JP3569015B2 - Gpsナビゲーション装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、移動体に備えられたGPS(Global Positioning System)測位装置と種々のセンサとにより移動体の運動を検出し、それらの検出情報を組み合わせることにより、移動体の位置等の決定精度を向上させるナビゲーション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
GPS測位装置は、複数個のGPS衛星から送信されるGPS信号を同時に受信し、各GPS信号に含まれている、各GPS衛星と当該GPS測位装置が配置された受信点との間の実際の距離に対応する擬似距離データ、及び各GPS衛星の軌道や位置データより、当該受信点の位置を計算し、それを表示するよう構成されている。なお、疑似距離には、各GPS衛星において時刻を決定する時計と、当該GPS測位装置の時計との間の時刻のずれに対応する、時刻オフセットによる影響が含まれている。
【0003】
このようなGPS測位装置では、前記受信点での2次元または3次元位置の算出のためには、少なくとも3個以上のGPS衛星からのGPS信号をほぼ同時期に受信することが必要である。ところが、GPS測位装置が、例えば移動体に搭載され、その移動体が市街地などを移動する場合には、市街地の建物等の遮蔽物の影響により、GPS信号の受信が可能なGPS衛星の個数が3個に満たず、位置を決定することができないという問題があった。
【0004】
この問題の解決策として、例えば3個以上のGPS衛星からの信号が受信できず、測位不可能の間は、方位センサ、距離センサからの方位データ、距離データを用いて移動体の位置を推測し、その推測位置を表示する方法がある。しかし、このような方法では、これらセンサ分のコストアップが避けられず、高価なシステムになるという問題がある。
【0005】
特に、距離センサは、移動体が自動車の場合、通常、車体本体の距離センサ出力を取り出すことで代用するが、このためには、距離センサの取り付けに関し、専門的な知識を有するディーラーやカーショップ等で行う必要があり、その際の取り付け費用や手間などユーザの負担は多大なものとなっていた。
【0006】
また、もう一つの解決策として、特開平6−18646号公報記載の例(以下公知例と呼ぶ)がある。この例では、GPS信号を受信可能な衛星数が減ったことによる情報の減少を、方位センサで補い演算するものである。ここで、方位センサで補える自由度は2である。
【0007】
すなわち、移動体が移動している場合、方位センサは、移動速度ベクトルの方向、例えば単位ベクトルのように、任意の3次元座標において、方位角(水平面上での方位を示す角度)と、仰角(方位角が決定される水平面と直交する面上での角度)とを決定することができる。
【0008】
このため、GPS信号を受信可能な衛星が最低1個以上からのGPS信号に基づき、移動体の速度量を算出できれば、結果として移動体の速度ベクトルを求めることができる。この解決策によれば、距離センサを必要としないため、距離センサを購入する場合に発生する上記のようなユーザの負担増もない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、GPS信号を受信可能な衛星数が減少する市街地等では、同時に建物の鉄骨構造により地球磁場が乱れている。また、送電線や電車の線路近傍などでも、地球磁場が乱されている場合が多い。このため、方位センサとして地球磁場を検知して方位を測定する地磁気センサなどを想定している、上記公知例では、検出される方位量に誤差が多く、結果として得られる移動速度ベクトルも不正確になるという問題があった。
【0010】
また、この公知例のみならず、GPS測位装置では一般に、GPS信号が受信可能な衛星数が3個以上の状態、いわゆる通常測位が可能な状態において、自己位置を検出するが、この位置情報にはSA(Selective Availability)と呼ばれる予測不可能な誤差が含まれているという問題もあった。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、GPS信号が受信可能なGPS衛星の個数が3個以上の場合(通常測位可能な場合)、あるいは3個未満の場合(通常測位不可能な場合)に依らず、最低1個以上受信できる状態であれば、そのGPS衛星からのGPS信号を用いて、途切れることなく高精度な現在位置を出力し続けることができるGPSナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、受信可能なGPS衛星が所定数以上ある場合、通常測位により移動体の位置を決定するGPS受信機を有するGPSナビゲーション装置において、通常測位が可能かどうかを判定する受信状態判定手段と、前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に疑似距離変化率を測定する疑似距離変化率計測手段と、前記受信状態判定手段により通常測位が可能と判定された場合、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、前記疑似距離変化率計測手段により計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求める第1の速度ベクトル算出手段と、移動体の回転角を測定する回転角測定手段と、前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判断された場合、通常測位が可能であった時点に前記第1の速度ベクトル算出手段により算出された移動速度ベクトルと、前記移動速度ベクトルが算出された時点から現在までの前記回転角測定手段により測定された移動体の回転角の履歴とから、移動体の移動方位を算出する移動方位算出手段と、前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に衛星情報を測定する衛星情報取得手段と、前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判定され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合、GPS衛星毎に、前記疑似距離計測手段により計測された疑似距離変化率及び前記衛星情報取得手段により測定された衛星情報と、前記移動方位算出手段により算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求める第2の速度ベクトル算出手段と、通常測位可能な場合には前記第1の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、通常測位不可能な場合には前記第2の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、移動体の位置を推定する位置推定手段とを有することを特徴とするGPSナビゲーション装置により達成される。
【0013】
上記目的は、また、GPS衛星からのGPS信号を受信し、受信可能なGPS衛星が所定数以上ある場合、通常測位により移動体の位置を決定するGPSナビゲーション方法において、通常測位が可能かどうかを判定し、通常測位が可能と判定された場合には、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、受信可能なGPS衛星毎に計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求め、通常測位が不可能と判断され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合には、通常測位が可能であった時点に算出された移動速度ベクトルと、前記移動速度ベクトルが算出された時点から現在までに測定された移動体の回転角の履歴とから、移動体の移動方位を算出し、GPS衛星毎に計測された疑似距離変化率及び衛星情報と、前記算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求め、通常測位可能な場合に求められた移動速度ベクトル、あるいは、通常測位不可能な場合に求められた移動速度ベクトルから、移動体の位置を推定することを特徴とするGPSナビゲーション方法により達成される。
【0014】
【作用】
本発明のGPSナビゲーション装置において、前記受信状態判定手段により通常測位が可能と判定された場合、第1の速度ベクトル算出手段が、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求め、通常測位が不可能と判断され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合、第2の速度ベクトル算出手段が、GPS衛星毎に、前記疑似距離計測手段により計測された疑似距離変化率及び前記衛星情報取得手段により測定された衛星情報と、前記移動方位算出手段により算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求める。
【0015】
また、前記移動体の移動方位は、移動方位算出手段が、通常測位が可能であった時点に前記第1の速度ベクトル算出手段により算出された移動速度ベクトル、及び、前記回転角測定手段により測定された移動体の回転角から算出する。
【0016】
したがって、通常測位が可能かどうかに係らず、1個以上のGPS衛星が受信可能であれば、位置推定手段が、前記第1及び第2の速度ベクトル算出手段のいずれか一方で求められた移動速度ベクトルから移動体の位置を推定することができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を適用したGPSナビゲーション装置の実施例を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例では、GPSナビゲーション装置は、自動車等の地表を移動する移動体に搭載されるものとする。
【0018】
〔実施例1〕
本発明が適用されたGPSナビゲーション装置の第1の例である実施例1は、ハードウエア構成として、例えば図2に示すように、GPS衛星からのGPS電波信号を受信するアンテナを含むアンテナ部302、アンテナ部302から出力される受信信号から受信点(以下では移動体の現在位置あるいは位置と呼ぶ)の測位や疑似距離変化率計測等を行うGPS受信機304、及び、GPS受信機304からの出力結果を使って移動体の移動速度ベクトルを算出し移動体の位置を推定すると共に周辺装置の制御等を行う、例えばマイクロコンピュータにより実現されるコントローラ300を有する。
【0019】
本実施例は、さらに、移動体の方位変化量(回転角速度)を検出するジャイロセンサ310、道路地図データをCD−ROM等を用いて記憶しておく地図メモリ306、及び、コントローラ300で推定した移動体の現在位置を、地図メモリ306から読みだした周辺地図に重ねてユーザに対し表示する、CRTや液晶デイスプレイを備える表示装置308を有する。
【0020】
ジャイロセンサ310は、地磁気の計測を行なうことなく、当該センサが取付けられる移動体の進路方向の変更などに伴い生じる回転運動の回転角速度を測定するものであり、例えば光ファイバジャイロや、レーザジャイロにより構成される。
【0021】
次に、本実施例の構成要素の詳細説明を、図1を用いて行なう。
【0022】
アンテナ部302は、図1に示すように、GPS電波信号を受信するアンテナ4aと、アンテナ4aで受信された複数のGPS衛星からのGPS信号のうち、所定の信号強度以上のGPS信号だけを選択して出力する電波受信部4とを有する。
【0023】
GPS受信機304は、電波受信部4からの出力信号に基づいて、受信しているGPS信号を発信しているGPS衛星の個数をカウントする受信状態判定部6と、受信しているGPS信号に対応するGPS衛星と移動体との間の疑似距離の時間変化率に対応する疑似距離変化率を、それぞれGPS衛星について測定する疑似距離変化率計測部8とを有する。
【0024】
疑似距離変化率測定部8は、例えば、GPS衛星と移動体との相対速度に対応したドップラー効果により変化している、GPS信号の搬送波のドップラー周波数を測定し、その測定値と、既知の当該搬送波の発信周波数とを比較することにより、疑似変化率を測定する。
【0025】
GPS受信機304は、さらに、周知のGPS測位装置と同様に、受信しているGPS信号に対応するGPS衛星の軌道等に関する衛星情報、及び、GPS衛星と移動体との間の疑似距離(レンジ)情報をそれぞれ計測する衛星情報及び疑似距離計測部9と、当該計測部9で計測された結果から、通常測位可能な場合(例えば、受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合)、周知のGPS測位を行ない移動体の現在位置を測定するGPS測位部7と、測位精度の指標となるDOP(Dilution of Precision)の測定部等(図示せず)とが含まれている。
【0026】
