JP2007162919A - ベルト式無段変速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】オイルポンプの動力損失の増加を抑制ことができるベルト式無段変速機を提供すること。
【解決手段】プライマリプーリ50と、セカンダリプーリと、ベルト110と、プライマリ油圧室55(位置決め油圧室)と、プライマリ油圧室55への作動油の供給を許容する複数の作動油供給手段70a,cと、プライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御し、かつ許容条件である各駆動油圧室86の油圧を受ける各受圧面87a,cの面積がそれぞれ異なる複数の作動油排出手段80a,cと、各作動油排出手段80a,cによる作動油の排出を許容条件に基づいて行わせる作動油供給制御装置130とを備える。この各作動油供給手段70a,cがプライマリ可動シーブ53に配置され、各作動油排出手段80a,cがプライマリ隔壁54に配置され、プライマリプーリ軸51と一体回転する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、ベルト式無段変速機に関するものである。
一般に、車両には、駆動源である内燃機関や電動機からの駆動力、すなわち出力トルクを車両の走行状態に応じた最適の条件で路面に伝達するために、駆動源の出力側に変速機が設けられている。この変速機には、変速比を無段階(連続的)に制御する無段変速機と、変速比を段階的(不連続)に制御する有段変速機とがある。ここで、無段変速機には、2つのプーリ、すなわち駆動源からの駆動力が伝達されるプライマリプーリおよびプライマリプーリに伝達された出力トルクを変化させて出力するセカンダリプーリと、このプライマリプーリに伝達された駆動力をセカンダリプーリに伝達するベルトとにより構成されるベルト式無段変速機がある。このプライマリプーリおよびセカンダリプーリは、平行に配置された2つのプーリ軸であるプライマリプーリ軸とセカンダリプーリ軸と、この各プーリ軸上を軸方向にそれぞれ摺動する2つの可動シーブ(プライマリ可動シーブ、セカンダリ可動シーブ)と、この2つの可動シーブに軸方向においてそれぞれ対向するとともに可動シーブとの間でV字形状の溝を形成する2つの固定シーブ(プライマリ固定シーブ、セカンダリ固定シーブ)と、可動シーブと固定シーブとの間にベルト挟圧力を発生するベルト挟圧力発生手段とにより構成されている。なお、ベルトは、プライマリプーリおよびセカンダリプーリのそれぞれに形成されるV字形状の溝に巻き掛けられている。
このベルト式無段変速機は、各ベルト挟圧力発生手段により2つの可動シーブが各プーリ軸上をその軸方向に摺動し、プライマリプーリおよびセカンダリプーリのそれぞれに形成されるV字形状の溝の幅を変化させる。これにより、ベルトと、プライマリプーリおよびセカンダリプーリとの接触半径を無段階に変化させ、変速比を無段階に変化するものである。つまり、駆動源からの出力トルクを無段階に変化させるものである。
このベルト挟圧力発生手段としては、例えば特許文献1に示すように、油圧室の油圧により、可動シーブを固定シーブ側に押圧し、ベルト挟圧力を発生させるものがある。ここで、ベルト式無段変速機では、固定シーブに対する可動シーブの軸方向への移動を規制する、すなわち固定シーブに対する可動シーブの軸方向における位置を一定とし、変速比を固定する場合がある。従って、上記特許文献1に示すような従来のベルト式無段変速機では、ベルト挟圧力を一定に保持するため、油圧室の油圧を所定の油圧に保持する必要がある。
特開2001−323978号公報
従って、従来のベルト式無段変速機では、変速比の変更時だけでなく変速比の固定時においても、油圧室に作動油を供給する必要がある。このため、作動油供給制御装置が備えるオイルポンプを作動させる必要がある。また、作動油供給制御装置から油圧室への作動油の供給は、ベルト式無段変速機の例えばケースなどの固定部材および例えばプーリ軸などの可動部材に形成された油路により行われる。従って、変速比の固定時においても油圧室に作動油を供給する場合は、この固定部材と可動部材との摺動部から作動油が漏れる虞がある。これらにより、オイルポンプの駆動損失が増加する虞があり、オイルポンプが内燃機関の駆動力により駆動する場合は、内燃機関の駆動力の伝達効率が低下する虞があった。
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、少なくともオイルポンプの動力損失の増加を抑制ことができるベルト式無段変速機を提供することを目的とするものである。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明では、平行に配置され、駆動源からの駆動力がいずれか一方に伝達される2つのプーリ軸と、当該2つのプーリ軸上をそれぞれ軸方向に摺動する2つの可動シーブと、当該2つの可動シーブに前記軸方向にそれぞれ対向し、かつ当該プーリ軸とそれぞれ一体回転する2つの固定シーブと、からなる2つのプーリと、前記2つのプーリのうちいずれか一方のプーリに伝達された前記駆動源からの駆動力を他方のプーリに伝達するベルトと、前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧することで、当該可動シーブの当該固定シーブに対する軸方向への移動および当該移動の規制を行う位置決め油圧室と、前記2つのプーリのいずれか一方のプーリ軸、固定シーブあるいは可動シーブのいずれかに配置され、前記位置決め油圧室への作動油の供給のみを許容する作動油供給手段と、前記作動油供給手段が配置される前記プーリの前記固定シーブに配置され、前記位置決め油圧室からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御し、かつ当該許容条件がそれぞれ異なる複数の作動油排出手段と、前記各作動油排出手段による前記位置決め油圧室からの作動油の排出を前記許容条件に基づいて行わせる排出許容手段と、を備えることを特徴とする。
この発明によれば、変速比を変更する際には、作動油供給手段により位置決め油圧室へ作動油を供給する、あるいは作動油排出手段を制御し、位置決め油圧室から作動油を排出する。一方、変速比を固定(一定)とする際には、排出許容手段により、各作動油排出手段による位置決め油圧室からの作動油の排出を禁止し、位置決め油圧室の作動油の排出を禁止する。つまり、作動油供給手段が位置決め油圧室への作動油の供給のみを許容するものであるため、位置決め油圧室の作動油はこの位置決め油圧室内に保持されることとなる。従って、可動シーブの固定シーブに対する軸方向における位置が変化しようとしても、この位置決め油圧室の油圧が変化することで、可動シーブの固定シーブに対する軸方向における位置を一定に維持することができる。これにより、可動シーブの固定シーブに対する軸方向における位置を一定に維持するために、位置決め油圧室にこの位置決め油圧室外から作動油を供給しなくても良く、固定部材と可動部材との摺動部から作動油が漏れることを抑制することができるので、オイルポンプの動力損失の増加を抑制することができる。
また、排出許容手段は、各作動油排出手段による位置決め油圧室からの作動油の排出を作動油排出手段ごとに異なる許容条件に基づいて行わせることができるため、この排出許容手段により位置決め油圧室からの作動油の排出を許容されている作動油排出手段の数に応じて、この位置決め油圧室から作動油が排出される際の総排出流量を変化させることができる。従って、ダウンシフト時、すなわち変速比の増加時における変速速度、すなわち変速比増加速度を変化させることができる。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記各作動油排出手段は、前記位置決め油圧室からの作動油を排出する排出流量が異なることを特徴とする。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記各作動油排出手段は、前記位置決め油圧室からの作動油を排出する排出口の面積が異なることを特徴とする。
これらの発明によれば、各作動油排出手段は、位置決め油圧室から排出される作動油の排出流量が異なる、例えば位置決め油圧室からの作動油を排出する排出口の面積が異なるため、この排出許容手段により位置決め油圧室からの作動油の排出が許容されている作動油排出手段の数に応じて、総排出流量をさらに変化させることができる。例えば、各作動油排出手段による位置決め油圧室からの作動油を排出する排出流量が同一の場合の総排出流量と比較して、位置決め油圧室からの作動油の排出が許容されている作動油排出手段の数の増加に伴い、総排出流量を増加することができる。従って、ダウンシフト時、すなわち変速比の増加時における変速速度、すなわち変速比増加速度をさらに変化させることができる。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記作動油供給手段は、供給側付勢手段により閉弁方向に付勢される供給側逆止弁を有し、前記各作動油排出手段は、排出側付勢手段により閉弁方向に付勢される排出側逆止弁と、当該排出側逆止弁を開弁するアクチュエータとをそれぞれ有し、前記排出許容手段は、前記各アクチュエータによる各排出側逆止弁の開弁を前記許容条件に基づいて行わせるものであることを特徴とする。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記各排出側付勢手段は、前記各排出側逆止弁を閉弁方向に付勢する排出側付勢力がそれぞれ異なり、前記各アクチュエータは、油圧により前記排出側逆止弁を開弁し、前記排出許容手段は、前記油圧を変化させることを特徴とする。
また、この発明では、上記ベルト式無段変速機において、前記各アクチュエータは、油圧により前記排出側逆止弁を開弁し、当該油圧を受ける受圧面の面積がそれぞれ異なり、前記排出許容手段は、前記油圧を変化させることを特徴とする。
