以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記の実施形態におけるベルト式無段変速機に伝達される駆動力を発生する駆動源として内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いるが、これに限定されるものではなく、モータなどの電動機を駆動源として用いても良い。また、下記の実施形態では、一方のプーリをプライマリプーリとし、他方のプーリをセカンダリプーリとするが、一方のプーリをセカンダリプーリとし、他方のプーリをプライマリプーリとしても良い。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機のスケルトン図、図2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比固定時(閉弁状態)におけるプライマリプーリの要部断面図、図3−1および図3−2は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機のトルクカムを示す図、図4は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の作動油供給排出制御装置の構成例を示す図である。
図1に示すように、駆動源である内燃機関10の出力側には、静止部品であるトランスアクスル20が配置されている。トランスアクスル20は、トランスアクスルハウジング21と、トランスアクスルハウジング21に取り付けられたトランスアクスルケース22と、トランスアクスルケース22に取り付けられたトランスアクスルリヤカバー23とにより構成されている。
トランスアクスルハウジング21の内部には、トルクコンバータ30が収納されている。一方、トランスアクスルケース22とトランスアクスルリヤカバー23とにより構成されるケース内部には、実施形態1にかかるベルト式無段変速機1−1を構成する2つのプーリであるプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60と、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55と、他方の挟圧力発生油圧室であるセカンダリ油圧室64と、作動油供給排出弁70と、アクチュエータ80と、ベルト110とが収納されている。なお、40は前後進切換機構、90は車輪120に内燃機関10の駆動力を伝達する最終減速機、100は動力伝達経路、図4に示す130は作動油供給排出制御装置、140はECU(Electronic Control Unit)、150は入力回転数センサ、160は出力回転数センサである。
発進機構であるトルクコンバータ30は、図1に示すように、駆動源からの駆動力、すなわち内燃機関10からの出力トルクを増加、あるいはそのままベルト式無段変速機1−1に伝達するものである。このトルクコンバータ30は、少なくともポンプ(ポンプインペラ)31と、タービン(タービンインペラ)32と、ステータ33と、ロックアップクラッチ34と、ダンパ装置35とにより構成されている。
ポンプ31は、内燃機関10のクランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能な中空軸36に取り付けられている。つまり、ポンプ31は、中空軸36とともに、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能である。また、ポンプ31は、フロントカバー37に接続されている。フロントカバー37は、内燃機関10のドライブプレート12を介して、クランクシャフト11に連結されている。
タービン32は、上記ポンプ31と対向するように配置されている。このタービン32は、上記中空軸36内部に配置され、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能なインプットシャフト38に取り付けられている。つまり、タービン32は、インプットシャフト38とともに、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能である。
ポンプ31とタービン32との間には、ワンウェイクラッチ39を介してステータ33が配置されている。ワンウェイクラッチ39は、上記トランスアクスルハウジング21に固定されている。また、タービン32とフロントカバー37との間には、ロックアップクラッチ34が配置されており、このロックアップクラッチ34は、ダンパ装置35を介してインプットシャフト38に連結されている。なお、上記ポンプ31やフロントカバー37により形成されるケーシングは、作動油供給部分であり、作動油供給部分に作動油を供給する作動油供給排出制御装置130から作動流体として作動油が供給されている。
ここで、トルクコンバータ30の動作について説明する。内燃機関10からの出力トルクは、クランクシャフト11からドライブプレート12を介して、フロントカバー37に伝達される。ロックアップクラッチ34がダンパ装置35により解放されている場合は、フロントカバー37に伝達された内燃機関10からの出力トルクがポンプ31に伝達され、このポンプ31とタービン32との間を循環する作動油を介して、タービン32に伝達される。そして、タービン32に伝達された内燃機関10からの出力トルク(エンジントルク)は、インプットシャフト38に伝達される。つまり、トルクコンバータ30は、インプットシャフト38を介して、内燃機関10からの出力トルクを増加してベルト式無段変速機1−1に伝達する。上記においては、ステータ33により、ポンプ31とタービン32との間を循環する作動油の流れを変化させ所定のトルク特性を得ることができる。
一方、上記ロックアップクラッチ34がダンパ装置35によりロック(フロントカバー37と係合)されている場合は、フロントカバー37に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、作動油を介さずに直接インプットシャフト38に伝達される。つまり、トルクコンバータ30は、インプットシャフト38を介して、内燃機関10からの出力トルクをそのままベルト式無段変速機1−1に伝達する。
前後進切換機構40は、図1に示すように、トルクコンバータ30を介して伝達された内燃機関10からの出力トルク(エンジントルク)をベルト式無段変速機1−1のプライマリプーリ50に伝達するものである。前後進切換機構40は、少なくとも遊星歯車装置41とフォワードクラッチ42と、リバースブレーキ43とにより構成されている。
遊星歯車装置41は、サンギヤ44と、ピニオン45と、リングギヤ46とにより構成されている。
サンギヤ44は、図示しない連結部材にスプライン嵌合されている。連結部材は、プライマリプーリ50のプライマリプーリ軸51にスプライン嵌合されている。従って、サンギヤ44に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、プライマリプーリ軸51に伝達される。
ピニオン45は、サンギヤ44と噛み合い、その周囲に複数個(例えば、3個)配置されている。各ピニオン45は、サンギヤ44の周囲で一体に公転可能に支持する切換用キャリヤ47に保持されている。この切換用キャリヤ47は、その外周端部においてリバースブレーキ43に接続されている。
リングギヤ46は、切換用キャリヤ47に保持された各ピニオン45と噛み合い、フォワードクラッチ42を介して、トルクコンバータ30のインプットシャフト38に接続されている。
フォワードクラッチ42は、作動油供給部分であるインプットシャフト38の図示しない中空部に、作動油供給排出制御装置130から作動油が供給されることにより、ON/OFF制御されるものである。フォワードクラッチ42のOFF時には、インプットシャフト38に伝達された内燃機関10からの出力トルクがリングギヤ46に伝達される。一方、フォワードクラッチ42のON時には、リングギヤ46とサンギヤ44と各ピニオン45とが互いに相対回転することなく、インプットシャフト38に伝達された内燃機関10からの出力トルクが直接サンギヤ44に伝達される。
リバースブレーキ43は、作動油供給部分である図示しないブレーキピストンに、作動油供給排出制御装置130から作動油が供給されることにより、ON/OFF制御されるものである。リバースブレーキ43がON時には、切換用キャリヤ47がトランスアクスルケース22に固定され、各ピニオン45がサンギヤ44の周囲を公転できない状態となる。リバースブレーキ43がOFF時には、切換用キャリヤ47が解放され、各ピニオン45がサンギヤ44の周囲を公転できる状態となる。
ベルト式無段変速機1−1のプライマリプーリ50は、一方のプーリであり、前後進切換機構40を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクをベルト110により、セカンダリプーリ60に伝達するものである。プライマリプーリ50は、図1および図2に示すように、プライマリプーリ軸51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54と、プライマリ油圧室55と、カバー部材56とにより構成されている。
プライマリプーリ軸51は、図2に示すように、プーリ軸受111,112により回転可能に支持されている。また、プライマリプーリ軸51は、軸方向における両端部のみにそれぞれ開口する供給排出側主通路51aと、駆動側主通路51bが形成されている。ここで、プーリ軸受112は、トランスアクスルリヤカバー23の段差部と、トランスアクスルリヤカバー23に固定される図示しないストッパープレートとの間に、挟み込まれることで固定される。
供給排出側主通路51aは、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給し、かつプライマリ油圧室55から作動油を排出する作動油供給排出通路の一部を構成するものである。供給排出側主通路51aは、プライマリ固定シーブ側に形成されており、作動油供給排出制御装置130の後述する油路R7と連通している。供給排出側主通路51aは、作動油供給排出制御装置130からプライマリ油圧室55に供給される作動油が流入し、プライマリ油圧室55から排出された作動油が流入する。従って、供給排出側主通路51aは、作動油供給排出制御装置130とプライマリ油圧室55との間で供給あるいは排出される作動油が通過するものである。また、供給排出側主通路51aは、その先端部近傍が軸側連通通路51cと連通している。
軸側連通通路51cは、作動油供給排出通路の一部を構成するものである。軸側連通通路51cは、一方の端部が供給排出側主通路51aと連通し、他方の端部がプライマリプーリ軸51の外周面に開口することで、空間部T1と連通している。なお、軸側連通通路51cは、実施形態1では、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
空間部T1は、作動油供給排出通路の一部を構成するものである。空間部T1は、プライマリ可動シーブ53とプライマリプーリ軸51との間に形成されるものである。つまり、空間部T1は、プライマリ可動シーブ53の内周面、すなわちプライマリ可動シーブ53のプライマリプーリ軸51に対して軸方向に摺動する面と、プライマリプーリ軸51の外周面との間に形成されている。空間部T1は、円筒形状であり、径方向内側の端部(同図下側端部)が各軸側連通通路51cと連通し、軸方向における他方の端部(同図左側端部)が空間部T2と連通している。
空間部T2は、作動油供給排出通路の一部を構成するものである。空間部T2は、プライマリ隔壁54とプライマリ可動シーブ53とプライマリプーリ軸51との間に形成されるものである。つまり、空間部T2は、プライマリ隔壁54の内周面(作動油供給排出弁70が形成されている部分の径方向内側の面)と、プライマリ可動シーブ53の外周面(プライマリ可動シーブ53の外周面のうち、後述するプライマリ油圧室用シール部材S1よりも軸方向のうち他方側(同図左側)の外周面)と、プライマリプーリ軸51の外周面との間に形成されている。空間部T2は、リング形状であり、径方向内側の端部(同図下側端部)が空間部T1と連通し、径方向外側の端部がプライマリ隔壁54の隔壁側連通通路54bと連通している。つまり、供給排出側主通路51aは、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2を介して隔壁側連通通路54bと連通している。
また、駆動側主通路51bは、アクチュエータ80の後述する駆動油圧室81に作動油を供給し、駆動油圧室81から作動油を排出するものである。駆動側主通路51bは、プライマリ固定シーブ側と反対側に形成されており、作動油供給排出制御装置130の後述する油路R8と連通している。駆動側主通路51bは、作動油供給排出制御装置130から駆動油圧室81に供給される作動油が流入し、駆動油圧室81から排出された作動油が流入する。従って、駆動側主通路51bは、作動油供給排出制御装置130と駆動油圧室81との間で供給あるいは排出される作動油が通過するものである。また、駆動側主通路51bは、その先端部近傍が軸側連通通路51dと連通している。
軸側連通通路51dは、一方の端部が駆動側主通路51bと連通し、他方の端部がプライマリプーリ軸51の外周面に開口することで、空間部T3と連通している。なお、軸側連通通路51dは、実施形態1では、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
空間部T3は、プライマリ隔壁54とプライマリプーリ軸51との間に形成されるものである。つまり、空間部T3は、プライマリ隔壁54の内周面(最内周面)と、プライマリプーリ軸51の外周面との間に形成されている。空間部T3は、リング形状であり、径方向内側(同図下側端部)が各軸側連通通路51dと連通し、径方向外側(同図上側端部)が隔壁側連通通路54eと連通している。つまり、駆動側主通路51bは、各軸側連通通路51d、空間部T3を介して隔壁側連通通路54eと連通している。なお、プライマリ隔壁54の内周面とプライマリプーリ軸51の外周面との間には、空間部T3を挟んで、例えばシールリングなどの連通部用シール部材を設けても良い。
プライマリ固定シーブ52は、図2に示すように、プライマリ可動シーブ53と対向する位置にプライマリプーリ軸51と一体回転するように設けられている。ここでは、プライマリ固定シーブ52は、プライマリプーリ軸51の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、実施形態1では、プライマリ固定シーブ52は、プライマリプーリ軸51の外周に一体的に形成されている。
プライマリ可動シーブ53は、図2に示すように、円筒部53aと、環状部53bとにより構成されている。円筒部53aは、プライマリプーリ軸51と同一回転軸を中心に形成されている。環状部53bは、この円筒部53aのプライマリ固定シーブ側の端部から径方向外側に突出して形成されている。プライマリ可動シーブ53は、円筒部53aの内周面に形成されたスプライン53cと、プライマリプーリ軸51の外周面に形成されたスプライン51eとがスプライン嵌合することで、プライマリプーリ軸51に軸方向に摺動可能に支持されている。プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間、すなわちプライマリ固定シーブ52のプライマリ可動シーブ53に対向する面と、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対向する面との間で、V字形状のプライマリ溝110aが形成されている。なお、スプライン53cと、スプライン51eとの間の空間部も空間部T1に含まれる。また、プライマリ可動シーブ53の軸方向のうち他方の端部(同図左側端部)には、切欠部53eが形成されている。従って、プライマリ可動シーブ53の軸方向のうち他方の端部がプライマリプーリ軸51に対して軸方向のうち他方に摺動することで、プライマリ隔壁54と接触あるいは近接しても、切欠部53eにより空間部T1と空間部T2との連通が維持される。
プライマリ隔壁54は、一方のプーリであるプライマリプーリ50のうち、作動油供給排出弁70が配置される部材であるとともに、駆動油圧室81を構成する部材である。プライマリ隔壁54は、図2に示すように、環状部材であり、プライマリプーリ軸51と同一回転軸を中心に配置されている。また、プライマリ隔壁54は、プライマリ可動シーブ53を挟んでプライマリ固定シーブ52と軸方向において対向するように配置されている。プライマリ隔壁54は、プライマリプーリ軸51とスプライン嵌合することで、プライマリプーリ軸51と一体回転するように設けられている。
プライマリ隔壁54は、軸方向に延在する弁配置通路54aが形成されている。弁配置通路54aは、作動油供給排出通路の一部を構成するものである。弁配置通路54aは、一方の端部(同図右側端部)がプライマリ油圧室55に連通し、他方の端部(同図左側端部)がプライマリ隔壁54の内部で閉塞され、隔壁側連通通路54bと連通している。弁配置通路54aは、作動油供給排出弁70の後述する弁体71により閉塞される環状の弁座面72が形成されている。ここで、弁座面72は、弁配置通路54aの一方の端部に形成される。弁配置通路54aは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。各弁配置通路54aには、作動油供給排出弁70がそれぞれ配置されている。
隔壁側連通通路54bは、作動油供給排出通路の一部を構成するものである。隔壁側連通通路54bは、一方の端部(同図径方向外側の端部)が弁配置通路54aと連通し、他方の端部(同図径方向内側)がプライマリ隔壁54の内周面に開口し、空間部T2と連通している。弁配置通路54aおよび隔壁側連通通路54bは、実施形態1では、図2に示すように、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。従って、供給排出側主通路51aは、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、隔壁側連通通路54bおよび弁配置通路54aを介して、プライマリ油圧室55と連通している。つまり、作動油供給排出通路は、実施形態1では、供給排出側主通路51a、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、隔壁側連通通路54bおよび弁配置通路54aにより構成されている。なお、隔壁側連通通路54bは、実施形態1では、径方向内側の端部が軸方向のうち他方向(同図左側)に延在して形成されている。