なお、本実施例では、アンテナ部302の電波受信部4で、信号強度が所定値以上のGPS信号だけを選択して、その信号をGPS受信機304に含まれる各部6、7、8へ送る構成としているが、本発明のアンテナ部302及びGPS受信機304の構成は、これに限定されるものではない。
【0027】
このような構成の代わりに、例えば、電波受信部4では受信信号をすべて増幅してGPS受信機304の受信状態判定部6へ送り、受信状態判定部6では、上記DOP値を考慮することで、GPS信号の受信状態を判断し、受信状態が良好と判断された衛星数をカウントすると共に、受信状態が良好と判断されたGPS信号を、疑似距離変化率計測部8および衛星情報及び疑似距離計測部9へ送る構成としても良い。
【0028】
コントローラ300は、受信状態判定部6の判定結果に応じて疑似距離変化率測定部8での測定結果の出力先を切り換える切換部10、切換部10を介して送られてくる疑似距離変化率測定結果から移動体の移動速度ベクトルを互いに異なる方法により算出する第1及び第2の移動体速度ベクトル算出部12、16、及び、第1または第2の移動体速度ベクトル算出部12、16で算出された移動体の速度ベクトルから移動体の位置を推定する移動体位置推定部18を有する。
【0029】
コントローラ300は、さらに、第1の移動体速度ベクトル算出部12及びジャイロセンサ310からの出力を受け入れて移動体の進行方位を算出し、算出結果を第2の移動体速度ベクトル算出部16へ送る移動体方位算出部14と、移動体位置算出部18で推定された移動体位置及びそれを含む地図の表示を行うための画像データを生成して表示装置308へ送る表示処理部22とを有する。
【0030】
切換部10は、疑似距離変化率測定部8での測定結果を受け入れ、その測定結果を、受信状態判定部6により受信可能な衛星数が3個以上であると判定された場合、第1の移動体速度ベクトル算出部12へ、3個未満の場合、第2の移動体速度ベクトル算出部16へ送る構成となっている。
【0031】
第1の移動体速度ベクトル算出部12は、GPS測位部7で測位された移動体の現在位置に関する情報と、疑似距離変化率計測部8により測定された3個以上のGPS衛星の疑似距離変化率とを用いて、後述する第1の速度ベクトル算出方法により移動体の速度ベクトルを算出する。
【0032】
本実施例では、通常測位が可能な場合であっても、GPS測位部7で得られた移動体の現在位置に関する情報をそのまま用いず、さらに、速度ベクトルに変換する。これは、位置の決定精度を高めるために行なわれるもので、詳細については後述する。
【0033】
第2の移動体速度ベクトル算出部16は、通常測位が不可能な場合で、かつ1個以上のGPS衛星が受信可能な場合において、疑似距離変化率計測部9により計測された受信可能なGPS衛星のそれぞれについての疑似距離変化率、衛星情報及び疑似距離計測部8により計測された受信可能なGPS衛星のそれぞれに関する衛星情報及び疑似距離、及び、移動体方位算出部14で算出された移動体の進行方位から移動体の速度ベクトルを算出する。
【0034】
移動体方位算出部14は、通常測位が可能な場合において第1の移動体速度ベクトル算出部12により確定した最終方位(時間的に一番新しい方位)からの、移動体の回転角を、ジャイロセンサ14で計測した角速度を時間積分することで求め、前記求められた回転角と前記最終方位とを加えることで、移動体の進行方位を算出する。
【0035】
移動体位置推定部18は、第1の移動体速度ベクトル算出部12あるいは第2の移動体速度ベクトル算出部16により得られた移動体速度ベクトルを、順次接続して時間積分することで、予め設定されている移動体の初期値から移動量及び方向を求め、移動体の現在位置を推定する。
【0036】
表示処理部22は、得られた移動体の現在位置の周辺地図情報を、地図メモリ306から読み出し、それらを合わせて表示するための画像データを生成して、表示装置308へ送る。
【0037】
次に、第1の移動体速度ベクトル算出部12及び第2の移動体速度ベクトル算出部16で行なわれる、第1及び第2の速度ベクトル算出方法の原理について、図3を用いて説明する。
【0038】
最初、第1の速度ベクトル算出方法について説明する。この方法は、通常測位可能な場合(本実施例では、GPS信号が受信可能なGPS衛星が3個以上ある場合)に使用される。
【0039】
通常、図3に示すような配置のGPS衛星2と移動体210の現在位置(受信点)との間の擬似距離(レンジ)ρは、次式で与えられる:
【0040】
【数1】
【0041】
ここで、BはGPS受信機304の時計とGPS衛星2の時計との時刻オフセット、x,y,zは移動体の現在位置(受信位置)を示す所定の座標系での座標値、U,V,Wは衛星位置を示す前記座標系での座標値である。
【0042】
通常測位においては、上記数1が受信可能なGPS衛星数と同じ数だけでき、U,V,Wは衛星信号自体に含まれる衛星情報(アルマナックデータまたはエフェメリスデータ)から既知でありため、疑似距離ρは、受信されたGPS信号電波の発信時と受信時の時間差から計測できる。
【0043】
したがって、4個のGPS衛星からのGPS信号を受信し、それぞれのGPS信号について、上記数1を設定してできる4本の式を連立方程式として解くことにより、4つの未知数x,y,z,Bを求めることができる(3次元の通常測位)。
【0044】
また、前記座標系において、移動体の高さ方向の座標(例えばz)を地球表面上として既知とすれば、GPS衛星3個の情報をもとに位置が特定できる(2次元の通常測位)。
【0045】
次に、このようにして算出された移動体の位置をもとに、速度ベクトルを算出する方法を示す。
【0046】
上記数1を時間微分した疑似距離変化率ρドット(以下では変数の時間微分を”ドット”と記述する)は、次式で与えられる:
【0047】
【数2】
【0048】
上記数2をGPS信号が受信可能なGPS衛星数だけ連立させ、xドット,yドット,zドット,Bドットを未知数として解く。この際、上記数2中のx,y,z,Bは、上記数1の解を代入する。また、Uドット,Vドット,Wドットは、GPS信号に含まれる衛星情報から既知である。また、ρドットは、例えばGPS信号の発信電波のドップラー周波数を測定することにより得られる。
【0049】
ここでも、移動体は地球上表面を移動するため、高さ方向の座標値は、変化しない(例えばzドット=0)として既知とすれば、GPS衛星3個の情報をもとに、移動体の2次元の速度ベクトルが特定できる。
【0050】
以上のように、受信可能なGPS衛星数が最低3個以上あれば、第1の移動体速度ベクトル12により、周知のGPS測位により得られた移動体の現在位置に関する情報と疑似距離変化率とから、移動体の運動を表現するための移動体の速度ベクトルを求めることができる。
【0051】
ところで、前述したように、上記数1に基づいて求めた移動体の位置情報にはSA(Selective Availability)と呼ばれる予測不可能な誤差が含まれている。この誤差については、計測自動制御学会論文集、Vol.28,No.1,pp40−49,(1992)、「GPSにおけるセレクティブ・アベィラビリティ(選択利用性)の観測実験」において詳細に述べられている。また、この文献によると、上記数1から求めた位置情報よりも、上記数2による速度ベクトル情報の方が、このSAの影響が少ないことがわかっている。
【0052】
本実施例においては、移動体の位置の決定において、上記のように3個以上のGPS衛星が受信可能な通常測位が可能な状態でも、GPS信号から直接位置を求めるのではなく、速度ベクトルを介して位置を決定している。この理由の一つは、上記SAの影響を考慮しているからであり、よって、本実施例によれば、より高精度に移動体の現在位置を決定することが可能となる。
【0053】
さらに、本発明では、以上のようにして得られた誤差の影響が少ない速度ベクトルを用いて、移動体の進行方位(以下ではθgpsとする)を高精度に算出し、この移動方位θgpsを、以下に説明する、第2の移動体速度ベクトル算出部16で用いることで、通常測位が不可能な状態での位置決定精度をより高めるものである。
【0054】
次に、第2の移動体速度ベクトル算出部16による、通常測位が不可能な場合、すなわち受信可能なGPS衛星数が1または2個の場合における、移動体速度ベクトル算出原理について説明する。
【0055】
上記数2を変形すると、以下の数3が得られる:
【0056】
【数3】
【0057】
ここで、図3に示すように、Vs202、Vu212は各々衛星2と移動体210の速度ベクトル、θs204、θu214は、それぞれ、移動体から衛星に向かう視線方向ベクトル220と移動速度ベクトルVs202、Vu212とのなす角度を表す。なお、図3では、説明の都合上、両方の移動ベクトルとも紙面上に存在するように見えるが、両者の移動ベクトルに関して、そのような制限はなく任意の方向を向いたベクトルである。
【0058】
(ρ−B)は、図3に示したように、また上記数1からも明らかなように、GPS衛星2と受信点210(移動体)との間の実際の距離222であり、その時間微分である(ρドット−Bドット)は、ドップラー効果で言うところのドップラーシフト量に相当している。
【0059】
すなわち、地球を周回しているGPS衛星2と移動体210との間の実際の距離の変化率は、両者の速度ベクトルの視線方向成分の差に等しいことを表している。上記数3をまた変形すると、次式が得られる:
【0060】
【数4】
【0061】
ここで、上記数4の右辺のβは、GPS衛星2の高さ方向の角度である仰角、α、θは、各々衛星2と移動体210の地球表面上での方位角を表すもので、例えば図4に示すような、移動体210を原点に置き、東方向−北方向をそれぞれX、Y軸方向、高さ方向をZ軸方向とした3次元座標系で定義される。以下では、移動体の位置を決定する際には、図4の座標系を用いるものとして説明する。
【0062】
上記数4において、GPS衛星2のの速度ベクトルの視線方向成分Vs・cosθs、当該衛星2の仰角β、方位角αは、それぞれ、現時点で受信可能なGPS衛星2について得られた衛星情報と、現時点ですでに得られている最新の移動体の位置とから導きだすことができるため、既知となる。
【0063】
ここで、移動体の位置は、所定の位置決定周期で推定されるものであり、現時点で得られている最新の移動体位置としては、前回の位置決定時に受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合に、上述した第1の移動体速度ベクトル算出方法により得られた速度ベクトルから推定された位置が、また、前回の位置決定時に受信可能なGPS衛星数が1または2個の場合に、本算出方法により算出した移動体速度ベクトルから推定された位置が用いられる。
【0064】
また、Bドット(時刻オフセットの変化率)を一定と仮定(実際短い時間においては十分成り立つ)し、受信可能なGPS衛星数が3個以上のときに算出したBドットの値を用いれば、これも既知にできる。
【0065】
また、移動体の進行方位角θは、第1の移動体速度ベクトル算出部12で求めておいた方位角θgpsに、ジャイロセンサ14で計測した移動体の回転角速度を時間積分して順次加えることによって、最新の移動体の進行方位として算出できる。
【0066】
以上総合すると、通常測位が不可能な場合であっても、1または2個のGPS衛星からのGPS信号を受信し、疑似距離変化率ρドットを測定すれば、上記数4から移動体の速度Vuが算出できることになる。この移動体速度Vuと上記移動体の進行方位θとにより、移動体の速度ベクトルを求めることができる。
【0067】
次に、本実施例のGPSナビゲーション装置の処理手順を、図5〜7のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
本実施例での主処理手順は、所定の時間周期で繰り返されるもので、例えば図5に示されているゼネラルフローに示されているように、最初、本実施例のGPSナビゲーション装置の電源ON(ステップ40)後、予め定められた所定の初期処理(ステップ42)が行われる。この初期処理の際、GPS測位部7での初期測位も行われ、GPS衛星2の軌道情報(アルマナックデータ等)を含む衛星情報も取得される。
【0069】
以下の実施例では、GPS受信機304の初期測位時には、3個以上のGPS衛星が受信可能であり、通常測位が可能であるものする。また、GPS受信機304の初期測位の際に、通常測位が可能でない場合には、手動でユーザが現在位置を入力する構成としても良い。
【0070】
ステップ44では、前回の本処理で移動体位置推定部18により得られた位置、あるいは前回の位置が無ければ、上記GPS測位部7での初期測位結果を用いて、現在位置を自動設定する。
【0071】
ステップ46では、表示処理部22が、上記で設定された現在位置を含む地図データを地図メモリ306から読み込み、さらに、当該地図データの示す地図上に、移動体の現在位置を示す所定のマークを重畳させて表示するように、画像データを生成し、表示装置308へ送る。
【0072】
その後、ステップ48では、以下の割り込み処理50、70を許可する。移動体方位算出割込処理50は、一定時間Δt毎に入る処理であり、移動体の方位を、ジャイロセンサ310により得られたデータから、移動体方位算出部14により算出する。