これらの発明によれば、排出許容手段は、各作動油排出手段の各アクチュエータにより各排出側逆止弁の開弁を作動油排出手段ごとに異なる許容条件に基づいて行わせる。例えば、各排出側付勢手段による各排出側逆止弁を閉弁方向に付勢する排出側付勢力をそれぞれ異ならせ、排出許容手段は、油圧を変化、すなわち増加させる。従って、各排出側逆止弁は、各排出側付勢手段による排出側付勢力が弱い順に開弁する。また、例えば、油圧により各排出側逆止弁を開弁する各アクチュエータの油圧を受ける受圧面の面積をそれぞれ異ならせ、排出許容手段は、この各受圧面が受ける油圧を変化、すなわち増加させる。従って、各排出側逆止弁は、各アクチュエータの油圧を受ける受圧面の面積が広い順に開弁する。これらにより、各アクチュエータが各排出側逆止弁を開弁するのには、この各アクチュエータに作用する油圧を変化すれば良い。従って、排出許容手段は、アクチュエータごとに作用する油圧を変化させる必要がないため、すべてのアクチュエータに作用する油圧を一律に変化させることで、位置決め油圧室からの作動油の排出が許容されている作動油排出手段の数を変更することができる。
この発明にかかるベルト式無段変速機は、可動シーブの固定シーブに対する軸方向における位置を一定とする際に、位置決め油圧室からの作動油の排出を禁止できるので、オイルポンプの動力損失の増加を抑制することができる。
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施例により、この発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記の実施例におけるベルト式無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源として内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータなどの電動機を駆動源として用いても良い。また、下記の実施例では、作動油供給手段及び作動油排出手段をプライマリプーリのプライマリプーリ軸内に配置しているが、セカンダリプーリのセカンダリプーリ軸内に配置しても良い。
図1は、実施例にかかるベルト式無段変速機のスケルトン図である。また、図2は、プライマリプーリの要部断面図である。図3は、図2のA−A断面図である。図4は、図2のB−B断面図である。図5−1および図5−2は、トルクカムを示す図である。図6および図7は、変速比変更時におけるベルト式無段変速機の動作説明図である。図8は、ダウンシフト時のベルト式無段変速機の制御方法の動作フローを示す図である。図9−1〜3は、総断面積と、開弁数との関係を示す図である。図10は、排出通路の他の構成例を示す図である。なお、図2は、図4のC−C断面図である。なお、以下のベルト式無段変速機1では、作動油供給手段および作動油排出手段を円周上に等間隔にそれぞれ3個配置したものについて説明するが、この発明はこれに限定されるものではない。例えば、作動油供給手段および作動油排出手段は、2または4個超配置しても良い。この場合は、各作動油供給手段および各作動油排出手段は、円周上に等間隔に配置されていることが好ましい。また、作動油供給手段は、複数個配置する必要はなく、プーリ軸に1個配置しても良い。
図1に示すように、内燃機関10の出力側には、トランスアクスル20が配置されている。このトランスアクスル20は、トランスアクスルハウジング21と、このトランスアクスルハウジング21に取り付けられたトランスアクスルケース22と、このトランスアクスルケース22に取り付けられたトランスアクスルリヤカバー23とにより構成されている。
このトランスアクスルハウジング21の内部には、トルクコンバータ30が収納されている。一方、トランスアクスルケース22とトランスアクスルリヤカバー23とにより構成されるケース内部には、実施例にかかるベルト式無段変速機1を構成する2つのプーリであるプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60と、位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55と、セカンダリ油圧室64と、複数の作動油供給手段70a〜cと、複数の作動油排出手段80a〜cと、ベルト110とが収納されている。なお、40は前後進切換機構、90は車輪120に内燃機関10の駆動力を伝達する最終減速機、100は動力伝達経路、130は作動油供給制御装置(図2〜図4参照)である。
発進機構であるトルクコンバータ30は、図1に示すように、駆動源からの駆動力、すなわち内燃機関10からの出力トルクを増加、あるいはそのままベルト式無段変速機1に伝達するものである。このトルクコンバータ30は、少なくともポンプ(ポンプインペラ)31と、タービン(タービンインペラ)32と、ステータ33と、ロックアップクラッチ34と、ダンパ装置35とにより構成されている。
ポンプ31は、内燃機関10のクランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能な中空軸36に取り付けられている。つまり、ポンプ31は、中空軸36とともに、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能である。また、ポンプ31は、フロントカバー37に接続されている。このフロントカバー37は、内燃機関10のドライブプレート12を介して、クランクシャフト11に連結されている。
タービン32は、上記ポンプ31と対向するように配置されている。このタービン32は、上記中空軸36内部に配置され、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能なインプットシャフト38に取り付けられている。つまり、タービン32は、インプットシャフト38とともに、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能である。
ポンプ31とタービン32との間には、ワンウェイクラッチ39を介してステータ33が配置されている。このワンウェイクラッチ39は、上記トランスアクスルハウジング21に固定されている。また、タービン32とフロントカバー37との間には、ロックアップクラッチ34が配置されており、このロックアップクラッチ34は、ダンパ装置35を介してインプットシャフト38に連結されている。なお、上記ポンプ31やフロントカバー37により形成されるケーシングには、作動油供給制御装置130から作動流体として作動油が供給されている。
ここで、このトルクコンバータ30の動作について説明する。内燃機関10からの出力トルクは、クランクシャフト11からドライブプレート12を介して、フロントカバー37に伝達される。ロックアップクラッチ34がダンパ装置35により解放されている場合は、フロントカバー37に伝達された内燃機関10からの出力トルクがポンプ31に伝達され、このポンプ31とタービン32との間を循環する作動油を介して、タービン32に伝達される。そして、タービン32に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、インプットシャフト38に伝達される。つまり、トルクコンバータ30は、インプットシャフト38を介して、内燃機関10からの出力トルクを増加してベルト式無段変速機1に伝達する。上記においては、ステータ33により、ポンプ31とタービン32との間を循環する作動油の流れを変化させ所定のトルク特性を得ることができる。
一方、上記ロックアップクラッチ34がダンパ装置35によりロック(フロントカバー37と係合)されている場合は、フロントカバー37に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、作動油を介さずに直接インプットシャフト38に伝達される。つまり、トルクコンバータ30は、インプットシャフト38を介して、内燃機関10からの出力トルクをそのままベルト式無段変速機1に伝達する。
トルクコンバータ30と前後進切換機構40との間には、オイルポンプ26が設けられている。このオイルポンプ26は、ロータ27と、ハブ28と、ボディ29とにより構成されている。このオイルポンプ26は、ロータ27により円筒形状のハブ28を介して、上記ポンプ31に接続されている。また、ボディ29が上記トランスアクスルケース22に固定されている。また、ハブ28は、上記中空軸36にスプライン嵌合されている。従って、オイルポンプ26は、内燃機関10からの出力トルクがポンプ31を介してロータ27に伝達されるので、駆動することができる。
前後進切換機構40は、図1に示すように、トルクコンバータ30を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクをベルト式無段変速機1のプライマリプーリ50に伝達するものである。この前後進切換機構40は、少なくとも遊星歯車装置41とフォワードクラッチ42と、リバースブレーキ43とにより構成されている。
遊星歯車装置41は、サンギヤ44と、ピニオン45と、リングギヤ46とにより構成されている。
サンギヤ44は、図示しない連結部材にスプライン嵌合されている。この連結部材は、後述するプライマリプーリ50のプライマリプーリ軸51にスプライン嵌合されている。従って、サンギヤ44に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、プライマリプーリ軸51に伝達される。
ピニオン45は、サンギヤ44と噛み合い、その周囲に複数個(例えば、3個)配置されている。各ピニオン45は、サンギヤ44の周囲で一体に公転可能に支持する切換用キャリヤ47に保持されている。この切換用キャリヤ47は、その外周端部においてリバースブレーキ43に接続されている。
リングギヤ46は、切換用キャリヤ47に保持された各ピニオン45と噛み合い、フォワードクラッチ42を介して、トルクコンバータ30のインプットシャフト38に接続されている。
