JP2007154979A - トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 - Google Patents

トロイダル型無段変速機及び無段変速装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高圧側、低圧側両給油ポンプ42、43を特に大型化しなくても、各部に必要とされる潤滑油(作動油)を、運転状態に応じて最適に供給できる構造を実現する。
【解決手段】上記両給油ポンプ42、43を、トロイダル型無段変速機1の出力側ディスク11により回転駆動する。この構成により、上記両給油ポンプ42、43による潤滑油の吐出量を適正にして、運転状況に応じて各部に、必要とされる潤滑油(作動油)を適切に供給する。
【選択図】図1

Description

この発明は、自動車用の自動変速機として利用する、トロイダル型無段変速機及びトロイダル型無段変速機を組み込んだ無段変速装置の改良に関する。具体的には、これらトロイダル型無段変速機或いは無段変速装置の運転に必要とする油の量を確保して、これらトロイダル型無段変速機或いは無段変速装置の性能及び耐久性の確保を図るものである。
自動車用変速機としてトロイダル型無段変速機を使用する事が、例えば非特許文献1、2に記載される等により従来から広く知られ、又、一部で実施されている。又、変速比の変動幅をより大きくすべく、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせた無段変速装置も、例えば特許文献1等に記載される等により従来から広く知られている。又、例えば特許文献2〜5には、所謂ギヤードニュートラルと呼ばれ、入力軸を一方向に回転させたまま、出力軸の回転状態を、停止状態を挟んで正転、逆転に切り換えられる無段変速装置が記載されている。この様な無段変速装置の場合には、流体で動力を伝達するトルクコンバータ等の発進機構を省略して、上記無段変速装置にエンジンからの動力を直接伝達させる事ができる。この為、変速装置の小型・軽量化を図れる他、上記トルクコンバータを設ける事による伝達効率の低下等を防止して、発進時の応答性能の向上を図れる。
又、特許文献6、7には、上述の様なギヤードニュートラルを実現できる無段変速装置のより具体的な構造が記載されている。図3〜5は、上記特許文献6、7に記載された無段変速装置を示している。この無段変速装置は、トロイダル型無段変速機1と、遊星歯車式変速機2とを組み合わせて成り、入力軸3と出力軸4とを有する。これら入力軸3と出力軸4との間には、上記トロイダル型無段変速機1の回転軸5と伝達軸6とを、これら両軸3、4と同心に設けている。そして、上記遊星歯車式変速機2のうちの前段ユニット7と中段ユニット8とを上記回転軸5と上記伝達軸6との間に掛け渡す状態で、後段ユニット9をこの伝達軸6と上記出力軸4との間に掛け渡す状態で、それぞれ設けている。
上記トロイダル型無段変速機1は、1対の入力側ディスク10a、10bと、一体型の出力側ディスク11と、複数のパワーローラ12、12とを備える。そして、上記1対の入力側ディスク10a、10bは、上記回転軸5を介して互いに同心に、且つ、同期した回転を自在として結合されている。又、上記出力側ディスク11は、上記両入力側ディスク10a、10b同士の間に、これら両入力側ディスク10a、10bと同心に、且つ、これら両入力側ディスク10a、10bに対する相対回転を自在として支持されている。
更に、上記各パワーローラ12、12は、上記出力側ディスク11の軸方向両側面と上記両入力側ディスク10a、10bの軸方向片側面との間に、それぞれ複数個(図示の例の場合は2個)ずつ挟持されている。そして、これら両入力側ディスク10a、10bの回転に伴って回転しつつ、これら両入力側ディスク10a、10bから上記出力側ディスク11に動力を伝達する。又、この出力側ディスク11はその軸方向両端部を、ケーシング13内に、それぞれ1対ずつの支柱14、14と、スラストアンギュラ玉軸受である転がり軸受15、15とにより、回転自在に支持している。又、上記両支柱14、14の両端部近傍に設けた各支持ポスト部16a、16bに、それぞれ支持板17a、17bを支持している。
又、上記両支持板17a、17b同士の間には、複数のトラニオン(支持部材)18、18を、その両端部に互いに同心に設けられた枢軸19、19を介して、揺動及び軸方向(図4の上下方向)の変位を可能に支持している。そして、上記各トラニオン18、18の内側面(互いに対向する面)に上記各パワーローラ12、12を、それぞれ支持軸20、20並びに複数組の転がり軸受を介して、回転並びに前記回転軸5の軸方向に関する若干の変位を自在に支持している。そして、上記各パワーローラ12、12の周面と、上記両入力側ディスク10a、10bの入力側面及び上記出力側ディスク11の出力側面とを転がり接触させている。
前記トロイダル型無段変速機1に変速動作を行なわせる際には、上記両支柱14、14の下端部を結合固定したアクチュエータボディー21に内蔵した、各油圧式のアクチュエータ22、22により、上記各トラニオン18、18を上記各枢軸19、19の軸方向に変位させる。この結果、上記入力側、出力側各面と上記周面との転がり接触部(トラクション部)でサイドスリップが発生し、上記各トラニオン18、18が上記各枢軸19、19を中心として揺動する。そして、上記各ディスク10a、10b、11の径方向に関する、上記各転がり接触部の位置が変化し、上記両入力側ディスク10a、10bと上記出力側ディスク11との間の変速比が変化する。尚、上記各アクチュエータ22、22への圧油の給排は、上記アクチュエータボディー21の下方に設けたバルブボディー23に内蔵した変速比制御弁24(後述する図5参照)の切換により行なう。
