JP2007155483A - Gps受信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】指向性の設定処理を単純化して高速な追従処理を実現する。
【解決手段】指向性を変更可能な複数のアンテナ部と、複数のアンテナ部の各々に受信された複数のGPS信号に基づいて自己の現在位置を算出する自己位置算出手段と、自己の向きを算出する向き算出手段と、算出された現在位置、向き、及び、受信されたGPS信号に基づいて、自己に対して各GPS衛星が位置する方向を算出する衛星方向算出手段と、衛星方向算出手段により算出された方向に基づいて、複数のアンテナ部の各々がそれぞれ異なる一機のGPS衛星に対して指向性を持つよう設定する指向性設定手段とを備えたGPS受信装置を提供する。
【選択図】図2
【解決手段】指向性を変更可能な複数のアンテナ部と、複数のアンテナ部の各々に受信された複数のGPS信号に基づいて自己の現在位置を算出する自己位置算出手段と、自己の向きを算出する向き算出手段と、算出された現在位置、向き、及び、受信されたGPS信号に基づいて、自己に対して各GPS衛星が位置する方向を算出する衛星方向算出手段と、衛星方向算出手段により算出された方向に基づいて、複数のアンテナ部の各々がそれぞれ異なる一機のGPS衛星に対して指向性を持つよう設定する指向性設定手段とを備えたGPS受信装置を提供する。
【選択図】図2
Description
この発明は、複数のGPS信号を受信してそれらのGPS衛星を捕捉・追尾するGPS受信装置に関する。
GPS(Global Positioning System)は、地球を周回するGPS衛星から発信されるGPS信号を用いて位置情報を取得する測位システムであり、例えば移動体に搭載されるナビゲーション機能を有した車載器などで利用されている。このような車載器にはGPS信号を捕捉・追尾するためのGPSレシーバが備えられている。GPSレシーバによって自己の位置や移動速度・方位等をより高精度に測位するため、種々の方法が提案されて実用に供されている。
測位精度を低下させる要因の一つに例えばマルチパスが挙げられる。以下、マルチパスについて概説する。
GPSレシーバが本来受信すべきGPS信号は直接波である。ここでいう「直接波」とは、例えば障害物に遮られることなく実質的に直線の軌道でGPS衛星からGPSレシーバに伝搬されたGPS信号を示す。ところが例えば高層ビル等の建造物が多く存在する都市部ではGPS信号は必ずしも直接波となり得ない。例えばマルチパスの影響を受けた信号となり得る。ここでいうマルチパスの影響を受けた信号とは、GPS衛星からGPSレシーバに伝搬される間に上記建造物の如き障害物により少なくとも一度反射されたGPS信号(以下、この信号を「反射波」と称する)を示す。すなわちGPSレシーバは所定のGPS衛星からのGPS信号を直接波又は反射波、或いはその両方で受信する可能性がある。
上述したように反射波は、障害物によって少なくとも一度反射した後にGPSレシーバで受信されたGPS信号である。このため、所望の疑似距離情報よりも長く不正確な疑似距離情報を含むことになる。すなわちGPSレシーバは反射波を受信した場合、誤った擬似距離情報を取得することになる。誤った擬似距離情報を測位に使用することになるため、その測位結果は精度の低いものとなってしまう。
上記のマルチパスの影響を好適に低減させる方法として例えば抑角マスクが挙げられる。これは反射波に成り易いGPS信号、すなわち抑角の低い(例えば5〜10度)GPS衛星からのGPS信号を測位に使用しないという方法である。しかし、マスク対象以上の仰角のGPS衛星からのGPS信号もマルチパスの影響を受ける可能性が十分にある。このため、仰角マスクを採用して測位を行った場合であってもマルチパスの影響を低減できないことがあった。