フォワードクラッチ42は、作動油供給制御装置130からインプットシャフト38の図示しない中空部に供給された作動油により、ON/OFF制御されるものである。フォワードクラッチ42のOFF時には、インプットシャフト38に伝達された内燃機関10からの出力トルクがリングギヤ46に伝達される。一方、フォワードクラッチ42のON時には、リングギヤ46とサンギヤ44と各ピニオン45とが互いに相対回転することなく、インプットシャフト38に伝達された内燃機関10からの出力トルクが直接サンギヤ44に伝達される。
リバースブレーキ43は、作動油供給制御装置130から作動油が供給された図示しないブレーキピストンにより、ON/OFF制御されるものである。リバースブレーキ43がON時には、切換用キャリヤ47がトランスアクスルケース22に固定され、各ピニオン45がサンギヤ44の周囲を公転できない状態となる。リバースブレーキ43がOFF時には、切換用キャリヤ47が解放され、各ピニオン45がサンギヤ44の周囲を公転できる状態となる。
ベルト式無段変速機1のプライマリプーリ50は、前後進切換機構40を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクを後述するベルト110により、セカンダリプーリ60に伝達するものである。このプライマリプーリ50は、図1および図2に示すように、プライマリプーリ軸51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54と、位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55とにより構成されている。
プライマリプーリ軸51は、図2に示すように、軸受111,112により回転可能に支持されている。また、プライマリプーリ軸51は、軸方向における両端部のみにそれぞれ開口する供給側主通路51aと、駆動側主通路51bが形成されている。
供給側主通路51aは、プライマリ固定シーブ側に形成されており、作動油供給制御装置130から位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55に供給される作動油が流入する。また、この供給側主通路51aは、その先端部近傍に形成された複数の軸側連通通路51c(この実施例では、3箇所)を介して、プライマリ可動シーブ53とプライマリプーリ軸51との間に連通している。
また、駆動側主通路51bは、プライマリ固定シーブ側と反対側に形成されており、作動油供給制御装置130から各アクチュエータを構成する各駆動油圧室86に供給される作動油が流入する。また、この駆動側主通路51bは、各軸側連通通路51dおよびプライマリ隔壁54の後述する各隔壁側連通通路54dを介して、このプライマリ隔壁54の後述する各駆動油圧室86(この実施例では、3箇所)に連通している。
プライマリ固定シーブ52は、図2に示すように、プライマリ可動シーブ53と対向する位置にプライマリプーリ軸51と一体回転するように設けられている。ここでは、プライマリ固定シーブ52は、プライマリプーリ軸51の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、この実施例では、プライマリ固定シーブ52は、プライマリプーリ軸51の外周に一体的に形成されている。
プライマリ可動シーブ53は、図2に示すように、円筒部53aと、環状部53bとにより構成されている。円筒部53aは、プライマリプーリ軸51と同一回転軸を中心に形成されている。環状部53bは、この円筒部53aのプライマリ固定シーブ側の端部から径方向外側に突出して形成されている。このプライマリ可動シーブ53は、円筒部53aの内周面に形成されたスプライン53cと、プライマリプーリ軸51の外周面に形成されたスプライン51eとがスプライン嵌合することで、このプライマリプーリ軸51に軸方向に摺動可能に支持されている。このプライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間、すなわちプライマリ固定シーブ52のプライマリ可動シーブ53に対向する面と、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対向する面との間で、V字形状のプライマリ溝110aが形成されている。
また、プライマリ可動シーブ53には、環状部53bの外周端部の近傍に軸方向のうち他方向に突出、すなわちプライマリ隔壁側に突出する環状の突出部53dが形成されている。また、このプライマリ可動シーブ53の円筒部53aには、プライマリ油圧室55と、プライマリ可動シーブ53とプライマリプーリ軸51との間とを連通する供給側通路53eが形成されている。この供給側通路53eは、円筒形状であり、上記円筒部53aに対して円周上に等間隔に複数箇所形成されている(この実施例では、3箇所)。また、各供給側通路53eは、後述する供給側弁70a〜cのボール71によりそれぞれ閉塞される環状の段差部53fがそれぞれ形成されている。この各供給側通路53eには、供給側主通路51aおよび各軸側連通通路51cを介して、作動油供給制御装置130からプライマリ油圧室55に供給される作動油が流入する。つまり、供給側通路53eは、プライマリ油圧室55に作動油を供給するものである。
プライマリ隔壁54は、図2に示すように、環状部材であり、プライマリプーリ軸51と同一回転軸を中心に配置されている。また、プライマリ隔壁54は、プライマリ可動シーブ53を挟んでプライマリ固定シーブ52と軸方向において対向するように配置されている。このプライマリ隔壁54の径方向内側端部は、プライマリプーリ軸51に固定される。従って、プライマリ隔壁54は、プライマリ可動シーブ53と一体回転するように設けられている。
このプライマリ隔壁54は、その径方向の中央部近傍に、軸方向において対向する両側面を連通する排出側通路54aが形成されている。この排出側通路54aは、円筒形状であり、上記プライマリ隔壁54に対して円周上に等間隔に複数箇所形成されている(この実施例では、3箇所)。また、各排出側通路54aは、各作動油排出手段80a〜cは、後述する排出側逆止弁の各ボール81によりそれぞれ閉塞される環状の突起部54bがそれぞれ形成されている。この各排出側通路54aは、その一方の端部、すなわちプライマリ固定シーブ側と反対側の端部に閉塞部材54cが挿入され、固定されている。従って、この各排出側通路54aは、その他方の端部、すなわちプライマリ固定シーブ側の端部のみがプライマリ油圧室55に開口するように形成されている。
また、このプライマリ隔壁54には、各排出側通路54aに対応して、隔壁側連通通路54dおよび排出通路54eが複数形成されている(この実施例では、それぞれ3箇所)。各隔壁側連通通路54dは、図3に示すように、一方の端部が各軸側連通通路51dを介して、駆動側主通路51bと連通し、他方の端部が閉塞部材54fにより閉塞されている。この各隔壁側連通通路54dは、図2に示すように、通路の途中で各排出側通路54aとそれぞれ連通している。ここで、この各隔壁側連通通路54dは、各閉塞部材54cと後述する各排出側制御弁81a〜cの各開弁部材85a〜cとの間に形成される各駆動油圧室86に開口しており、かつこの各駆動油圧室86と各開弁部材85a〜cを挟んで対向する各排出空間部には開口しない。つまり、各隔壁側連通通路54dは、各排出側通路54aのうち各駆動油圧室86にのみ連通している。従って、各隔壁側連通通路54dに流入した駆動側主通路51bの作動油は、この各駆動油圧室86のみにそれぞれ供給される。
排出通路54eは、図4に示すように、その一方の端部が上記排出空間部と連通し、他方の端部がプライマリ隔壁54の外周面のうちプライマリ油圧室55を構成する外周面を除く部分に排出口として開口している。つまり、排出側通路54aは、プライマリ油圧室55の作動油を外部、この実施例では、排出通路54eを介してトランスアクスル20に、排出口から排出するものである。なお、この排出口の断面積は、この実施例では同一である。従って、各排出空間部における作動油の油圧が同一である場合、各作動油排出手段80a〜cによりプライマリ油圧室55からの作動油が排出される際の排出流量が同一となる。また、この排出通路54eは、プライマリ油圧室55の外部と直接連通している。
プライマリ油圧室55は、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧することで、このプライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向への移動および移動の規制を行う位置決め油圧室であり、図2に示すように、プライマリプーリ軸51と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54とにより形成される空間部である。ここで、プライマリ可動シーブ53の突出部53dとプライマリ隔壁54との間およびプライマリ可動シーブ53の円筒部53aとプライマリプーリ軸51との間には、例えばシールリングなどのシール部材Sがそれぞれ設けられている。つまり、プライマリ油圧室55を構成するプライマリプーリ軸51と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54とにより形成される空間部は、シール部材Sによりシールされている。
このプライマリ油圧室55には、プライマリプーリ軸51の供給側主通路51aに流入した作動油が供給される。つまり、プライマリ油圧室55に作動油を供給し、この供給された作動油の圧力、すなわちプライマリ油圧室55の油圧P1により、プライマリ可動シーブ53を軸方向に摺動させ、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52に対して接近あるいは離隔させるものである。プライマリ油圧室55は、このプライマリ油圧室55の油圧P1により、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧することで、プライマリ溝100aに巻き掛けられるベルト110に対するプライマリ側ベルト挟圧力を発生させ、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を変更する。これにより、変速比を変更させる変速比変更手段としての機能をも有するものである。
