JP2007163151A - 対象生物の生理状態を判定する方法 - Google Patents

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Akihiko Ito
昭彦 伊藤
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Abstract

【課題】腎生検と比較して被験者への負荷の格段に少ない非侵襲的なIgA腎症判定方法であって、かつ、特異度・感度に優れた判定方法、特にIgA腎症の判定方法の提供。
【解決手段】対象生物から得たタンパク質を含む試料を複数の倍率で希釈し、それぞれについてELISA(酵素免疫定量)法を行なって、希釈による検出値の変化を求め、参照タンパク質を含む対照試料について同様に求めた希釈による検出値の変化と比較して、対象生物の生理状態を判定する方法及びそのために用いるキット。
【選択図】なし

Description

本発明は、対象生物の生理状態を判定する方法、特にIgA腎症または紫斑病の病態を判定する及びその方法に用いる診断キットに関する。
IgA腎症とは、慢性糸球体腎炎のうち、糸球体メサンギウム細胞と基質の拡大(増生)とメサンギウム領域への IgAを主体とする沈着物とを認めるものをいう(IgA腎症診療指針第2版(日腎会誌、2002,44(7),487-493))。
IgA腎症は、慢性糸球体腎炎のうち成人では30%以上、小児でも20%以上を占め、慢性糸球体腎炎のうち頻度の最も大きな疾病である。また、長期的には末期腎不全へ至る症例が少なくなく、末期腎不全から透析療法に導入されるケースが少なくない。
このため、早期に的確な診断と予後判定を行ない、個々の症例に適した治療を実施することが望ましい。しかし、初期の段階では顕著な症状が見出し難く、現実には偶然の機会に蛋白尿・血尿から発見に至る例が大多数を占める。また、IgA腎症の確定診断には腎生検が不可欠であるとされているが、腎生検は出血などのリスクも高く、診断を受ける患者には肉体的にも経済的にも負担が大きい。
IgA腎症の発症機序は未だ十分には解明されていないが、最近、IgA1ヒンジ部の糖鎖異常が報告され、その糖鎖異常をもつ凝集IgAが抗原抗体複合物非依存性にメサンギウムに結合して炎症を惹起する可能性が示唆されている。そこで、IgA腎症患者の血清IgA1は、健常者等の非IgA腎症患者の血清IgA1よりも、IgA1分子ヒンジ部を介したIgA1分子間の結合能が有意に増加しているとして、IgA1分子間の結合能の差異を検出するIgA腎症の診断法が提案されている(特許文献1:特開平09−311132)。また、IgA1の糖鎖異常からヒンジ部が露出していることに着目し、抗合成ヒンジペプチド抗体によってその定量を図る方法も提案されている(非特許文献1:Nephrol. Dial. Transplant, 14:81-85, 1999)。
しかし、上記いずれの文献にも記載されているように、これらの方法ではIgA腎症患者群と非罹患者群とで定量結果に重複域が存在し、このため、判定のためのカットオフ値を高く設定すれば偽陰性のケースが増え、他方、カットオフ値を低く設定すると偽陽性のケースが増大し、IgA腎症患者を確定的に非罹患者群から識別する方法としてはより明確な判定法が望まれていた。
特開平9−311132号公報 Nephrol. Dial. Transplant, 14:81-85, 1999
従って、本発明は、腎生検と比較して被験者への負荷の格段に少ない非侵襲的なIgA腎症判定方法であって、かつ、特異度・感度に優れた判定方法を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ELISA法による判定の際に、検出された値そのものを比較するのではなく、複数の濃度、例えば倍々希釈した一連の試料を用いて濃度による検出値変化を求め、そのプロファイルを検体と対照とで比較することにより、IgA腎症が判定し得ること、特にこの際の検体試料としては被験者から得た血清試料を用い得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、上述のように、本発明はIgA腎症の判定方法の探求を契機とするが、上記手法は他の疾病にも適用し得るものである。従って、本発明は、一般的に以下の生理状態判定方法、IgA腎症または紫斑病の判定方法、IgA腎症または紫斑病の病態判定方法並びにIgA腎症または紫斑病の診断キットを提供する。