マルチパスの影響をより確実に低減させるため、例えば仰角マスクの対象となるGPS衛星を増加させる、すなわち仰角の低くないGPS衛星からのGPS信号も測位に使用しないことが考えられる。この場合、マルチパスの影響を好適に低減させることが可能となる。ところがそのトレードオフとして、測位に利用可能なGPS信号の数が低減する。このため測位に必要な数(例えば三又は四機)のGPS衛星を捕捉・追尾することが困難となる。その結果、測位率が低下し得るため、変化し得る移動体の現在位置を十分に追従できなくなる可能性がある。
ここで、例えば下記特許文献1及び2において上記とは別の方法により、マルチパスの影響を好適に除去して測位精度の向上を実現可能とした測位装置等が記載されている。
特開2005−195448号公報
特開2004−336390号公報
これらの特許文献に記載の装置には例えばアダプティブ・アレー・アンテナ等の可変指向性アンテナが実装されている。これらの装置では例えば自己に対するGPS衛星の方向を推測し、その推測に基づいてアンテナの指向性を可変させて反射波を検出している。検出された反射波を測位対象から除外することにより測位精度向上を実現している。反射波である可能性が高いものを実際に検出しているため、仰角マスクを採用した装置よりも反射波をより高い精度で除外することができる。
ここで、上述したように、測位を行うためには最低でも三又は四機のGPS衛星を捕捉する必要がある。従って例えば上記特許文献1や2に記載の装置では複数の指向性を持つようアンテナを設定する必要がある。しかし、持たせるべき指向性が多ければ多いほど処理が複雑化して測位に時間が掛かるようになってしまう。上記特許文献1や2に記載の装置のように測位に時間が掛かる場合、移動体の現在位置を高速に追従することが困難になり得る。
また上記特許文献には、多数存在し得る反射波を測位対象から除外するために多数のヌル点を設定する装置についても記載されている。このような装置も、設定すべきヌル点が多ければ多いほど処理が複雑化して測位に時間が掛かるようになるという問題点を含んでいる。
そこで、本発明は上記の事情に鑑みて、指向性の設定処理を単純化して高速な追従処理を実現可能としたGPS受信装置を提供することを課題としている。
上記の課題を解決する本発明の一態様に係るGPS受信装置は、複数のGPS信号を受信してそれらのGPS衛星を捕捉・追尾するものである。このGPS受信装置は、指向性を変更可能な複数のアンテナ部と、複数のアンテナ部の各々に受信された複数のGPS信号に基づいて自己の現在位置を算出する自己位置算出手段と、自己の向きを算出する向き算出手段と、算出された現在位置、向き、及び、受信されたGPS信号に基づいて、自己に対して各GPS衛星が位置する方向を算出する衛星方向算出手段と、衛星方向算出手段により算出された方向に基づいて、複数のアンテナ部の各々がそれぞれ異なる一機のGPS衛星に対して指向性を持つよう設定する指向性設定手段とを備えたことを特徴としたものである。
ここで、上記GPS受信装置は自己位置算出手段により算出された現在位置の履歴を保存する履歴保存手段を更に備えたものであっても良い。この場合、衛星方向算出手段は、少なくとも、向き算出手段により算出された自己の向き、複数のアンテナ部の各々に受信されたGPS信号、及び、履歴保存手段に保存された履歴に基づいて、自己に対して各GPS衛星が位置する方向を算出することができる。
なお、上記GPS受信装置において履歴保存手段に履歴がない場合、自己位置算出手段は、指向性が設定されていない複数のアンテナ部の各々で受信されたGPS信号を用いて現在位置を算出しても良い。
また上記GPS受信装置は、複数のアンテナ部の各々でGPS信号が受信されないとき、少なくとも、履歴保存手段に保存された履歴、及び、向き算出手段により算出された自己の向きに基づいて、自己に対して各GPS衛星が位置する方向を推測する衛星方向推測手段を更に備えたものであっても良い。この場合、指向性設定手段は、推測された各GPS衛星の位置する方向に基づいて複数のアンテナ部の各々の指向性を設定することができる。
ここで指向性設定手段は、例えば仰角の高いGPS衛星を優先して複数のアンテナ部の各々に対応付けてそれらの指向性を設定することができる。
また指向性設定手段は、DOP(Dilution Of Precision)が小さい組み合わせの各GPS衛星を優先して複数のアンテナ部の各々に対応付けてそれらの指向性を設定することもできる。
