以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。ここで、下記の実施の形態におけるベルト式無段変速機に伝達される出力トルクを発生する駆動源として内燃機関(ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなど)を用いる。また、下記の実施の形態では、一方のプーリをプライマリプーリとし、他方のプーリをセカンダリプーリとするが、一方のプーリをセカンダリプーリとし、他方のプーリをプライマリプーリとしても良い。
〔実施の形態1〕
図1は、本発明にかかるベルト式無段変速機のスケルトン図である。また、図2は、変速比固定時におけるプライマリプーリの要部断面図である。図3−1および図3−2は、トルクカムを示す図である。図4は、油圧制御装置の構成例を示す図である。図5〜図8は、変速比変更時におけるベルト式無段変速機の動作説明図である。
図1に示すように、駆動源である内燃機関10の出力側には、静止部品であるトランスアクスル20が配置されている。トランスアクスル20は、トランスアクスルハウジング21と、トランスアクスルハウジング21に取り付けられたトランスアクスルケース22と、トランスアクスルケース22に取り付けられたトランスアクスルリヤカバー23とにより構成されている。
トランスアクスルハウジング21の内部には、トルクコンバータ30が収納されている。一方、トランスアクスルケース22とトランスアクスルリヤカバー23とにより構成されるケース内部には、実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1を構成する2つのプーリであるプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60と、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55と、作動油供給排出弁70と、アクチュエータ80と、ベルト110とが収納されている。なお、40は前後進切換機構、90は車輪120に内燃機関10の出力トルクを伝達する最終減速機、100は動力伝達経路、130は油圧制御装置、140はECUである。
発進機構であるトルクコンバータ30は、図1に示すように、駆動源である内燃機関10からの出力トルクTを増加、あるいはそのままベルト式無段変速機1−1に伝達するものである。このトルクコンバータ30は、少なくともポンプ(ポンプインペラ)31と、タービン(タービンインペラ)32と、ステータ33と、ロックアップクラッチ34と、ダンパ装置35とにより構成されている。
ポンプ31は、内燃機関10のクランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能な中空軸36に取り付けられている。つまり、ポンプ31は、中空軸36とともに、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能である。また、ポンプ31は、フロントカバー37に接続されている。フロントカバー37は、内燃機関10のドライブプレート12を介して、クランクシャフト11に連結されている。
タービン32は、上記ポンプ31と対向するように配置されている。このタービン32は、上記中空軸36内部に配置され、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能なインプットシャフト38に取り付けられている。つまり、タービン32は、インプットシャフト38とともに、クランクシャフト11と同一の軸線を中心に回転可能である。
ポンプ31とタービン32との間には、ワンウェイクラッチ39を介してステータ33が配置されている。ワンウェイクラッチ39は、上記トランスアクスルハウジング21に固定されている。また、タービン32とフロントカバー37との間には、油圧制御装置130から作動油が供給されることにより制御されるロックアップクラッチ34が配置されており、このロックアップクラッチ34は、ダンパ装置35を介してインプットシャフト38に連結されている。
ここで、トルクコンバータ30の動作について説明する。内燃機関10からの出力トルクTは、クランクシャフト11からドライブプレート12を介して、フロントカバー37に伝達される。ロックアップクラッチ34が解放されている場合は、フロントカバー37に伝達された内燃機関10からの出力トルクTがポンプ31に伝達され、このポンプ31とタービン32との間を循環する作動油を介して、タービン32に伝達される。そして、タービン32に伝達された内燃機関10からの出力トルクTは、インプットシャフト38に伝達される。つまり、トルクコンバータ30は、インプットシャフト38を介して、内燃機関10からの出力トルクTを増加してベルト式無段変速機1−1に伝達する。上記においては、ステータ33により、ポンプ31とタービン32との間を循環する作動油の流れを変化させ所定のトルク特性を得ることができる。
一方、上記ロックアップクラッチ34がダンパ装置35によりロック(フロントカバー37と係合)されている場合は、フロントカバー37に伝達された内燃機関10からの出力トルクTは、作動油を介さずに直接インプットシャフト38に伝達される。つまり、トルクコンバータ30は、インプットシャフト38を介して、内燃機関10からの出力トルクTをそのままベルト式無段変速機1に伝達する。
前後進切換機構40は、図1に示すように、トルクコンバータ30を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクTをベルト式無段変速機1のプライマリプーリ50に伝達するものである。前後進切換機構40は、少なくとも遊星歯車装置41とフォワードクラッチ42と、リバースブレーキ43とにより構成されている。
遊星歯車装置41は、サンギヤ44と、ピニオン45と、リングギヤ46とにより構成されている。
サンギヤ44は、図示しない連結部材にスプライン嵌合されている。連結部材は、プライマリプーリ50のプライマリプーリ軸51にスプライン嵌合されている。従って、サンギヤ44に伝達された内燃機関10からの出力トルクTは、プライマリプーリ軸51に伝達される。
ピニオン45は、サンギヤ44と噛み合い、その周囲に複数個(例えば、3個)配置されている。各ピニオン45は、サンギヤ44の周囲で一体に公転可能に支持する切換用キャリヤ47に保持されている。この切換用キャリヤ47は、その外周端部においてリバースブレーキ43に接続されている。
リングギヤ46は、切換用キャリヤ47に保持された各ピニオン45と噛み合い、フォワードクラッチ42を介して、トルクコンバータ30のインプットシャフト38に接続されている。
フォワードクラッチ42は、作動油供給部分であるインプットシャフト38の図示しない中空部に、油圧制御装置130から作動油が供給されることにより、ON/OFF制御されるものである。フォワードクラッチ42のOFF時には、インプットシャフト38に伝達された内燃機関10からの出力トルクTがリングギヤ46に伝達される。一方、フォワードクラッチ42のON時には、リングギヤ46とサンギヤ44と各ピニオン45とが互いに相対回転することなく、インプットシャフト38に伝達された内燃機関10からの出力トルクTが直接サンギヤ44に伝達される。
リバースブレーキ43は、作動油供給部分である図示しないブレーキピストンに、油圧制御装置130から作動油が供給されることにより、ON/OFF制御されるものである。リバースブレーキ43がON時には、切換用キャリヤ47がトランスアクスルケース22に固定され、各ピニオン45がサンギヤ44の周囲を公転できない状態となる。リバースブレーキ43がOFF時には、切換用キャリヤ47が解放され、各ピニオン45がサンギヤ44の周囲を公転できる状態となる。
ベルト式無段変速機1のプライマリプーリ50は、一方のプーリであり、前後進切換機構40を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクTをベルト110により、セカンダリプーリ60に伝達するものである。プライマリプーリ50は、図1、図2に示すように、プライマリプーリ軸51と、プライマリ固定シーブ52と、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54と、プライマリ油圧室55と、弁配置部材56と、カバー部材57とにより構成されている。また、プライマリプーリ50は、プライマリ油圧室55に作動油を供給、あるいはプライマリ油圧室55から作動油を排出する供給排出経路が形成されている。
プライマリプーリ軸51は、図2に示すように、プーリ軸受111,112により回転可能に支持されている。また、プライマリプーリ軸51は、軸方向における両端部のみにそれぞれ開口する供給排出側主通路51aと、駆動側主通路51bが形成されている。ここで、プーリ軸受112は、トランスアクスルリヤカバー23の段差部と、トランスアクスルリヤカバー23に固定される図示しないストッパープレートとの間に、挟み込まれることで固定される。
供給排出側主通路51aは、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給し、かつプライマリ油圧室55から作動油を排出する供給排出経路の一部を構成するものである。供給排出側主通路51aは、プライマリ固定シーブ側に形成されており、油圧制御装置130の後述する油路R7と連通している。供給排出側主通路51aは、油圧制御装置130からプライマリ油圧室55に供給される作動油が流入し、プライマリ油圧室55から排出された作動油が流入する。従って、供給排出側主通路51aは、油圧制御装置130とプライマリ油圧室55との間で供給あるいは排出される作動油が通過するものである。また、供給排出側主通路51aは、その先端部近傍が軸側連通通路51cと連通している。
軸側連通通路51cは、供給排出経路の一部を構成するものである。軸側連通通路51cは、一方の端部が供給排出側主通路51aと連通し、他方の端部がプライマリプーリ軸51の外周面に開口することで、空間部T1と連通している。なお、軸側連通通路51cは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
空間部T1は、供給排出経路の一部を構成するものである。空間部T1は、プライマリ可動シーブ53とプライマリプーリ軸51との間に形成されるものである。つまり、空間部T1は、プライマリ可動シーブ53の内周面、すなわちプライマリ可動シーブ53のプライマリプーリ軸51に対して軸方向に摺動する面と、プライマリプーリ軸51の外周面との間に形成されている。空間部T1は、リング形状であり、径方向内側の端部(同図下側端部)が各軸側連通通路51cと連通し、軸方向における他方の端部(同図左側端部)が空間部T2と連通している。
空間部T2は、供給排出経路の一部を構成するものである。空間部T2は、プライマリ隔壁54とプライマリ可動シーブ53とプライマリプーリ軸51とにより形成されるものである。空間部T2は、リング形状であり、径方向内側の端部が(同図下側端部)が空間部T1と連通し、径方向外側の端部が隔壁側連通通路54eと連通している。つまり、供給排出側主通路51aは、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2を介して隔壁側連通通路54eと連通している。
また、駆動側主通路51bは、アクチュエータ80の後述する駆動油圧室81に作動油を供給し、駆動油圧室81から作動油を排出するものである。駆動側主通路51bは、プライマリ固定シーブ側と反対側に形成されており、トランスアクスルリヤカバー23の挿入部23aが挿入されている。ここで、挿入部23aは、一方の端部が駆動側主通路51bと連通し、他方の端部が油圧制御装置130の後述する油路R8と連通する第1連通通路23bが形成されている。従って、駆動側主通路51bは、第1連通通路23bを介して油圧制御装置130の油路R8と連通している。駆動側主通路51bは、油圧制御装置130から駆動油圧室81に供給される作動油が流入し、駆動油圧室81から排出された作動油が流入する。従って、駆動側主通路51bは、油圧制御装置130と駆動油圧室81との間で供給あるいは排出される作動油が通過するものである。また、駆動側主通路51bは、その先端部近傍が軸側連通通路51dと連通している。
軸側連通通路51dは、一方の端部が駆動側主通路51bと連通し、他方の端部がプライマリプーリ軸51の外周面に開口することで、空間部T3と連通している。なお、軸側連通通路51dは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
空間部T3は、プライマリ隔壁54とプライマリプーリ軸51との間に形成されるものである。つまり、空間部T3は、プライマリ隔壁54の内周面(径方向内側突出部54bの内周面)と、プライマリプーリ軸51の外周面との間に形成されている。空間部T3は、リング形状であり、径方向内側(同図下側端部)が各軸側連通通路51dと連通し、径方向外側(同図上側端部)がプライマリ隔壁54の隔壁側連通通路54fと連通している。つまり、駆動側主通路51bは、各軸側連通通路51d、空間部T3を介して隔壁側連通通路54fと連通している。なお、プライマリ隔壁54の内周面とプライマリプーリ軸51の外周面との間には、空間部T3を挟んで、例えばシールリングなどの連通部用シール部材を設けても良い。
ここで、トランスアクスルリヤカバー23の上記駆動側主通路51bに挿入される挿入部23aには、キャンセル側主通路23cが形成されている。キャンセル側主通路23cは、一方の端部が挿入部23aの内部で閉塞し、第2連通通路23dと連通し、他方の端部が油圧制御装置130の後述する分岐油路R11と連通する。
第2連通通路23dは、一方の端部がキャンセル側主通路23cと連通し、他方の端部が挿入部23aの外周面に開口することで、空間部T4と連通している。なお、第2連通通路23dは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