1.対象生物から得たタンパク質を含む試料を複数の倍率で希釈し、それぞれについてELISA(酵素免疫定量)法を行なって、希釈による検出値の変化を求め、参照タンパク質を含む対照試料について同様に求めた希釈による検出値の変化と比較して、対象生物の生理状態を判定する方法。
2.希釈倍率に対し検出値をプロットして得られる濃度−検出値曲線の対比により判定を行なう前記1に記載の判定方法。
3.希釈倍率の対数値に対し検出値をプロットして得られる濃度−検出値曲線について最小二乗法によって近似直線の傾きを求めて対比して判定を行なう前記2に記載の判定方法。
4.前記試料が対象生物から得た血清である前記1〜3のいずれかに記載の判定方法。
5.ELISA法で用いる1次抗体が抗免疫グロブリン抗体である前記1〜4のいずれかに記載の判定方法。
6.抗免疫グロブリン抗体が抗IgA抗体である前記5に記載の判定方法。
7.生理状態の判定が疾病の罹患の有無及び/または病態の判定である前記1〜6のいずれかに記載の判定方法。
8.対象生物がヒトである前記1〜7のいずれかに記載の判定方法。
9.ELISA法で用いる1次抗体が抗IgA抗体であり、2次抗体が、糖鎖異常IgAと結合するタンパク質の抗体である前記6〜8のいずれかに記載の判定方法。
10.2次抗体が標識抗IgG Fc抗体である前記9に記載の判定方法。
11.疾病がIgA腎症または紫斑病である前記9または10に記載の判定方法。
12.ヒト抗IgA抗体で被覆したプレートに、被検者から採取した血清を倍々希釈して接触させた後、各プレートに標識抗IgG Fc抗体を接触させ、前記血清中の糖鎖異常IgAを介して標識抗IgG Fc抗体を固定する工程1、標識を検出して希釈倍率の対数値に対し検出値をプロットし、得られる濃度−検出値曲線について最小二乗法によって近似直線の傾きを求める工程2、及び非罹患者から採取した血清についても同様の処理を行なって近似直線の傾きと対比する工程3を含み、工程2で求めた傾きが工程3により決定される閾値未満である場合には被験者がIgA腎症または紫斑病に罹患していると判定する前記11に記載の判定方法。
13.工程2で求めた傾きによりIgA腎症または紫斑病の病態を判定する前記12に記載の判定方法。
14.抗IgA抗体を含むELISA法の基材と標識された抗IgG Fc抗体を含むIgA腎症または紫斑病の診断キット。
本発明の方法によれば、従来の検定法では明確な識別が困難であった対象生物の生理状態の判定を明確に行なうことができる。また、患者群内での病態の比較や個体における病態の推移についても知見を得ることが期待される。
本発明は、対象生物から得たタンパク質を含む試料を複数の倍率で希釈し、それぞれについてELISA(酵素免疫定量)法、特にサンドイッチELISA法(2抗体酵素抗体法)を行なって、希釈による検出値の変化を求め、参照タンパク質を含む対照試料について同様に求めた希釈による検出値の変化と比較して、対象生物の生理状態を判定することを特徴とする。
すなわち、一般的なサンドイッチELISA法では、1次抗体を含む溶液を基材表面に接触させ、溶液中の1次抗体を吸着させる。しかる後、液相を除いて固相上に吸着した1次抗体だけを残し、ここに試料溶液を加える。試料中に1次抗体に結合する物質が含まれていた場合、前記物質は1次抗体に結合し固定される。次いで、洗浄を行なって未結合物質を除き、さらに、前記物質に(1次抗体との結合部位以外の部位で)結合する2次抗体を加え、洗浄を行なって未結合物質を除き、2次抗体の定量を行なうことにより試料溶液中の1次抗体及び2次抗体に結合する物質(以下、単に「検定物質」ともいう。)の存在の有無の確認や定量を行なう。通常は2次抗体に標識を付与し、標識自体または標識に基づく反応に基づいて検定物質の定量を行なう。