また上記GPS受信装置は、複数のアンテナ部の各々で受信された信号のレベルを検出する信号レベル検出手段を更に備えたものであっても良い。この場合、指向性設定手段は所定値よりも低いレベルの信号を受信したアンテナ部に対して、別のGPS衛星に対する指向性を再設定することができる。
なお、指向性設定手段は指向性を再設定するとき、捕捉・追尾対象でなかったGPS衛星の中で仰角が最も高いものを選択することができる。
上記GPS受信装置はアンテナ部を少なくとも三つ以上備えたものであっても良い。
本発明のGPS受信装置を採用すると測位に掛かる時間が軽減するため、移動体の現在位置を高速に追従することが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態の車載器の構成及び作用について説明する。
図1は、本発明の実施の形態の車載器200の構成を示したブロック図である。車載器200は車両(不図示)に搭載された所謂ナビゲーション装置であり、GPSアンテナユニット100、GPSレシーバ102、デッドレコニング(以下、「DR」と略記)センサ、ナビゲーションユニット110、モニタ120、及び、スピーカ130を有している。DRセンサには、ジャイロセンサ104、車両センサ106、及び、加速度センサ108が含まれる。モニタ120は主としてナビゲーショ用画像を表示する。スピーカ130は主としてナビゲーション用音声を再生する。
GPSアンテナユニット100は、GPS衛星が発信するGPS信号を受信するためのユニットである。GPSアンテナユニット100は可変指向性を有したアンテナアレイ(後述)を複数備えている。GPSアンテナユニット100はGPSレシーバ102からの指向性制御信号に呼応してその指向性を変化させる。
GPSレシーバ102は、GPSアンテナユニット100で受信されたGPS信号に含まれる航法メッセージ(エフェメリス、アルマナック等)を参照して複数のGPS衛星を捕捉・追尾する。そして捕捉・追尾中のGPS衛星のGPS信号を用いて測位演算を行う。GPSレシーバが二次元測位を行うものである場合、捕捉・追尾すべきGPS衛星は少なくとも三機である。またGPSレシーバが三次元測位を行うものである場合、捕捉・追尾すべきGPS衛星は少なくとも四機である。本実施形態のGPSレシーバは例えば三次元測位を行うものであるとする。すなわち本実施形態で捕捉・追尾すべきGPS衛星は少なくとも四機である。
GPSレシーバ102において測位演算された信号は、位置測位結果、及び、速度測位結果としてナビゲーションユニット110に出力される。なお、これらの測位結果は算出される毎に、例えばGPSレシーバ102が有するメモリ102aやナビゲーションユニット110のRAM(後述)等に履歴として保存される。
位置測位結果は、複数のGPS衛星の各々とGPSアンテナユニット100との疑似距離等に基づいて算出される。速度測位結果は、四機のGPS衛星の各々(好ましくはより多くのGPS衛星の各々)とGPSレシーバ102との相対速度によるドップラーシフト量に基づいて算出される。なお、GPSレシーバ102は、受信したGPS信号に含まれるPRN(Pseudo Random Noise)コードのリファレンスコードを参照してGPS衛星を捕捉する。更に、捕捉されたGPS衛星のGPS信号のキャリア、コードへのトラッキングエラーを補正して当該GPS衛星の追尾を続行する。GPS衛星はこのように捕捉・追尾され、それらの情報が測位に用いられる。
なお初期動作においてGPSレシーバ102は、例えば適当な(例えば捕捉可能な)GPS衛星を幾つか捕捉して位置測位を行う。次いでその位置測位結果、航法メッセージ等に基づいて車両に対して各GPS衛星が何れの方向(ここでいう「方向」とは方位・仰角を意味する)に位置するかを算出する。ここでマルチパスの影響を軽減させる観点から、測位に利用するGPS衛星は仰角の高いものが望ましい。このためGPSレシーバ102は上記算出結果を参照して、例えば仰角の高いGPS衛星を優先的に捕捉・追尾するよう動作する。
