以下、図1ないし図9を参照しながらこの発明を実施するための最良の形態について説明する。ここでは、3ゾーン円環式ガラス成形装置10の好ましい実施の形態について説明する。なお、本実施の形態に係るガラス成形装置10は、従来のバッチ式成形装置(図10参照)の利点を生かしつつ、これを連続式成形装置(図11および図12参照)に応用したものである。
3ゾーン円環式ガラス成形装置10の全体像を図1に示す。成形前のガラス素材(被成形素材)12を図2(A)に示し、金型組14を図2(B)および図2(C)に示す。さらに、3ゾーン円環式ガラス成形装置10の各部の詳細については、図3ないし図7に示す。
図2(B)および図2(C)に示すように、金型組14は上型14aと下型14bと胴型14cとを備えている。金型組14は下型14bを土台とし、その上に上型14aが載置されている。さらに、下型14bには底部にフランジ状に突出した突出部が形成されている。この下型14bの突出部上でかつ、上型14aの外周には、下型14bに対する上型14aの位置ずれを防止するように胴型14cが配設されている。この胴型14cは、筒状に形成されている。この胴型14cの側面には、胴型14cの中心に向かって、上型14aと下型14bとの間に連通する貫通孔14dが形成されている。この貫通孔14dは上下の金型14a,14b間の気体を金型組14の外側の気体と出し入れするために形成されている。もちろん、真空引きした際には、この貫通孔14dから気体が排出される。
本実施の形態では、図2(B)および図2(C)に示す金型組14を用いて成形するガラス成形品(光学素子)のサイズはφ75mmである。すなわち、本実施の形態では、比較的大きなサイズのアプリケーションを採用している。また、図2(C)に示すガラス成形品では、上型14aおよび下型14bの両者の成形面が凹状に形成された両凸レンズを採用しているが、片凹片凸のメニスカスレンズも成形することができる。この場合、上型14aおよび下型14bの一方の成形面を他方に対して突出させていれば良い。
本実施の形態に係る3ゾーン円環式ガラス成形装置10を用いて成形される、図2(A)に示すガラス素材12について説明する。ガラス素材12のメーカはオハラである。ガラス型式はS−BSL7(BK−7相当品)である。屈折率(Nd)は1.51633である。歪点は532℃である。徐冷点は563℃である。転移点は576℃である。屈伏点は625℃である。軟化点は718℃である。
次に、3ゾーン円環式ガラス成形装置10の全体構成について説明する。
図1に示すように、3ゾーン円環式ガラス成形装置10は、下フレーム22と、上フレーム24とを備えている。下フレーム22は、3ゾーン円環式ガラス成形装置10の土台部分であり、これは例えば略直方体などの箱型状に形成されている。この下フレーム22の側面には、それぞれ略矩形状などの開口部22aが形成されている。これら開口部22aによって、例えば後述する搬送機構30のメンテナンスなどの際に工具やメンテナンス用機材等を容易に出し入れすることができるので、搬送機構30のメンテナンスを容易に行うことができる。また、下フレーム22の内側または近傍には、図5ないし図8に示す不活性ガスボンベ16a、真空ポンプ16b、冷却水槽16cおよび制御装置18が配設されている。なお、不活性ガスとして、ここでは、窒素(N2)ガスを使用するものとして説明する。
上フレーム24は、下フレーム22の上側に配設されている。この上フレーム24は、下フレーム22の上面の四隅からそれぞれ立設された立設フレーム24aと、これら立設フレーム24aの上に載置された平板フレーム24bとを備えている。この平板フレーム24bと、下フレーム22の上面との間には、隔離チャンバ28が配設されている。
隔離チャンバ28は、略円筒型に形成されている。この隔離チャンバ28内には、金型搬送機構30が配設されている。ここでは、装置10を可能な限りコンパクトにするため、ロータリ方式で金型組14(図2(B)および図2(C)参照)を搬送する。このため、金型搬送機構30は、下フレーム22の上面の略中央に、回転軸32を備えている。この回転軸32は、サーボモータからなる回転用モータ34により回転されるとともに、昇降用シリンダ36により昇降される。これら回転用モータ34および昇降用シリンダ36は、それぞれ上述した制御装置18に電気的に接続されている。この回転軸32の上端は隔離チャンバ28の内部に配設されている。この回転軸32の上端には、円盤状に形成された搬送用回転テーブル38が取り付けられている。もちろん、回転軸32は回転テーブル38の中心に取り付けられている。すなわち、搬送用回転テーブル38は、隔離チャンバ28内に配設され、隔離チャンバ28内を回転および昇降可能である。
この搬送用回転テーブル38には、図3、図4(A)および図4(B)に示すように、4組のハンド(2爪エアチャック)40が取り付けられている。ここでは、これら4組のハンド40は、上述した回転軸32を中心とする同一円周(同一円環)上に、その中心に対して互いに90度離れた等間隔に配置されている。搬送用回転テーブル38の4組のハンド40は、上述した回転軸32を中心として搬送用回転テーブル38を回転させたときに、それぞれ後述するIOポート部44、加熱部46、プレス成形部48、冷却部50に同時に対向する。これらハンド40は、金型組14(図2(B)および図2(C)参照)を載せる後述する断熱軸(断熱部材)62の胴部を把持して、IOポート部44にある金型組14を加熱部46へ、加熱部46にある金型組14をプレス成形部48へ、プレス成形部48にある金型組14を冷却部50へ、冷却部50にある金型組14をIOポート部44へそれぞれ同時に搬送する。なお、ここでは、断熱軸62は、熱伝導性が悪く、プレス強度が強いセラミックス材(例えばSi3N4など)を使用することが好適である。
