JP2007177735A - ギアポンプ - Google Patents
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Abstract
【課題】歯車の側面とこれに対して摺接する面(サイドプレートの側面)の油膜形成が十分に行え、サイドプレート等の摩耗を抑え、耐久性を向上させることができるギアポンプを提供する。
【解決手段】歯車1、2の噛合いにより流体を送り出すギアポンプである。歯車1、2の側面29a、29b、30a、30bに、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設ける。くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniが0.4μm≦Ryni≦1.0μmの範囲内である。Sk値が−1.6以下である。これにより、側面29a、29b、30a、30bが高い油膜形成能力を奏し、長寿命を得ることができる。
【選択図】図1
【解決手段】歯車1、2の噛合いにより流体を送り出すギアポンプである。歯車1、2の側面29a、29b、30a、30bに、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設ける。くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniが0.4μm≦Ryni≦1.0μmの範囲内である。Sk値が−1.6以下である。これにより、側面29a、29b、30a、30bが高い油膜形成能力を奏し、長寿命を得ることができる。
【選択図】図1
Description
この発明は、歯車の回転により流体を送り出すギアポンプに関する。
ギアポンプは、複数の歯車を一組として、歯車の回転により流体を送り出す構造であり(特許文献1及び特許文献2)、自動車、産業機械など種々の分野で使用されている。なお、ギアは必ずしも2枚1組ではなく、3ギア配列式、遊星配列式などの方式がある。
例えば、図13に示すように、ギアポンプは、吸入口54と吐出口53とを有するギアケース50(ハウジング内部の空洞に配置されるケース)の内部に、互いに噛合う一対の歯車51、52を収納している。吸入口54側において、歯車51、52の噛合いが離れるときに歯溝内に流入した流体は、各々の歯間と、ギアケース50の内周面との間に封入された状態で歯車51、52の回転によって吐出口53まで運ばれる。
すなわち、駆動側の歯車51が矢印Xのように回転駆動すると、非駆動側(従動側)のギア52が矢印Yのように回転する。これによって、矢印Zのように吸入口51を介してギアケース50に入った流体が矢印Wのように吐出口52から流出する。
ところで、歯車51、52の軸は、ギアケースのサイドプレートに支持され、歯車51、52の側面がサイドプレートに対して摺動することになる。このため、歯車51、52の側面がサイドプレートとの間においては、潤滑されている必要がある。すなわち、サイドプレートが摩耗すると、ポンプ効率の低下を引き起こすことになる。このため、従来には、歯車の側面と、これに対応するサイドプレートの側面とに、潤滑部材を介在させるものがある(特許文献1及び特許文献2)。
特開2000−146661号公報
特開2000−161244号公報
前記特許文献1や特許文献2に記載の潤滑部材は、例えば、フッ素化合物を含む被膜、亜鉛を含む被膜、カルシウム化合物を含む被膜、リン酸化合物を含む被膜等にて構成される。しかしながら、ポンプの高回転化、高出力化が進むにつれ、潤滑条件が厳しくなり、潤滑不良による摩耗、損傷が発生しやすくなる。このため、前記特許文献1に記載のものでは、歯車の側面とサイドプレートとの摺動による摩耗を抑えるのに十分とはいえない。
本発明の課題は、歯車の側面とこれに対して摺接する面(サイドプレートの側面)の油膜形成が十分に行え、サイドプレート等の摩耗を抑え、耐久性を向上させることができるギアポンプを提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明のギアポンプは、歯車の回転により流体を送り出すギアポンプにおいて、歯車の側面に、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設け、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniが0.4μm≦Ryni≦1.0μmの範囲内であり、かつ、Sk値が−1.6以下であることを特徴とする。
パラメータRyniとは、基準長毎最大高さの平均値すなわち、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値である(ISO 4287:1997)。
