以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
図1は、本実施形態に係るベルト式無段変速機を備えた車両の動力伝達部分における全体の構成を示す概念図である。図1に示すように、車両100の動力伝達機構は、ベルト式無段変速機110と、内燃機関120と、トルクコンバータ130と、前後進切換機構140と、減速装置150と、差動装置160と、を備える。
内燃機関120は、円筒形状に形成されるシリンダの中心軸方向にピストンが往復運動し、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト121から回転を出力する。
なお、内燃機関120は、ピストンとシリンダとを備えるいわゆるレシプロ式の内燃機関に限定されない。内燃機関120は、回転力を出力できるものであればよく、例えば、内燃機関120は、ロータリー式の内燃機関でもよいし、モータでもよい。
トルクコンバータ130は、流体クラッチの一種であり、内燃機関120から取り出された回転を作動油を介して前後進切換機構140に伝える。また、トルクコンバータ130は内燃機関120から取り出されたトルクを増幅する。
前後進切換機構140は、トルクコンバータ130からの回転の回転方向を切り替えてベルト式無段変速機110へ前記回転を伝える。
ベルト式無段変速機110は、前後進切換機構140から入力される回転の回転速度を所望の回転速度に変更して出力する。なお、ベルト式無段変速機110の詳細な説明は後述する。
減速装置150は、ベルト式無段変速機110からの回転の回転速度を減速して差動装置160に前記回転を伝える。
差動装置160は、車両100が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の車輪180と、外側の車輪180との回転速度の差を吸収する。
上記構成要素によって車両100の動力伝達機構は形成される。内燃機関120から取り出された回転は、クランクシャフト121を介してトルクコンバータ130に伝えられる。トルクコンバータ130によってトルクが増幅された回転は、ベルト式無段変速機110の入力軸としてのインプットシャフト131を介して前後進切換機構140に伝えられる。
前後進切換機構140によって回転方向が切り替えられた回転は、入力側のシャフトとしてのプライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機110に伝えられる。ベルト式無段変速機110によって、回転速度を変更された回転は、減速装置150に伝えられる。
減速装置150によって減速された回転は、減速装置150のファイナルドライブピニオン151と、ファイナルドライブピニオン151に噛み合う差動装置160のリングギア161とを介して差動装置160に伝えられる。
差動装置160に伝えられた回転は、ドライブシャフト170に伝達される。差動装置160側とは反対側のドライブシャフト170には、車輪180が取り付けられる。ドライブシャフト170に伝えられた回転は車輪180に伝達される。これにより、車輪180は回転し、車輪180が路面に前記回転を伝達することにより車両100は走行する。
ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ50と、セカンダリプーリ60と、ベルト80とを含んで構成される。ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ50に回転が入力される。プライマリプーリ50に入力された回転は、セカンダリプーリ60に伝えられる。この時、前記回転は、その回転速度を調整される。
セカンダリプーリ60に伝えられた回転は、減速装置150に伝えられる。なお、入力軸であるプライマリシャフト51の回転速度を出力側のシャフトとしてのセカンダリシャフト61の回転速度で除算した値を変速比という。また、変速比を変更することを、以下、変速という。
図2は、本実施形態に係るプライマリプーリを示す断面図である。ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とが、ほぼ同様に構成される。よって、本実施形態では、プライマリプーリ50を主に説明する。
プライマリプーリ50は、プライマリシャフト51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリプーリ油圧室54と、スプライン55と、プライマリ隔壁56とを備える。プライマリシャフト51は、図1及び図2に示すように、軸受81、軸受82によってインプットシャフト131の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。ここで、セカンダリシャフト61は、図1に示すように、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。
プライマリシャフト51は、筒状に形成される。図2に示すように、プライマリシャフト51は、回転軸RLを軸として回転する。プライマリ固定シーブ52は、通常は、プライマリシャフト51と一体に形成される。なお、プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51と別個に形成され、プライマリシャフト51に固定して設けられてもよい。このように構成されて、プライマリ固定シーブ52は、回転軸RLを軸にプライマリシャフト51と一体に回転する。ここで、回転軸RLと直交する方向を径方向という。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周から径方向に突出して形成される。
プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51とは別個に形成される。プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51が嵌め込まれる貫通孔を有して形成される。前記貫通孔の内周面には、スプライン55が形成される。プライマリ可動シーブ53は、スプライン55を介してプライマリシャフト51に嵌め込まれて取り付けられる。プライマリ可動シーブ53は、プライマリ固定シーブ52と対向してプライマリシャフト51に嵌め込まれる。
スプライン55は、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上をプライマリシャフト51の回転軸RLに沿って摺動できるようにプライマリ可動シーブ53を支持する。加えて、スプライン55は、回転軸RLを軸とする回転をプライマリシャフト51からプライマリ可動シーブ53へ伝える。よって、プライマリ可動シーブ53は、スプライン55により、プライマリシャフト51上をスライドして移動すると共に、プライマリシャフト51と一体に回転する。
プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間には、略V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を摺動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。ここで、セカンダリプーリ60にも、図1に示すように、プライマリ溝80aと同様のセカンダリ溝80bが形成される。
プライマリ溝80aとセカンダリ溝80bとの間には、金属製の無端ベルトであるベルト80が巻きかけられている。ベルト80は、プライマリプーリ50の回転をセカンダリプーリ60へ伝える。
図2に示すように、プライマリプーリ油圧室54は、プライマリシャフト51と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁56とによって囲まれて形成される空間である。プライマリ隔壁56は、貫通孔を有して形成される。プライマリ隔壁56は、前記貫通孔にプライマリシャフト51が嵌め込まれてプライマリシャフト51に設けられる。プライマリ隔壁56は、プライマリ可動シーブ53を境にして、プライマリ固定シーブ52側とは反対側に設けられる。
プライマリプーリ油圧室54は、プライマリプーリ油圧室54に供給される作動油により、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52側へ押す。これにより、プライマリシャフト51に沿って、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52側へ押される。これにより、プライマリプーリ油圧室54は、プライマリ溝80aに巻き掛けられるベルト80に対して挟圧力を発生させる。
前記挟圧力により、プライマリ可動シーブ53とプライマリ固定シーブ52との距離が変化すると、セカンダリプーリ60が備えるセカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との距離もベルト80の張力を一定に保つように変化する。これにより、プライマリプーリ50に対するベルト80の接触半径と、セカンダリプーリ60に対するベルト80の接触半径とが変化する。このようにして、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120から取り出された回転を変速する。
プライマリシャフト51は、第1油路OL01を有する。第1油路OL01は、一方の端部が作動油の供給元であるオイルタンクOTに接続され、他方の端部がプライマリプーリ油圧室54に開口する。これにより、第1油路OL01は、オイルタンクOTとプライマリプーリ油圧室54との間で作動油を流す。第1油路OL01は、プライマリシャフト51の回転軸RLに沿う方向に形成される複数の軸方向油路OL01aと、回転軸RLと直交する方向に形成される複数の径方向油路OL01bとを含んで形成される。
第1油路OL01の経路上には、オイルタンクOTからプライマリプーリ油圧室54に向かって順に、圧力発生手段としてのオイルポンプOPと、変速比制御側レギュレータORaと、作動油閉じ込み手段としての作動油閉じ込み装置10とが設けられる。オイルポンプOPは、オイルタンクOTからプライマリプーリ油圧室54に向けて作動油を送る。
ここで、オイルポンプOPは、クランクシャフト121から作動するための動力を得ている。よって、オイルポンプOPが消費する動力が増加すると、クランクシャフト121の有するエネルギーが消費される。このエネルギーの消費を補うために、内燃機関120は、燃料の噴射量が増加する。このように、オイルポンプOPが消費する動力が増加すると、内燃機関120の燃料の消費量が増加する。
本実施形態では、このオイルポンプOPが消費する動力の増加を抑制して、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制することを目的とする。なお、内燃機関120の燃料の消費量の増加とは、燃費の悪化と同意である。つまり、ベルト式無段変速機110は、オイルポンプOPが消費する動力の増加を抑制することにより、燃費の悪化を抑制する。
変速比制御側レギュレータORaは、プライマリプーリ油圧室54へ供給する作動油の圧力を調節する。また、変速比制御側レギュレータORaは、後述するECU(Electrical Control Unit)40と電気的に接続される。変速比制御側レギュレータORaは、プライマリプーリ油圧室54から作動油を排出する際に、オイルタンクOTに作動油を戻す。
作動油閉じ込み装置10は、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出を制御する装置である。作動油閉じ込み装置10は、所定の期間、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出を禁止する。なお、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出が禁止されている状態を閉じ込み状態という。また、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出が許可されている状態を開放状態という。
図3は、プライマリプーリ油圧室が閉じ込み状態での作動油閉じ込み装置を拡大して示す断面図である。図4は、プライマリプーリ油圧室が開放状態での作動油閉じ込み装置を拡大して示す断面図である。以下に、作動油閉じ込み装置10の一例を説明する。
作動油閉じ込み装置10は、ピストン動作用油圧室11と、シール部12と、弁体13と、ピストン14と、スプリング15とを備える。ピストン動作用油圧室11は、ピストン動作用油圧室11内の作動油の圧力によって、ピストン14に対して押圧力を与える。シール部12は、第1油路OL01内にテーパ面12aを有して形成される。テーパ面12aは、プライマリプーリ油圧室54に近づくほど向かい合うテーパ面同士の距離が大きくなる。
シール部12は、開口12bを有する。この開口12bを介して作動油がシール部12を行き来する。弁体13は、球状に形成される。弁体13の直径は、開口12bの直径よりも大きい。弁体13は、シール部12のテーパ面12aとプライマリプーリ油圧室54側から接触する。これにより、弁体13は、開口12bをプライマリプーリ油圧室54側から塞ぐ。
ピストン14は、受圧面14aと、棒状部14bとを備える。受圧面14aは、ピストン動作用油圧室11内に配置される。棒状部14bは、第1油路OL01内に配置される。棒状部14bは、一方の端部が、受圧面14aと連結される。また、棒状部14bは、他方の端部が、開口12bを貫通して弁体13と接触する、または連結される。これにより、ピストン14がピストン動作用油圧室11内の作動油の圧力によって、弁体13に近づく方向へ移動すると、ピストン14は、弁体13をシール部12から離れる方向へ押す。
