以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記の実施形態におけるベルト式無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源として内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータなどの電動機を駆動源として用いても良い。また、下記の実施形態では、一方のプーリをプライマリプーリとし、他方のプーリをセカンダリプーリとするが、一方のプーリをセカンダリプーリとし、他方のプーリをプライマリプーリとしても良い。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機を搭載する車両の概略構成図、図2−1及び図2−2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機のプライマリプーリの概略構成を示す模式的断面図、図3は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の油圧制御装置の概略構成を模式的に示す概念図、図4−1は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャート、図4−2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャートである。
図1に示すように、車両10の動力伝達機構は、内燃機関12と、トルクコンバータ16と、前後進切換機構20と、ベルト式無段変速機22と、減速装置24と、差動装置28とを備える。
内燃機関12は、円筒形状に形成されるシリンダの中心軸方向にピストンが往復運動し、前記ピストンの往復運動を回転運動に変換するクランクシャフト14から回転を出力する。なお、内燃機関12は、ピストンとシリンダとを備えるいわゆるレシプロ式の内燃機関に限定されない。内燃機関12は、回転力を出力できるものであればよく、例えば、ロータリー式の内燃機関であってもよい。
トルクコンバータ16は、流体クラッチの一種であり、作動油により、内燃機関12から取り出された回転を前後進切換機構20に伝える。また、トルクコンバータ16は、内燃機関12から取り出されたトルクを増幅する。
前後進切換機構20は、トルクコンバータ16から取り出された回転をベルト式無段変速機22に伝える機構であり、必要に応じてトルクコンバータ16から取り出した回転の方向を切り替えてベルト式無段変速機22に伝達する。
ベルト式無段変速機22は、前後進切換機構20から入力される回転の回転速度(回転数)を所望の回転速度(回転数)に変更して出力する。なお、ベルト式無段変速機22の詳細な説明は後述する。
減速装置24は、ベルト式無段変速機22からの回転の回転速度を減速して差動装置28に前記回転を伝える。
差動装置28は、車両10が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の駆動輪34と、外側の駆動輪34との回転速度の差を吸収する。
上記構成要素によって車両10の動力伝達機構は形成される。すなわち、内燃機関12から取り出された回転は、クランクシャフト14を介してトルクコンバータ16に伝えられる。トルクコンバータ16によってトルクが増幅された回転は、トルクコンバータ16のインプットシャフト18を介して前後進切換機構20に伝えられる。
前後進切換機構20によって回転方向が切り替えられた回転は、入力側のシャフトとしてのプライマリシャフト51を介してベルト式無段変速機22に伝えられる。ベルト式無段変速機22によって、回転速度を変更された回転は、減速装置24に伝えられる。
減速装置24によって減速された回転は、減速装置24のファイナルドライブピニオン26と、ファイナルドライブピニオン26に噛み合う差動装置28のリングギヤ30とを介して差動装置28に伝えられる。
差動装置28に伝えられた回転は、ドライブシャフト32に伝達される。ドライブシャフト32の差動装置28側とは反対側には、駆動輪34が取り付けられる。ドライブシャフト32に伝えられた回転は駆動輪34に伝達される。これにより、駆動輪34は回転し、駆動輪34が路面に前記回転を伝達することにより車両10は走行する。
ベルト式無段変速機22は、2つのプーリ、すなわち、一方のプーリとしてのプライマリプーリ50及び他方のプーリとしてのセカンダリプーリ60と、ベルト80とを含んで構成される。また、このベルト式無段変速機22は、さらに、切換機構100(図2−1参照)と、油圧制御手段としての油圧制御装置130(図3参照)とを備える。
ベルト式無段変速機22は、プライマリプーリ50に回転が入力される。プライマリプーリ50に入力された回転は、ベルト80を介してセカンダリプーリ60に伝えられる。この時、前記回転は、その回転速度(回転数)を調整される。
セカンダリプーリ60に伝えられた回転は、減速装置24に伝えられる。なお、入力軸であるプライマリシャフト51の回転速度を出力側のシャフトとしてのセカンダリシャフト61の回転速度で除算した値を変速比という。つまり、変速比は、プライマリシャフト51とセカンダリシャフト61との回転速度比に相当する。
プライマリプーリ50は、プライマリシャフト51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室54とを備える。一方、セカンダリプーリ60は、セカンダリシャフト61と、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、挟圧力発生油圧室としてのセカンダリ油圧室64とを備える。プライマリシャフト51は、軸受81、軸受82によってインプットシャフト18の回転軸と同軸上に回転可能に支持される。セカンダリシャフト61は、軸受83、軸受84によってプライマリシャフト51に対して平行に回転可能に支持される。
なお、このベルト式無段変速機22は、このプライマリプーリ50とセカンダリプーリ60とがほぼ同様に構成される。よって、本実施形態では、プライマリプーリ50を主に説明し、セカンダリプーリ60の説明はできるだけ省略する。
プライマリプーリ50は、図2−1及び図2−2に示すように、上述のプライマリシャフト51、プライマリ固定シーブ52、プライマリ可動シーブ53及びプライマリ油圧室5に加え、さらに、スプライン55と、プライマリ隔壁56とを備える。
プライマリシャフト51は、筒状に形成される。プライマリシャフト51は、軸受81、軸受82によって回転軸線RLを回転中心として回転可能に支持されている。
プライマリ固定シーブ52は、通常は、プライマリシャフト51と一体に形成される。したがって、プライマリ固定シーブ52は、回転軸線RLを軸にプライマリシャフト51と一体に回転する。ここで、回転軸線RLと直交する方向を径方向という。プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51の外周から径方向外側に突出して形成される。なお、プライマリ固定シーブ52は、プライマリシャフト51とは別個に形成され、プライマリシャフト51に固定して設けられてもよい。
プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51とは別個に形成される。プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51が嵌め込まれる貫通孔を有して形成される。前記貫通孔の内周面には、スプライン55が形成される。プライマリ可動シーブ53は、スプライン55を介してプライマリシャフト51に嵌め込まれて取り付けられる。プライマリ可動シーブ53は、回転軸線RLに沿った方向、すなわち、軸方向に対してプライマリ固定シーブ52と対向してプライマリシャフト51に嵌め込まれる。
スプライン55は、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を回転軸線RLに沿って摺動できるようにプライマリ可動シーブ53を支持する。加えて、スプライン55は、プライマリシャフト51からプライマリ可動シーブ53へ回転軸線RLを回転中心とする回転を伝達する。よって、プライマリ可動シーブ53は、スプライン55を介してプライマリシャフト51に支持されることで、プライマリシャフト51上を軸方向に移動可能かつプライマリシャフト51と一体回転可能となる。
プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間には、略V字形状のプライマリ溝80aが形成される。また、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51上を摺動することにより、プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との距離が変化する。ここで、セカンダリプーリ60(図1参照)にも、プライマリ溝80aと同様のセカンダリ溝80b(図1参照)が形成される。
プライマリ溝80aとセカンダリ溝80bとの間には、金属製の無端ベルトであるベルト80が巻き掛けられている。ベルト80は、プライマリプーリ50の回転をセカンダリプーリ60へ伝達する。
プライマリ油圧室54は、プライマリシャフト51と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁56とによって囲まれて形成される空間部である。プライマリ隔壁56は、貫通孔を有して形成される。プライマリ隔壁56は、前記貫通孔にプライマリシャフト51が嵌め込まれてプライマリシャフト51に設けられる。プライマリ隔壁56は、プライマリ可動シーブ53を境にして、プライマリ固定シーブ52側とは反対側に設けられる。
プライマリ油圧室54は、プライマリ油圧室54に供給される作動油により、プライマリ可動シーブ53に対してプライマリ固定シーブ52側への押圧力を作用させる。これにより、プライマリ可動シーブ53は、プライマリシャフト51に沿って、プライマリ固定シーブ52側へ押される。したがって、プライマリ油圧室54は、プライマリ溝80aに巻き掛けられるベルト80に対してプライマリ可動シーブ53を介してベルト挟圧力を作用させることができる。
プライマリ油圧室54によりプライマリ可動シーブ53が移動され、プライマリ可動シーブ53とプライマリ固定シーブ52との距離が変化すると、セカンダリプーリ60が備えるセカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との距離もベルト80の張力を一定に保つように変化する。これにより、プライマリプーリ50に対するベルト80の接触半径と、セカンダリプーリ60に対するベルト80の接触半径とが変化する。このようにして、ベルト式無段変速機22は、内燃機関12から取り出された回転を変速することができる。
ここで、プライマリシャフト51は、第1油路86を有する。第1油路86は、プライマリ油圧室54に作動油を供給およびプライマリ油圧室54から作動油を排出する供給排出経路の一部をなす。第1油路86は、一方の端部が後述する切換機構100に接続され、他方の端部がプライマリ油圧室54に接続されている。これにより、第1油路86は、切換機構100とプライマリ油圧室54との間で作動油を流すことができる。なお、この第1油路86は、プライマリシャフト51の回転軸線RLに沿う方向に形成される軸方向油路88と、回転軸線RLと直交する方向に形成される径方向油路90とを含んで形成される。
切換機構100は、プライマリ油圧室54と後述する油圧制御装置130との間の作動油の流路に配置され、プライマリ油圧室54と後述する油圧制御装置130との間で作動油の流通が可能な状態と、流通が禁止された状態とを切り換えるものである。つまり、切換機構100は、図2−1に示すようにプライマリ油圧室54と油圧制御装置130とが連通された状態と、図2−2に示すようにプライマリ油圧室54と油圧制御装置130とが遮断された状態とを切り換える。この切換機構100は、第2油路102と、作動油供給排出弁110と、アクチュエータ120とを有する。
第2油路102は、プライマリ油圧室54に作動油を供給およびプライマリ油圧室54から作動油を排出する供給排出経路の一部をなす。第2油路102は、一方の端部が第1油路86と接続されており、他方の端部が後述する油圧制御装置130のプライマリ油圧室用制御装置135と接続されている。また、第2油路102と第1油路86とは、第1油路86が回転しても第2油路102は回転しないように、例えばロータリージョイントで連結されている。