またGPSレシーバ102は上記算出結果、すなわち捕捉・追尾対象のGPS衛星が位置する方向を参照して、上記指向性制御信号をそれぞれのGPS衛星に対応して生成する。次いで、生成された指向性制御信号の各々を、GPSアンテナユニット100の各アンテナアレイに出力する。
ナビゲーションユニット110にはGPSレシーバ102からの信号以外に、ジャイロセンサ104、車両センサ106、及び、加速度センサ108からの信号が入力される。ジャイロセンサ104は車両の方位に関する角速度を計測する。車両センサ106は車両の左右の駆動輪の回転速度を検出してその平均速度に応じた車速パルス信号や、ブレーキやサイドブレーキ等の状態を検出して車両の移動状態に関する情報を生成する。加速度センサ108は車両の勾配に関する情報を計測する。
ナビゲーションユニット110は、CPU(Central Processing Unit)111、ROM(Read Only Memory)112、RAM(Random Access Memory)113、描画ユニット114、及び、オーディオユニット115を有している。
CPU111は車載器200全体の制御を統括して実行する。ROM112は地図データやナビゲーション用音声データ、プログラム等の各種データが格納されたメモリである。RAM113はデータがキャッシュされるメモリである。RAM113には例えばROM112に格納されている各種プログラムが展開される。
CPU111は例えばRAM113に展開されたプログラムを実行して描画ユニット114やオーディオユニット115を制御する。描画ユニット114は、CPU111の制御により例えば上記地図データを描画してモニタ120に出力する。オーディオユニット115は、CPU111の制御により例えば上記ナビゲーション用音声データに再生処理を施してスピーカ130に出力する。
またCPU111は、各DRセンサから出力されるデータに基づいてDR演算(すなわち車両の進行方向、向き、距離の演算、移動速度)を行う。またCPU111は、演算したDR測位結果及びGPSレシーバ102からのGPS測位結果と、夫々の測位結果に対する誤差推定値とを比較することにより、高精度と判定される測位結果を選択し、選択された測位結果をマップマッチングする。また、各測位結果に基づいて現在位置周辺のデジタル地図データをROM112から抽出する。次いで描画ユニット114を制御して、抽出された地図データと共に車両の現在位置を示す自車位置マークを描画させ、モニタ120に出力させる。これにより、モニタ120にナビゲーション情報を含む各種情報が表示される。また、各測位結果に基づいて現在の車両の走行状況に応じたナビゲーション用音声データをROM112から抽出する。次いでオーディオユニット115を制御して、抽出されたナビゲーション用音声データを処理し、スピーカ130に出力させる。これにより、スピーカ130でナビゲーション用音声が再生される。
なお、ここでいうマップマッチングとは、モニタ120に表示されている地図中の道路から外れた位置に自車位置マークが表示されるなどの誤差を補正することを示す。マップマッチングを行うことによって自車位置と地図との整合性が取れ、運転手は自車の現在位置を正確に知ることができる。
次に、GPSアンテナユニット100について詳説する。
図2はGPSアンテナユニット100の構成を示したブロック図である。図2に示されるように、GPSアンテナユニット100は四つのアンテナアレイ10、20、30、40、合成器50、BPF(Band Pass Filter)52、LNA(Low Noise Amplifier)54、コンデンサ56、58、及び、インダクタ60を有している。
図3はアンテナアレイ10の構成を示したブロック図である。なお、アンテナアレイ20、30、40はアンテナアレイ10と同一の構成を有している。また、GPSレシーバ102からの指向性制御信号によりアンテナアレイ10と同様に動作する。従ってアンテナアレイ20、30、40の構成及び動作の説明についてはその重複を避けるため、アンテナアレイ10の構成及び動作の説明をもって省略する。