空間部T4は、プライマリプーリ軸51と挿入部23aとの間に形成されるものである。つまり、空間部T4は、プライマリ軸51の内周面(駆動側主通路51bを構成する内周面)と、挿入部23aの外周面との間に形成されている。空間部T4は、リング形状であり、径方向内側(同図下側端部)が各第2連通通路23dと連通し、径方向外側(同図上側端部)がプライマリプーリ軸51の軸側連通通路51eと連通している。つまり、キャンセル側主通路23cは、各第2連通通路23d、空間部T4を介して軸側連通通路51eと連通している。なお、プライマリプーリ軸51の内周面と挿入部23aの外周面との間には、空間部T4を挟んで、例えばシールリングなどの連通部用シール部材S2が設けられている。
軸側連通通路51eは、一方の端部がプライマリプーリ軸51の内周面に開口することで、空間部T4と連通し、他方の端部がプライマリプーリ軸51が外周面に開口することで、空間部T5と連通している。なお、軸側連通通路51eは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
空間部T5は、プライマリプーリ軸51と、プーリ軸受112およびカバー部材57との間に形成されるものである。つまり、空間部T5は、プライマリ軸51の外周面と、プーリ軸受112の内周面およびカバー部材57の内周面との間に形成されている。空間部T5は、リング形状であり、径方向内側(同図下側端部)が各軸側連通通路51eと連通し、径方向外側(同図上側端部)がプーリ軸受112とプライマリ隔壁54との間に形成された空間部を介して、カバー側連通通路57aと連通している。つまり、キャンセル側主通路23cは、各第2連通通路23d、空間部T4、各軸側連通通路51e、空間部T5を介してカバー側連通通路57aと連通している。なお、プライマリプーリ軸51の内周面と、プーリ軸受112の外周面およびカバー部材57の外周面との間には、空間部T5を挟んで、例えばシールリングなどの連通部用シール部材を設けても良い。
プライマリ固定シーブ52は、図2に示すように、プライマリ可動シーブ53と対向する位置にプライマリプーリ軸51と一体回転するように設けられている。ここでは、プライマリ固定シーブ52は、プライマリプーリ軸51の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、ここでは、プライマリ固定シーブ52は、プライマリプーリ軸51の外周に一体的に形成されている。
プライマリ可動シーブ53は、図2に示すように、円筒部53aと、環状部53bとにより構成されている。円筒部53aは、プライマリプーリ軸51と同一回転軸を中心に形成されている。環状部53bは、円筒部53aのプライマリ固定シーブ側の端部から径方向外側に突出して形成されている。プライマリ可動シーブ53は、円筒部53aの内周面に形成されたスプライン53cと、プライマリプーリ軸51の外周面に形成されたスプライン51fとがスプライン嵌合することで、プライマリプーリ軸51に軸方向に摺動可能に支持されている。プライマリ固定シーブ52とプライマリ可動シーブ53との間、すなわちプライマリ固定シーブ52のプライマリ可動シーブ53に対向する面と、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対向する面との間で、V字形状のプライマリ溝110aが形成されている。なお、スプライン53cと、スプライン51fとの間の空間部も空間部T1に含まれる。また、プライマリ可動シーブ53の軸方向のうち他方の端部(同図右側端部)には、切欠部53eが形成されている。従って、プライマリ可動シーブ53の軸方向のうち他方の端部がプライマリプーリ軸51に対して軸方向のうち他方に摺動することで、プライマリ隔壁54と接触あるいは近接しても、切欠部53eにより空間部T1と空間部T2との連通が維持される。
プライマリ隔壁54は、隔壁部材であり、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55を構成するものである。プライマリ隔壁54は、図2に示すように、環状部材であり、プライマリプーリ軸51と同一回転軸を中心に配置されている。また、プライマリ隔壁54は、プライマリ可動シーブ53を挟んでプライマリ固定シーブ52と軸方向において対向するように配置されている。プライマリ隔壁54は、プライマリプーリ軸51とスプライン嵌合することで、プライマリプーリ軸51と一体回転するように設けられている。なお、プライマリ隔壁54は、カバー部材57およびプーリ軸受112とともに、プライマリプーリ軸51に形成された段差部とプライマリプーリ軸51に固定された隔壁固定部材58とに挟み込まれることで、プライマリプーリ軸51に対して軸方向に対して固定されている。
プライマリ隔壁54は、円筒部54aと、径方向内側突出部54bと、凹部54cと、径方向外側突出部54dとにより構成されている。円筒部54aは、円筒形状であり、軸方向に延在して形成されている。円筒部54aには、軸方向における中央部近傍に隔壁側連通通路54eが形成されている。隔壁側連通通路54eは、供給排出経路の一部を構成するものである。隔壁側連通通路54eは、径方向内側の端部がプライマリ隔壁54の内周面(円筒部54aの内周面)に開口し、供給排出経路の一部を構成する空間部T2に連通し、径方向外側の端部がプライマリ隔壁54の外周面(円筒部54aの外周面)に開口し、空間部T7と連通する。隔壁側連通通路54eは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
径方向内側突出部54bは、円環形状であり、円筒部54aの軸方向のうち、他方の端部(同図左側端部)から径方向内側に突出して形成されている。径方向内側突出部54bには、軸方向における中央部近傍に隔壁側連通通路54fが形成されている。隔壁側連通通路54fは、径方向内側の端部がプライマリ隔壁54の内周面(円筒部54aの内周面)に開口し、空間部T3に連通し、径方向外側の端部がプライマリ隔壁54の外周面(円筒部54aの外周面)に開口し、アクチュエータ80の後述する駆動油圧室81に連通する。従って、駆動側主通路51bは、各軸側連通通路51d、空間部T3および各隔壁側連通通路54fを介して、駆動油圧室81と連通している。隔壁側連通通路54fは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
また、円筒部54aから径方向内側突出部54bにかけて、隔壁側連通通路54gが形成されている。隔壁側連通通路54gは、一方の端部(同図右側端部)がプライマリ隔壁54の外周面(円筒部54aの外周面)に開口し、後述するキャンセル室84に連通し、他方の端部がプライマリ隔壁54の軸方向における両側面のうち他方の側面(径方向内側突出部54bの軸方向における両側面のうち他方の側面(同図左側側面))に開口し、カバー部材57のカバー側連通通路57aと連通する。隔壁側連通通路54gは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、隣り合う隔壁側連通通路54fの間の3箇所)形成されている。
凹部54cは、軸方向のうち、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に向かう方向、すなわち開弁方向に突出して形成されている。凹部54cは、周方向に連続して形成される。凹部54cは、隔壁側収納部54hと開口穴54iが形成されている。隔壁側収納部54hは、一方の端部(同図右側端部)が凹部54cの内部で閉塞し、他方の端部(同図左側端部)が弁配置部材と対向する面に開口し、後述する空間部T6に連通する。ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。開口穴54iは、一方の端部(同図右側端部)がプライマリ油圧室55に露出する面に開口し、プライマリ油圧室55に連通し、他方の端部(同図左側端部)が弁配置部材56と対向する面に開口し、後述する空間部T6に連通する。開口穴54iは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、隣り合う収納部54hの間に、3箇所)形成されている。
空間部T6は、供給排出経路の一部を構成するものである。空間部T6は、プライマリ隔壁54と弁配置部材56とにより形成されるものである。空間部T6は、リング形状であり、一方の端部(同図右側端部)が各開口穴54iと連通し、他方の端部(同図左側端部)が弁配置部材56の弁配置通路56aと連通している。なお、プライマリ隔壁54の凹部54cの内周面と弁配置部材56との間には、空間部T6を挟んで、例えばシールリングなどの連通部用シール部材S3が設けられている。従って、プライマリ隔壁54と弁配置部材56とにより形成される空間部T6は、連通部用シール部材S3によりシールされる。
また、径方向外側突出部54dは、円環形状であり、凹部54cの径方向外側の端部から径方向外型に突出して形成されている。径方向外側突出部54dは、プライマリ可動シーブ53の環状部53bの径方向外側の端部から軸方向のうち他方(同図左方向)に突出して形成されている突出部53dに、ほぼ接触する位置まで突出して形成されている。
プライマリ油圧室55は、一方の挟圧力発生油圧室であり、図2に示すように、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧することで、プライマリプーリ50、すなわちV字形状のプライマリ溝110aに巻き掛けられたベルト110に対してベルト挟圧力を発生するものである。プライマリ油圧室55は、プライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54(主に、凹部54cと径方向外側突出部54d)とにより形成される空間部である。ここで、プライマリ可動シーブ53の突出部53dとプライマリ隔壁54の径方向外側突出部54dとの間、プライマリ可動シーブ53の円筒部53aとプライマリ隔壁54の凹部54cとの間には、例えばシールリングなどのプライマリ油圧室用シール部材S1が設けられている。従って、プライマリ油圧室55であるプライマリ可動シーブ53と、プライマリ隔壁54とにより形成される空間部は、プライマリ油圧室用シール部材S1によりシールされる。
プライマリ油圧室55には、プライマリプーリ軸51の供給排出側主通路51aに流入した油圧制御装置130からの作動油が供給される。プライマリ油圧室55は、油圧制御装置130から供給された作動油の圧力、すなわちプライマリ油圧室55のプライマリ油圧P1により、プライマリ可動シーブ53を軸方向に摺動させ、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ52に対して接近あるいは離隔させるものである。このように、プライマリ油圧室55は、プライマリ油圧室55のプライマリ油圧P1により、ベルト110に対してベルト挟圧力を発生させ、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を変更する。従って、プライマリ油圧室55は、主にベルト式無段変速機1の変速比γを変更する。
弁配置部材56は、作動油供給排出弁70を配置するものであり、隔壁部材であるプライマリ隔壁54と別個に形成されている。弁配置部材56は、円筒形状であり、プライマリ隔壁54に配置され、プライマリ隔壁54に固定されている。弁配置部材56は、ここでは、隔壁部材であるプライマリ隔壁54のプライマリ油圧室側に突出して形成された凹部54cに挿入され、凹部54cに挿入され固定される弁配置部材用固定部材であるスナップリング59により、軸方向に対して固定されている。
弁配置部材56は、径方向における中央部に、軸方向に延在する弁配置通路56aが形成されている。弁配置通路56aは、供給排出経路の一部を構成するものである。弁配置通路56aは、一方の端部(同図右側端部)が空間部T6に連通し、他方の端部(同図左側端部)が弁配置部材56の内部で閉塞され、配置側連通通路56bと連通している。弁配置通路56aは、作動油供給排出弁70の後述する弁体71により閉塞される環状の弁座面72が形成されている。ここで、弁座面72は、弁配置通路56aの一方の端部近傍に形成される。弁配置通路56aは、プライマリ隔壁54の各隔壁側収納部54hにそれぞれ対応して形成されている。従って、弁配置通路56aは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。各弁配置通路56aには、作動油供給排出弁70がそれぞれ配置されている。
配置側連通通路56bは、供給排出経路の一部を構成するものである。配置側連通通路56bは、一方の端部(同図径方向外側の端部)が弁配置通路56aと連通し、他方の端部(同図径方向内側)がプライマリ隔壁54の内周面に開口し、空間部T7と連通している。配置側連通通路56bは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。
空間部T7は、供給排出経路の一部を構成するものである。空間部T7は、弁配置部材56とプライマリ隔壁54とにより形成されるものである。空間部T7は、リング形状であり、径方向内側の端部が(同図下側端部)が各隔壁側連通通路54eと連通し、径方向外側の端部が各弁配置通路56aと連通している。つまり、供給排出経路は、供給排出側主通路51a、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、各隔壁側連通通路54e、空間部T7、各配置側連通通路56b、各弁配置通路56a、空間部T6および各開口穴54iとで構成されている。従って、実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1は、1つの供給排出経路によりプライマリ油圧室55に対して作動油の供給排出を行うものである。
また、弁配置部材56には、各弁配置通路56aと同一軸線上に、摺動支持穴56cがそれぞれ形成されている。各摺動支持穴56cは、一方の端部(同図右側端部)が弁配置通路56aに連通し、他方の端部(同図左側端部)が弁配置部材56の軸方向における両側面のうち、他方の側面(同図左側側面)に開口し、キャンセル室84と連通している。