図4(A)に示すように、隔離チャンバ28の内部には、IOポート部44、加熱部46、プレス成形部48、冷却部50が上述した回転軸32を中心とする同一円周(同一円環)上に、その中心に対して互いに90度離れた等間隔に配置されている。これらIOポート部44、加熱部46、プレス成形部48、冷却部50のそれぞれの基部は下フレーム22の上面にそれぞれ固定されている。すなわち、ステーション構成は、各工程中の金型組14の移動を防止するため、または、極力金型組14の移動量を減らすため、加熱・プレス成形・冷却の各工程に対して各1個とした計3ステーション(3ゾーン)である。ところが、上述した3ステーションにIOポート部44が追加されているので、成形装置10内のステーションは、合計4ステーション(4ゾーン)である。
加熱部46、プレス成形部48、冷却部50は、金型組14の搬送機構30とともに隔離チャンバ28内に包括して配置されている。その隔離チャンバ28の内部は、高温にされる金型組14が酸化することを防止するように、大気に対して隔離された状態の真空雰囲気か、または不活性ガス雰囲気に置換される。この場合、隔離チャンバ28内を常に真空雰囲気にしておく必要はない。例えば成形装置10を立ち上げたときに隔離チャンバ28を不活性ガスに置換する前に、一度真空に引く。その後、単純に隔離チャンバ28内に不活性ガスを噴出して酸素などを含む空気(気体)を追い出す方式より効果的に不活性ガスに置換することが可能である。すなわち、パージで真空状態を不活性ガス(N2ガス)雰囲気にしたり、酸素を追い出すように不活性ガス(N2ガス)のみを隔離チャンバ28内に吹き付けるようにしても良い。すなわち、酸素を隔離チャンバ28内から追い出すことができれば良い。
次に、IOポート部44の構成について図5を用いて説明する。
図5に示すように、下フレーム22には、隔離チャンバ28の底壁を気密に保持した状態で貫通して上方へ延びた金型昇降シリンダ52が配設されている。この金型昇降シリンダ52には、上下方向に昇降される昇降軸54が配設されている。この昇降軸54の上端には金型受台56が配設されている。
金型受台56の上側の凹部(軸)56aには例えば窒化珪素などで形成された筒状の断熱軸62が載置されている。この断熱軸62は、金型受台56に対して立設されるように下端部にフランジ部が形成されている。さらに、この断熱軸62の上端部にもフランジ部が形成されている。この断熱軸62の上端部のフランジ部上には金型組14を載置するダイプレート64が設置されている。ダイプレート64は、セラミックス材(例えばSiCやTiCなど)を使用することが好適である。
上述した昇降軸54には金型エジェクタ用シリンダ66が内蔵されている。この金型エジェクタ用シリンダ66により少なくとも3本の押し出しロッド(押上ピン)68が昇降される。これら押し出しロッド68の上端は、常に同じ高さに配置される。また、これら押し出しロッド68の上端はそれぞれ適度に離され、これらの上端によって適当な仮想三角形が形成されている。ところで、上述した金型受台56、断熱軸62およびダイプレート64には、図示しない貫通孔がそれぞれの上下方向に形成されている。このため、押し出しロッド68は、金型受台56、断熱軸62およびダイプレート64を貫通して上方へ突出可能、かつ、断熱軸62の下端部から下方へ抜き出し可能に昇降する。
これら押し出しロッド68のうちの少なくとも1本の例えば上端部には、図2(B)および図2(C)に示す金型組14の温度を検出するための熱電対70が取り付けられている。この熱電対70は、冷却部50から搬送される金型組14の温度を検出する。この熱電対70は制御装置18に電気的に接続されている。このため、この熱電対70で検出された温度を制御装置18に送信し、その制御装置18によって、隔離チャンバ28からの金型組14の搬出の可否が判断される。
また、金型受台56の上面でかつ、断熱軸62から離れた周囲には、Oリング56bが配設されている。金型昇降シリンダ52の昇降軸54を上昇させたとき、金型受台56上のOリング56bが隔離チャンバ28の天上壁に設けられた開口28aの縁部に密着する。このとき、開口28aを内側から気密に閉塞する。なお、この開口28aの大きさは、断熱軸62を通すが、金型受台56を通さない形状および大きさである。
この開口28aの上側には、ロードロック機構を構成するIOチャンバ72が配設されている。このIOチャンバ72には、上フレーム24の平板フレーム24bに配置された昇降シリンダ60が配設されている。このため、IOチャンバ72は、大気、すなわち、装置10の外側に対して開閉可能である。例えば、昇降シリンダ60には、閉じた状態でIOチャンバ72内を気密に保持することが可能なキャップ(図示せず)が装着されている。このため、IOチャンバ72は、そのキャップを開くことによって、金型組14を成形装置10の外側から内側に、または、装置10の内側から外側に受け渡し可能である。
さらに、窒素ガスボンベ16aは隔離チャンバ28およびIOチャンバ72に窒素ガスを供給可能である。また、真空ポンプ16bはIOチャンバ72内の気体を排出可能である。
IOポート部44に金型組14を搬入する場合、隔離チャンバ28の天上壁に設けられた開口28aによって連通された隔離チャンバ28とIOチャンバ72との内部を真空ポンプ16bを駆動させて真空引きする。このように真空引きしながら、金型受台56を上昇させて隔離チャンバ28の上述した開口28aを密閉した後、昇降シリンダ60を駆動させてIOチャンバ72を開く。このとき、押し出しロッド68を上昇位置に配置する。
なお、例えば成形装置10を立ち上げたときなど、隔離チャンバ28が真空でないときには、IOチャンバ72を真空に引く必要はない。