又、図示の無段変速装置の場合は、前記回転軸5の基端部(図3の左端部)を図示しないエンジンのクランクシャフトに、前記入力軸3を介して結合し、このクランクシャフトにより上記回転軸5を回転駆動する様にしている。又、上記回転軸5の基端部と上記入力側ディスク10aとの間に、油圧式の押圧装置25を設け、上記両入力側ディスク10a、10bの軸方向片側面(入力側面)及び上記出力側ディスク11の軸方向両側面(出力側面)と前記各パワーローラ12、12の周面との転がり接触部に適正な面圧を付与している。
又、上記出力側ディスク11に、中空回転軸26の基端部(図3の左端部)をスプライン係合させている。そして、この中空回転軸26を、エンジンから遠い側(図3の右側)の入力側ディスク10bの内側に挿通して、上記出力側ディスク11の回転力を取り出し自在としている。更に、上記中空回転軸26の先端部(図3の右端部)で上記入力側ディスク10bの外側面から突出した部分に、前記遊星歯車式変速機2の前段ユニット7を構成する為の、第一太陽歯車27を固設している。
一方、上記回転軸5の先端部(図3の右端部)で上記中空回転軸26から突出した部分と上記入力側ディスク10bとの間に、第一キャリア28を掛け渡す様に設けて、この入力側ディスク10bと上記回転軸5とが、互いに同期して回転する様にしている。そして、上記第一キャリア28の軸方向両側面の円周方向等間隔位置(一般的には3〜4個所位置)に、それぞれがダブルピニオン型である上記遊星歯車式変速機2の前段ユニット7及び前記中段ユニット8を構成する為の遊星歯車29〜31を、回転自在に支持している。更に、上記第一キャリア28の片半部(図3の右半部)周囲に第一リング歯車32を、回転自在に支持している。
上記各遊星歯車29〜31のうち、前記トロイダル型無段変速機1寄り(図3の左寄り)で上記第一キャリア28の径方向に関して内側に設けた遊星歯車29は、上記第一太陽歯車27に噛合している。又、上記トロイダル型無段変速機1から遠い側(図3の右側)で上記第一キャリア28の径方向に関して内側に設けた遊星歯車30は、前記伝達軸6の基端部(図3の左端部)に固設した、第二太陽歯車33に噛合している。又、上記第一キャリア28の径方向に関して外側に設けた、残りの遊星歯車31は、上記内側に設けた遊星歯車29、30よりも軸方向寸法を大きくして、これら両遊星歯車29、30に噛合させている。更に、上記残りの遊星歯車31と上記第一リング歯車32とを、互いに噛合させている。
一方、前記後段ユニット9を構成する為の第二キャリア34を、前記出力軸4の基端部(図3の左端部)に結合固定している。そして、この第二キャリア34と上記第一リング歯車32とを、クラッチ装置の一部である低速用クラッチ35を介して結合している。又、上記伝達軸6の先端寄り(図3の右端寄り)部分に第三太陽歯車36を固設している。又、この第三太陽歯車36の周囲に、第二リング歯車37を配置し、この第二リング歯車37と前記ケーシング13等の固定の部分との間に、クラッチ装置の残部である高速用クラッチ38を設けている。更に、上記第二リング歯車37と上記第三太陽歯車36との間に配置した複数組の遊星歯車39、40を、上記第二キャリア34に回転自在に支持している。これら各遊星歯車39、40は、互いに噛合すると共に、上記第二キャリア34の径方向に関して内側に設けた遊星歯車39を上記第三太陽歯車36に、同じく外側に設けた遊星歯車40を上記第二リング歯車37に、それぞれ噛合している。
上述の様に構成する無段変速装置の場合、回転軸5から1対の入力側ディスク10a、10b、各パワーローラ12、12を介して一体型の出力側ディスク11に伝わった動力は、前記中空回転軸26を通じて取り出される。そして、前記低速用クラッチ35を接続し、上記高速用クラッチ38の接続を断った低速モード状態では、前記トロイダル型無段変速機1の変速比を変える事により、上記回転軸5の回転速度を一定にしたまま、前記出力軸4の回転速度を、停止状態を挟んで正転、逆転に変換自在となる。
即ち、この様な低速モード状態では、上記回転軸5と共に正方向に回転する第一キャリア28と、上記中空回転軸26と共に逆方向に回転する前記第一太陽歯車27との差動成分が、前記第一リング歯車32から、上記低速用クラッチ35、上記第二キャリア34を介して、上記出力軸4に伝達される。この状態では、上記トロイダル型無段変速機1の変速比を所定値にする事で上記出力軸4を停止させられる他、このトロイダル型無段変速機1の変速比を上記所定値から増速側に変化させる事により上記出力軸4を、車両を後退させる方向に回転させられる。これに対して、上記トロイダル型無段変速機1の変速比を上記所定値から減速側に変化させる事により上記出力軸4を、車両を前進させる方向に回転させられる。
これに対して、上記高速用クラッチ38を接続し、上記低速用クラッチ35の接続を断った、高速モード状態では、上記出力側ディスク11の回転が、上記中空回転軸26、前記遊星歯車式変速機2の第一太陽歯車27、前記各遊星歯車29〜31、前記伝達軸6、前記第二太陽歯車33、前記各遊星歯車39、40、上記第二キャリア34を介して、上記出力軸4に伝達される。この状態では、上記トロイダル型無段変速機1の変速比を増速側に変化させる程、無段変速装置全体としての変速比も増速側に変化する。
図5は、上述の様に構成し作用する無段変速装置の油圧制御回路を示している。ケーシング13の下端部に設けたオイルパン41(図3、4参照)等の油溜に貯溜された潤滑油(トラクションオイル)は、高圧側給油ポンプ42と低圧側給油ポンプ43とに吸入され、それぞれ加圧された状態で吐出される。このうちの高圧側給油ポンプ42から吐出された潤滑油は、リリーフ弁式の高圧側圧力調整弁44により、比較的高い所定圧に調整された状態で、変速比制御弁24を介して、変速比調節の為にトラニオン18、18を枢軸19、19(図4参照)の軸方向に変位させる、アクチュエータ22の油圧室45a、45bに送り込まれる。又、上記高圧側圧力調整弁44により圧力調整された潤滑油は、入力側ディスク10a、10bを出力側ディスク11(図3参照)に向け押圧する為の油圧式の押圧装置25の油圧室にも送り込む。