作動油供給排出弁110は、供給排出経路の一部をなす第2油路102に設けられ、第2油路102においてプライマリ油圧室54から作動油を排出する方向、すなわち、プライマリ油圧室54側(第1油路86側)から油圧制御装置130側に向かって開弁可能なものである。作動油供給排出弁110は、弁座部112と、弁体114とを有する。
弁座部112は、第2油路102においてプライマリ油圧室54側(第1油路86側)から油圧制御装置130側に向かうにしたがって流路面積が大きくなるようなテーパ面として形成される。つまり、弁座部112は、第2油路102を形成する内壁面と連続しており、プライマリ油圧室54側(第1油路86側)に向かうに伴い、径方向内側に向かって傾斜するテーパ面である。
弁体114は、弁座部112の第1油路86側の端部の開口内径よりも直径が大きい球状の部材である。弁体114は、第2油路102において弁座部112の油圧制御装置130側に配置され、弁座部112に対して接近、離間可能である。
したがって、作動油供給排出弁110は、弁体114が第2油路102においてプライマリ油圧室54に作動油を供給する方向に移動し弁座部112に接近して、弁体114と弁座部112とが接触することで閉弁状態となる。作動油供給排出弁110は、弁体114が第2油路102においてプライマリ油圧室54から作動油を排出する方向に移動し弁座部112から離間して、弁体114と弁座部112とが非接触となることで開弁状態となる。
アクチュエータ120は、作動油供給排出弁110をプライマリ油圧室54に作動油を供給する方向に強制的に閉弁可能なものである。アクチュエータ120は、ピストン122と、駆動油圧室124と、スプリング126とを有する。
ピストン122は、受圧部122aと、棒状部122bとを有する。受圧部122aは、板状部材であり、後述する駆動油圧室124の内部に配置され、駆動油圧室124内の作動油の油圧による押圧力が作用する。棒状部122bは、一方の端部が受圧部122aに固定され、他方の端部が弁体114に固定されている。
駆動油圧室124は、油圧室壁面により区画され作動油が供給される空間部であり、上述したように内部にピストン122の受圧部122aが配置されている。駆動油圧室124は、内部の空間部分の受圧部122aの表面に平行な面の面積が、受圧部122aの面積と略同一となる形状である。また、駆動油圧室124は、駆動油圧室用制御装置136と接続され、駆動油圧室用制御装置136から作動油が供給、排出される。駆動油圧室124は、内部に作動油が供給されることで、作動油の油圧により受圧部122aに押圧力を作用させこの受圧部122aを弁座部112側に押し出す。したがって、駆動油圧室124内の作動油の油圧により受圧部122aが押されることで、ピストン122が弁座部112側に移動し、弁体114がこのピストン122と共に弁座部112側に移動する。
スプリング126は、例えば、コイルばねであり、第2油路102内に弁体114と接触するようにして設けられる。スプリング126は、弁体114を弁座部112から離間する側に付勢している。
上記のように構成される切換機構100は、駆動油圧室124に作動油が供給され、内部の作動油の油圧により受圧部122aが弁座部112側に押し出される。ここで、駆動油圧室124の内部の作動油の油圧が一定以上となると、図2−2に示すように、受圧部122aが弁座部112側に一定距離移動され、弁体114が弁座部112の開口を塞ぐ。つまり、作動油供給排出弁110は、弁体114が第2油路102においてプライマリ油圧室54に作動油を供給する方向に移動し弁座部112に接近して、弁体114と弁座部112とが接触することで閉弁状態となり、プライマリ油圧室54と油圧制御装置130との連通が遮断された状態となる。これにより、プライマリ油圧室54に作動油が閉じ込められた状態となり、基本的には、プライマリ油圧室54の内部に作動油を供給することも、プライマリ油圧室54の内部から作動油を排出することもできず、プライマリ油圧室54の内部の作動油の量が変化しない状態となる。
一方、駆動油圧室124内の作動油の油圧が一定以下の場合は、図2−1に示すように、スプリング126により弁体114が弁座部112から離間する側に押され、弁体114と弁座部112の開口との間に空間ができる。つまり、作動油供給排出弁110は、弁体114が第2油路102においてプライマリ油圧室54から作動油を排出する方向に移動し弁座部112から離間して、弁体114と弁座部112とが非接触となることで開弁状態となり、プライマリ油圧室54と油圧制御装置130とが連通した状態となる。これにより、プライマリ油圧室54の内部に作動油を供給することができ、また、プライマリ油圧室54の内部から作動油を排出することができる状態となる。
油圧制御装置130は、油圧制御手段であり、ベルト式無段変速機22および内燃機関12が搭載されている車両10において作動油の供給を必要とする作動油供給部分に作動油を供給するものである。油圧制御装置130は、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室54に対する作動油の供給排出を制御し、かつ、他方の挟圧力発生油圧室であるセカンダリ油圧室64に対する作動油の供給排出を制御するものである。油圧制御装置130は、プライマリ油圧室54およびセカンダリ油圧室64のそれぞれに供給される作動油の油圧である供給油圧を制御するものでもある。油圧制御装置130は、アクチュエータ120により強制的に作動油供給排出弁110が開弁されると、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室54に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室54から作動油を排出することで変速比を変更するものである。また、本実施形態の油圧制御装置130は、駆動油圧室124に作動油を供給し、駆動油圧室124の作動油の油圧である駆動油圧を制御するものでもある。
油圧制御装置130は、図3に示すように、プライマリ油圧室54、セカンダリ油圧室64、駆動油圧室124などに作動油を供給し、これらの油圧、作動油の供給流量、作動油の排出流量を制御することで、ベルト式無段変速機22の変速比を制御するものでもある。なお、同図では、プライマリ油圧室54、セカンダリ油圧室64、駆動油圧室124を除く作動油供給部分(上述した作動油供給部分や、内燃機関12の作動油供給部分(例えば、可動部品との間に摺動部を有する静止部品、可動部品あるいは静止部品との間に摺動部を有する可動部品、加熱される部品やオイルにより駆動する駆動装置))の図示は省略する。油圧制御装置130は、オイルパン131と、オイルポンプ132と、ライン圧制御装置133と、一定圧制御装置134と、プライマリ油圧室用制御装置135と、駆動油圧室用制御装置136と、セカンダリ油圧室用制御装置137とを含んで構成される。
オイルポンプ132は、オイルパン131に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。オイルポンプ132は、油路R1を介してライン圧制御装置133に接続されている。オイルポンプ132によって加圧され、吐出された作動油は、ライン圧制御装置133に供給される。つまり、オイルポンプ132の吐出圧は、ライン圧制御装置133に導入される。オイルポンプ132は、図1に示すように、トルクコンバータ16と前後進切換機構20との間に配置されている。このオイルポンプ132は、ロータ132aと、ハブ132bと、ボディ132cとにより構成されている。このオイルポンプ132は、ロータ132aにより円筒形状のハブ132bを介して、上記トルクコンバータ16のポンプに接続されている。また、ボディ132cは、ベルト式無段変速機22等を支持する筐体に固定されている。また、ハブ132bは、トルクコンバータ16の中空軸にスプライン嵌合されている。したがって、オイルポンプ132は、内燃機関12からの出力トルクがトルクコンバータ16のポンプを介してロータ132aに伝達されるので、駆動することができる。つまり、オイルポンプ132は、内燃機関12の回転数の上昇に応じて、吐出される作動油の吐出量が増量、すなわち吐出圧が上昇する。
ライン圧制御装置133は、オイルポンプ132から吐出圧で供給される作動油の圧力を所定のライン圧PLとなるように調圧するものである。つまり、ライン圧制御装置133は、入力油圧である油路R1の油圧、すなわち吐出圧を調圧して、ライン圧制御装置133からの出力油圧をライン圧PLとするものである。ライン圧制御装置133は、油路R2を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する供給側流量制御弁135cの第2ポート135lと接続され、油路R2および分岐油路R21を介して一定圧制御装置134と接続され、油路R2および分岐油路R22を介してセカンダリ油圧室用制御装置137と接続されている。したがって、ライン圧制御装置133により調圧されたライン圧PLは、供給側流量制御弁135cの第2ポート135l、一定圧制御装置134、セカンダリ油圧室用制御装置137に導入される。
ライン圧制御装置133は、内燃機関12の出力トルクに応じてライン圧PLを調圧する。ライン圧制御装置133は、オイルポンプ132から吐出された作動油の圧力を調圧する図示しない電磁弁、例えばリニアソレノイド弁が備えられている。ライン圧制御装置133は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により、リニアソレノイド弁の弁開度が制御されることで、ライン圧PLを調圧することができる。
一定圧制御装置134は、ライン圧制御装置133から出力されたライン圧PLを常に一定の圧力となるように調圧するものである。つまり、一定圧制御装置134は、入力油圧である油路R2および分岐油路R21の油圧、すなわちライン圧PLを調圧して、一定圧制御装置134からの出力油圧を一定圧とするものである。一定圧制御装置134は、油路R3を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する供給側制御弁135aの第1ポート135eと接続され、油路R3および分岐油路R31を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する排出側制御弁135bの第1ポート135hと接続され、油路R3および分岐油路R32を介して駆動油圧室用制御装置136と接続されている。したがって、一定圧制御装置134により調圧された一定圧は、供給側制御弁135aの第1ポート135e、排出側制御弁135bの第1ポート135h、駆動油圧室用制御装置136に導入される。
プライマリ油圧室用制御装置135は、プライマリ油圧室54への作動油の供給あるいはプライマリ油圧室54からの作動油の排出を制御するものである。プライマリ油圧室用制御装置135は、プライマリ油圧室54へ供給される作動油の供給流量およびプライマリ油圧室54から排出された作動油の排出流量を制御するものである。さらに言えば、プライマリ油圧室用制御装置135は、プライマリ油圧室54の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのプライマリ油圧Psを制御するものである。プライマリ油圧室用制御装置135は、供給側制御弁135aと、排出側制御弁135bと、供給側流量制御弁135cと、排出側流量制御弁135dとを含んで構成される。
供給側制御弁135aは、供給側流量制御弁135cによりプライマリ油圧室54に供給される作動油の供給流量制御を行うものである。供給側制御弁135aは、ON/OFFにより、3つのポート、すなわち第1ポート135eと、第2ポート135fと、第3ポート135gとの連通を切り換えるものである。第1ポート135eは、上述のように一定圧制御装置134と接続されている。第2ポート135fは、油路R4を介して供給側流量制御弁135cの後述する第1ポート135kと接続されている。また、第2ポート135fは、油路R4および分岐油路R41を介して排出側流量制御弁135dの後述する第4ポート135uと接続されている。第3ポート135gは、合流油路R51および油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第3ポート135gは、大気圧に解放されている。