金型組14は胴型14cを把持するのみでは下型14bが抜け落ちてしまうため、下型14bの底面を図示しないロボット(自給装置)のハンド等により支持する。ロボットのハンドを押し出しロッド68の間などに挿入し、金型組14の底面を押し出しロッド68の上に載置する。ロボットのハンド等を金型組14の下から抜き出した後、押し出しロッド68を下降させる。そうすると、金型組14がダイプレート64の上に載置される。このとき、押し出しロッド68の上端は、断熱軸62の下端部のフランジ部からさらに下側に抜け出すまで下降させることが好ましい。
なお、IOチャンバ72には、その内部を真空引きした際に上金型14aが大気圧によって飛び出すことを防止するように、上金型14aおよび胴型14cを押さえる機構としてプランジャ72aが配設されている。
次いで、IOチャンバ72のキャップ(図示せず)を閉塞して密封し、IOチャンバ72内を真空ポンプ16bで排気する。その後、IOチャンバ72内に窒素ガスを供給する。このため、IOチャンバ72内が隔離チャンバ28内と同じ窒素ガス雰囲気となる。その後、金型受台56を下降させて金型組14を隔離チャンバ28内のIOポート部44に取り込む。
この状態でIOポート部44から加熱部46への金型組14の搬送および冷却部50からIOポート部44への金型組14の搬送が行われる。
一方、IOポート部44から金型組14を搬出する場合、冷却部50からIOポート部44に金型組14を搬送する。金型昇降シリンダ52により金型受台56を上昇させ、隔離チャンバ28の天上壁に設けられた開口28aを閉じる。金型エジェクタ用シリンダ66により押し出しロッド68が上昇し、金型組14の底面をダイプレート64から離すように所定量持ち上げる。このとき、押し出しロッド68の先端に設けられた熱電対70で金型組14の底面の温度を検出し、この温度が所定値以下ならば、IOチャンバ72を開く。なお、金型組14の温度が所定値以下でないときは、所定値以下になるのを待ってIOチャンバ72を開く。IOチャンバ72が開かれたら、ダイプレート64と金型組14の間に図示しないロボットのハンドを差し込んで金型組14をIOポート部44の外部に搬出する。その後、押し出しロッド68を下降位置に配置する。
なお、上記隔離チャンバ28内は、窒素ガス雰囲気とせず、真空に保持するようにしても良い。この場合には、IOチャンバ72には、窒素ガスを供給せず、真空引きのみを行う。
次に、図6を用いて加熱部46の構成について説明する。
図6に示すように、隔離チャンバ28の底部には、ハンド40によってIOポート部44から断熱軸62とともに搬送された金型組14を載置する金型受台82が設けられている。この金型受台82の上面は、IOポート部44の金型受台56の上面と同じ高さに設置されている。この金型受台82の中央部には、図示しない軸が形成されている。この軸は搬送機構30の回転軸32を中心として、IOポート部44の昇降軸54に対して90度離れた位置に形成されている。この軸は貫通され、貫通孔82aが形成されている。金型受台82の貫通孔82aには、窒素ガスを供給可能である。なお、断熱軸62が金型受台82に載置されたとき、貫通孔82aと断熱軸62の内孔とが連通される。金型受台82には、さらに他の貫通孔82bが形成され、この貫通孔82bは真空ポンプ16bに接続されている。
この加熱部46の金型受台82の上方には、赤外線から紫外線等の広範囲の電磁波透過性を有しかつ耐熱性を有する石英チャンバ84と、その周囲を囲む赤外線ランプヒータユニット86とが支持プレート88を介してエアシリンダ90により昇降可能に設けられている。このエアシリンダ90は、上フレーム24の平板フレーム24bに装着されている。このヒータユニット86は制御装置18に電気的に接続されている。支持プレート88の中央部には、貫通孔88aが形成され、窒素ガスボンベ16aに接続されている。
石英チャンバ84は、下降位置にあるとき、金型組14の周囲に隔離チャンバ28内から隔離された加熱空間を形成し、金型組14の搬送時には上方へ退避する。この石英チャンバ84内の加熱空間には、支持プレート88の貫通孔88aおよび金型受台82の貫通孔82aから断熱軸62を通して窒素ガスが供給されると同時に、金型受台82の他の貫通孔82bを通して真空ポンプ16bにより排気(真空引き)が行われる。なお、金型受台82および支持プレート88には、石英チャンバ84の内外の連通を防止するOリング92がそれぞれ配設されている。
なお、この石英チャンバ84内は、隔離チャンバ28内が真空に保持される場合には、これに合わせて真空引きのみを行う。
また、この加熱部46には、下フレーム22に設けられた下熱電対昇降用エアシリンダ94より押し上げられてダイプレート64に当接される下熱電対96が設けられている。この下熱電対96は、金型受台82を貫通するとともに、断熱軸62の上端部のフランジ部を貫通している。この下熱電対96は制御装置18に電気的に接続されている。下熱電対96の出力を制御装置18に取り込んで赤外線ランプヒータユニット86の出力を制御して金型組14を所定の温度に加熱する。
なお、図示しないが、石英チャンバ84内を真空引きした際に、上金型14aおよび胴型14cが大気圧のときに飛び出すことを防止するように、上金型14aを押さえる機構としてプランジャ84aが配設されている。これは、IOポート部44のプランジャ72aと同様である。
次に、図7を用いてプレス成形部48の構成について説明する。
図7に示すように、プレス成形部48は、図6に示した加熱部46の構成にプレス機構102と上熱電対104を付加した構成であり、その他は上記加熱部46とほぼ同じ構成である。このため、上述した加熱部46で説明した部材と同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。なお、図7に示すプレス成形部48の金型受台82の中央の軸は、搬送機構30の回転軸32を中心として、IOポート部44の昇降軸54に対して180度離れた位置に形成されている。すなわち、プレス成形部48の金型受台82の中央の軸は、搬送機構30の回転軸32を中心として、加熱部46の金型受台82の中央の軸に対して90度離れた位置に形成されている。
