JP2007145814A - 血小板活性化因子受容体拮抗剤および組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明者は、イカ可食部、カツオ精巣およびカツオ卵巣のような魚介類抽出物が、PAF受容体拮抗活性を有する物質を含有することを見出した。そして、本発明者は、これら抽出物を提供することによって、上記課題を解決した。
【選択図】なし
Description
また、PAFは、喘息などアレルギー反応を亢進し、そして骨粗鬆症を進行させることが公知である。また、PAF受容体欠損マウスにおいては、オブアルブミン感作による気管支喘息モデルおよび卵巣摘除による骨粗鬆症モデルのいずれにおいても野生型マウスと比較して病態が軽減していたことも実証されている(非特許文献5)。このことから、PAF拮抗剤は、気管支喘息および骨粗鬆症の治療・予防薬となると考えられる。実際に、PAF受容体拮抗剤であるWEB2086の投与によって、メタコリンに対する気道の応答が抑制され(非特許文献6)、また、骨再吸収が抑制されている(非特許文献7)。従って、新規のPAF受容体拮抗剤は、気管支喘息、骨粗鬆症、および、アナフィラキシーの治療・予防薬として利用可能である。
イシイ サトシおよびシミズ タカコ、Progress in Lipid Research、2000年、39:p41−82 和久敬蔵および井上圭三編「血小板活性化因子 −生化学・生理・病理−」、1989年、p115〜121、東京化学同人 Diana M. Stafforini、外3名、「Critical Reviews in Clinical Laboratory Sciences」、2003年、40、p643−672 フクダ ヨシアキ、外5名、「European Journal of Pharmacology」、2000年2月、390(1−2)、p203−7 清水孝雄 編、わかる実験医学シリーズ、脂質生物学がわかる、脂質メディエーターの機能からシグナル伝達まで、羊土社 イシイ サトシ、外8名、「The EMBO Journal」、1997年、16(1)、p133−142 ヒキジ ヒサコ、外4名、「The Journal of Clinical Invenstigation」、2004年、144(1)、p85−93
(項目1) イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、気管支喘息の予防または治療のための薬学的組成物。
(項目2) 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、項目1に記載の気管支喘息の予防または治療のための薬学的組成物。
(項目3) イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、骨粗鬆症の予防または治療のための薬学的組成物。
(項目4) 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、項目3に記載の骨粗鬆症の予防または治療のための薬学的組成物。
(項目5) イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、気管支喘息の予防または治療のための飲食用組成物。
(項目6) 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、項目5に記載の気管支喘息の予防または治療のための飲食用組成物。
(項目7) イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、骨粗鬆症の予防または治療のための飲食用組成物。
(項目8) 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、項目7に記載の骨粗鬆症の予防または治療のための飲食用組成物。
(項目9) イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、PAF受容体拮抗剤。
(項目10) 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、項目9に記載のPAF受容体拮抗剤。
(項目11) イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、アナフィラキシーの予防または治療のための薬学的組成物。