供給側制御弁135aは、ONとなると、第1ポート135eと第2ポート135fとが連通する。したがって、供給側制御弁135aに導入された一定圧が供給側流量制御弁135cの第1ポート135kに導入される。つまり、供給側制御弁135aに導入された一定圧が第1ポート135kと連通する供給側流量制御弁135cの後述する制御油圧室135oに導入される。また、供給側制御弁135aに導入された一定圧が排出側流量制御弁135dの第4ポート135uに導入される。一方、供給側制御弁135aは、OFFとなると、第2ポート135fと第3ポート135gとが連通する。したがって、供給側流量制御弁135cの第1ポート135kは、供給側制御弁135aを介して大気圧に解放される。つまり、供給側流量制御弁135cの第1ポート135kを介して制御油圧室135oが大気圧に解放される。また、排出側流量制御弁135dの第4ポート135uは、供給側制御弁135aを介して大気圧に解放される。ここで、供給側制御弁135aは、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号によりデューティー制御される。したがって、供給側制御弁135aは、ECU140からの制御信号により、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oを一定圧から大気圧までの間で調圧することができる。
排出側制御弁135bは、排出側流量制御弁135dによるプライマリ油圧室54から排出される作動油の排出流量制御を行うものである。排出側制御弁135bは、ON/OFFにより、3つのポート、すなわち第1ポート135hと、第2ポート135iと、第3ポート135jとの連通を切り換えるものである。第1ポート135hは、上述のように一定圧制御装置134と接続されている。第2ポート135iは、油路R6を介して排出側流量制御弁135dの後述する第1ポート135rと接続されている。また、第2ポート135iは、油路R6および分岐油路R61を介して供給側流量制御弁135cの後述する第4ポート135nと接続されている。第3ポート135jは、油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第3ポート135jは、大気圧に解放されている。
排出側制御弁135bは、ONとなると、第1ポート135hと第2ポート135iとが連通する。したがって、排出側制御弁135bに導入された一定圧が排出側流量制御弁135dの第1ポート135rに導入される。つまり、排出側制御弁135bに導入された一定圧が第1ポート135rと連通する排出側流量制御弁135dの後述する制御油圧室135vに導入される。また、排出側制御弁135bに導入された一定圧が供給側流量制御弁135cの第4ポート135nに導入される。一方、排出側制御弁135bは、OFFとなると、第2ポート135iと第3ポート135jとが連通する。したがって、排出側流量制御弁135dの第1ポート135rは、排出側制御弁135bを介して大気圧に解放される。つまり、排出側流量制御弁135dの第1ポート135rを介して制御油圧室135vが大気圧に解放される。また、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nは、排出側制御弁135bを介して大気圧に解放される。ここで、排出側制御弁135bは、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号によりデューティー制御される。したがって、排出側制御弁135bは、ECU140からの制御信号により、排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを一定圧から大気圧までの間で調圧することができる。
供給側流量制御弁135cは、プライマリ油圧室54に供給される作動油の供給流量を制御するものである。供給側流量制御弁135cは、第1ポート135kと、第2ポート135lと、第3ポート135mと、第4ポート135nと、制御油圧室135oと、スプール135pと、スプール弾性部材135qとにより構成されている。第1ポート135kは、上述のように供給側制御弁135aの第2ポート135fと接続されている。第2ポート135lは、上述のように、ライン圧制御装置133と接続されている。第3ポート135mは、油路R7を介してプライマリ油圧室54と接続されている。実施形態1では、第3ポート135mは、油路R7、供給排出経路としての第2油路102及び第1油路86を介してプライマリ油圧室54と接続されている。第4ポート135nは、上述のように排出側制御弁135bの第2ポート135iと接続されている。なお、図3に示すように、供給側制御弁135aの第2ポート135fと供給側流量制御弁135cの第1ポート135kとの間、ライン圧制御装置133と供給側流量制御弁135cの第2ポート135lとの間に、オリフィス、すなわち絞りを設け、供給側制御弁135aから供給側流量制御弁135cへ流入する作動油およびライン圧制御装置133から供給側流量制御弁135cへ流入する作動油の圧力あるいは流量を調整しても良い。
制御油圧室135oは、第1ポート135kと連通するものであり、その油圧によりスプール135pをスプール135pが移動する方向のうち一方向(図3では、上方向)に押圧するスプール開弁方向押圧力をスプール135pに作用させるものである。スプール135pは、供給側流量制御弁135c内で移動自在に支持されており、移動方向のうち一方向に移動することで第2ポート135lと第3ポート135mとを連通し、移動方向のうち他方向に移動することで、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を遮断するものである。スプール弾性部材135qは、スプール135pと、スプール135pに対して静止している部材との間に付勢された状態で配置されている。したがって、スプール弾性部材135qは、スプール付勢力を発生しており、スプール付勢力によりスプール135pをスプール135pが移動する方向のうち他方向(図3では、下方向)に押圧するスプール閉弁方向押圧力をスプール135pに作用させるものである。
供給側流量制御弁135cは、スプール135pに作用する上記スプール開弁方向押圧力が上記スプール閉弁方向押圧力を超えることで、スプール135pが移動方向のうち一方向に移動する。ここで、供給側流量制御弁135cは、スプール135pの移動方向のうち一方向への移動量の増加に伴い、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通の度合い、すなわち第2ポート135lと第3ポート135mとを連通する流路の流路断面積が増加する。つまり、供給側流量制御弁135cは、供給側制御弁135aにより調圧された制御油圧室135oの油圧により、スプール135pが移動することで、2つのポート、すなわち第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を制御し、供給流量を制御するものである。
排出側流量制御弁135dは、プライマリ油圧室54から排出される作動油の排出流量を制御するものである。排出側流量制御弁135dは、第1ポート135rと、第2ポート135sと、第3ポート135tと、第4ポート135uと、制御油圧室135vと、スプール135wと、スプール弾性部材135xとにより構成されている。第1ポート135rは、上述のように排出側制御弁135bの第2ポート135iと接続されている。第2ポート135sは、合流油路R52、合流油路R51および油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第2ポート135sは、大気圧に解放されている。第3ポート135tは、分岐油路R71および油路R7を介してプライマリ油圧室54と接続されている。実施形態1では、第3ポート135tは、分岐油路R71、油路R7、供給排出経路としての第2油路102及び第1油路86を介してプライマリ油圧室54と接続されている。第4ポート135uは、上述のように供給側制御弁135aの第2ポート135fと接続されている。なお、図3に示すように、排出側制御弁135bの第2ポート135iと排出側流量制御弁135dの第1ポート135rとの間に、オリフィス、すなわち絞りを設け、排出側制御弁135bから排出側流量制御弁135dへ流入する作動油の圧力あるいは流量を調整しても良い。
制御油圧室135vは、第1ポート135rと連通するものであり、その油圧によりスプール135wをスプール135wが移動する方向のうち一方向(図3では、上方向)に押圧するスプール開弁方向押圧力をスプール135wに作用させるものである。スプール135wは、排出側流量制御弁135d内で移動自在に支持されており、移動方向のうち一方向に移動することで第2ポート135sと第3ポート135tとを連通し、移動方向のうち他方向に移動することで、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を遮断するものである。スプール弾性部材135xは、スプール135wと、スプール135wに対して静止している部材との間に付勢された状態で配置されている。したがって、スプール弾性部材135xは、スプール付勢力を発生しており、スプール付勢力によりスプール135wをスプール135wが移動する方向のうち他方向(図3では、下方向)に押圧するスプール閉弁方向押圧力をスプール135wに作用させるものである。
排出側流量制御弁135dは、スプール135wに作用する上記スプール開弁方向押圧力が上記スプール閉弁方向押圧力を超えることで、スプール135wが移動方向のうち一方向に移動する。ここで、排出側流量制御弁135dは、スプール135wの移動方向のうち一方向への移動量の増加に伴い、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通の度合い、すなわち第2ポート135sと第3ポート135tとを連通する流路の流路断面積が増加する。つまり、排出側流量制御弁135dは、排出側制御弁135bにより調圧された制御油圧室135vの油圧により、スプール135wが移動することで、2つのポート、すなわち第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を制御し、排出流量を制御するものである。
駆動油圧室用制御装置136は、駆動油圧室124の油圧である駆動油圧Pcvを調圧するものである。駆動油圧室用制御装置136には、上述のように、一定圧制御装置134から一定圧が導入される。また、駆動油圧室用制御装置136は、油路R8を介して駆動油圧室124と接続されている。駆動油圧室用制御装置136は、ソレノイド弁(本発明のソレノイド弁)136aが備えられている。駆動油圧室用制御装置136は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により、ソレノイド弁136aをON/OFF制御する。本実施形態のソレノイド弁136aは、いわゆるノーマルオープン型のソレノイド弁である。すなわち、駆動油圧室用制御装置136は、OFF制御される、すなわちソレノイド弁136aがOFFとされると非通電状態となり、このソレノイド弁136aが開弁状態となることで、分岐油路R32と油路R8とが連通し、駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧が駆動油圧室124に導入され、駆動油圧室124の油圧である駆動油圧Pcvが増圧され所定の大きさの一定圧となる。一方、駆動油圧室用制御装置136は、ON制御される、すなわちソレノイド弁136aがONとされると通電状態となり、このソレノイド弁136aが閉弁状態となることで、分岐油路R32と油路R8との連通が遮断されるとともに、油路R8が外部に解放され、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが減圧され大気圧となる。つまり、ソレノイド弁136aは、OFF制御され非通電状態となることで駆動油圧Pcvが所定の大きさの一定圧となり作動油供給排出弁110を閉弁するための駆動油圧PcvがON状態となる一方、ON制御され通電状態となることで駆動油圧Pcvが大気圧となり、駆動油圧PcvのON状態が解除される。