また、弁配置部材56には、配置側収納部56dが形成されている。配置側収納部56dは、一方の端部(同図右側端部)が弁配置部材56の内部で閉塞し、他方の端部(同図左側端部)が弁配置部材56の軸方向における両側面のうち、他方の側面(同図左側側面)に開口し、キャンセル室84と連通している。配置側収納部56dは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、隣り合う摺動支持穴56cの間に、3箇所)形成されている。
カバー部材57は、アクチュエータ80の駆動油圧室81を構成する駆動油圧室構成部材であり、ピストン82を覆うものである。カバー部材57は、リング形状であり、プライマリ隔壁54とプーリ軸受112との間に配置される。カバー部材57は、径方向内側の端部に、カバー側連通通路57aが形成されている。カバー側連通通路57aは、一方の端部(同図径方向外側の端部)が隔壁側連通通路54gと連通し、他方の端部(同図径方向内側の端部)がプーリ軸受112とプライマリ隔壁54との間に形成された空間部を介して、空間部T5と連通している。なお、カバー側連通通路57aは、ここでは、円周上に等間隔に複数箇所(例えば、3箇所)形成されている。従って、キャンセル側主通路23cは、第2連通通路23d、空間部T4、各軸側連通通路51e、空間部T5、カバー側連通通路57aおよび隔壁側連通通路54gを介して、キャンセル室84と連通している。また、カバー部材57の径方向外側の端部には、軸方向のうち一方(同図右方向)に突出する軸方向突出部57bが形成されている。軸方向突出部57bは、プライマリ隔壁54の凹部54cに入り込む位置まで突出して形成されている。また、カバー部材57の径方向の中央部近傍には、アクチュエータ80の後述するピストン82の受圧部材82aの軸方向のうち他方(同図左方向)への移動を規制する規制突起部57cが形成されている。
ベルト式無段変速機1のセカンダリプーリ60は、他方のプーリであり、ベルト110によりプライマリプーリ50に伝達された内燃機関10からの出力トルクTをベルト式無段変速機1の最終減速機90に伝達するものである。セカンダリプーリ60は、図1に示すように、セカンダリプーリ軸61と、セカンダリ固定シーブ62と、セカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ油圧室64、セカンダリ隔壁65と、トルクカム66により構成されている。なお、69は、パーキングブレーキギヤである。
セカンダリプーリ軸61は、プーリ軸受113,114により回転可能に支持されている。また、セカンダリプーリ軸61は、内部に図示しない作動油通路を有しており、この作動油通路には、油圧制御装置130からセカンダリ油圧室64に供給される作動油が流入する。
セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリ可動シーブ63と対向する位置にセカンダリプーリ軸61と一体回転するように設けられている。ここでは、セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリプーリ軸61の外周から径方向外側に突出する環状部として形成されている。つまり、ここでは、セカンダリ固定シーブ62は、セカンダリプーリ軸61の外周に一体的に形成されている。
セカンダリ可動シーブ63は、その内周面に形成された図示しないスプラインと、セカンダリプーリ軸61の外周面に形成された図示しないスプラインとがスプライン嵌合することで、このセカンダリプーリ軸61に軸方向に摺動可能に支持されている。セカンダリ固定シーブ62とセカンダリ可動シーブ63との間、すなわちセカンダリ固定シーブ62のセカンダリ可動シーブ63に対向する面と、セカンダリ可動シーブ63のセカンダリ固定シーブ62と対向する面との間で、V字形状のセカンダリ溝110bが形成されている。
セカンダリ油圧室64は、他方の挟圧力発生油圧室であり、図1に示すように、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ側に押圧することで、セカンダリプーリ60、すなわちV字形状のセカンダリ溝110bに巻き掛けられたベルト110に対してベルト挟圧力を発生するものである。セカンダリ油圧室64は、セカンダリプーリ軸61と、セカンダリ可動シーブ63と、このセカンダリプーリ軸61に固定された円板形状のセカンダリ隔壁65とにより形成される空間部である。セカンダリ可動シーブ63には、軸方向の一方に突出、すなわち最終減速機90側に突出する環状の突出部63aが形成されている。一方、セカンダリ隔壁65には、軸方向の他方向に突出、すなわちセカンダリ可動シーブ63側に突出する環状の突出部65aが形成されている。ここで、突出部63aと突出部65aとの間には、例えばシールリングなどの図示しないシール部材が設けられている。つまり、セカンダリ油圧室64を構成するセカンダリ可動シーブ63と、セカンダリ隔壁65とにより形成される空間部は、図示しないセカンダリ油圧室用シール部材によりシールされている。
セカンダリ油圧室64には、図示しない作動流体供給孔を介して、セカンダリプーリ軸61の図示しない作動油通路に流入した油圧制御装置130からの作動油が供給される。セカンダリ油圧室64に作動油を供給し、油圧制御装置130から供給された作動油の圧力、すなわちセカンダリ油圧室64の油圧により、セカンダリ可動シーブ63を軸方向に摺動させ、セカンダリ可動シーブ63をセカンダリ固定シーブ62に対して接近あるいは離隔させるものである。このように、セカンダリ油圧室64は、このセカンダリ油圧室64の油圧により、ベルト110に対してベルト挟圧力を発生させ、ベルト110のプライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60に対する接触半径を一定に維持する。
トルクカム66は、図3−1に示すように、セカンダリプーリ60のセカンダリ可動シーブ63に環状に設けられた山谷状の第1係合部63bと、この第1係合部63bとセカンダリプーリ軸61の軸線方向において対向する後述する中間部材67に形成された第2係合部67aと、この第1係合部63bと第2係合部67aとの間に配置された円板形状の複数の伝達部材68とにより構成されている。
中間部材67は、セカンダリ隔壁65と一体に形成、あるいはセカンダリ隔壁65に固定され、プーリ軸受113、軸受115により、セカンダリプーリ軸61やセカンダリ可動シーブ63に対してセカンダリプーリ軸61上で相対回転可能に支持されている。この中間部材67は、動力伝達経路100の入力軸101と、例えばスプライン勘合により固定されている。つまり、セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関10からの出力トルクTは、この中間部材67を介して動力伝達経路100に伝達される。
ここで、トルクカム66の動作について説明する。プライマリプーリ50に内燃機関10からの出力トルクTが伝達され、このプライマリプーリ50が回転すると、ベルト110を介してセカンダリプーリ60が回転する。このとき、セカンダリプーリ60のセカンダリ可動シーブ63は、このセカンダリ固定シーブ62、セカンダリプーリ軸61、プーリ軸受113ともに回転するため、このセカンダリ可動シーブ63と中間部材67との間に相対回転が発生する。そして、図3−1に示すように、第1係合部63bと第2係合部67aとが接近した状態から、複数の伝達部材68により、図3−2に示すように第1係合部63bと第2係合部67aとが離隔した状態に変化する。これにより、トルクカム66は、セカンダリプーリ60にベルト110に対してベルト挟圧力を発生する。
つまり、セカンダリプーリ60には、ベルト110に対してベルト挟圧力を発生する手段として、挟圧力発生油圧室であるセカンダリ油圧室64以外にトルクカム66が備えられる。このトルクカム66が主としてベルト挟圧力を発生させ、セカンダリ油圧室64はトルクカム66により発生したベルト挟圧力の不足分を発生させるものである。なお、セカンダリプーリ60におけるベルト110に対してベルト挟圧力を発生する手段がセカンダリ油圧室64のみであっても良い。
作動油供給排出弁70は、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する際、あるいはプライマリ油圧室55から作動油を排出する際にも開弁するものである。実施の形態1では、1つの作動油供給排出弁70が開弁することで、プライマリ油圧室55への作動油の供給およびプライマリ油圧室55からの作動油の排出を行う。作動油供給排出弁70は、図2、図5、図7に示すように、閉弁することでプライマリ油圧室55内の作動油の保持が行われて変速比γを固定し、開弁するとともにプライマリ油圧室55の外部、すなわちプライマリプーリ50の外部からプライマリ油圧室55へ作動油が供給されて変速比γを減少(アップシフト)し、開弁するとともにプライマリ油圧室55からプライマリプーリ50の外部に作動油が排出されて変速比γを増加(ダウンシフト)するものである。ここで、作動油供給排出弁70は、弁配置部材56に配置されている。つまり、作動油供給排出弁70は、一方のプーリであるプライマリプーリ50と一体回転するものである。
作動油供給排出弁70は、弁体71と、弁座面72と、弁体弾性部材73とにより構成されている。各弁体71は、球形状であり、弁座面72よりもプライマリ油圧室側に配置され、弁座面72の内径よりも大きい直径である。弁座面72は、プライマリ固定シーブ側(弁配置通路56aの他方の端部から一方の端部)に向かうに伴い、径方向外側に向かって傾斜するテーパー形状である。弁体71が弁座面72に接触することで、弁配置通路56aと空間部T6との連通が遮断され、すなわち供給排出経路とプライマリ油圧室55との連通が遮断され、各作動油供給排出弁70が閉弁される。また、弁体71が弁座面72から離れることで、弁配置通路56aと空間部T6とが連通され、すなわち供給排出経路とプライマリ油圧室55とが連通され、各作動油供給排出弁70が開弁される。従って、各作動油供給排出弁70が閉弁することにより、プライマリプーリ50内の作動油と供給排出経路の各作動油供給排出弁70よりも上流側(各作動油供給排出弁70を挟んでプライマリ油圧室55側と反対側)の作動油(以下、単に「上流側作動油」と称する)とが接触する。各作動油供給排出弁70は、開弁方向に向かって開弁し、閉弁方向に向かって閉弁する。
弁体弾性部材73は、弁体閉弁方向押圧力発生手段であり、弁体71を閉弁方向に押圧する弁体閉弁方向押圧力を弁体71に作用させるものである。弁体弾性部材73は、例えばコイルスプリングであり、一部がプライマリ隔壁54の隔壁側収納部54hに収納されている。弁体弾性部材73は、弁体71を介して、隔壁側収納部54hと、弁体面72との間に付勢された状態で配置されている。つまり、弁体弾性部材73は、弁体71を介して弁配置部材56と隔壁部材であるプライマリ隔壁54との間に付勢された状態で配置されている。これにより、弁体弾性部材73は、閉弁付勢力を発生しており、閉弁付勢力が、弁体71が弁座面72に接触する方向、すなわち閉弁方向の弾性部材押圧力である弁体閉弁方向押圧力として弁体71に作用している。つまり、弁体71が弁座面72にそれぞれ押さえつけられ、各作動油供給排出弁70が逆止弁として機能する。
アクチュエータ80は、弁開閉制御手段である。アクチュエータ80は、作動油供給排出弁70の開閉を制御するものであり、油圧により作動するものである。アクチュエータ80は、作動油供給排出弁70を開弁させるものである。アクチュエータ80は、駆動油圧室81と、ピストン82とにより構成されている。なお、83はピストン弾性部材であり、84はキャンセル室であり、85はピストン弾性部材を保持する弾性部材保持部材である。
駆動油圧室81は、作動油が供給されるものであり、供給された作動油の圧力、すなわち駆動油圧室81の駆動油圧P2により、上記作動油供給排出弁70の開閉弁を制御するものである。駆動油圧室81は、ピストン82の後述する受圧部材82aと、プライマリ隔壁54と、カバー部材57との間に形成されるものである。駆動油圧室81は、リング形状の空間部であり、駆動側主通路51bを介して油圧制御装置130から作動油が供給される。従って、ピストン82には、駆動油圧室81の駆動油圧P2により、ピストン開弁方向押圧力が作用する。ここで、受圧部材82aと、プライマリ隔壁54およびカバー部材57との間には、例えばシールリングなどの駆動油圧室用シール部材S4が設けられている。つまり、駆動油圧室81を構成するカバー部材57と、プライマリ隔壁54と、ピストン82の受圧部材82aとにより形成される空間部は、駆動油圧室用シール部材S4によりシールされている。
ピストン82は、駆動油圧室81の駆動油圧P2により、駆動油圧室81に対して摺動方向うち一方、すなわち軸方向のうち一方(同図右方向)に摺動することで、各作動油供給排出弁70を開弁させるものである。ピストン82は、受圧部材82aと、押圧部材82bとにより構成されている。
受圧部材82aは、プライマリ隔壁54とカバー部材57とにより、駆動油圧室81に対して摺動方向、すなわち軸方向に摺動自在に支持されている。受圧部材82aは、駆動油圧室81の駆動油圧P2を受けるものである。受圧部材82aは、駆動油圧室81の駆動油圧P2によって作用するピストン開弁方向押圧力により、駆動室油圧81に対して摺動方向のうち一方である軸方向のうち一方、すなわち開弁方向に摺動する。また、受圧部材82aには、受圧側収納部82cが形成されている。受圧側収納部82cは、一方の端部(同図右側端部)が受圧部材82aの軸方向における両側面のうち、一方の側面(同図右側側面)に開口し、キャンセル室84と連通し、他方の端部(同図左側端部)が受圧部材82aの内部で閉塞している。受圧側収納部82cは、ここでは、弁配置部材56の各配置側収納部56dにそれぞれ対向して形成されている。