(項目12) 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、項目11に記載のアナフィラキシーの予防または治療のための薬学的組成物。
(項目13) イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、アナフィラキシーの予防または治療のための飲食用組成物。
(項目14) 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、項目13に記載のアナフィラキシーの予防または治療のための飲食用組成物。
本発明はまた、有効量の治療剤の被験体への投与による、PAF受容体の作用を抑制することによって治療および/または予防され得る疾患または障害(例えば、気管支喘息、骨粗鬆症、および/または、アナフィラキシー)の処置および/または予防の方法を提供する。治療剤は、薬学的に受容可能なキャリア型(例えば、滅菌キャリア)と組み合せた、本発明の組成物を意味する。
本発明の好適な態様は飲食用組成物である。すなわち、前述のようにして得られるリン脂質を有効成分として含むPAF受容体拮抗剤あるいは薬学的組成物または飲食用組成物は、これをそのまま液状、ゲル状あるいは固形状の食品、例えばジュース、清涼飲料、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、野菜ジュース、天然果汁、乳飲料、牛乳、豆乳、スポーツ飲料、ニアウォーター系飲料、栄養補給飲料、コーヒー飲料、ココア、スープ、ドレッシング、ムース、ゼリー、ヨーグルト、プリン、ふりかけ、育児用粉乳、加工乳、スポーツドリンク、栄養ドリンク、ケーキミックス、パン、ピザ、パイ、クラッカー、ビスケット、ケーキ、クッキー、スパゲティー、マカロニ、パスタ、うどん、そば、ラーメン、キャンデー、ソフトキャンデー、ガム、チョコレート、おかき、ポテトチップス、スナック、アイスクリーム、シャーベット、クリーム、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料などの粉末状または液状の乳製品、饅頭、ういろ、もち、おはぎ、醤油、たれ、麺つゆ、ソース、だしの素、シチューの素、スープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ケチャップ、レトルトカレー、レトルトシチュー、レトルトスープ、レトルトどんぶり、缶詰、ハム、ハンバーグ、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎり、冷凍食品および冷蔵食品、ちくわ、蒲鉾、弁当のご飯、寿司、乳児用ミルク、離乳食、ベビーフード、スポーツ食品、栄養補助食品、サプリメント、健康食品等に添加したり、必要に応じてデキストリン、乳糖、澱粉等の賦型剤や香料、色素等とともにペレット、錠剤、顆粒等に加工したり、またゼラチン等で被覆してカプセルに成形加工して健康食品や栄養補助食品等として利用できる。これらの食品類あるいは飲食用組成物における本発明のPAF受容体拮抗剤またはこれを含む抽出物の配合量は、当該食品や組成物の種類や状態等により一律に規定しがたいが、約0.01〜50重量%、より好ましくは0.1〜30重量%である。配合量が0.01重量%未満では経口摂取による所望の効果が小さく、50重量%を超えると食品の種類によっては風味を損なったり当該食品を調製できなくなる場合がある。なお、本発明のPAF受容体拮抗剤活性を有する抽出物は、これをそのまま食用に供してもさしつかえない。
イカの可食部を凍結乾燥で乾燥した。乾燥スルメイカ100gに純度99%のエタノール800mL加え、60℃で2時間抽出を行った。濾過した後、残渣に純度99%のエタノール350mLを加え、60℃で2時間抽出を行った。濾液を合わせて濃縮し、イカ抽出物を13g得た。イカ抽出物からアセトン沈殿により、イカリン脂質6gを得た。
カツオ卵巣を凍結乾燥で乾燥した。乾燥カツオ卵巣100gに純度99%のエタノール800mL加え、60℃で2時間抽出を行った。濾過した後、残渣に純度99%のエタノール350mL加え、60℃で2時間抽出を行った。濾液を合わせて濃縮し、カツオ卵巣抽出物14g得た。カツオ卵巣抽出物からアセトン沈殿によりカツオ卵巣リン脂質7gを得た。
カツオ精巣を凍結乾燥で乾燥した。乾燥カツオ精巣100gに純度99%のエタノール800mL加え、60℃で2時間抽出を行った。濾過した後、残渣に純度99%のエタノール350mL加え、60℃で2時間抽出を行った。濾液を合わせて濃縮し、カツオ精巣抽出物9g得た。カツオ精巣抽出物からアセトン沈殿によりカツオ精巣リン脂質5gを得た。