また、パラメータSkとは、粗さ曲線の歪み度(スキューネス)を指し(ISO 4287:1997)、凹凸分布の非対称性を知る目安の統計量である。ガウス分布のような対称な分布ではSk値は0に近くなり、凹凸の凸部を削除した場合は負、逆の場合は正の値をとることになる。
上記のように、本発明では、歯車の側面のくぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniを0.4μm以上、1.0μm以下の範囲内に規定することで、希薄潤滑下でも油膜切れを防ぐことが可能となり、極端に油膜厚さが薄い条件下でも長寿命を得ることができる。また、歯車の側面のSk値を幅方向、円周方向とも−1.6以下とすることにより、微小凹形状のくぼみが油溜りとなり、圧縮されても滑り方向、直角方向への油のリークは少なく、油膜形成に優れ、表面損傷を極力抑える効果が発揮される。
このギアポンプにおいて、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRymaxを0.4〜1.0μmの範囲内に設定すると、さらに油膜形成能力を向上させることができる。ここで、パラメータRymaxは基準長毎最大高さの最大値である(ISO 4287:1997)。
あるいは、このギアポンプにおいて、前記くぼみを設けた面の面粗さをパラメータRqniで表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)との比の値Rqni(L)/Rqni(C)を1.5以下に設定することによっても、さらに歯車の側面の油膜形成能力の向上が図られる。パラメータRqniとは、粗さ中心線から粗さ曲線までの高さの偏差の自乗を測定長さの区間で積分し、その区間で平均した値の平方根であり、別名自乗平均平方根粗さともいう。Rqniは、粗さ計の触針を幅方向および円周方向に移動させて測定し、拡大記録した断面曲線、粗さ曲線から数値計算で求められる。
くぼみの平均面積が30〜100μm2の範囲内であり、くぼみを設けた面におけるくぼみの面積率が5〜20%の範囲内である。これにより、油膜形成能力を向上させることができるため、希薄潤滑下で極端に油膜厚さが薄い条件下でも長寿命を得ることができる。なお、くぼみの面積率とは、歯車の側面に微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設けた場合、歯車の側面全体の面積に占めるくぼみの面積の割合を意味する。
以上のように、本発明によると、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設けることによって、歯車の側面に油膜が形成しやすくなる。しかもこのくぼみが油溜まりとなるため、歯車の側面の油膜形成が確実に行える。このため、温度上昇の低減が可能となるとともに、歯車の側面と、これを摺接する面(サイドプレートの側面))との金属接触を緩和でき、サイドプレートの耐摩耗性を向上させることができる。従って、歯車の側面に設けたランダムなくぼみにより油膜形成能力が向上し、ギアポンプのサイドプレートの摩耗を防ぎ、ギアポンプの耐久性を向上させることができる。また、歯車の側面の表面性状を変えることで油膜形成能力の向上を図れるため、従来のギアポンプ用の歯車の形状を大幅に変更する必要がなく、他の各部品の形状構造を変更する必要がない。
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るギアポンプの要部簡略図を示し、このギアポンプは、駆動側の歯車1と、従動側(非駆動側)の歯車2と、これらの歯車1、2を収納するギアケース3とを備える。ギアケース3は、筒状本体20と、この筒状本体20の両側方開口部を塞ぐ蓋部材21a、21bと、筒状本体20内に収納されて前記歯車1、2の軸22,23を支持するサイドプレート24、25とを備える。軸22、23は、一方の蓋部材21a側に突出する第1軸22a、23aと、他方の蓋部材21b側に突出する第2軸22b、23bとを有する。
このため、一方のサイドプレート24には、歯車1、2の第1軸22a、23aを支持する支持孔26a、27aが設けられ、他方のサイドプレート25には、歯車1、2の第2軸22b、23bを支持する支持孔26b、27bが設けられている。
また、ギアケース3は、図2に示すように、吸入口4と吐出口5とを備えている。吸入口4と吐出口5とは同一線上に配設され、この線上に歯車1、2の噛合部が位置する。また、駆動側の歯車1は、図示省略の駆動手段にて矢印X方向に回転駆動し、この駆動側の歯車1と噛合している従動側(非駆動側)の歯車2がこの歯車1の回転に伴って矢印Y方向に回転する。