セカンダリ油圧室用制御装置137は、セカンダリ油圧室64への作動油の供給あるいはセカンダリ油圧室64からの作動油の排出を制御するものであり、プライマリ油圧室用制御装置135とほぼ同様な構成をしている。さらに言えば、セカンダリ油圧室用制御装置137は、セカンダリ油圧室64の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのセカンダリ油圧Pdを制御するものである。セカンダリ油圧室用制御装置137には、上述のように、ライン圧制御装置133からライン圧PLが導入される。セカンダリ油圧室用制御装置137は、油路R9を介してセカンダリ油圧室64と接続されている。実施形態1では、セカンダリ油圧室用制御装置137は、油路R9、セカンダリシャフト61の図示しない作動油通路および図示しない作動流体供給孔を介してセカンダリ油圧室64と接続されている。セカンダリ油圧室用制御装置137は、図示しない流量制御弁などを備える。セカンダリ油圧室用制御装置137は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により制御され導入されたライン圧PLを調圧する。
油圧制御装置130は、内燃機関12などの運転制御を行う制御手段としてのECU(Electronic Control Unit)140と接続されている。ECU140は、油圧制御装置130と内燃機関12とに接続されており、油圧制御装置130および内燃機関12を制御するものである。油圧制御装置130は、ECU140からの制御信号に基づいて、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、作動油供給排出弁110を開弁し、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室54に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室54から作動油を排出し、少なくともベルト式無段変速機22の変速比を制御するものである。また、ECU140は、内燃機関12に出力した制御信号により、内燃機関12の図示しない燃料噴射弁、点火プラグ、スロットル弁を制御することで、内燃機関12の出力トルクを制御する。
ECU140は、運転条件、および、記憶部(不図示)に記憶された各種データ、例えば、機関回転数とスロットルバルブのスロットル開度に基づく最適燃費曲線などに基づいて、油圧制御装置130および内燃機関12を制御する。このECU140は、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160、車速センサ170が電気的に接続されている。
入力回転数センサ150は、駆動源からの駆動力が入力されるプーリ、すなわち内燃機関12からの出力トルクが入力されるプライマリプーリ50の入力回転数Ninを検出するものである。入力回転数センサ150は、プライマリプーリ50のプライマリシャフト51の回転数を検出し、プライマリシャフト51の回転数を入力回転数Ninとするものである。入力回転数センサ150は、同図に示すように、ECU140と接続されている。したがって、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninは、ECU140に出力される。なお、入力回転数センサ150は、プライマリシャフト51の回転数を入力回転数Ninとするものに限られるものではなく、例えば内燃機関12の機関回転数Neを検出し、機関回転数Neから入力回転数Ninを算出するものであっても良い。
出力回転数センサ160は、プライマリプーリ50に入力された駆動源からの駆動力、すなわち内燃機関12の出力トルクがベルト80を介して伝達されるセカンダリプーリ60の出力回転数Noutを検出するものである。出力回転数センサ160は、実施形態1では、セカンダリプーリ60のセカンダリシャフト61の回転数を検出し、セカンダリシャフト61の回転数を出力回転数Noutとするものである。出力回転数センサ160は、同図に示すように、ECU140と接続されている。したがって、出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutは、ECU140に出力される。
車速センサ170は、このベルト式無段変速機22を搭載する車両10の速度、すなわち車速vを検出するものである。車速センサ170は、同図に示すように、ECU140と接続されている。したがって、車速センサ170により検出された車速vは、ECU140に出力される。
ここで、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Nin(言い換えれば、入力回転速度)と、出力回転数センサ160により検出された出力回転数Nout(言い換えれば、出力回転速度)との比は、ベルト式無段変速機22の変速比となる。つまり、入力回転数センサ150および出力回転数センサ160は、変速比を検出するものである。したがって、ECU140は、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninおよび出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutが入力されることで、検出された変速比γが入力されることとなる。
ECU140は、現状の実際の変速比である実変速比、目標とする変速比である目標変速比等の運転条件、および、記憶部(不図示)に記憶された各種データに基づいて、ライン圧制御装置133、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137の制御信号を生成し、油圧制御装置130に出力する。このように、ECU140は、油圧制御装置130に出力した制御信号により、ライン圧制御装置133、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninおよび出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutに基づく実変速比γが目標変速比γoとなるように、油圧制御装置130を制御する。
次に、実施形態1にかかるベルト式無段変速機22の動作について説明する。まず、一般的な車両10の前進、後進について説明する。車両10に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が前進ポジションを選択した場合は、ECU140が油圧制御装置130から供給された作動油によりフォワードクラッチをON、リバースブレーキをOFFとし、前後進切換機構20を制御する。これにより、インプットシャフト18とプライマリシャフト51が直結状態となる。これにより、内燃機関12からの出力トルクがプライマリプーリ50に伝達され、プライマリシャフト51が内燃機関12のクランクシャフト14の回転方向と同一方向に回転される。プライマリプーリ50に伝達された内燃機関12からの出力トルクは、ベルト80を介してセカンダリプーリ60に伝達され、このセカンダリプーリ60のセカンダリシャフト61を回転させる。
セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関12の出力トルクは、ベルト式無段変速機22のセカンダリシャフト61から減速装置24に伝達され、減速装置24から差動装置28を介してドライブシャフト32に伝達され、ドライブシャフト32の端部に取り付けられた駆動輪34に伝達される。駆動輪34が路面に対して回転することで、車両10は前進する。
一方、車両10に設けられたシフトポジション装置により、運転者が後進ポジションを選択した場合は、ECU140が、油圧制御装置130から供給された作動油により前後進切換機構20のフォワードクラッチをOFF、リバースブレーキをONとする。これにより、プライマリシャフト51が、インプットシャフト18と逆方向に回転する。これにより、セカンダリプーリ60のセカンダリシャフト61、減速装置24、差動装置28、ドライブシャフト32などは、運転者が前進ポジションを選択した場合とは逆方向に回転し、車両が後進する。
ここで、ECU140は、車両10の速度や運転者のアクセル開度などの諸条件とECU140の記憶部に記憶されているマップ(例えば、機関回転数とスロットルバルブのスロットル開度に基づく最適燃費曲線など)とに基づいて、内燃機関12の運転状態が最適となるように、油圧制御装置130を介して、ベルト式無段変速機22の変速比を制御する。ECU140は、内燃機関12の運転状態が最適となるように目標変速比を設定し、現状のプライマリ油圧室54及びセカンダリ油圧室64の状態と、記憶部(不図示)に記憶されている油圧制御装置130とプライマリ油圧室54との間を流通する作動油の量とプライマリ油圧室54内の油圧との関係から、ベルト式無段変速機22の変速比が目標変速比となるプライマリ油圧室54の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのプライマリ油圧Psおよびセカンダリ油圧室64の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのセカンダリ油圧Pdを算出する。ECU140は、さらに、算出した油圧から、油圧制御装置130からプライマリ油圧室54およびセカンダリ油圧室64に供給する作動油の量、または、プライマリ油圧室54およびセカンダリ油圧室64から油圧制御装置130に排出する作動油の量を算出し、算出結果に基づいて油圧制御装置130を制御する。
ここで、ベルト式無段変速機22の変速比の制御には、変速比の変更と、変速の固定(変速比γ定常)とがある。変速比の変更、変速比の固定は、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで行われる。なお、油圧制御装置130を用いた変速比の制御は、制御周期ごとに行われるものである。
ECU140は、変速比を固定する状態でない、すなわち変速比を変更する状態では、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvを減圧して、作動油供給排出弁110を開弁状態とする。
具体的には、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御する。駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aがECU140によりON制御されると、このソレノイド弁136aが通電状態となり、分岐油路R32と油路R8との連通が遮断されるとともに、油路R8が外部に解放され、駆動油圧室124が大気圧に解放され、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが減圧され大気圧となる。したがって、アクチュエータ120をなすスプリング126の付勢力によって作動油供給排出弁110の弁体114が弁座部112から離間し、作動油供給排出弁110が開弁する。
次に、ECU140は、油圧制御装置130により変速比変更制御を行う。変速比変更制御は、主に油圧制御装置130からプライマリ油圧室54への作動油の供給、あるいはプライマリ油圧室54から油圧制御装置130を介してプライマリプーリ50の外部への作動油の排出により行われ、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psが調圧されることで、プライマリ可動シーブ53がプライマリシャフト51の軸方向の所定の位置に摺動し、プライマリ固定シーブ52とこのプライマリ可動シーブ53との間の間隔、すなわちプライマリ溝80aの幅が調整される。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト80の接触半径が変化し、プライマリプーリ50の回転数、すなわち入力回転数Ninとセカンダリプーリ60の回転数、すなわち出力回転数Noutとの比である変速比が無段階(連続的)に制御される。