また、プライマリ隔壁54には、各弁配置通路54aと同一軸線上に、摺動支持穴54cがそれぞれ形成されている。各摺動支持穴54cは、一方の端部(同図右側端部)が弁配置通路54aに連通し、他方の端部(同図左側端部)がプライマリ隔壁54の外周面に円周上に連続して形成された切欠部54dに開口されている。実施形態1では、各摺動支持穴54cの他方の端部は、アクチュエータ80の後述するピストン82の受圧部材82aの軸方向のうち一方の側面(同図右側側面)と対向する面に開口されている。
隔壁側連通通路54eは、一方の端部(同図径方向外側の端部)が切欠部54dに開口し、他方の端部(同図径方向内側)がプライマリ隔壁54の内周面(最内周面)に開口し、空間部T3と連通している。実施形態1では、隔壁側連通通路54eの一方の端部は、切欠部54dを構成するプライマリ隔壁54の外周面のうち、駆動油圧室81を構成する面に開口されている。また、隔壁側連通通路54eは、実施形態1では、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。従って、駆動側主通路51bは、各軸側連通通路51d、空間部T3、隔壁側連通通路54eを介して、切欠部54d、すなわち駆動油圧室81と連通している。
プライマリ油圧室55は、一方の挟圧力発生油圧室であり、図2に示すように、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧することで、プライマリプーリ50、すなわちV字形状のプライマリ溝110aに巻き掛けられたベルト110に対してベルト挟圧力を発生するものである。このプライマリ油圧室55は、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54とにより形成される空間部である。ここで、プライマリ可動シーブ53の突出部53dとプライマリ隔壁54との間およびプライマリ可動シーブ53の円筒部53aとプライマリ隔壁54との間には、例えばシールリングなどのプライマリ油圧室用シール部材S1がそれぞれ設けられている。つまり、プライマリ油圧室55を構成するプライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54とにより形成される空間部は、プライマリ油圧室用シール部材S1によりシールされている。
このプライマリ油圧室55には、プライマリプーリ軸51の供給排出側主通路51aに流入した作動油供給排出制御装置130からの作動油が供給される。プライマリ油圧室55は、作動油供給排出制御装置130から供給された作動油の圧力、すなわちプライマリ油圧室55の油圧P1により、プライマリ可動シーブ53を軸方向に摺動させ、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52に対して接近あるいは離隔させるものである。このように、プライマリ油圧室55は、プライマリ油圧室55の油圧P1により、ベルト110に対してベルト挟圧力を発生させ、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を変更する。従って、プライマリ油圧室55は、主にベルト式無段変速機1−1の変速比を変更する。
カバー部材56は、駆動油圧室81を構成する部材である。カバー部材56は、リング形状であり、プライマリ隔壁54とプーリ軸受112との間、すなわち切欠部54dに配置される。カバー部材56は、径方向内側の端部がプライマリ隔壁54の外周面と接触し、径方向外側の端部がピストン82の受圧部材82aがピストン用シール部材S2を介して接触する。なお、カバー部材56は、径方向内側の端部と、プライマリ隔壁54の外周面とで円周上に連続するシール面が形成される。ここで、実施形態1では、シール面は、軸方向に形成される。
ベルト式無段変速機1−1のセカンダリプーリ60は、他方のプーリであり、ベルト110によりプライマリプーリ50に伝達された内燃機関10からの出力トルク(エンジントルク)をベルト式無段変速機1−1の最終減速機90に伝達するものである。セカンダリプーリ60は、図1に示すように、セカンダリプーリ軸61と、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ油圧室64、セカンダリ隔壁65と、トルクカム66により構成されている。なお、69は、パーキングブレーキギヤである。
セカンダリプーリ軸61は、プーリ軸受113,114により回転可能に支持されている。また、セカンダリプーリ軸61は、内部に図示しない作動油通路を有しており、この作動油通路には、作動油供給排出制御装置130からセカンダリ油圧室64に供給される作動油が流入する。
セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリ可動シーブ63と対向する位置にセカンダリプーリ軸61と一体回転するように設けられている。ここでは、セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリプーリ軸61の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、この実施形態1では、セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリプーリ軸61の外周に一体的に形成されている。
セカンダリ可動シーブ63は、その内周面に形成された図示しないスプラインと、セカンダリプーリ軸61の外周面に形成された図示しないスプラインとがスプライン嵌合することで、このセカンダリプーリ軸61に軸方向に摺動可能に支持されている。セカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との間、すなわちセカンダリ固定シーブ62のセカンダリ可動シーブ63に対向する面と、セカンダリ可動シーブ63のセカンダリ固定シーブ62と対向する面との間で、V字形状のセカンダリ溝110bが形成されている。
セカンダリ油圧室64は、他方の挟圧力発生油圧室であり、図1に示すように、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ側に押圧することで、セカンダリプーリ60、すなわちV字形状のセカンダリ溝110bに巻き掛けられたベルト110に対してベルト挟圧力を発生するものである。セカンダリ油圧室64は、セカンダリプーリ軸61と、セカンダリ可動シーブ63と、このセカンダリプーリ軸61に固定された円板形状のセカンダリ隔壁65とにより形成される空間部である。セカンダリ可動シーブ63には、軸方向の一方に突出、すなわち最終減速機90側に突出する環状の突出部63aが形成されている。一方、セカンダリ隔壁65には、軸方向の他方向に突出、すなわちセカンダリ可動シーブ63側に突出する環状の突出部65aが形成されている。ここで、突出部63aと突出部65aとの間には、例えばシールリングなどの図示しないシール部材が設けられている。つまり、セカンダリ油圧室64を構成するセカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ隔壁65とにより形成される空間部は、図示しないセカンダリ油圧室用シール部材によりシールされている。
セカンダリ油圧室64には、図示しない作動流体供給孔を介して、セカンダリプーリ軸61の図示しない作動油通路に流入した作動油供給排出制御装置130からの作動油が供給される。セカンダリ油圧室64に作動油を供給し、作動油供給排出制御装置130から供給された作動油の圧力、すなわちセカンダリ油圧室64の油圧により、セカンダリ可動シーブ63を軸方向に摺動させ、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ62に対して接近あるいは離隔させるものである。このように、セカンダリ油圧室64は、このセカンダリ油圧室64の油圧により、ベルト110に対してベルト挟圧力を発生させ、ベルト110のプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60に対する接触半径を一定に維持する。
トルクカム66は、図3−1に示すように、セカンダリプーリ60のセカンダリ可動シーブ63に環状に設けられた山谷状の第1係合部63bと、この第1係合部63bとセカンダリプーリ軸61の軸線方向において対向する後述する中間部材67に形成された第2係合部67aと、この第1係合部63bと第2係合部67aとの間に配置された円板形状の複数の伝達部材68とにより構成されている。
中間部材67は、セカンダリ隔壁65と一体に形成、あるいはセカンダリ隔壁65に固定され、プーリ軸受113、軸受115により、セカンダリプーリ軸61やセカンダリ可動シーブ63に対してセカンダリプーリ軸61上で相対回転可能に支持されている。この中間部材67は、動力伝達経路100の入力軸101と、例えばスプライン嵌合により固定されている。つまり、セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、この中間部材67を介して動力伝達経路100に伝達される。
ここで、トルクカム66の動作について説明する。プライマリプーリ50に内燃機関10からの出力トルクが伝達され、このプライマリプーリ50が回転すると、ベルト110を介してセカンダリプーリ60が回転する。このとき、セカンダリプーリ60のセカンダリ可動シーブ63は、このセカンダリ固定シーブ62、セカンダリプーリ軸61、プーリ軸受113とともに回転するため、このセカンダリ可動シーブ63と中間部材67との間に相対回転が発生する。そして、図3−1に示すように、第1係合部63bと第2係合部67aとが接近した状態から、複数の伝達部材68により、図3−2に示すように第1係合部63bと第2係合部67aとが離隔した状態に変化する。これにより、トルクカム66は、セカンダリプーリ60にベルト110に対してベルト挟圧力を発生する。
つまり、セカンダリプーリ60には、ベルト110に対してベルト挟圧力を発生する手段として、挟圧力発生油圧室であるセカンダリ油圧室64以外にトルクカム66が備えられる。このトルクカム66が主としてベルト挟圧力を発生させ、セカンダリ油圧室64はトルクカム66により発生したベルト挟圧力の不足分を発生させるものである。なお、セカンダリプーリ60におけるベルト110に対してベルト挟圧力を発生する手段がセカンダリ油圧室64のみであっても良い。
作動油供給排出弁70は、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する方向に開弁する弁である。作動油供給排出弁70は、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する際およびプライマリ油圧室55から作動油を排出する際に、アクチュエータ80により強制的に開弁させられるものである。作動油供給排出弁70は、図2に示すように、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55の外部、すなわちプライマリプーリ50の外部からこのプライマリ油圧室55への作動流体である作動油の供給、プライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部への作動油の排出、プライマリ油圧室55の作動油の保持を行うものである。作動油供給排出弁70は、実施形態1では、一方のプーリであるプライマリプーリ50のプライマリ隔壁54に形成された各弁配置通路54a内にそれぞれ配置されている(作動油供給排出弁70は、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている)。つまり、各作動油供給排出弁70は、一方のプーリであるプライマリプーリ50と一体回転するものである。
各作動油供給排出弁70は、ボール式の逆止弁であり、弁体71と、弁座面72と、弁体保持部材73と、弁体弾性部材74と、スナップリング75とにより構成されている。各弁体71は、球形状であり、弁座面72よりもプライマリ油圧室側に配置され、弁座面72の内径よりも大きい直径である。弁座面72は、プライマリ固定シーブ側(弁配置通路54aの他方の端部から一方の端部)に向かうに伴い、径方向外側に向かって傾斜するテーパー形状である。弁体71が弁座面72に接触することで、弁配置通路54aとプライマリ油圧室55との連通が遮断され、各作動油供給排出弁70が閉弁される。また、弁体71が弁座面72から離れることで、弁配置通路54aとプライマリ油圧室55とが連通され、各作動油供給排出弁70が開弁される。つまり、各作動油供給排出弁70は、開弁方向に向かって開弁し、閉弁方向に向かって閉弁する。
弁体保持部材73は、弁体71を挟んで弁座面72と対向する位置に配置されている。弁体保持部材73は、円環形状であり、プライマリ隔壁54のプライマリ油圧室側の外周面に軸方向に摺動自在に支持されている。弁体保持部材73は、弁体弾性部材74が発生する閉弁付勢力により、各作動油供給排出弁70の弁体71に常に接触することで、各弁体71を保持するものである。ここで、プライマリ隔壁54の弁体保持部材73と対向する面には、各弁体71が各弁座面72にそれぞれ接触している状態で、弁体保持部材73とプライマリ隔壁54との間に隙間が形成されるように、周方向に連続する凹部54fが形成されている。
弁体弾性部材74は、弁体閉弁方向押圧力発生手段である。弁体弾性部材74は、例えば皿ばねであり、各弁体71および弁体保持部材73を介して、プライマリ隔壁54のプライマリ油圧室側の外周面に挿入固定されたスナップリング75と、弁座面72との間に付勢された状態で配置されている。これにより、弁体弾性部材74は、閉弁付勢力を発生しており、弁体71が弁座面72に接触する方向の弾性部材押圧力である弁体閉弁方向押圧力として閉弁付勢力が各弁体71に作用している。これにより、各弁体71が各弁座面72にそれぞれ押さえつけられ、各作動油供給排出弁70が逆止弁として機能する。従って、各作動油供給排出弁70は、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する方向、すなわち開弁方向に開弁することができる。
アクチュエータ80は、各作動油供給排出弁70を強制的に開弁させるものである。アクチュエータ80は、駆動油圧室81と、ピストン82とにより構成されている。
駆動油圧室81は、作動油が供給されるものであり、供給された作動油の圧力、すなわち駆動油圧室81の油圧P2により、上記各作動油供給排出弁70の開閉弁を制御するものである。駆動油圧室81は、切欠部54dのうち、ピストン82とプライマリ隔壁54とカバー部材56との間に形成されるものである。駆動油圧室81は、リング形状の空間部であり、駆動側主通路51bを介して作動油供給排出制御装置130から作動油が供給される。従って、ピストン82には、駆動油圧室81の油圧P2により、ピストン開弁方向押圧力が作用する。
ピストン82は、駆動油圧室81の油圧P2により、駆動油圧室81に対して摺動方向のうち一方、すなわち軸方向のうち一方(同図右方向)に摺動することで、各作動油供給排出弁70を強制的に開弁させるものである。ピストン82は、受圧部材82aと、押圧部材82bとにより構成されている。
受圧部材82aは、駆動油圧室81に対して摺動方向、すなわち軸方向に支持部材であるプライマリ隔壁54とカバー部材56とにより摺動自在に支持されている。受圧部材82aは、駆動油圧室81の油圧P2を受けるものである。受圧部材82aは、リング形状に形成されているので、受圧部材82aが駆動油圧室81の油圧P2を受ける面積である受圧面積を増加することができる。これにより、駆動油圧室81の油圧P2、すなわち駆動油圧室81に供給する作動油の圧力が低くても、各作動油供給排出弁70を強制的に開弁することができる。従って、作動油供給排出制御装置130の後述するオイルポンプ132の駆動損失の増加を抑制することができる。受圧部材82aは、駆動油圧室81の油圧P2によって作用するピストン開弁方向押圧力により、駆動油圧室81に対して摺動方向のうち一方である軸方向のうち一方、すなわち開弁方向に摺動する。
ここで、支持部材であるプライマリ隔壁54およびカバー部材56と、受圧部材82aとの間には、例えばゴムにより形成されたOリングなどのピストン用シール部材S2がそれぞれ設けられている。つまり、切欠部54dのうち、駆動油圧室81を構成するプライマリ隔壁54とカバー部材56と受圧部材82aとにより形成される空間部は、ピストン用シール部材S2によりシールされている。
押圧部材82bは、受圧部材82aと、各作動油供給排出弁70の弁体71との間にそれぞれ配置されているものである。各押圧部材82bは、プライマリ隔壁54の各摺動支持穴54cにそれぞれ挿入され、各摺動支持穴54cに対して軸方向に摺動自在に支持されている。つまり、各押圧部材82bは、一方のプーリであるプライマリプーリ50に対して軸方向に摺動自在に支持されている。各押圧部材82bは、一方の端部(同図右側端部)が各作動油供給排出弁70の弁体71とそれぞれ対向し、各弁体71と当接することができる。また、各押圧部材82bは、他方の端部(同図左側端部)が受圧部材82aと対向し、受圧部材82aと当接することができる。従って、各押圧部材82bは、各弁体71および受圧部材82aと接触した状態で、プライマリプーリ50に対して軸方向に摺動することができる。これにより、アクチュエータ80と各作動油供給排出弁70との間で軸方向の力、例えば受圧部材82aに作用するピストン開弁方向押圧力などを伝達することができる。つまり、押圧部材82bは、駆動油圧室81の油圧P2により、受圧部材82aが軸方向のうち一方に摺動することで、受圧部材82aが当接すると、受圧部材82aと同一方向に摺動する。なお、アクチュエータ80は、駆動油圧室81の油圧P2により摺動方向のうち一方に摺動するピストン82を摺動方向のうち他方に摺動させるためのピストン閉弁方向押圧力を発生させるピストン閉弁方向押圧力発生手段を別途備えていても良い。この場合、弁体弾性部材74により発生する閉弁付勢力により弁体71に作用させる弁体閉弁方向押圧力によって、ピストン82を摺動方向のうち他方に摺動させなくても良い。
ここで、各作動油供給排出弁70を開弁する場合は、弁体71が弁座面72から離れる方向、すなわち開弁方向に弁体71に作用する押圧力である弁体開弁方向押圧力が、弁体71が弁座面72に接触する方向、すなわち閉弁方向に弁体71に作用する押圧力である弁体閉弁方向押圧力を超え、弁体71が弁座面72から離れることで行われる。これにより、各作動油供給排出弁70は、プライマリ油圧室55に作動油を供給する際およびプライマリ油圧室55から作動油を排出する際に開弁するものである。