スプリング15は、ピストン14に対して弁体13から離れる方向の力を与える。なお、前記力は、ピストン14が、弁体13に近づく方向に動いた後に、その前の状態、つまり、図3に示す閉じ込み状態に戻るために必要な最低限の力である。
ピストン動作用油圧室11には、作動油が供給される。以下に、前記作動油の供給経路を説明する。図2に示すように、プライマリシャフト51には、第1油路OL01と別の第2油路OL02が形成される。第2油路OL02は、一方の端部が作動油の供給元であるオイルタンクOTに接続され、他方の端部がピストン動作用油圧室11に開口する。これにより、第2油路OL02は、オイルタンクOTとピストン動作用油圧室11との間で作動油を流す。第2油路OL02は、プライマリシャフト51の回転軸RLに沿う方向に形成される複数の軸方向油路OL02aと、回転軸RLと直交する方向に形成される複数の径方向油路OL02bとを含んで形成される。
第1油路OL01の経路上には、オイルタンクOTからプライマリプーリ油圧室54に向かって順に、オイルポンプOPと、閉じ込み制御側レギュレータORbと、作動油閉じ込み装置10とが設けられる。オイルポンプOPは、オイルタンクOTからピストン動作用油圧室11に向けて作動油を送る。
閉じ込み制御側レギュレータORbは、ピストン動作用油圧室11に供給する作動油の圧力を調節する。また、閉じ込み制御側レギュレータORbは、後述するECU40と電気的に接続される。なお、閉じ込み制御側レギュレータORbは、ピストン動作用油圧室11から作動油を排出する際に、オイルタンクOTに作動油を戻す。
ここで、図3に示すように、受圧面14aの作動油の圧力を受ける面積を受圧面積Apとする。また、シール部12の弁体13と接触する部分は円形であり、前記円形の面積をシール部面積Acvとする。また、ピストン動作用油圧室11内の作動油の圧力を油圧Pcvとし、プライマリプーリ油圧室54内の作動油の圧力を油圧Psとする。また、スプリング15が発生させる力をスプリング力Fとする。以下に、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態での各油圧室内の油圧の関係と、プライマリプーリ油圧室54が開放状態での各油圧室内の油圧の関係とを説明する。
閉じ込み状態の場合、弁体13は、図3に示すように、シール部12と接触する。これにより、油圧Psの大きさに関係なく、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出は、作動油閉じ込み装置10により禁止される。
プライマリプーリ油圧室54を開放状態にする場合、油圧Pcvと受圧面積Apとの積が油圧Psとシール部面積Acvとの積にスプリング力Fを加えた値よりも大きくなるように、閉じ込み制御側レギュレータORbによって油圧Pcvが調節される。これにより、弁体13は、図4に示すように、ピストン14によってシール部12から離れる方向に移動する。弁体13がシール部12から離れると、プライマリプーリ油圧室54内の作動油は、開口12bを介してプライマリプーリ油圧室54内から排出される。
なお、プライマリプーリ油圧室54が開放状態の場合、作動油は、プライマリプーリ油圧室54内に向かって弁体13とシール部12のテーパ面12aとの間の隙間を流れる。この作動油の流れにより、弁体13がシール部12から離れれば、ピストン11が弁体13から離れても、プライマリプーリ油圧室54の開放状態は保たれる。つまり、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を開放状態に保つのに油圧Pcvを必要としない。
また、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする場合、油圧Pcvと受圧面積Apとの積が、油圧Psとシール部面積Acvとの積にスプリング力Fを加えた値以下になるように、閉じ込み制御側レギュレータORbによって油圧Psを調節される。
ここで、弁体13は、シール部12の開口12bに嵌り込んでいる。よって、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を開放状態に保つのに油圧Pcvを必要としない。つまり、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態から開放状態へ切り替える際、及びプライマリプーリ油圧室54を開放状態から閉じ込み状態に切り替える際に油圧を必要とする。
なお、作動油閉じ込み装置10は、上述の構成に限定されない。作動油閉じ込み装置10は、所定の期間、プライマリプーリ油圧室54からの作動油の排出を禁止できる構成であればよい。例えば、図2に示す作動油閉じ込み装置10は、プライマリ隔壁56に設けられているが、第1油路OL01の経路上であれば設置場所は限定されない。作動油閉じ込み装置10は、例えば、プライマリシャフト51に設けられてもよい。
ここで、作動油閉じ込み装置10を備えないベルト式無段変速機110の場合、ベルト式無段変速機110の変速比を一定に保つ際は、プライマリプーリ油圧室54内の作動油の圧力を一定に保つためにオイルポンプOPを作動させる。しかしながら、本実施形態の場合、閉じ込み状態の際は、オイルポンプOPを作動させることなく、プライマリプーリ油圧室54内の圧力が一定に保たれる。つまり、オイルポンプOPを作動させることなく、ベルト式無段変速機110の変速比が一定に保たれる。
これにより、閉じ込み状態の間、ベルト式無段変速機110は、オイルポンプOPが消費する動力が減少する。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量の増加が抑制される。
しかしながら、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする条件によっては、ベルト式無段変速機110の閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生したり、実際の変速比とベルト式無段変速機110が目標とする変速比とのずれ量が増大したりするおそれがある。
なお、ベルト式無段変速機110が目標とする変速比とは、車両100の走行条件からECU40が算出した変速比であって、ここでは、内燃機関120の燃料の消費量を抑制することを目的とした変速比である。
また、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする条件によっては、ベルト式無段変速機110の暖機が遅れるおそれもある。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量が増大するおそれがある。
ベルト式無段変速機110の閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生すると、閉じ込み状態と開放状態との切り替えに必要な油圧の分、オイルポンプOPを動作させるために必要な動力が増加する。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量が十分に抑制できないおそれがある。