なおGPSレシーバ102は、アンテナアレイそれぞれに一機のGPS衛星を割り当てて捕捉・追尾するよう動作する。ここで、上述したようにGPSレシーバ102が捕捉・追尾すべきGPS衛星は四機である。これに対応させて、GPSアンテナユニット100にはアンテナアレイが四つ実装されている。
アンテナアレイ10はアンテナ素子、LNA、可変減衰器、移相器をそれぞれn個有している。すなわち図3に示されているようにアンテナ素子11a〜11n、LNA12a〜12n、可変減衰器13a〜13n、移相器14a〜14nを有している。アンテナ素子11a〜11nはGPS信号を受信するための素子である。アンテナ素子11a〜11nで受信されたGPS信号はそれぞれ、LNA12a〜12nに出力される。LNA12a〜12nはそれぞれ、微弱である受信信号を増幅して可変減衰器13a〜13nに出力する。
ここで、アンテナアレイ10は重み付け回路15を有している。重み付け回路15にはGPSレシーバ102からの指向性制御信号が入力される。重み付け回路15は上記指向性制御信号に基づいて可変減衰器13a〜13n及び移相器14a〜14nの各々を個別に制御する。
可変減衰器13a〜13nの各々は、上記指向性制御信号に基づいて入力信号の振幅を調整(ここでは減衰)させて移相器14a〜14nに出力する。移相器14a〜14nの各々は上記指向性制御信号に基づいて、可変減衰器からの入力信号の移相量を調整する。各移相器において位相を調整された信号はアンテナアレイ10が有する合成器16に出力される。合成器16はこれらの入力信号を合成して、一つの信号として合成器50に出力する。
各アンテナ素子の受信信号を各可変減衰器及び移相器で減衰及び位相シフトさせて合成することにより、アンテナアレイ10の指向性が変化する。すなわちアンテナアレイ10は、GPSレシーバ102からの指向性制御信号に基づいてその指向性が変更される。
各アンテナアレイの出力は合成器50で合成されてBPF52により不要な周波数成分が除去される。不要成分除去後、この信号は、GPSアンテナユニット100とGPSレシーバ102との接続に用いられる同軸ケーブル(不図示)での損失を考慮して、LNA54により増幅される。増幅後、コンデンサ56を介してGPSレシーバ102に出力される。
なお、LNA12a〜12n及び54に対してDC電源が供給されるとき、これらがGPSレシーバ102に信号を伝送するための信号線が用いられる。コンデンサ56は、DC電圧がLNA54の上記信号線に流入することを防止するために設置されている。この防止処置により、受信されたGPS信号に対するDC電圧の影響(例えばS/N比低下等)が抑えられる。またコンデンサ58は、各LNA用電源へのノイズ混入を防止するために設置されている。またインダクタ60は、受信されたGPS信号が各LNA用電源へ流入して減衰することを防止するために設置されている。
次に、GPSアンテナユニット100の指向性を設定する処理について説明する。図4に、GPSレシーバ102により実行されるGPSアンテナユニット100の指向性設定処理のフローチャートを示す。この処理は車載器200の電源がオンされると開始され、オフされると終了する。
車載器200の電源が投入されるとGPSレシーバ102は、GPSアンテナユニット100で受信された複数のGPS信号を用いて測位演算を行う(ステップ1、以下の明細書及び図面においてステップを「S」と略記)。このときGPSレシーバ102において上記指向性制御信号が生成されていないため、各アンテナアレイは無指向性の状態でGPS信号を受信する。なお、算出された測位結果は上述したようにメモリ102aに履歴として保存される。
GPSレシーバ102はS1の処理で算出された自己の位置情報、受信されたGPS信号の航法メッセージ(例えばアルマナック)、及び、DR演算結果(例えば車両の向き)を参照して自己に対する各GPS衛星の方向を検出する(S2)。