これに対して、上記低圧側給油ポンプ43から吐出された潤滑油は、リリーフ弁式の低圧側圧力調整弁46により、比較的低い第二の所定圧に調整された状態で、無段変速装置内で潤滑油を必要とする部分に供給して、これら各部分を潤滑する。上記低圧側給油ポンプ43から吐出されて上記低圧側圧力調整弁46により圧力調整された潤滑油を上記各部分に送り込む流路の途中には、上記高圧側圧力調整弁44のリリーフ回路部分(吐出ポート)を通じさせている。又、この高圧側圧力調整弁44のパイロット回路には、上記アクチュエータ22に設けた1対の油圧室45a、45b内の油圧の差を、差圧信号として導入している。これら両油圧室45a、45b同士の間の油圧の差は、入力側ディスク10a、10bから上記出力側ディスク11(或は出力側ディスク11から入力側ディスク10a、10b)に伝達する力2Ftに比例する。従って、上記高圧側圧力調整弁44のパイロット回路に導入される油圧は、トロイダル型無段変速機1を通過する動力の大きさに比例する。尚、前記高圧側給油ポンプ42及び上記低圧側給油ポンプ43は、前記ケーシング13の前端開口部を塞いだ隔壁58(図3参照)内に設けた空間に設置して、前記入力軸3により回転駆動する様に構成している。従って、上記両ポンプ42、43からの潤滑油の吐出量は、エンジンの回転速度に一致する、上記入力軸3の回転速度に比例する。
又、図示の例では、上記高圧側圧力調整弁44に、温度やアクセル開度等、上記トロイダル型無段変速機1の使用状態に対応する補正信号を入力して、このトロイダル型無段変速機1の運転状況に応じて、上記押圧装置25の油圧室に送り込む油圧に補正を加える様にしている。即ち、第一の電磁弁47の開閉制御により、上記高圧側圧力調整弁44の別のパイロット室内の油圧を調整して、この高圧側圧力調整弁44の開弁圧を調整自在としている。そして、高圧側圧力調整弁44から上記アクチュエータ22及び上記押圧装置25に導入する油圧を、上記トロイダル型無段変速機1を通過する動力の大きさに比例して大きくする事に加え、このトロイダル型無段変速機1の運転状況に応じて補正する様にしている。
又、図5に示した油圧回路では、前記変速比制御弁24の開閉状態を、ステッピングモータ48による他、差圧シリンダ49によっても調節自在として、トロイダル型無段変速機1を通過するトルクを目標値に調節すべく、このトロイダル型無段変速機1の変速比を微調節自在としている。又、上記差圧シリンダ49への圧油の給排は、第二の電磁弁50により制御される差圧制御弁51a、51bにより、前後進切換弁52を介して行なう様にしている。又、低速用、高速用両クラッチ35、38への圧油の給排を、第三の電磁弁53と、高速用、低速用両切換弁54、55と、シフト用切換弁56とにより行なう様にしている。更に、運転席に設けたシフトレバーにより操作される手動切換弁57により、各部の連通状態を切り換えられる様にしている。尚、上記変速比制御弁24を初めとする、油圧式の弁44、46、51a、51b、52、54〜56、58は、前記バルブボディー23(図3、4参照)内に組み込んでいる。
要するに、上記図5に示した油圧回路は、低圧用、高圧用の2系統の油圧回路から成っており、このうちの低圧用回路は、各部の潤滑用、或いは各油圧式切換弁の制御パイロット用の潤滑油の供給に供する。これに対して、高圧用回路は、何れも油圧式である、押圧装置25、アクチュエータ22、低速用、高速用各クラッチ35、38の油圧室に導入する為の潤滑油(作動油)の供給に供する。尚、トロイダル型無段変速機の各部に潤滑油(作動油)を送る為の潤滑油供給装置としては、上述の様な特許文献6、7に記載された構造の他、特許文献8〜11等に記載された構造も知られている。これら各特許文献8〜11に記載された構造の場合も、潤滑油吐出用のポンプ(各特許文献8〜11の原動機駆動ポンプ21)は、トロイダル型無段変速機の前段側に設けられており、このポンプによる潤滑油吐出量は、エンジンの回転速度に比例する様に構成している。
上述の様に従来のトロイダル型無段変速機用の潤滑油供給装置は、ポンプから吐出される潤滑油の量が、エンジンの回転速度に比例する為、エンジンの回転速度が低い場合に、上記ポンプから吐出される潤滑油の量が少なくなり、次述する様な問題が発生する可能性がある。特に、潤滑油の温度が高く、この潤滑油の粘度が低い場合には、油圧回路の途中からの潤滑油の漏洩量が多くなり、各部に送られる潤滑油の流量や油圧の不足が顕著になり易い。更に、この様な不都合は、図3〜4に示した様に、トロイダル型無段変速機1と遊星歯車式変速機2とを組み合わせて成り、このトロイダル型無段変速機1の変速比を変える事により、入力軸3を一方向に回転させたまま、出力軸4の回転方向を、停止状態を挟んで両方向に切換可能な、所謂ギヤードニュートラルと呼ばれる無段変速装置の場合に、より顕著になる。そこで、上述の様な原因での潤滑油の流量(圧力)不足により生じる不都合の具体的内容に就いて、上記無段変速装置の場合を中心に、状況毎に説明する。
「発進時(後退開始時も含む)」