【0073】
移動体位置推定割込処理70では、移動体方位算出割込処理50での算出結果と、GPS受信機304からの疑似距離変化率等に関するデータ等とから、当該データがGPS受信機304で取得され出力される毎に、受信可能なGPS衛星数に応じて、第1の移動体速度ベクトル算出部12及び第2の移動体速度ベクトル算出部16のうちいずれか一方が選択され、その選択された算出部からの速度ベクトルを用いて、移動体位置推定部18が移動体の現在位置を推定する。
【0074】
ステップ52では、移動体位置推定部18が、さらに、移動体位置推定割込処理70で推定された移動体位置と、ステップ44で設定された移動体の位置とを比較して、移動体の現在位置が移動しているかどうかの判定を行う。その結果、移動していれば(ステップ52でYes)、ステップ54で、表示処理部22は、現在位置の表示を変更し、それに伴い地図の更新が必要であれば更新する。また、移動していなければ(ステップ52でNo)、ステップ50以下の処理を繰り返す。
【0075】
次に、移動体方位算出部14により一定時間Δt毎に実行される、移動体方位算出割込処理50の処理手順を説明する。
【0076】
本処理では、図6に示すように、最初にステップ62で、受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合には、後述する移動体位置推定割込処理70のステップ80により算出されたGPS方位θgpsと、ジャイロセンサ310により計測した回転角速度ω(=dθ/dt)とを取得する。また、受信可能なGPS衛星数が3個未満の場合には、移動体位置推定割込処理70で得られたGPS方位の代わりに、後述するステップ66の、前回処理で求められたGPS方位θgpsを用いる。
【0077】
ステップ64では、GPSデータの時間遅れに対応するための、計測された回転角速度ωを所定時間だけ保持するバッファリング処理が施される。これは、ジャイロセンサ310からの直接出力される計測データに比較して、GPS方位θgpsは、GPS信号を受信し、その後所定の演算処理が施されてから出力されためである。
【0078】
ステップ66では、GPS方位θgpsに、図中に示すような、予め定めた補正係数a、bを含む数式により、回転角速度ωを時間積分して足し込む。なお、補正係数a,bは、使用するジャイロセンサ310に応じて設定されるものであり、例えばジャイロ誤差の補正を全く必要がない場合は、a=1、b=0と設定しても良い。
【0079】
次に、移動体位置推定割込処理70の処理手順について、図7を用いて説明する。なお、本割込処理は、例えば、GPS受信機304でのデータが取得されるΔtgps毎に実行されるものである。
【0080】
最初、ステップ72で、受信したGPS信号からGPS衛星2に関する衛星情報と疑似距離変化率とを取得し、ステップ74で、GPS方位θgps(図6のステップ66で算出)を取得する。
【0081】
ステップ76では、受信状態判定部6が、受信可能なGPS衛星数が3個以上か否かを判定することで、通常測位が可能かどうかを判断すると共に、切換部10の出力先を切り換える。
【0082】
受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合(ステップ76でYes)、ステップ78に進み、上述した第1の移動体速度ベクトル算出部12により、速度ベクトルの3次元成分Vx(=xドット)、Vy(=yドット)及びVz(=zドット)、または、2次元成分Vx、Vyを出力する。
【0083】
ステップ80では、上記速度ベクトル成分中の水平面(図4参照)成分を表すVx、Vyを用いて、以下の式により、GPS方位θgpsを再設定する:
θgps=tan−1(Vx/Vy)
次に、移動体方位算出部14が、ステップ100では、所定のジャイロバイアス誤差補正処理により、補正係数b(図6のステップ66)の値を設定し、ステップ120では、所定のジャイロスケール誤差補正処理により、補正係数aの値を設定する。なお、ステップ100、120の処理は、ジャイロセンサ310の精度によっては、毎回行なわなくても良い。また、ジャイロバイアス誤差補正処理およびジャイロスケール誤差補正処理の具体例については、以下の実施例2、3で説明する。
【0084】
ステップ82では、本処理の処理周期Δtgps中での、移動体の運動による2つの水平成分の移動距離ΔX、ΔYを、ステップ78で得られたVx、Vyを用いて、以下の式により算出する。
【0085】
ΔX=Vx・Δtgps
ΔY=Vy・Δtgps
受信可能なGPS衛星数が1または2個の場合(ステップ76でNo)は、ステップ140へ進み、2個のGPS衛星が受信可能な場合、そのうちの1個のGPS衛星を所定の衛星選択処理により選択し、選択したGPS衛星に対応するGPS信号を後述するステップで用いる。なお、衛星選択処理の具体例については、以下の実施例4で説明する。
【0086】
ステップ84では、先のステップ74で取得された移動体の進行方位θgpsから、第2の移動体速度ベクトル算出部16により、移動体の速度Vuを算出し、移動体の速度ベクトル(θgps、Vu)を決定する。
【0087】
ここで、上記数4の方位θに相当するのが進行方位θgpsである。この進行方位θgpsは、以前の処理周期で、通常測位が可能な場合に本処理(図7)のステップ80で設定され、その後図6のステップ66で加算、算出されたものを、今回の処理のステップ74(図7)で読み込み、ステップ84の処理で使用するものである。
【0088】
ステップ86では、以下の式により、移動体の水平面での移動距離成分ΔX、ΔYを算出する。
【0089】
ΔX=Vu・Δtgps・cos(θgps)
ΔY=Vu・Δtgps・sin(θgps)
最後に、ステップ88では、以上のステップ82またはステップ86の方法により求めた移動距離成分ΔX、ΔYを、前回の処理で求められている現在位置座標X、Yに各々足し込み、新たな位置X、Yを求める。
【0090】
本実施例によれば、受信可能なGPS衛星数が3個未満になり、通常測位が不可能な、GPS衛星の視野条件の悪く、磁気的な環境が乱れている市街地においても、通常測位が可能な場合に得られた最新の移動体の進行方位と、ジャイロセンサ310により精度良く計測された移動体の回転角速度とから、現時点での移動体の進行方位を算出することができるため、その進行方位から算出される移動速度ベクトルも高精度に決定することができる。この結果、通常測位が不可能な場合でも、最低1個以上のGPS衛星が受信できる状態であれば、途切れることなく高精度な現在位置を出力し続けることが可能になる。
【0091】
さらに、本実施例によれば、受信可能なGPS衛星数が3個以上の、通常測位可能な場合でも、移動体の位置を直接測位するのではなく、SAの誤差影響が少ない移動速度ベクトルを算出し、それを用いて移動体の位置を決定するため、高精度な位置決定が可能になる。
【0092】
さらに、本実施例によれば、自動車用のナビゲーションシステムにおいて、距離センサを新たに取り付けなくとも、トンネル等の衛星電波が完全に遮断される場合以外は、距離センサを取付けたナビゲーションシステムとほぼ同様のロケーション性能が実現できるようになり、距離センサの取り付けの際にユーザが被っていた費用や手間等の負担は一切無くすことができる。
【0093】
なお、第1及び第2の移動体速度ベクトル算出部14、16の切換部10の判定基準を受信可能なGPS衛星数が3個以上か否か、すなわち2次元の通常測位が可能か否かとしていたが、本発明での判定基準は、これに制限されるものではない。例えば、3次元での通常測位を基準として、受信可能なGPS衛星数が4個以上か否かとしてもよい。
【0094】
また、受信可能なGPS衛星数が3個または4個の場合でも、衛星配置条件により、測位精度が悪化する場合があるため、その条件を考慮するために、GPSで用いられているDOP指標を、上記判定基準に付加してもよい。
【0095】
また、本実施例では、移動体が自動車である場合を例にとって説明したが、本発明を搭載することができる移動体は、これに限定されるものではなく、その他の海上や空中を移動する移動体にも同様に搭載することができる。
【0096】
〔実施例2〕
本実施例は、上記実施例1と同じ構成において、移動体方位算出部14が、過去複数回の処理周期にわたって得た複数の進行方位データを用いて、ジャイロセンサ310のバイアス誤差を補正するものである。本実施例のバイアス誤差の補正は、図7のステップ100で行なわれるものであり、例えば図8に示すような処理により実行される。
【0097】
本実施例のジャイロバイアス誤差補正処理は、受信可能なGPS衛星数が3個以上の、通常測位可能な場合にのみ行う処理であり、図8に示すように、最初、ステップ102において、通常測位可能な状態で図7のステップ80で設定または再設定された移動体の進行方位θgpsを取得し、この値を基準にしてジャイロセンサ310の出力中のバイアス誤差成分を推定する。このため、進行方位θgpsの過去のデータもバッファリングしておくものとする。なお、進行方位の最新の値を(θgps)iとする。
【0098】
ステップ104では、ジャイロセンサ310からの角速度出力ωを、上記方位量と比較できるように、時間積分して角度量Δθgyroに変換しておく。なお、積分する時間間隔は、後述するステップ108で用いられる最新の方位(θgps)iから、比較の対象となる過去の方位(θgps)i−nまでの時間間隔と同じものとする。
【0099】
ステップ106では、最新の方位(θgps)iと、当該方位(θgps)iから所定時間だけさかのぼった過去の方位(θgps)i−nとの差が、所定の値(本実施例では10度)より小さいかどうかという判定を行ない、差が小さい場合には(ステップ106でYes)、移動体がほぼ直線方向に移動しており、ジャイロセンサ310の角度誤差原因としてバイアス誤差が支配的であると判断して、ステップ108へ進み、バイアス誤差量b(図6のステップ66参照)を計算する。
【0100】
ここで、最新の方位(θgps)iと過去の方位(θgps)i−nとの間の時間間隔は、移動体が近似的に直線方向に移動していることを示すのに充分な長さであれば、限定されるものではない。
【0101】
また、本実施例では、最新の方位と過去の方位との差の判定に用いるしきい値を10度としているが、本発明ではこの値に限定されるものではない。また、本複数の方位データの分散幅を算出し、それが所定の値以内であれば、移動体がほぼ直線移動していると判定する構成でも良い。
【0102】
ステップ108では、図中に示す式により、バイアス誤差量bを算出する。ここで、Δtnは、過去の方位(θgps)i−nから最新の方位(θgps)iへの経過時間を表す。算出したバイアス誤差bを用いることで、図6のステップ66にてジャイロセンサ310からの出力角速度ωに対し補正を実行することができる。
【0103】
〔実施例3〕
本実施例は、上記実施例1と同じ構成において、移動体方位算出部14が、過去複数回の処理周期にわたって得た複数の進行方位データを用いて、ジャイロセンサ310のスケール誤差を補正するものである。本実施例のスケール誤差の補正は、図7のステップ120で行なわれるものであり、例えば図9に示すような処理により実行される。
【0104】
本実施例のジャイロスケール誤差補正処理は、上記実施例2と同様に、受信可能なGPS衛星数が3個以上の、通常測位可能な場合にのみ行う処理であり、図9に示すように、最初のステップ102、104は、上記実施例2の図8のステップ102、104と同じ処理である。
【0105】
最後のステップ122では、上記実施例2の図8のステップ106とは反対の処理となる。すなわち、本ステップでは、最新の方位(θgps)iと過去の方位(θgps)i−nとの差が所定の角度(本実施例では70度)以上かどうかという判定を行ない、差が大きい場合は、移動体が交差点の角等を曲がっており、ジャイロセンサ310の角度誤差原因としてスケール誤差が支配的であると判断して、ステップ124へ進み、スケール誤差補正係数a(図6のステップ66参照)を、図中に示す式により計算する。
【0106】
なお、本実施例及び上記実施例2において、過去の方位(θgps)i−nを選択する場合、どの程度過去のデータにするかが問題となる。定性的には、上記実施例2のジャイロバイアス誤差を算出する場合は長時間の角度変化を対象とする必要があるため、過去の方位(θgps)i−nはかなり古いデータ、例えば20〜30秒前のデータを用いる。また、本実施例のスケール誤差の場合は、反対に回転時に瞬間的に発生するものであるため、過去の方位(θgps)i−nは比較的新しいデータ、例えば3〜4秒前のデータを採用する。
【0107】
以上実施例2及び3で示したように、受信可能なGPS衛星数が3個以上の、GPS通常測位が可能なときに、移動体速度ベクトル、特に進行方位を求めておくことにより、上記実施例2及び3のようなバイアス誤差及びスケール誤差の自動補正が図6のステップ66で可能になり、ジャイロセンサ310による方位算出の精度を向上させることができる。
【0108】