また、ベルト式無段変速機110の閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生すると、ピストン14の移動回数が増える。すると、棒状部14bと弁体13との衝突回数も増加し、弁体13が摩耗して変形するおそれがある。また、弁体13とシール部12との衝突により、弁体13とシール部12とが摩耗して弁体13とシール部12とが変形するおそれがある。
これにより、ベルト式無段変速機110は、弁体13とシール部12との間に隙間ができる。この隙間を作動油が流れて、ベルト式無段変速機110は、閉じ込み状態が正しく保たれず、これによって、オイルポンプOPを動作させるために必要な動力が増加する。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量が十分に抑制できないおそれがある。
ここで、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態であると、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間は長くなる。以下にその理由を説明する。なお、以下の説明では、冷間始動時のように、ベルト式無段変速機110の暖機を促進する場合を前提とする。
プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態である場合、プライマリプーリ油圧室54内の作動油は、ベルト80のひきずりや、プライマリプーリ油圧室54を構成する構造部材から熱を受け取る。これにより、プライマリプーリ油圧室54内の作動油の温度はプライマリプーリ油圧室54外の作動油、すなわちベルト式無段変速機110のオイルパン内の作動油の温度よりも高くなる。
しかしながら、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態であると、前記オイルパン内の作動油よりも温度が高いプライマリプーリ油圧室54内の作動油は、ベルト式無段変速機110のオイルパンに戻されない。これにより、ベルト式無段変速機110が閉じ込み状態であると前記オイルパン内の作動油の温度は上昇しにくくなる。
また、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態であると、プライマリプーリ油圧室54が開放状態の場合よりも、オイルポンプOPが作動油に対して行う仕事量が減少する。ここで、通常、オイルポンプOPが作動油に対して行う仕事量のうちの一部は、損失として熱となっている。
よって、オイルポンプOPが作動油に対して行う仕事量が減少すると、作動油の発熱量も減少する。これにより、ベルト式無段変速機110が閉じ込み状態であると前記オイルパン内の作動油の温度は上昇しにくくなる。
このように、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態であると、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間は長くなる。ここで、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間は長くなると、内燃機関120の燃料の消費量が増大する。以下にその理由を説明する。
作動油は、潤滑油としても機能する。ベルト式無段変速機110の暖気が完了するまでの時間が長くなると、オイルパン内の作動油の温度の上昇が低減される。ここで、作動油の温度が低いほど作動油の粘度が高くなって、ベルト式無段変速機110の摺動部の摩擦抵抗が増大する。このように、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間が長くなると、前記摩擦抵抗が増大する。
内燃機関120は、前記摩擦抵抗によって熱に変換された分のエネルギーを補うために、余分に燃料を噴射する。これにより、ベルト式無段変速機110の暖機を促進すべきときに、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態とすると、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間が増え、結果として、内燃機関120の燃料の消費量が増大する。
また、プライマリプーリ油圧室54に供給される作動油が流れる通路は、内燃機関120を冷却する冷却水が通る通路と並行して配置される場合がある。このような場合では、プライマリプーリ油圧室54に供給される作動油が、各通路を構成する部材を介して前記冷却水と熱交換する。つまり、前記冷却水は、前記作動油によって温められる。
しかしながら、ベルト式無段変速機110の暖機が必要な際であって内燃機関120の暖機が必要な際に、プライマリプーリ油圧室54に供給される作動油の温度の上昇が遅れると、前記作動油が前記冷却水に与える熱量も低下する。よって、内燃機関120の暖機の完了も遅れる。内燃機関120の暖機が完了するまでの時間が増加するということは、内燃機関120は、暖機が未完了な状態での運転時間が増加する。結果として、内燃機関120の燃料の消費量が十分に抑制できないおそれがある。
本実施形態は上記の問題点を解決すべく、以下に記す構成と手順とを備える。ベルト式無段変速機110は、図1に示すように、変速比センサD01と、作動油温度センサD02と、冷却水温度センサD03と、機関回転速度センサD04と、変速機制御装置20を含んで構成されるECU40とを備える。
変速比センサD01は、入力側回転速度センサD01aと、出力側回転速度センサD01bとを含んで構成される。入力側回転速度センサD01aは、プライマリシャフト51に設けられて、プライマリシャフト51の回転速度を検出する。出力側回転速度センサD01bは、セカンダリシャフト61に設けられて、セカンダリシャフト61の回転速度を検出する。入力側回転速度センサD01a及び出力側回転速度センサD01bは、ECU40と電気的に接続される。これにより、ECU40は、変速比センサD01からベルト式無段変速機110の現在の変速比を取得する。
作動油温度センサD02は、ベルト式無段変速機110の作動油が溜められるオイルパンに設けられて、前記オイルパン内の作動油の温度を検出する。プライマリシャフト51の回転速度を検出する。作動油温度センサD02は、ECU40と電気的に接続される。これにより、ECU40は作動油温度センサD02からベルト式無段変速機110内の作動油の温度を取得する。
冷却水温度センサD03は、内燃機関120を冷却する冷却水の通路上であって、前記冷却水が内燃機関120から排出された後、つまり、冷却水の通路の出口に設けられる。これにより、冷却水温度センサD03は、内燃機関120と熱交換した後の冷却水の温度を検出する。また、冷却水温度センサD03は、ECU40と電気的に接続される。これにより、ECU40は冷却水温度センサD03から内燃機関120と熱交換した後の冷却水の温度を取得する。