各作動油供給排出弁70は、実施形態1では、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する際およびプライマリ油圧室55から作動油を排出する際に拘わらずアクチュエータ80により強制的に開弁される。つまり、アクチュエータ80は、プライマリ油圧室55から作動油を排出する際に、作動油排出弁である各作動油供給排出弁70を強制的に開弁し、プライマリ油圧室55に作動油を供給する際にも、各作動油供給排出弁70を強制的に開弁する。
アクチュエータ80は、まず、駆動油圧室81の油圧P2によりピストン82の受圧部材82aにピストン開弁方向押圧力を作用させることで、受圧部材82aを摺動方向のうち一方である軸方向のうち一方、すなわち開弁方向に摺動させる。受圧部材82aが開弁方向に摺動すると、受圧部材82aと各押圧部材82bとが接触し、各押圧部材82bが受圧部材82aとともに開弁方向に摺動する。そして、各押圧部材82bが各作動油供給排出弁70の弁体71と接触することで、ピストン82に作用するピストン開弁方向押圧力が上記弁体開弁方向押圧力として、各弁体71にそれぞれ作用する。従って、各作動油供給排出弁70は、弁体開弁方向押圧力が弁体閉弁方向押圧力を超えることによって、弁体71が弁座面72に対して開弁方向に移動し、各作動油供給排出弁70が強制的に開弁される。弁体閉弁方向押圧力は、上記弁体弾性部材74が発生する閉弁付勢力により各弁体71に作用する弾性部材押圧力と、プライマリ油圧室55の油圧P1により各弁体71に閉弁方向に作用する作動油閉弁方向押圧力とが含まれる。
なお、プライマリ油圧室55の油圧P1により弁体71に作用する作動油閉弁方向押圧力は、上述のように閉弁方向の押圧力として弁体71に作用するため、プライマリ油圧室55の油圧P1が上昇しても、弁体71が弁座面72から離れることがない。従って、弁体71に作用する弁体開弁方向押圧力が弁体閉弁方向押圧力を超えない限り、各作動油供給排出弁70の閉弁状態は維持されるため、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55の作動油がこのプライマリ油圧室55に確実に保持される。
従って、従来のベルト式無段変速機のように、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、作動油供給排出制御装置130から一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55へ作動油を供給し続ける場合は、作動油が作動油供給排出制御装置130からプライマリ油圧室55までの作動油供給排出通路に、所定圧力の作動油が存在することとなる。この作動油供給排出通路には、静止部材と可動部材との摺動部が複数箇所含まれており、変速比の固定時において所定圧力の作動油が摺動部から作動油供給排出通路の外部に漏れる虞があった。静止部材とは、ベルト式無段変速機1−1を構成する部材において、回転、摺動などを行わない部材である。例えばトランスアクスル20のトランスアクスルハウジング21、トランスアクスルケース22と、トランスアクスルリヤカバー23である。一方、可動部材とは、ベルト式無段変速機1−1を構成する部材において、回転、摺動などを行う部材であり、例えばプライマリプーリ軸51などである。従って、摺動部とは、例えば、トランスアクスル20のトランスアクスルハウジング21、トランスアクスルケース22、トランスアクスルリヤカバー23などに対して、プライマリプーリ軸51が回転する部分などが含まれる。
これに対して、実施形態1にかかる上記ベルト式無段変速機1−1では、各作動油供給排出弁70は、プライマリ油圧室55と上記摺動部との間に配置されている。つまり、各作動油供給排出弁70を閉弁状態に維持し、プライマリ油圧室55に作動油を保持した状態とした際に、プライマリ油圧室55と、各作動油供給排出弁70との間には、上記固定部材と可動部材との摺動部が存在しない。これにより、この摺動部から作動油が漏れることを抑制することができるので、作動油供給排出制御装置130のオイルポンプ132の動力損失の増加を抑制することができる。
セカンダリプーリ60と最終減速機90との間には、図1に示すように、動力伝達経路100が配置されている。この動力伝達経路100は、セカンダリプーリ軸61と同一軸線上の入力軸101と、この入力軸101と平行なインターミディエイトシャフト102と、カウンタドライブピニオン103、カウンタドリブンギヤ104と、ファイナルドライブピニオン105とにより構成されている。入力軸101およびこの入力軸101に固定されているカウンタドライブピニオン103は、軸受118,119により回転可能に保持されている。インターミディエイトシャフト102は、軸受116,117により回転可能に支持されている。カウンタドリブンギヤ104は、インターミディエイトシャフト102に固定されており、カウンタドライブピニオン103と噛み合わされている。また、ファイナルドライブピニオン105は、インターミディエイトシャフト102に固定されている。
ベルト式無段変速機1−1の最終減速機90は、動力伝達経路100を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクを車輪120,120から路面に伝達するものである。この最終減速機90は、中空部が形成されたデフケース91と、ピニオンシャフト92と、デフ用ピニオン93,94と、サイドギヤ95,96とにより構成されている。
デフケース91は、軸受97,98により回転可能に支持されている。また、このデフケース91の外周には、リングギヤ99が設けられており、このリングギヤ99がファイナルドライブピニオン105と噛み合わされている。ピニオンシャフト92は、デフケース91の中空部に取り付けられている。デフ用ピニオン93,94は、このピニオンシャフト92に回転可能に取り付けられている。サイドギヤ95,96は、このデフ用ピニオン93,94の両方に噛み合わされている。このサイドギヤ95,96は、それぞれドライブシャフト121,122に固定されている。
ベルト式無段変速機1−1のベルト110は、プライマリプーリ50を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクをセカンダリプーリ60に伝達するものである。このベルト110は、図1に示すように、プライマリプーリ50とのプライマリ溝110aとセカンダリプーリ60のセカンダリ溝110bとの間に巻き掛けられている。つまり、ベルト110は、プライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60に巻き掛けられている。また、ベルト110は、例えば多数の金属製の駒と複数本のスチールリングで構成された無端ベルトである。
ドライブシャフト121,122は、その一方の端部にそれぞれサイドギヤ95,96が固定され、他方の端部に車輪120,120が取り付けられている。
作動油供給排出制御装置130は、ベルト式無段変速機1−1および内燃機関10が搭載されている車両において作動油の供給を必要とする作動油供給部分に作動油を供給するものである。作動油供給排出制御装置130は、アクチュエータ80により強制的に各作動油供給排出弁70が開弁されると、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室55から作動油を排出することで変速比を制御するものである。また、本実施形態の作動油供給排出制御装置130は、駆動油圧室81に作動油を供給するものでもある。
作動油供給排出制御装置130は、作動油供給排出制御手段であり、図4に示すように、プライマリ油圧室55、セカンダリ油圧室64、駆動油圧室81などに作動油を供給し、これらの油圧、作動油の供給流量、作動油の排出流量を制御することで、ベルト式無段変速機1−1の変速比を制御するものでもある。なお、同図では、プライマリ油圧室55、セカンダリ油圧室64、駆動油圧室81を除く作動油供給部分(上述した作動油供給部分や、内燃機関10の作動油供給部分(例えば、可動部品との間に摺動部を有する静止部品、可動部品あるいは静止部品との間に摺動部を有する可動部品、加熱される部品やオイルにより駆動する駆動装置))の図示は省略する。作動油供給排出制御装置130は、オイルパン131と、オイルポンプ132と、ライン圧制御装置133と、一定圧制御装置134と、プライマリ油圧室用制御装置135と、駆動油圧室用制御装置136と、セカンダリ油圧室用制御装置137とにより構成されている。
オイルポンプ132は、オイルパン131に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。オイルポンプ132は、油路R1を介してライン圧制御装置133に接続されている。オイルポンプ132によって加圧され、吐出された作動油は、ライン圧制御装置133に供給される。つまり、オイルポンプ132の吐出圧Poutは、ライン圧制御装置133に導入される。オイルポンプ132は、図1に示すように、トルクコンバータ30と前後進切換機構40との間に配置されている。このオイルポンプ132は、ロータ132aと、ハブ132bと、ボディ132cとにより構成されている。このオイルポンプ132は、ロータ132aにより円筒形状のハブ132bを介して、上記ポンプ31に接続されている。また、ボディ132cが上記トランスアクスルケース22に固定されている。また、ハブ132bは、上記中空軸36にスプライン嵌合されている。従って、オイルポンプ132は、内燃機関10からの出力トルクがポンプ31を介してロータ132aに伝達されるので、駆動することができる。つまり、オイルポンプ132は、内燃機関10の回転数の上昇に応じて、吐出される作動油の吐出量が増量、すなわち吐出圧Poutが上昇する。
ライン圧制御装置133は、オイルポンプ132の吐出圧Poutが所定のライン圧PLとなるように調圧するものである。つまり、ライン圧制御装置133は、入力油圧である油路R1の油圧、すなわち吐出圧Poutを調圧して、ライン圧制御装置133からの出力油圧をライン圧PLとするものである。ライン圧制御装置133は、油路R2を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する供給側流量制御弁135cの第2ポート135lと接続され、油路R2および分岐油路R21を介して一定圧制御装置134と接続され、油路R2および分岐油路R22を介してセカンダリ油圧室用制御装置137と接続されている。従って、ライン圧制御装置133により調圧されたライン圧PLは、供給側流量制御弁135cの第2ポート135l、一定圧制御装置134、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137に導入される。ライン圧制御装置133は、内燃機関10の出力トルクに応じてライン圧PLを調圧するものである。ライン圧制御装置133は、オイルポンプ132から吐出された作動油の圧力を調圧する図示しない電磁弁、例えばリニアソレノイド弁が備えられている。ライン圧制御装置133は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により、リニアソレノイド弁の弁開度が制御されることで、ライン圧PLを調圧することができる。
一定圧制御装置134は、ライン圧制御装置133から出力されたライン圧PLを常に一定の圧力となるように調圧するものである。つまり、一定圧制御装置134は、入力油圧である油路R2および分岐油路R21の油圧、すなわちライン圧PLを調圧して、一定圧制御装置134からの出力油圧を一定圧PSとするものである。一定圧制御装置134は、油路R3を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する供給側制御弁135aの第1ポート135eと接続され、油路R3および分岐油路R31を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する排出側制御弁135bの第1ポート135hと接続され、油路R3および分岐油路R32を介して駆動油圧室用制御装置136と接続されている。従って、一定圧制御装置134により調圧された一定圧PSは、供給側制御弁135aの第1ポート135e、排出側制御弁135bの第1ポート135h、駆動油圧室用制御装置136に導入される。
プライマリ油圧室用制御装置135は、プライマリ油圧室55への作動油の供給あるいはプライマリ油圧室55からの作動油の排出を制御するものである。プライマリ油圧室用制御装置135は、実施形態1ではプライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給流量およびプライマリ油圧室55から排出された作動油の排出流量を制御するものである。プライマリ油圧室用制御装置135は、供給側制御弁135aと、排出側制御弁135bと、供給側流量制御弁135cと、排出側流量制御弁135dとにより構成されている。
供給側制御弁135aは、供給側流量制御弁135cによるプライマリ油圧室55に供給される作動油の供給流量制御を行うものである。供給側制御弁135aは、ON/OFFにより、3つのポート、すなわち第1ポート135eと、第2ポート135fと、第3ポート135gとの連通を切り換えるものである。第1ポート135eは、上述のように一定圧制御装置134と接続されている。第2ポート135fは、油路R4を介して供給側流量制御弁135cの後述する第1ポート135kと接続されている。また、第2ポート135fは、油路R4および分岐油路R41を介して排出側流量制御弁135dの後述する第4ポート135uと接続されている。第3ポート135gは、合流油路R51および油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第3ポート135gは、大気圧に解放されている。
供給側制御弁135aは、ONとなると、第1ポート135eと第2ポート135fとが連通する。従って、供給側制御弁135aに導入された一定圧PSが供給側流量制御弁135cの第1ポート135kに導入される(図6参照)。つまり、供給側制御弁135aに導入された一定圧PSが第1ポート135kと連通する供給側流量制御弁135cの後述する制御油圧室135oに導入される。また、供給側制御弁135aに導入された一定圧PSが排出側流量制御弁135dの第4ポート135uに導入される(同図参照)。一方、供給側制御弁135aは、OFFとなると、第2ポート135fと第3ポート135gとが連通する。従って、供給側流量制御弁135cの第1ポート135kは、供給側制御弁135aを介して大気圧に解放される(図8参照)。つまり、供給側流量制御弁135cの第1ポート135kを介して制御油圧室135oが大気圧に解放される。また、排出側流量制御弁135dの第4ポート135uは、供給側制御弁135aを介して大気圧に解放される(同図参照)。ここで、供給側制御弁135aは、図4に示すように、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号によりデューティー制御される。従って、供給側制御弁135aは、ECU140からの制御信号により、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oを一定圧PSから大気圧までの間で調圧することができる。
排出側制御弁135bは、排出側流量制御弁135dによるプライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量制御を行うものである。排出側制御弁135bは、ON/OFFにより、3つのポート、すなわち第1ポート135hと、第2ポート135iと、第3ポート135jとの連通を切り換えるものである。第1ポート135hは、上述のように一定圧制御装置134と接続されている。第2ポート135iは、油路R6を介して排出側流量制御弁135dの後述する第1ポート135rと接続されている。また、第2ポート135iは、油路R6および分岐油路R61を介して供給側流量制御弁135cの後述する第4ポート135nと接続されている。第3ポート135jは、油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第3ポート135jは、大気圧に解放されている。
排出側制御弁135bは、ONとなると、第1ポート135hと第2ポート135iとが連通する。従って、排出側制御弁135bに導入された一定圧PSが排出側流量制御弁135dの第1ポート135rに導入される(図8参照)。つまり、排出側制御弁135bに導入された一定圧PSが第1ポート135rと連通する排出側流量制御弁135dの後述する制御油圧室135vに導入される。また、排出側制御弁135bに導入された一定圧PSが供給側流量制御弁135cの第4ポート135nに導入される(同図参照)。一方、排出側制御弁135bは、OFFとなると、第2ポート135iと第3ポート135jとが連通する。従って、排出側流量制御弁135dの第1ポート135rは、排出側制御弁135bを介して大気圧に解放される(図6参照)。つまり、排出側流量制御弁135dの第1ポート135rを介して制御油圧室135vが大気圧に解放される。また、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nは、排出側制御弁135bを介して大気圧に解放される(同図参照)。ここで、排出側制御弁135bは、図4に示すように、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号によりデューティー制御される。従って、排出側制御弁135bは、ECU140からの制御信号により、排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを一定圧PSから大気圧までの間で調圧することができる。
供給側流量制御弁135cは、プライマリ油圧室55に供給される作動油の供給流量を制御するものである。供給側流量制御弁135cは、第1ポート135kと、第2ポート135lと、第3ポート135mと、第4ポート135nと、制御油圧室135oと、スプール135pと、スプール弾性部材135qとにより構成されている。第1ポート135kは、上述のように供給側制御弁135aの第2ポート135fと接続されている。第2ポート135lは、上述のように、ライン圧制御装置133と接続されている。第3ポート135mは、油路R7を介してプライマリ油圧室55と接続されている。実施形態1では、第3ポート135mは、油路R7および作動油供給排出通路(供給排出側主通路51a、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、各隔壁側連通通路54bおよび各弁配置通路54a)を介してプライマリ油圧室55と接続されている。第4ポート135nは、上述のように排出側制御弁135bの第2ポート135iと接続されている。なお、同図に示すように、供給側制御弁135aの第2ポート135fと供給側流量制御弁135cの第1ポート135kとの間、ライン圧制御装置133と供給側流量制御弁135cの第2ポート135lとの間に、オリフィス、すなわち絞りを設け、供給側制御弁135aから供給側流量制御弁135cへ流入する作動油およびライン圧制御装置133から供給側流量制御弁135cへ流入する作動油の圧力あるいは流量を調整しても良い。