ベルト式無段変速機1のセカンダリプーリ60は、ベルト110によりプライマリプーリ50に伝達された内燃機関10からの出力トルクをベルト式無段変速機1の最終減速機90に伝達するものである。このセカンダリプーリ60は、図1に示すように、セカンダリプーリ軸61と、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ油圧室64、セカンダリ隔壁65と、トルクカム66により構成されている。なお、69は、パーキングブレーキギヤである。
セカンダリプーリ軸61は、軸受113,114により回転可能に支持されている。また、セカンダリプーリ軸61は、内部に図示しない作動油通路を有しており、この作動油通路には、作動油供給制御装置130からセカンダリ油圧室64に供給される作動流体である作動油が流入する。
セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリ可動シーブ63と対向する位置にセカンダリプーリ軸61と一体回転するように設けられている。ここでは、セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリプーリ軸61の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、この実施例では、セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリプーリ軸61の外周に一体的に形成されている。
セカンダリ可動シーブ63は、その内周面に形成された図示しないスプラインと、セカンダリプーリ軸61の外周面に形成された図示しないスプラインとがスプライン嵌合することで、このセカンダリプーリ軸61に軸方向に摺動可能に支持されている。このセカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との間、すなわちセカンダリ固定シーブ62のセカンダリ可動シーブ63に対向する面と、セカンダリ可動シーブ63のセカンダリ固定シーブ62と対向する面との間で、V字形状のセカンダリ溝110bが形成されている。
セカンダリ油圧室64は、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ側に押圧するものであり、図1に示すように、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリプーリ軸61に固定された円板形状のセカンダリ隔壁65とにより形成される空間部である。セカンダリ可動シーブ63には、軸方向の一方に突出、すなわち最終減速機90側に突出する環状の突出部63aが形成されている。一方、セカンダリ隔壁65には、軸方向の他方向に突出、すなわちセカンダリ可動シーブ63側に突出する環状の突出部65aが形成されている。ここで、この突出部63aと突出部65aとの間には、例えばシールリングなどの図示しないシール部材が設けられている。つまり、セカンダリ油圧室64を構成するセカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ隔壁65とにより形成される空間部は、図示しないシール部材によりシールされている。
このセカンダリ油圧室64には、図示しない作動油供給孔を介して、セカンダリプーリ軸61の図示しない作動油通路に流入した作動油供給制御装置130からの作動油が供給される。つまり、セカンダリ油圧室64に作動油を供給し、この供給された作動油の圧力、すなわちセカンダリ油圧室64の油圧により、セカンダリ可動シーブ63を軸方向に摺動させ、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ62に対して接近あるいは離隔させるものである。セカンダリ油圧室64は、このセカンダリ油圧室64の油圧により、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ側に押圧することで、セカンダリ溝110bに巻き掛けられるベルト110に対するセカンダリ側ベルト挟圧力を発生させ、ベルト110のプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60に対する接触半径を一定に維持する。
トルクカム66は、図5−1に示すように、セカンダリプーリ60のセカンダリ可動シーブ63に環状に設けられた山谷状の第1係合部63bと、この第1係合部63cとセカンダリプーリ軸61の軸線方向において対向する後述する中間部材67に形成された第2係合部67aと、この第1係合部63bと第2係合部67aとの間に配置された円板形状の複数の伝達部材68とにより構成されている。
中間部材67は、セカンダリ隔壁65と一体に形成、あるいはセカンダリ隔壁65に固定され、軸受け113、115により、セカンダリプーリ軸61やセカンダリ可動シーブ63に対してセカンダリプーリ軸61上で相対回転可能に支持されている。この中間部材67は、動力伝達経路100の入力軸101とスプライン勘合されている。つまり、セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、この中間部材67を介して動力伝達経路100に伝達される。
ここで、トルクカム66の動作について説明する。プライマリプーリ50に内燃機関10からの出力トルクが伝達され、このプライマリプーリ50が回転すると、ベルト110を介してセカンダリプーリ60が回転する。このとき、セカンダリプーリ60のセカンダリ可動シーブ63は、このセカンダリ固定シーブ62、セカンダリプーリ軸61、軸受113ともに回転するため、このセカンダリ可動シーブ63と中間部材67との間に相対回転が発生する。そして、図5−1に示すように、第1係合部63bと第2係合部67aとが接近した状態から、複数の伝達部材68により、図5−2に示すように第1係合部63bと第2係合部67aとが離隔した状態に変化する。これにより、トルクカム66は、セカンダリプーリ60にベルト110に対するセカンダリ側ベルト挟圧力を発生する。
つまり、セカンダリプーリ60には、ベルト挟圧力発生手段として、セカンダリ油圧室64以外にトルクカム66を備えられる。このトルクカム66が主としてセカンダリ側ベルト挟圧力を発生させ、セカンダリ油圧室64はトルクカム66により発生したセカンダリ側ベルト挟圧力の不足分を発生させるものである。なお、セカンダリプーリ60のベルト挟圧力発生手段がセカンダリ油圧室64のみであっても良い。
作動油供給手段70a〜cは、位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給のみを許容するものである。つまり、プライマリ油圧室55からの作動油の排出を禁止するものである。各作動油供給手段70a〜cは、プライマリ可動シーブ53の各供給側通路53e内にそれぞれ配置されている。つまり、作動油供給手段は、プライマリ可動シーブ53に円周上に等間隔に複数箇所配置されている(この実施例では、3箇所)。各作動油供給手段70a〜cは、ボール式の供給側逆止弁であり、ボール71と、供給側付勢手段である供給側弾性部材72と、円筒部材73と、係止部材74とにより構成されている。
各ボール71は、各供給側通路53eの各段差部53fよりもプライマリ油圧室側に配置され、各段差部53fの径よりも大きい直径である。各供給側弾性部材72は、この各ボール71を介して、係止部材74により供給側通路53eに固定された円筒部材73と、段差部51gとの間に付勢された状態で配置されている。各供給側弾性部材72は、この各ボール71が各段差部53fと接触する方向に供給側付勢力を発生しており、この供給側付勢力が各ボール71に作用している。なお、この供給側付勢力は、同一の大きさで各ボール71に作用している。また、各係止部材74は、円板形状であり、その中央部に作動油を通過させるための開口が形成されている。
各ボール71は、供給側通路53eのこの各ボール71よりもプライマリプーリ軸側における油圧が、プライマリ油圧室55の油圧P1と各供給側弾性部材72の供給側付勢力とを併せた力を超えると、各段差部53fと離れる方向に移動し、各作動油供給手段70a〜cであるボール式の供給側逆止弁が開弁する。つまり、各作動油供給手段70a〜cは、作動油が外部からプライマリ油圧室55に供給される方向にのみ開弁する逆止弁である。なお、プライマリ油圧室55の油圧P1は、各ボール71に作用するが、この各ボール71が各段差部53fと接触する方向に作用するため、プライマリ油圧室55の油圧P1が上昇しても、各ボール71が段差部53fから離れることがない。従って、各供給側通路53eのこの各ボール71よりもプライマリプーリ軸側における油圧が、プライマリ油圧室55の油圧P1と各供給側弾性部材72の供給側付勢力とを合わせた力を超えない限り、各作動油供給手段70a〜cの閉弁状態は維持される。
各作動油排出手段80a〜cは、位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御するものである。各作動油排出手段80a〜cは、プライマリ隔壁54の排出側通路54a内にそれぞれ配置されている。つまり、作動油排出手段は、プライマリ隔壁54に円周上に等間隔に複数箇所配置されている(この実施例では、3箇所)。各作動油排出手段80a〜cは、ボール式の排出側逆止弁と油圧によりこの排出側逆止弁を開弁するアクチュエータとからなり、ボール81と、排出側付勢手段である排出側弾性部材82と、円筒部材83と、係止部材84と、開弁部材85a〜cと、駆動油圧室86〜cとにより構成されている。
各ボール81は、各排出側通路54aの各突起部54bよりもプライマリ油圧室側に配置され、各突起部の径よりも大きい直径である。各排出側弾性部材82は、この各ボール81を介して、係止部材84により排出側通路54aに固定された円筒部材83と、突起部54bとの間に付勢された状態で配置されている。各排出側弾性部材82は、この各ボール81が各突起部54bと接触する方向に排出側付勢力を発生しており、この排出側付勢力が各ボール81に作用している。なお、この排出側付勢力は、この実施例では、同一の大きさで各ボール81に作用している。また、各係止部材84は、円盤形状であり、その中央部に作動油が通過するための開口が形成されている。