(実施例4:各種供給源由来の抽出物の比較)
上記実施例1〜3によって単離された抽出物、ならびにコントロールとしての大豆リン脂質(辻製油(株)三重県松阪市、およびDHAトリグリセライド(備前化成(株)岡山県赤磐市)のDHA含有量およびリン脂質含有量を日本油化学会制定基準油脂分析試験法(財団法人 日本油化学会)に従って、決定した。具体的には、DHA含有量を2.4.2.2−1996 脂肪酸組成FID昇温ガスクロマトグラフ法に従って決定し、リン脂質含有量を4.3.4−1996 リン湿式分解法に従って、決定した。
実施例1〜3によって得られたリン脂質のPAF受容体結合能活性を調べた。
PAF惹起血小板凝集阻害活性を、常法より行なった。具体的には、ウサギ由来の血小板含有血漿を用いて、37℃、5分間の血小板凝集反応を測定した。5nMのPAFを添加し、血小板凝集の抑制作用(アンタゴニスト活性)もしくは、単独での血小板凝集反応(アゴニスト活性)を確認した。その結果を、表3に示す。
PAF受容体遺伝子は既に単離されており、PAF受容体を過剰発現するトランスジェニックマウスも得られている。そして、PAF受容体を過剰発現するマウスは、気管支喘息の病態生理学を研究するためのモデルマウスとして提唱されている。なぜなら、PAF受容体を過剰発現するトランスジェニックマウスは、メタコリン(アセチルコリンの誘導体であり気管支過敏反応をテストするときの気管支収縮剤として用いる副交感神経興奮薬)に対して過剰反応するからである(非特許文献5)。
PAF受容体を過剰発現するトランスジェニックマウスの調製は、非特許文献5に従って、以下の様に行う。
PAF受容体遺伝子を過剰発現するトランスジェニックマウスと、同腹子のコントロールに、ケタミンとペントバービタルの混合物(各々25mg/kg)を腹腔内注入することによって、麻酔する。金属性のカニューレ(内径 1.0mm)を、気管切開術を行ったマウスの気管に挿入する。マウスに対して、150呼吸/分の頻度、一回呼吸気量8ml/kg、3cm H2Oの呼気終末陽圧にて、機械的に通気する(モデル683;Harvard Apparatus,South Natick,MA)。正中線での胸骨切開術および肋骨の横隔膜の縁にわたる広範な横向きの切開の手段によって、胸郭を広く開く。麻酔剤(臭化パンクロニウム、0.1mg/kg)を、腹腔内に投与して、自発的な呼吸を消去する。実験の間、通気システムに連続的に酸素を供給する。気管圧力および気管の流れを、それぞれ、ピエゾ抵抗微小変換器(Endevco 8540B−2,San Juan Capistrano,CA)およびフライシュ呼吸気流計(No.00000,Metabo SA.lauzanne,Switzerland)を用いて測定する。これらの測定結果から、総肺抵抗を、Batesらの方法(Respir.Physiol.,78,369−382)に従って計算する。カニューレの抵抗を、0.225cmH2O/ml/sであると推定して、全ての総肺抵抗から減算する。
骨粗鬆症の症状としては、例えば、骨質量の減少が挙げられる。骨質量の減少は、例えば、骨の再吸収を抑制することによって、抑制することができる。従って、骨再吸収を抑制する薬剤は、骨粗鬆症の治療・予防薬として使用することができる。
脾臓を、7〜8週齢の雄性マウスより単離し、40μmのナイロンメッシュ細胞ストレイナー(Falcon,Franklin Lakes,New Jersey,USA)を通過させる。7〜8週齢の雌性マウスの大腿骨および脛骨から、骨髄を、洗い流す。RANKLおよびM−CSFを用いる刺激によって、破骨細胞を、骨髄培養物中の造血細胞から分化させる。脾臓細胞または骨髄細胞を、10%のFBSならびに可溶性RANKL(100ng/ml)およびM−CSF(10ng/ml)を含むαMEM中で、7日間培養する。破骨細胞に分化させるために、RAW264.7マウスのマクロファージ細胞を、10%のFBSおよび可溶性RANKL(100ng/ml)を含むDMEM中で、5日間培養する。培地交換の際に、TNF−α(10ng/ml)およびIL−1β(10ng/ml)を添加することによって、破骨細胞を、TNF−αおよびIL−1βで処理する。生きている破骨細胞の検出のために、細胞を、トリパンブルーで染色し、その後、100mM L(+/−)酒石酸(pH 5.0)存在下、0.01%ナフトールAS−MXホスフェートと反応させ、酒石酸耐性酸性フォスファターゼ活性(TRAP活性)を測定する。トリパンブルーについてネガティブであり、TRAPについてポジティブであり、かつ3個より多い核を有する細胞を、生きている破骨細胞として計数する。