なお、セカンダリプーリ60においては、ECU140によりセカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、セカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを調圧し、セカンダリ固定シーブ62とこのセカンダリ可動シーブ63とによりベルト80を挟み付けるベルト挟圧力が調整される。これにより、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60との間に巻き掛けられたベルト80のベルト張力が制御される。
ここで、変速比変更制御には、アップシフト、すなわち変速比を減少させる変速比減少変更制御と、ダウンシフト、すなわち変速比を増加させる変速比増加変更制御とがある。以下、それぞれについて説明する。
変速比減少変更制御(アップシフト制御)では、油圧制御装置130からプライマリ油圧室54へ作動油を供給し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に摺動(移動)させることで行われる。すなわち、油圧制御装置130は、上述のように開弁された作動油供給排出弁110を介してプライマリ油圧室54に作動油を供給する。具体的には、ECU140は、減少変速比と変速速度とを算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を油圧制御装置130に出力する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御され、ONとOFFとを繰り返し、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oの制御油圧を供給時所定圧に調圧し、排出側流量制御弁135dの第4ポート135uに供給時所定圧を導入する。ここで、供給時所定圧は、スプール135pに作用するスプール開弁方向押圧力により、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を制御することで制御される供給流量を減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量とすることができる圧力である。したがって、供給側流量制御弁135cは、制御油圧室135oの制御油圧、すなわち供給時所定圧に基づいたスプール開弁方向押圧力がスプール閉弁方向押圧力を超えるため、スプール135pが移動方向のうち一方向へ移動し、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通する。これにより、供給側流量制御弁135cが開弁され、プライマリ油圧室54への作動油の供給流量が減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量となる。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりOFFに制御され、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nおよび排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを大気圧に解放する。したがって、排出側流量制御弁135dは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135wに作用するため、スプール135wが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持され、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通しない。これにより、排出側流量制御弁135dが閉弁を維持し、プライマリ油圧室54からの作動油の排出流量が0となる。
したがって、供給側流量制御弁135cにライン圧PLで導入された作動油は、供給側流量制御弁135cにより減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量に制御されて、油路R7、作動油供給排出弁110、供給排出経路としての第2油路102及び第1油路86を介してプライマリ油圧室54に供給される。そして、作動油供給排出弁110等を介して供給された作動油によりプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psが上昇し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が上昇し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト80の接触半径が増加し、セカンダリプーリ60におけるベルト80の接触半径が減少し、変速比が減少され、減少変速比となり、アップシフトが実行される。
変速比増加変更制御(ダウンシフト制御)では、プライマリ油圧室54から油圧制御装置130を介して作動油を外部に排出し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側と反対側に摺動(移動)させることで行われる。すなわち、油圧制御装置130は、上述のように開弁された作動油供給排出弁110を介してプライマリ油圧室54から作動油を排出する。具体的には、ECU140は、増加変速比と変速速度とを算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を油圧制御装置130に出力する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりOFFに制御され、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oおよび排出側流量制御弁135dの第4ポート135uを大気圧に解放する。したがって、供給側流量制御弁135cは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135pに作用するため、スプール135pが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持されるため、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通しない。これにより、供給側流量制御弁135cが閉弁を維持し、プライマリ油圧室54への作動油の供給流量が0となる。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御され、ONとOFFとを繰り返し、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nに排出時所定圧を導入し、排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vの制御油圧を排出時所定圧に調圧する。ここで、排出時所定圧は、スプール135wに作用するスプール開弁方向押圧力により、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を制御することで制御される排出流量を増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量とすることができる圧力である。したがって、排出側流量制御弁135dは、制御油圧室135vの制御油圧、すなわち排出時所定圧に基づいたスプール開弁方向押圧力がスプール閉弁方向押圧力を超えるため、スプール135wが移動方向のうち一方向へ移動し、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通する。これにより、排出側流量制御弁135dが開弁され、プライマリ油圧室54からの作動油の排出流量が増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量となる。
したがって、プライマリ油圧室54内の作動油は、プライマリ油圧室54から供給排出経路としての第2油路102及び第1油路86、作動油供給排出弁110、油路R7、分岐油路R71を介して排出側流量制御弁135dに流入し、排出側流量制御弁135dにより増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量に制御されて、合流油路R52,R51および油路R5を介して、オイルパン131、すなわちプライマリ油圧室54の外部に排出される。したがって、作動油供給排出弁110を介してプライマリ油圧室54から作動油が排出されることにより、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psが減少し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が減少し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側と反対側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト80の接触半径が減少し、セカンダリプーリ60におけるベルト80の接触半径が増加し、変速比が増加され、増加変速比となり、ダウンシフトが実行される。
一方、ECU140は、車両10の走行状態が安定している場合など、大幅な変速比の変更を行う必要がないと、変速比を固定、すなわち変速比を定常とする制御を行う。ECU140は、変速比を固定する状態であると判断すると、作動油供給排出弁110を閉弁する。つまり、ECU140は、作動油供給排出弁110を閉弁状態にして、変速比を固定する。
ここで、作動油供給排出弁110を閉弁状態にして変速比を固定する場合、すなわち閉弁状態における変速比の固定は、プライマリ油圧室54へ作動油を供給せず、かつこのプライマリ油圧室54から作動油を排出せず、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定とし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する移動を規制することで行われる。
変速比の固定時では、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvを増圧して、作動油供給排出弁110を閉弁し、作動油供給排出弁110を介したプライマリ油圧室54への作動油の供給および作動油供給排出弁110を介したプライマリ油圧室54からの作動油の排出を禁止する。
具体的には、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをOFF制御する。駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aがECU140によりOFF制御されると、このソレノイド弁136aが非通電状態となり、分岐油路R32と油路R8とが連通し、駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧が駆動油圧室124に導入され、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが増圧され所定の大きさの一定圧となる。したがって、所定の一定圧となった駆動油圧室124の作動油の駆動油圧Pcvにより作動油供給排出弁110の弁体114が弁座部112と接触し、作動油供給排出弁110が閉弁する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりOFFに制御され、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oおよび排出側流量制御弁135dの第4ポート135uを大気圧に解放する。従って、供給側流量制御弁135cは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135pに作用するため、スプール135pが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持され、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通しない。これにより、供給側流量制御弁135cが閉弁を維持し、プライマリ油圧室54への作動油の供給流量が0となる。これにより、作動油供給排出弁110を介したプライマリ油圧室54への作動油の供給が禁止される。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりOFFに制御され、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nおよび排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを大気圧に解放する。従って、排出側流量制御弁135dは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135wに作用するため、スプール135wが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持され、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通しない。これにより、排出側流量制御弁135dが閉弁を維持し、プライマリ油圧室54からの作動油の排出流量が0となる。これにより、作動油供給排出弁110を介したプライマリ油圧室54からの作動油の排出が禁止される。