しかし、従来法で検定物質が対象生物の生理状態に関するマーカーとして用い得るのは、当該物質の濃度が生理状態によって大きく異なる場合のみである。例えば、特定の疾病の患者群と対照群とで検定物質の検出値が図1に示すように重複している場合、重複領域bの範囲内の結果を示す被験者については、患者であるか非罹患者であるかの判定ができない。従って、検出値が特に高い(図中a)か低い(図中c)被験者以外については罹患の有無は識別できず、図に示すように前記重複領域が広い場合には、前記検定物質を疾病状態のマーカーとしては使用できない。
ところが、本発明者らの検討によれば、ELISA法において、試料溶液の濃度を変化させ、濃度−検出値曲線を作成した場合、患者群と対照群とでその挙動(例えば、傾き)が異なる場合があり得ることが判明した。
具体的には、図2の例のように患者Pxと非罹患者Cxから得た検体濃度と前述の結合物質の検出値との間に統計的に有意な相関が認められ、かつ、患者群と対照(非罹患者)群のそれぞれについて同様の測定を行なった場合、両者が相関係数(ここでは傾き)において明確に分離され得る場合(図3参照)があり得ることが見出された。この場合、1つの濃度での検出値の比較だけでは対照群と患者群は分離識別できないが、複数の濃度での検出値の変化を求めることにより、対照群と患者群とが分離識別できることになる。
このように、本発明は対象生物から得たタンパク質を含む試料を複数の倍率で希釈し、それぞれについてELISA(酵素免疫定量)法を行なって、希釈による検出値の変化を求め、参照タンパク質を含む対照試料について同様に求めた希釈による検出値の変化と比較して、対象生物の生理状態を判定する。
ELISA(酵素免疫定量)法は、いわゆる直接法でもサンドイッチ法でもよい。あるいはその他の変法でもよい。検出対象とする物質は、対象生物において、観察しようとする生理状態との関連が考えられる物質であり、ELISA法で検出可能な物質であればよい。
本発明を適用する場合、対象生物から検定物質を含む試料を取り出し、必要に応じて前処理を行なった後、検定物質との結合が期待される抗体を予め固定したELISA法用基材に接触させ、ELISA法の常法に従って検出値を求める。サンドイッチ法の場合は、上記のように標識2次抗体を用いてもよい。
検出は、慣用の方法により行なえばよく、例えば、アルカリフォスファターゼ(ALP)、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、アロフィコシアニン(APC)、アロフィコシアニン−シアニン7(APC−Cy7)、ウシ血清アルブミン(BAS)、化学発光物質、シアニン(Cy)、シアニン2(Cy2)、シアニン3(Cy3)、シアニン3.5(Cy3.5)、シアニン5(Cy5)、シアニン5.5(Cy5.5)、シアニン7(Cy7)、フルオレッセインジクロロトリアジン(DTAF)、フルオロブルー(FB)、磁性粒子、フルオレッセインイソチオシアネート(FlTC)、蛍光粒子、金コロイド、グルコースオキシターゼ(GluOx)、ペルオキシターゼ(HRP)、ヘモシアニン(KLH)、フィコシアニン(PC)、フィコエリスリン(PE)、B−フィコエリスリン(PB−B)、フィコエリスリン−Cy5(PE−Cy5)、フィコエリスリン−Cy7(PE−Cy7)、R−フィコエリスリン(PE−R)、R−フィコエリスリン−Cy5(PE−R−Cy5)、R−フィコエリスリン−TXRD(PE−TR)、ポリスチレンビーズ(PS)、ローダミンイソチオシアネート(RITC)、サポリン(SAP)、スペクトラルレッド(SPRD)、テキサスレッド(TXRD)、β−ガラクトシターゼ(β−Gal)等の標識を用い、各標識について公知の検出方法を用いればよい。
本発明では、試料を希釈して第2の濃度でELISA法の操作を行なう。以後、同様の操作を繰り返し、(濃度,検出値)の組からなるデータを求める。例えば、判定しようとする生理状態が疾病への罹患である場合には、患者と非罹患者のそれぞれにおいて(濃度,検出値)の組からなるデータを収集し、患者群と非罹患者群とで濃度−検出値間の相関係数を求め、両群で統計的に有意な差がある場合、新たな被験者については、同様な操作により濃度−検出値間の相関係数から患者群に属するか非罹患者群に属するかの判定が可能となる。希釈は、試料に応じて決定される初濃度に応じ任意の倍率で行ない得るが典型的には倍々希釈すればよい。また、測定は複数の希釈倍率であれば可能であるが、通常は3〜20回の希釈、好ましくは5〜10回の希釈で測定を行なえばよい。