「動力=トルク×回転速度」なる関係から明らかな通り、上記無段変速装置を搭載した自動車の発進直後には、エンジンからトロイダル型無段変速機1に、相当に大きなトルクが入力される。この為、低圧用回路を通じて各部に送り込む潤滑油の流量を多くすると共に、高圧用回路を通じて各部に送り込む油圧を高くする必要がある。これに対して、発進時はエンジンの回転数が低く、給油ポンプ42、43からの潤滑油の吐出量が少ない為、各部に送り込む潤滑油の量や圧力が不足する可能性がある。特に、上記高圧用回路を通じて送られる潤滑油は、圧力が高い為、漏れ量が多くなり易く、圧力不足の状態になり易い。例えば、前記押圧装置25の油圧室に導入する油圧の圧力が不足した場合には、前記各トラクション部に付与すべき面圧が不足し、これら各トラクション部で過大な滑り(グロススリップ)が発生し、上記トロイダル型無段変速機1の耐久性を著しく損ねる原因になる。図6は、上記無段変速装置を搭載した自動車の走行速度と、上記トロイダル型無段変速機1の変速比と、上記押圧装置25に要求される押圧力との関係を示している。上記図6のうちの実線aが、上記走行速度と上記変速比との関係を、同じく破線bが上記走行速度と上記押圧力との関係を、それぞれ示している。この様な図6から明らかな通り、ギヤードニュートラルと呼ばれる状態を実現できる無段変速装置の場合には、エンジンの回転速度が低い発進時に、大きな押圧力を必要とされる。
又、発進時には、前記低速用クラッチ35を接続しておく必要があるが、上記高圧用回路を通じてこの低速用クラッチ35の油圧室内に導入される油圧が不十分であると、この低速用クラッチ35の締結が不安定となる。そして、この低速用クラッチ35の締結力が不十分な場合には、出力軸4の回転速度に比べて、この低速用クラッチ35よりもエンジン寄り部分の回転伝達部材の回転速度が過度に速くなる、所謂エンジンの吹き上がり現象が発生し、円滑な発進動作を行なえない。
上記トロイダル型無段変速機1をトルクが通過する際には、前記各パワーローラ12、12の周面と前記入力側、出力側各ディスク10a、10b、11の軸方向側面との転がり接触部での動力伝達に伴って、上記各パワーローラ12、12を支持した前記各トラニオン18、18に、所謂2Ftと呼ばれる力が加わる。この力は、上記トロイダル型無段変速機1の変速比を調節する為の、前記各アクチュエータ22、22により支承する必要がある。ギヤードニュートラルと呼ばれる無段変速装置を搭載した自動車の発進の直前、直後には、上記トロイダル型無段変速機1を通過するトルクが非常に大きくなり、上記2Ftと呼ばれる力も大きくなる為、上記各アクチュエータ22、22に、相当に大きな油圧を導入する必要が生じる。この様な場合に、上述の様に給油ポンプ42、43からの潤滑油の吐出量が少なく、上記各アクチュエータ22、22に導入する油圧が不足すると、その上記2Ftと呼ばれる力を支え切れなくなり、上記トロイダル型無段変速機1の変速比調節が適切に行なわれなくなる。この様な原因で生じる変速比調節の不適切も、各トラクション部で過大な滑りを発生させ、上記トロイダル型無段変速機1の耐久性を著しく損ねる原因になる。
特に、近年に於いては、燃費性能の向上を目指す結果、エンジンの実用回転域を低回転側にずらす傾向にあり、アイドリング回転数も低くなる傾向にある。この様な状況下で、発進の直前、直後に必要量の潤滑油を吐出する為には、前記給油ポンプ42、43を大型化しなければならない。この様な給油ポンプ42、43の大型化は、この給油ポンプ42、43を組み込む変速装置の大型化の原因となるだけでなく、この給油ポンプ42、43を駆動する為に必要なトルクの増大にも繋がり、燃費性能を向上させる面からは不利になる。
「低速モードと高速モードとの切換時」
低速モードと高速モードとを切り換える為には、前記低速用、高速用両クラッチ35、38のうちで、それまで繋がれていたクラッチの接続を断って、それまで接続されていなかったクラッチを接続する必要がある。この際、例えば特願2005−159024に開示されている発明の様に、上記両クラッチ35、38が同時に締結される瞬間を造り出して、トルクシフトに基づく変速ショックの発生を防止すると共に、エンジンが吹き上がる事を防止する事が好ましい。この様にして行なわれるモード切換時に、繋ぐべきクラッチの圧力室に導入したり、或いは、(電磁弁53等を通過して)上記両クラッチ35、38の断接を切り換えるべき前記各油圧式の弁54〜56のパイロット室内に導入する油圧が不足した場合には、上記両クラッチ35、38の締結状態が不安定になり、エンジンが吹き上がる可能性がある。
又、前述の図6から明らかな通り、従来構造の様に、給油ポンプ42、43を入力軸3により回転駆動する構造の場合には、上記モード切換時に、(走行速度が速くなるのに伴って)この入力軸3の回転速度が速くなっており、上記給油ポンプ42、43からは比較的多量の圧油が吐出されている。一方、やはり図6から明らかな通り、上記モード切換の前後には、前記押圧装置25に要求される押圧力はあまり大きくはない。この為、この押圧装置25や上記何れかのクラッチ35(38)で消費されない、過剰の潤滑油(作動油)は、前記高圧側圧力調整弁44から分流し、前記トロイダル型無段変速機1或いは前記遊星歯車式変速機2の潤滑に供される。この状態ではこれらトロイダル型無段変速機1或いは遊星歯車式変速機2内に過剰の潤滑油が存在する状態となり、潤滑油の撹拌抵抗の増大、上記給油ポンプ42、43の吸入抵抗の増大等により、無段変速装置全体としての伝達効率が低下する原因となる。
「高速モード時」
前記無段変速装置の運転時に、前記トロイダル型無段変速機1及び前記遊星歯車式変速機2は、前記低圧側給油ポンプ43の吐出口から送り出されて前記低圧用回路を送られる潤滑油により潤滑する。一方、高速モード時には、エンジンの出力が大きく、上記トロイダル型無段変速機1及び上記遊星歯車式変速機2が、大きな動力(トルク×回転速度)を伝達している場合が多い。この様な場合には、上記低圧用回路を通じて送り込まれる潤滑油だけでは不足し、無段変速装置の各部の温度が上昇する傾向になる。そして、温度上昇の程度が著しくなると、上記潤滑油として使用するトラクションオイルの性能が低下し、前記各トラクション部でグロススリップが発生したり、上記遊星歯車式変速機2を構成する各歯車の噛合部で焼き付き等の故障が発生する可能性を生じる。
「停止時」