プレス機構102は、サーボモータ106により駆動される減速機(スクリュージャッキ)108により昇降される上軸110が隔離チャンバ28の天上壁を気密に貫通して隔離チャンバ28内に延出されている。支持プレート88には開口部88bが形成されている。この開口部88bには、上軸110と支持プレート88との間をシールするOリング112が配設されている。サーボモータ106は制御装置18に電気的に接続されている。この上軸110の先端(下端)には断熱軸62aを介してダイプレート64aが取り付けられている。断熱軸62aは、上述した断熱軸62と同じ構成である。ダイプレート64aは、上述したダイプレート64と同じ構成である。上軸110には、ダイプレート64aと同軸上に形成された連通孔110aが形成されている。この連通孔110aには、窒素ガスボンベが接続されている。
このプレス成形部48では、上下の熱電対104,96により金型組14の温度を検出する。なお、上熱電対104は一端がダイプレート64aに当接され、他端が制御装置18に電気的に接続されている。そして、金型組14の温度が所定の成形温度に安定した状態で、上軸110を下降させ、ダイプレート64aを金型組14の上型14aに押し付ける。上軸110の途中に設けられたロードセル114の出力によりサーボモータ106の出力を制御しつつ所定の力で上型を押圧してプレス成形を行う。このロードセル114は制御装置18に電気的に接続されている。
次に、図8(A)ないし図8(C)を用いて冷却部50の構成について説明する。
図8(A)に示すように、隔離チャンバ28の底部には、加熱部46およびプレス成形部48と同様に、中央部の軸上に貫通孔122aを有する金型受台122が設けられている。この金型受台122の中央の軸(貫通孔122a)は、搬送機構30の回転軸32を中心として、IOポート部44の昇降軸54に対して270度離れた位置に形成されている。すなわち、冷却部50の金型受台122の中央の軸は、搬送機構30の回転軸32を中心として、プレス成形部48の金型受台82の中央の軸に対して90度離れた位置に形成されている。
この金型受台122の上方には、1対の水冷子124が配設されている。これら水冷子124は1対の水冷子昇降エアシリンダ126aによって昇降される。また、図8(B)および図8(C)に示すように、水冷子124は水冷子開閉エアシリンダ126b(図8(A)参照)によって近接および離隔するようにして開閉される。
図8(B)および図8(C)に示すように、これら水冷子124は、金型組14の外周を囲むように、半円形状に形成されている。これら水冷子124は、金型組14の外周から若干離れて金型組14の外周面に対向する開状態と、金型組14の外周面に接触する閉状態の2つの位置に配置される。
水冷子124には冷却水槽16cが接続されている。このため、冷却水槽16cから冷却水が循環状態に供給され、水冷子124が閉状態(図8(C)参照)にあるとき、金型組14の外周面に接触して金型組14を水冷可能である。また、水冷子124には窒素ガスボンベが接続されている。このため、水冷子124が開状態(図8(B)参照)にあるとき、窒素ガスボンベ16aから窒素ガスが供給され、水冷子124の内周面から金型組14の外周面に向けて窒素ガスが吹き付けられる。このため、金型組14を空冷可能である。
次に、このような構成を有する3ゾーン円環式ガラス成形装置10の作用について説明する。
まず、3ゾーン円環式ガラス成形装置10をイニシャル状態にする。3ゾーン円環式ガラス成形装置10のイニシャル状態とは、成形装置10の各駆動部(IOポート部44、加熱部46、プレス成形部48、冷却部50)が原点位置にあることをいう。
図5に示すIOチャンバ(ロードロック室)72のキャップは昇降シリンダ60を上昇させることによって開放され、IOポート部44の金型昇降シリンダ52の昇降軸54は上方にある。すなわち、IOチャンバ72は大気に開放され、かつ隔離チャンバ28内は密閉されている。隔離チャンバ28内は真空引きされた後、予め不活性ガス(N2ガス)に置換されている。さらに、金型エジェクタ用シリンダ66が駆動され、押し出しロッド68の上端が断熱軸62およびダイプレート64よりも上側に配置されている。図6に示す加熱部46および図7に示すプレス成形部48の石英チャンバ84およびヒータユニット86(各ヒータ/チャンバユニット)は上方に逃げている。プレス成形部48の上軸(プレス軸)110は上方に逃げている。図8(A)に示す冷却部(冷却ユニット)50の水冷子(水冷ブロック)124は開いている(図8(B)参照)。
次に、オペレータは、IOポート部44上の断熱軸62(実際にはダイプレート64が断熱軸62に締結されているので下側ダイプレート64上)に配置するため、上述したガラス素材12を組み込んだ金型組14を、押し出しロッド68の上端に載置する。この載置は、手動のほか、スカラロボット等を用いた自給装置などでも良い。そして、金型エジェクタ用シリンダ66を駆動させて押し出しロッド68の上端をダイプレート64および断熱軸62に対して引き込む。このため、金型組14の底面がダイプレート64上に設置される。このとき、ダイプレート64によって金型組14が所定の位置(凹部(軸)56a)に設置される。