制御油圧室135oは、第1ポート135kと連通するものであり、その油圧によりスプール135pをスプール135pが移動する方向のうち一方向(同図では、上方向)に押圧するスプール開弁方向押圧力をスプール135pに作用させるものである。スプール135pは、プライマリ油圧室用制御装置135内で移動自在に支持されており、移動方向のうち一方向に移動することで第2ポート135lと第3ポート135mとを連通し、移動方向のうち他方向に移動することで、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を遮断するものである。スプール弾性部材135qは、スプール135pと、スプール135pに対して静止している部材との間に付勢された状態で配置されている。従って、スプール弾性部材135qは、スプール付勢力を発生しており、スプール付勢力によりスプール135pをスプール135pが移動する方向のうち他方向(同図では、下方向)に押圧するスプール閉弁方向押圧力をスプール135pに作用させるものである。
供給側流量制御弁135cは、スプール135pに作用する上記スプール開弁方向押圧力が上記スプール閉弁方向押圧力を超えることで、スプール135pが移動方向のうち一方向に移動する。ここで、供給側流量制御弁135cは、スプール135pの移動方向のうち一方向への移動量の増加に伴い、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通の度合い、すなわち第2ポート135lと第3ポート135mとを連通する流路の流路断面積が増加する。つまり、供給側流量制御弁135cは、供給側制御弁135aにより調圧された制御油圧室135oの油圧により、スプール135pが移動することで、2つのポート、すなわち第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を制御し、供給流量を制御するものである。
排出側流量制御弁135dは、プライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御するものである。排出側流量制御弁135dは、第1ポート135rと、第2ポート135sと、第3ポート135tと、第4ポート135uと、制御油圧室135vと、スプール135wと、スプール弾性部材135xとにより構成されている。第1ポート135rは、上述のように排出側制御弁135bの第2ポート135iと接続されている。第2ポート135sは、合流油路R52、合流油路R51および油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第2ポート135sは、大気圧に解放されている。第3ポート135tは、分岐油路R71および油路R7を介してプライマリ油圧室55と接続されている。実施形態1では、第3ポート135tは、分岐油路R71、油路R7、および作動油供給排出通路(供給排出側主通路51a、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、各隔壁側連通通路54bおよび各弁配置通路54a)を介してプライマリ油圧室55と接続されている。第4ポート135uは、上述のように供給側制御弁135aの第2ポート135fと接続されている。なお、同図に示すように、排出側制御弁135bの第2ポート135iと排出側流量制御弁135dの第1ポート135rとの間に、オリフィス、すなわち絞りを設け、排出側制御弁135bから排出側流量制御弁135dへ流入する作動油の圧力あるいは流量を調整しても良い。
制御油圧室135vは、第1ポート135rと連通するものであり、その油圧によりスプール135wをスプール135wが移動する方向のうち一方向(同図では、上方向)に押圧するスプール開弁方向押圧力をスプール135wに作用させるものである。スプール135wは、プライマリ油圧室用制御装置135内で移動自在に支持されており、移動方向のうち一方向に移動することで第2ポート135sと第3ポート135tとを連通し、移動方向のうち他方向に移動することで、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を遮断するものである。スプール弾性部材135xは、スプール135wと、スプール135wに対して静止している部材との間に付勢された状態で配置されている。従って、スプール弾性部材135xは、スプール付勢力を発生しており、スプール付勢力によりスプール135wをスプール135wが移動する方向のうち他方向(同図では、下方向)に押圧するスプール閉弁方向押圧力をスプール135wに作用させるものである。
排出側流量制御弁135dは、スプール135wに作用する上記スプール開弁方向押圧力が上記スプール閉弁方向押圧力を超えることで、スプール135wが移動方向のうち一方向に移動する。ここで、排出側流量制御弁135dは、スプール135wの移動方向のうち一方向への移動量の増加に伴い、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通の度合い、すなわち第2ポート135sと第3ポート135tとを連通する流路の流路断面積が増加する。つまり、排出側流量制御弁135dは、排出側制御弁135bにより調圧された制御油圧室135vの油圧により、スプール135wが移動することで、2つのポート、すなわち第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を制御し、排出流量を制御するものである。
駆動油圧室用制御装置136は、駆動油圧室81の油圧P2を調圧するものである。駆動油圧室用制御装置136には、上述のように、一定圧制御装置134から一定圧PSが導入される。また、駆動油圧室用制御装置136は、油路R8を介して駆動油圧室81と接続されている。実施形態1では、駆動油圧室用制御装置136は、油路R8、駆動側主通路51bを介して駆動油圧室81と接続されている。駆動油圧室用制御装置136は、図示しないON/OFF弁が備えられている。駆動油圧室用制御装置136は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により、ON/OFF弁をON/OFF制御する。駆動油圧室用制御装置136は、ON制御される、すなわち切替弁がONとされると、分岐油路R32と油路R8とが連通し、駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧PSが駆動油圧室81に導入され、駆動油圧室81の油圧P2が一定圧PSとなる。一方、駆動油圧室用制御装置136は、OFF制御される、すなわちON/OFF弁がOFFとされると、分岐油路R32と油路R8との連通が遮断されるとともに、油路R8が外部に解放され、駆動油圧室81の油圧P2が大気圧となる。
セカンダリ油圧室用制御装置137は、セカンダリ油圧室64への作動油の供給あるいはセカンダリ油圧室64からの作動油の排出を制御するものである。セカンダリ油圧室用制御装置137には、上述のように、ライン圧制御装置133からライン圧PLが導入される。セカンダリ油圧室用制御装置137は、油路R9を介してセカンダリ油圧室64と接続されている。実施形態1では、セカンダリ油圧室用制御装置137は、油路R9、セカンダリプーリ軸61の図示しない作動油通路および図示しない作動流体供給孔を介してセカンダリ油圧室64と接続されている。セカンダリ油圧室用制御装置137は、図示しない流量制御弁などを備える。セカンダリ油圧室用制御装置137は、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号により制御され導入されたライン圧PLを調圧する。
作動油供給排出制御装置130は、上述のように、少なくとも内燃機関10の運転制御を行うECU(Electronic Control Unit)140と接続されている。ECU140は、作動油供給排出制御装置130と内燃機関10とに接続されており、作動油供給排出制御装置130および内燃機関10を制御するものである。従って、作動油供給排出制御装置130は、ECU140からの制御信号に基づいて、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、アクチュエータ80により強制的に各作動油供給排出弁70を開弁し、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室55から作動油を排出し、少なくともベルト式無段変速機1−1の変速比を制御するものである。また、ECU140は、内燃機関10に出力した制御信号により、内燃機関10の図示しない燃料噴射弁、点火プラグ、スロットル弁を制御することで、内燃機関10の出力トルクを制御する。
入力回転数センサ150は、変速比検出手段の一部を構成するものでもある。入力回転数センサ150は、駆動源からの駆動力が入力されるプーリ、すなわち内燃機関10からの出力トルクが入力されるプライマリプーリ50の入力回転数Ninを検出するものである。入力回転数センサ150は、プライマリプーリ50のプライマリプーリ軸51の回転数を検出し、プライマリプーリ軸51の回転数を入力回転数Ninとするものである。入力回転数センサ150は、同図に示すように、ECU140と接続されている。従って、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninは、ECU140に出力される。なお、入力回転数センサ150は、プライマリプーリ軸51の回転数を入力回転数Ninとするものに限られるものではなく、例えば内燃機関10の機関回転数Neを検出し、機関回転数Neから入力回転数Ninを算出するものであっても良い。
出力回転数センサ160は、変速比検出手段の一部を構成するものでもある。出力回転数センサ160は、プライマリプーリ50に入力された駆動源からの駆動力、すなわち内燃機関10の出力トルクがベルト110を介して伝達されるセカンダリプーリ60の出力回転数Noutを検出するものである。出力回転数センサ160は、実施形態1では、セカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61の回転数を検出し、セカンダリプーリ軸61の回転数を出力回転数Noutとするものである。出力回転数センサ160は、同図に示すように、ECU140と接続されている。従って、出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutは、ECU140に出力される。
ここで、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Nin(言い換えれば、入力回転速度)と、出力回転数センサ160により検出された出力回転数Nout(言い換えれば、出力回転速度)との比は、ベルト式無段変速機1−1の変速比となる。つまり、入力回転数センサ150および出力回転数センサ160は、変速比を検出するものである。従って、ECU140は、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninおよび出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutが入力されることで、検出された変速比γが入力されることとなる。
次に、実施形態1にかかるベルト式無段変速機1−1の動作について説明する。まず、一般的な車両の前進、後進について説明する。車両に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が前進ポジションを選択した場合は、ECU140が作動油供給排出制御装置130から供給された作動油によりフォワードクラッチ42をON、リバースブレーキ43をOFFとし、前後進切換機構40を制御する。これにより、インプットシャフト38とプライマリプーリ軸51が直結状態となる。つまり、遊星歯車装置41のサンギヤ44とリングギヤ46を直接連結し、内燃機関10のクランクシャフト11の回転方向と同一方向にプライマリプーリ軸51を回転させ、この内燃機関10からの出力トルクをプライマリプーリ50に伝達する。プライマリプーリ50に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、ベルト110を介してセカンダリプーリ60に伝達され、このセカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61を回転させる。
セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関10の出力トルクは、中間部材67から動力伝達経路100の入力軸101、カウンタドライブピニオン103およびカウンタドリブンギヤ104を介して、インターミディエイトシャフト102に伝達され、インターミディエイトシャフト102を回転させる。インターミディエイトシャフト102に伝達された出力トルクは、ファイナルドライブピニオン105およびリングギヤ99を介して最終減速機90のデフケース91に伝達され、このデフケース91を回転させる。デフケース91に伝達された内燃機関10からの出力トルクは、デフ用ピニオン93,94およびサイドギヤ95,96を介してドライブシャフト121,122に伝達され、その端部に取り付けられた車輪120,120に伝達され、車輪120,120を図示しない路面に対して回転させ、車両は前進する。
一方、車両に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が後進ポジションを選択した場合は、ECU140が、作動油供給排出制御装置130から供給された作動油によりフォワードクラッチ42をOFF、リバースブレーキ43をONとし、前後進切換機構40を制御する。これにより、遊星歯車装置41の切換用キャリヤ47がトランスアクスルケース22に固定され、各ピニオン45が自転のみを行うように切換用キャリヤ47に保持される。従って、リングギヤ46がインプットシャフト38と同一方向に回転し、このリングギヤ46と噛み合っている各ピニオン45もインプットシャフト38と同一方向に回転し、この各ピニオン45と噛み合っているサンギヤ44がインプットシャフト38と逆方向に回転する。つまり、サンギヤ44に連結されているプライマリプーリ軸51は、インプットシャフト38と逆方向に回転する。これにより、セカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61、入力軸101、インターミディエイトシャフト102、デフケース91、ドライブシャフト121,122などは、運転者が前進ポジションを選択した場合とは逆方向に回転し、車両が後進する。
ここで、ECU140は、車両の速度や運転者のアクセル開度などの諸条件とECU140の記憶部に記憶されているマップ(例えば、機関回転数とスロットルバルブのスロットル開度に基づく最適燃費曲線など)とに基づいて、内燃機関10の運転状態が最適となるように、作動油供給排出制御装置130を介して、ベルト式無段変速機1−1の変速比を制御する。ここで、ベルト式無段変速機1−1の変速比の制御には、変速比の変更と、変速の固定(変速比γ定常)とがある。変速比の変更、変速比の固定は、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで行われる。なお、作動油供給排出制御装置130を用いた変速比の制御は、制御周期ごとに行われるものである。
ここで、図5は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比減少時(アップシフト時)におけるプライマリプーリの要部断面図、図6は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比減少時(アップシフト時)における作動油供給排出制御装置の動作を示す図、図7は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比増加時(ダウンシフト時)におけるプライマリプーリの要部断面図、図8は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比増加時(ダウンシフト時)における作動油供給排出制御装置の動作を示す図である。
ECU140は、車両の走行状態が安定している場合など、大幅な変速比の変更を行う必要がないと、変速比を固定、すなわち変速比を定常とする制御を行う。ECU140は、変速比を固定する状態であると判断すると、各作動油供給排出弁(逆止弁)70を閉弁する。つまり、ECU140は、各作動油供給排出弁70を閉弁状態にして、変速比を固定する。
ここで、各作動油供給排出弁70を閉弁状態にして変速比を固定する場合、すなわち閉弁状態における変速比の固定は、プライマリ油圧室55へ作動油を供給せず、かつこのプライマリ油圧室55から作動油を排出せず、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定とし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する移動を規制することで行われる。
各作動油供給排出弁70の閉弁状態における変速比の固定時では、図2に示すように、各作動油供給排出弁70を閉弁し、各作動油供給排出弁70を介したプライマリ油圧室55への作動油の供給および各作動油供給排出弁70を介したプライマリ油圧室55からの作動油の排出を禁止する。具体的には、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136をOFF制御する。