上記無段変速装置を搭載した自動車の停止時で、シフトレバーの選択位置がN、Pレンジの場合には、前記低速用、高速用両クラッチ35、38の接続を断って、上記トロイダル型無段変速機1を空転させる。この状態では、エンジンの回転数も低くなり、上記低圧側給油ポンプ43の吐出口から送り出されて上記低圧用回路を送られる潤滑油(作動油)の圧力が不足し易い状態となる。この状態では、上記両クラッチ35、38の断接を切り換える為の前記各油圧式の弁54〜56のパイロット室内に導入する油圧が不足し易くなり、上記両クラッチ35、38の接続を確実に断てない可能性がある。即ち、上記各弁54〜56の切り換え不良に基づき、上記両クラッチ35、38の一方又は双方が接続されたままの状態となり、安定した停止状態を実現できなくなる可能性がある。
又、上述した何れの状況の場合も、上記低速用、高速用各クラッチ35、38に導入される油圧、並びに、これら各クラッチ35、38の断接状態を切り換える為の上記各弁54〜56のパイロット室に導入される油圧が適切でない場合には、上記各クラッチ35、38の断接を適切に行なえなくなる。例えば、第三の電磁弁53の切り換えに応じてシフト用切換弁56に導入される油圧が適切でない場合、或いは、手動切換弁57の切り換えに応じて上記高速用、低速用各切換弁54、55並びに上記各クラッチ35、38に導入される油圧が適切でない場合等に、これら両クラッチ35、38が同時に接続されたり、或いは逆に、これら両クラッチ35、38の接続が同時に断たれる可能性がある。又、これら両クラッチ35、38が交互に接続されたり、接続すべきでないクラッチが接続される可能性もある。
例えば、車両を停止状態から発進させるべく、シフトレバーをN、PレンジからD、R、Lレンジに切り換えた際に、上記両クラッチ35、38が同時に接続されたり、或いは、接続されるべきでない高速用クラッチ38が接続された場合には、エンジンに大きな負荷が加わり、著しい場合にこのエンジンが停止する可能性がある。又、上記両クラッチ35、38が同時に接続を断たれたままの場合には、動力の伝達を行なえなくなり(駆動力を得られなくなり)、発進動作を円滑に行なえなくなる他、前述した様なエンジンの吹き上がり現象を生じる可能性がある。又、上記両クラッチ35、38が交互に接続された場合には、車体の挙動がギクシャクし、発進動作を円滑に行なえなくなる可能性がある。又、低速モードと高速モードとの切り換え時に、例えば接続を断つべきクラッチの接続が断たれてから接続すべきクラッチが接続されるまでの時間が必要以上に長くなったり、或いは逆に、これら両クラッチが同時に接続される時間が必要以上に長くなった場合には、変速ショックを生じ、乗員に違和感を与える可能性がある。
特開平11−63146号公報 米国特許第5607372号明細書 特開平6−174033号公報 特開2000−220719号公報 特開2002−139124号公報 特開2004−169719号公報 特開2004−211744号公報 特開2002−327836号公報 特開2004−52861号公報 特開2004−60715号公報 特開2004−60717号公報 青山元男著、「別冊ベストカー 赤バッジシリーズ245/クルマの最新メカがわかる本」、株式会社三推社/株式会社講談社、平成13年12月20日、p.92−93 田中裕久著、「トロイダルCVT」、株式会社コロナ社、2000年7月13日
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、給油ポンプを特に大型化しなくても、各部に必要とされる潤滑油(作動油)を、運転状態に関係なく供給できる、トロイダル型無段変速機、及び、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせた無段変速装置を実現すべく発明したものである。
本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置のうち、請求項1に記載したトロイダル型無段変速機は、前述した従来から知られているトロイダル型無段変速機と同様に、入力側ディスクと、出力側ディスクと、複数個のパワーローラと、給油ポンプとを備える。
このうちの入力側ディスクは、軸方向片側面をトロイド曲面である入力側曲面としている。
又、上記出力側ディスクは、上記入力側曲面と対向する出力側曲面をトロイド曲面とし、この入力側ディスクと同心に配置されている。
又、上記各パワーローラは、それぞれの周面を上記入力側曲面と上記出力側曲面とに転がり接触させた状態でこれら両曲面同士の間に、回転自在に、且つ、回転中心の傾斜角度を調節可能に配置されている。
又、上記給油ポンプは、必要とする圧油を吐出する為のものである。
又、請求項2に記載した無段変速装置は、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを、クラッチ装置を介して組み合わせて成る。
このうちのトロイダル型無段変速機は、上述した請求項1に記載したトロイダル型無段変速機と同様の構成を有する。
上記請求項2に記載した無段変速装置の場合には、上記トロイダル型無段変速機の回転軸に入力軸を、上記遊星歯車式変速機の構成部材に出力軸を、それぞれ繋げている。
又、上記クラッチ装置は、上記トロイダル型無段変速機の入力側ディスクと共に回転する回転軸及び出力側ディスクと、上記遊星歯車式変速機との間での動力の伝達状態を切り換える状態に組み合わせている。そして、低速走行の為の変速状態を実現する低速モードと、高速走行の為の変速状態を実現する高速モードとを切り換える。
特に、本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置に於いては、上記給油ポンプを、上記出力側ディスク若しくはこの出力側ディスクと連動して(常にこの出力側ディスクの回転速度に比例して)回転速度を変化させる部材により、回転駆動する様に構成している。