さらに、上記実施例2及び3によれば、受信可能なGPS衛星数が3個未満の場合も、上記補正処理の後に算出された方位量をもとに移動体の速度ベクトルを算出するため、通常測位可能な場合と同様に、より高精度に移動体の位置決定することができる。
【0109】
また、図6のステップ66でジャイロセンサ310からの出力角速度ωに対し、バイアス誤差量bとスケール誤差補正係数aは、別々に適用され補正される。このため、上記実施例2と3は、同時に実施する構成としても良い。
【0110】
また、上記実施例2及び3での補正処理は、すべてGPS方位θgpsが正しいことを前提にしているため、この前提が崩れた場合には補正が不正確になる。このような場合に備えるために、GPS方位の誤差成分をモデリングし、カルマンフィルタ等のフィルタリング処理によりGPS及びジャイロの誤差を相互に補正する手段をさらに設ける構成としても良い。
【0111】
〔実施例4〕
本実施例は、上記実施例1の衛星選択処理(図7のステップ140)の詳細を除いては、上記実施例1と同じ構成及び作用効果を有する。以下では、この衛星選択処理のいくつかの具体例を、図10、11、12を用いて説明する。
【0112】
衛星選択処理の第1の例140−1は、図10に示すように、受信可能なGPS衛星数が3個未満の通常測位不可能な場合において、受信可能な状態で残ったGPS衛星が複数個、すなわち2個ある場合、どちらの衛星を選択するかを決める処理である。
【0113】
最初、図7のステップ74で求めたGPS方位θgpsから、移動体2の移動方向単位ベクトルEuを求める(ステップ144)。次に、受信しているGPS衛星2の衛星情報に含まれる軌道情報と、前回の処理ですでに決定されている移動体210の位置とから、移動体210からGPS衛星2に向かう視線方向単位ベクトルEu−sを算出する(ステップ142)。
【0114】
次に、視線方向単位ベクトルEu−sと、移動体2の移動方向単位ベクトルEuとの内積の絶対値が最も大きいかどうかを判断し(ステップ146)、その絶対値が今までで最大である場合には(ステップ146でYes)、そのGPS衛星を特定するための衛星番号等を記憶する(ステップ148)。
【0115】
絶対値が最大でない場合には、ステップ150へ進み、受信可能な2つのGPS衛星の両者に対して上記ステップ142、146を繰り返す(ステップ150)。
【0116】
本処理例では、以上のようにして、視線方向単位ベクトルEu−sと、移動体2の移動方向単位ベクトルEuとの内積の絶対値とが最も大きいGPS衛星を選択する。このようにして選択されたGPS衛星を対象に、図7の移動体位置推定処理では、第2の移動体速度ベクトル算出処理(図7のステップ84)以降のステップを遂行する。
【0117】
上記衛星選択基準の根拠を次に示す。上述のように、図7の第2の移動体速度ベクトル算出処理(ステップ84)では、上記数4により移動体2のX−Y平面(水平面)上の移動速度Vu(図4参照)を算出する。上記数4では、分母がcosθuであり、これが零で特異点となる。上記内積演算(図10のステップ146)は、このcosθuを求めており、この値の絶対値が大きい程、特異点から離れることになり、ジャイロセンサ310により求める方位θ(ここでは、進行方位θgps)の誤差の影響も小さくすることができる。
【0118】
衛星選択処理の第2の例140−2は、図11に示すように、受信可能なGPS衛星の仰角βを、当該GPS衛星の軌道情報等を含む衛星情報と、前回の処理等で求められた移動体の概略の位置とから求め(ステップ160)、それが小さいGPS衛星を選択する(ステップ162、148、150)。
【0119】
本例での衛星選択基準も、上記第1の例と同様に、上記数4の右側の式で分母cosβを大きくすることになり、移動体2の移動速度Vuの決定精度の向上が可能となる。
【0120】
衛星選択処理の第3の例140−3は、図12に示すように、上記2つの例と同様、2個の受信可能なGPS衛星のうち、上記数4の分母cos(αーθ)を大きくするようなGPS衛星、すなわち、|αーθ|が小さいものを、図7のステップ74で求めたGPS方位θgpsと、GPS信号を受信しているGPS衛星の方位角αとを取得して、選択を行なう処理(ステップ160、162、148、150)である。
【0121】
本実施例の衛星選択処理140−1、140−2、140−3によれば、通常測位が不可能な状態で、かつ、受信可能なGPS衛星が2個だけの場合に、移動体の移動速度Vuをより精度良く決定することができる一方のGPS衛星を、合理的かつ自動的に選択することが可能となる。
【0122】
本実施例では、通常測位にはGPS衛星が3個必要で、通常測位不可能な場合には2個のGPS衛星を受信するものと想定しているが、本発明の衛星選択処理は、このGPS衛星数に限定されるものではない。
【0123】
本実施例及び上記実施例1、2、3において、上記数4の第2の移動体速度ベクトル算出処理では、その原理説明で述べたように、時刻オフセットの変化率Bドットは、一定と仮定し、第1の移動体速度ベクトル算出処理で求めたBドットの値を用いることにより既知としていた。
【0124】
したがって、速度ベクトルを決定精度をさらに高めようとするには、もしくは長い時間、第2の移動体速度ベクトル算出処理による計測が連続している場合は、このBドットも未知数とし、移動体の移動速度Vuと合わせ、未知数2の連立方程式として解く。この場合、受信可能なGPS衛星は2個必要となり、上記のような衛星選択処理を行う必要はなくなる。
【0125】
また、高さ方向の変化率zドットについても、上記と同様のことが言え、Bドットの代わりにzドットを未知数にしてもよい。
【0126】
【発明の効果】
本発明によれば、通常測位可能な場合、あるいは通常測位不可能な場合に依らず、最低1個以上のGPS衛星が受信できる状態であれば、そのGPS衛星からのGPS信号を用いて、途切れることなく高精度な現在位置を出力し続けることができるGPSナビゲーション装置を提供することができる。
【0127】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のGPSナビゲーション装置の一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】本発明のGPSナビゲーション装置のハード構成例を示すブロック図。
【図3】図1の実施例における第2の移動体速度ベクトル算出方法の原理についての説明図。
【図4】図1の実施例における第2の移動体速度ベクトル算出方法で用いる座標系の一例、及びその座標系内での移動体速度ベクトルを示した説明図。
【図5】本発明のGPSナビゲーション装置のゼネラルフローを示すフローチャート。
【図6】図5中の移動体方位算出割込処理のフローチャート。
【図7】図5中の移動体位置推定割込処理のフローチャート。
【図8】実施例2でのジャイロバイアス誤差補正処理のフローチャート。
【図9】実施例3でのジャイロスケール誤差補正処理のフローチャート。
【図10】実施例4での衛星選択処理の一例を示すフローチャート。
【図11】実施例4での衛星選択処理の他の例を示すフローチャート。
【図12】実施例4での衛星選択処理の他の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
2…GPS衛星、4…電波受信部、6…受信状態判定部、7…GPS測位部、8…疑似距離変化率計測部、9…衛星情報及び疑似距離計測部、10…切換部、12…第1の移動体速度ベクトル算出部、14…移動体方位算出部、16…第2の移動体速度ベクトル算出部、18…移動体位置推定部、22…表示処理部、300…コントローラ、302…アンテナ部、304…GPS受信機、306…地図メモリ、308…表示装置、310…ジャイロセンサ。
【産業上の利用分野】
本発明は、移動体に備えられたGPS(Global Positioning System)測位装置と種々のセンサとにより移動体の運動を検出し、それらの検出情報を組み合わせることにより、移動体の位置等の決定精度を向上させるナビゲーション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
GPS測位装置は、複数個のGPS衛星から送信されるGPS信号を同時に受信し、各GPS信号に含まれている、各GPS衛星と当該GPS測位装置が配置された受信点との間の実際の距離に対応する擬似距離データ、及び各GPS衛星の軌道や位置データより、当該受信点の位置を計算し、それを表示するよう構成されている。なお、疑似距離には、各GPS衛星において時刻を決定する時計と、当該GPS測位装置の時計との間の時刻のずれに対応する、時刻オフセットによる影響が含まれている。
【0003】
このようなGPS測位装置では、前記受信点での2次元または3次元位置の算出のためには、少なくとも3個以上のGPS衛星からのGPS信号をほぼ同時期に受信することが必要である。ところが、GPS測位装置が、例えば移動体に搭載され、その移動体が市街地などを移動する場合には、市街地の建物等の遮蔽物の影響により、GPS信号の受信が可能なGPS衛星の個数が3個に満たず、位置を決定することができないという問題があった。
【0004】
この問題の解決策として、例えば3個以上のGPS衛星からの信号が受信できず、測位不可能の間は、方位センサ、距離センサからの方位データ、距離データを用いて移動体の位置を推測し、その推測位置を表示する方法がある。しかし、このような方法では、これらセンサ分のコストアップが避けられず、高価なシステムになるという問題がある。
【0005】
特に、距離センサは、移動体が自動車の場合、通常、車体本体の距離センサ出力を取り出すことで代用するが、このためには、距離センサの取り付けに関し、専門的な知識を有するディーラーやカーショップ等で行う必要があり、その際の取り付け費用や手間などユーザの負担は多大なものとなっていた。
【0006】
また、もう一つの解決策として、特開平6−18646号公報記載の例(以下公知例と呼ぶ)がある。この例では、GPS信号を受信可能な衛星数が減ったことによる情報の減少を、方位センサで補い演算するものである。ここで、方位センサで補える自由度は2である。
【0007】
すなわち、移動体が移動している場合、方位センサは、移動速度ベクトルの方向、例えば単位ベクトルのように、任意の3次元座標において、方位角(水平面上での方位を示す角度)と、仰角(方位角が決定される水平面と直交する面上での角度)とを決定することができる。
【0008】
このため、GPS信号を受信可能な衛星が最低1個以上からのGPS信号に基づき、移動体の速度量を算出できれば、結果として移動体の速度ベクトルを求めることができる。この解決策によれば、距離センサを必要としないため、距離センサを購入する場合に発生する上記のようなユーザの負担増もない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、GPS信号を受信可能な衛星数が減少する市街地等では、同時に建物の鉄骨構造により地球磁場が乱れている。また、送電線や電車の線路近傍などでも、地球磁場が乱されている場合が多い。このため、方位センサとして地球磁場を検知して方位を測定する地磁気センサなどを想定している、上記公知例では、検出される方位量に誤差が多く、結果として得られる移動速度ベクトルも不正確になるという問題があった。
【0010】
また、この公知例のみならず、GPS測位装置では一般に、GPS信号が受信可能な衛星数が3個以上の状態、いわゆる通常測位が可能な状態において、自己位置を検出するが、この位置情報にはSA(Selective Availability)と呼ばれる予測不可能な誤差が含まれているという問題もあった。
【0011】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、GPS信号が受信可能なGPS衛星の個数が3個以上の場合(通常測位可能な場合)、あるいは3個未満の場合(通常測位不可能な場合)に依らず、最低1個以上受信できる状態であれば、そのGPS衛星からのGPS信号を用いて、途切れることなく高精度な現在位置を出力し続けることができるGPSナビゲーション装置を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、GPS衛星からのGPS信号を受信し、受信可能なGPS衛星が所定数以上ある場合、通常測位により移動体の位置を決定するGPS受信機を有するGPSナビゲーション装置において、通常測位が可能かどうかを判定する受信状態判定手段と、前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に疑似距離変化率を測定する疑似距離変化率計測手段と、前記受信状態判定手段により通常測位が可能と判定された場合、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、前記疑似距離変化率計測手段により計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求める第1の速度ベクトル算出手段と、移動体の回転角を測定する回転角測定手段と、前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判断された場合、通常測位が可能であった時点に前記第1の速度ベクトル算出手段により算出された移動速度ベクトルと、前記移動速度ベクトルが算出された時点から現在までの前記回転角測定手段により測定された移動体の回転角の履歴とから、移動体の移動方位を算出する移動方位算出手段と、前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に衛星情報を測定する衛星情報取得手段と、前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判定され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合、GPS衛星毎に、前記疑似距離計測手段により計測された疑似距離変化率及び前記衛星情報取得手段により測定された衛星情報と、前記移動方位算出手段により算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求める第2の速度ベクトル算出手段と、通常測位可能な場合には前記第1の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、通常測位不可能な場合には前記第2の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、移動体の位置を推定する位置推定手段とを有することを特徴とするGPSナビゲーション装置により達成される。