駆動油圧室用制御装置136がECU140によりOFF制御されると、駆動油圧室81は、大気圧に解放され、駆動油圧室81の油圧P2がほぼ大気圧POFFとなる。従って、各作動油供給排出弁70の弁体71には、弁体開弁方向押圧力が作用せず、弁体弾性部材74およびプライマリ油圧室55の油圧P1による弁体閉弁方向押圧力のみが作用することとなり、弁体71が閉弁方向に移動し弁座面72と接触し、各作動油供給排出弁70が閉弁する。なお、受圧部材82aには、弁体閉弁方向押圧力のみが、各弁体71および各押圧部材82bを介して作用することとなるため、ピストン82が摺動方向のうち他方向、すなわち閉弁方向に摺動する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御されることで、供給側流量制御弁135cによるプライマリ油圧室55への作動油の供給流量制御を行う。供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御されると、図4に示すように、OFFを維持し、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oおよび排出側流量制御弁135dの第4ポート135uを大気圧に解放する。従って、供給側流量制御弁135cは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135pに作用するため、スプール135pが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持されるため、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通しない。これにより、供給側流量制御弁135cが閉弁を維持し、プライマリ油圧室55への作動油の供給流量が0となる。これにより、各作動油供給排出弁70を介したプライマリ油圧室55への作動油の供給が禁止される。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御されることで、排出側流量制御弁135dによるプライマリ油圧室55からの作動油の排出流量制御を行う。排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御されると、OFFを維持し、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nおよび排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを大気圧に解放する。従って、排出側流量制御弁135dは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135wに作用するため、スプール135wが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持されるため、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通しない。これにより、排出側流量制御弁135dが閉弁を維持し、プライマリ油圧室55からの作動油の排出流量が0となる。これにより、各作動油供給排出弁70を介したプライマリ油圧室55からの作動油の排出が禁止される。
以上のように、各作動油供給排出弁70の閉弁状態における変速比の固定時には、プライマリ油圧室55への作動油の供給およびこのプライマリ油圧室55からの作動油の排出を禁止することで、プライマリ油圧室55内の作動油を保持する。ここで、閉弁状態における変速比の固定時においても、ベルト110のベルト張力が変化するため、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が変化しようとし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化する虞がある。しかし上述のように、プライマリ油圧室55内には、作動油が保持された状態となるため、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置が変化しようとすると、プライマリ油圧室55の油圧P1は変化するがプライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置は一定に維持される。従って、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定に維持するために、プライマリ油圧室55に作動油を供給することによるプライマリ油圧室55の油圧P1の上昇を行わなくても良い。これにより、閉弁状態における変速比の固定時に、プライマリ油圧室55に作動油を供給するためにオイルポンプ132を駆動させなくても良いため、オイルポンプ132の駆動損失の増加を抑制することができる。
次に、ECU140は、変速比を固定する状態でないと判断すると、駆動油圧室81の油圧P2を一定圧PSとして、各作動油供給排出弁70を開弁する。つまり、ECU140は、変速比を固定する状態でない、すなわち変速比を変更する状態では、まず各作動油供給排出弁70をアクチュエータ80により強制的に開弁する。具体的には、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136をON制御する。
駆動油圧室用制御装置136がECU140によりON制御されると、駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧PSが駆動油圧室81に導入され、駆動油圧室81の油圧P2が一定圧PSとなる。アクチュエータ80は、駆動油圧室81の油圧P2によりピストン82に作用するピストン開弁方向押圧力がピストン82から各作動油供給排出弁70の弁体71に伝達され、ピストン開弁方向押圧力を弁体開弁方向押圧力として各作動油供給排出弁70の弁体71にそれぞれ作用させる。従って、各作動油供給排出弁70は、図5および図7に示すように、アクチュエータ80により弁体71が弁座面72に対して開弁方向に移動され、開弁する。
次に、ECU140は、図5に示すように、作動油供給排出制御装置130により変速比変更制御を行う。変速比変更制御は、主に作動油供給排出制御装置130からプライマリ油圧室55への作動油の供給、あるいはプライマリ油圧室55から作動油供給排出制御装置130を介してプライマリプーリ50の外部への作動油の排出により行われ、プライマリ可動シーブ53がプライマリプーリ軸51の軸方向に摺動し、プライマリ固定シーブ52とこのプライマリ可動シーブ53との間の間隔、すなわちプライマリ溝110aの幅が調整される。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が変化し、プライマリプーリ50の回転数、すなわち入力回転数Ninとセカンダリプーリ60の回転数、すなわち出力回転数Noutとの比である変速比が無段階(連続的)に制御される。
なお、セカンダリプーリ60においては、ECU140によりセカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、セカンダリ油圧室64の油圧を調圧し、セカンダリ固定シーブ62とこのセカンダリ可動シーブ63とによりベルト110を挟み付けるベルト挟圧力が調整される。これにより、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60との間に巻き掛けられたベルト110のベルト張力が制御される。
ここで、変速比変更制御には、アップシフト、すなわち変速比を減少させる変速比減少変更制御と、ダウンシフト、すなわち変速比を増加させる変速比増加変更制御とがある。以下、それぞれについて説明する。
変速比減少変更制御(アップシフト制御)では、作動油供給排出制御装置130からプライマリ油圧室55へ作動油を供給し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に摺動(移動)させることで行われる。図5に示すように、アクチュエータ80により強制的に開弁された各作動油供給排出弁70を介して、作動油供給排出制御装置130からプライマリ油圧室55に作動油を供給する。具体的には、ECU140は、減少変速比と変速速度とを算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を作動油供給排出制御装置130に出力する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御されることで、供給側流量制御弁135cによるプライマリ油圧室55への作動油の供給流量制御を行う。供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御されると、図6に示すように、ONとOFFとを繰り返し、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oの制御油圧を供給時所定圧に調圧し、排出側流量制御弁135dの第4ポート135uに供給時所定圧を導入する。ここで、供給時所定圧は、スプール135pに作用するスプール開弁方向押圧力により、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を制御することで制御される供給流量を減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量とすることができる圧力である。従って、供給側流量制御弁135cは、制御油圧室135oの制御油圧、すなわち供給時所定圧に基づいたスプール開弁方向押圧力がスプール閉弁方向押圧力を超えるため、同図の矢印Aに示すように、スプール135pが移動方向のうち一方向へ移動し、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通する。これにより、供給側流量制御弁135cが開弁され、プライマリ油圧室55への作動油の供給流量が減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量となる。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御されることで、排出側流量制御弁135dによるプライマリ油圧室55からの作動油の排出流量制御を行う。排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御されると、OFFを維持し、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nおよび排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを大気圧に解放する。従って、排出側流量制御弁135dは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135wに作用するため、スプール135wが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持され、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通しない。これにより、排出側流量制御弁135dが閉弁を維持し、プライマリ油圧室55からの作動油の排出流量が0となる。
上述のように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70が強制的に開弁されている。従って、供給側流量制御弁135cにライン圧PLで導入された作動油(ライン圧制御装置133と供給側流量制御弁135cの第2ポート135lとの間に、オリフィスが設けられている場合は、ライン圧PLから調整された圧力で挿入された作動油)は、供給側流量制御弁135cにより減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量に制御されて、図5の矢印Bに示すように、油路R7を介して作動油供給排出通路の供給排出側主通路51aに流入する。供給排出側主通路51aに流入した作動油は、供給排出側主通路51aから各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、各隔壁側連通通路54b、各弁配置通路54aを介して、プライマリ油圧室55に供給される。つまり、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する際に、プライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給圧力Pinにより、作動油排出弁と同一である作動油供給弁である各作動油供給排出弁70を開弁しなくても良い。従って、プライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給圧力を増加するために、ライン圧制御装置133により供給側流量制御弁135cに導入されるライン圧PLを増加することを抑制することができる。各作動油供給排出弁70を介して供給された作動油によりプライマリ油圧室55の油圧P1が上昇し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が上昇し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が増加し、セカンダリプーリ60におけるベルト110の接触半径が減少し、変速比が減少され、減少変速比となる。
変速比増加変更制御(ダウンシフト制御)では、プライマリ油圧室55から作動油供給排出制御装置130を介して作動油を外部に排出し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側と反対側に摺動(移動)させることで行われる。図7に示すように、アクチュエータ80により強制的に開弁された各作動油供給排出弁70を介して、プライマリ油圧室55から作動油を排出する。具体的には、ECU140は、増加変速比と変速速度とを算出し、これらに基づいた変速比の制御信号を作動油供給排出制御装置130に出力する。
プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御されることで、供給側流量制御弁135cによるプライマリ油圧室55への作動油の供給流量制御を行う。供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御されると、図8に示すように、OFFを維持し、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oおよび排出側流量制御弁135dの第4ポート135uを大気圧に解放する。従って、供給側流量制御弁135cは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135pに作用するため、スプール135pが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持されるため、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通しない。これにより、供給側流量制御弁135cが閉弁を維持し、プライマリ油圧室55への作動油の供給流量が0となる。
一方、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御されることで、排出側流量制御弁135dによるプライマリ油圧室55からの作動油の排出流量制御を行う。排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御されると、ONとOFFとを繰り返し、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nに排出時所定圧を導入し、排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vの制御油圧を排出時所定圧に調圧する。ここで、排出時所定圧は、スプール135wに作用するスプール開弁方向押圧力により、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を制御することで制御される排出流量を増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量とすることができる圧力である。従って、排出側流量制御弁135dは、制御油圧室135vの制御油圧、すなわち排出時所定圧に基づいたスプール開弁方向押圧力がスプール閉弁方向押圧力を超えるため、同図の矢印Cに示すように、スプール135wが移動方向のうち一方向へ移動し、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通する。これにより、排出側流量制御弁135dが開弁され、プライマリ油圧室55からの作動油の排出流量が減少変速比と変速速度とに基づいた排出流量となる。
上述のように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70が強制的に開弁されている。従って、プライマリ油圧室55内の作動油は、図7の矢印Dに示すように、プライマリ油圧室55から作動油供給排出通路の各弁配置通路54a、各隔壁側連通通路54b、空間部T1,T2、各軸側連通通路51cを介して供給排出側主通路51aに流入する。供給排出側主通路51aに流入したプライマリ油圧室55内の作動油は、油路R7および分岐油路R71を介して排出側流量制御弁135dに流入し、排出側流量制御弁135dにより増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量に制御されて、合流油路R52,R51および油路R5を介して、オイルパン131、すなわちプライマリ油圧室55の外部に排出される。従って、各作動油供給排出弁70を介してプライマリ油圧室55から作動油が排出されることにより、プライマリ油圧室55の油圧P1が減少し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が減少し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側と反対側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が減少し、セカンダリプーリ60におけるベルト110の接触半径が増加し、変速比が増加され、増加変速比となる。
ここで、本実施形態のベルト式無段変速機1−1では、変速比が変更される変速比変更状態から変速比が固定される際の変速比固定制御において、作動油供給排出制御装置130が作動油供給排出弁70を閉弁し、この作動油供給排出弁70の閉弁完了後に作動油の元圧となるライン圧PLを所定圧PL0まで減圧することで、適正な変速比制御を実現している。
作動油供給排出制御装置130は、上述のように、プライマリ油圧室55に作動油を供給、あるいはこのプライマリ油圧室55から作動油を排出する変速比変更時に作動油供給排出弁70をアクチュエータ80により強制的に開弁すると共に、変速比を固定する変速比固定時に作動油供給排出弁70を閉弁する。そして、作動油供給排出制御装置130は、変速比固定制御においてこの作動油供給排出弁70の閉弁完了後に作動油の元圧となるライン圧PLを所定圧PL0まで減圧する。