特に、本発明による作用・効果を顕著に得る為には、請求項3に記載した様に、上記無段変速装置の構成を、クラッチ装置が低速モードに切り換えられた状態で、トロイダル型無段変速機の変速比を調節する事により、入力軸を一方向に回転させたまま、出力軸の回転方向を、停止状態を挟んで両方向に切換可能な、所謂ギヤードニュートラルを実現できるものとする。そして、上記トロイダル型無段変速機の変速比が、上記出力軸を停止させる状態で、上記入力側ディスクの回転速度よりも上記出力側ディスクの回転速度を速くする増速状態とされ、同じく、上記クラッチ装置が上記低速モードと高速モードとを切り換える際に、入力側ディスクの回転速度よりも出力側ディスクの回転速度を遅くする減速状態になる構造とする。
又、請求項2、3に記載した無段変速装置の発明を実施する場合に好ましくは、請求項4に記載した様に、給油ポンプを、低圧側給油ポンプ及び高圧側給油ポンプとする。このうちの低圧側給油ポンプは、比較的低圧の油を吐出して、潤滑或いは弁切換用の圧力が必要とされる部分に送る為のものとする。又、上記高圧側給油ポンプは、比較的高圧の油を吐出して、押圧装置或いはクラッチのアクチュエータの様に、力を必要とするアクチュエータの油圧室に送る為のものとする。更に、上記高圧側給油ポンプから吐出された油を送る為の高圧側給油路の途中に、クラッチ装置が高速モードに切り換えられている事を条件に開く、給油弁を設ける。そして、この高速モード時にこの給油弁を開く事により、上記高圧側給油ポンプから吐出された潤滑油の一部を、潤滑が必要とされる部分のうちの少なくとも一部に供給可能とする。
上述の様に構成する本発明のトロイダル型無段変速機及び無段変速装置によれば、給油ポンプを特に大型化しなくても、各部に必要とされる潤滑油(作動油)を、運転状態に関係なく供給できる。そして、運転状況に応じて、次の様な作用・効果を得られる。
「発進時(後退開始時も含む)」
低速モード時にギヤードニュートラル状態を実現する無段変速装置の場合には、入力軸を回転させたまま出力軸を停止させる、このギヤードニュートラル状態では、トロイダル型無段変速機の変速状態は、比較的増速側になっている。即ち、このトロイダル型無段変速機の変速状態は、クラッチ装置が上記低速モードと高速モードとを切り換える際に、最も減速側に切り換わるが、上記ギヤードニュートラル状態では、比較的増速側に切り換わっている。上記無段変速装置を搭載した自動車の発進は、上記ギヤードニュートラルから上記トロイダル型無段変速機の変速比をより減速側(前方への発進)或いは増速側(後方への発進)に切り換える事により行なうが、何れにしても、発進時に上記トロイダル型無段変速機の変速比は、比較的増速側に切り換わっている。従って、このトロイダル型無段変速機の出力側ディスクは、入力側ディスクの回転速度(=エンジンの回転速度)よりも高速で回転している。この為、給油ポンプが比較的小型であっても、発進時に、押圧装置や低速用クラッチ等のアクチュエータに必要とされる油圧を確保できて、トラクション部でグロススリップが発生する事を防止でき、トロイダル型無段変速機の耐久性を確保できる。又、クラッチ装置に導入される油圧や、このクラッチ装置の断接状態を切り換える為の各切換弁のパイロット室に導入される油圧を適切にでき、エンジンが吹き上がる事やこのエンジンが停止する事等を防止して、円滑な発進を行なえる。
「低速モードと高速モードとの切換時」
自動車の走行状態の殆どは前方へ走行する。そして、前方に発進してから車速が次第に増加すると、上記低速モードと高速モードとを切り換えるポイントに近づくに従って、トロイダル型無段変速機の変速比が減速側に変化し、給油ポンプからの潤滑油の吐出量が次第に減少する。従って、この給油ポンプを駆動する為の要する動力を低く抑えられるだけでなく、前述した従来構造の場合の様に、トロイダル型無段変速機のトラクション部や遊星歯車式変速機の噛合部に、過剰な潤滑油が送り込まれる程度も低く抑えられる。この結果、トラクション部や噛合部での潤滑油の撹拌抵抗の低減と、上記給油ポンプの吸入抵抗の低減とにより、無段変速装置全体としての伝達効率の向上を図れる。又、上述の様に給油ポンプからの吐出量が減少しても、クラッチ装置に導入される油圧や、このクラッチ装置の断接状態を切り換える為の各切換弁のパイロット室に導入される油圧は十分に確保できる為、変速ショックを生じる事も防止できる。
「高速モード時」
高速モード時には、走行速度の増大に伴って、トロイダル型無段変速機の変速比が増速側に変化し、これに伴って、給油ポンプからの潤滑油(作動油)の吐出量も増加する。この場合に於いて、この給油ポンプが、請求項4に記載した様に、低圧側給油ポンプと高圧側給油ポンプとであった場合には、これら両給油ポンプの吐出量が増加する。このうちの低圧側給油ポンプから吐出された潤滑油は、主として各部の潤滑に利用されるので、上記走行速度の増大に伴う増加分は、そのままこれら各部の潤滑に利用する。これに対して、上記高圧側給油ポンプから吐出された潤滑油(作動油)の主たる使用部位である、押圧装置やクラッチ装置部分での使用量は、上記走行速度の増大に拘らず殆ど変化しない。従って、上記高速走行時には、上記高圧側給油ポンプから吐出された潤滑油のうちのかなりの部分が過剰分となる。
そこで、上記請求項4に記載した様に、クラッチ装置が高速モードに切り換えられている事を条件に開く給油弁を設けて、この高速モード時に、上記高圧側給油ポンプから吐出された潤滑油を上記潤滑が必要とされる部分に供給すれば、この高圧側給油ポンプから吐出された潤滑油の有効利用を図れる。即ち、この場合には、この高圧側給油ポンプから吐出された潤滑油を、上記低圧側給油ポンプから吐出された潤滑油の補助として、上記トロイダル型無段変速機のトラクション部や遊星歯車式変速機の噛合部の潤滑に利用し、これら各部を効果的に冷却できる。
「停止時」