【0013】
上記目的は、また、GPS衛星からのGPS信号を受信し、受信可能なGPS衛星が所定数以上ある場合、通常測位により移動体の位置を決定するGPSナビゲーション方法において、通常測位が可能かどうかを判定し、通常測位が可能と判定された場合には、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、受信可能なGPS衛星毎に計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求め、通常測位が不可能と判断され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合には、通常測位が可能であった時点に算出された移動速度ベクトルと、前記移動速度ベクトルが算出された時点から現在までに測定された移動体の回転角の履歴とから、移動体の移動方位を算出し、GPS衛星毎に計測された疑似距離変化率及び衛星情報と、前記算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求め、通常測位可能な場合に求められた移動速度ベクトル、あるいは、通常測位不可能な場合に求められた移動速度ベクトルから、移動体の位置を推定することを特徴とするGPSナビゲーション方法により達成される。
【0014】
【作用】
本発明のGPSナビゲーション装置において、前記受信状態判定手段により通常測位が可能と判定された場合、第1の速度ベクトル算出手段が、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求め、通常測位が不可能と判断され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合、第2の速度ベクトル算出手段が、GPS衛星毎に、前記疑似距離計測手段により計測された疑似距離変化率及び前記衛星情報取得手段により測定された衛星情報と、前記移動方位算出手段により算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求める。
【0015】
また、前記移動体の移動方位は、移動方位算出手段が、通常測位が可能であった時点に前記第1の速度ベクトル算出手段により算出された移動速度ベクトル、及び、前記回転角測定手段により測定された移動体の回転角から算出する。
【0016】
したがって、通常測位が可能かどうかに係らず、1個以上のGPS衛星が受信可能であれば、位置推定手段が、前記第1及び第2の速度ベクトル算出手段のいずれか一方で求められた移動速度ベクトルから移動体の位置を推定することができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を適用したGPSナビゲーション装置の実施例を、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例では、GPSナビゲーション装置は、自動車等の地表を移動する移動体に搭載されるものとする。
【0018】
〔実施例1〕
本発明が適用されたGPSナビゲーション装置の第1の例である実施例1は、ハードウエア構成として、例えば図2に示すように、GPS衛星からのGPS電波信号を受信するアンテナを含むアンテナ部302、アンテナ部302から出力される受信信号から受信点(以下では移動体の現在位置あるいは位置と呼ぶ)の測位や疑似距離変化率計測等を行うGPS受信機304、及び、GPS受信機304からの出力結果を使って移動体の移動速度ベクトルを算出し移動体の位置を推定すると共に周辺装置の制御等を行う、例えばマイクロコンピュータにより実現されるコントローラ300を有する。
【0019】
本実施例は、さらに、移動体の方位変化量(回転角速度)を検出するジャイロセンサ310、道路地図データをCD−ROM等を用いて記憶しておく地図メモリ306、及び、コントローラ300で推定した移動体の現在位置を、地図メモリ306から読みだした周辺地図に重ねてユーザに対し表示する、CRTや液晶デイスプレイを備える表示装置308を有する。
【0020】
ジャイロセンサ310は、地磁気の計測を行なうことなく、当該センサが取付けられる移動体の進路方向の変更などに伴い生じる回転運動の回転角速度を測定するものであり、例えば光ファイバジャイロや、レーザジャイロにより構成される。
【0021】
次に、本実施例の構成要素の詳細説明を、図1を用いて行なう。
【0022】
アンテナ部302は、図1に示すように、GPS電波信号を受信するアンテナ4aと、アンテナ4aで受信された複数のGPS衛星からのGPS信号のうち、所定の信号強度以上のGPS信号だけを選択して出力する電波受信部4とを有する。
【0023】
GPS受信機304は、電波受信部4からの出力信号に基づいて、受信しているGPS信号を発信しているGPS衛星の個数をカウントする受信状態判定部6と、受信しているGPS信号に対応するGPS衛星と移動体との間の疑似距離の時間変化率に対応する疑似距離変化率を、それぞれGPS衛星について測定する疑似距離変化率計測部8とを有する。
【0024】
疑似距離変化率測定部8は、例えば、GPS衛星と移動体との相対速度に対応したドップラー効果により変化している、GPS信号の搬送波のドップラー周波数を測定し、その測定値と、既知の当該搬送波の発信周波数とを比較することにより、疑似変化率を測定する。
【0025】
GPS受信機304は、さらに、周知のGPS測位装置と同様に、受信しているGPS信号に対応するGPS衛星の軌道等に関する衛星情報、及び、GPS衛星と移動体との間の疑似距離(レンジ)情報をそれぞれ計測する衛星情報及び疑似距離計測部9と、当該計測部9で計測された結果から、通常測位可能な場合(例えば、受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合)、周知のGPS測位を行ない移動体の現在位置を測定するGPS測位部7と、測位精度の指標となるDOP(Dilution of Precision)の測定部等(図示せず)とが含まれている。
【0026】
なお、本実施例では、アンテナ部302の電波受信部4で、信号強度が所定値以上のGPS信号だけを選択して、その信号をGPS受信機304に含まれる各部6、7、8へ送る構成としているが、本発明のアンテナ部302及びGPS受信機304の構成は、これに限定されるものではない。
【0027】
このような構成の代わりに、例えば、電波受信部4では受信信号をすべて増幅してGPS受信機304の受信状態判定部6へ送り、受信状態判定部6では、上記DOP値を考慮することで、GPS信号の受信状態を判断し、受信状態が良好と判断された衛星数をカウントすると共に、受信状態が良好と判断されたGPS信号を、疑似距離変化率計測部8および衛星情報及び疑似距離計測部9へ送る構成としても良い。
【0028】
コントローラ300は、受信状態判定部6の判定結果に応じて疑似距離変化率測定部8での測定結果の出力先を切り換える切換部10、切換部10を介して送られてくる疑似距離変化率測定結果から移動体の移動速度ベクトルを互いに異なる方法により算出する第1及び第2の移動体速度ベクトル算出部12、16、及び、第1または第2の移動体速度ベクトル算出部12、16で算出された移動体の速度ベクトルから移動体の位置を推定する移動体位置推定部18を有する。
【0029】
コントローラ300は、さらに、第1の移動体速度ベクトル算出部12及びジャイロセンサ310からの出力を受け入れて移動体の進行方位を算出し、算出結果を第2の移動体速度ベクトル算出部16へ送る移動体方位算出部14と、移動体位置算出部18で推定された移動体位置及びそれを含む地図の表示を行うための画像データを生成して表示装置308へ送る表示処理部22とを有する。
【0030】
切換部10は、疑似距離変化率測定部8での測定結果を受け入れ、その測定結果を、受信状態判定部6により受信可能な衛星数が3個以上であると判定された場合、第1の移動体速度ベクトル算出部12へ、3個未満の場合、第2の移動体速度ベクトル算出部16へ送る構成となっている。
【0031】
第1の移動体速度ベクトル算出部12は、GPS測位部7で測位された移動体の現在位置に関する情報と、疑似距離変化率計測部8により測定された3個以上のGPS衛星の疑似距離変化率とを用いて、後述する第1の速度ベクトル算出方法により移動体の速度ベクトルを算出する。
【0032】
本実施例では、通常測位が可能な場合であっても、GPS測位部7で得られた移動体の現在位置に関する情報をそのまま用いず、さらに、速度ベクトルに変換する。これは、位置の決定精度を高めるために行なわれるもので、詳細については後述する。
【0033】
第2の移動体速度ベクトル算出部16は、通常測位が不可能な場合で、かつ1個以上のGPS衛星が受信可能な場合において、疑似距離変化率計測部9により計測された受信可能なGPS衛星のそれぞれについての疑似距離変化率、衛星情報及び疑似距離計測部8により計測された受信可能なGPS衛星のそれぞれに関する衛星情報及び疑似距離、及び、移動体方位算出部14で算出された移動体の進行方位から移動体の速度ベクトルを算出する。
【0034】
移動体方位算出部14は、通常測位が可能な場合において第1の移動体速度ベクトル算出部12により確定した最終方位(時間的に一番新しい方位)からの、移動体の回転角を、ジャイロセンサ14で計測した角速度を時間積分することで求め、前記求められた回転角と前記最終方位とを加えることで、移動体の進行方位を算出する。
【0035】
移動体位置推定部18は、第1の移動体速度ベクトル算出部12あるいは第2の移動体速度ベクトル算出部16により得られた移動体速度ベクトルを、順次接続して時間積分することで、予め設定されている移動体の初期値から移動量及び方向を求め、移動体の現在位置を推定する。
【0036】
表示処理部22は、得られた移動体の現在位置の周辺地図情報を、地図メモリ306から読み出し、それらを合わせて表示するための画像データを生成して、表示装置308へ送る。
【0037】
次に、第1の移動体速度ベクトル算出部12及び第2の移動体速度ベクトル算出部16で行なわれる、第1及び第2の速度ベクトル算出方法の原理について、図3を用いて説明する。
【0038】
最初、第1の速度ベクトル算出方法について説明する。この方法は、通常測位可能な場合(本実施例では、GPS信号が受信可能なGPS衛星が3個以上ある場合)に使用される。
【0039】
通常、図3に示すような配置のGPS衛星2と移動体210の現在位置(受信点)との間の擬似距離(レンジ)ρは、次式で与えられる:
【0040】
【数1】
【0041】
ここで、BはGPS受信機304の時計とGPS衛星2の時計との時刻オフセット、x,y,zは移動体の現在位置(受信位置)を示す所定の座標系での座標値、U,V,Wは衛星位置を示す前記座標系での座標値である。
【0042】
通常測位においては、上記数1が受信可能なGPS衛星数と同じ数だけでき、U,V,Wは衛星信号自体に含まれる衛星情報(アルマナックデータまたはエフェメリスデータ)から既知でありため、疑似距離ρは、受信されたGPS信号電波の発信時と受信時の時間差から計測できる。
【0043】
したがって、4個のGPS衛星からのGPS信号を受信し、それぞれのGPS信号について、上記数1を設定してできる4本の式を連立方程式として解くことにより、4つの未知数x,y,z,Bを求めることができる(3次元の通常測位)。
【0044】
また、前記座標系において、移動体の高さ方向の座標(例えばz)を地球表面上として既知とすれば、GPS衛星3個の情報をもとに位置が特定できる(2次元の通常測位)。
【0045】