したがって、作動油供給排出弁110の閉弁状態における変速比の固定時には、プライマリ油圧室54への作動油の供給およびこのプライマリ油圧室54からの作動油の排出を禁止することで、プライマリ油圧室54内の作動油を閉じ込めて保持する。ここで、閉弁状態における変速比の固定時においても、ベルト80のベルト張力が変化するため、プライマリプーリ50におけるベルト80の接触半径が変化しようとし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化する虞がある。しかし上述のように、作動油供給排出弁110が閉弁状態となることで、プライマリ油圧室54内には、作動油が閉じ込められ保持された状態となるため、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化しようとしても、ベルト80からプライマリ可動シーブ53を介して作用するベルト反力に応じてプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psも変化することで、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置は一定に維持される。したがって、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、プライマリ油圧室54に作動油を供給することによるプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psの上昇を行わなくても良い。これにより、閉弁状態における変速比の固定時に、プライマリ油圧室54に作動油を供給するためにオイルポンプ132を駆動させなくても良いため、オイルポンプ132の駆動損失の増加を抑制することができる。
ところで、上述したようなベルト式無段変速機22では、図2−2に示すように、作動油供給排出弁110の閉弁状態における弁体114には、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとが作用している。スプリング開弁方向押圧力Fspは、スプリング126の付勢力に応じた開弁方向への押圧力であり、弁体114に作用する。駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvは、駆動油圧室124内の作動油の駆動油圧Pcvに応じた閉弁方向への押圧力であり、ピストン122を介して弁体114に作用する。プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsは、プライマリ油圧室54の作動油の油圧である挟圧力発生油圧室油圧としてのプライマリ油圧Psに応じた開弁方向への押圧力であり、第2油路102において弁体114よりプライマリ油圧室54側の作動油を介して弁体114に作用する。
そして、作動油供給排出弁110は、この3つの押圧力、すなわち、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係が下記の関係式(1)を満たす場合に、弁体114と弁座部112とが接触し閉弁状態となる。逆に言えば、作動油供給排出弁110は、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係が下記の関係式(2)を満たす場合に、弁体114と弁座部112とが離間し開弁状態となる。
Fpcv>Fsp+Fps ・・・(1)
Fpcv<Fsp+Fps ・・・(2)
ここで、仮に、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aに電気的フェール(ショートなど)等が発生した場合、上述したようにこのソレノイド弁136aがノーマルオープン型のソレノイド弁であることから、ソレノイド弁136aをON制御しても、通電状態にならず非通電状態が継続しソレノイド弁136aの開弁状態が継続することで、分岐油路R32と油路R8とが連通を維持し、駆動油圧室124に一定圧が導入され続け、駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが所定の大きさの一定圧のままになるおそれがある。この場合、このベルト式無段変速機22は、ソレノイド弁136aをON制御しているにもかかわらず、駆動油圧室124への一定圧の導入が継続され駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが所定の大きさの一定圧のままで継続することで、この駆動油圧室124の作動油の駆動油圧Pcvにより作動油供給排出弁110の弁体114が弁座部112と接触した状態で維持され、作動油供給排出弁110が閉弁状態のまま維持され、この結果、変速比が固定されたままとなるおそれがある。
そこで、本実施形態のベルト式無段変速機22は、制御手段としてのECU140が駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し変速比を制御することで、ソレノイド弁136aのフェール時であっても適正に変速比を制御している。
上述したように、作動油供給排出弁110の閉弁状態においては、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係は、関係式(1)を満たす状態となっている。このとき、弁体114が閉弁位置にある際のスプリング開弁方向押圧力Fspは、変動せず常に一定である。また、ソレノイド弁136aのフェール時の駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvは、ソレノイド弁136aの非通電状態が継続しソレノイド弁136aの開弁状態が継続することで駆動油圧室124の駆動油圧Pcvが所定の大きさの一定圧のままになることから、変動せず常に一定である。このため、作動油供給排出弁110は、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psが調節され、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係が関係式(2)を満たすようになれば、弁体114と弁座部112とが離間し開弁状態となる。
そこで、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧する。作動油供給排出弁110の閉弁状態では、プライマリ油圧室54内に作動油が閉じ込められて保持されていることから、ベルト80のベルト張力が変化すると、ベルト80からプライマリ可動シーブ53を介して作用するベルト反力に応じてプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psも変化し、この結果、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsもこれに伴って変化する。つまり、作動油供給排出弁110の閉弁状態においてセカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されると、セカンダリ油圧Pdによる推力に応じてベルト80のベルト張力が増加し、ベルト80からプライマリ可動シーブ53を介して作用するベルト反力に応じてプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psも増圧し、この結果、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsもこれに伴って増加する。なおここでは、セカンダリ油圧Pdによる推力は、セカンダリ油圧Pdによりセカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との間に生じるベルト80を挟み付けるベルト挟圧力に相当する。
そして、このベルト式無段変速機22は、セカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されプライマリ油圧Psも所定の圧力まで増圧されプライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsが所定の大きさまで増加すると、スプリング開弁方向押圧力Fspと、駆動油圧閉弁方向押圧力Fpcvと、プライマリ油圧開弁方向押圧力Fpsとの関係が関係式(2)を満たすようになり、作動油供給排出弁110は、弁体114と弁座部112とが離間し開弁状態となる。この結果、ベルト式無段変速機22は、作動油供給排出弁110が開弁状態となることから、油圧制御装置130からプライマリ油圧室54への作動油の供給、あるいはプライマリ油圧室54から油圧制御装置130を介してプライマリプーリ50の外部への作動油の排出が可能となり、ECU140により油圧制御装置130を制御することにより適正な変速比の制御が可能となる。
次に、図4−1のフローチャート及び図4−2のタイムチャートを参照してベルト式無段変速機22のソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御について説明する。図4−2は、縦軸を作動油供給排出弁110の開弁指示のON・OFF、変速比γ、駆動油圧Pcv、供給油圧Pin、セカンダリ油圧Pd及び車速vとし、横軸を時間軸としている。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。またここで、供給油圧Pinは、プライマリ油圧室54へ供給される作動油の供給圧力であり、作動油供給排出弁110の開弁状態においては、供給排出経路における作動油供給排出弁110の弁体114よりも上流側(弁体114を挟んでプライマリ油圧室54側と反対側)の作動油である上流側作動油の油圧である。
まず、ECU140は、作動油供給排出弁110の開弁指示をONとし、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御し、変速比の遷移、すなわち、変速比変更制御を実行する(S100、例えば図4−2の時刻t11)。
次に、ECU140は、変速比が遷移していないか否か、すなわち、変速比が変更されていないか否かを判定する(S101、例えば図4−2の時刻t12)。ECU140は、例えば、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160の検出信号などに応じて種々の公知の方法に基づいて変速比γが遷移していないか否かを判定すればよい。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S101:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S101:Yes)、作動油供給排出弁110の開弁動作が失敗したと判定し、駆動油圧PcvのON解除ができないか否か、すなわち、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず、所定の大きさの一定圧の駆動油圧Pcvが継続して作用しソレノイド弁136aに電気的なフェールが発生しているか否かを判定する(S102、例えば図4−2の時刻t13)。ECU140は、例えば、ECU140が出入力する種々の制御信号などに応じて種々の公知の方法に基づいてソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず駆動油圧PcvのON解除ができないか否か、すなわち、ソレノイド弁136aに電気的なフェールが発生しているか否かを判定すればよい。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したことで駆動油圧PcvのON解除ができると判定した場合(S102:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず駆動油圧PcvのON解除ができないと判定した場合(S102:Yes)、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧する(S103、例えば図4−2の時刻t14)。