停止時(でシフトレバーの選択位置がN、Pレンジの場合)には、トロイダル型無段変速機の変速比が、{次の発進(D、R、Lレンジへの切り換え)に備え}比較的増速側に調節されている。この為、このトロイダル型無段変速機の出力側ディスクの回転速度に比例した回転速度で回転する給油ポンプからの潤滑油の吐出量が多くなり、十分な油圧が確保される。この結果、クラッチ装置の切換を行なう為の、油圧式の切換弁が確実に切り換えられて、このクラッチ装置の切換が確実に行なわれる。この結果、このクラッチ装置の接続を確実に断つ事ができ、確実且つ安定した停止状態を実現できる。
図1〜2は、本発明の実施の形態の1例を示している。尚、本例の特徴は、高圧側、低圧側両給油ポンプ42、43を、トロイダル型無段変速機1を構成する出力側ディスク11により駆動する点にある。その他の部分の構成及び作用は、前述の図3〜5に示した従来構造と同様であるから、同等部分には同一符号を付して、重複する説明を省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。尚、本例は、トロイダル型無段変速機1と遊星歯車式変速機2とを、低速用、高速用両クラッチ35、38から成るクラッチ装置を介して組み合わせた無段変速装置に関して本発明を実施する場合に就いて示している。上記低速用クラッチ35を接続し、上記高速用クラッチ38の接続を断った低速モード時には、上記トロイダル型無段変速機1の変速比を調節する事により、入力軸3を回転させたまま出力軸4の回転方向を、停止状態を挟んで両方向に変換できる、ギヤードニュートラル状態を実現できる。これに対して、上記低速用クラッチ35の接続を断ち、上記高速用クラッチ38を接続した高速モード時には、上記入力軸3から上記出力軸4への動力を、上記トロイダル型無段変速機1と上記遊星歯車式変速機2とに分けて伝達する、所謂パワースプリット状態を実現する。この点に就いては、従来から知られており、本発明の要旨とも直接は関係しない為、詳しい説明は省略する。
本例の場合、上記高圧側、低圧側両給油ポンプ42、43を、上記トロイダル型無段変速機1の下方で、出力側ディスク11の下方位置に配設している。そして、この出力側ディスク11の外周面に固設した駆動側歯車59と、上記両給油ポンプ42、43のロータ60に固設した従動側歯車61とを噛合させている。この構成により、これら両給油ポンプ42、43のロータ60を、上記出力側ディスク11の回転速度に比例した回転速度で回転させて、上記両給油ポンプ42、43の吐出口から、上記出力側ディスク11の回転速度に比例した量の潤滑油(作動油)を吐出する様に構成している。又、上記両給油ポンプ42、43のうち、高圧側給油ポンプ42の吐出口から吐出された、比較的高圧の潤滑油(作動油)は、圧力調整弁(図5に示した押圧用圧力調整弁44)により所定圧に調整した状態で、押圧装置25の圧力室62a、62bに導入する他、高速用、低速用両切換弁54、55(図5参照)の切り換えに伴って、低速用、高速用両クラッチ35、38の断接を行なう為のアクチュエータ(油圧シリンダ)63、64の圧力室内に導入する様にしている。尚、上記両給油ポンプ42、43としては、従来から知られている各種構造のものを使用できるので、詳しい図示並びに説明は省略する。
又、上記高圧側給油ポンプ42の吐出口と上記押圧装置25の圧力室62a、62bとを結ぶ高圧側給油路65の途中に、電磁開閉弁等の、電動式に開閉する給油弁66を設けている。図1の構造ではこの給油弁66を、この高圧側給油路65の途中から分岐した分岐流路67の途中に、この分岐流路67に対し直列に接続している。上記給油弁66は、クラッチ装置が高速モードに切り換えられている事、即ち、上記低速用クラッチ35の接続が断たれ、上記高速用クラッチ38が接続されている事を条件に開く。そして、開いた場合には、上記高圧側給油ポンプ42から吐出された潤滑油の一部、即ち、上記押圧装置25及び上記高速用クラッチ38に付属のアクチュエータ64部分で消費し切れない潤滑油を、潤滑が必要とされる、上記トロイダル型無段変速機1ののトラクション部及び前記遊星歯車式変速機2の噛合部に供給する様に構成している。
上述の様に構成する、本例の無段変速装置によれば、前述の様に、ポンプ(高圧側、低圧側両給油ポンプ42、43)を特に大型化しなくても、各部に必要とされる潤滑油(作動油)を、運転状態に関係なく供給できる。そして、運転状況に応じて、前述した様な、優れた作用・効果を得られる。
又、図2に示す様に、上記両給油ポンプ42、43をトロイダル型無段変速機1の下方で、潤滑油を貯溜したオイルパン41の直上位置に配置すれば、上記両給油ポンプ42、43の吸入口の管路抵抗を小さく抑えて、これら両給油ポンプ42、43の駆動損失の低減を図れる。又、前述の図3に示した従来構造の様に、隔壁58部分に給油ポンプを組み込む必要がなくなる為、隔壁58aを薄肉化して、無段変速装置の軸方向寸法の短縮化を図れる。又、重量が嵩むトロイダル型無段変速機1をエンジン側に配置する事が可能になり、無段変速装置の支持剛性の向上を図れる。
又、この様にトロイダル型無段変変速機1をエンジン側(前方)に配置できる分、このトロイダル型無変速機1の設計の自由度の向上も図れる。即ち、このトロイダル型無段変速機1を組み込んだ無段変速装置の高さ寸法並びに幅寸法は、ユニット化(モジュール化)されたこのトロイダル型無段変速機1並びにバルブボディー23を設けた前方部分が、低速用、高速用各クラッチを設けた後方部分に比べて大きくなる。一方、一般的に変速装置の形状は、エンジン側の前方部分の寸法が後方部分に比べて大きくなる。言い換えれば、この前方部分が後方部分に比べて、比較的空間の余裕を確保し易い。この為、この様な空間に余裕を確保し易い前方部分(エンジン側)に、上記トロイダル型無段変速機1を配置できる分、このトロイダル型無段変速機1の設計の自由度の向上を図れる。