次に、このようにして算出された移動体の位置をもとに、速度ベクトルを算出する方法を示す。
【0046】
上記数1を時間微分した疑似距離変化率ρドット(以下では変数の時間微分を”ドット”と記述する)は、次式で与えられる:
【0047】
【数2】
【0048】
上記数2をGPS信号が受信可能なGPS衛星数だけ連立させ、xドット,yドット,zドット,Bドットを未知数として解く。この際、上記数2中のx,y,z,Bは、上記数1の解を代入する。また、Uドット,Vドット,Wドットは、GPS信号に含まれる衛星情報から既知である。また、ρドットは、例えばGPS信号の発信電波のドップラー周波数を測定することにより得られる。
【0049】
ここでも、移動体は地球上表面を移動するため、高さ方向の座標値は、変化しない(例えばzドット=0)として既知とすれば、GPS衛星3個の情報をもとに、移動体の2次元の速度ベクトルが特定できる。
【0050】
以上のように、受信可能なGPS衛星数が最低3個以上あれば、第1の移動体速度ベクトル12により、周知のGPS測位により得られた移動体の現在位置に関する情報と疑似距離変化率とから、移動体の運動を表現するための移動体の速度ベクトルを求めることができる。
【0051】
ところで、前述したように、上記数1に基づいて求めた移動体の位置情報にはSA(Selective Availability)と呼ばれる予測不可能な誤差が含まれている。この誤差については、計測自動制御学会論文集、Vol.28,No.1,pp40−49,(1992)、「GPSにおけるセレクティブ・アベィラビリティ(選択利用性)の観測実験」において詳細に述べられている。また、この文献によると、上記数1から求めた位置情報よりも、上記数2による速度ベクトル情報の方が、このSAの影響が少ないことがわかっている。
【0052】
本実施例においては、移動体の位置の決定において、上記のように3個以上のGPS衛星が受信可能な通常測位が可能な状態でも、GPS信号から直接位置を求めるのではなく、速度ベクトルを介して位置を決定している。この理由の一つは、上記SAの影響を考慮しているからであり、よって、本実施例によれば、より高精度に移動体の現在位置を決定することが可能となる。
【0053】
さらに、本発明では、以上のようにして得られた誤差の影響が少ない速度ベクトルを用いて、移動体の進行方位(以下ではθgpsとする)を高精度に算出し、この移動方位θgpsを、以下に説明する、第2の移動体速度ベクトル算出部16で用いることで、通常測位が不可能な状態での位置決定精度をより高めるものである。
【0054】
次に、第2の移動体速度ベクトル算出部16による、通常測位が不可能な場合、すなわち受信可能なGPS衛星数が1または2個の場合における、移動体速度ベクトル算出原理について説明する。
【0055】
上記数2を変形すると、以下の数3が得られる:
【0056】
【数3】
【0057】
ここで、図3に示すように、Vs202、Vu212は各々衛星2と移動体210の速度ベクトル、θs204、θu214は、それぞれ、移動体から衛星に向かう視線方向ベクトル220と移動速度ベクトルVs202、Vu212とのなす角度を表す。なお、図3では、説明の都合上、両方の移動ベクトルとも紙面上に存在するように見えるが、両者の移動ベクトルに関して、そのような制限はなく任意の方向を向いたベクトルである。
【0058】
(ρ−B)は、図3に示したように、また上記数1からも明らかなように、GPS衛星2と受信点210(移動体)との間の実際の距離222であり、その時間微分である(ρドット−Bドット)は、ドップラー効果で言うところのドップラーシフト量に相当している。
【0059】
すなわち、地球を周回しているGPS衛星2と移動体210との間の実際の距離の変化率は、両者の速度ベクトルの視線方向成分の差に等しいことを表している。上記数3をまた変形すると、次式が得られる:
【0060】
【数4】
【0061】
ここで、上記数4の右辺のβは、GPS衛星2の高さ方向の角度である仰角、α、θは、各々衛星2と移動体210の地球表面上での方位角を表すもので、例えば図4に示すような、移動体210を原点に置き、東方向−北方向をそれぞれX、Y軸方向、高さ方向をZ軸方向とした3次元座標系で定義される。以下では、移動体の位置を決定する際には、図4の座標系を用いるものとして説明する。
【0062】
上記数4において、GPS衛星2のの速度ベクトルの視線方向成分Vs・cosθs、当該衛星2の仰角β、方位角αは、それぞれ、現時点で受信可能なGPS衛星2について得られた衛星情報と、現時点ですでに得られている最新の移動体の位置とから導きだすことができるため、既知となる。
【0063】
ここで、移動体の位置は、所定の位置決定周期で推定されるものであり、現時点で得られている最新の移動体位置としては、前回の位置決定時に受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合に、上述した第1の移動体速度ベクトル算出方法により得られた速度ベクトルから推定された位置が、また、前回の位置決定時に受信可能なGPS衛星数が1または2個の場合に、本算出方法により算出した移動体速度ベクトルから推定された位置が用いられる。
【0064】
また、Bドット(時刻オフセットの変化率)を一定と仮定(実際短い時間においては十分成り立つ)し、受信可能なGPS衛星数が3個以上のときに算出したBドットの値を用いれば、これも既知にできる。
【0065】
また、移動体の進行方位角θは、第1の移動体速度ベクトル算出部12で求めておいた方位角θgpsに、ジャイロセンサ14で計測した移動体の回転角速度を時間積分して順次加えることによって、最新の移動体の進行方位として算出できる。
【0066】
以上総合すると、通常測位が不可能な場合であっても、1または2個のGPS衛星からのGPS信号を受信し、疑似距離変化率ρドットを測定すれば、上記数4から移動体の速度Vuが算出できることになる。この移動体速度Vuと上記移動体の進行方位θとにより、移動体の速度ベクトルを求めることができる。
【0067】
次に、本実施例のGPSナビゲーション装置の処理手順を、図5〜7のフローチャートを用いて説明する。
【0068】
本実施例での主処理手順は、所定の時間周期で繰り返されるもので、例えば図5に示されているゼネラルフローに示されているように、最初、本実施例のGPSナビゲーション装置の電源ON(ステップ40)後、予め定められた所定の初期処理(ステップ42)が行われる。この初期処理の際、GPS測位部7での初期測位も行われ、GPS衛星2の軌道情報(アルマナックデータ等)を含む衛星情報も取得される。
【0069】
以下の実施例では、GPS受信機304の初期測位時には、3個以上のGPS衛星が受信可能であり、通常測位が可能であるものする。また、GPS受信機304の初期測位の際に、通常測位が可能でない場合には、手動でユーザが現在位置を入力する構成としても良い。
【0070】
ステップ44では、前回の本処理で移動体位置推定部18により得られた位置、あるいは前回の位置が無ければ、上記GPS測位部7での初期測位結果を用いて、現在位置を自動設定する。
【0071】
ステップ46では、表示処理部22が、上記で設定された現在位置を含む地図データを地図メモリ306から読み込み、さらに、当該地図データの示す地図上に、移動体の現在位置を示す所定のマークを重畳させて表示するように、画像データを生成し、表示装置308へ送る。
【0072】
その後、ステップ48では、以下の割り込み処理50、70を許可する。移動体方位算出割込処理50は、一定時間Δt毎に入る処理であり、移動体の方位を、ジャイロセンサ310により得られたデータから、移動体方位算出部14により算出する。
【0073】
移動体位置推定割込処理70では、移動体方位算出割込処理50での算出結果と、GPS受信機304からの疑似距離変化率等に関するデータ等とから、当該データがGPS受信機304で取得され出力される毎に、受信可能なGPS衛星数に応じて、第1の移動体速度ベクトル算出部12及び第2の移動体速度ベクトル算出部16のうちいずれか一方が選択され、その選択された算出部からの速度ベクトルを用いて、移動体位置推定部18が移動体の現在位置を推定する。
【0074】
ステップ52では、移動体位置推定部18が、さらに、移動体位置推定割込処理70で推定された移動体位置と、ステップ44で設定された移動体の位置とを比較して、移動体の現在位置が移動しているかどうかの判定を行う。その結果、移動していれば(ステップ52でYes)、ステップ54で、表示処理部22は、現在位置の表示を変更し、それに伴い地図の更新が必要であれば更新する。また、移動していなければ(ステップ52でNo)、ステップ50以下の処理を繰り返す。
【0075】
次に、移動体方位算出部14により一定時間Δt毎に実行される、移動体方位算出割込処理50の処理手順を説明する。
【0076】
本処理では、図6に示すように、最初にステップ62で、受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合には、後述する移動体位置推定割込処理70のステップ80により算出されたGPS方位θgpsと、ジャイロセンサ310により計測した回転角速度ω(=dθ/dt)とを取得する。また、受信可能なGPS衛星数が3個未満の場合には、移動体位置推定割込処理70で得られたGPS方位の代わりに、後述するステップ66の、前回処理で求められたGPS方位θgpsを用いる。
【0077】
ステップ64では、GPSデータの時間遅れに対応するための、計測された回転角速度ωを所定時間だけ保持するバッファリング処理が施される。これは、ジャイロセンサ310からの直接出力される計測データに比較して、GPS方位θgpsは、GPS信号を受信し、その後所定の演算処理が施されてから出力されためである。
【0078】
ステップ66では、GPS方位θgpsに、図中に示すような、予め定めた補正係数a、bを含む数式により、回転角速度ωを時間積分して足し込む。なお、補正係数a,bは、使用するジャイロセンサ310に応じて設定されるものであり、例えばジャイロ誤差の補正を全く必要がない場合は、a=1、b=0と設定しても良い。
【0079】
次に、移動体位置推定割込処理70の処理手順について、図7を用いて説明する。なお、本割込処理は、例えば、GPS受信機304でのデータが取得されるΔtgps毎に実行されるものである。
【0080】
最初、ステップ72で、受信したGPS信号からGPS衛星2に関する衛星情報と疑似距離変化率とを取得し、ステップ74で、GPS方位θgps(図6のステップ66で算出)を取得する。
【0081】
ステップ76では、受信状態判定部6が、受信可能なGPS衛星数が3個以上か否かを判定することで、通常測位が可能かどうかを判断すると共に、切換部10の出力先を切り換える。
【0082】
受信可能なGPS衛星数が3個以上の場合(ステップ76でYes)、ステップ78に進み、上述した第1の移動体速度ベクトル算出部12により、速度ベクトルの3次元成分Vx(=xドット)、Vy(=yドット)及びVz(=zドット)、または、2次元成分Vx、Vyを出力する。
【0083】
ステップ80では、上記速度ベクトル成分中の水平面(図4参照)成分を表すVx、Vyを用いて、以下の式により、GPS方位θgpsを再設定する:
θgps=tan−1(Vx/Vy)
次に、移動体方位算出部14が、ステップ100では、所定のジャイロバイアス誤差補正処理により、補正係数b(図6のステップ66)の値を設定し、ステップ120では、所定のジャイロスケール誤差補正処理により、補正係数aの値を設定する。なお、ステップ100、120の処理は、ジャイロセンサ310の精度によっては、毎回行なわなくても良い。また、ジャイロバイアス誤差補正処理およびジャイロスケール誤差補正処理の具体例については、以下の実施例2、3で説明する。
【0084】
ステップ82では、本処理の処理周期Δtgps中での、移動体の運動による2つの水平成分の移動距離ΔX、ΔYを、ステップ78で得られたVx、Vyを用いて、以下の式により算出する。
【0085】
ΔX=Vx・Δtgps
ΔY=Vy・Δtgps
受信可能なGPS衛星数が1または2個の場合(ステップ76でNo)は、ステップ140へ進み、2個のGPS衛星が受信可能な場合、そのうちの1個のGPS衛星を所定の衛星選択処理により選択し、選択したGPS衛星に対応するGPS信号を後述するステップで用いる。なお、衛星選択処理の具体例については、以下の実施例4で説明する。
【0086】
ステップ84では、先のステップ74で取得された移動体の進行方位θgpsから、第2の移動体速度ベクトル算出部16により、移動体の速度Vuを算出し、移動体の速度ベクトル(θgps、Vu)を決定する。
【0087】
ここで、上記数4の方位θに相当するのが進行方位θgpsである。この進行方位θgpsは、以前の処理周期で、通常測位が可能な場合に本処理(図7)のステップ80で設定され、その後図6のステップ66で加算、算出されたものを、今回の処理のステップ74(図7)で読み込み、ステップ84の処理で使用するものである。
【0088】
ステップ86では、以下の式により、移動体の水平面での移動距離成分ΔX、ΔYを算出する。
【0089】