次に、ECU140は、変速比が遷移したか否かを判定する(S104、例えば図4−2の時刻t15)。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S104:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S104:Yes)、変速比が最減速比、すなわち、最大変速比γmaxになったか否かを判定する(S105)。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になっていないと判定した場合(S105:No)、S104に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になったと判定した場合(S105:Yes、例えば図4−2の時刻t16)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
なお、本実施形態のベルト式無段変速機22では、この間(例えば時刻t11から時刻t16)、供給油圧Pinは、一定としている。また、車速vは、時刻t15にて、作動油供給排出弁110が開弁すると共に、プライマリ油圧室54から作動油が排出されダウンシフトされ、すなわち変速比が増加されることで、徐々に低下している。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機22によれば、車両10に搭載される2つのプーリとしてのプライマリプーリ50及びセカンダリプーリ60と、プライマリプーリ50、セカンダリプーリ60に巻き掛けられ、内燃機関12からの駆動力を伝達するベルト80と、プライマリプーリ50、セカンダリプーリ60それぞれに形成され、油圧によりベルト80に対してベルト挟圧力を発生するプライマリ油圧室54及びセカンダリ油圧室64と、一方の挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室54に作動油を供給およびこのプライマリ油圧室54から作動油を排出する供給排出経路としての第1油路86、第2油路102と、供給排出経路としての第2油路102に設けられ弁体114がプライマリ油圧室54から作動油を排出する方向に移動し弁座部112から離間することで開弁可能な作動油供給排出弁110と、駆動油圧室124の作動油の油圧である駆動油圧Pcvによりピストン122を移動させることで、弁体114をプライマリ油圧室54に作動油を供給する方向に移動させ弁座部112に接触させて作動油供給排出弁110を閉弁可能なアクチュエータ120と、プライマリ油圧室54、セカンダリ油圧室64の作動油の油圧であるプライマリ油圧Ps、セカンダリ油圧Pdを制御可能であると共に、駆動油圧Pcvをソレノイド弁136aを介して制御し、ソレノイド弁136aを非通電状態とし駆動油圧Pcvを増圧することでアクチュエータ120により作動油供給排出弁110を閉弁させ変速比を固定する一方、ソレノイド弁136aを通電状態とし駆動油圧Pcvを減圧することで作動油供給排出弁110を開弁させプライマリ油圧室54に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室54から作動油を排出して変速比を変更する油圧制御装置130と、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し、変速比を制御するECU140とを備える。
したがって、ベルト式無段変速機22は、ECU140がソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し、変速比を制御することから、ソレノイド弁136aをON制御しているにもかかわらずソレノイド弁136aが通電状態とならず駆動油圧Pcvを減圧できない場合であっても、セカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されることで、ベルト張力が増加しプライマリ油圧室54の作動油に作用するベルト反力が増加しプライマリ油圧Psが増圧するので、作動油供給排出弁110を開弁状態とし変速比を変更することができ、ソレノイド弁136aのフェール時であっても適正に変速比を制御することができる。この結果、ベルト式無段変速機22は、ソレノイド弁136aのフェール時に、例えば、変速ができず変速比がハイ側(最小変速比側)で固定されてしまうことを防止することができ、よって、例えば、加速時のもたつきや再発進時のエンジンストールを防止することができ、信頼性を向上することができる。
(実施形態2)
図5−1は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャート、図5−2は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャート、図6は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比マップである。実施形態2に係るベルト式無段変速機は、実施形態1に係るベルト式無段変速機と略同様の構成であるが、ソレノイド弁のフェール時に車両の速度に応じて段階的に変速比を変更する点で実施形態1に係るベルト式無段変速機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態に係るベルト式無段変速機222のECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し車両10の速度に応じて段階的に変速比を変更する。ECU140は、車速センサ170が検出した車速vを取得し、この車速vに応じて目標となる変速比を設定し、実際の変速比がこの目標となる変速比になるように油圧制御装置130を制御する。このとき、ECU140は、車速vに応じて段階的に目標となる変速比を変更して設定する。さらに言えば、ECU140は、車速vの減速に応じて段階的に目標となる変速比を増加させる。
この結果、ベルト式無段変速機222は、ソレノイド弁136aのフェール時に、車速vに応じて段階的に変速比を変更することから、フェール発生時に、急激な変速(減速)が生じることを防止することができるので、安全に変速(減速)することができフェールセーフとして作用し、信頼性を向上することができる。ベルト式無段変速機222は、また、ソレノイド弁136aのフェール時に、セカンダリ油圧Pdを相対的に高い油圧に保持した状態を継続的に維持しなくてもよいことから、ベルト80に作用するベルト挟圧力が相対的に高い状態が長期間継続することが抑制されるので、このベルト80の寿命が短くなることを抑制することができ、この結果、耐久性を向上することができる。
次に、図5−1のフローチャート及び図5−2のタイムチャートを参照してベルト式無段変速機222のソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御について説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ECU140は、作動油供給排出弁110の開弁指示をONとし、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御し、変速比の遷移、すなわち、変速比変更制御を実行する(S200、例えば図5−2の時刻t21)。
次に、ECU140は、変速比が遷移していないか否か、すなわち、変速比が変更されていないか否かを判定する(S201、例えば図5−2の時刻t22)。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S201:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S201:Yes)、作動油供給排出弁110の開弁動作が失敗したと判定し、駆動油圧PcvのON解除ができないか否か、すなわち、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず、所定の大きさの一定圧の駆動油圧Pcvが継続して作用しソレノイド弁136aに電気的なフェールが発生しているか否かを判定する(S202、例えば図5−2の時刻t23)。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したことで駆動油圧PcvのON解除ができると判定した場合(S202:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず駆動油圧PcvのON解除ができないと判定した場合(S202:Yes)、車速センサ170が検出した現在の車速vを読み出し、この車速vに基づいて目標変速比γを設定し(S203)、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧する(S204、例えば図5−2の時刻t24−1、t24−2、t24−3)。
ここでECU140は、例えば、図6に示す変速比マップに基づいて、目標変速比γを求める。この変速比マップは、車速vと目標変速比γとの関係を記述したものである。この変速比マップでは、各目標変速比γは、車速vに対してダウンシフトによる減速加速度αが予め設定される許容減速加速度を超えないような変速比に設定されている。許容減速加速度は、例えば、車両10の安定性、制御性等を十分に確保できる値に設定すればよい。変速比マップは、ECU140の記憶部に格納されている。ECU140は、この変速比マップに基づいて、車速vから目標変速比γを求める。なお、本実施形態では、ECU140は、変速比マップを用いて車速vに応じた目標変速比γを求めたが、本実施形態はこれに限定されない。ECU140は、例えば、変速比マップに相当する数式に基づいて車速vに応じた目標変速比γを求めてもよい。
次に、ECU140は、S203で設定された目標変速比γに基づいて変速比の遷移、すなわち、変速比変更制御を実行する(S205)。
次に、ECU140は、実際の変速比がS203で設定された目標変速比γに収束したか否かを判定する(S206)。
ECU140は、実際の変速比がS203で設定された目標変速比γに収束していないと判定した場合(S206:No)、S205に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU140は、実際の変速比がS203で設定された目標変速比γに収束したと判定した場合(S206:Yes)、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdの増圧を解除する(S207、例えば図5−2の時刻t25−1、t25−2、t25−3)。
次に、ECU140は、変速比が最減速比、すなわち、最大変速比γmaxになったか否かを判定する(S208)。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になっていないと判定した場合(S208:No)、S203に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になったと判定した場合(S208:Yes、例えば図5−2の時刻t26)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