相関係数は統計的に慣用されているいずれの方法により求めてもよいが、典型的には回帰分析、特に単回帰分析(最小二乗法)により傾きを求める。最小二乗法は周知の方法であり、当業者には公知の公式から傾きを求めることができる。
本発明では、濃度−検出値間の相関係数、例えば、その傾きを判定に用いるため、濃度や検出値は絶対的な値ではなく対比が可能である限りにおいて相対的な値でよい。例えば、濃度としては、試料中の検体の濃度を求める必要はなく、試料の希釈率を用いることができる。
従って、本発明の好適実施態様には、希釈倍率に対し検出値をプロットして得られる濃度−検出値曲線の対比により判定を行なう判定方法が含まれ、特に、希釈倍率の対数値に対し検出値をプロットして得られる濃度−検出値曲線について最小二乗法によって近似直線の傾きを求めて対比して判定を行なう判定方法が含まれる。
試料は、対象生物から得た血液、血清、組織液、分泌液、浸出液、唾液、尿等の液体試料でもよいし、対象生物の組織や排出物、排泄物、分離片、粘膜やこれらから採取した試料等を処理したものでもよい。
対象生物は、種々の動物、植物、微生物等が含まれるが、動物、特に哺乳類、特にヒトが含まれる。
ELISA法で基材に固定して用いる物質は検定物質と結合する物質であれば特に限定されない。典型的にはこのような物質は検定物質を抗原とする抗体であり、種々の物質が含まれる。このような物質の一例としては、抗免疫グロブリン抗体が挙げられる。
本発明は、特にIgA腎症または紫斑病の判定方法として有用である。
IgA腎症または紫斑病の罹患の有無及び/または病態を判定する場合、抗IgA抗体を固定した基材を用いてELISA法を行なう。検体試料としては血清を用いる。また、2次抗体として標識抗IgG Fc抗体を用いる。本発明者らの知見によれば、血清中においてIgA腎症または紫斑病の患者のIgAの一部はIgG Fcとの複合体を形成しており、抗IgA抗体に結合した血清中のIgA−IgG Fc複合体に標識抗IgG Fc抗体を結合させることが可能である。もっとも、後述の実施例に示すように、この場合、単純な検出値の比較だけでは感度と特異度の両者に優れた判定は不可能である。しかるに、本発明の方法に従って、試料を複数の濃度で用いて濃度−検出値曲線を作成し、患者と非罹患者との間で比較することにより、両者を明瞭に区別することが可能である。具体的には、最小二乗法によって近似直線の傾きを求める方法が有効である。すなわち、本発明は、ヒト抗IgA抗体で被覆したプレートに、被検者から採取した血清を倍々希釈して接触させた後、各プレートに標識抗IgG Fc抗体を接触させ、前記血清中の糖鎖異常IgAを介して標識抗IgG Fc抗体を固定する工程1、標識を検出して希釈倍率の対数値に対し検出値をプロットし、得られる濃度−検出値曲線について最小二乗法によって近似直線の傾きを求める工程2、及び非罹患者から採取した血清についても同様の処理を行なって近似直線の傾きと対比する工程3を含み、工程2で求めた傾きが工程3により決定される閾値未満である場合には被験者がIgA腎症または紫斑病に罹患していると判定する方法を提供する。
希釈は、初濃度を10〜200倍希釈程度に設定すれば、任意の倍率で行ない得るが典型的には倍々希釈すればよい。また、上述したように、測定は複数の希釈倍率であればよいが、通常は3〜20回の希釈、好ましくは5〜10回の希釈を行なえばよい。
本発明の方法により、IgA腎症または紫斑病患者が判定される機構の詳細は不明であるが、患者と非罹患者ではIgA−IgG Fc複合体の構成が異なっていることが考えられる。具体的にはIgA−IgG Fc複合体のIgG Fcが患者と非罹患者で異なっていること、あるいはIgA−IgG Fc複合体中のそれぞれの構成成分の和(すなわち、両者の比)が異なっていることなどが考えられ、これにより患者と非罹患者とで試料希釈時の濃度−検出値曲線のプロファイルが相違する結果となるものと考えられる。もっとも、本発明以前にこれらの予想がなされていたことはなく、また、これらの機構は推定にすぎず、本発明の作用機構はこれらに限定されるものではない。