ΔX=Vu・Δtgps・cos(θgps)
ΔY=Vu・Δtgps・sin(θgps)
最後に、ステップ88では、以上のステップ82またはステップ86の方法により求めた移動距離成分ΔX、ΔYを、前回の処理で求められている現在位置座標X、Yに各々足し込み、新たな位置X、Yを求める。
【0090】
本実施例によれば、受信可能なGPS衛星数が3個未満になり、通常測位が不可能な、GPS衛星の視野条件の悪く、磁気的な環境が乱れている市街地においても、通常測位が可能な場合に得られた最新の移動体の進行方位と、ジャイロセンサ310により精度良く計測された移動体の回転角速度とから、現時点での移動体の進行方位を算出することができるため、その進行方位から算出される移動速度ベクトルも高精度に決定することができる。この結果、通常測位が不可能な場合でも、最低1個以上のGPS衛星が受信できる状態であれば、途切れることなく高精度な現在位置を出力し続けることが可能になる。
【0091】
さらに、本実施例によれば、受信可能なGPS衛星数が3個以上の、通常測位可能な場合でも、移動体の位置を直接測位するのではなく、SAの誤差影響が少ない移動速度ベクトルを算出し、それを用いて移動体の位置を決定するため、高精度な位置決定が可能になる。
【0092】
さらに、本実施例によれば、自動車用のナビゲーションシステムにおいて、距離センサを新たに取り付けなくとも、トンネル等の衛星電波が完全に遮断される場合以外は、距離センサを取付けたナビゲーションシステムとほぼ同様のロケーション性能が実現できるようになり、距離センサの取り付けの際にユーザが被っていた費用や手間等の負担は一切無くすことができる。
【0093】
なお、第1及び第2の移動体速度ベクトル算出部14、16の切換部10の判定基準を受信可能なGPS衛星数が3個以上か否か、すなわち2次元の通常測位が可能か否かとしていたが、本発明での判定基準は、これに制限されるものではない。例えば、3次元での通常測位を基準として、受信可能なGPS衛星数が4個以上か否かとしてもよい。
【0094】
また、受信可能なGPS衛星数が3個または4個の場合でも、衛星配置条件により、測位精度が悪化する場合があるため、その条件を考慮するために、GPSで用いられているDOP指標を、上記判定基準に付加してもよい。
【0095】
また、本実施例では、移動体が自動車である場合を例にとって説明したが、本発明を搭載することができる移動体は、これに限定されるものではなく、その他の海上や空中を移動する移動体にも同様に搭載することができる。
【0096】
〔実施例2〕
本実施例は、上記実施例1と同じ構成において、移動体方位算出部14が、過去複数回の処理周期にわたって得た複数の進行方位データを用いて、ジャイロセンサ310のバイアス誤差を補正するものである。本実施例のバイアス誤差の補正は、図7のステップ100で行なわれるものであり、例えば図8に示すような処理により実行される。
【0097】
本実施例のジャイロバイアス誤差補正処理は、受信可能なGPS衛星数が3個以上の、通常測位可能な場合にのみ行う処理であり、図8に示すように、最初、ステップ102において、通常測位可能な状態で図7のステップ80で設定または再設定された移動体の進行方位θgpsを取得し、この値を基準にしてジャイロセンサ310の出力中のバイアス誤差成分を推定する。このため、進行方位θgpsの過去のデータもバッファリングしておくものとする。なお、進行方位の最新の値を(θgps)iとする。
【0098】
ステップ104では、ジャイロセンサ310からの角速度出力ωを、上記方位量と比較できるように、時間積分して角度量Δθgyroに変換しておく。なお、積分する時間間隔は、後述するステップ108で用いられる最新の方位(θgps)iから、比較の対象となる過去の方位(θgps)i−nまでの時間間隔と同じものとする。
【0099】
ステップ106では、最新の方位(θgps)iと、当該方位(θgps)iから所定時間だけさかのぼった過去の方位(θgps)i−nとの差が、所定の値(本実施例では10度)より小さいかどうかという判定を行ない、差が小さい場合には(ステップ106でYes)、移動体がほぼ直線方向に移動しており、ジャイロセンサ310の角度誤差原因としてバイアス誤差が支配的であると判断して、ステップ108へ進み、バイアス誤差量b(図6のステップ66参照)を計算する。
【0100】
ここで、最新の方位(θgps)iと過去の方位(θgps)i−nとの間の時間間隔は、移動体が近似的に直線方向に移動していることを示すのに充分な長さであれば、限定されるものではない。
【0101】
また、本実施例では、最新の方位と過去の方位との差の判定に用いるしきい値を10度としているが、本発明ではこの値に限定されるものではない。また、本複数の方位データの分散幅を算出し、それが所定の値以内であれば、移動体がほぼ直線移動していると判定する構成でも良い。
【0102】
ステップ108では、図中に示す式により、バイアス誤差量bを算出する。ここで、Δtnは、過去の方位(θgps)i−nから最新の方位(θgps)iへの経過時間を表す。算出したバイアス誤差bを用いることで、図6のステップ66にてジャイロセンサ310からの出力角速度ωに対し補正を実行することができる。
【0103】
〔実施例3〕
本実施例は、上記実施例1と同じ構成において、移動体方位算出部14が、過去複数回の処理周期にわたって得た複数の進行方位データを用いて、ジャイロセンサ310のスケール誤差を補正するものである。本実施例のスケール誤差の補正は、図7のステップ120で行なわれるものであり、例えば図9に示すような処理により実行される。
【0104】
本実施例のジャイロスケール誤差補正処理は、上記実施例2と同様に、受信可能なGPS衛星数が3個以上の、通常測位可能な場合にのみ行う処理であり、図9に示すように、最初のステップ102、104は、上記実施例2の図8のステップ102、104と同じ処理である。
【0105】
最後のステップ122では、上記実施例2の図8のステップ106とは反対の処理となる。すなわち、本ステップでは、最新の方位(θgps)iと過去の方位(θgps)i−nとの差が所定の角度(本実施例では70度)以上かどうかという判定を行ない、差が大きい場合は、移動体が交差点の角等を曲がっており、ジャイロセンサ310の角度誤差原因としてスケール誤差が支配的であると判断して、ステップ124へ進み、スケール誤差補正係数a(図6のステップ66参照)を、図中に示す式により計算する。
【0106】
なお、本実施例及び上記実施例2において、過去の方位(θgps)i−nを選択する場合、どの程度過去のデータにするかが問題となる。定性的には、上記実施例2のジャイロバイアス誤差を算出する場合は長時間の角度変化を対象とする必要があるため、過去の方位(θgps)i−nはかなり古いデータ、例えば20〜30秒前のデータを用いる。また、本実施例のスケール誤差の場合は、反対に回転時に瞬間的に発生するものであるため、過去の方位(θgps)i−nは比較的新しいデータ、例えば3〜4秒前のデータを採用する。
【0107】
以上実施例2及び3で示したように、受信可能なGPS衛星数が3個以上の、GPS通常測位が可能なときに、移動体速度ベクトル、特に進行方位を求めておくことにより、上記実施例2及び3のようなバイアス誤差及びスケール誤差の自動補正が図6のステップ66で可能になり、ジャイロセンサ310による方位算出の精度を向上させることができる。
【0108】
さらに、上記実施例2及び3によれば、受信可能なGPS衛星数が3個未満の場合も、上記補正処理の後に算出された方位量をもとに移動体の速度ベクトルを算出するため、通常測位可能な場合と同様に、より高精度に移動体の位置決定することができる。
【0109】
また、図6のステップ66でジャイロセンサ310からの出力角速度ωに対し、バイアス誤差量bとスケール誤差補正係数aは、別々に適用され補正される。このため、上記実施例2と3は、同時に実施する構成としても良い。
【0110】
また、上記実施例2及び3での補正処理は、すべてGPS方位θgpsが正しいことを前提にしているため、この前提が崩れた場合には補正が不正確になる。このような場合に備えるために、GPS方位の誤差成分をモデリングし、カルマンフィルタ等のフィルタリング処理によりGPS及びジャイロの誤差を相互に補正する手段をさらに設ける構成としても良い。
【0111】
〔実施例4〕
本実施例は、上記実施例1の衛星選択処理(図7のステップ140)の詳細を除いては、上記実施例1と同じ構成及び作用効果を有する。以下では、この衛星選択処理のいくつかの具体例を、図10、11、12を用いて説明する。
【0112】
衛星選択処理の第1の例140−1は、図10に示すように、受信可能なGPS衛星数が3個未満の通常測位不可能な場合において、受信可能な状態で残ったGPS衛星が複数個、すなわち2個ある場合、どちらの衛星を選択するかを決める処理である。
【0113】
最初、図7のステップ74で求めたGPS方位θgpsから、移動体2の移動方向単位ベクトルEuを求める(ステップ144)。次に、受信しているGPS衛星2の衛星情報に含まれる軌道情報と、前回の処理ですでに決定されている移動体210の位置とから、移動体210からGPS衛星2に向かう視線方向単位ベクトルEu−sを算出する(ステップ142)。
【0114】
次に、視線方向単位ベクトルEu−sと、移動体2の移動方向単位ベクトルEuとの内積の絶対値が最も大きいかどうかを判断し(ステップ146)、その絶対値が今までで最大である場合には(ステップ146でYes)、そのGPS衛星を特定するための衛星番号等を記憶する(ステップ148)。
【0115】
絶対値が最大でない場合には、ステップ150へ進み、受信可能な2つのGPS衛星の両者に対して上記ステップ142、146を繰り返す(ステップ150)。
【0116】
本処理例では、以上のようにして、視線方向単位ベクトルEu−sと、移動体2の移動方向単位ベクトルEuとの内積の絶対値とが最も大きいGPS衛星を選択する。このようにして選択されたGPS衛星を対象に、図7の移動体位置推定処理では、第2の移動体速度ベクトル算出処理(図7のステップ84)以降のステップを遂行する。
【0117】
上記衛星選択基準の根拠を次に示す。上述のように、図7の第2の移動体速度ベクトル算出処理(ステップ84)では、上記数4により移動体2のX−Y平面(水平面)上の移動速度Vu(図4参照)を算出する。上記数4では、分母がcosθuであり、これが零で特異点となる。上記内積演算(図10のステップ146)は、このcosθuを求めており、この値の絶対値が大きい程、特異点から離れることになり、ジャイロセンサ310により求める方位θ(ここでは、進行方位θgps)の誤差の影響も小さくすることができる。
【0118】
衛星選択処理の第2の例140−2は、図11に示すように、受信可能なGPS衛星の仰角βを、当該GPS衛星の軌道情報等を含む衛星情報と、前回の処理等で求められた移動体の概略の位置とから求め(ステップ160)、それが小さいGPS衛星を選択する(ステップ162、148、150)。
【0119】
本例での衛星選択基準も、上記第1の例と同様に、上記数4の右側の式で分母cosβを大きくすることになり、移動体2の移動速度Vuの決定精度の向上が可能となる。
【0120】
衛星選択処理の第3の例140−3は、図12に示すように、上記2つの例と同様、2個の受信可能なGPS衛星のうち、上記数4の分母cos(αーθ)を大きくするようなGPS衛星、すなわち、|αーθ|が小さいものを、図7のステップ74で求めたGPS方位θgpsと、GPS信号を受信しているGPS衛星の方位角αとを取得して、選択を行なう処理(ステップ160、162、148、150)である。
【0121】
本実施例の衛星選択処理140−1、140−2、140−3によれば、通常測位が不可能な状態で、かつ、受信可能なGPS衛星が2個だけの場合に、移動体の移動速度Vuをより精度良く決定することができる一方のGPS衛星を、合理的かつ自動的に選択することが可能となる。
【0122】
本実施例では、通常測位にはGPS衛星が3個必要で、通常測位不可能な場合には2個のGPS衛星を受信するものと想定しているが、本発明の衛星選択処理は、このGPS衛星数に限定されるものではない。
【0123】
本実施例及び上記実施例1、2、3において、上記数4の第2の移動体速度ベクトル算出処理では、その原理説明で述べたように、時刻オフセットの変化率Bドットは、一定と仮定し、第1の移動体速度ベクトル算出処理で求めたBドットの値を用いることにより既知としていた。
【0124】
したがって、速度ベクトルを決定精度をさらに高めようとするには、もしくは長い時間、第2の移動体速度ベクトル算出処理による計測が連続している場合は、このBドットも未知数とし、移動体の移動速度Vuと合わせ、未知数2の連立方程式として解く。この場合、受信可能なGPS衛星は2個必要となり、上記のような衛星選択処理を行う必要はなくなる。
【0125】
また、高さ方向の変化率zドットについても、上記と同様のことが言え、Bドットの代わりにzドットを未知数にしてもよい。
【0126】
【発明の効果】