機関回転速度センサD04は、クランクシャフト121に設けられて、内燃機関120から取り出される回転の速度を検出する。また、機関回転速度センサD04は、ECU40と電気的に接続される。これにより、ECU40は機関回転速度センサD04から内燃機関120から取り出される回転の速度を取得する。
図5は、本実施形態に係る変速機制御装置の構成を示す概念図である。ECU40は、図1に示す内燃機関120、図2に示す変速比制御側レギュレータORa、閉じ込み制御側レギュレータORb等と電気的に接続され、これら内燃機関120、変速比制御側レギュレータORa、閉じ込み制御側レギュレータORb等の制御対象の動作を制御する。
ECU40は、例えば、内燃機関120のインジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁の開度を調節するアクチュエータ等とも電気的に接続される。これにより、ECU40は、インジェクタの燃料噴射量及び燃料噴射時期、点火プラグの点火時期、電子スロットル弁の開度等を制御する。つまり、ECU40は、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁等を制御することにより、内燃機関120から取り出せるトルクを制御する。
また、ECU40は、図1に示す入力側回転速度センサD01a、出力側回転速度センサD01b、作動油温度センサD02、冷却水温度センサD03、機関回転速度センサD04、その他にも内燃機関120の各検出手段類に電気的に接続され、これらの検出手段から各種の情報を取得する。
図5に示すように、変速機制御装置20は、ECU40の中央演算装置Epに組み込まれて構成されている。ECU40は、中央演算装置Epと、記憶部Emと、入力ポートINp及び出力ポートOUTpと、入力インターフェースIFin及び出力インターフェースIFoutとから構成される。なお、ECU40とは別個に、変速機制御装置20を用意し、これをECU40に接続してもよい。
変速機制御装置20は、情報取得部21と、比較判定部22と、変速比制御部23と、閉じ込み制御部24と、を含んで構成される。情報取得部21は、図1に示す入力側回転速度センサD01a、出力側回転速度センサD01b、作動油温度センサD02、冷却水温度センサD03、機関回転速度センサD04等の検出手段が検出した結果、後述する記憶部Emに格納された情報、機関制御部25が有する情報、等を取得する。
比較判定部22は、各検出手段から得た数値や記憶部Emに格納された数値を比較する。変速比制御部23は、プライマリシャフト51の回転速度が、目標とする回転速度になるように、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する。閉じ込み制御部24は、図2に示す作動油閉じ込み装置10の動作を制御する。
中央演算装置Epは、変速機制御装置20に加えて機関制御部25を備える。機関制御部25は、内燃機関120の運転制御を行う。中央演算装置Epと記憶部Emとは、バスBcとにより接続される。中央演算装置Epと入力ポートINpとは、バスBaとにより接続される。中央演算装置Epと出力ポートOUTpとは、バスBbとにより接続される。
変速機制御装置20の情報取得部21は、機関制御部25が有する内燃機関120の運転制御データを取得し、これを利用する。また、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を、機関制御部25があらかじめ備えている内燃機関120の運転制御ルーチンに割り込ませてもよい。
入力ポートINpには、入力インターフェースIFinが接続されている。入力インターフェースIFinには、図1に示す入力側回転速度センサD01a、出力側回転速度センサD01b、作動油温度センサD02、冷却水温度センサD03、機関回転速度センサD04、その他各種検出手段が接続されている。
これらの各種検出手段から出力される信号は、入力インターフェースIFin内のアナログ/デジタルコンバータADCやディジタル入力バッファDIBにより、中央演算装置Epが利用できる信号に変換されて入力ポートINpへ送られる。これにより、中央演算装置Epは、ベルト式無段変速機110の変速比の制御や、内燃機関120の制御に必要な情報を取得できる。
出力ポートOUTpには、出力インターフェースIFoutが接続されている。出力インターフェースIFoutには、変速比制御側レギュレータORa、閉じ込み制御側レギュレータORb、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁、その他内燃機関120における制御対象が接続されている。
出力インターフェースIFoutは、制御回路IFouta、制御回路IFoutb等を備えており、中央演算装置Epで演算された制御信号に基づき、前記制御対象を動作させる。このような構成により、前記検出手段からの出力信号に基づき、ECU40の中央演算装置Epは、変速比制御側レギュレータORa、閉じ込み制御側レギュレータORb、インジェクタ、点火プラグ、電子スロットル弁を制御して、ベルト式無段変速機110の変速比及び内燃機関120の出力を制御する。
記憶部Emには、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を含むコンピュータプログラムや制御データマップが格納されている。記憶部Emは、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成できる。
上記コンピュータプログラムは、中央演算装置Epへ既に記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、ベルト式無段変速機110の変速比を制御する手順を実現できるものであってもよい。また、この変速機制御装置20は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアを用いて、同等の機能を実現するものであってもよい。
図6は、本実施形態に係るベルト式無段変速機の作動油閉じ込み装置を制御する手順を示すフローチャートである。上述したように、ベルト式無段変速機110では、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする条件によっては、ベルト式無段変速機110の閉じ込み状態と開放状態との切り替えが頻繁に発生したり、実際の変速比とベルト式無段変速機110が目標とする変速比とのずれ量が増大したりするおそれがある。
また、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする条件によっては、ベルト式無段変速機110の暖機が遅れるおそれもある。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量が増大するおそれがある。そこで、ベルト式無段変速機110は、以下に記す手順で作動油閉じ込み装置10を制御することにより、内燃機関120の燃料の消費量が増大するおそれを抑制する。