ここで、図9は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比固定制御を説明するフローチャート、図10は、本発明の実施形態1に係るベルト式無段変速機の変速比固定制御の一例を説明するタイムチャートであり、縦軸をプライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示のON・OFF(言い換えれば、作動油供給排出弁70の閉弁指示のON・OFF)、変速比γ、駆動油圧室81の油圧P2及び作動油供給排出制御装置130のライン圧PL、横軸を時間軸としている。この図9及び図10を参照してベルト式無段変速機1−1の変速比固定制御を説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。また、図10では、変速比γは、実際の実変速比を実線、変速制御の目標となる目標変速比を一点鎖線で図示している。
まず、ECU140は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示(変速時固定指示)があるか否かを判定する(S100)。言い換えれば、ECU140は、変速比を変更し、その変速比を固定するため作動油供給排出弁70の閉弁動作の実行が必要であるか否かを判定する。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示がないと判定された場合(S100:No)、この変速比固定制御を終了する。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示があると判定された場合(S100:Yes)、ECU140は、閉じ込み指示フラグをON(言い換えれば、閉弁指示フラグをON)に設定する(図10の時刻t11)。
次に、ECU140は、変速比安定制御として、通常の変速比制御により実変速比が目標変速比(固定したい変速比)に収束するように変速比を変更すると共に作動油供給排出弁70が開弁している状態でプライマリ油圧室55内の作動油の油圧により変速比を固定する制御を実行する(S102、例えば、図10の時刻t11から時刻t12)。この間、作動油供給排出制御装置130は、ECU140により駆動油圧室用制御装置136がONとなるように制御されており、この駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧PSが駆動油圧室81に導入され、駆動油圧室81の油圧P2が一定圧PSとなっている。これにより、各作動油供給排出弁70は、アクチュエータ80により強制的に開弁された状態(変速比変更状態)となっている。
次に、ECU140は、実変速比が安定したか否かを判定する(S104)。ECU140は、例えば、現在の実変速比と変速制御の目標となる目標変速比との偏差の絶対値が予め設定される所定値より小さい状態が予め設定される所定期間継続した際に変速比が安定していると判定することができる。ここで、予め設定される所定値と所定期間とは、変速比が安定しているか否かを区別できる値に適宜設定すればよい。なお、ECU140は、これに限らず種々の公知の方法で現在の変速比が安定しているか否かを判定すればよい。
現在の実変速比が安定していないと判定された場合(S104:No)、S102に戻って以降の処理を繰り返し実行する。現在の実変速比が安定していると判定された場合(S104:Yes)、すなわち、実変速比と目標変速比との偏差の絶対値が所定値より小さい状態でこの実変速比が安定している期間が所定期間継続した際には、ECU140は、作動油供給排出弁70の閉弁を許可する。そして、作動油供給排出制御装置130は、ECU140により駆動油圧室用制御装置136がOFFとなるように制御され、これにより、油路R8を外部に解放して駆動油圧室81を大気圧に解放することで、駆動油圧室81の油圧P2がほぼ大気圧POFFとなるように、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作、言い換えれば、作動油供給排出弁70の閉弁動作を実行する(S106、図10の時刻t13)。これにより、各作動油供給排出弁70が閉弁され、変速比が固定される。
次に、ECU140は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作、言い換えれば、作動油供給排出弁70の閉弁動作が完了したか否かを判定する(S108)。ECU140は、例えば、駆動油圧室用制御装置136のOFF制御後、すなわち、駆動油圧室81に大気圧POFFが導入された後、予め設定された一定期間が経過した場合に、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作(作動油供給排出弁70の閉弁動作)が完了したと判定することができる。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了していないと判定された場合(S108:No)、すなわち、駆動油圧室用制御装置136のOFF制御後、一定期間経過していない場合、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136のOFF制御後一定期間が経過するまでS108の処理を繰り返し実行する。なお、ECU140は、これに限らず種々の公知の方法でプライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了したか否かを判定すればよい。
プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作(作動油供給排出弁70の閉弁動作)が完了したと判定された場合(S108:Yes)、すなわち、駆動油圧室用制御装置136のOFF制御後、一定期間経過した場合、作動油供給排出制御装置130は、ライン圧制御装置133により作動油の元圧であるライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1から所定圧PL0まで減圧して(S110、図10の時刻t14)、この変速比固定制御を終了する。
これにより、上記のベルト式無段変速機1−1は、実変速比が目標変速比(固定したい変速比)に収束するように変速比が変更され、ECU140により実変速比が安定したと判定された後に、作動油供給排出弁70の閉弁が許可され、作動油供給排出制御装置130により、各作動油供給排出弁70が閉弁され変速比が固定されることで、変速比固定時に実変速比が誤った変速比で固定されることを確実に防止することができる。さらに、作動油供給排出制御装置130が作動油供給排出弁70の閉弁完了後(例えば、図10の時刻t14)に作動油の元圧となるライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1から所定圧PL0まで減圧することで、オイルポンプ132の負荷を低減することができることから、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加を抑制することができ、燃費を向上させることができる。そして、作動油供給排出制御装置130が作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを減圧することで、ライン圧PLの減圧によりプライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給圧力Pinや一定圧PSが低減されても実変速比が変動することを確実に防止することができる。この結果、適正に変速比を制御することができる。
ここで、上記ライン圧PLを減圧させる際の所定圧PL0は、例えば、通常の変速制御時の要求圧PL1よりも十分に低い圧力に設定される。ここでは、この所定圧PL0は、例えば、作動油供給排出弁70の機械的精度(例えば、弁体71、弁座面72の面粗度や歪み等)や弁体71と弁座面72との接触部分へのごみ等の付着などを勘案して、仮に作動油供給排出弁70の閉弁状態で弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分があったとしても、プライマリ油圧室55の油圧P1と作動油供給排出通路(供給排出側主通路51a、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、各隔壁側連通通路54bおよび各弁配置通路54a)の油圧、すなわち、供給圧力Pinとの圧力差が、プライマリ油圧室55から作動油が漏れない程度の圧力差となるように、通常の変速制御時の要求圧PL1に対して低減された圧力として実験等により予め設定しておけばよい。これにより、ライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1から所定圧PL0まで減圧した際に実変速比が変動することをより確実に防止することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−1によれば、2つのプーリとしてのプライマリプーリ50及びセカンダリプーリ60と、プライマリプーリ50、セカンダリプーリ60に巻き掛けられ、内燃機関10からの駆動力を伝達するベルト110と、プライマリプーリ50、セカンダリプーリ60それぞれに形成され、油圧によりベルト110に対してベルト挟圧力を発生するプライマリ油圧室55及びセカンダリ油圧室64と、一方の挟圧力発生油圧室としてのプライマリ油圧室55に作動油を供給する方向に開弁する作動油供給排出弁70と、駆動油圧室81の作動油の油圧により、ピストン82を駆動油圧室81に対する摺動方向のうち一方に摺動させることで、作動油供給排出弁70を開弁させるアクチュエータ80と、プライマリ油圧室55に作動油を供給、あるいはこのプライマリ油圧室55から作動油を排出して変速比を変更する変速比変更時に作動油供給排出弁70をアクチュエータ80により開弁すると共に、変速比を固定する変速比固定時に作動油供給排出弁70を閉弁し、この作動油供給排出弁70の閉弁完了後に作動油の元圧となるライン圧PLを所定圧PL0まで減圧する作動油供給排出制御装置130とを備える。
したがって、作動油供給排出制御装置130が作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを所定圧PL0まで減圧することで、オイルポンプ132の負荷を低減することができることから、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加を抑制することができ、燃費を向上させることができると共に、その上で、ライン圧PLの減圧により実変速比が変動することを防止することができるので、適正に変速比を制御することができる。
(実施形態2)
図11は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比固定制御を説明するフローチャート、図12は、本発明の実施形態2に係るベルト式無段変速機の変速比固定制御の一例を説明するタイムチャートである。実施形態2に係るベルト式無段変速機は、実施形態1に係るベルト式無段変速機と略同様の構成であるが、所定の条件となった場合に作動油供給排出制御手段がライン圧を復帰させる点で実施形態1に係るベルト式無段変速機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1乃至図8を参照する。
実施形態2に係るベルト式無段変速機1−2の作動油供給排出制御手段としての作動油供給排出制御装置130は、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを減圧する際に、変速比検出手段としての入力回転数センサ150、出力回転数センサ160により変速比の変化が検出された場合に、このライン圧PLを復帰させる。本実施形態の作動油供給排出制御装置130は、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを減圧する際に変速比の変化が検出された場合に、ライン圧制御装置133によりライン圧PLを減圧する前のもとのライン圧、すなわち、通常の変速制御時の要求圧PL1まで復帰(上昇)させる。
これにより、仮に、作動油供給排出弁70の機械的精度(例えば、弁体71、弁座面72の面粗度や歪み等)や弁体71と弁座面72との接触部分へのごみ等の付着などにより、作動油供給排出弁70の閉弁状態で弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分が形成され、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生しうるとしても、変速比検出手段としての入力回転数センサ150、出力回転数センサ160が変速比の変化を検出することで、この作動油供給排出弁70の閉弁状態におけるプライマリ油圧室55からの作動油漏れを検出することができる。すなわち、作動油供給排出弁70の閉弁状態において、上記のように弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分が形成されプライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込みが適正に実行されずプライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生している場合、実変速比が増加しダウンシフトすることから、変速比検出手段としての入力回転数センサ150、出力回転数センサ160がこの実変速比の増加、すなわち、ダウンシフトを検出することでプライマリ油圧室55からの作動油漏れを検出することができる。
そして、作動油供給排出制御装置130は、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160により変速比の変化が検出された場合に、このライン圧PLを減圧する前の通常の変速制御時の要求圧PL1まで復帰、すなわち、上昇させることで、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作(作動油供給排出弁70の閉弁動作)を中止し通常の変速制御に復帰することから、プライマリ油圧室55からの作動油漏れにより実変速比が変動することを抑制し実変速比を適正な変速比で維持することができ、適正に変速比を制御することができる。
ここで、本実施形態のベルト式無段変速機1−2では、作動油供給排出制御装置130は、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを要求圧PL1から所定圧PL0まで減圧する際には、このライン圧PLを徐々に減圧するようにしている。これにより、作動油供給排出制御装置130がライン圧PLを要求圧PL1から所定圧PL0まで減圧する際にこのライン圧PLを徐々に減圧することから、仮に上記のように作動油供給排出弁70の閉弁状態で弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分が形成され、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生したとしても、急激に実変速比が変動することを抑制することができる。
ここで、ライン圧PLを徐々に減圧する際の減圧勾配(単位時間あたりのライン圧PLの減少速度)は、例えば、変速比の変化を検出している入力回転数センサ150、出力回転数センサ160の応答性や時間分解能、作動油供給排出制御装置130の油圧系の応答遅れ等を考慮して、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160によりプライマリ油圧室55からの作動油漏れによる実変速比の変化を確実に検出可能な減圧勾配とすればよい。これにより、確実にプライマリ油圧室55からの作動油漏れによる実変速比の変化を検出することができる。
次に、図11及び図12を参照してベルト式無段変速機1−2の変速比固定制御を説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ECU140は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示(変速時固定指示)があるか否かを判定する(S200)。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示がないと判定された場合(S200:No)、この変速比固定制御を終了する。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示があると判定された場合(S200:Yes)、ECU140は、閉じ込み指示フラグをON(言い換えれば、閉弁指示フラグをON)に設定する(図12の時刻t21)。
次に、ECU140は、変速比安定制御として、通常の変速比制御により実変速比が目標変速比(固定したい変速比)に収束するように変速比を変更すると共に作動油供給排出弁70が開弁している状態でプライマリ油圧室55内の作動油の油圧により変速比を固定する制御を実行する(S202、例えば、図12の時刻t21から時刻t22)。
次に、ECU140は、実変速比が安定したか否かを判定する(S204)。
現在の実変速比が安定していないと判定された場合(S204:No)、S202に戻って以降の処理を繰り返し実行する。現在の実変速比が安定していると判定された場合(S204:Yes)、ECU140は、作動油供給排出弁70の閉弁を許可する。そして、作動油供給排出制御装置130は、ECU140により駆動油圧室用制御装置136がOFFとなるように制御され、これにより、油路R8を外部に解放して駆動油圧室81を大気圧に解放することで、駆動油圧室81の油圧P2がほぼ大気圧POFFとなるように、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作、言い換えれば、作動油供給排出弁70の閉弁動作を実行する(S206、図12の時刻t23)。
次に、ECU140は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了したか否かを判定する(S208)。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了していないと判定された場合(S208:No)、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了するまでS208の処理を繰り返し実行する。
プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了したと判定された場合(S208:Yes)、作動油供給排出制御装置130は、ライン圧制御装置133により作動油の元圧であるライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1から所定圧PL0まで所定の減圧勾配で徐々に減圧する(S210、図12の時刻t24)。
次に、ECU140は、変速比が変化(ここではダウンシフト)していないか否かを判定する(S212)。ECU140は、例えば、入力回転数センサ150により検出された入力回転数Ninおよび出力回転数センサ160により検出された出力回転数Noutに基づいて実際の変速比γが変化したか否かを判定する。
変速比が変化(ここではダウンシフト)していないと判定された場合(S212:Yes)、ECU140は、現在のライン圧PLが所定圧PL0まで減圧されたか否かを判定し(S214)、現在のライン圧PLが所定圧PL0まで減圧されていないと判定された場合(S214:No)、S210に戻って以降の処理を繰り返し実行する一方、現在のライン圧PLが所定圧PL0まで減圧されたと判定された場合(S214:Yes)、この変速比固定制御を終了する。
変速比が変化(ここではダウンシフト)していると判定された場合(S212:No)、作動油供給排出制御装置130は、ライン圧制御装置133によりライン圧PLを減圧する前の通常の変速制御時の要求圧PL1まで復帰(上昇)させる(S216、図12の時刻t25)。
次に、ECU140は、ライン圧PLの復帰(上昇)が完了したか否かを判定する(S218)。ECU140は、例えば、ライン圧制御装置133によりライン圧PLを上昇させた後、予め設定された一定期間が経過した場合に、ライン圧PLの復帰(上昇)が完了したと判定することができる。ライン圧PLの復帰(上昇)が完了していないと判定された場合(S218:No)、ECU140は、ライン圧PLの復帰(上昇)が完了するまでS218の処理を繰り返し実行する。なお、ECU140は、これに限らず種々の公知の方法でライン圧PLの復帰(上昇)が完了したか否かを判定すればよい。
ライン圧PLの復帰(上昇)が完了したと判定された場合(S218:Yes)、ECU140は、閉じ込み指示フラグをOFF(言い換えれば、閉弁指示フラグをOFF)に設定し、作動油供給排出制御装置130は、ECU140により駆動油圧室用制御装置136がONとなるように制御され、この駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧PSを駆動油圧室81に導入し作動油供給排出弁70の開弁動作を実行する。これにより、作動油供給排出制御装置130は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作(作動油供給排出弁70の閉弁動作)を中止して通常の変速制御に復帰し(S220、図12の時刻t26)、この変速比固定制御を終了する。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−2によれば、作動油供給排出制御装置130が作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを所定圧PL0まで減圧することで、オイルポンプ132の負荷を低減することができることから、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加を抑制することができ、燃費を向上させることができると共に、その上で、ライン圧PLの減圧により実変速比が変動することを防止することができるので、適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−2によれば、2つのプーリとしてのプライマリプーリ50、セカンダリプーリ60の回転数比である変速比を検出可能な変速比検出手段としての入力回転数センサ150、出力回転数センサ160を備え、作動油供給排出制御装置130は、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを減圧する際にプライマリプーリ50、セカンダリプーリ60により変速比の変化が検出された場合に、このライン圧PLを復帰させる。
したがって、仮に作動油供給排出弁70の閉弁状態で弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分が形成され、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生したとしても、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160が変速比の変化を検出することで、この作動油供給排出弁70の閉弁状態におけるプライマリ油圧室55からの作動油漏れを検出することができる。そして、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160により変速比の変化が検出された場合には、作動油供給排出制御装置130がライン圧PLを減圧する前の通常の変速制御時の要求圧PL1まで復帰させることで、プライマリ油圧室55からの作動油漏れにより実変速比が変動することを確実に抑制し実変速比を適正な変速比で維持することができ、適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−2によれば、作動油供給排出制御装置130は、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを徐々に減圧する。したがって、作動油供給排出制御装置130がライン圧PLを要求圧PL1から所定圧PL0まで減圧する際にこのライン圧PLを徐々に減圧することから、仮に作動油供給排出弁70の閉弁状態で弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分が形成され、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生したとしても、急激に実変速比が変動することを抑制することができる。
(実施形態3)
図13は、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速機の変速比固定制御を説明するフローチャート、図14は、本発明の実施形態3に係るベルト式無段変速機の変速比固定制御の一例を説明するタイムチャートである。実施形態3に係るベルト式無段変速機は、実施形態2に係るベルト式無段変速機と略同様の構成であるが、学習手段を備えている点で実施形態2に係るベルト式無段変速機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1乃至図8を参照する。
実施形態3に係るベルト式無段変速機1−3では、本発明の学習手段は、ECU140により兼用される。
学習手段としてのECU140は、上述の実施形態2で説明したように、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLが減圧され変速比検出手段としての入力回転数センサ150、出力回転数センサ160により現在の実際の実変速比の変化が検出された場合、この実変速比の変化が検出された際のライン圧PLである変速比変化ライン圧PLmに基づいて所定圧PL0を更新する。
ECU140は、例えば、実変速比の変化が検出された際の変速比変化ライン圧PLmを記憶部(不図示)に記憶しおき、この変速比変化ライン圧PLmに所定の余裕率を乗算した値を次回のライン圧PLの減圧の際に用いる所定圧PL0として適用する。すなわち、ECU140は、次回のライン圧PLの減圧の際に用いる所定圧PL0を変速比変化ライン圧PLmに所定の余裕率を乗算した値に基づいて更新する。これにより、所定圧PL0の下限値を学習することができる。ここで、更新後の所定圧PL0は、変速比変化ライン圧PLmに所定の余裕率を乗算した値が適用されることで、この変速比変化ライン圧PLmより若干高いライン圧に設定される。
したがって、作動油供給排出制御装置130は、次回のライン圧PLの減圧の際には、更新前の前回の所定圧PL0より高く、前回のライン圧PLの減圧時に変速比が変化した変速比変化ライン圧PLmより若干高い更新後の所定圧PL0を用いて、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを更新後の所定圧PL0まで減圧することとなる。この結果、仮に作動油供給排出弁70の閉弁状態で弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分が形成され、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生し、このために一旦減圧したライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1まで再び復帰させた場合であっても、次回のライン圧PLの減圧の際には、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生しない更新後の所定圧PL0、すなわち、プライマリ油圧室55の油圧P1と供給圧力Pinとの圧力差がプライマリ油圧室55から作動油が漏れない程度の圧力差となるような更新後の所定圧PL0までは減圧することができる。これにより、ライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1から更新後の所定圧PL0まで減圧した際に実変速比が変動することを確実に防止することができると共に、適正に変速比を制御した上で、少なくとも、ライン圧PLを更新後の所定圧PL0まで減圧することで、オイルポンプ132の負荷を低減することができることから、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加を抑制することができ、燃費を向上させることができる。
また、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLが減圧され実際の実変速比の変化が検出された場合、ECU140によってこの実変速比の変化が検出された際のライン圧PLである変速比変化ライン圧PLmに基づいて所定圧PL0を更新し、所定圧PL0の下限値を学習することで、例えば、経時変化などにより作動油供給排出弁70の機械的精度(例えば、弁体71、弁座面72の面粗度や歪み等)や弁体71と弁座面72との接触状態が変化した場合であっても、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生しない適正な所定圧PL0を設定することができ、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み性能の経時変化にも適正に対応することができ、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込みを適正に行うことができる。また、言い換えれば、作動油供給排出弁70の機械的精度が多少低くても、ECU140が変速比変化ライン圧PLmに基づいて所定圧PL0を更新し、所定圧PL0の下限値を学習することで、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込みを適正に行うことができることから、このベルト式無段変速機1−3の製造効率を向上することができる。また、ECU140が変速比変化ライン圧PLmに基づいて所定圧PL0を更新し、所定圧PL0の下限値を学習することで、所定圧PL0の自動調節を行うことができるので、この点でもこのベルト式無段変速機1−3の製造効率を向上することができる。
ここで、この学習手段としてのECU140は、変速比変化ライン圧PLmを運転状態に応じて記憶するように構成するとよい。ECU140は、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLが減圧され現在の実際の実変速比の変化が検出された際の運転状態として、例えば、ベルト式無段変速機1−3を搭載する車両の車速、ベルト式無段変速機1−3の変速比、ベルト式無段変速機1−3に入力される駆動力(内燃機関10による出力トルク)及び作動油の油温のうちの少なくともいずれか1つと対応させて変速比変化ライン圧PLmを記憶するようにするとよい。したがって、運転状態に応じて各作動油供給排出弁70の弁体71に作用する力が変動し作動油の漏れ量が変動しうる場合であっても、ECU140は、変速比変化ライン圧PLmを運転状態に応じて記憶することで、この変速比変化ライン圧PLmに基づいて運転状態に応じて適正に所定圧PL0を更新、学習することができる。例えば、ベルト式無段変速機1−3を搭載する車両の車速が変動した場合にはプライマリ油圧室55内の作動油の遠心力による油圧、すなわち、遠心油圧、ベルト式無段変速機1−3の変速比が変動した場合にはプライマリ油圧室55の容積、ベルト式無段変速機1−3に入力される駆動力(内燃機関10による出力トルク)が変動した場合にはベルト110の張力及びベルト110からプライマリ可動シーブ53、プライマリ油圧室55内の作動油に作用するベルト反力、作動油の油温が変動した場合には作動油の粘度がそれぞれ変動することで、各作動油供給排出弁70の弁体71に作用する力が変動し作動油の漏れ量が変動しうるが、ECU140が変速比変化ライン圧PLmをこれらの運転状態に応じて記憶することで、この変速比変化ライン圧PLmに基づいて運転状態に応じた適正な所定圧PL0を更新、学習することができるので、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込みを運転状態に応じて適正に精度良く行うことができる。
次に、図13及び図14を参照してベルト式無段変速機1−3の変速比固定制御を説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
まず、ECU140は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示(変速時固定指示)があるか否かを判定する(S300)。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示がないと判定された場合(S300:No)、この変速比固定制御を終了する。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示があると判定された場合(S300:Yes)、ECU140は、閉じ込み指示フラグをON(言い換えれば、閉弁指示フラグをON)に設定する(図14の時刻t31)。
次に、ECU140は、変速比安定制御として、通常の変速比制御により実変速比が目標変速比(固定したい変速比)に収束するように変速比を変更すると共に作動油供給排出弁70が開弁している状態でプライマリ油圧室55内の作動油の油圧により変速比を固定する制御を実行する(S302、例えば、図14の時刻t31から時刻t32)。
次に、ECU140は、実変速比が安定したか否かを判定する(S304)。
現在の実変速比が安定していないと判定された場合(S304:No)、S302に戻って以降の処理を繰り返し実行する。現在の実変速比が安定していると判定された場合(S304:Yes)、ECU140は、作動油供給排出弁70の閉弁を許可する。そして、作動油供給排出制御装置130は、ECU140により駆動油圧室用制御装置136がOFFとなるように制御され、これにより、油路R8を外部に解放して駆動油圧室81を大気圧に解放することで、駆動油圧室81の油圧P2がほぼ大気圧POFFとなるように、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作、言い換えれば、作動油供給排出弁70の閉弁動作を実行する(S306、図14の時刻t33)。
次に、ECU140は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了したか否かを判定する(S308)。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了していないと判定された場合(S308:No)、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了するまでS308の処理を繰り返し実行する。
プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了したと判定された場合(S308:Yes)、作動油供給排出制御装置130は、ライン圧制御装置133により作動油の元圧であるライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1から所定圧PL0まで所定の減圧勾配で徐々に減圧する(S310、図14の時刻t34)。
次に、ECU140は、変速比が変化(ここではダウンシフト)していないか否かを判定する(S312)。
変速比が変化(ここではダウンシフト)していないと判定された場合(S312:Yes)、ECU140は、現在のライン圧PLが所定圧PL0まで減圧されたか否かを判定し(S314)、現在のライン圧PLが所定圧PL0まで減圧されていないと判定された場合(S314:No)、S310に戻って以降の処理を繰り返し実行する一方、現在のライン圧PLが所定圧PL0まで減圧されたと判定された場合(S314:Yes)、この変速比固定制御を終了する。
変速比が変化(ここではダウンシフト)していると判定された場合(S312:No)、学習手段としてのECU140は、例えば、実変速比の変化が検出された際の変速比変化ライン圧PLmを記憶部(不図示)に記憶し、次回のライン圧PLの減圧の際に用いる所定圧PL0を変速比変化ライン圧PLmに所定の余裕率を乗算した値に基づいて更新する(S315)。
次に、作動油供給排出制御装置130は、ライン圧制御装置133によりライン圧PLを減圧する前の通常の変速制御時の要求圧PL1まで復帰(上昇)させ(S316、図14の時刻t35)、ECU140は、ライン圧PLの復帰(上昇)が完了したか否かを判定する(S318)。ライン圧PLの復帰(上昇)が完了していないと判定された場合(S318:No)、ECU140は、ライン圧PLの復帰(上昇)が完了するまでS318の処理を繰り返し実行する。ライン圧PLの復帰(上昇)が完了したと判定された場合(S318:Yes)、ECU140は、閉じ込み指示フラグをOFF(言い換えれば、閉弁指示フラグをOFF)に設定し、作動油供給排出制御装置130は、ECU140により駆動油圧室用制御装置136がONとなるように制御され、この駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧PSを駆動油圧室81に導入し作動油供給排出弁70の開弁動作を実行する。これにより、作動油供給排出制御装置130は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作(作動油供給排出弁70の閉弁動作)を中止して通常の変速制御に復帰し(S320、図14の時刻t36)、この変速比固定制御を終了する。