本発明によれば、通常測位可能な場合、あるいは通常測位不可能な場合に依らず、最低1個以上のGPS衛星が受信できる状態であれば、そのGPS衛星からのGPS信号を用いて、途切れることなく高精度な現在位置を出力し続けることができるGPSナビゲーション装置を提供することができる。
【0127】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のGPSナビゲーション装置の一実施例の構成を示すブロック図。
【図2】本発明のGPSナビゲーション装置のハード構成例を示すブロック図。
【図3】図1の実施例における第2の移動体速度ベクトル算出方法の原理についての説明図。
【図4】図1の実施例における第2の移動体速度ベクトル算出方法で用いる座標系の一例、及びその座標系内での移動体速度ベクトルを示した説明図。
【図5】本発明のGPSナビゲーション装置のゼネラルフローを示すフローチャート。
【図6】図5中の移動体方位算出割込処理のフローチャート。
【図7】図5中の移動体位置推定割込処理のフローチャート。
【図8】実施例2でのジャイロバイアス誤差補正処理のフローチャート。
【図9】実施例3でのジャイロスケール誤差補正処理のフローチャート。
【図10】実施例4での衛星選択処理の一例を示すフローチャート。
【図11】実施例4での衛星選択処理の他の例を示すフローチャート。
【図12】実施例4での衛星選択処理の他の例を示すフローチャート。
【符号の説明】
2…GPS衛星、4…電波受信部、6…受信状態判定部、7…GPS測位部、8…疑似距離変化率計測部、9…衛星情報及び疑似距離計測部、10…切換部、12…第1の移動体速度ベクトル算出部、14…移動体方位算出部、16…第2の移動体速度ベクトル算出部、18…移動体位置推定部、22…表示処理部、300…コントローラ、302…アンテナ部、304…GPS受信機、306…地図メモリ、308…表示装置、310…ジャイロセンサ。
Claims (4)
- GPS衛星からのGPS信号を受信し、受信可能なGPS衛星が所定数以上ある場合、通常測位により移動体の位置を決定するGPS受信機を有するGPSナビゲーション装置において、
通常測位が可能かどうかを判定する受信状態判定手段と、
前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に疑似距離変化率を測定する疑似距離変化率計測手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が可能と判定された場合、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、前記疑似距離変化率計測手段により計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求める第1の速度ベクトル算出手段と、
移動体の回転角を測定する回転角測定手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判断された場合、通常測位が可能であった時点に前記第1の速度ベクトル算出手段により算出された移動速度ベクトルと、前記移動速度ベクトルが算出された時点から現在までの前記回転角測定手段により測定された移動体の回転角の履歴とから、移動体の移動方位を算出する移動方位算出手段と、
前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に衛星情報を測定する衛星情報取得手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判定され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合、GPS衛星毎に、前記疑似距離計測手段により計測された疑似距離変化率及び前記衛星情報取得手段により測定された衛星情報と、前記移動方位算出手段により算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求める第2の速度ベクトル算出手段と、
通常測位可能な場合には前記第1の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、通常測位不可能な場合には前記第2の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、移動体の位置を推定する位置推定手段とを有し、
前記第2の速度ベクトル算出手段は、通常測位が不可能と判定され、かつ、受信可能なGPS衛星が複数個ある場合、受信可能なGPS衛星のそれぞれについての前記衛星情報を用いて、前記移動体から各GPS衛星に向かう視線方向単位ベクトルと、前記移動体の移動方位が示す単位ベクトルとの内積を演算し、その絶対値が最も大きいGPS衛星を選択し、選択されたGPS衛星の前記衛星情報及び疑似距離変化率を用いて前記移動速度ベクトルを求めることを特徴とするGPSナビゲーション装置。 - GPS衛星からのGPS信号を受信し、受信可能なGPS衛星が所定数以上ある場合、通常測位により移動体の位置を決定するGPS受信機を有するGPSナビゲーション装置において、
通常測位が可能かどうかを判定する受信状態判定手段と、
前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に疑似距離変化率を測定する疑似距離変化率計測手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が可能と判定された場合、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、前記疑似距離変化率計測手段により計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求める第1の速度ベクトル算出手段と、
移動体の回転角を測定する回転角測定手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判断された場合、通常測位が可能であった時点に前記第1の速度ベクトル算出手段により算出された移動速度ベクトルと、前記移動速度ベクトルが算出された時点から現在までの前記回転角測定手段により測定された移動体の回転角の履歴とから、移動体の移動方位を算出する移動方位算出手段と、
前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に衛星情報を測定する衛星情報取得手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判定され、かつ、1個以上のGPS衛 星が受信可能な場合、GPS衛星毎に、前記疑似距離計測手段により計測された疑似距離変化率及び前記衛星情報取得手段により測定された衛星情報と、前記移動方位算出手段により算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求める第2の速度ベクトル算出手段と、
通常測位可能な場合には前記第1の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、通常測位不可能な場合には前記第2の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、移動体の位置を推定する位置推定手段とを有し、
前記第2の速度ベクトル算出手段は、通常測位が不可能と判定され、かつ、受信可能なGPS衛星が複数個ある場合、受信可能なGPS衛星のそれぞれについての前記衛星情報を用いて、各GPS衛星の仰角を演算し、その値が最も小さいGPS衛星を選択し、選択されたGPS衛星からの前記衛星情報及び疑似距離変化率を用いて前記移動速度ベクトルを求めることを特徴とするGPSナビゲーション装置。 - GPS衛星からのGPS信号を受信し、受信可能なGPS衛星が所定数以上ある場合、通常測位により移動体の位置を決定するGPS受信機を有するGPSナビゲーション装置において、
通常測位が可能かどうかを判定する受信状態判定手段と、
前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に疑似距離変化率を測定する疑似距離変化率計測手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が可能と判定された場合、通常測位によって決定される移動体の位置、及び、前記疑似距離変化率計測手段により計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求める第1の速度ベクトル算出手段と、
移動体の回転角を測定する回転角測定手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判断された場合、通常測位が可能であった時点に前記第1の速度ベクトル算出手段により算出された移動速度ベクトルと、前記移動速度ベクトルが算出された時点から現在までの前記回転角測定手段により測定された移動体の回転角の履歴とから、移動体の移動方位を算出する移動方位算出手段と、
前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に衛星情報を測定する衛星情報取得手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判定され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合、GPS衛星毎に、前記疑似距離計測手段により計測された疑似距離変化率及び前記衛星情報取得手段により測定された衛星情報と、前記移動方位算出手段により算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求める第2の速度ベクトル算出手段と、
通常測位可能な場合には前記第1の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、通常測位不可能な場合には前記第2の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、移動体の位置を推定する位置推定手段とを有し、
前記第2の速度ベクトル算出手段は、通常測位が不可能と判定され、かつ、受信可能なGPS衛星が複数個ある場合、受信可能なGPS衛星についての前記衛星情報を用いて、各GPS衛星の方位を演算し、その値と前記移動体の移動方位との差が最も小さいGPS衛星を選択し、選択されたGPS衛星からの前記衛星情報及び疑似距離変化率を用いて前記移動速度ベクトルを求めることを特徴とするGPSナビゲーション装置。 - GPS衛星からのGPS信号を受信し、受信可能なGPS衛星が所定数以上ある場合、通常測位により移動体の位置を決定するGPS受信機を有するGPSナビゲーション装置において、
通常測位が可能かどうかを判定する受信状態判定手段と、
前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に疑似距離変化率を測定する疑似距離変化率計測手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が可能と判定された場合、通常測位によって決定 される移動体の位置、及び、前記疑似距離変化率計測手段により計測される疑似距離変化率から、移動体の移動速度ベクトルを求める第1の速度ベクトル算出手段と、
移動体の回転角を測定する回転角測定手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判断された場合、通常測位が可能であった時点に前記第1の速度ベクトル算出手段により算出された移動速度ベクトルと、前記移動速度ベクトルが算出された時点から現在までの前記回転角測定手段により測定された移動体の回転角の履歴とから、移動体の移動方位を算出する移動方位算出手段と、
前記GPS受信機で受信されたGPS信号から、GPS衛星毎に衛星情報を測定する衛星情報取得手段と、
前記受信状態判定手段により通常測位が不可能と判定され、かつ、1個以上のGPS衛星が受信可能な場合、GPS衛星毎に、前記疑似距離計測手段により計測された疑似距離変化率及び前記衛星情報取得手段により測定された衛星情報と、前記移動方位算出手段により算出された移動方位とから、移動体の移動速度ベクトルを求める第2の速度ベクトル算出手段と、
通常測位可能な場合には前記第1の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、通常測位不可能な場合には前記第2の速度ベクトル算出手段で求められた移動速度ベクトルから、移動体の位置を推定する位置推定手段とを有し、
前記第2の速度ベクトル算出手段は、通常測位が不可能と判定され、かつ、受信可能なGPS衛星が複数個ある場合、受信可能なGPS衛星の前記衛星情報及び疑似距離変化率と前記移動体の移動方位とを、前記移動速度ベクトルの絶対量と関連づける式を、前記受信可能なGPS衛星毎に設定し、連立方程式として解くことにより、前記移動速度ベクトルを求めることを特徴とするGPSナビゲーション装置。
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