すなわち、ギアポンプは、吸入口4側において、歯車1、2の噛合いが離れるときに歯溝6、7内に流入した流体が、各々の歯間と、ギアケース3の内周面との間に封入された状態で歯車1、2の回転によって吐出口5まで運ばれる。このように、吸入口4から矢印Zのようにギアケース3内に入った流体は矢印Wのように吐出口5から流出(吐出)される。
前記ギアポンプでは、歯車1、2の一方の側面29a、30aがサイドプレート24の内側面38に摺接し、歯車1、2の他方の側面29b、30bがサイドプレート25の内側面39に摺接する。このため、歯車1、2の側面29a、29b、30a、30bは、独立した微小なくぼみを無数にランダムに形成している。このくぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniが0.4μm≦Ryni≦1.0μmの範囲内であり、かつ、Sk値が−1.6以下、好ましくは−4.9〜−1.6の範囲である。また、くぼみを設けた面の面粗さパラメータRymaxが0.4〜1.0μmである。さらに、面粗さを各表面の軸方向と円周方向のそれぞれで求めてパラメータRqniで表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)の比の値Rqni(L)/Rqni(C)が1.5以下になっている。くぼみの平均面積が30〜100μm2の範囲内であり、くぼみを設けた面におけるくぼみの面積率が5〜20%の範囲内である。なお、くぼみの面積率とは、側面29a、29b、30a、30bに微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設けた場合、側面29a、29b、30a、30b全体の面積に占めるくぼみの面積の割合を意味する。このような表面性状を得るための表面加工処理としては、特殊なバレル研磨によると所望の仕上げ面を得ることができるが、これに限らず、例えばショット等を用いてもよい。
このように、本発明のギアポンプは、歯車の側面29a、29b、30a、30bに、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設けることによって、側面29a、29b、30a、30bに油膜が形成しやすくなる。しかもこのくぼみが油溜まりとなるため、側面29a、29b、30a、30bの油膜形成が確実に行える。このため、温度上昇の低減が可能となるとともに、歯車1、2の側面29a、29b、30a、30bとサイドプレート24、25との金属接触を緩和でき、サイドプレートの耐摩耗性を向上させることができる。特に、くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniを0.4μm≦Ryni≦1.0μmの範囲内に設定したことにより、希薄潤滑下でも油膜切れを防ぐことが可能となり、極端に油膜厚さが薄い条件下でも長寿命を得ることができる。また、Sk値を−1.6以下に設定したことにより、微小凹形状のくぼみにて油溜りを確実に形成することができ、圧縮されても滑り方向、直角方向への油のリークは少なく、油膜形成に優れ、表面損傷を極力抑える効果が発揮される。
また、くぼみを設けた面の面粗さパラメータRymaxを0.4〜1.0μmに設定することにより、さらに油膜形成能力を向上させることができ、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)の比の値Rqni(L)/Rqni(C)を1.5以下に設定することによっても、油膜形成能力を向上させることができる。
くぼみの平均面積が30〜100μm2の範囲内であり、くぼみを設けた面におけるくぼみの面積率が5〜20%の範囲内であるので、油膜形成能力を向上させることができるため、希薄潤滑下で極端に油膜厚さが薄い条件下でも長寿命を得ることができる。
従って、歯車1、2の側面29a、29b、30a、30bに設けたランダムなくぼみにより油膜形成能力が向上し、ギアポンプのサイドプレート24,25の摩耗を防ぎ、ギアポンプの耐久性を向上させることができる。
ところで、歯車1、2の側面29a、29b、30a、30bのみに本発明に係る表面性状を満たす表面処理を施しても、十分に長寿命等の効果を得ることができるが、側面29a、29b、30a、30bに対応するサイドプレート24、25の側面にも本発明に係る表面性状を満たす表面処理を施すのがより一層の効果がある。
なお、ギアポンプとして、歯車が2個に限るものではなく、3ギア配列式、遊星配列式などであってもよい。
本発明の有用性を示すために、転がり軸受と歯車の寿命評価を実施した。転がり軸受の転動体は、インナレース(相手軸)、アウタレース(外輪)と、また、歯車の歯面は相手側の歯面と転がりおよび滑り接触をし、その接触は歯車側面とサイドプレートの接触状態に準じた形態となる。従って、本発明の表面性状の評価は、転がり軸受および歯車の寿命試験で評価することができる。かかる観点から、本発明者らは、まず、後述の条件で転がり軸受の寿命試験を行った。以下に、パラメータRyni、Rymax、Sk、Rqniの測定方法、条件の一例を示す。これらのパラメータで表される表面性状を、転がり軸受の転動体や軌道輪といった構成要素について測定する場合、一ヶ所の測定値でも代表値として信頼できるが、たとえば直径方向に対向する二ヶ所を測定するとよい。