GPSレシーバ102はS2の処理の検出結果を参照して、マルチパスの影響を軽減させる観点から、仰角の高い順にGPS衛星を四機選択する(S3)。次いで、選択された各GPS衛星をアンテナアレイの各々に対応付けて割り当てる(S4)。すなわち各アンテナアレイでそれぞれ異なる一機のGPS衛星のGPS信号を受信させるよう設定して、各アンテナアレイの指向性を制御する。具体的には、各アンテナアレイに対して上記指向性制御信号をそれぞれ生成して送信する。このとき生成される指向性制御信号は、アンテナアレイに対し、捕捉・追尾対象として対応付けられたGPS衛星の位置する方向に指向性を持たせるための制御信号である。上述したように、各アンテナアレイの重み付け回路15が指向性制御信号に基づいて、受信信号を減衰させ且つその位相をシフトさせる。これにより各アンテナアレイはそれぞれ、対応付けられたGPS衛星の位置する方向に対して指向性を持つようになる。
なおS4の処理において、何れのアンテナアレイに何れのGPS衛星を割り当てるかはその設計応じて適宜設定することができる。またGPSレシーバ102は、受信したGPS信号に含まれるPRNコード等を参照することにより、当該受信信号が何れのGPS衛星のものであるかを判断することができる。
ここで図5(a)及び(b)に、アンテナアレイの指向性を説明するための図を示す。なお説明を明瞭にするため、図5ではアンテナアレイ10のみの指向性であって、水平方向の指向性のみを示している。図5に示された「N」を北、「E」を東、「W」を西、「S」を南とする。また「C」を、車載器200を搭載した車両とする。また「GPS1」を、S4の割当処理によりアンテナアレイ10に割り当てられたGPS衛星とする。また車両Cの前後方向を「X」、左右方向を「Y」とする。なお図5においてGPS衛星GPS1は西側に位置しているものとする。
図5(a)では車両Cは矢印A方向に(すなわち北に向かって)前進している。このため車両Cに対するGPS衛星GPS1の方位は車両C進行方向に対して左(方角としては西)となる。従ってGPSレシーバ102の制御によりアンテナアレイ10は、車両C左側に分布した範囲R1に指向性を持つよう設定される。すなわちアンテナアレイ10は西側以外に指向性を持たないようになる。西側以外から伝搬されたGPS信号は微弱な電波として捉えられるため、アンテナアレイ10はこのような信号を実質的に受信しなくなる。例えばGPS衛星GPS1のGPS信号がマルチパスにより西側以外から車両Cに伝搬された場合、アンテナアレイ10はこれを受信しない。更に言及すると、アンテナアレイ10はS4の割当処理によりGPS衛星GPS1のGPS信号を受信するよう設定されている。従ってGPS衛星GPS1以外からのGPS信号がマルチパスにより西側から伝搬された場合であっても、そのGPS信号に含まれるPRNコードが他のGPS衛星のものであるため、GPSレシーバ102はそのGPS信号の衛星を捕捉・追尾しない。すなわちGPSレシーバ102はマルチパスの影響を受けていないGPS信号のGPS衛星のみを確実に捕捉・追尾することができる。
図5(b)では車両Cの向きが図5(a)に対して変わっている。図5(b)では車両Cは矢印A方向に角度θ(例えば45度)成す方向に(すなわち北東に向かって)前進している。車両Cに対するGPS衛星GPS1の方位は、例えば車両Cの位置及びその向き、GPS衛星GPS1の位置等に基づいて算出されるため、車両C進行方向に対して左斜め後方となる。この場合も図5(b)の例と同様に、アンテナアレイ10はGPSレシーバ102の制御により、車両C左斜め後方に分布した範囲R2に指向性を持つよう設定される。
ここで図4のフローチャートに戻る。GPSレシーバ102はS4の割当処理に次いで、受信したGPS信号の中に信号レベルが所定値よりも低いものがあるか否かを判定する(S5)。GPSレシーバ102は各受信信号のレベルが全て所定値以上と判定した場合(S5:NO)、捕捉・追尾対象のGPS衛星の中にマルチパスの影響を受けているものはないと判断し、所定時間経過後にS3の処理に復帰する。