押圧部材82bは、受圧部材82aと、各作動油供給排出弁70の弁体71との間にそれぞれ配置されているものである。各押圧部材82bは、弁配置部材56の各摺動支持穴56cがそれぞれ挿入され、各摺動支持穴56cに対して軸方向に摺動自在に支持されている。つまり、各押圧部材82bは、一方のプーリであるプライマリプーリ50に対して軸方向に摺動自在に支持されている。各押圧部材82bは、一方の端部(同図右側端部)が各作動油供給排出弁70の弁体71とそれぞれ対向し、各弁体71と当接することができる。また、各押圧部材82bは、他方の端部(同図左側端部)が受圧部材82aと対向し、受圧部材82aと当接することができる。従って、各押圧部材82bは、各弁体71および受圧部材82aと接触した状態で、プライマリプーリ50に対して軸方向に摺動することができる。これにより、アクチュエータ80と各作動油供給排出弁70との間で軸方向の力、例えば受圧部材82aに作用するピストン開弁方向押圧力などを伝達することができる。つまり、押圧部材82bは、駆動油圧室81の駆動油圧P2により、受圧部材82aが軸方向のうち一方に摺動することで、受圧部材82aが当接すると、受圧部材82aと同一方向に摺動する。
ピストン弾性部材83は、ピストン閉弁方向押圧力発生手段である。ピストン弾性部材83は、配置側収納部56dと、受圧側収納部82cとの間に付勢された状態で配置されている。ここで、ピストン弾性部材83は、ピストン82が駆動室油圧81に対する摺動方向のうち最も他方向である軸方向のうち最も他方向、すなわち最も閉弁方向に位置した際にもピストン付勢力が発生するように配置されている。従って、ピストン弾性部材83は、ピストン付勢力を発生しており、ピストン付勢力によりピストン82の受圧部材82aが駆動油圧室81に対する摺動方向のうち他方向である軸方向のうち他方向、すなわち閉弁方向の弾性部材押圧力がピストン閉弁方向押圧力として受圧部材82aに作用している。これにより、弁体弾性部材73により発生する閉弁付勢力により弁体71に作用させる弁体閉弁方向押圧力によって、ピストン82を摺動方向のうち他方に摺動させなくても良い。
ここで、各作動油供給排出弁70を開弁する場合は、弁体71が弁座面72から離れる方向、すなわち開弁方向に弁体71に作用する押圧力である弁体開弁方向押圧力が、弁体71が弁座面72に接触する方向、すなわち閉弁方向に弁体71に作用する押圧力である弁体閉弁方向押圧力を超え、弁体71が弁座面72から離れることで行われる。これにより、各作動油供給排出弁70は、プライマリ油圧室55に作動油を供給する際およびプライマリ油圧室55から作動油を排出する際に開弁するものである。
各作動油供給排出弁70は、ここでは、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に作動油を供給する際およびプライマリ油圧室55から作動油を排出する際に拘わらずアクチュエータ80により開弁される。つまり、アクチュエータ80は、プライマリ油圧室55から作動油を排出する際に、作動油排出弁である各作動油供給排出弁70を開弁し、プライマリ油圧室55に作動油を供給する際にも、各作動油供給排出弁70を開弁する。
アクチュエータ80は、まず、駆動油圧室81の駆動油圧P2によりピストン82の受圧部材82aにピストン開弁方向押圧力を作用させることで、受圧部材82aを摺動方向のうち一方である軸方向のうち一方、すなわち開弁方向に摺動させる。受圧部材82aが開弁方向に摺動すると、受圧部材82aと各押圧部材82bとが接触し、各押圧部材82bが受圧部材82aとともに開弁方向に摺動する。そして、各押圧部材82bが各作動油供給排出弁70の弁体71と接触することで、ピストン82に作用するピストン開弁方向押圧力からピストン閉弁方向押圧力を引いた差分押圧力が上記弁体開弁方向押圧力として、各弁体71にそれぞれ作用する。従って、各作動油供給排出弁70は、弁体開弁方向押圧力である差分押圧力が弁体閉弁方向押圧力を超えることによって、弁体71が弁座面72に対して開弁方向に移動し、各作動油供給排出弁70が開弁される。弁体閉弁方向押圧力は、上記弁体弾性部材73が発生する閉弁付勢力により各弁体71に作用する弾性部材押圧力と、各弁配置通路56aのうち弁体71よりもプライマリ隔壁側に存在する作動油の圧力、すなわちプライマリ油圧室55のプライマリ油圧P1により各弁体71に閉弁方向に作用する作動油閉弁方向押圧力とが含まれる。
なお、プライマリ油圧室55のプライマリ油圧P1により弁体71に作用する作動油閉弁方向押圧力は、上述のように閉弁方向の押圧力として弁体71に作用するため、プライマリ油圧室55のプライマリ油圧P1が上昇しても、弁体71が弁座面72から離れることがない。従って、弁体71に作用する弁体開弁方向押圧力が弁体開弁方向押圧力を超えない限り、各作動油供給排出弁70の閉弁状態は維持されため、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55の作動油がこのプライマリ油圧室55に確実に保持される。実施の形態1では、アクチュエータ80の作動を油圧により行うが、これに限定されるものではなく、モータなどの回転力や電磁力などを用いても良い。
キャンセル室84は、作動油が供給されるものであり、ピストン82の受圧部材82aを挟んで駆動油圧室81と対向して配置されている。キャンセル室84は、一方のプーリであるプライマリプーリ50が回転することで、キャンセル室84内の作動油に発生する遠心油圧により、駆動油圧室81内の作動油に発生する遠心油圧を相殺するものである。キャンセル室84は、プライマリ隔壁54と、弁配置部材56と、カバー部材57と、ピストン82の受圧部材82aとより構成されている。キャンセル室84は、径方向内側の端部で隔壁側連通通路54gと連通している。キャンセル室84に供給された作動油に発生する遠心油圧は、駆動油圧室81に供給された作動油に発生する遠心油圧が開弁方向の押圧力としてピストンに作用する際に、閉弁方向の押圧力としてピストン82に作用し、駆動油圧室81内の作動油に発生する遠心油圧を相殺する。ここで、プライマリ隔壁54と弁配置部材56との間、弁配置部材56とカバー部材57との間には、例えばシールリングなどのキャンセル室用シール部材S5が設けられている。つまり、キャンセル室84を構成するプライマリ隔壁54と、弁配置部材56と、カバー部材57と、ピストン82の受圧部材82aとにより形成される空間部は、駆動油圧室用シール部材S4とキャンセル室用シール部材S5とによりシールされている。
セカンダリプーリ60と最終減速機90との間には、図1に示すように、動力伝達経路100が配置されている。この動力伝達経路100は、セカンダリプーリ軸61と同一軸線上の入力軸101と、この入力軸101と平行なインターミディエイトシャフト102と、カウンタドライブピニオン103、カウンタドリブンギヤ104と、ファイナルドライブピニオン105とにより構成されている。入力軸101およびこの入力軸101に固定されているカウンタドライブピニオン103は、軸受118,119により回転可能の保持されている。インターミディエイトシャフト102は、軸受116,117により回転可能に支持されている。カウンタドリブンギヤ104は、インターミディエイトシャフト102に固定されており、カウンタドライブピニオン103と噛み合わされている。また、ファイナルドライブピニオン105は、インターミディエイトシャフト102に固定されている。
ベルト式無段変速機1−1の最終減速機90は、動力伝達経路100を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクTを車輪120,120から路面に伝達するものである。この最終減速機90は、中空部が形成されたデフケース91と、ピニオンシャフト92と、デフ用ピニオン93,94と、サイドギヤ95,96とにより構成されている。
デフケース91は、軸受97,98により回転可能に支持されている。また、このデフケース91の外周には、リングギヤ99が設けられており、このリングギヤ99がファイナルドライブピニオン105と噛み合わされている。ピニオンシャフト92は、デフケース91の中空部に取り付けられている。デフ用ピニオン93,94は、このピニオンシャフト92に回転可能に取り付けられている。サイドギヤ95,96は、このデフ用ピニオン93,94の両方に噛み合わされている。このサイドギヤ95,96は、それぞれドライブシャフト121,122に固定されている。
ベルト式無段変速機1−1のベルト110は、プライマリプーリ50を介して伝達された内燃機関10からの出力トルクTをセカンダリプーリ60に伝達するものである。このベルト110は、図1に示すように、プライマリプーリ50とのプライマリ溝110aとセカンダリプーリ60のセカンダリ溝110bとの間に巻き掛けられている。つまり、ベルト110は、プライマリプーリ50およびセカンダリプーリ60に巻き掛けられている。また、ベルト110は、例えば多数の金属製の駒と複数本のスチールリングで構成された無端ベルトである。
ドライブシャフト121,122は、その一方の端部にそれぞれサイドギヤ95,96が固定され、他方の端部に車輪120,120が取り付けられている。
油圧制御装置130は、油圧制御手段である。油圧制御装置130は、一方の挟圧力発生油圧室であるプライマリ油圧室55に対する作動油の供給排出を制御するものである。また、油圧制御装置130は、ベルト式無段変速機1および内燃機関10が搭載されている車両において作動油の供給を必要とする作動油供給部分に作動油を供給するものでもある。油圧制御装置130は、プライマリ油圧室55に作動油を供給する際に、プライマリプーリ50と上記供給排出経路とが連通することにより、供給排出経路を介してプライマリ油圧室55に作動油を供給するものである。また、油圧制御装置130は、プライマリ油圧室55から作動油を排出する際に、プライマリ油圧室55と供給排出経路とが連通することにより、供給排出経路を介してプライマリ油圧室55から作動油を排出するものでもある。また、油圧制御装置130は、駆動油圧室81に作動油を供給するものでもある。
油圧制御装置130は、図4に示すように、プライマリ油圧室55、セカンダリ油圧室64、駆動油圧室81などに作動油を供給し、これらの油圧、作動油の供給流量、作動油の排出流量を制御することで、ベルト式無段変速機1の変速比γを制御するものでもある。なお、同図では、プライマリ油圧室55、セカンダリ油圧室64、駆動油圧室81を除く作動油供給部分(上述した作動油供給部分や、ベルト式無段変速機1などのトランスアクスル20内に収入されたものの潤滑部分(例えば、可動部品との間に摺動部を有する静止部品、可動部品あるいは静止部品との間に摺動部を有する可動部品))の図示は省略する。油圧制御装置130は、図4に示すように、オイルパン131、オイルポンプ132、ライン圧制御装置133と、一定圧制御装置134と、プライマリ油圧室用制御装置135と、駆動油圧室用制御装置136と、セカンダリ油圧室用制御装置137とにより構成されている。
オイルポンプ132は、オイルパン131に貯留されている作動油を吸引、加圧し、吐出するものである。オイルポンプ132は、油路R1を介してライン圧制御装置133に接続されている。オイルポンプ132によって加圧され、吐出された作動油は、ライン圧制御装置133に供給される。つまり、オイルポンプ132の吐出圧Poutは、ライン圧制御装置133に導入される。オイルポンプ132は、図1に示すように、トルクコンバータ30と前後進切換機構40との間に配置されている。このオイルポンプ132は、ロータ132aと、ハブ132bと、ボディ132cとにより構成されている。このオイルポンプ132は、ロータ132aにより円筒形状のハブ132bを介して、上記ポンプ31に接続されている。また、ボディ132cが上記トランスアクスルケース22に固定されている。また、ハブ132bは、上記中空軸36にスプライン嵌合されている。従って、オイルポンプ132は、内燃機関10からの出力トルクTがポンプ31を介してロータ132aに伝達されるので、駆動することができる。つまり、オイルポンプ132は、内燃機関10の回転数の上昇に応じて、吐出される作動油の吐出量が増量、すなわち吐出圧Poutが上昇する。
また、オイルポンプ132は、例えば、油路R1および分岐油路R11を介して、キャンセル室84に接続されている。ここでは、オイルポンプ132は、油路R1、分岐油路R11、第2連通通路23d、空間部T4、軸側連通通路51e、空間部T5、カバー側連通通路57aおよび隔壁側連通通路54gを介してプライマリ油圧室55と接続されている。従って、キャンセル室84には、常に作動油が油圧制御装置130から供給されることとなる。なお、ここでは、キャンセル室84は、オイルポンプ132と接続されているが、図示しない潤滑部分に供給されたオイルをオイルパン131に戻す際の戻し通路と接続されていても良い。
ライン圧制御装置133は、オイルポンプ132の吐出圧Poutが所定のライン圧PLとなるように調圧するものである。つまり、ライン圧制御装置133は、入力油圧である油路R1の油圧Poutを調圧して、ライン圧制御装置133からの出力油圧をライン圧PLとするものである。ライン圧制御装置133は、油路R2を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する供給側流量制御弁135cの第2ポート135lと接続され、油路R2および分岐油路R21を介して一定圧制御装置134と接続され、油路R2および分岐油路R22を介してセカンダリ油圧室用制御装置137と接続されている。従って、ライン圧制御装置133により調圧されたライン圧PLは、供給側流量制御弁135cの第2ポート135l、一定圧制御装置134、セカンダリ油圧室用制御装置137に導入される。ライン圧制御装置133は、内燃機関10の出力トルクTに応じてライン圧PLを調圧するものである。ライン圧制御装置133は、オイルポンプ132から吐出された作動油の圧力を調圧する図示しない電磁弁、例えばリニアソレノイド弁が備えられている。ライン圧制御装置133は、ECU140と電気的に接続されおり、ECU140からの制御信号により、リニアソレノイド弁の弁開度が制御されることで、ライン圧PLを調圧することができる。