ステップST101で、情報取得部21は、機関回転速度センサD04から機関回転速度Neを取得する。次に、ステップST102で、比較判定部22は、機関回転速度Neが所定値a以上であるか否かを判定する。なお、所定値aの詳細は後に説明する。ここで、変速機制御装置20は、比較判定部22が、機関回転速度Neが所定値aよりも小さいと判定すると(ステップST102、No)、ステップST112の内容を実行する。
ステップST112で、閉じ込み制御部24は、図2に示すプライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。具体的には、閉じ込み制御部24は、閉じ込み制御側レギュレータORbを制御して、油圧Pcvと受圧面積Apとの積が、油圧Psとシール部面積Acvとの積にスプリング力Fを加えた値よりも大きくなるように、油圧室Pcvを調節する。
次に、ステップST113で、変速比制御部23は、変速比制御側レギュレータORaを制御して、通常の変速比の制御を行う。なお、通常の変速比の制御とは、入力軸であるプライマリシャフト51の実際の回転速度が変速比制御部23によって算出された目標回転速度になるように変速比を調節する制御である。
ここで、比較判定部22がステップST102で機関回転速度Neを所定値aと比較し、機関回転速度Neが所定値aよりも小さい場合に、閉じ込み制御部24がプライマリプーリ油圧室54を開放させる理由を説明する。
図2に示すベルト式無段変速機110は、プライマリシャフト51及びセカンダリシャフト61が回転しながら、プライマリ可動シーブ53及びセカンダリ可動シーブ63がそれぞれ移動することによって変速する。よって、ベルト式無段変速機110は、その構造上プライマリシャフト51及びセカンダリシャフト61が回転していないと変速できない。よって、車輪180が回転していない場合、ベルト式無段変速機110は変速できない。
このため、例えば、ベルト式無段変速機110は、変速比が最小値の状態で車両100が停止すると、次に車両100が走行しはじめるときに、変速比を最小値であるため、車両100の発進が困難となる。また、車両100が走行し、車輪180が回転しないと、ベルト式無段変速機110は変速比を最大値側へ変更できない。このように、ベルト式無段変速機110は、変速比が最小値の状態で車両100が停止すると、ベルト式無段変速機110の変速比が最小値に設定されているために車両100の走行に不具合が生じるおそれがある。
よって、車両100が停止する際は、ベルト式無段変速機110は通常、車両100が停止する前に変速比を最大値に設定しておく必要がある。ここで、図6に示す所定値aは、例えば、1000rpm(1分間に1000回転)程度の値である。所定値aは、もし、機関回転速度Neがその値よりも小さい値の場合、車両100が停止する場合があると判定できる値である。
変速機制御装置20は、ステップST102で、比較判定部22が機関回転速度Neと所定値aとを比較することにより、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態のまま車両100が停止するおそれを抑制できる。これは、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態の場合、変速比制御部23がベルト式無段変速機110の変速比を調節できないためである。
次に、変速比制御部23は、ステップST113で、変速比を最大値に調節する。これにより、変速機制御装置20は、車両100が停止する際に、車両100が停止するよりも前にベルト式無段変速機110の変速比を最大値に設定する。結果として、変速機制御装置20は、次に車両100が走行しはじめるときに、ベルト式無段変速機110の変速比が最大に設定されているので、車両100の走行に不具合が生じるおそれを抑制できる。
次に、変速機制御装置20は、ステップST102で比較判定部22によって機関回転速度Neが所定値a以上であると判定されると(ステップST102、Yes)、ステップST103の内容を実行する。ステップST103で、情報取得部21は、冷却水温度センサD03から冷却水温度Twを取得する。
次に、ステップST104で、比較判定部22は、冷却水温度Twが所定値b以上であるか否かを判定する。なお、所定値bの詳細は後に説明する。ここで、変速機制御装置20は、比較判定部22が、冷却水温度Twが所定値bよりも小さいと判定すると(ステップST104、No)、閉じ込み制御部24がステップST112の手順を実行し、次に変速比制御部23がステップST113の手順を実行する。
ここで、比較判定部22がステップST104で冷却水温度Twを所定値bと比較し、冷却水温度Twが所定値bよりも小さい場合に、閉じ込み制御部24がプライマリプーリ油圧室54を開放させる理由を説明する。所定値bは、冷却水温度Twがその値よりも小さい場合、内燃機関120の暖機を促進すべきであると判定できる値である。
ここで、上述のように、内燃機関120の暖機を促進すべき際に、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となると、プライマリプーリ油圧室54内の作動油であって、ベルト80との摩擦熱を受けて温度が上昇した作動油がベルト式無段変速機110のオイルパンに戻されない。これにより、ベルト式無段変速機110の全体での作動油の温度の上昇が、プライマリプーリ油圧室54が開放状態の場合よりも遅れる。これにより、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の暖機を促進すべき際に、作動油の粘度が十分に低下されない。
これにより、ベルト式無段変速機110の暖機が促進されず、ベルト式無段変速機110から内燃機関120に構造部材を介して伝わる熱による内燃機関120の暖機も抑制される。また、プライマリプーリ油圧室54に供給される作動油が流れる通路は、内燃機関120を冷却する冷却水が通る通路と並行して配置される場合がある。このような場合では、プライマリプーリ油圧室54に供給される作動油が、各通路を構成する部材を介して前記冷却水と熱交換する。つまり、前記冷却水は、前記作動油によって温められる。
しかしながら、内燃機関120の暖機を促進すべき際に、プライマリプーリ油圧室54に供給される作動油の温度の上昇が遅れると、前記作動油が前記冷却水に与える熱量も低下する。よって、内燃機関120の暖機の完了が遅れる。
これらにより、プライマリプーリ油圧室54が開放状態の場合、内燃機関120の暖機が完了するまでの時間が増加する。内燃機関120の暖機が完了するまでの時間が増加するということは、内燃機関120の、暖機が未完了な状態での運転時間が増加する。結果として、内燃機関120は、内燃機関120の燃料の消費量が十分に抑制されないおそれがある。