次に、IOポート部44の昇降シリンダ60を降下させて図示しないキャップでIOチャンバ(ロードロック室)72を密閉する。そして、このIOチャンバ72内を真空引きする。IOチャンバ72が規定の真空度(本実施の形態では3Pa)に到達したら、ガスボンベ16aから不活性ガスを注入する。なお、金型組14の胴型14cの側面には空気抜き用の貫通孔14dが予め加工されているので、気体の出し入れが行われて金型組14の内部までも不活性ガスに完全に置換される。
IOポート部44のIOチャンバ72に不活性ガスを注入して、隔離チャンバ28内と同じ圧力にする。同じ圧力に達したら、IOポート部44の昇降軸54を下方に下げて金型組14を隔離チャンバ28内に搬入する。
図4(A)および図4(B)に示す搬送機構30のハンド(2爪チャック)40を閉じて、断熱軸62の上端部および下端部の間の胴部を把持する。図3に示す搬送機構30の昇降用シリンダ36を駆動させて搬送用回転テーブル38を上方に上げて、断熱軸62とIOポート部44の金型受台56の図示しない軸との嵌合を外す。そして、搬送機構30のサーボモータ34を駆動させて回転軸32を90度回転させて、金型組14をIOポート部44から加熱部46に搬送する。
搬送のために上方に上げていた搬送機構30の回転テーブル38を下げて、図6に示す加熱部46の金型受台82の軸と断熱軸62とを嵌合させる。そして、搬送のために閉じていたハンド40を開く。
エアシリンダ90を駆動させて加熱部46の石英チャンバ84およびヒータユニット86を下方に下げる。このとき、石英チャンバ84はOリング92などでシールされるので、隔離チャンバ28と石英チャンバ84内とは隔離される。
加熱部46の石英チャンバ84の内部に不活性ガスを導入しながら、赤外線ランプヒータユニット86をONにして所定の加熱温度まで金型組14の温度を上昇させる。なお、本実施の形態では不活性ガスボンベから不活性ガスを流しながら加熱を行うものとして説明するが、不活性ガスを流さないで加熱しても良いし、または、真空引きを行って加熱してもよい。
なお、加熱部46のエリアは、石英チャンバ84で個別に収納することが可能であり、且つ石英チャンバ84の外周部に赤外線ランプヒータユニット86を配置することにより、大口径の金型組14を均一に加熱し、その温度を保持することが可能である。
金型組14が所定の温度に到達したら、所定時間その温度を保った後、加熱部46のヒータユニット86および石英チャンバ84を、エアシリンダ90を駆動させて支持プレート88を介して上方に上げる。
図4(A)および図4(B)に示す搬送機構30のハンド(2爪チャック)40を再び閉じて、断熱軸62の胴部を把持する。搬送機構30を上方に上げて、断熱軸62と加熱部46の金型受台82の軸との嵌合を解除する。そして、図3に示す搬送機構30の回転テーブル38を90度回転させて、金型組14を加熱部46から図7に示すプレス成形部48に搬送する。このとき、金型組14は断熱軸62に載置された状態で素早く搬送される。このため、高温に加熱された金型組14の温度を極力下げることなく、かつ、均一な温度を保持したまま加熱部46からプレス成形部48に搬送される。
金型組14を搬送するために上方に上げていた搬送機構30を下げて、プレス成形部48の金型受台82の軸と断熱軸62とを嵌合させる。そして、搬送のために閉じていたハンド40を開く。
プレス成形部48のヒータユニット86および石英チャンバ84を下方に下げる。このとき、石英チャンバ84はOリング92などでシールされ、隔離チャンバ28と石英チャンバ84との間は隔離される。
なお、プレス成形部48のエリアは、石英チャンバ84で個別に収納することが可能であり、且つ石英チャンバ84の外周部に赤外線ランプヒータユニット86を配置することにより、大口径の金型組14を均一に加熱し、温度を保持することが可能である。
プレス成形部48の石英チャンバ84の内部を金型受台82の貫通孔82bを介して真空に引きながら、赤外線ランプヒータユニット86をONにして所定の温度まで金型組14の温度を上昇させる。または、加熱部46で昇温された金型組14の温度を保持する。なお、本実施の形態では、金型組14の温度を上昇させる場合に真空引きを行うことについて説明したが、真空引きを行わなくても良い。この場合、金型組14の貫通孔82aから断熱軸62の内孔や、上軸110の連通孔110aを通して不活性ガスを石英チャンバ84内に注入しながら加熱し、または保温しても良い。さらに、不活性ガスを石英チャンバ84内に注入しないで加熱し、または保温してもよい。すなわち、プレス成形部48の石英チャンバ84の内部は、真空引きが可能な構造であるが、不活性ガス雰囲気と真空雰囲気の何れかを任意に選択することが可能である。
ここで、プレス成形部48の石英チャンバ84の内部の真空引きする前に、真空引きした際に上金型14aや胴型14cが大気圧によって飛び出すことを防止するように、上軸110を下げ、ダイプレート64aを上金型14aに近接させ、または、接触させる。この状態で真空引きを行う。
石英チャンバ84内の真空度が所定の真空度(本実施の形態では3Pa)に到達して、かつ所定時間が経過したら、サーボモータ106を駆動させて減速機(スクリュージャッキ)108によって上軸(プレス軸)110を降下させる。そして、断熱軸62a、および、ダイプレート64aを介して上金型14aの上部を押圧する。すなわち、金型組14内のガラス素材12をプレス成形する。プレス成形は、ロードセル114によりモニタされる検出データを制御装置18に入力し、その制御装置18で電動サーボモータ106を適宜に制御する。ここでは、プレス成形はプレス力フィードバック機構を用いて実施している。すなわち、プレス成形部48のプレス成形は、電動サーボモータ106で駆動させ、かつロードセル114にてプレス力をモニタしながらプレス力をフィードバック制御する。ここでは、プログラムされた任意のプレス力プロファイル(図9参照)の通りにプレス成形を行う。このため、正確にプレス位置およびプレス力を制御可能である。