一定圧制御装置134は、ライン圧制御装置133から出力されたライン圧PLを常に一定の圧力となるように調圧するものである。つまり、一定圧制御装置134は、入力油圧である油路R2および分岐油路R21の油圧PLを調圧して、一定圧制御装置134からの出力油圧を一定圧PSとするものである。一定圧制御装置134は、油路R3を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する供給側制御弁135aの第1ポート135eと接続され、油路R3および分岐油路R31を介してプライマリ油圧室用制御装置135の後述する排出側制御弁135bの第1ポート135hと接続され、油路R3および分岐油路R32を介して駆動油圧室用制御装置136と接続されている。従って、一定圧制御装置134により調圧された一定圧PSは、供給側制御弁135aの第1ポート135e、排出側制御弁135bの第1ポート135h、駆動油圧室用制御装置136に導入される。
プライマリ油圧室用制御装置135は、プライマリ油圧室55への作動油の供給あるいはプライマリ油圧室55からの作動油の排出を制御するものである。プライマリ油圧室用制御装置135は、実施例1ではプライマリ油圧室55へ供給される作動油の供給流量およびプライマリ油圧室55から排出された作動油の排出流量を制御するものである。プライマリ油圧室用制御装置135は、供給側制御弁135aと、排出側制御弁135bと、供給側流量制御弁135cと、排出側流量制御弁135dとにより構成されている。
供給側制御弁135aは、供給側流量制御弁135cによるプライマリ油圧室55に供給される作動油の供給流量制御を行うものである。供給側制御弁135aは、ON/OFFにより、3つのポート、すなわち第1ポート135eと、第2ポート135fと、第3ポート135gとの連通を切り替えるものである。第1ポート135eは、上述のように一定圧制御装置134と接続されている。第2ポート135fは、油路R4を介して供給側流量制御弁135cの後述する第1ポート135kと接続されている。また、第2ポート135fは、油路R4および分岐油路R41を介して排出側流量制御弁135dの後述する第4ポート135uと接続されている。第3ポート135gは、合流油路R51および油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第3ポート135gは、大気圧に解放されている。
供給側制御弁135aは、ONとなると、第1ポート135eと第2ポート135fとが連通する。従って、供給側制御弁135aに導入された一定圧PSが供給側流量制御弁135cの第1ポート135kに導入される(図6参照)。つまり、供給側制御弁135aに導入された一定圧PSが第1ポート135kと連通する供給側流量制御弁135cの後述する制御油圧室135oに導入される。また、供給側制御弁135aに導入された一定圧PSが排出側流量制御弁135dの第4ポート135uに導入される(同図参照)。一方、供給側制御弁135aは、OFFとなると、第2ポート135fと第3ポート135gとが連通する。従って、供給側流量制御弁135cの第1ポート135kは、供給側制御弁135aを介して大気圧に解放される(図8参照)。つまり、供給側流量制御弁135cの第1ポート135kを介して制御油圧室135oが大気圧に解放される。また、排出側流量制御弁135dの第4ポート135uは、供給側制御弁135aを介して大気圧に解放される(同図参照)。ここで、供給側制御弁135aは、図4に示すように、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号によりデューティー制御される。従って、供給側制御弁135aは、ECU140からの制御信号により、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oを一定圧PSから大気圧までの間で調圧することができる。
排出側制御弁135bは、排出側流量制御弁135dによるプライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量制御を行うものである。排出側制御弁135bは、ON/OFFにより、3つのポート、すなわち第1ポート135hと、第2ポート135iと、第3ポート135jとの連通を切り替えるものである。第1ポート135hは、上述のように一定圧制御装置134と接続されている。第2ポート135iは、油路R6を介して排出側流量制御弁135dの後述する第1ポート135rと接続されている。また、第2ポート135iは、油路R6および分岐油路R61を介して供給側流量制御弁135cの後述する第4ポート135nと接続されている。第3ポート135jは、油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第3ポート135jは、大気圧に解放されている。
排出側制御弁135bは、ONとなると、第1ポート135hと第2ポート135iとが連通する。従って、排出側制御弁135bに導入された一定圧PSが排出側流量制御弁135dの第1ポート135rに導入される(図8参照)。つまり、排出側制御弁135bに導入された一定圧PSが第1ポート135rと連通する排出側流量制御弁135dの後述する制御油圧室135vに導入される。また、排出側制御弁135bに導入された一定圧PSが供給側流量制御弁135cの第4ポート135nに導入される(同図参照)。一方、排出側制御弁135bは、OFFとなると、第2ポート135iと第3ポート135jとが連通する。従って、排出側流量制御弁135dの第1ポート135rは、排出側制御弁135bを介して大気圧に解放される(図6参照)。つまり、排出側流量制御弁135dの第1ポート135rを介して制御油圧室135vが大気圧に解放される。また、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nは、排出側制御弁135bを介して大気圧に解放される(同図参照)。ここで、排出側制御弁135bは、図4に示すように、ECU140と電気的に接続されており、ECU140からの制御信号によりデューティー制御される。従って、排出側制御弁135bは、ECU140からの制御信号により、排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを一定圧PSから大気圧までの間で調圧することができる。
供給側流量制御弁135cは、プライマリ油圧室55に供給される作動油の供給流量を制御するものである。供給側流量制御弁135cは、第1ポート135kと、第2ポート135lと、第3ポート135mと、第4ポート135nと、制御油圧室135oと、スプール135pと、スプール弾性部材135qとにより構成されている。第1ポート135kは、上述のように供給側制御弁135aの第2ポート135fと接続されている。第2ポート135lは、上述のように、ライン圧制御装置133と接続されている。第3ポート135mは、油路R7を介してプライマリ油圧室55と接続されている。ここでは、第3ポート135mは、油路R7および供給排出経路(供給排出側主通路51a、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、各隔壁側連通通路54e、空間部T7、各配置側連通通路56b、各弁配置通路56a、空間部T6および各開口穴54i)を介してプライマリ油圧室55と接続されている。第4ポート135nは、上述のように排出側制御弁135bの第2ポート135iと接続されている。なお、同図に示すように、供給側制御弁135aの第2ポート135fと供給側流量制御弁135cの第1ポート135kとの間、ライン圧制御装置133と供給側流量制御弁135cの第2ポート135lとの間に、オリフィス、すなわち絞りを設け、供給側制御弁135aから供給側流量制御弁135cへ流入する作動油およびライン圧制御装置133から供給側流量制御弁135cへ流入する作動油の圧力あるいは流量を調整しても良い。
制御油圧室135oは、第1ポート135kと連通するものであり、その油圧によりスプール135pをスプール135pが移動する方向のうち一方向(同図では、上方向)に押圧するスプール開弁方向押圧力をスプール135pに作用させるものである。スプール135pは、プライマリ油圧室用制御装置135内で移動自在に支持されており、移動方向のうち一方向に移動することで第2ポート135lと第3ポート135mとを連通し、移動方向のうち他方向に移動することで、第2ポート135lと第3ポート135mと連通を遮断するものである。スプール弾性部材135qは、スプール135pと、スプール135pに対して静止している部材との間に付勢された状態で配置されている。従って、スプール弾性部材135qは、スプール付勢力を発生しており、スプール付勢力によりスプール135pをスプール135pが移動する方向のうち他方向(同図では、下方向)に押圧するスプール閉弁方向押圧力をスプール135pに作用させるものである。
供給側流量制御弁135cは、スプール135pに作用する上記スプール開弁方向押圧力が上記スプール閉弁方向押圧力を超えることで、スプール135pが移動方向のうち一方向に移動する。ここで、供給側流量制御弁135cは、スプール135pの移動方向のうち一方向への移動量の増加に伴い、第2ポート135lと第3ポート135mと連通の度合い、すなわち第2ポート135lと第3ポート135mとを連通する流路の流路断面積が増加する。つまり、供給側流量制御弁135cは、供給側制御弁135aにより調圧された制御油圧室135oの油圧により、スプール135pが移動することで、2つのポート、すなわち第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を制御し、供給流量を制御するものである。
排出側流量制御弁135dは、プライマリ油圧室55から排出される作動油の排出流量を制御するものである。排出側流量制御弁135dは、第1ポート135rと、第2ポート135sと、第3ポート135tと、第4ポート135uと、制御油圧室135vと、スプール135wと、スプール弾性部材135xとにより構成されている。第1ポート135rは、上述のように排出側制御弁135bの第2ポート135iと接続されている。第2ポート135sは、合流油路R52、合流油路R51および油路R5を介してオイルパン131と接続されている。つまり、第2ポート135sは、大気圧に解放されている。第3ポート135tは、分岐油路R71および油路R7を介してプライマリ油圧室55と接続されている。実施例1では、第3ポート135tは、分岐油路R71、油路R7、および供給排出経路(供給排出側主通路51a、各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、各隔壁側連通通路54e、空間部T7、各配置側連通通路56b、各弁配置通路56a、空間部T6および各開口穴54i)を介してプライマリ油圧室55と接続されている。第4ポート135uは、上述のように供給側制御弁135aの第2ポート135fと接続されている。なお、同図に示すように、排出側制御弁135bの第2ポート135iと排出側流量制御弁135dの第1ポート135rとの間に、オリフィス、すなわち絞りを設け、排出側制御弁135bから排出側流量制御弁135dへ流入する作動油の圧力あるいは流量を調整しても良い。
制御油圧室135vは、第1ポート135rと連通するものであり、その油圧によりスプール135wをスプール135wが移動する方向のうち一方向(同図では、上方向)に押圧するスプール開弁方向押圧力をスプール135wに作用させるものである。スプール135wは、プライマリ油圧室用制御装置135内で移動自在に支持されており、移動方向のうち一方向に移動することで第2ポート135sと第3ポート135tとを連通し、移動方向のうち他方向に移動することで、第2ポート135sと第3ポート135tと連通を遮断するものである。スプール弾性部材135xは、スプール135wと、スプール135wに対して静止している部材との間に付勢された状態で配置されている。従って、スプール弾性部材135xは、スプール付勢力を発生しており、スプール付勢力によりスプール135wをスプール135wが移動する方向のうち他方向(同図では、下方向)に押圧するスプール閉弁方向押圧力をスプール135wに作用させるものである。
排出側流量制御弁135dは、スプール135wに作用する上記スプール開弁方向押圧力が上記スプール閉弁方向押圧力を超えることで、スプール135wが移動方向のうち一方向に移動する。ここで、排出側流量制御弁135dは、スプール135wの移動方向のうち一方向への移動量の増加に伴い、第2ポート135sと第3ポート135tと連通の度合い、すなわち第2ポート135sと第3ポート135tとを連通する流路の流路断面積が増加する。つまり、排出側流量制御弁135dは、排出側制御弁135bにより調圧された制御油圧室135vの油圧により、スプール135wが移動することで、2つのポート、すなわち第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を制御し、排出流量を制御するものである。
駆動油圧室用制御装置136は、駆動油圧室81の駆動油圧P2を調圧するものである。駆動油圧室用制御装置136には、上述のように、一定圧制御装置134から一定圧PSが導入される。また、駆動油圧室用制御装置136は、油路R8を介して駆動油圧室81と接続されている。ここでは、駆動油圧室用制御装置136は、油路R8、第1連通通路23b、駆動側主通路51b、軸側連通通路51d、空間部T3および隔壁側連通通路54fを介して駆動油圧室81と接続されている。駆動油圧室用制御装置136は、図示しないON/OFF弁が備えられている。駆動油圧室用制御装置136は、ECU140と電気的に接続されおり、ECU140からの制御信号により、ON/OFF弁をON/OFF制御する。駆動油圧室用制御装置136は、ON制御される、すなわちON/OFF弁がONとされると、分岐油路R32と油路R8とが連通し、駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧PSが駆動油圧室81に導入され、駆動油圧室81の駆動油圧P2が一定圧PSとなる。一方、駆動油圧室用制御装置136は、OFF制御される、すなわちON/OFF弁がOFFとされると、分岐油路R32と油路R8との連通が遮断されるとともに、例えば油路R8が外部に解放され、駆動油圧室81の駆動油圧P2が大気圧となる。ここで、一定圧PSとは、少なくとも駆動油圧室81の駆動油圧P2が一定圧PSとなった際に、駆動油圧室81の駆動油圧P2により作動油供給排出弁70を開弁することができる油圧以上である。