本発明は、無段変速装置を構成するトロイダル型無段変速機の種類がハーフトロイダル型であるかフルトロイダル型であるかを問わず、実施できる。又、本発明は、ギヤードニュートラルを実現できる無段変速装置で実施するのが、最も顕著な作用・効果を得られるが、トロイダル型無段変速機単独の構造で実施しても、従来構造に比べて、伝達効率及び耐久性の向上を図れる、と言った作用・効果を得られる。
本発明の実施の形態の1例を示す略断面図。 同じく、具体的構造を示す断面図。 従来から知られている、トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とを組み合わせた無段変速装置の1例を示す断面図。 図3のA−A断面図。 無段変速装置に組み込む油圧回路図。 無段変速装置を搭載した自動車の走行速度と、トロイダル型無段変速機の変速比と、押圧装置に要求される押圧力との関係を示す線図。
符号の説明
1 トロイダル型無段変速機
2 遊星歯車式変速機
3 入力軸
4 出力軸
5 回転軸
6 伝達軸
7 前段ユニット
8 中段ユニット
9 後段ユニット
10a、10b 入力側ディスク
11 出力側ディスク
12 パワーローラ
13 ケーシング
14 支柱
15 転がり軸受
16a、16b 支持ポスト部
17a、17b 支持板
18 トラニオン
19 枢軸
20 支持軸
21 アクチュエータボディー
22 アクチュエータ
23 バルブボディー
24 変速比制御弁
25 押圧装置
26 中空回転軸
27 第一太陽歯車
28 第一キャリア
29 遊星歯車
30 遊星歯車
31 遊星歯車
32 第一リング歯車
33 第二太陽歯車
34 第二キャリア
35 低速用クラッチ
36 第三太陽歯車
37 第二リング歯車
38 高速用クラッチ
39 遊星歯車
40 遊星歯車
41 オイルパン
42 高圧側給油ポンプ
43 低圧側給油ポンプ
44 高圧側圧力調整弁
45a、45b 油圧室
46 低圧側圧力調整弁
47 第一の電磁弁
48 ステッピングモータ
49 差圧シリンダ
50 第二の電磁弁
51a、51b 差圧制御弁
52 前後進切換弁
53 第三の電磁弁
54 高速用切換弁
55 低速用切換弁
56 シフト用切換弁
57 手動切換弁
58、58a 隔壁
59 駆動側歯車
60 ロータ
61 従動側歯車
62a、62b 圧力室
63 アクチュエータ
64 アクチュエータ
65 高圧側給油路
66 給油弁
67 分岐流路

Claims (4)

  1. 軸方向片側面をトロイド曲面である入力側曲面とした入力側ディスクと、この入力側曲面と対向する出力側曲面をトロイド曲面とし、この入力側ディスクと同心に配置された出力側ディスクと、それぞれの周面を上記入力側曲面と上記出力側曲面とに転がり接触させた状態でこれら両曲面同士の間に、回転自在に、且つ、回転中心の傾斜角度を調節可能に配置された複数個のパワーローラと、必要とする圧油を吐出する為の給油ポンプとを備えたトロイダル型無段変速機に於いて、この給油ポンプを、上記出力側ディスク若しくはこの出力側ディスクと連動して回転速度を変化させる部材により回転駆動する事を特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. トロイダル型無段変速機と遊星歯車式変速機とをクラッチ装置を介して組み合わせて成り、
    このうちのトロイダル型無段変速機は、軸方向片側面をトロイド曲面である入力側曲面として回転軸と共に回転する入力側ディスクと、この入力側曲面と対向する出力側曲面をトロイド曲面とし、この入力側ディスクと同心に配置された出力側ディスクと、それぞれの周面を上記入力側曲面と上記出力側曲面とに転がり接触させた状態でこれら両曲面同士の間に、回転自在に、且つ、回転中心の傾斜角度を調節可能に配置された複数個のパワーローラと、必要とする圧油を吐出する為の給油ポンプとを備えたものであり、
    上記トロイダル型無段変速機の上記回転軸に入力軸を、上記遊星歯車式変速機の構成部材に出力軸を、それぞれ繋げており、
    上記クラッチ装置は、上記トロイダル型無段変速機の入力側ディスクと共に回転する回転軸及び出力側ディスクと、上記遊星歯車式変速機との間での動力の伝達状態を切り換える状態に組み合わせ、低速走行の為の変速状態を実現する低速モードと、高速走行の為の変速状態を実現する高速モードとを切り換えるものである無段変速装置に於いて、
    上記給油ポンプを、上記出力側ディスク若しくはこの出力側ディスクと連動して回転速度を変化させる部材により回転駆動する事を特徴とする無段変速装置。
  3. クラッチ装置が低速モードに切り換えられた状態で、トロイダル型無段変速機の変速比を調節する事により、入力軸を一方向に回転させたまま、出力軸の回転方向を、停止状態を挟んで両方向に切換可能であり、上記トロイダル型無段変速機の変速比が、上記出力軸を停止させる状態で、入力側ディスクの回転速度よりも出力側ディスクの回転速度を速くする増速状態とされ、同じく、上記クラッチ装置が上記低速モードと高速モードとを切り換える際に、入力側ディスクの回転速度よりも出力側ディスクの回転速度を遅くする減速状態とされる、請求項2に記載した無段変速装置。
  4. 給油ポンプが、比較的低圧の油を吐出して低圧の潤滑油が必要とされる部分に送る為の低圧側給油ポンプと、比較的高圧の油を吐出して力を必要とするアクチュエータの油圧室に送る為の高圧側給油ポンプとであり、この高圧側給油ポンプから吐出された油を送る為の高圧側給油路の途中に、クラッチ装置が高速モードに切り換えられている事を条件に開く給油弁を設けて、この高速モード時に、上記高圧側給油ポンプから吐出された潤滑油の一部を、潤滑が必要とされる部分のうちの少なくとも一部に供給可能とした、請求項2〜3のうちの何れか1項に記載した無段変速装置。
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