本発明の方法によればIgA腎症または紫斑病への罹患の有無が判定されるが、紫斑病患者は紫斑の有無などによりIgA腎症患者から容易に識別できるので、その点をも考慮すれば本発明の方法によればIgA腎症の罹患の有無が判定できる。
また、本発明の方法によれば、IgA腎症または紫斑病患者の病態の判定も可能となる。
さらに、本発明によれば、抗IgA抗体を含むELISA法の基材と標識された抗IgG Fc抗体を含むIgA腎症または紫斑病の診断キットが提供される。このようなキットは、例えば、後述するようにして抗IgA抗体をコーティングしたELISA用プレートと前述する標識のいずれかで標識された抗IgG Fc抗体とを含み、さらに発色操作等に必要な試薬や溶液を含んでもよい。また、濃度−検出値曲線のプロファイルの判定に必要なデータや判定プログラムを含んでもよい。
以下、本発明を実施例、比較例によって、より詳細に説明する。
実施例1
(a)ELISA用プレートの作製
ヒト抗IgA抗体(ICN/CAPPEL社(MB Biomedicals,LLC,Solon,Ohio,USA))を下記コーティング用緩衝液中に4μg/ml濃度になるように溶解し(上記抗体を500倍希釈で使用)、96穴プレート(EIA/RIAプレート,Corning Inc.)の各ウエルに100μlずつ加え、4℃で一晩放置した後、各ウエルをウエル当たり下記洗浄用緩衝液各200μlで3回洗浄して未固定の抗体を除いた。次いで、ブロッキング用緩衝液を各ウエルに100μlの割合で加え4℃で一晩放置した。プレートは、この段階でブロッキング用緩衝液を除きそのまま−20℃で保存することが可能である。
・コーティング用緩衝液:0.015M炭酸ナトリウム(0.318g/200ml DDW)溶液(ただしDDWは二回蒸留水を表わす。以下、同じ。)
・洗浄用緩衝液:4g Na2HPO4,3g KH2PO4,9g NaCl,1g 牛血清アルブミン(BSA),500μl Tween20を1リットルのDDWに溶解した溶液(以下、PBS−T)。
・ブロッキング用緩衝液:1gのBSAをPBS200mlに溶解した溶液(PBSは市販のPBSタブレット“AMRESCO社 Solon,Ohio,USA”を使用して作成した)。
(b)ELISA法
IgA腎症(IgAN)については腎生検で、紫斑病(HSP)については臨床症状の症状診断で各疾病に罹患していることが確認されている患者(IgAN:22名、HSP:10名)並びに健常者及び腎疾患患者のうち上記疾患のいずれにも罹患していないことが確認されている者(Cont:19名)それぞれから血清試料10μlを採取し990μlのPBSで希釈し100倍希釈血清1mlを作成した。
100倍希釈血清より500μlの試料を採取し、500μlのPBSに加え200倍に希釈する。同じ操作を繰り返し一つの試料につき次のような血清の希釈系列10検体:(1)100倍、(2)200倍、(3)400倍、(4)800倍、(5)1600倍、(6)3200倍、(7)6400倍、(8)12800倍、(9)25600倍、(10)51200倍を作成した。
一方、上記(a)で作製したELISA用プレートを上記PBS−Tで6回洗浄した後、上記希釈系列の検体試料を100μl/ウエルで加え、室温で1時間半反応させた。
次いで、PBS−Tで6回洗浄し結合しなかった試料を洗い流し、PBSで500倍に希釈したHRP標識抗IgG Fc抗体(ICN/CAPPEL社)を100μl/ウエルの割合で加え、室温で1時間反応させることにより標識抗体処理を行なった。
PBS−Tで12回洗浄し、結合しないで残ったHRP標識抗体を洗い流した後、下記基質溶液を100μl/ウエルで加え、13分間反応した後、2N硫酸を100μl/ウエルの割合で加え反応を停止し、490nmの吸収を測定して定量した。
・基質溶液:3.59gのNa2HPO4,1.05gのクエン酸,40mgのo−フェニレンジアミン,30μlの過酸化水素(過酸化水素31%含有)を100mlのDDWに溶解した溶液(使用直前に調製する)。
(c)ELISA法による判定
各検体試料について得られた10個の吸光度データから、濃度(希釈率の対数値)−検出値曲線を得た。結果を図4に示す(このグラフでは便宜上、各群から2名ずつのデータのみ示す)。図中、白丸(IgA−IgG Fc/Control)は対照群からのデータを示し、黒丸はIgA腎症患者(IgA−IgG Fc/IgAN)及び紫斑病患者(IgA−IgG Fc/HSP)からのデータを示す。