パラメータ算出規格:JIS B 0601:1994(サーフコム JIS 1994)
カットオフ種別:ガウシアン
測定長さ:5λ
カットオフ波長:0.25mm
測定倍率:×10000
測定速度:0.30mm/s
測定箇所:ころ中央部
測定数:2
測定装置:面粗さ測定器サーフコム1400A(東京精密株式会社)
パラメータ算出規格:JIS B 0601:1994(サーフコム JIS 1994)
カットオフ種別:ガウシアン
測定長さ:5λ
カットオフ波長:0.25mm
測定倍率:×10000
測定速度:0.30mm/s
測定箇所:ころ中央部
測定数:2
測定装置:面粗さ測定器サーフコム1400A(東京精密株式会社)
また、くぼみの定量的測定を行うには、対象となる表面を拡大し、その画像から市販されている画像解析システムにより定量化できる。さらには、特開2001−183124に開示されている表面性状検査方法及び表面性状検査装置を用いれば、安定して精度良く測定することができる。この方法は、曲率を有する検査表面に光を照射して検査表面をカメラで撮影し、このカメラで撮影された検査表面の画像の輝度を測定して、この測定された輝度の明部と暗部のコントラストで形成される明暗パターンにより、検査表面の表面性状を検査する表面性状検査方法であって、光をカメラの光軸方向に合致させて照射し、測定される画像の輝度分布がピーク値を示す位置を、カメラの光軸上に一致させるように、検査表面を位置決めすることにより、検査表面の曲率に起因するシェーディング(輝度分布)を抑制するものである。また、光をカメラの光軸方向に合致させて照射し、測定される画像の輝度分布について、この輝度分布がピーク値を示す位置に相当する検査表面の部位を原点とし、曲率の対称軸を一つの軸とする直交二次元座標で、直交する各座標軸に沿う一次元の輝度分布をそれぞれ近似関数で近似し、これらの近似関数を用いて、画像の輝度分布を除去するように、輝度分布のピーク値を基準値として、座標各位置に相当する測定された画像の輝度を補正し、この補正された輝度の明暗パターンにより検査表面の表面性状を検査することにより、シェーディングのない明暗パターンで表面性状を検査することができる。測定条件はたとえば次のとおりである。また、くぼみの面積率、平均面積を測定する場合、上記のパラメータと同様に、一ヶ所の測定値でも代表値として信頼できるが、たとえば直径方向に対向する二ヶ所を測定するとよい。
面積率:観察視野範囲で2値化閾値((明部の輝度+暗部の輝度)/2)よりも小さい画素(黒)の占める割合
平均面積:黒の面積の合計/総数
観察視野:826μm×620μm
測定箇所:ころ中央部
測定数:2
面積率:観察視野範囲で2値化閾値((明部の輝度+暗部の輝度)/2)よりも小さい画素(黒)の占める割合
平均面積:黒の面積の合計/総数
観察視野:826μm×620μm
測定箇所:ころ中央部
測定数:2
図3は供試転がり軸受の一例を示しており、この転がり軸受10は転動体として針状ころ12を外輪13に組み込んだ針状ころ軸受であり、針状ころ12で相手軸14を支持するようになっている。針状ころ表面に、仕上面の異なる表面処理を施した複数種類の針状ころ軸受を製作し、寿命試験を行なった結果について説明する。寿命試験に用いた針状ころ軸受は、図4に示すように、外径Dr=33mm、内径dr=25mm、針状ころ12の直径D1=4mm、長さL=25.8mmで、15本の針状ころを用いた保持器15付きの軸受である。試験軸受として針状ころの表面粗さ仕上の異なる3種類を製作した。すなわち、研削後スーパーフィニッシュを施した軸受A(比較例)と、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に形成した軸受B(比較例)、軸受C(参考例)、軸受D(参考例)とである。各試験軸受の針状ころにおける仕上面状況を図5〜図7に示す。具体的には、図5は軸受Aの表面粗さ、図6は軸受Bの表面粗さ、図7は軸受C及び軸受Dの表面粗さをそれぞれ示す。また、各試験軸受の表面仕上面の特性値パラメータ一覧を表1に示す。なお、Rqni(L/C)については、軸受B、C及びDは1.5以下であり、軸受Aは1.5前後の値である。また、結晶粒度の測定は、JIS G 0551の鋼のオーステナイト結晶粒度試験方法に基づいて行なった。