セカンダリ油圧室用制御装置137は、セカンダリ油圧室64への作動油の供給あるいはセカンダリ油圧室64からの作動油の排出を制御するものである。セカンダリ油圧室用制御装置137には、上述のように、ライン圧制御装置133からライン圧PLが導入される。セカンダリ油圧室用制御装置137は、油路R9を介してセカンダリ油圧室64と接続されている。実施例1では、セカンダリ油圧室用制御装置137は、油路R9、セカンダリプーリ軸61の図示しない作動油通路および図示しない作動流体供給孔を介してセカンダリ油圧室64と接続されている。セカンダリ油圧室用制御装置137は、図示しない流量制御弁などを備える。セカンダリ油圧室用制御装置137は、ECU140と電気的に接続されおり、ECU140からの制御信号により制御され導入されたライン圧PLを調圧する。
ECU140は、制御手段である。ECU140は、油圧制御装置130と内燃機関10と接続されており、油圧制御装置130および内燃機関10を制御するものである。従って、ECU140は、油圧制御装置130に出力した制御信号により、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、ベルト式無段変速機1−1の変速比γを制御する。また、ECU140は、内燃機関10に出力した制御信号により、内燃機関10の図示しない燃料噴射弁、点火プラグ、スロットル弁を制御することで、内燃機関10の出力トルクTを制御する。なお、ECU140の基本構成は、従来の車両に搭載されているECUと同様の基本構成であるので説明は省略する。
次に、実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1の動作について説明する。まず、一般的な車両の前進、後進について説明する。車両に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が前進ポジションを選択した場合は、ECU140が油圧制御装置130から供給された作動油によりフォワードクラッチ42をON、リバースブレーキ43をOFFとし、前後進切換機構40を制御する。これにより、インプットシャフト38とプライマリプーリ軸51が直結状態となる。つまり、遊星歯車装置41のサンギヤ44とリングギヤ46を直接連結し、内燃機関10のクランクシャフト11の回転方向と同一方向にプライマリプーリ軸51を回転させ、この内燃機関10からの出力トルクTをプライマリプーリ50に伝達する。プライマリプーリ50に伝達された内燃機関10からの出力トルクTは、ベルト110を介してセカンダリプーリ60に伝達され、このセカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61を回転させる。
セカンダリプーリ60に伝達された内燃機関10の出力トルクTは、中間部材67から動力伝達経路100の入力軸101、カウンタドライブピニオン103およびカウンタドリブンギヤ104を介して、インターミディエイトシャフト102に伝達され、インターミディエイトシャフト102を回転させる。インターミディエイトシャフト102に伝達された出力トルクTは、ファイナルドライブピニオン105およびリングギヤ99を介して最終減速機90のデフケース91に伝達され、このデフケース91を回転させる。デフケース91に伝達された内燃機関10からの出力トルクTは、デフ用ピニオン93,94およびサイドギヤ95,96を介してドライブシャフト121,122に伝達され、その端部に取り付けられた車輪120,120に伝達され、車輪120,120を図示しない路面に対して回転させ、車両は前進する。
一方、車両に設けられた図示しないシフトポジション装置により、運転者が後進ポジションを選択した場合は、ECU140が、油圧制御装置130から供給された作動油によりフォワードクラッチ42をOFF、リバースブレーキ43をONとし、前後進切換機構40を制御する。これにより、遊星歯車装置41の切換用キャリヤ47がトランスアクスルケース22に固定され、各ピニオン45が自転のみを行うように切換用キャリヤ47に保持される。従って、リングギヤ46がインプットシャフト38と同一方向に回転し、このリングギヤ46と噛合っている各ピニオン45もインプットシャフト38と同一方向に回転し、この各ピニオン45と噛合っているサンギヤ44がインプットシャフト38と逆方向に回転する。つまり、サンギヤ44に連結されているプライマリプーリ軸51は、インプットシャフト38と逆方向に回転する。これにより、セカンダリプーリ60のセカンダリプーリ軸61、入力軸101、インターミディエイトシャフト102、デフケース91、ドライブシャフト121,122などは、運転者が前進ポジションを選択した場合とは逆方向に回転し、車両が後進する。
ここで、ECU140は、車両の速度や運転者のアクセル開度などの諸条件とECU140の記憶部に記憶されているマップ(例えば、機関回転数とスロットルバルブのスロットル開度に基づく最適燃費曲線など)とに基づいて、内燃機関10の運転状態が最適となるように、油圧制御装置130を介して、ベルト式無段変速機1の変速比γを制御する。ベルト式無段変速機1の変速比γの制御には、変速比γの変更と、変速比γの固定とがある。変速比γの変更、変速比γの固定は、プライマリ油圧室用制御装置135、駆動油圧室用制御装置136、セカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで行われる。
変速比γの変更は、各作動油供給排出弁70を開弁し、油圧制御装置130からプライマリ油圧室55への作動油の供給、あるいはプライマリ油圧室55から油圧制御装置130を介してプライマリプーリ50の外部への作動油の排出することで、プライマリ可動シーブ53がプライマリプーリ軸51の軸方向に摺動し、プライマリ固定シーブ52とこのプライマリ可動シーブ53との間の間隔、すなわちプライマリ溝110aの幅が調整される。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が変化し、プライマリプーリ50の回転数とセカンダリプーリ60の回転数との比である変速比γが無段階(連続的)に制御される。また、変速比γの固定は、各作動油供給排出弁70を閉弁し、プライマリ油圧室55内に作用油を保持することで行われる。
なお、セカンダリプーリ60においては、ECU140によりセカンダリ油圧室用制御装置137を制御することで、セカンダリ油圧室64の油圧を調圧し、セカンダリ固定シーブ62とこのセカンダリ可動シーブ63とによりベルト110を挟み付けるベルト挟圧力が調整される。これにより、プライマリプーリ50とセカンダリプーリ60との間に巻き掛けられたベルト110のベルト張力が制御される。
変速比γの変更には、アップシフト、すなわち変速比γを減少させる変速比減少変更と、ダウンシフト、すなわち変速比γを増加させる変速比増加変更とがある。ECU140は、変速比γを変更する際には、変速比減少制御あるいは変速増加制御を行う。以下、それぞれについて説明する。
ECU140による変速比減少制御では、油圧制御装置130からプライマリ油圧室55へ作動油を供給し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に摺動(移動)させることで行う。図5に示すように、各作動油供給排出弁70をアクチュエータ80により開弁し、油圧制御装置130からプライマリ油圧室55に作動油を供給する。具体的には、ECU140は、減少変速比γuと変速速度と算出し、これらに基づく制御信号を油圧制御装置130に出力する。
変速比減少制御では、駆動油圧室用制御装置136がECU140によりON制御される。従って、駆動油圧室用制御装置136に導入された一定圧PSが駆動油圧室81に導入され、駆動油圧室81の駆動油圧P2が一定圧PSとなる。アクチュエータ80は、駆動油圧室81の駆動油圧P2によりピストン82に作用するピストン開弁方向押圧力からピストン弾性部材83によりピストン82に作用するピストン閉弁方向押圧力を引いた差分押圧力を弁体開弁方向押圧力として各作動油供給排出弁70の弁体71にそれぞれ作用させる。ここで、弁体開弁方向押圧力は、上述のように、アクチュエータ80は、駆動油圧室81の駆動油圧P2が一定圧PSとなると、駆動油圧室81の駆動油圧P2により作動油供給排出弁70を開弁することができるため、弁体閉弁方向押圧力を超えることとなる。従って、作動油供給排出弁70は、図5に示すように、アクチュエータ80により弁体71がプライマリ隔壁54に対して開弁方向に移動され、開弁する。
また、変速比減少制御では、プライマリ油圧室用制御装置135の供給側制御弁135aがECU140によりデューティー制御されることで、供給側流量制御弁135cによるプライマリ油圧室55への作動油の供給流量制御を行う。供給側制御弁135aは、ECU140によりデューティー制御されると、図6に示すように、ONとOFFとを繰り返し、供給側流量制御弁135cの制御油圧室135oの制御油圧を供給時所定圧に調圧し、排出側流量制御弁135dの第4ポート135uに供給時所定圧を導入する。ここで、供給時所定圧は、スプール135pに作用するスプール開弁方向押圧力により、第2ポート135lと第3ポート135mとの連通を制御することで制御される供給流量を減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量とすることができる圧力である。従って、供給側流量制御弁135cは、制御油圧室135oの制御油圧、すなわち供給時所定圧に基づいたスプール開弁方向押圧力がスプール閉弁方向押圧力を超えるため、同図の矢印Aに示すように、スプール135pが移動方向のうち一方向へ移動し、第2ポート135lと第3ポート135mとが連通する。これにより、供給側流量制御弁135cが開弁され、プライマリ油圧室55への作動油の供給流量が減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量となる。
また、変速比減少制御では、プライマリ油圧室用制御装置135の排出側制御弁135bがECU140によりデューティー制御されることで、排出側流量制御弁135dによるプライマリ油圧室55からの作動油の排出流量制御を行う。排出側制御弁135bは、ECU140によりデューティー制御されると、OFFを維持し、供給側流量制御弁135cの第4ポート135nおよび排出側流量制御弁135dの制御油圧室135vを大気圧に解放する。従って、排出側流量制御弁135dは、スプール閉弁方向押圧力のみがスプール135wに作用するため、スプール135wが移動方向のうち最も他方向に位置した状態で維持され、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通しない。これにより、排出側流量制御弁135dが閉弁を維持し、プライマリ油圧室55からの作動油の排出流量が0となる。
上述のように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70が開弁されている。従って、供給側流量制御弁135cにライン圧PLで導入された作動油(ライン圧制御装置133と供給側流量制御弁135cの第2ポート135lとの間に、オリフィスが設けられている場合は、ライン圧PLから調整された圧力で導入された作動油)は、供給側流量制御弁135cにより減少変速比と変速速度とに基づいた供給流量に制御されて、図5の矢印Bに示すように、油路R7を介して供給排出経路の供給排出側主通路51aに流入する。供給排出側主通路51aに流入した作動油は、供給排出側主通路51aから各軸側連通通路51c、空間部T1,T2、各隔壁側連通通路54e、空間部T7、各配置側連通通路56b、各弁配置通路56a、空間部T6および各開口穴54iを介して、プライマリ油圧室55に供給される。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が増加し、セカンダリプーリ60におけるベルト110の接触半径が減少し、変速比γが原則変速比γu減少され、アップシフトが行われる。
ECU140による変速比増加制御では、プライマリ油圧室55から油圧制御装置130を介して作動油を外部に排出し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側と反対側に摺動(移動)させることで行われる。図7に示すように、作動油供給排出弁70を開弁し、プライマリ油圧室55から作動油を排出する。具体的には、ECU140は、増加変速比γdと変速速度と算出し、これらに基づく制御信号を油圧制御装置130に出力する。
変速比増加制御では、変速比減少制御と同様に、駆動油圧室用制御装置136がECU140によりON制御される。従って、作動油供給排出弁70は、図7に示すように、アクチュエータ80により弁体71がプライマリ隔壁54に対して開弁方向に移動され、開弁する。
また、変速比増加制御では、図8に示すように、供給側制御弁135aがECU140によりOFFを維持し、供給側流量制御弁135cが閉弁を維持し、プライマリ油圧室55への作動油の供給流量が0となる。