変速機制御装置20は、ステップST104で比較判定部22が冷却水温度Twと所定値bとを比較することにより、内燃機関120の暖機を促進すべき際に、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすることによる内燃機関120の暖機が完了するまでの時間の増加を抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、内燃機関120の燃料の消費量を抑制できる。
なお、本実施形態では、変速機制御装置20は、内燃機関120の温度として、内燃機関120を冷却する冷却水温度Twを用いたが、本実施形態ではこれに限定されない。変速機制御装置20は、例えば、内燃機関120を構成する部材の温度を直接検出して、この温度を内燃機関120の温度として用いてもよい。また、変速機制御装置20は、例えば、内燃機関120の温度を、他の要素から推定して、この値を内燃機関120の温度として用いてもよい。
次に、変速機制御装置20は、ステップST104で比較判定部22によって冷却水温度Twが所定値b以上であると判定されると(ステップST104、Yes)、ステップST105の内容を実行する。ステップST105で、情報取得部21は、作動油温度センサD02から作動油温度Toを取得する。
次に、ステップST106で、比較判定部22は、作動油温度Toが所定値c以上であるか否かを判定する。なお、所定値cの詳細は後に説明する。ここで、変速機制御装置20は、比較判定部22が、作動油温度Toが所定値cよりも小さいと判定すると(ステップST106、No)、閉じ込み制御部24がステップST112の手順を実行し、次に変速比制御部23がステップST113の手順を実行する。
ここで、比較判定部22がステップST106で作動油温度Toを所定値cと比較し、作動油温度Toが所定値cよりも小さい場合に、閉じ込み制御部24がプライマリプーリ油圧室54を開放させる理由を説明する。所定値cは、作動油温度Toがその値よりも小さい場合、ベルト式無段変速機110の暖機を促進すべきであると判定できる値である。
ここで、上述のように、ベルト式無段変速機110の暖機を促進すべき際に、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となると、プライマリプーリ油圧室54内の作動油であって、ベルト80との摩擦熱を受けて温度が上昇した作動油がベルト式無段変速機110のオイルパンに戻されない。これにより、ベルト式無段変速機110の全体での作動油の温度の上昇が、プライマリプーリ油圧室54が開放状態の場合よりも遅れる。よって、ベルト式無段変速機110は、ベルト式無段変速機110の暖機を促進すべき際に、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となると、作動油の粘度が迅速に低下しない。
ここで、上述したように、作動油の粘度が高いほど、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間が増加する。よって、ベルト式無段変速機110が暖機を必要とする際に、ベルト式無段変速機110のプライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となると、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間が増加する。
ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間が増加するということは、ベルト式無段変速機110の暖機が未完了な状態での運転時間が増加する。ベルト式無段変速機110は、暖機が未完了な状態で運転されると、プライマリシャフト51と各軸受との間や、プライマリシャフト51とプライマリ可動シーブ53との間等、摩擦が生じる部分での摩擦抵抗が増大する。結果として、内燃機関120の燃料の消費量が十分に抑制できないおそれがある。
変速機制御装置20は、ステップST106で比較判定部22が作動油温度Toと所定値cとを比較することにより、ベルト式無段変速機110の暖機を促進すべき際に、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすることによるベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間の増加を抑制できる。結果として、変速機制御装置20は、内燃機関120の燃料の消費量を抑制できる。
なお、本実施形態では、変速機制御装置20は、ベルト式無段変速機110の温度として、ベルト式無段変速機110の作動油温度Toを用いたが、本実施形態ではこれに限定されない。変速機制御装置20は、例えば、ベルト式無段変速機110を構成する部材の温度を直接検出して、この温度をベルト式無段変速機110の温度として用いてもよい。また、変速機制御装置20は、例えば、ベルト式無段変速機110の温度を、他の要素から推定して、この値をベルト式無段変速機110の温度として用いてもよい。
次に、変速機制御装置20は、ステップST106で比較判定部22によって作動油温度Toが所定値c以上であると判定されると(ステップST106、Yes)、ステップST107の内容を実行する。ステップST107で、情報取得部21は、変速比センサD01から変速比γを取得する。次に、ステップST108で、比較判定部22は、変速比γが最小変速比γminであるか否かを判定する。ここで、最小変速比γminは、ベルト式無段変速機110が変速できる範囲で、最も小さい変速比である。
変速機制御装置20は、比較判定部22が、変速比γが最小変速比γminではないと判定すると(ステップST108、No)、閉じ込み制御部24がステップST112の手順を実行し、次に変速比制御部23がステップST113の手順を実行する。ここで、比較判定部22がステップST108で変速比γが最小変速比γminであるか否かを判定し、変速比γが最小変速比γminではない場合に、閉じ込み制御部24がプライマリプーリ油圧室54を開放状態にする理由を説明する。
図7は、内燃機関の動作点と燃費最適線とを示すグラフである。ここで、図7に示す燃費最適線とは、内燃機関120の各出力ごとに燃料の消費量を最小に抑制できる機関トルクと機関回転速度との関係を示す線である。また、図7に示す点P01−点P10は、内燃機関120及びベルト式無段変速機110を搭載する車両100が各速度で走行する際の、内燃機関120の機関トルクと機関回転速度とを示す点である。
ここで、図7に示すように、黒丸で示す点P01−点P03、点P08−点P10は、燃費最適線と重なる。つまり、点P01−点P03、点P08−点P10に示す機関トルクと機関回転速度とで内燃機関120が動作する際は、内燃機関120の燃料の消費量は最小に抑制されている。また、白丸で示す点P04−点P07は、燃費最適線と重ならない。つまり、点P04−点P07に示す機関トルクと機関回転速度とで内燃機関120が動作する際は、内燃機関120の燃料の消費量は最小に抑制されていない。