各開弁部材85a〜cは、円柱形状であり、各排出側通路54aの各突起部54bよりもプライマリ油圧室側と反対側に、この各排出側通路54aの軸方向に摺動可能に配置されている。この各開弁部材85a〜cの軸方向における一方の端部、すなわちプライマリ油圧室側の端部には、突出部が形成されている。各開弁部材85a〜cは、各駆動油圧室86の油圧により、プライマリ油圧室側に摺動することで、この突出部の先端部が各ボール81と接触する。そして、各ボール81は、駆動油圧室86〜cの作動油の油圧により、各開弁部材85a〜cが各ボール81をプライマリ油圧室側に押圧する押圧力がプライマリ油圧室55の油圧P1と各排出側弾性部材82の排出側付勢力とを併せた力を超えると、各突起部54bと離れる方向に移動し、各作動油排出手段80a〜cであるボール式の排出側逆止弁が開弁する。つまり、各作動油排出手段80a〜cは、プライマリ油圧室55から作動油が外部に排出される方向にのみ開弁する逆止弁である。なお、プライマリ油圧室55の油圧P1は、各ボール81にも作用するが、この各ボール81が各突起部54bに接触する方向に作用するため、プライマリ油圧室55の油圧P1が上昇しても、各ボール81が各突起部54bから離れることがない。従って、各駆動油圧室86の油圧による開弁部材85a〜cの押圧力が、プライマリ油圧室55の油圧P1と各排出側弾性部材82bの排出側付勢力とを合わせた力を超えない限り、各作動油排出手段80a〜cの閉弁状態は維持される。
ここで、各開弁部材85a〜cは、その軸方向における他方の端部、すなわち各駆動油圧室86の作動油の油圧を受ける受圧面87a〜cの面積M1〜3がそれぞれ異なるように設定されている。この実施例では、各受圧面87a〜cは、開弁部材85a、開弁部材85b、開弁部材85cの順番で、その面積M1〜3が小さくなるように設定されている。つまり、各アクチュエータは、油圧を受ける各受圧面87a〜cの面積がそれぞれ異なり、その面積M1〜3がM1>M2>M3となるように設定されている。従って、各駆動油圧室86の作動油の油圧が同一の場合、各開弁部材85a〜cが各ボール81a〜cをプライマリ油圧室側に押圧する押圧力は、各受圧面87a〜cの面積M1〜3が広いほど大きくなる。つまり、各駆動油圧室86の作動油の油圧が変化、すなわち増加するに伴って、作動油排出手段80a、作動油排出手段80b、作動油排出手段80cの順で、位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容される。これにより、各作動油排出手段80a〜cは、各駆動油圧室86の作動油の油圧によって、位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容される。つまり、各作動油排出手段80a〜cは、プライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容条件が、各アクチュエータに作用する油圧によって異なる。
各駆動油圧室86は、各開弁部材85a〜cの各受圧面87a〜cと、プライマリ隔壁54の各排出側通路54aを形成する内壁面と、閉塞部材54cの内壁面とにより形成されている。この駆動油圧室86〜cは、その軸方向における面積がそれぞれ各受圧面87a〜cの面積M1〜3よりも若干広く形成されている。なお、この各駆動油圧室86には、駆動側主通路51、各軸側連通通路51dおよび各隔壁側連通通路54dを介して作動油供給制御装置130から作動油が供給される。
セカンダリプーリ60と最終減速機90との間には、動力伝達経路100が配置されている。この動力伝達経路100は、セカンダリプーリ軸61と同一軸線上の入力軸101と、このセカンダリプーリ軸61と平行なインターミディエイトシャフト102と、カウンタドライブピニオン103、カウンタドリブンギヤ104と、ファイナルドライブピニオン105とにより構成されている。入力軸101およびこの入力軸101に固定されているカウンタドライブピニオン103は、軸受118,119により回転可能の保持されている。インターミディエイトシャフト102は、軸受116,117により回転可能に支持されている。カウンタドリブンギヤ104は、インターミディエイトシャフト102に固定されており、カウンタドライブピニオン103と噛み合わされている。また、ファイナルドライブピニオン105は、インターミディエイトシャフト102に固定されている。
ベルト式無段変速機1の最終減速機90は、動力伝達経路100を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクを車輪120,120から路面に伝達するものである。この最終減速機90は、中空部が形成されたデフケース91と、ピニオンシャフト92と、デフ用ピニオン93,94と、サイドギヤ95,96とにより構成されている。
デフケース91は、軸受97,98により回転可能に支持されている。また、このデフケース91の外周には、リングギヤ99が設けられており、このリングギヤ99がファイナルドライブピニオン105と噛み合わされている。ピニオンシャフト92は、デフケース91の中空部に取り付けられている。デフ用ピニオン93,94は、このピニオンシャフト92に回転可能に取り付けられている。サイドギヤ95,96は、このデフ用ピニオン93,94の両方に噛み合わされている。このサイドギヤ95,96は、それぞれドライブシャフト121,122に固定されている。
ベルト式無段変速機1のベルト110は、プライマリプーリ50を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクをセカンダリプーリ60に伝達するものである。このベルト110は、図1に示すように、プライマリプーリ50のプライマリ溝110aとセカンダリプーリ60のセカンダリ溝110bとの間に巻き掛けられている。また、ベルト110は、例えば多数の金属製の駒と複数本のスチールリングで構成された無端ベルトである。
ドライブシャフト121,122は、その一方の端部にそれぞれサイドギヤ95,96が固定され、他方の端部に車輪120,120が取り付けられている。
作動油供給制御装置130は、排出許容手段であり、各作動油排出手段80a〜cによるプライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容条件に基づいて行わせるものである。この作動油供給制御装置130は、少なくともベルト式無段変速機1の各構成部品の潤滑部分や、各油圧室(プライマリ油圧室55やセカンダリ油圧室64や駆動油圧室86も含まれる)に作動油を供給するものである。この作動油供給制御装置130は、オイルタンク131と、オイルポンプ132と、プレッシャーレギュレータ133と、挟圧力調圧バルブ134と、押圧力調圧バルブ135とにより構成されている。
オイルポンプ132は、内燃機関10の出力、例えば図示しないクランクシャフトの回転に連動して作動するものであり、オイルタンク131に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。この加圧されて吐出された作動油は、プレッシャーレギュレータ133を介して、挟圧力調圧バルブ134および押圧力調圧バルブ135に供給される。ここで、プレッシャーレギュレータ133は、このプレッシャーレギュレータ133よりも下流側における油圧が所定油圧以上となった際に、この下流側にある作動油の一部をオイルタンク131に戻すものである。
挟圧力調圧バルブ134は、その弁開度を制御することで、プライマリプーリ50のプライマリ油圧室55の油圧P1およびセカンダリプーリ60のセカンダリ油圧室64の油圧を調圧するものである。つまり、挟圧力調圧バルブ134は、プライマリプーリ50のプライマリ油圧室55およびセカンダリプーリ60のセカンダリ油圧室64において発生するベルト挟圧力を制御するものである。この挟圧力調圧バルブ134は、プライマリプーリ軸51の供給側空間部51aに接続されており、挟圧力調圧バルブ134により調圧された作動油が、この供給側空間部51aを介してプライマリ油圧室55に供給される。なお、作動油供給制御装置130は、この挟圧力調圧バルブ134以外にもう一つ図示しない挟圧力調圧バルブを備え、この図示しない挟圧力調圧バルブがセカンダリプーリ軸61の図示しない作動油通路に接続されており、この挟圧力調圧バルブにより調圧された作動油が、この図示しない作動油通路を介してセカンダリ油圧室64に供給されるようにしても良い。
押圧力調圧バルブ135は、その弁開度を制御することで、各駆動油圧室86の油圧を調圧、すなわち変化させるものである。つまり、押圧力調圧バルブ135は、各駆動油圧室86において各開弁部材85a〜cにより各ボール81を軸方向のうちプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力を制御し、各アクチュエータによる各排出側逆止弁の開弁を上記許容条件に基づいて行わせるものである。この押圧力調圧バルブ135は、プライマリプーリ軸51の駆動側主通路51bを介して各駆動油圧室86に接続されており、押圧力調圧バルブ135により調圧された作動油が、この駆動油圧室86に供給される。
次に、実施例にかかるベルト式無段変速機1の動作について説明する。まず、一般的な車両の前進、後進について説明する。車両に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が前進ポジションを選択した場合は、図示しないECU(Engine Control Unit)が、作動油供給制御装置130から供給された作動油によりフォワードクラッチ42をON、リバースブレーキ43をOFFとし、前後進切換機構40を制御する。これにより、インプットシャフト38とプライマリプーリ軸51が直結状態となる。つまり、遊星歯車装置41のサンギヤ44とリングギヤ46を直接連結し、内燃機関10のクランクシャフト11の回転方向と同一方向にプライマリプーリ軸51を回転させ、この内燃機関10からの出力トルクをプライマリプーリ50に伝達する。プライマリプーリ50に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、ベルト110を介してセカンダリプーリ60に伝達され、このセカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61を回転させる。
セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関10の出力トルクは、中間部材67から動力伝達経路100の入力軸101,カウンタドライブピニオン103およびカウンタドリブンギヤ104を介して、インターミディエイトシャフト102に伝達され、インターミディエイトシャフト102を回転させる。インターミディエイトシャフト102に伝達された出力トルクは、ファイナルドライブピニオン105およびリングギヤ99を介して最終減速機90のデフケース91に伝達され、このデフケース91を回転させる。デフケース91に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、デフ用ピニオン93,94およびサイドギヤ95,96を介してドライブシャフト121,122に伝達され、その端部に取り付けられた車輪120,120に伝達され、車輪120,120を回転させ、車両は前進する。
一方、車両に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が後進ポジションを選択した場合は、図示しないECUが、作動油供給制御装置130から供給された作動油によりフォワードクラッチ42をOFF、リバースブレーキ43をONとし、前後進切換機構40を制御する。これにより、遊星歯車装置41の切換用キャリヤ47がトランスアクスルケース22に固定され、各ピニオン45が自転のみを行うように切換用キャリヤ47に保持される。従って、リングギヤ46がインプットシャフト38と同一方向に回転し、このリングギヤ46と噛合っている各ピニオン45もインプットシャフト38と同一方向に回転し、この各ピニオン45と噛合っているサンギヤ44がインプットシャフト38と逆方向に回転する。つまり、サンギヤ44に連結されているプライマリプーリ軸51は、インプットシャフト38と逆方向に回転する。これにより、セカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61、入力軸101、インターミディエイトシャフト102、デフケース91、ドライブシャフト121,122などは、運転者が前進ポジションを選択した場合とは逆方向に回転し、車両が後進する。
また、図示しないECUは、車両の速度や運転者のアクセル開度などの所条件とECUの記憶部に記憶されているマップ(例えば、機関回転数とスロットル開度に基づく最適燃費曲線など)とに基づいて、内燃機関10の運転状態が最適となるようにベルト式無段変速機1の変速比を制御する。このベルト式無段変速機1の変速比の制御には、変速比の変更と、変速の固定(変速比γ定常)とがある。この変速比の変更、変速比の固定は、プライマリプーリ50の位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55の油圧と、駆動油圧室86の油圧とを制御することで行われる。
変速比の変更は、主に作動油供給制御装置130からプライマリ油圧室55への作動油の供給、あるいはプライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部への作動油の排出により、プライマリ可動シーブ53がプライマリプーリ軸51の軸方向に摺動し、プライマリ固定シーブ52とこのプライマリ可動シーブ53との間の間隔、すなわちプライマリ溝110aの幅が調整される。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が変化し、プライマリプーリ50の回転数とセカンダリプーリ60の回転数との比である変速比が無段階(連続的)に制御される。また、変速比の固定は、主に、プライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部への作動油の排出の禁止により行われる。
なお、セカンダリプーリ60においては、セカンダリ油圧室64に作動油供給制御装置130から供給される作動油の油圧を挟圧力調圧バルブ134により制御することで、セカンダリ固定シーブ62とこのセカンダリ可動シーブ63とによりベルト110を挟み付けるベルト挟圧力が調整される。これにより、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60との間に巻き掛けられたベルト110のベルト張力が制御される。
変速比の変更には、アップシフト、すなわち変速比を減少させる変速比減少変更と、ダウンシフト、すなわち変速比を増加させる変速比増加変更とがある。以下、それぞれについて説明する。
変速比減少変更では、作動油供給制御装置130からプライマリ油圧室55へ作動油を供給し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に摺動(移動)させることで行われる。まず、図6に示すように、各作動油供給手段70の各供給側逆止弁を開弁し、作動油供給制御装置130からプライマリ油圧室55への作動油の供給を許容する。具体的には、作動油供給制御装置130の挟圧力調圧バルブ134により調圧された作動油を、各供給側通路53eの各ボール71よりもプライマリプーリ軸側に供給し、この部分の油圧を上昇させ、この部分の油圧がプライマリ油圧室55の油圧P1と各供給側弾性部材72の供給側付勢力を合わせた力を超えると各ボール71が段差部53fから離れる方向に移動し、各供給側逆止弁が開弁する。これにより、各作動油供給手段70による位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給が許容される。
各作動油供給手段70による位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給が許容されると、同図の矢印Cに示すように、作動油供給制御装置130から供給側空間部51aに供給された作動油は、供給側空間部51aの供給側弾性部材72が配置されている部分よりもプライマリ可動シーブ53側に流入し、軸側連通通路51cおよび供給側通路53eを介して、プライマリ油圧室55に供給される。このとき、作動油供給制御装置130は、押圧力調圧バルブ135を閉弁しており、作動油供給制御装置130から駆動油圧室86への作動油の供給が停止されている。つまり、作動油排出手段80は、閉弁状態を維持し、プライマリ油圧室55から作動油の排出が禁止されている。従って、供給された作動油によりプライマリ油圧室55の圧力P1が上昇し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧力する押圧力が上昇し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が増加し、セカンダリプーリ60におけるベルト110の接触半径が減少し、変速比が減少する。
変速比増加変更では、プライマリ油圧室55から作動油を排出し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側と反対側に摺動(移動)させることで行われる。まず、図7示すように、各作動油排出手段80a〜cの各排出側逆止弁を開弁し、プライマリ油圧室55から作動油の排出を許容する。
ここで、ダウンシフト時、すなわち変速比増加時におけるベルト式無段変速機1の制御方法、特にプライマリ油圧室55から作動油の排出が許容される各作動油排出手段80a〜cの数の決定方法について説明する。まず、作動油供給制御装置130は、図8に示すように、ECUからダウンシフト要求が行われたか否かを判断する(ステップST1)。ここでは、作動油供給制御装置130は、ECUが要求ダウンシフト速度を算出する必要があるか否かで、ダウンシフト要求が行われた否かを判断する。
次に、作動油供給制御装置130は、ダウンシフト要求が決定された場合は、プライマリ油圧室55の油圧P1を算出する(ステップST2)。ここでは、作動油供給制御装置130は、例えば内燃機関10の出力トルク、セカンダリ油圧室64の油圧、ベルト式無段変速機1の変速比などに基づいて、プライマリ油圧室55の油圧P1を算出する。
次に、作動油供給制御装置130は、プライマリ油圧室55の油圧P1と各排出通路54eの図示しない排出口の面積から、各作動油排出手段80a〜cの排出流量を算出する(ステップST3)。ここで、この実施例では、各排出通路54eの図示しない排出口の面積が同一であるので、算出された各作動油排出手段80a〜cの排出流量は同一である。なお、この各作動油排出手段80a〜cの排出流量の算出においては、各排出通路54eの管路抵抗などを考慮しても良い。
次に、作動油供給制御装置130は、上記算出された各作動油排出手段80a〜cの排出流量から、作動油排出手段の数に応じた総排出流量を算出する(ステップST4)。ここで、この実施例では、ベルト式無段変速機1は、3つの作動油排出手段80a〜cを有するので、図9−1に示すように、プライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容される作動油排出手段の数が1から3まで増えることとなる。従って、作動油供給制御装置130は、作動油排出手段の数が1つの場合における総排出流量、作動油排出手段の数が2つの場合における総排出流量、作動油排出手段の数が3つの場合における総排出流量を算出する。ここで、プライマリ油圧室55と連通する排出口の総断面積は、作動油排出手段の数が増えるごとに比例して増加する。従って、油圧室55からの作動油の排出が許容される作動油排出手段の数が増えるごとに、プライマリ油圧室55からの作動油の総排出流量が比例して増加する。