図4に示していないデータを含め、試験群、対照群の全員について最小二乗法を用い近似される直線の傾きを求めた。結果を図5に示す。この例での判定は破線(図中、矢印で指し示す)で示す検出値対濃度の傾き(絶対値)0.012をカットオフ値とした。検定は対応のないt検定(スチューデント法)によった。なお、Contは対照、IgANはIgA腎症患者、HSPは紫斑病患者を示す。
この図に示すように、本発明によれば、高い確度及び特異度をもってIgA腎症または紫斑病を判定することが可能である。
比較例1
実施例1の100倍希釈の検出値のみを対比したグラフを図6に示す。
この図に示すように、特定濃度の検出値の比較ではIgA腎症または紫斑病の患者と非罹患者の血清成分は個体差により大きな重なりが見られる。図中、検出値(吸光度)のいずれの値(特に0.11〜0.18の範囲内)をカットオフ値としても十分な判定が行ない得ないことが理解される。
従来法による判定方法の結果を模式的に示すグラフ。 本発明による判定方法の基本的な操作手順を模式的に示すグラフ。 本発明による判定方法の結果を模式的に示すグラフ。 本発明による判定方法を腎症に適用した結果(濃度(希釈率の対数値)−検出値曲線)を示すグラフ。 本発明による判定方法を腎症に適用した結果(患者群と対照群での検出値対濃度の傾き(絶対値)の比較)を示すグラフ。 実施例1の結果を従来法での対比で処理した結果(検出値)を示すグラフ。

Claims (14)

  1. 対象生物から得たタンパク質を含む試料を複数の倍率で希釈し、それぞれについてELISA(酵素免疫定量)法を行なって、希釈による検出値の変化を求め、参照タンパク質を含む対照試料について同様に求めた希釈による検出値の変化と比較して、対象生物の生理状態を判定する方法。
  2. 希釈倍率に対し検出値をプロットして得られる濃度−検出値曲線の対比により判定を行なう請求項1に記載の判定方法。
  3. 希釈倍率の対数値に対し検出値をプロットして得られる濃度−検出値曲線について最小二乗法によって近似直線の傾きを求めて対比して判定を行なう請求項2に記載の判定方法。
  4. 前記試料が対象生物から得た血清である請求項1〜3のいずれかに記載の判定方法。
  5. ELISA法で用いる1次抗体が抗免疫グロブリン抗体である請求項1〜4のいずれかに記載の判定方法。
  6. 抗免疫グロブリン抗体が抗IgA抗体である請求項5に記載の判定方法。
  7. 生理状態の判定が疾病の罹患の有無及び/または疾病の病態の判定である請求項1〜6のいずれかに記載の判定方法。
  8. 対象生物がヒトである請求項1〜7のいずれかに記載の判定方法。
  9. ELISA法で用いる1次抗体が抗IgA抗体であり、2次抗体が、糖鎖異常IgAと結合するタンパク質の抗体である請求項6〜8のいずれかに記載の判定方法。
  10. 2次抗体が標識抗IgG Fc抗体である請求項9に記載の判定方法。
  11. 疾病がIgA腎症または紫斑病である請求項9または10に記載の判定方法。
  12. ヒト抗IgA抗体で被覆したプレートに、被検者から採取した血清を倍々希釈して接触させた後、各プレートに標識抗IgG Fc抗体を接触させ、前記血清中の糖鎖異常IgAを介して標識抗IgG Fc抗体を固定する工程1、標識を検出して希釈倍率の対数値に対し検出値をプロットし、得られる濃度−検出値曲線について最小二乗法によって近似直線の傾きを求める工程2、及び非罹患者から採取した血清についても同様の処理を行なって近似直線の傾きと対比する工程3を含み、工程2で求めた傾きが工程3により決定される閾値未満である場合には被験者がIgA腎症または紫斑病に罹患していると判定する請求項11に記載の判定方法。
  13. 工程2で求めた傾きによりIgA腎症または紫斑病の病態を判定する請求項12に記載の判定方法。
  14. 抗IgA抗体を含むELISA法の基材と標識された抗IgG Fc抗体を含むIgA腎症または紫斑病の診断キット。
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