S5の処理において、受信したGPS信号の中に信号レベルが所定値よりも低いものがあると判定される場合(S5:YES)、例えば受信したGPS信号の何れかが反射波であると考えられる。すなわち受信されるべきGPS信号が、対応するアンテナ素子の指向性とは異なった方向から車両に伝搬されたと考えられる。アンテナ素子に直接波が入力せず、指向性のない方向から反射波が入力されるため、GPSレシーバ102は所定値よりも低い信号レベルを検知することになる。従って、GPSレシーバ102は信号レベルが所定値よりも低いものがあると判定した場合、そのGPS信号(すなわち信号レベルが所定値よりも低いものであり、単数又は複数)のGPS衛星を捕捉・追尾対象から除外する。すなわち上記のGPS衛星が割り当てられていたアンテナアレイを、何れのGPS衛星も割り当てられていない状態(以下、「空き状態」と記す)に一旦設定する。次いで、別のGPS衛星を捕捉・追尾対象として選択する(S6)。なおこのときマルチパスの影響を軽減させる観点から、捕捉・追尾対象でないGPS衛星の中で最も高い仰角のものを選択することが望ましい。
GPSレシーバ102はS6の再選択処理に次いで、空き状態に設定されたアンテナアレイに再選択されたGPS衛星を対応づけて再び割り当てる(S7)。すなわちGPS衛星が再度対応付けられたアンテナアレイの指向性をそのGPS衛星に向くように設定する。次いでS5の処理に復帰して上記一連の処理を繰り返す。
以上のように本実施形態では、各アンテナアレイが独立して一機のGPS衛星に対して指向性を持つよう設定される。このため、各アンテナアレイにおいて所望のGPS信号が反射波として受信されることなく直接波として受信される。このため測位精度が向上する。また、各アンテナアレイにおいて一機のGPS衛星だけを考慮して指向性が設定されることから、制御系の処理負担が分散される。この結果、測位に掛かる時間が軽減して、移動体の現在位置を高速に追従することが可能となる。
また、複数の受信信号の中で例えば一つだけマルチパスの影響を受けたものがある場合、従来はこれを除外するために捕捉・追尾対象のGPS信号全てを考慮した指向性を再設定する必要があった。しかし本実施形態を採用した場合、マルチパスの影響を受けたものだけを考慮して指向性を再設定すれば良い。このような観点からも制御系の処理負担が軽減されて、移動体の現在位置を高速に追従することが可能となる。
以上が本発明の実施の形態である。本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく様々な範囲で変形が可能である。例えばDOPが小さい組み合わせのGPS衛星の各々を優先的に捕捉・追尾するようGPSレシーバ102を動作させても良い。また、DOPが小さい組み合わせのGPS衛星であり且つその各々が仰角の高いものを優先的に捕捉・追尾するようGPSレシーバ102を動作させることもできる。
例えばアンテナアレイの数は四つに限ることなく、より多数であっても良い。例えばアンテナアレイが五つ備えられている場合、測位に使用するか否かに拘わらず、それら全てにGPS衛星を捕捉・追尾させる。この場合、例えば測位に使用する四つのGPS衛星の何れかがマルチパスの影響を受けたとしても、その代替として、残りのアンテナアレイによって取得されたGPS信号を測位に使用することができる。従って測位結果をより迅速且つ途切れることなく出力することができる。このため移動体の現在位置をより高速に追従することが可能となる。
更に、五つのアンテナアレイ全てでGPS衛星を測位に利用できる場合、より条件の良いGPS衛星(仰角が高い、DOPが小さい等)を優先的に四つ選択して測位できるため、測位精度が向上する。
また、例えば車両がGPS衛星を捕捉・追尾できない場所(例えばトンネル等)に入ったとき、GPSレシーバ102は、トンネル進入直前の各GPS衛星の位置情報及びDR演算結果等を参照して、自己に対する各GPS衛星の位置する方向を推測する。このような推測を行うことにより、GPS衛星を捕捉・追尾できない時間が継続した場合であっても各アンテナアレイの指向性を適正なものに近い状態に保つことができる。従って例えば車両がトンネルを抜けたとき、各GPS衛星の再捕捉を迅速に行うことが可能となる。なお、前記の再捕捉をより確実且つ迅速に実現するため、各アンテナアレイのビーム幅(指向性の範囲)を通常よりも広めに設定しても良い。