1歳齢のマウスから、頭蓋冠を切除し、PBSで洗浄し、0.1%コラゲナーゼおよび0.2%ディスパーゼで10分間、5回消化し、そして、画分2〜5からの細胞を、プールし、そして7日間、10%FBS含有αMEM中で培養する。MC3T3−E1マウスの骨形成原細胞(理研、埼玉)も、10%FBS含有αMEM中で培養する。培養の6日目に、mcPAF(1μM)、TNF−α(10ng/ml)、およびIL−1β(10ng/ml)を培地交換の際に添加する。骨芽細胞を、サイトカイン刺激の存在下および非存在下において、さらに培養する。
マウスの骨芽細胞培養および骨髄細胞の共培養系を開発し、そして、破骨細胞機能の調節メカニズムを試験する。共培養からの骨芽細胞/間質細胞の除去は、破骨細胞のアポトーシスを誘導する。7〜8週齢のC57BL/6Nマウスの大腿骨および脛骨由来のマウス骨芽細胞(1×106細胞/ディッシュ)およびマウス骨髄細胞(2×107細胞/ディッシュ)を、上記のように調製し、0.24%のコラーゲンゲルマトリクスでコートした10cmの培養ディッシュで培養する。培養培地は、10%FBS,100nM 1,25−(OH)2D3、および1μM PGE2を添加したαMEMを用い、2〜3日に一回培地を交換する。培養の7日後、ディッシュを、10%のFBSを含有するαMEM中の4mlの0.2%コラゲナーゼで、37℃で20分間処理する。破骨細胞の粗調製物を、24ウェルプレートで培養する。2時間のインキュベーションの後、プレートを0.1%コラゲナーゼおよび0.2%ディスパーゼを含有するPBSで処理して、骨芽細胞/間質細胞を除去する。精製した破骨細胞を、mcPAF(1μM)、M−CSF(100ng/ml)またはIL−1β(1ng/ml)とともに、候補薬物(例えば、本発明のリン脂質抽出物、あるいはコントロールとしてのWEB2086)存在下で24時間培養する。破骨細胞の生存率を計算するために、生存した破骨細胞を、インキュベーションの前後、光学顕微鏡を用いて計数する。
イカリン脂質のPAF惹起による抗アナフィラキシー試験を常法により行った。具体的には、CD−1マウス(22±2g)を購入し、1週間予備飼育したマウス(24±2g)に、実施例1で調製したイカリン脂質2,000mg/10ml(2% Tween80溶液)/kgを経口投与した。経口投与の60分後、0.1mg/kgの用量のPAF(0.1mg/10ml(生理食塩水)/kg)を静脈内に投与し、さらに60分後の生存率を測定した。ネガティブコントロールおよびポジティブコントロールとしては、イカリン脂質の代わりに、それぞれ、10ml/kgの2%Tween80溶液およびWEB−2086(ベーリンガーインゲルハイム社)10mg/kg(10mg/ml(2% Tween80溶液)/kg)を用いた。動物は12時間の明暗サイクル、温度(23−24℃)、湿度(60−70%)で飼育した。5匹の動物について試験した結果を表4に示す。
配列番号2=PCR逆方向プライマー
Claims (8)
- イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、気管支喘息の予防または治療のための飲食用組成物。
- 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、請求項1に記載の気管支喘息の予防または治療のための飲食用組成物。
- イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、骨粗鬆症の予防または治療のための飲食用組成物。
- 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、請求項3に記載の骨粗鬆症の予防または治療のための飲食用組成物。
- イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、PAF受容体拮抗剤。
- 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、請求項5に記載のPAF受容体拮抗剤。
- イカリン脂質抽出物、カツオ精巣リン脂質抽出物およびカツオ卵巣リン脂質抽出物からなる群から選択されるリン脂質抽出物を含有する、アナフィラキシーの予防または治療のための飲食用組成物。
- 前記リン脂質抽出物がエタノール抽出物である、請求項7に記載のアナフィラキシーの予防または治療のための飲食用組成物。
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