また、変速比増加制御では、排出側制御弁135bがECU140により、ONとOFFとを繰り返し、制御油圧室135vの制御油圧を排出時所定圧に調圧する。ここで、排出時所定圧は、スプール135wに作用するスプール開弁方向押圧力により、第2ポート135sと第3ポート135tとの連通を制御することで制御される排出流量を増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量とすることができる圧力である。従って、排出側流量制御弁135dは、制御油圧室135vの制御油圧、すなわち排出時所定圧に基づいたスプール開弁方向押圧力がスプール閉弁方向押圧力を超えるため、同図の矢印Cに示すように、スプール135wが移動方向のうち一方向へ移動し、第2ポート135sと第3ポート135tとが連通する。これにより、排出側流量制御弁135dが開弁され、プライマリ油圧室55からの作動油の排出流量が減少変速比と変速速度とに基づいた排出流量となる。
上述のように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70が開弁されている。従って、プライマリ油圧室55内の作動油は、図7の矢印Dに示すように、プライマリ油圧室55から供給排出経路の各開口穴54i、空間部T6、各弁配置通路56a、各配置側連通通路56b、空間部T7、各隔壁側連通通路54e、空間部T2,T1および各軸側連通通路51cを介して供給排出側主通路51aに流入する。供給排出側主通路51aに流入したプライマリ油圧室55内の作動油は、油路R7および分岐油路R71を介して排出側流量制御弁135dに流入し、排出側流量制御弁135dにより増加変速比と変速速度とに基づいた排出流量に制御されて、合流油路R52,R51および油路R5を介して、オイルパン131、すなわちプライマリ油圧室55の外部に排出される。従って、各作動油供給排出弁70を介してプライマリ油圧室55から作動油が排出されることにより、プライマリ油圧室55のプライマリ油圧P1が減少し、プライマリ可動シーブ53をプライマリ固定シーブ側に押圧する押圧力が減少し、プライマリ可動シーブ53が軸方向のうち、プライマリ固定シーブ側と反対側に摺動する。これにより、プライマリプーリ50におけるベルト110の接触半径が減少し、セカンダリプーリ60におけるベルト110の接触半径が増加し、変速比γが増加変速比γdまで増加され、ダウンシフトが行われる。
変速比γの固定は、プライマリ油圧室55へ作動油を供給せず、かつこのプライマリ油圧室55から作動油を排出せず、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する軸方向における位置を一定とし、プライマリ可動シーブ53のプライマリ固定シーブ52に対する移動を規制することで行われる。ECU140は、変速比γを固定する際には、変速比固定制御を行う。なお、変速比固定制御は、車両の走行状態が安定している場合など、大幅な変速比の変更を行う必要がないと、ECU140が判断した場合である。
ECU140による変速比固定制御では、図2に示すように、作動油供給排出弁70を閉弁し、作動油供給排出弁70を介したプライマリ油圧室55への作動油の供給および各作動油供給排出弁70を介したプライマリ油圧室55からの作動油の排出を禁止し、変速比γを固定変速比γhに維持する。具体的には、ECU140は、変速比γを固定変速比γhに維持するための制御信号を油圧制御装置130に出力する。
変速比固定制御では、駆動油圧室用制御装置136がECU140によりOFF制御される。従って、駆動油圧室81は、大気圧に解放され、駆動油圧室81の駆動油圧P2がほぼ大気圧となる。これにより、ピストン弾性部材83によるピストン閉弁方向押圧力のみがピストン82の受圧部材82aに作用するため、受圧部材82aは、摺動方向のうち他方向、すなわち閉弁方向に摺動する。これにより、各作動油供給排出弁70の弁体71には、弁体開弁方向押圧力が作用せず、弁体閉弁方向押圧力のみが作用することとなり、弁体71が閉弁方向に移動し弁座面72と接触し、各作動油供給排出弁70が閉弁する。
また、変速比固定制御では、ライン圧制御装置133がECU140により制御され、ライン圧PLが低くされる。実施の形態1では、変速比固定制御では、ライン圧制御装置130がECU140によりライン圧PLを変速比減少制御におけるライン圧PLよりも低く調圧する。
また、変速比固定制御では、図4に示すように、供給側制御弁135aがECU140により、ほぼOFFを維持し、供給側流量制御弁135cがほぼ閉弁状態を維持し、プライマリ油圧室55への作動油の供給流量がほぼ0となる。従って、上述の上流側作動油の油圧(以下、単に「供給圧Pin」と称する)がプライマリ油圧室55のプライマリ油圧P1よりも低くなる。
また、変速比固定制御では、排出側制御弁135bがECU140によりOFFを維持し、排出側流量制御弁135dが閉弁を維持し、プライマリ油圧室55からの作動油の排出流量が0となる。これにより、各作動油供給排出弁70を介したプライマリ油圧室55からの作動油の排出が禁止される。
実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1では、変速比固定時に各作動油供給排出弁70を1回開閉する一時開閉制御を油圧制御装置130が行う。実施の形態1では、ECU140は、変速比固定制御時に、閉弁状態の各作動油供給排出弁70を1回開閉する一時開閉制御を油圧制御装置130を介してアクチュエータ80に行わせる。図9は、実施の形態1にかかる一時開閉制御フローを示す図である。図10は、実施の形態1にかかる一時開閉制御時における油温の変化を示す図である。なお、図10は、供給圧Pinと、駆動油圧P2と、油温OTとの関係を示す図である。以下に、変速固定制御時における一時開閉制御について説明する。なお、ECU140は、制御周期ごとに動作する。
まず、ECU140は、図9に示すように変速固定制御中であるか否か判定する(ステップST101)。ここでは、ECU140は、変速比γを固定し、固定変速比γhに維持する変速比固定制御が行われている状態であるか否かを判定する。
次に、ECU140は、変速固定制御中であると判定する(ステップST101肯定)と、カウンターによるカウントを実行する(ステップST102)。ここでは、ECU140は、図示しないカウンターによるカウントを行うことで、変速比固定制御開始からの時間の経過を測定する(K=K+1)。なお、ECU140は、変速固定制御中でないと判定する(ステップST101否定)と、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
次に、ECU140は、カウンターのカウント値Kが第1所定値K1以上であるか否かを判定する(ステップST103)。ここでは、ECU140は、変速固定制御開始から第1所定時間を経過したかを判定する。ここで、第1所定値K1(第1所定時間)は、任意の値であるが、例えば変速固定制御開始してからプライマリ油圧室55内の作動油の油温OTが上昇するまで時間や、変速固定制御開始してからプライマリ油圧室55内の作動油の油温OTが所定油温OT1まで上昇するまでの時間などに基づいて予め設定されている。
次に、ECU140は、カウンターのカウント値Kが第1所定値K1以上であると判定する(ステップST103肯定)と、供給圧Pinを増圧する(ステップST104)。ここでは、ECU140は、一時開閉制御時に、プライマリ油圧室55に供給する作動油の圧力である上流側作動油の油圧、すなわち供給圧Pinを変速比固定時におけるプライマリ油圧室55の油圧P1とする油圧保持制御を開始する(Pin=P1)。油圧保持制御では、図10に示すように、ライン圧制御装置133がECU140により制御され、ライン圧PLが高くされる。実施の形態1では、油圧保持制御では、ライン圧制御装置130がECU140によりライン圧PLを供給圧Pinがプライマリ油圧P1となるように調圧される(同図t1)。なお、プライマリ油圧P1は、プライマリ油圧P1を検出する油圧センサにより検出された値や、内燃機関10の出力トルクT(例えば、図示しない回転数センサにより検出された機関回転数Neと図示しない燃料噴射弁により内燃機関10に供給される燃料噴射量とに基づいて算出)、ベルト式無段変速機1−1の入力回転数Nin(例えば、図示しない入力回転数センサにより検出)、固定変速比γh(例えば、入力回転数Ninと図示しない出力回転数センサにより検出された出力回転数Noutとに基づいて算出)、セカンダリ油圧室64のセカンダリ油圧P3などに基づいて算出された推定値を用いる。また、ECU140は、図9に示すように、カウンターのカウント値Kが第1所定値K1未満であると判定する(ステップST103否定)と、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。従って、変速比固定制御が継続されている場合は、カウンターのカウント値Kが第1所定値K1以上となるまで、カウンターによるカウントが実行される。
次に、ECU140は、各作動油供給排出弁70を開弁する(ステップST105)。ここでは、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136により駆動油圧室81の駆動油圧P2を一定圧PSとし、図10に示すように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70を開弁する(同図t2)。これにより、油圧制御装置130は、一時開閉制御を開始する。実施の形態1では、油圧保持制御がECU140により各作動油供給排出弁70の開弁(同図t2)よりも前(同図t1)から行われる。従って、各作動油供給排出弁70の開弁時には、油圧保持制御により供給圧Pinがプライマリ油圧P1となるので、開弁時におけるプライマリ油圧室55に作動油が供給あるいはプライマリ油圧室55から作動油が排出されることを抑制でき、開弁による変速比の変化を抑制することができる。これにより、一時開閉制御開始時におけるショックの発生を抑制でき、ドライバビリティを向上することができる。
次に、ECU140は、図9に示すように、カウンターのカウント値Kが第2所定値K2以上であるか否かを判定する(ステップST106)。ここでは、ECU140は、変速固定制御開始から第2所定時間を経過したかを判定する。ここで、第2所定値K2(第2所定時間)は、第1所定値K1(第1所定時間)よりも大きな任意の値であるが、例えば一時開閉制御開始してからプライマリ油圧室55内の作動油の油温OTが低下するまで時間や、一時開閉制御開始してからプライマリ油圧室55内の作動油の油温OTが所定油温OT2まで低下するまでの時間などに基づいて予め設定されている。
次に、ECU140は、カウンターのカウント値Kが第2所定値K2であると判定する(ステップST106肯定)と、各作動油供給排出弁70を閉弁する(ステップST107)。ここでは、ECU140は、駆動油圧室用制御装置136により駆動油圧室81の駆動油圧P2を大気圧とし、図10に示すように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70を閉弁する(同図t3)。これにより、油圧制御装置130は、一時開閉制御を終了する。一時開閉制御中(同図t2〜t3)、すなわち各作動油供給排出弁70を開弁中は、油圧保持制御により供給圧Pinがプライマリ油圧P1となるので、プライマリ油圧室55に作動油が供給あるいはプライマリ油圧室55から作動油が排出されることを抑制でき、開弁中における変速比の変化を抑制することができる。これにより、一時開閉制御中におけるショックの発生を抑制でき、ドライバビリティを向上することができる。なお、ECU140は、図9に示すように、カウンターのカウント値Kが第2所定値K2でないと判定する(ステップST106否定)と、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。従って、変速比固定制御が継続されている場合は、カウンターのカウント値Kが第2所定値K2となるまで、カウンターによるカウントが実行され、各作動油供給排出弁70を開弁が維持される。
次に、ECU140は、供給圧Pinを減圧する(ステップST108)。ここでは、ECU140は、一時開閉制御終了後に、プライマリ油圧室55に供給する作動油の圧力である上流側作動油の油圧、すなわち供給圧Pinを減圧する。図10に示すように、ライン圧制御装置133がECU140により制御され、ライン圧PLが油圧保持制御時におけるライン圧PLよりも低くされる。実施の形態1では、ライン圧制御装置130がECU140によりライン圧PLを供給圧Pinが油圧保持制御時における供給圧Pinよりも低い上述の変速固定制御時における供給圧Pinとなるように調圧される(同図t4)。つまり、実施の形態1では、油圧保持制御をECU140により各作動油供給排出弁70の閉弁(同図t3)の後(同図t4)まで行われる。従って、各作動油供給排出弁70の閉弁時には、油圧保持制御により供給圧Pinをプライマリ油圧P1に維持しているので、閉弁時におけるプライマリ油圧室55に作動油が供給あるいはプライマリ油圧室55から作動油が排出されることを抑制でき、閉弁による変速比の変化を抑制することができる。これにより、一時開閉制御終了時におけるショックの発生を抑制でき、ドライバビリティを向上することができる。
次に、ECU140は、図9に示すように、カウンターのカウントKをクリア(K=0)する(ステップST109)。
以上のように、実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1では、変速比固定時に各作動油供給排出弁70を1回開閉する一時開閉制御を行い、各作動油供給排出弁70の開弁中にプライマリ油圧室55内の作動油と上流側作動油とが接触し、プライマリ油圧室55内の作動油と上流側作動油との間で熱の授受が可能となる。図10に示すように、変速比固定制御中で各作動油供給排出弁70の閉弁中は、プライマリ油圧室55内の作動油の油温OTが上昇する(同図t2よりも前)。しかし、各作動油供給排出弁70の開弁中(同図t2〜t3)は、プライマリ油圧室55内の作動油の油温OTが上流側作動油の油温よりも高い場合、プライマリ油圧室55内の作動油から上流側作動油に熱が移動し、プライマリ油圧室55内の作動油の油温OTを低下させることができる。従って、変速比固定時におけるプライマリ油圧室55内の作動油の油温上昇を抑制することができ、作動油の油温の上昇を抑制することができる。作動油の油温の上昇を抑制することができるので、作動油の劣化を抑制することができる。また、作動油の油温の上昇を抑制することができるので、プライマリ油圧室55内の作動油が接触するプライマリ油圧室用シール部材S1や、連通部用シール部材S3の劣化を抑制することができる。また、作動油の油温の上昇を抑制することができるので、プライマリ油圧室55を構成する部材(可動シーブ53、プライマリ隔壁54など)の焼き戻しを抑制することができる。
