記第一の軌道輪の軌道面と対向するよう、前記第二の部材に装着される第二の軌道輪と、
両面に軌道面を有し、前記第一の軌道輪および前記第二の軌道輪との間に配置される中間輪と、
前記第一の軌道輪と前記中間輪との間に配置され、転動軸心方向が揃えられた複数の第一のころと、
前記第二の軌道輪と前記中間輪との間に配置され、前記第一のころの転動軸心方向と垂直な方向に転動軸心方向が揃えられた複数の第二のころと、
前記第一のころを保持する複数のポケットを含む第一の保持器と、
前記第二のころを保持する複数のポケットを含む第二の保持器と、
前記第一の部材から前記第一の軌道輪および第一の保持器を貫通して前記中間輪まで延在する第一のガイドピンと、
前記第二の部材から前記第二の軌道輪および第二の保持器を貫通して前記中間輪まで延在する第二のガイドピンとを備え、
前記第一の保持器および前記中間輪は、それら自身の許容範囲内で、前記第一のころの転動軸心方向と垂直な方向に移動可能であり、
前記第二の保持器および前記中間輪は、それら自身の許容範囲内で、前記第二のころの転動軸心方向と垂直な方向に移動可能であり、
前記第一のころ、前記第二のころ、前記第一の軌道輪、前記第二の軌道輪および前記中間輪の少なくとも一つの表面には、微小の凹形状のくぼみが設けられており、
前記くぼみが設けられた転動面または軌道面の表面粗さパラメータRymax(基準長毎最大高さの最大値)は、0.4〜1.0の範囲内である、スラスト受け機構。 - 前記くぼみが設けられた表面のくぼみの面積率は、5〜20%の範囲内である、請求項3に記載のスラスト受け機構。
- 前記くぼみが設けられた表面のくぼみの平均面積は、30〜100μm2の範囲内である、請求項3または4に記載のスラスト受け機構。
- 前記くぼみが設けられた表面の表面粗さを、表面粗さパラメータRqni(自乗平均平方根粗さ)で表した場合に、
軸方向の表面粗さパラメータRqni(L)と円周方向の表面粗さパラメータRqni(C)との比であるRqni(L)/Rqni(C)は、1.0以下である、請求項1〜5のいずれかに記載のスラスト受け機構。
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- 2005-12-28 JP JP2005378417A patent/JP2007177936A/ja active Pending
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