なお、上金型14aのプレス量やプレス力は、金型14ごとに制御装置18にセットすることが可能である。すなわち、プレス量やプレス力は、所望の成形品ごとにプログラム設定される。
所定のプレス成形工程が完了したら、プレス成形部48の内部で金型組14を徐冷工程に移行する。この場合の冷却手段(徐冷手段)は、金型受台82の貫通孔82aから断熱軸62の内孔を通し、および、上軸110の連通孔110aから断熱軸62aの内孔を通して不活性ガスを石英チャンバ84内に注入する。そして、上下ダイプレート64,64aの背面に設けられた溝(図示せず)を空冷する。そうすると、間接的に金型組14およびガラス素材12の成形品が空冷される。このとき、プレス軸110は金型組14を任意にプレスすることが可能である。このため、金型組14にプレス力を加えたまま金型組14を冷却することが可能である。
上下の熱電対104,96によって検出された金型組14の温度が所定の温度まで降温したら、エアシリンダ90を駆動させてプレス成形部48のヒータユニット86および石英チャンバ84を上方に上げる。
図4(A)および図4(B)に示す搬送機構30のハンド(2爪チャック)40を閉じて、断熱軸62の胴部を把持する。搬送機構30を上方に上げて、断熱軸62とプレス成形部48の金型受台82の軸との嵌合を外す。そして、搬送機構30の搬送用回転テーブル38を90度回転させて、金型組14をプレス成形部48から図8(A)に示す冷却部50に搬送する。
搬送のために上方に上げていた搬送機構30の搬送用回転テーブル38を下げて、冷却部50の金型受台122の軸と断熱軸62とを嵌合させる。そして、搬送のために閉じていたハンド40を開く。
開いた状態の水冷子124(図8(B)参照)を水冷子昇降エアシリンダ126aを駆動させて下方に下げる。水冷子124を開いたままで、水冷子124の内壁に設けられた不活性ガスノズル(図示せず)からの不活性ガスによって金型組14を空冷する。
なお、不活性ガスによる金型組14の空冷を行わずに水冷工程を行うなど、空冷工程を省略してもよい。しかしながら、金型組14の温度が高い状態で水冷による急冷を行うと、ガラス素材12の成形品の精度に影響するおそれがある。または、熱応力により金型組14や成形品に破損が生じるおそれがある。このため、本実施の形態のように所定温度まで空冷を行なった後、水冷を行うことが好適である。また、空冷を行うときの配慮として、出来るだけ金型組14の外周部に均等に不活性ガスが当たるように配慮し、成形品の精度に留意する。
下熱電対96によって検出された金型組14の温度が所定の温度まで降温したら、水冷子開閉エアシリンダ126bを駆動させて水冷子124を閉じて、水冷子124を金型組14の外周部に均等に当たるように接触させる(図8(C)参照)。そして、冷却水槽16cから水冷子124に冷却水を供給して、金型組14を急冷させる。なお、冷却水は必要なときのみ供給することも好適であるが、常に供給することも好適である。所定時間内に金型組14を所定温度まで降温させた後、水冷子開閉エアシリンダ126bを駆動させて水冷子124を開く(図8(B)参照)。その後、水冷子昇降エアシリンダ126aを駆動させて水冷子124を上方に上げる。なお、このときの所定温度とは、隔離チャンバ28から金型組14を大気中に放置しても酸化しない温度を想定する。この実施の形態では、220℃とした(図9参照)。
図4(A)および図4(B)に示す搬送機構30のハンド(2爪チャック)40を閉じて、断熱軸62の胴部を把持する。搬送機構30を上方に上げて、断熱軸62と冷却部50の金型受台122の軸との嵌合を外す。そして、搬送機構30の搬送用回転テーブル38を90度回転させて、金型組14を冷却部50から図5に示すIOポート部44に搬送する。
搬送のために上方に上げていた搬送機構30を下げて、IOポート部44の金型受台56の凹部(軸)56aと断熱軸62とを嵌合させる。そして、搬送のために閉じていたハンド40を開く。
IOポート部44の金型昇降シリンダ52を駆動させ、昇降軸54を上方に上げる。そして、金型受台56のOリング56bで開口28aを密閉する。この状態で昇降シリンダ60を駆動させ、IOチャンバ72のキャップを開ける。
IOポート部44上の断熱軸62(実際にはダイプレート64が断熱軸62上に配置されているので下側ダイプレート64上)から成形品を組み込んだ金型組14を搬出する。このような搬出は、手動で行なっても良く、搬入するときのように図示しないロボット(自給装置)を使ってもよい。
また、図2(B)および図2(C)に示す金型組14の胴型14cを掴んで金型組14を持ち上げようとすると、下金型14bが抜け落ちてしまう。このため、IOポート部44に備え付けてあるエジェクタシリンダ66を駆動させて押し出しロッド68を下金型14bの底面に向かって突き出す。このため、金型組14がダイプレート64に対して上方に持ち上げられる。そして、金型組14の底面を支持して金型組14を搬出する。
この後、上記工程を最初から繰り返してガラス素材12の成形を行う。
なお、上述した成形順序は金型組14が成形装置10に搬入されてから搬出されるまでの工程を説明しているが、成形装置10の動作としては、金型組14がIOポート部44から加熱部46に搬送された時点で、別の金型組14を装置10のIOポート部44に搬入することが可能である。上記工程(手順)を踏んで、各ゾーンに金型組14を連続的に送り込むことも、間欠的に送り込むことも可能である。また、IOポート部44から金型組14を搬出するのと同時に、新しい金型組14を搬入することにより半永久的に成形装置10を稼動させることも可能である。なお、半永久的に成形装置10を稼動させ、連続的に金型組14を成形装置10に送り込むには、最低でも4個の金型組14を用意する必要がある。