点P04−点P07に示す機関トルクと機関回転速度とで内燃機関120が動作する際、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量を低減するために、変速比を減少させようとする。しかしながら、ベルト式無段変速機110には変速できる最小値がある。よって、点P04−点P07に示す機関トルクと機関回転速度とで内燃機関120が動作する際、ベルト式無段変速機110は、変速比γが最小値に固定されている状態となる。
変速比γが最小値に固定されている場合、ベルト式無段変速機110は、変速比がそれ以下にはならない、つまり、プライマリ可動シーブ53がプライマリ固定シーブ52に近づく方向にそれ以上移動しない。よって、変速比γが最小値に固定されている場合、ベルト式無段変速機110は、変速比を固定する以上の油圧、つまりプライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52に近づける方向に移動させる油圧を必要としない。
よって、変速比γが最小値に固定されている場合、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態にされる方が好ましい。これにより、ベルト式無段変速機110は、プライマリプーリ油圧室54にオイルポンプOPによって圧力を与えなくても、変速比を固定できる。よって、ベルト式無段変速機110は、オイルポンプOPが消費する動力を低減できる。結果として、ベルト式無段変速機110は、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。
なお、ここでいう変速比γが最小値に固定されている場合とは、車両100が定常走行中の場合と車両100が加速中である場合とが含まれる。なお、定常走行とは、一定の速度で走行することをいう。
変速機制御装置20は、比較判定部22によって変速比γが最小変速比γminであると判定されると(ステップST108、Yes)、次にステップST109の内容を実行する。ステップST109で、情報取得部21は、変速比制御部23が演算し、記憶部Emに収納されている目標変速比γdesを取得する。ステップST110で、比較判定部22は、目標変速比γdesが最小変速比γmin以上であるか否かを判定する。
ここで、目標変速比γdesとは、変速比制御部23が演算した値であって、ベルト式無段変速機110が目標とする変速比である。目標変速比γdesが最小変速比γminよりも小さい場合(ステップST110、No)、閉じ込み制御部24がステップST112の手順を実行し、次に変速比制御部23がステップST113の手順を実行する。
目標変速比γdesが最小変速比γminよりも小さい場合、ベルト式無段変速機110は、変速比制御部23によって変速を要求されている状態である。よって、変速機制御装置20は、プライマリプーリ油圧室54を開放状態にする。つまり、ステップST110は、プライマリプーリ油圧室54の閉じ込み状態の終了を判定する手順である。
なお、本実施形態はこれに限定されず、比較判定部22は、目標変速比γdes以外の要素によって、プライマリプーリ油圧室54の閉じ込み状態の終了を判定してもよい。比較判定部22は、例えば、プライマリプーリ油圧室54が閉じ込み状態となってからの時間に基づいて、プライマリプーリ油圧室54の閉じ込み状態の終了を判定してもよい。つまり、変速機制御装置20は、プライマリプーリ油圧室54の閉じ込み状態の終了を判定する所定の手順を備えればよい。
目標変速比γdesが最小変速比γmin以上である場合(ステップST110、Yes)、変速機制御装置20は、ステップST111の内容を実行する。ステップST111で、閉じ込み制御部24は、図2に示すプライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする。具体的には、閉じ込み制御部24は、閉じ込み制御側レギュレータORbを制御して、油圧Pcvと受圧面積Apとの積が、油圧Psとシール部面積Acvとの積にスプリング力Fを加えた値以下になるように、油圧Psを調節する。
つまり、変速機制御装置20は、ステップST102で比較判定部22によって機関回転速度Neが所定値a以上であると判定される(ステップST102、Yes)、ステップST104で比較判定部22によって冷却水温度Twが所定値b以上であると判定される(ステップST104、Yes)、ステップST106で比較判定部22によって作動油温度Toが所定値c以上であると判定される(ステップST106、Yes)、比較判定部22によって変速比γが最小変速比γminであると判定される(ステップST108、Yes)、比較判定部22によって目標変速比γdesが最小変速比γmin以上であると判定される場合に(ステップST110、Yes)、ステップST111で閉じ込み制御部24は、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にする。
上記構成により、変速機制御装置20は、プライマリプーリ油圧室54にオイルポンプOPによって圧力を与えなくても、変速比を固定できる。よって、変速機制御装置20は、オイルポンプOPが消費する動力を低減できる。結果として、変速機制御装置20は、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制できる。
また、変速機制御装置20は、車両100が停止する前に変速比を最大値に設定できることと、内燃機関120の暖機が完了するまでの時間の増加を抑制できることと、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間の増加を抑制できることとを実現できる。
なお、本実施形態はこれに限定されず、変速機制御装置20は、少なくとも比較判定部22によって変速比γが最小変速比γminであると判定された場合に(ステップST108、Yes)、プライマリプーリ油圧室54を閉じ込み状態にすればよい。
これにより、変速機制御装置20は、内燃機関120の燃料の消費量の増加を抑制するという目的を達成できる。但し、変速機制御装置20は、ステップST102、すなわち比較判定部22が機関回転速度Neが所定値a以上であるか否かを判定する手順を備える方が、車両100が停止する前に変速比を最大値に設定できる。
また、変速機制御装置20は、ステップST104、すなわち比較判定部22が冷却水温度Twが所定値b以上であるか否かを判定する手順を備える方が、内燃機関120の暖機が完了するまでの時間の増加を抑制できる。
また、変速機制御装置20は、ステップST106、すなわち比較判定部22が作動油温度Toが所定値c以上であるか否かを判定する手順を備える方が、ベルト式無段変速機110の暖機が完了するまでの時間の増加を抑制できる。