そして、次回の制御周期において、S300にてECU140により閉じ込み指示フラグが再びONに設定され(図14の時刻t37)、S306にてECU140により作動油供給排出弁70の閉弁が許可されると共に、作動油供給排出制御装置130により駆動油圧室81の油圧P2がほぼ大気圧POFFとなるように、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が実行され(図14の時刻t38)、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了した後、S310にて作動油供給排出制御装置130によりライン圧PLを徐々に減圧する際には、ライン圧PLがS315にて学習手段としてのECU140により更新された更新後の所定圧PL0まで減圧され、この更新後の所定圧PL0で維持される(図14の時刻t39から時刻t39a)。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−3によれば、作動油供給排出制御装置130が作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを所定圧PL0まで減圧することで、オイルポンプ132の負荷を低減することができることから、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加を抑制することができ、燃費を向上させることができると共に、その上で、ライン圧PLの減圧により実変速比が変動することを防止することができるので、適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−3によれば、仮に作動油供給排出弁70の閉弁状態で弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分が形成され、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生したとしても、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160が変速比の変化を検出することで、この作動油供給排出弁70の閉弁状態におけるプライマリ油圧室55からの作動油漏れを検出することができる。そして、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160により変速比の変化が検出された場合には、作動油供給排出制御装置130がライン圧PLを減圧する前の通常の変速制御時の要求圧PL1まで復帰させることで、プライマリ油圧室55からの作動油漏れにより実変速比が変動することを確実に防止し実変速比を適正な変速比で維持することができ、適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−3によれば、作動油供給排出制御装置130がライン圧PLを要求圧PL1から所定圧PL0まで減圧する際にこのライン圧PLを徐々に減圧することから、仮に作動油供給排出弁70の閉弁状態で弁体71と弁座面72との間に微小な連通部分が形成され、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生したとしても、急激に実変速比が変動することを抑制することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−3によれば、作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLが減圧され入力回転数センサ150、出力回転数センサ160により変速比の変化が検出された際のライン圧である変速比変化ライン圧PLmに基づいて、所定圧PL0を更新する学習手段としてのECU140を備える。したがって、一旦減圧したライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1まで再び復帰させた場合であっても、次回のライン圧PLの減圧の際には、プライマリ油圧室55からの作動油漏れが発生しない更新後の所定圧PL0までは減圧することができる。これにより、次にライン圧PLを更新後の所定圧PL0まで減圧した際に実変速比が変動することを確実に防止することができると共に、適正に変速比を制御した上で、少なくとも、ライン圧PLを更新後の所定圧PL0まで減圧することで、オイルポンプ132の負荷を低減することができることから、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加を抑制することができ、燃費を向上させることができる。よって、より適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−3によれば、学習手段としてのECU140は、変速比変化ライン圧PLmを運転状態に応じて記憶する。したがって、ECU140が変速比変化ライン圧PLmを運転状態に応じて記憶することで、この変速比変化ライン圧PLmに基づいて運転状態に応じて適正に所定圧PL0を更新、学習することができるので、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込みを運転状態に応じて適正に精度良く行うことができる。
(実施形態4)
図15は、本発明の実施形態4に係るベルト式無段変速機の変速比固定制御を説明するフローチャート、図16は、本発明の実施形態4に係るベルト式無段変速機の変速比固定制御の一例を説明するタイムチャートである。実施形態4に係るベルト式無段変速機は、実施形態1に係るベルト式無段変速機と略同様の構成であるが、設定手段を備えている点で実施形態1に係るベルト式無段変速機とは異なる。その他、上述した実施形態と共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略するとともに、同一の符号を付す。また、主要部分の構成については図1乃至図8を参照する。
実施形態4に係るベルト式無段変速機1−4では、本発明の許可手段及び設定手段は、ECU140により兼用される。
許可手段としてのECU140は、上述したように、現在の実変速比と変速制御の目標となる目標変速比との偏差の絶対値が予め設定される所定値より小さい状態でこの実変速比が安定している期間が所定期間継続した際に変速比が安定していると判定し、作動油供給排出弁70の閉弁動作、すなわち、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作を許可する。
そしてこのとき、設定手段としてのECU140は、プライマリ油圧室55に対する作動油の流れ方向に応じてこの所定期間を設定する。具体的には、ECU140は、プライマリ油圧室55に対する作動油の流れ方向がプライマリ油圧室55に作動油が流入する方向である場合、すなわち、プライマリ油圧室55に作動油を供給する際の変速比減少時(アップシフト時)の所定期間を相対的に長い期間に設定する。一方、ECU140は、プライマリ油圧室55に対する作動油の流れ方向がプライマリ油圧室55から作動油が流出する方向である場合、すなわち、プライマリ油圧室55から作動油を排出する際の変速比増加時(ダウンシフト時)の所定期間を相対的に短い期間に設定する。つまり、ECU140は、プライマリ油圧室55に作動油を供給する際の所定期間をプライマリ油圧室55から作動油を排出する際の所定期間より長い期間に設定する。言い換えれば、ECU140は、プライマリ油圧室55から作動油を排出する際の所定期間をプライマリ油圧室55に作動油を供給する際の所定期間より短い期間に設定する。
これにより、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込みに際しプライマリ油圧室55に流入する作動油に対して逆行する方向に弁体71が閉弁することで作動油供給排出弁70の閉弁動作が阻害されるような場合には、ECU140がプライマリ油圧室55に作動油を供給する際の所定期間を相対的に長い期間に設定することで、実変速比が安定している期間がこの相対的に長い期間に設定された所定期間継続するまでは、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作、すなわち、作動油供給排出弁70の閉弁動作が許可されない。そして、実変速比が安定している期間がこの相対的に長い期間に設定された所定期間経過した後に、ECU140によりプライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作、すなわち、作動油供給排出弁70の閉弁動作が許可され開始されるので、実変速比が十分に安定し、プライマリ油圧室55に流入する作動油の流量が減ってから作動油供給排出弁70を閉弁することができることから、実変速比を固定したい変速比で確実に固定することができる。
一方、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込みに際しプライマリ油圧室55から流出する作動油と同じ方向に弁体71が閉弁することで作動油供給排出弁70の閉弁動作が促進されるような場合には、ECU140がプライマリ油圧室55から作動油を排出する際の所定期間を相対的に短い期間に設定することで、実変速比の安定からプライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作、すなわち、作動油供給排出弁70の閉弁動作が許可され開始されるまでの期間を短縮することができることから、実変速比をすばやく正確に固定したい変速比で固定することができる。これに伴ってライン圧PLの減圧も早期に行うことができるので、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加をさらに抑制することができる。
次に、図15及び図16を参照してベルト式無段変速機1−4の変速比固定制御を説明する。なお、この制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。また、図16に示す駆動油圧室81の油圧P2及び作動油供給排出制御装置130のライン圧PLでは、作動油の流れ方向がプライマリ油圧室55から流出する方向である場合を一点鎖線、プライマリ油圧室55に流入する方向である場合を二点差線、あいまいな状態である場合を実線で図示している。
まず、ECU140は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示(変速時固定指示)があるか否かを判定する(S400)。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示がないと判定された場合(S400:No)、この変速比固定制御を終了する。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み指示があると判定された場合(S400:Yes)、ECU140は、閉じ込み指示フラグをON(言い換えれば、閉弁指示フラグをON)に設定する(図16の時刻t41)。
次に、ECU140は、プライマリ油圧室55に対する作動油の流れ方向を判定する(S401)。ECU140は、例えば、現在の実際の実変速比に所定のマージンを加算した値が今回の制御で固定したい目標変速比より小さいと判定した場合、すなわち、今回の変速比変更制御が変速比増加変更制御(ダウンシフト制御)である場合には、作動油の流れ方向がプライマリ油圧室55から流出する方向であると判定する。また、ECU140は、例えば、現在の実際の実変速比が今回の制御で固定したい目標変速比に所定のマージンを加算した値より大きいと判定した場合、すなわち、今回の変速比変更制御が変速比減少変更制御(アップシフト制御)である場合には、作動油の流れ方向がプライマリ油圧室55に流入する方向であると判定する。さらに、ECU140は、上記のどちらにもあてはまらない場合、すなわち、実変速比に所定のマージンを加算した値が今回の目標変速比以上であり、かつ、実変速比が今回の目標変速比に所定のマージンを加算した値以下であると判定した場合、作動油の流れ方向があいまいな状態であると判定する。なお、ECU140は、これに限らず種々の公知の方法でプライマリ油圧室55に対する作動油の流れ方向を判定すればよい。
次に、ECU140は、変速比安定制御として、通常の変速比制御により実変速比が目標変速比(固定したい変速比)に収束するように変速比を変更すると共に作動油供給排出弁70が開弁している状態でプライマリ油圧室55内の作動油の油圧により変速比を固定する制御を実行する(S402、例えば、図16の時刻t41から時刻t42)。
次に、ECU140は、実変速比が安定したか否かを判定する(S404)。ECU140は、現在の実変速比と変速制御の目標となる目標変速比との偏差の絶対値が予め設定される所定値より小さい状態が所定期間継続した際に変速比が安定していると判定することができる。このとき、ECU140は、S401で判定したプライマリ油圧室55に対する作動油の流れ方向に応じてこの所定期間を設定する。すなわち、ECU140は、作動油の流れ方向がプライマリ油圧室55から流出する方向である場合、あいまいな状態である場合、プライマリ油圧室55に流入する方向である場合の順でこの所定期間を相対的に長い期間に設定する。
現在の実変速比が安定していないと判定された場合(S404:No)、S402に戻って以降の処理を繰り返し実行する。現在の実変速比が安定していると判定された場合(S404:Yes)、ECU140は、作動油供給排出弁70の閉弁を許可する。そして、作動油供給排出制御装置130は、ECU140により駆動油圧室用制御装置136がOFFとなるように制御され、これにより、油路R8を外部に解放して駆動油圧室81を大気圧に解放することで、駆動油圧室81の油圧P2がほぼ大気圧POFFとなるように、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作、言い換えれば、作動油供給排出弁70の閉弁動作を実行する(S406、図16において作動油の流れ方向がプライマリ油圧室55から流出する方向である場合は時刻t43−1、あいまいな状態である場合は時刻t43−2、プライマリ油圧室55に流入する方向である場合は時刻t43−3)。
次に、ECU140は、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了したか否かを判定する(S408)。プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了していないと判定された場合(S408:No)、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了するまでS408の処理を繰り返し実行する。
プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込み動作が完了したと判定された場合(S408:Yes)、作動油供給排出制御装置130は、ライン圧制御装置133により作動油の元圧であるライン圧PLを通常の変速制御時の要求圧PL1から所定圧PL0まで減圧して(S410、図16において作動油の流れ方向がプライマリ油圧室55から流出する方向である場合は時刻t44−1、あいまいな状態である場合は時刻t44−2、プライマリ油圧室55に流入する方向である場合は時刻t44−3)、この変速比固定制御を終了する。
以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−4によれば、作動油供給排出制御装置130が作動油供給排出弁70の閉弁完了後にライン圧PLを所定圧PL0まで減圧することで、オイルポンプ132の負荷を低減することができることから、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加を抑制することができ、燃費を向上させることができると共に、その上で、ライン圧PLの減圧により実変速比が変動することを防止することができるので、適正に変速比を制御することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機1−4によれば、変速比が安定している期間が所定期間継続した際に作動油供給排出弁70の閉弁を許可する許可手段と、プライマリ油圧室55に作動油を供給する際の所定期間を相対的に長い期間に設定する一方、プライマリ油圧室55から作動油を排出する際の所定期間を相対的に短い期間に設定する設定手段として兼用されるECU140を備える。
したがって、プライマリ油圧室55内の作動油の閉じ込みに際しプライマリ油圧室55に流入する作動油に対して逆行する方向に弁体71が閉弁することで作動油供給排出弁70の閉弁動作が阻害されるような場合には、実変速比が十分に安定し、プライマリ油圧室55に流入する作動油の流量が減ってから作動油供給排出弁70を閉弁することができることから、実変速比を固定したい変速比で確実に固定することができる一方、プライマリ油圧室55から流出する作動油と同じ方向に弁体71が閉弁することで作動油供給排出弁70の閉弁動作が促進されるような場合には、作動油供給排出弁70の閉弁動作が開始されるまでの期間を短縮することができることから、実変速比をすばやく正確に固定したい変速比で固定することができ、これに伴ってライン圧PLの減圧も早期に行うことができるので、オイルポンプ132の駆動による動力損失の増加をさらに抑制することができる。よって、より適正に変速比を制御することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本発明の実施形態に係るベルト式無段変速機は、以上で説明した実施形態を複数組み合わせることで構成してもよい。
また、以上の説明では、変速比検出手段は、入力回転数センサ150、出力回転数センサ160であるものとして説明したがこれに限らず、種々の公知の変速比検出手段を用いればよい。
また、以上の説明では、本発明の学習手段、許可手段、設定手段は、ECU140により兼用されるものとして説明するが、それぞれをECU140とは別個に設けるようにしてもよい。