次に、作動油供給制御装置130は、上記算出された作動油排出手段の数に応じた総排出流量から作動油排出手段の数に応じたダウンシフト速度を予測する(ステップST5)。
次に、作動油供給制御装置130は、ECUが算出された要求ダウンシフト速度と、上記予測された予測ダウンシフト速度とを比較する。そして、プライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容される作動油排出手段の数を決定する(ステップST6)。例えば、要求ダウンシフト速度と、上記予測された予測ダウンシフト速度とを比較して、プライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容される作動油排出手段の数を2つと決定した場合は、プライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容するのに必要な駆動油圧室の必要油圧が小さい順に、作動油排出手段80aおよび作動油排出手段80bとなる。つまり、作動油供給制御装置130は、この作動油排出手段80aおよび作動油排出手段80bによるプライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容することとなる。
次に、作動油供給制御装置130は、プライマリ油圧室55の油圧P1と各供給側付勢力とから必要押圧力を算出する(ステップST7)。ここでは、プライマリ油圧室55の油圧P1と各供給側弾性部材82により各ボール81に作用する供給側付勢力とから、各開弁部材85a〜cが各排出側逆止弁を開弁するのに必要な必要押圧力を算出する。ここで、この実施例では、各供給側弾性部材82により各ボール81に作用する供給側付勢力は、同一であるので、算出された各開弁部材85a〜cが各排出側逆止弁を開弁するのに必要な必要押圧力は同一である。
次に、作動油供給制御装置130は、算出された必要押圧力と各開弁部材85a〜cの受圧面87a〜cの面積とから、決定された作動油排出手段の数に基づいて駆動油圧室86〜cの必要油圧を算出する(ステップST8)。例えば、上述のように、プライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容される作動油排出手段の数を2つと決定した場合は、この2つの作動油排出手段80aおよび作動油排出手段80bのうち、算出された必要押圧力を発生させるのに必要な駆動油圧室の油圧が大きい方である作動油排出手段80bによるプライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容するのに必要な駆動油圧室86bの油圧を算出することとなる。
そして、作動油供給制御装置130は、上記決定された駆動油圧室86〜cの必要油圧に基づいて、ダウンシフト実行する(ステップST9)。具体的には、各駆動油圧室86の油圧作動油供給制御装置130に押圧力調圧バルブ135により調圧された作動油を、駆動側主通路51bを介して各駆動油圧室86に作動油を供給し、上記算出された必要油圧までこの各駆動油圧室86の油圧を上昇させる。この各駆動油圧室86の油圧を受けた各開弁部材85a〜cにより各ボール81を軸方向のうちプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力がプライマリ油圧室55の油圧と各排出側弾性部材82の排出側付勢力を合わせた力を超えると、各開弁部材85a〜cが各ボール81を突起部54bから離れる方向に押圧し、各ボール81が各突起部54bから離れる方向に移動し、各排出側逆止弁が開弁する。これにより、各作動油排出手段80a〜cによる位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55への作動油の供給が許容される。
各作動油排出手段80a〜cによる位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容されると、矢印Dに示すように、プライマリ油圧室55の作動油は、各排出側通路54aの各突起部54bよりもプライマリ油圧室側に流入する。次に、この各排出側通路54aの各突起部54bよりもプライマリ油圧室側に流入した作動油は、突起部54bから各作動油排出手段80a〜cの各排出空間部に流入し、排出通路54eを介してプライマリプーリ50の外部へ排出される。
このとき、作動油供給制御装置130は、挟圧力調圧バルブ134を閉弁しており、作動油供給制御装置130からプライマリ油圧室55への作動油の供給が停止されている。つまり、各作動油供給手段70の供給側逆止弁は、閉弁状態を維持する。従って、プライマリ油圧室55から作動油が排出されることにより、プライマリ油圧室55の圧力P1が減少し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が減少し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側と反対側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が減少し、セカンダリプーリ60におけるベルト110の接触半径が増加し、変速比が増加する。
変速比の固定は、プライマリ油圧室55から作動油を排出せず、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定とし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する移動を規制することで行われる。なお、変速比を固定、すなわち変速比を定常とするのは、車両の走行状態が安定している場合など、大幅な変速比の変更を行う必要がないと、図示しないECUが判断した場合である。まず、図2に示すように、各作動油供給手段70a〜cおよび各作動油排出手段80a〜cを閉弁状態に維持し、プライマリ油圧室55から作動油の排出を禁止する。具体的には、作動油供給制御装置130は、挟圧力調圧バルブ134および押圧力調圧バルブ135のいずれも閉弁し、作動油供給制御装置130から供給側通路53aの各ボール71よりもプライマリプーリ軸側への作動油の供給および駆動油圧室86〜cへの作動油の供給を停止する。従って、この部分の油圧および駆動油圧室86〜cの油圧による各開弁部材85a〜cが各排出側逆止弁を開弁する押圧力がそれぞれプライマリ油圧室55の油圧P1と、供給側付勢力あるいは排出側付勢力とを合わせた力を超えることはなく、各ボール71が各段差部53fから離れることはなく、各ボール81が突起部54bから離れることはない。これにより、各作動油供給手段70および各作動油排出手段80a〜cは、閉弁状態を維持し、プライマリ油圧室55からの作動油の排出が禁止される。
ここで、変速比の固定時においても、ベルト110のベルト張力が変化するため、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が変化しようとし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化する虞がある。上述のように、プライマリ油圧室55には、作動油が保持された状態となるため、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化しようとすると、このプライマリ油圧室55の油圧P1は変化するがプライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置は一定に維持される。従って、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、プライマリ油圧室55に作動油を供給することによるプライマリ油圧室55の油圧P1の上昇を行わなくても良い。これにより、変速比の固定時に、プライマリ油圧室55に作動油を供給するために作動油供給制御装置130が備えるオイルポンプ132を駆動させなくても良いため、オイルポンプの動力損失の増加を抑制することができる。
また、従来のベルト式無段変速機のように、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、作動油供給制御装置130からプライマリ油圧室55へ作動油を供給し続ける場合は、作動油が作動油供給制御装置130からプライマリ油圧室55までの作動油供給経路に、所定圧力の作動油が存在することとなる。この作動油供給経路には、固定部材と可動部材との摺動部を複数箇所含まれており、変速比の固定時において所定圧力の作動油がこの摺動部から作動油供給経路の外部に漏れる虞があった。この固定部材とは、ベルト式無段変速機1を構成する部材において、回転、摺動などを行わない部材である。例えばトランスアクスル20などである。一方、この可動部材とは、ベルト式無段変速機1を構成する部材において、回転、摺動などを行う部材である。例えばプライマリプーリ軸51などである。従って、摺動部とは、例えば、トランスアクスル20に対して、プライマリプーリ軸51が回転する部分などが含まれる。
上記ベルト式無段変速機1では、各作動油供給手段70および各作動油排出手段80a〜cは、プライマリ油圧室55と上記摺動部との間に配置されている。つまり、各作動油供給手段70a〜cおよび各作動油排出手段80a〜cを閉弁状態に維持し、プライマリ油圧室55に作動油を保持した状態とした際に、プライマリ油圧室55と各作動油供給手段70および各作動油排出手段80a〜cとの間には、上記固定部材と可動部材との摺動部が存在しない。これにより、この摺動部から作動油が漏れることを抑制することができるので、オイルポンプの動力損失の増加をさらに抑制することができる。
また、排出許容手段である作動油供給制御装置130は、各作動油排出手段80a〜cによる位置決め油圧室であるプライマリ油圧室55からの作動油の排出の許容、すなわち各作動油排出手段80a〜cの各アクチュエータにより各排出側逆止弁の開弁を作動油排出手段80a〜cごとに異なる許容条件に基づいて行わせることができる。この実施例では、油圧により各排出側逆止弁を開弁する各アクチュエータの油圧を受ける受圧面87a〜cの面積M1〜3をそれぞれ異ならせ、作動油供給制御装置130は、この各受圧面87a〜cが受ける油圧を変化、すなわち増加させる。従って、各排出側逆止弁は、各アクチュエータの油圧を受ける受圧面87a〜cの面積が広い順に開弁することができる。つまり、各アクチュエータが各排出側逆止弁を開弁するのには、この各アクチュエータに作用する油圧を変化すれば良い。