10、20、30、40 アンテナアレイ
11a〜11n アンテナ素子
12a〜12n LNA
13a〜13n 可変減衰器
14a〜14n 移相器
15 重み付け回路
16、50 合成器
100 GPSアンテナユニット
102 GPSレシーバ
110 ナビゲーションユニット
200 車載器
11a〜11n アンテナ素子
12a〜12n LNA
13a〜13n 可変減衰器
14a〜14n 移相器
15 重み付け回路
16、50 合成器
100 GPSアンテナユニット
102 GPSレシーバ
110 ナビゲーションユニット
200 車載器
Claims (9)
- 複数のGPS信号を受信してそれらのGPS衛星を捕捉・追尾するGPS受信装置において、
指向性を変更可能な複数のアンテナ部と、
前記複数のアンテナ部の各々に受信された複数のGPS信号に基づいて自己の現在位置を算出する自己位置算出手段と、
自己の向きを算出する向き算出手段と、
算出された現在位置、向き、及び、受信されたGPS信号に基づいて、自己に対して各GPS衛星が位置する方向を算出する衛星方向算出手段と、
前記衛星方向算出手段により算出された方向に基づいて、前記複数のアンテナ部の各々がそれぞれ異なる一機のGPS衛星に対して指向性を持つよう設定する指向性設定手段と、を備えたこと、を特徴とするGPS受信装置。 - 前記自己位置算出手段により算出された現在位置の履歴を保存する履歴保存手段を更に備え、
前記衛星方向算出手段は、少なくとも、前記向き算出手段により算出された自己の向き、前記複数のアンテナ部の各々に受信されたGPS信号、及び、前記履歴保存手段に保存された履歴に基づいて、自己に対して各GPS衛星が位置する方向を算出すること、を特徴とする請求項1に記載のGPS受信装置。 - 前記履歴保存手段に履歴がない場合、前記自己位置算出手段は、指向性が設定されていない前記複数のアンテナ部の各々で受信されたGPS信号を用いて現在位置を算出すること、を特徴とする請求項2に記載のGPS受信装置。
- 前記複数のアンテナ部の各々でGPS信号が受信されないとき、
少なくとも、前記履歴保存手段に保存された履歴、及び、前記向き算出手段により算出された自己の向きに基づいて、自己に対して各GPS衛星が位置する方向を推測する衛星方向推測手段を更に備え、
前記指向性設定手段は、推測された各GPS衛星の位置する方向に基づいて前記複数のアンテナ部の各々の指向性を設定すること、を特徴とする請求項2又は請求項3の何れかに記載のGPS受信装置。 - 前記指向性設定手段は、仰角の高いGPS衛星を優先して前記複数のアンテナ部の各々に対応付けてそれらの指向性を設定すること、を特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載のGPS受信装置。
- 前記指向性設定手段は、DOP(Dilution Of Precision)が小さい組み合わせのGPS衛星の各々を優先して前記複数のアンテナ部の各々に対応付けてそれらの指向性を設定すること、を特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載のGPS受信装置。
- 前記複数のアンテナ部の各々で受信された信号のレベルを検出する信号レベル検出手段を更に備え、
前記指向性設定手段は所定値よりも低いレベルの信号を受信したアンテナ部に対して、別のGPS衛星に対する指向性を再設定すること、を特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載のGPS受信装置。 - 前記指向性設定手段は指向性を再設定するとき、捕捉・追尾対象でなかったGPS衛星の中で仰角が最も高いものを選択すること、を特徴とする請求項7に記載のGPS受信装置。
- 前記アンテナ部を少なくとも三つ以上備えたこと、を特徴とする請求項1から請求項8の何れかに記載のGPS受信装置。
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