なお、本実施の形態では、金型組14の加熱手段として赤外線ランプヒータユニット86(図6および図7参照)を用いたが、高周波誘導加熱(RF)を使用してもよい。また、金型組14のプレス駆動手段として、本実施の形態では電動サーボモータ106を駆動源として説明したが、油圧シリンダや空気圧シリンダを用いても良い。さらにまた、搬送機構30のハンド40は、爪が長く開閉のみを行う方式を示したが、短い爪のハンドとし、このハンドを中央の回転軸に対して放射方向へ伸縮するアームの先端に設ける方式としてもよい。
また、上述した実施の形態では、金型組14に胴型14cを有する胴型構造である場合について説明したが、金型組14の構造は胴型構造に限定されるものではない。
以上の成形工程(成形手順)でガラス素材12を所望の形状に成形した場合の縦軸に、成形温度プロファイルと成形プレス力プロファイルとを表したグラフを図9に示す。横軸は時間である。なお、IOポート部44で必要とされる時間は図9には含んでいない。
図9では、室温で金型組14をIOポート部44に搬入する(図9中の領域(I))。そして、加熱部46で室温から昇温し、保温温度を720℃とする(領域(II))。加熱部46からプレス成形部48に素早く受け渡す(領域(III))。プレス成形部48で再び昇温させ、保温温度を730℃とする(領域(IV))。さらに、プレス成形部48での徐冷終了温度を600℃とする。プレス成形部48から冷却部50に素早く受け渡す(領域V)。冷却部50での窒素空冷開始温度を600℃、水冷開始温度を500℃とし、冷却終了温度を220℃とする(領域(VI))。冷却部50からIOポート部44に金型組14を受け渡す(領域(VII))。このとき、金型組14の取り出し温度を220℃として成形した。なお、加熱部46での昇温/保温温度は730℃であっても構わない。
プレス力プロファイルは、第1プレスを20kN、第2プレス(保圧)を5kN、第3プレスを40kNに制御して成形を行った。
これらのプロファイルは、制御装置18の設定により任意に変更することが可能である。また、各金型組14ごとに、温度、プレス位置、プレス力を個別に設定することも可能である。この場合、それぞれ異なる成形品が形成される。
このときの工程別成形時間としては、プレス成形工程(徐冷工程も含む)が各工程の中で最長であり、その時間は5分である。その他の工程(加熱・冷却工程)は、もっと早くその工程を処理することも可能である。しかし、前述した通り、連続的に金型組14を搬送する場合、加熱・プレス成形・冷却の工程は同一時間で同時に搬送する必要がある。このため、加熱工程および冷却工程をあえて遅くしている。したがって、成形タクトとして決める要素は、プレス成形部48の成形時間に依存する。但し、加熱部46の保持時間は金型組14の均一加熱性能に影響される。また、冷却部50での冷却時間は成形品/金型組14の熱収縮(ヒケ)による精度に影響される。したがって、加熱するまで、及び、冷却するまでの時間が長くなるほど、成形品精度の影響を受け難くなることから、加熱工程、冷却工程をプレス成形工程の時間に合わせてあえて遅くすることは好適である。なお、このときの金型組14の均一加熱性能は、金型組14全体で±1℃以内であった。図9の成形タクトから、本実施の形態で成形したアプリケーションに対しての成形タクトは、金型組14を連続的に成形装置10内に搬出入した場合、5分/個となる。
このような作用により成形した成形品の精度を評価したところ、以下のような評価が得られた。
ガラス素材12の成形品の面精度は、金型組14の面精度がλ/16以内に対してλ/16以内である。ガラスレンズの上下面のディセンターは、金型組14の胴型14c、上下金型14a,14bのクリアランスがφ3μm以内に対して1μm以内である。レンズ上下面のチルトは、成形装置のプレス軸の上下面端のチルトが1sec以内に対して1sec以内である。
また、図9には示していないが、マイクロレンズアレイ等の成形も実施した。この場合、プレス成形部48における工程において必ず真空引きが必要である。これは、金型組14が凹状の成形面を有し、素材12が平板の状態で成形を行うため、真空成形でないと、金型組14の凹部にエア(不活性ガス)が残り、未成形部分が出てしまう可能性があるためである。したがって、マイクロレンズアレイのような複雑な成形アプリケーションでも良好な成形品を得ることができる。
また、図9には表していないが、1つの金型組14の中に、φ10mmのレンズ金型を18個配置した多数個取り金型組にて実施した結果、図9と同様な成形プロファイルで成形することが可能であった。精度的にも、前記と同程度である。したがって、φ10mmレンズの場合、成形タクトとしては、5min/18個=0.28min=16.8secの成形タクトを実現した。
本実施の形態では、金型組14が成形装置10に固定されている状態ではなく、成形サイクル毎に成形装置10の外側に搬出されてくるので、金型組14のメンテナンス等を行う場合に成形装置10を停止する必要はない。このため、装置10を稼動させながら、金型組14のメンテナンスを約30ショット毎に行った。この時のメンテナンス方法としては、IPA等の溶剤で軽く成形面を拭くなどの簡易的なものであった。
通常、バッチ式成形装置(図10参照)等のように装置に金型が固定されている場合は、装置が停止する時間等のロスを考慮して1000ショット程度までメンテナンス無しで稼動し続ける。しかし、硝材と金型材料との相性により、メンテナンス前に金型成形面に曇りが生じたり、最悪の場合はガラスの溶着等が発生したりして、金型成形面の再研磨や再コーティングが必要となる。
しかし、今回30ショット毎に簡易的な金型メンテナンスを行うことにより、従来の成形装置では相性の悪いガラスと金型材料であっても、10000ショットを経過しても致命的な再研磨等を要するメンテナンスを必要でなくすることができる。なお、簡易的なメンテナンスに関しては、手動で実施しても、自動化されたラインで実施してもよい。