なお、本実施形態のベルト式無段変速機222では、この間(時刻t21から時刻t26)、供給油圧Pinは、一定としている。また、変速比γは、時刻t24−1から時刻t25−1、時刻t24−2から時刻t25−2、時刻t24−3から時刻t25−3において段階的に増加しており、これに伴って、車速vは、時刻t24−1から時刻t25−1、時刻t24−2から時刻t25−2、時刻t24−3から時刻t25−3で減速度が大きくなって、段階的に減速している。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機222によれば、ベルト式無段変速機222は、ECU140がソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し、変速比を制御することから、ソレノイド弁136aをON制御しているにもかかわらずソレノイド弁136aが通電状態とならず駆動油圧Pcvを減圧できない場合であっても、セカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されることで、ベルト張力が増加しプライマリ油圧室54の作動油に作用するベルト反力が増加しプライマリ油圧Psが増圧するので、作動油供給排出弁110を開弁状態とし変速比を変更することができ、ソレノイド弁136aのフェール時であっても適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機222によれば、ECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し車両10の速度に応じて段階的に変速比を変更する。したがって、ベルト式無段変速機222は、ECU140がソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し車速vに応じて段階的に変速比を変更することから、フェール発生時に、急激な変速が生じることを防止することができ、信頼性を向上することができると共に、セカンダリ油圧Pdを相対的に高い油圧に保持した状態を継続的に維持しなくてもよいことから、ベルト80の寿命が短くなることを抑制することができ、この結果、耐久性を向上することができる。
(実施形態3)
図7−1は、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速機の変速比制御を説明するフローチャート、図7−2は、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速機の変速比制御の一例を説明するタイムチャートである。実施形態3に係るベルト式無段変速機は、実施形態1に係るベルト式無段変速機と略同様の構成であるが、ソレノイド弁のフェール時に供給油圧を挟圧力発生油圧室油圧と同等に設定する点で実施形態1に係るベルト式無段変速機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。
本実施形態に係るベルト式無段変速機322のECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し一方の挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室54に供給される作動油の油圧である供給油圧Pinをプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと同等に設定する。ここで、供給油圧Pinは、上述したように、プライマリ油圧室54へ供給される作動油の供給圧力であり、作動油供給排出弁110の開弁状態おいては、供給排出経路における作動油供給排出弁110の弁体114よりも上流側(弁体114を挟んでプライマリ油圧室54側と反対側)の作動油である上流側作動油の油圧である。つまり、ECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御して供給油圧Pinをプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと同等になるまで増圧することで、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと供給油圧Pinとの圧力差を小さくする。
この結果、ベルト式無段変速機322は、ソレノイド弁136aのフェール時に、プライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと供給油圧Pinとの圧力差が小さくなるように供給油圧Pinが制御されることで、供給排出経路、ここでは第2油路102における作動油供給排出弁110の弁体114よりも上流側と下流側との圧力差が小さくなる。このため、このベルト式無段変速機322は、弁体114よりも上流側と下流側との圧力差が小さくなるように供給油圧Pinがプライマリ油圧Psと同等に設定されることで、例えば、ソレノイド弁136aのフェールが断続的に発生する場合、すなわち、ソレノイド弁136aをON制御した際にこのソレノイド弁136aが通電状態と非通電状態とを断続的に繰り返し作動油供給排出弁110の開閉動作が断続的に繰り返されるような場合に、プライマリ油圧Psが急激に減圧されてしまうことを防止することができる。したがって、ベルト式無段変速機322は、ソレノイド弁136aのフェール時に、プライマリ油圧Psが急激に減圧されてしまうことが確実に防止されることから、急減圧にともなって急変速が行われたりベルト80にすべりが発生したりすることを防止することができるので、信頼性、耐久性を向上することができる。さらに、ベルト式無段変速機322は、ソレノイド弁136aのフェール時に、プライマリ油圧Psが急激に減圧されてしまうことが確実に防止されることから、車両10に不連続な減速挙動が現れることを防止することができ、操縦安定性が低下することを防止することができるので、この点でも、信頼性、安全性を向上することができる。
次に、図7−1のフローチャート及び図7−2のタイムチャートを参照してベルト式無段変速機322のソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御について説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ECU140は、作動油供給排出弁110の開弁指示をONとし、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御し、変速比の遷移、すなわち、変速比変更制御を実行する(S300、例えば図7−2の時刻t31)。
次に、ECU140は、変速比が遷移していないか否か、すなわち、変速比が変更されていないか否かを判定する(S301、例えば図7−2の時刻t32)。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S301:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S301:Yes)、作動油供給排出弁110の開弁動作が失敗したと判定し、駆動油圧PcvのON解除ができないか否か、すなわち、駆動油圧室用制御装置136のソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず、所定の大きさの一定圧の駆動油圧Pcvが継続して作用しソレノイド弁136aに電気的なフェールが発生しているか否かを判定する(S302、例えば図7−2の時刻t33)。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したことで駆動油圧PcvのON解除ができると判定した場合(S302:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、ソレノイド弁136aをON制御したにもかかわらず駆動油圧PcvのON解除ができないと判定した場合(S302:Yes)、油圧制御装置130を制御しプライマリ油圧室54に供給される供給油圧Pinを増圧しプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと同等に設定する(S303、例えば図7−2の時刻t34)。ここで、ECU140は、例えば、内燃機関12が発生させるエンジントルク(出力トルク)Te、入力回転数センサ150が検出する入力回転数Nin、セカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pd、変速比γなどに基づいて、種々の公知の方法でプライマリ油圧室54内に閉じ込められたプライマリ油圧Psを推定演算すればよい。
次に、ECU140は、油圧制御装置130のセカンダリ油圧室用制御装置137を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧する(S304、例えば図7−2の時刻t35)。
次に、ECU140は、変速比が遷移したか否かを判定する(S305、例えば図7−2の時刻t36)。
ECU140は、変速比が遷移していないと判定した場合(S305:No)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
ECU140は、変速比が遷移していると判定した場合(S305:Yes)、変速比が最減速比、すなわち、最大変速比γmaxになったか否かを判定する(S306)。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になっていないと判定した場合(S306:No)、S305に戻って以降の処理を繰り返し実行する。
ECU140は、変速比が最減速比(最大変速比γmax)になったと判定した場合(S306:Yes、例えば図7−2の時刻t37)、このソレノイド弁136aのフェール時の変速比制御を終了する。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機322によれば、ベルト式無段変速機322は、ECU140がソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御しセカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧Pdを増圧し、変速比を制御することから、ソレノイド弁136aをON制御しているにもかかわらずソレノイド弁136aが通電状態とならず駆動油圧Pcvを減圧できない場合であっても、セカンダリ油圧Pdが所定の圧力まで増圧されることで、ベルト張力が増加しプライマリ油圧室54の作動油に作用するベルト反力が増加しプライマリ油圧Psが増圧するので、作動油供給排出弁110を開弁状態とし変速比を変更することができ、ソレノイド弁136aのフェール時であっても適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機322によれば、ECU140は、ソレノイド弁136aのフェール時に、油圧制御装置130を制御し一方の挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室54に供給される作動油の油圧である供給油圧Pinをプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと同等に設定する。したがって、ベルト式無段変速機322は、ソレノイド弁136aのフェール時に、ECU140がプライマリ油圧室54のプライマリ油圧Psと供給油圧Pinとの圧力差が小さくなるように供給油圧Pinを制御することで、プライマリ油圧Psが急激に減圧されてしまうことを確実に防止することができるので、急減圧にともなって急変速が行われたりベルト80にすべりが発生したりすることを防止することができると共に、車両10に不連続な減速挙動が現れることを防止することができ、操縦安定性が低下することを防止することができる。この結果、ベルト式無段変速機322は、信頼性、耐久性、安全性を向上することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
以上の説明では、作動油供給排出弁110は、供給排出経路の一部をなす第2油路102に設けられるものとして説明したが、供給排出経路の一部をなす第1油路86に設けられていてもよい。つまり、作動油供給排出弁110は、プライマリシャフト51の内部の第1油路86に設けられていてもよい。この場合、例えば、アクチュエータ120も作動油供給排出弁110と同様にプライマリシャフト51の内部の第1油路86に設けるようにすればよい。つまり、作動油供給排出弁110とアクチュエータ120とからなる切換機構100をプライマリシャフト51の内部にプライマリシャフト51と同軸上に設けてもよい。