従って、この作動油供給制御装置130によりプライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容されている作動油排出手段の数に応じて、このプライマリ油圧室55から作動油が排出される際の総排出流量を変化させることができる。従って、ダウンシフト時、すなわち変速比の増加時における変速速度、すなわち変速比増加速度を変化させることができる。これにより、ダウンシフトのコントロール性が向上し、ドライバビリティーの向上や、要求される車両の走行状態に応じた変速比に容易に変化させることができ、効率化を図ることができる。
また、作動油供給制御装置130は、アクチュエータごとに作用する油圧を変化させる必要がなく、すべてのアクチュエータに作用する油圧を一律に変化させる、すなわち各受圧面87a〜cが受ける油圧を変化、すなわち駆動油圧室86〜cの油圧を全て一律に増加させることで、プライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容されている作動油排出手段の数を変更することができる。
さらに、各作動油排出手段80a〜cの各受圧面87a〜cの面積をそれぞれ異ならせるので、各受圧面87a〜cの面積が同一の場合と比較して、各作動油排出手段80a〜cのうちいずれかが駆動油圧室86〜cの油圧を大きく受けることができる。従って、駆動油圧室86〜cの油圧が低圧でも各作動油排出手段80a〜cによるプライマリ油圧室55からの作動油の排出を許容することができる。これにより、オイルポンプの動力損失の増加をさらに抑制することができる。
なお、上記実施例では、各作動油排出手段80a〜cの各受圧面87a〜cの面積をそれぞれ異ならせるが、この発明はこれに限定されるものではない。例えば、各排出側付勢手段82による各排出側逆止弁を閉弁方向に付勢する排出側付勢力をそれぞれ異ならせても良い。つまり、各開弁部材85a〜cにより各排出側逆止弁を開弁させる押圧力を各作動油排出手段80a〜cによりそれぞれ異ならせても良い。この場合は、作動油供給制御装置130が各駆動油圧室86の油圧を変化、すなわち増加させると、各排出側逆止弁は、各排出側付勢手段82による排出側付勢力が弱い順に開弁する。なお、受圧面87a〜cの面積および各排出側付勢手段82による排出側付勢力をそれぞれ異ならせても良い。
また、上記実施例では、各作動油排出手段80a〜cを同一の構成とし、すなわち受圧面87a〜cの面積および各排出側付勢手段82による排出側付勢力のいずれも異ならせずに、作動油供給制御装置130から各駆動油圧室86への作動油の供給の許容および禁止を制御しても良い。例えば、駆動側主通路51bと各駆動油圧室86との間にそれぞれ開閉弁を設けても良い。これにより、プライマリプーリ軸51と一体回転するプライマリ隔壁54に配置される各作動油排出手段80a〜cを同一構成とすることができるので、プライマリプーリの偏芯を抑制することができる。
また、上記実施例では、各作動油排出手段80a〜cは、プライマリ油圧室55からの作動油を排出する排出流量が同一であるが、それぞれ異ならせても良い。例えば、図10に示すように、各作動油排出手段80a〜cは、プライマリ油圧室55からの作動油を排出する排出口、すなわち各排出通路54eの排出口の面積N1〜3を作動油排出手段80a、作動油排出手段80b、作動油排出手段80cの順で広くすることで異ならせても良い。
この場合、図9−2に示すように、プライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容される作動油排出手段の数が増えるごとに、プライマリ油圧室55と連通する排出口の総断面積が比例以上で増加する。つまり、ダウンシフト時、すなわち変速比の増加時における変速速度、すなわち変速比増加速度の最大値を増加することができる。
なお、上記図10に示す場合とは、逆に各排出通路54eの排出口の面積N1〜3を作動油排出手段80a、作動油排出手段80b、作動油排出手段80cの順で狭くすることで異ならせても良い。この場合、図9−3に示すように、プライマリ油圧室55からの作動油の排出が許容される作動油排出手段の数が増えるごとに、プライマリ油圧室55と連通する排出口の総断面積が比例以下で増加する。つまり、ダウンシフト時、すなわち変速比の増加時における変速速度、すなわち変速比増加速度の最大値を減少することができる。
なお、各作動油排出手段80a〜cのプライマリ油圧室55からの作動油を排出する排出流量をそれぞれ異ならせる手段としては、プライマリ油圧室55からの作動油を排出する排出口の面積をそれぞれ異ならせる場合に限られず、この排出口における作動油の油圧を異ならせても良い。
実施例にかかるベルト式無段変速機のスケルトン図である。 プライマリプーリの要部断面図である。 図2のA−A断面図である。 図2のB−B断面図である。 トルクカムを示す図である。 トルクカムを示す図である。 変速比変更時(変速比減少時)におけるベルト式無段変速機の動作説明図である。 変速比変更時(変速比増加時)におけるベルト式無段変速機の動作説明図である。 ダウンシフト時のベルト式無段変速機の制御方法の動作フローを示す図である。 排出口の総断面積と、開弁数との関係を示す図である。 排出口の総断面積と、開弁数との関係を示す図である。 排出口の総断面積と、開弁数との関係を示す図である。 排出通路の他の構成例を示す図である。
符号の説明
1 ベルト式無段変速機
10 内燃機関(駆動源)
20 トランスアクスル
30 トルクコンバータ
40 前後進切換機構
50 プライマリプーリ
51 プライマリプーリ軸
51a 供給側主通路
51b 駆動側主通路
51c,51d 軸側連通通路
52 プライマリ固定シーブ
53 プライマリ可動シーブ
53e 供給側通路
53f 段差部
54 プライマリ隔壁
54a 排出側通路
54b 突起部
54c 閉塞部材
54d 隔壁側連通通路
54e 排出通路
54f 閉塞部材
55 プライマリ油圧室(位置決め油圧室)
60 セカンダリプーリ
61 セカンダリプーリ軸
62 セカンダリ固定シーブ
63 セカンダリ可動シーブ
64 セカンダリ油圧室
65 セカンダリ隔壁
66 トルクカム
70a〜c 作動油供給手段
71 ボール
72 供給側弾性部材(供給側付勢手段)
73 円筒部材
74 係止部材
80a〜c 作動油排出手段
81 ボール
82 排出側弾性部材(排出側付勢手段)
83 円筒部材
84 係止部材
85a〜c 開弁部材
86 駆動油圧室
87a〜c 受圧面
90 最終減速機
100 動力伝達経路
110 ベルト
120 車輪
130 作動油供給制御装置

Claims (6)

  1. 平行に配置され、駆動源からの駆動力がいずれか一方に伝達される2つのプーリ軸と、当該2つのプーリ軸上をそれぞれ軸方向に摺動する2つの可動シーブと、当該2つの可動シーブに前記軸方向にそれぞれ対向し、かつ当該プーリ軸とそれぞれ一体回転する2つの固定シーブと、からなる2つのプーリと、
    前記2つのプーリのうちいずれか一方のプーリに伝達された前記駆動源からの駆動力を他方のプーリに伝達するベルトと、
    前記可動シーブを前記固定シーブ側に押圧することで、当該可動シーブの当該固定シーブに対する軸方向への移動および当該移動の規制を行う位置決め油圧室と、
    前記2つのプーリのいずれか一方のプーリ軸、固定シーブあるいは可動シーブのいずれかに配置され、前記位置決め油圧室への作動油の供給のみを許容する作動油供給手段と、
    前記作動油供給手段が配置される前記プーリの前記固定シーブに配置され、前記位置決め油圧室からの作動油の排出の許容あるいは禁止を制御し、かつ当該許容条件がそれぞれ異なる複数の作動油排出手段と、
    前記各作動油排出手段による前記位置決め油圧室からの作動油の排出を前記許容条件に基づいて行わせる排出許容手段と、
    を備えることを特徴とするベルト式無段変速機。
  2. 前記各作動油排出手段は、前記位置決め油圧室からの作動油を排出する排出流量がそれぞれ異なることを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機。
  3. 前記作動油供給手段は、供給側付勢手段により閉弁方向に付勢される供給側逆止弁を有し、
    前記各作動油排出手段は、排出側付勢手段により閉弁方向に付勢される排出側逆止弁と、当該排出側逆止弁を開弁するアクチュエータとをそれぞれ有し、
    前記排出許容手段は、前記各アクチュエータによる各排出側逆止弁の開弁を前記許容条件に基づいて行わせるものであることを特徴とする請求項1または2に記載のベルト式無段変速機。
  4. 前記各排出側付勢手段は、前記各排出側逆止弁を閉弁方向に付勢する排出側付勢力がそれぞれ異なり、
    前記各アクチュエータは、油圧により前記排出側逆止弁を開弁し、
    前記排出許容手段は、前記油圧を変化させることを特徴とする請求項3に記載のベルト式無段変速機。
  5. 前記各アクチュエータは、油圧により前記排出側逆止弁を開弁し、当該油圧を受ける受圧面の面積がそれぞれ異なり、
    前記排出許容手段は、前記油圧を変化させることを特徴とする請求項3または4に記載のベルト式無段変速機。
  6. 前記各作動油排出手段は、前記位置決め油圧室からの作動油を排出する排出口の面積が異なることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つに記載のベルト式無段変速機。
JP2005363887A 2005-12-16 2005-12-16 ベルト式無段変速機 Pending JP2007162919A (ja)

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