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2にかかるベルト式無段変速機について説明する。図11は、実施の形態2にかかる油圧制御装置およびECUの構成例を示す図である。また、図12は、等パワー線マップを示す図である。実施の形態2にかかるベルト式無段変速機1−2が実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1と異なる点は、一時開閉制御中に変速比γを固定変速比γhから変更し、固定変速比γhに戻す点である。なお、実施の形態2にかかるベルト式無段変速機1−2の基本的構成は、実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1の基本的構成とほぼ同様であり、重複部分の説明は省略する。
ECU140は、図11に示すように、予め内燃機関10の等パワー線マップ格納部141を有する。等パワー線マップは、図12に示すように、内燃機関10の出力トルクT[Nm]と、内燃機関10の機関回転数Ne[rpm]と、内燃機関10が発生するパワー[kW]との関係が設定されたマップである。等パワー線マップには、任意のパワーを内燃機関10に発生させるために必要な出力トルクTと機関回転数Neとの関係が設定されている。等パワー線マップには、等パワー線が設定されている。内燃機関10が発生するパワーは、等パワー線上における出力トルクTと機関回転数Neとの関係を内燃機関10が維持することで一定に維持される。実施の形態2では、ECU140は、等パワー線マップおよび機関回転数Neに基づいて変速比固定時における固定パワーを一定に維持するパワー一定制御を行う。
回転数センサ150は、内燃機関10の機関回転数Neを検出するものである。回転数センサ150は、ECU140と接続されており、検出された機関回転数NeがECU140に出力される。
実施の形態2にかかるベルト式無段変速機1−2では、実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1と同様に、ECU140が変速比固定制御時に、閉弁状態の各作動油供給排出弁70を1回開閉する一時開閉制御を油圧制御装置130を介してアクチュエータ80に行わせる。図13は、実施の形態2にかかるベルト式無段変速機の一時開閉制御フローを示す図である。図14は、実施の形態2にかかるベルト式無段変速機の一時開閉制御時における油温の変化を示す図である。なお、図14は、駆動油圧P2と、変速比γと、油温OTとの関係を示す図である。以下に、変速固定制御時における一時開閉制御について説明する。なお、実施の形態2にかかるベルト式無段変速機1−2の一時開閉制御の基本的手順は、実施の形態1にかかるベルト式無段変速機1−1の一時開閉制御の基本的手順とほぼ同様であり、重複部分の説明は簡略化あるいは省略する。
まず、ECU140は、図13に示すように変速固定制御中であるか否か判定する(ステップST201)。ここでは、ECU140は、変速比γを固定し、固定変速比γhに維持する変速比固定制御が行われている状態であるか否かを判定する。
次に、ECU140は、変速固定制御中であると判定する(ステップST101肯定)と、カウンターによるカウントを実行する(ステップST202)。
次に、ECU140は、カウンターのカウント値Kが第1所定値K1以上であるか否かを判定する(ステップST203)。
次に、ECU140は、カウンターのカウント値Kが第1所定値K1以上であると判定する(ステップST203肯定)と、機関回転数Ne、出力トルクTおよび等パワー線マップを取得する(ステップST204)。ここでは、ECU140は、回転センサ150により検出されECU140に出力された機関回転数Ne、出力トルクT(および等パワー線マップ格納部141に格納されている等パワー線マップを取得する(ステップST204)。
次に、ECU140は、固定時パワーPhを算出する(ステップST205)。ここでは、ECU140は、取得された機関回転数Ne、出力トルクTに基づいて変速固定時における内燃機関10が発生するパワーである固定時パワーPhを算出する。
次に、ECU140は、変速比増加制御を行う(ステップST206)。ここでは、ECU140は、図14に示すように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70を開弁し、油圧制御装置130を介してプライマリ油圧室55から作動油を排出する(同図t5)。これにより、油圧制御装置130は、一時開閉制御を開始するとともに、変速比γが固定変速比γhから増加し、ダウンシフトが行われる。ここで、ECU140により変速比増加制御が行われると、変速比γが固定変速比γhから増加するため、図12に示すように、例えば固定時パワーPhを算出した際(同図A点)の機関回転数NeがNe1である場合、機関回転数NeがNe2まで増加することとなる。
次に、ECU140は、図13に示すように、機関回転数Neを再度取得する(ステップST207)。
次に、ECU140は、パワー一定制御を行う(ステップST208)。ここでは、ECU140は、上記算出された固定時パワーPhと、再度取得された機関回転数Neと、取得された等パワー線マップとに基づいて、固定時パワーを内燃機関10が発生することができる出力トルクTを算出し、算出された出力トルクTを内燃機関10が発生するように内燃機関10を制御する。図12に示すように、変速比γが固定変速比γhから増加しても、内燃機関10の出力トルクTが固定時パワーPhを算出した際の出力トルクT1のままであると、機関回転数Ne1が機関回転数Ne2まで増加しているため、内燃機関10が発生するパワーが固定時パワーPhよりも減少してしまう(同図B点)。つまり、ECU140による変速増加制御中に、内燃機関10が発生する出力トルクTを一定にしてしまうと、内燃機関が発生するパワーが固定時パワーPhに対応した等パワー線上からずれてしまう。実施の形態2にかかるベルト式無段変速機1−2の一次開閉制御中では、変速増加制御により機関回転数Ne1が機関回転数Ne2まで増加した場合は、ECU140により増加した機関回転数Ne2において固定時パワーPhに対応した等パワー線上となる出力トルクT2を算出し、内燃機関10に出力トルクT2を発生させ、変速増加制御中において内燃機関10が発生するパワーを固定時パワーPhに維持する。
次に、ECU140は、図13に示すように、カウンターのカウント値Kが第3所定値K3以上であるか否かを判定する(ステップST209)。ここでは、ECU140は、変速固定制御開始から第3所定時間を経過したかを判定する。ここで、第3所定値K3(第3所定時間)は、第1所定値K1(第1所定時間)よりも大きな任意の値であり、例えば変速比γの固定変速比γhに対する変化量などに基づいて予め設定されている。
次に、ECU140は、カウンターのカウント値Kが第3所定値K3であると判定する(ステップST209肯定)と、変速比減少制御を行う(ステップST210)。ここでは、ECU140は、図14に示すように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70の開弁を維持し、油圧制御装置130を介してプライマリ油圧室55に作動油を供給する(同図t6)。これにより、油圧制御装置130は、一時開閉制御中に、変速比γが減少し、アップシフトが行われる。つまり、一時開閉制御中に、変速比増加制御を行った後に変速比減少制御を行う。ここで、ECU140により変速比増加制御が行われると、変速比γが変速比増加制御終了時における変速比γから固定変速比γhに向かって減少するため、変速比増加制御終了時における機関回転数Neに対して、機関回転数Neが減少することとなる。なお、ECU140は、図13に示すように、カウンターのカウント値Kが第3所定値K3でないと判定する(ステップST209否定)と、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。従って、変速比固定制御が継続されている場合は、カウンターのカウント値Kが第3所定値K3となるまで、カウンターによるカウントが実行され、変速比増加制御が維持され、変速比γが増加する。
次に、ECU140は、機関回転数Neを再度取得する(ステップST211)。
次に、ECU140は、パワー一定制御を行う(ステップST212)。ここでは、ECU140は、上記変速増加制御中におけるパワー一定制御と同様に、上記算出された固定時パワーPhと、再度取得された機関回転数Neと、取得された等パワー線マップとに基づいて、固定時パワーを内燃機関10が発生することができる出力トルクTを算出し、算出された出力トルクTを内燃機関10が発生するように内燃機関10を制御する。実施の形態2にかかるベルト式無段変速機1−2の一次開閉制御中では、変速減少制御により機関回転数Neが減少した場合は、ECU140により減少した機関回転数Neにおいて固定時パワーPhに対応した等パワー線上となる出力トルクを算出し、内燃機関10に出力トルクを発生させ、変速減少制御中において内燃機関10が発生するパワーを固定時パワーPhに維持する。
次に、ECU140は、変速比γが固定変速比γhとなったか否かを判定する(ステップ213)。ここでは、ECU140は、変速増加制御により固定変速比γhに対して増加した変速比γが変速比減少制御により固定変速比γhに戻ったか否かを判定する。
次に、ECU140は、変速比γが固定変速比γhとなったと判定する(ステップ213肯定)と、変速比減少制御およびパワー一定制御を終了する(ステップST214)。ここでは、ECU140は、変速比γが固定変速比γhとなると、図14に示すように、アクチュエータ80により各作動油供給排出弁70の閉弁し、変速比固定制御に復帰する(同図t7)。また、ECU140は、変速比γが固定変速比γhとなると、固定時パワーに維持されていた内燃機関10が発生するパワーの変更を許可する。なお、ECU140は、変速比γが固定変速比γhとなっていないと判定する(ステップ213否定)と、現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。従って、変速比固定制御が継続されている場合は、変速比γが固定変速比γhとなるまで、変速比増加制御が維持され、変速比γが固定変速比γhに向かって減少する。
次に、ECU140は、カウンターのカウントKをクリア(K=0)する(ステップST215)。
以上のように、実施の形態2にかかるベルト式無段変速機1−2では、変速比固定時に各作動油供給排出弁70を1回開閉する一時開閉制御を行い、各作動油供給排出弁70の開弁中にプライマリ油圧室55内の作動油と上流側作動油とが接触し、プライマリ油圧室55内の作動油と上流側作動油との間で熱の授受が可能となる。また、一時開閉制御時に、ダウンシフトを行うことでプライマリ油圧室55から作動油を排出した後に、アップシフトを行うことで変速比γが固定変速比γhとなるまでプライマリ油圧室55に作動油を供給するので、各作動油供給排出弁70の開弁中に、プライマリ油圧室55内の作動油と上流側作動油との入れ替えを行うことができる。図14に示すように、変速比固定制御中で各作動油供給排出弁70の閉弁中は、プライマリ油圧室55内の作動油の油温OTが上昇する(同図t5よりも前)。しかし、各作動油供給排出弁70の開弁中(同図t5〜t7)は、プライマリ油圧室55内の作動油の油温OTが上流側作動油の油温よりも高い場合、プライマリ油圧室55内の作動油から上流側作動油に熱が移動するとともに、変速比固定時におけるプライマリ油圧室55内の作動油が油温の低い上流側作動油と入れ替えられ、プライマリ油圧室55内の作動油の油温OTを確実に低下させることができる。従って、変速比固定時におけるプライマリ油圧室55内の作動油の油温上昇を効果的に抑制することができ、作動油の油温の上昇を効果的に抑制することができる。また、一時開閉制御中は、パワー一定制御を行うので、変速比固定時に変速比γの変化があっても、内燃機関10が発生するパワーが一定(固定時パワー)に維持され、運転者に与える違和感を抑制することができる。また、プライマリ油圧室55内から作動油が漏れることや油温OTが上昇によりプライマリ油圧室55内の作動油が膨張することで、変速比固定時における固定変速比γhが変速比固定制御直後における変速比γから変化しても、一時開閉制御を行うことで変化した固定変速比γhを変速比固定制御直後における変速比γに戻すことができる。従って、燃費を向上することができ、ドライバビリティを向上することができる。
なお、実施の形態1では、駆動源として内燃機関10を用いるが、これに限定されるものではなく、モータなどの電動機を駆動源として用いても良い。
また、上記実施の形態2では、変速比増加制御から変速比減少制御への切り替えをカウンターのカウント値Kが第3所定値K3であるか否かで行うが、これに限定されるものではなく、変速比γの固定変速比γhに対する変化量に基づいて行っても良い。
また、上記実施の形態2では、一時開閉制御時に、変速比増加制御を行った後に変速比減少制御を行う、すなわちプライマリ油圧室55からの作動油の排出を行った後にプライマリ油圧室55に作動油の供給を行うが、これに限定されるものではなく、変速比減少制御を行った後に変速比増加制御を行う、すなわちプライマリ油圧室55に作動油の供給を行った後にプライマリ油圧室55からの作動油の排出を行っても良い。
また、上記実施の形態1,2では、変速比増加制御時に、一時開閉制御を1回のみ行うが、これに限定されるものではなく、複数回行っても良い。
また、上記実施の形態1,2では、一時開閉制御の開始を変速比固定制御開始からの経過時間で決定するが、これに限定されるものではなく、プライマリ油圧室55内の作動油の油温OTに基づいて一時開閉制御を開始して良い。