使用した試験装置は図8に概略図で示したようなラジアル荷重試験機16で、回転軸17の両側に試験軸受10を取り付け、回転と荷重を与えて試験を行なうものである。試験に用いたインナレース(相手軸)の仕上は研磨仕上のRa0.10〜0.16μmである。アウタレース(外輪)も共通である。試験条件は以下のとおりである。
軸受ラジアル荷重:2000kgf
回転数:4000rpm
潤滑剤:クリセクオイルH8(試験条件で2cst)
軸受ラジアル荷重:2000kgf
回転数:4000rpm
潤滑剤:クリセクオイルH8(試験条件で2cst)
図9に油膜パラメータΛ=0.13の下での寿命試験結果を示す。同図の縦軸が寿命時間(h)を表している。同図に示すように、軸受Aが78h、軸受Bが82hであったのに対して軸受Cは105h、軸受Dは121hであった。このデータから明らかなように、針状ころ表面が本発明に係る表面形状を満たすように表面処理された軸受C及びDは、油膜パラメータΛ=0.13という低粘度、希薄の非常に過酷な潤滑条件下でも長寿命効果を得ることができる。従って、歯車の側面を上記数値範囲に設定した本発明に係るギアポンプは、高い長寿命効果を得ることができる。
次に、図10に示す平歯車疲労試験機を使用して歯車のピッチング試験を実施し、ピッチング強度を評価した。図10において、ドライブ側歯車31(歯数29枚)とドリブン側歯車32(歯数30枚)は各々の回転軸33、34の片側に取付けられており、ドライブ側の軸33が図示しないモータにより駆動されている。また、ドライブ側の軸33に取付けてある負荷レバー35及び重錘36によりトルクを負荷する構造となっている。ドライブ側歯車31は、本発明に係る表面処理の有無で2種類を用意した。試験条件等の詳細は、表2のとおりである。
歯車ピッチング試験のデータを表3、表4及び表5に示す。表3はドライブ側及びドリブン側の何れの歯車にも表面処理を施していない場合(a)の結果(比較例)を示し、表4はドライブ側歯車の歯面に、本発明に係る表面性状を満たすように表面処理を施したものを使用した場合(b)の結果(実施例)を示し、表5はドライブ側歯車及びドリブン側歯車の歯面に、本発明に係る表面性状を満たすように表面処理を施したものを使用した場合(c)の結果(実施例)をそれぞれ示す。これらより、ピッチング寿命が、(a)の場合に比べ、(b)の場合では2倍以上向上し、(c)の場合では3倍以上向上していることが確認できる。
図11に示す2円筒試験機を使用してピーリング試験を行い、金属接触率を評価した。同図において、駆動側円筒42(D円筒:Driver)と従動側円筒44(F円筒:Follower)は各々の回転軸の片端に取り付けられ、2本の回転軸46、48はそれぞれプーリ40を介して別々のモータで駆動できるようになっている。D円筒42側の軸46をモータで駆動し、F円筒44はD円筒42に従動させる自由転がりにした。F円筒44は、表面処理に関して比較例と実施例の2種類を用意した。試験条件等詳細は表6のとおりである。
金属接触率の比較データを図12に示す。同図は横軸が経過時間、縦軸が金属接触率を表し、図12(A)は比較例Eの軸受におけるころの転動面の金属接触率を、図12(B)は参考例Fの軸受におけるころの転動面の金属接触率を、それぞれ示す。これらの図を対比すれば、比較例に比べて実施例では金属接触率が改善されていることを明瞭に確認できる。言い換えれば、油膜形成率(=100%−金属接触率)が、参考例Fの軸受の方が比較例Eの軸受に比べて、運転開始時で10%程度、試験終了時(2時間後)で2%程度、向上している。
1、2 歯車
29a、29b、30a、30b 側面
29a、29b、30a、30b 側面
Claims (5)
- 歯車の噛合いにより流体を送り出すギアポンプにおいて、歯車の側面に、微小凹形状のくぼみをランダムに無数に設け、前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRyniが0.4μm≦Ryni≦1.0μmの範囲内であり、かつ、Sk値が−1.6以下であることを特徴とするギアポンプ。
- 前記くぼみを設けた面の面粗さパラメータRymaxが0.4〜1.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項1のギアポンプ。
- 前記くぼみを設けた面の面粗さをパラメータRqniで表示したとき、軸方向面粗さRqni(L)と円周方向面粗さRqni(C)との比の値Rqni(L)/Rqni(C)が1.5以下であることを特徴とする請求項1のギアポンプ。
- 前記くぼみの平均面積が30〜100μm2の範囲内であることを特徴とする請求項1のギアポンプ。
- 前記くぼみを設けた面におけるくぼみの面積率が5〜20%の範囲内であることを特徴とする請求項1のギアポンプ。
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