以下に、従来のバッチ式成形装置210(図10参照)、連続式成形装置410(図11および図12参照)と、本実施の形態に係る成形装置10との精度や生産性について比較する。
図10に示す従来のバッチ式成形装置210の場合、本実施の形態に係る成形装置10に比べて、精度的には遜色なく成形することが可能である。しかし、冷却部での冷却工程における水冷化が非常に困難であることと、加熱・プレス成形・冷却の工程を分割することが出来ないことにより、φ75レンズの場合、約30〜40min/個程度必要とされる。
また、図11および図12に示す従来の連続式成形装置410の場合、φ10程度のレンズであれば約30sec/個程度で生産することが可能である。しかし、φ75程度のレンズを成形する場合、熱板による伝熱加熱による金型組の均一加熱不良、プレス工程を2つの工程に分割することによるプレス不良等により精度的にも成形タクト的にも実用に値する製品は得られなかった。当然、真空機能を必須とする、マイクロレンズアレイのような成形アプリケーションは成形出来ない。
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下のことが言える。
これら実施の形態によれば、従来のバッチ式成形装置の有利点を生かしつつ、これを連続式成形装置に応用した成形装置10を提供することができる。ただし、この成形装置10は、従来のバッチ式成形装置210(図10参照)および連続式成形装置410(図11および図12参照)の全ての欠点をカバーするものでは無い。本実施の形態に係る成形装置10は、特に、胴型構造の大口径金型組14を用いてガラス素材12を効率よく成形することができる。また、プレス成形部48で真空雰囲気で成形可能とする成形装置を提案することができる。以上のことより、本実施の形態に係る成形装置10は、高精度ガラス素子12を安価で且つ大量に生産可能である。すなわち、本実施の形態によれば、高精度ガラス素子12を安価で且つ大量に生産可能な成形装置10および成形方法を提供することができる。
また、高温に加熱される金型組14は断熱軸62上に載置された状態で搬送されるので、例えば加熱されたときにその温度を極力下げることなく金型組14を次のゾーン(工程)に搬送することができる。すなわち、金型組14に対して下側等から熱の影響を及ぼすことを防止することができる。なお、ダイプレート64が断熱材で形成されているとすると、断熱軸62の上にダイプレート64が配置されている場合であっても、金型組14が断熱軸62やダイプレート64から熱の影響を受けることを防止することができる。この場合、図7に示す上熱電対104の一端はダイプレート64aの下面に対して僅かに突出しており、上型14aの温度を検出可能である。
さらに、胴型14cを有する金型組14を用いるとき、胴型14cを把持した状態で金型組14を持ち上げようとしても下型14bが胴型14cから外れてしまう。本実施の形態では、断熱軸62の軸方向、すなわち、上下方向に軸を有する押し出しロッド68を断熱軸62の上端部の上面(ダイプレート64の上面)に対して突没させることができる。すなわち、押し出しロッド68をダイプレート64の上面に対して突没させることができる。したがって、金型組14をIOポート部44から搬入および搬出する場合に押し出しロッド68を作動させて金型組14の底面をダイプレート64の上面から離した状態で金型組14の底面を容易に保持するようにすることができる。
なお、上述した実施の形態では、隔離チャンバ28の内部に加熱部46を設けることについて説明したが、プレス成形部48において常温から加熱しても良い。また、冷却部50を設けたことについて説明したが、プレス成形部48において220℃まで空冷することも好適である。すなわち、本実施の形態では3ゾーンガラス成形装置10を用いて説明したので、加熱・プレス成形・冷却の各工程を加熱部46、プレス成形部48、冷却部50の3ゾーン(3ステーション)に分割しているが、成形装置の簡略化のために、加熱部46の加熱工程と、プレス成形部48のプレス成形工程とを合わせて行うなど、プレス成形ゾーン(エリア)で加熱・保温・プレス成形・徐冷までの工程を集約してもよい。この場合、装置のコストを低減することができるが、若干成形タクトが長くなる。逆に、成形装置は、プレス成形工程を除く加熱および冷却の各工程(加熱部46、冷却部50)をいくつかに分割してもよい。
さらにまた、各工程(加熱部46、プレス成形部48、冷却部50)を直線上に配置してもよい。ただし、各工程を直線上に配置する場合、IOポート部44は、金型組14を搬入するIポート部(図示せず)と、金型組14を搬出するOポート部(図示せず)とに分けられる。すなわち、金型組14は、Iポート部から成形装置内に搬入され、加熱部46、プレス成形部48、冷却部50を順に移動して、Oポート部から搬出される。
これまで、一実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
10…3ゾーン円環式ガラス成形装置、12…ガラス素材、14…金型組、14a…上金型、14b…下金型、14c…胴型、16a…不活性ガスボンベ、16b…真空ポンプ、18…制御装置、22…下フレーム、24…上フレーム、24a…立設フレーム、24b…平板フレーム、28…隔離チャンバ、28a…開口、40…ハンド、44…IOポート部、46…加熱部、48…プレス成形部、50…冷却部、52…金型昇降シリンダ、54…昇降軸、56…金型受台、56a…Oリング、60…昇降シリンダ、62,62a…断熱軸、64,64a…ダイプレート、66…金型エジェクタ用シリンダ、68…押し出しロッド(押上ピン)、70…熱電対、72…IOチャンバ