JP2007135046A - 音声信号処理装置、音声信号処理方法、プログラム - Google Patents

音声信号処理装置、音声信号処理方法、プログラム Download PDF

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Abstract

【課題】 例えば、或る角度に定位している音源のみを抽出したり、或いは消したり、さらには音量を調整するなど、定位角度ごとに音源の調整を行うことができるようにする。
【解決手段】分割手段により複数系統の音声信号をそれぞれ複数の周波数帯域に分割すると共に、位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比とに基づいて、上記分割手段による分割出力について所要の音声信号処理を施す。これによって或る角度に定位している音源について所要の調整を行うことができる。
【選択図】図3

Description

本発明は、或る角度に定位している音源の音声信号について音声信号処理を施すための音声信号処理装置、音声信号処理方法、プログラムに関する。
CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)などに収録されるコンテンツや、TV(テレビジョン)放送番組などのコンテンツにおける音声信号には様々な種類の音源が含まれている。例えば、音楽を収録したコンテンツであれば、歌声や楽器の音などといった音源が含まれる。また、TV放送番組としてのコンテンツであれば、出演者の声や効果音、笑い声、拍手などといった音源が含まれる。
これらの音源は、収録時には別々のマイク(マイクロフォン)により収録することもあるが、その場合においても音声信号自体は最終的には2ch(チャンネル)や5.1chなどの予め定められたch数に絞られることになる。このとき、ミキシング等が行われることで、それぞれの音源がそれぞれ対応する角度に定位するように調整されることになる。
なお、関連する従来技術については以下の特許文献を挙げることができる。
特開平2−298200号公報
上記のようにして得られたコンテンツが再生装置やTV受像機側などで再生(受信・復調)されることで、その再生音声としては、それぞれの音源の定位角度を再現したかたちで得られるようになる。
しかしながら、ユーザの嗜好などにより、制作側で意図した音源の定位感が受け入れられない場合もある。また、或る角度に定位している音源のみを抽出するなど、コンテンツの楽しみ方の幅を広げるような工夫も要請される。これに伴い、或る角度に定位している音源を抽出する、或いはその音像を大きくする/小さくする、又は消すなどといった調整を行うことが要請されている。
そこで、本発明では以上のような問題点に鑑み、音声信号処理装置として以下のように構成することとした。
つまり、先ず、複数系統の音声信号をそれぞれ複数の周波数帯域に分割する分割手段を備える。
また、上記分割手段により分割された上記複数の周波数帯域ごとに上記複数系統の音声信号の位相差を算出する位相差算出手段を備える。
また、上記分割手段により分割された上記複数の周波数帯域ごとに上記複数系統の音声信号のレベル比を算出するレベル比算出手段を備える。
さらに、上記位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比とに基づいて、上記分割手段による分割出力について所要の音声信号処理を施す音声信号処理手段を備えるようにしたものである。
ここで、上記のようにして複数系統の音声信号のそれぞれを複数の周波数帯域に分割すれば、音声信号に含まれる複数の音源を分割することができる。このことによると、帯域分割された複数系統の音声信号の位相差、レベル比は、それぞれの周波数帯域の音源の定位角度を示す情報となる。従って上記のようにしてこれら周波数帯域ごとに得られる複数系統の音声信号のそれぞれの位相差とレベル比の情報に基づき、分割出力について音声信号処理を施すことで、例えば或る角度に定位している音源のみを抽出したり、或いは消したり、さらには音量を調整するなど、定位角度ごとに音源の調整を行うことができる。
このようにして本発明によれば、或る角度に定位している音源のみを抽出したり、或いは消したり、さらには音量を調整するなど、定位角度ごとに音源の調整を行うことができる。
<第1の実施の形態>

以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
図1は、実施の形態としての音声信号処理装置を含んで構成される再生装置1の内部構成を示したブロック図である。
この再生装置1としては、図示するメディア再生部2を備え、例えばCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、或いはブルーレイディスク(Blu-Ray Disc)などの光ディスク記録媒体や、MD(Mini Disc:光磁気ディスク)、ハードディスクなどの磁気ディスク、半導体メモリを内蔵した記録媒体など、所要の記録媒体についての再生が可能とされる。
この場合、メディア再生部2が対応する記録媒体にはLch(チャンネル)とRchとによる2系統の音声信号によるコンテンツが記録されているものとする。メディア再生部2で再生されたこれらLch,Rchの音声信号は、実施の形態の音声信号処理装置としての音声信号処理部3に供給される。
音声信号処理部3は、メディア再生部2からのLch,Rch音声信号と、後述するシステムコントローラ5からの角度指示信号とに応じ、指示された角度に定位している音源の音声信号について所要の音声信号処理を施すように構成される。そして、このように音声信号処理を施したLch,Rchの音声信号(音声信号Lex,音声信号Rexとする)をD/Aコンバータ4に供給する。
なお、この音声信号処理部3の内部構成については後述する。
音声信号処理部3からの音声信号Lex、Rexは、D/Aコンバータ4にてD/A変換が施されLch音声信号出力、Rch音声信号出力として出力される。
システムコントローラ5は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Randam Access Memory)、CPU(Central Processing Unit)を備えたマイクロコンピュータで構成され、再生装置1の全体制御を行う。
システムコントローラ5に対しては図示する操作部6とコマンド受信部7とが備えられる。操作部6には、当該再生装置2の筐体外部に表出するようにして設けられた各種の操作子が備えられ、それらの操作に応じたコマンド信号をシステムコントローラ5に供給する。また、コマンド受信部7は、図示するリモートコマンダ10から発せられた例えば赤外線信号等に依るコマンド信号を受信する。リモートコマンダ10上にも各種の操作子が設けられており、コマンド受信部7はこれらリモートコマンダ10上の操作子の操作に応じたコマンド信号をシステムコントローラ5に供給するようにされる。
システムコントローラ5は、操作部6及びコマンド受信部7からのコマンド信号に応じた各種の制御動作を実行するようにされる。これによって再生装置1ではユーザの操作入力に応じた動作が実行されるようになっている。
例えば、操作部6、リモートコマンダ10にはメディア再生部2に装填された記録媒体に記録されるコンテンツについての再生指示を行うための操作子が備えられ、その操作に応じたコマンド信号が入力されることに応じ、システムコントローラ5はメディア再生部2を制御してコンテンツの再生を開始させる。
また、この場合、リモートコマンダ10上には、次の図2に示されるような方向指示のための操作子が備えられている。つまり、この図2に示されるように右方向キー10a、左方向キー10b、上方向キー10c、下方向キー10dが備えられる。
ユーザは、上記右方向キー10a、又は左方向キー10bを操作することにより、再生装置2に対し定位角度を指示入力することができる。
図1に戻り、システムコントローラ5は、これら右方向キー10a、左方向キー10bの操作に応じたコマンド信号の入力に応じ、音声信号処理部3に供給すべき角度指示信号を生成する。すなわち、右方向キー10a、左方向キー10bの操作により指示入力される定位角度を表すための情報である。
続いて、図3には音声信号処理部3の内部構成を示す。
先ず、音声信号処理部3には、Lchの音声信号を入力する分析フィルタバンク11Lと、Rchの音声信号を入力する分析フィルタバンク11Rとが備えられる。これら分析フィルタバンク11L、分析フィルタバンク11Rは、入力音声信号を所定複数の周波数帯域に分割するために備えられる。
周知のように、入力信号成分を複数の周波数帯域に分割する手法としては、DFT(Discrete Fourier Transform)フィルタバンク、ウェーブレットフィルタバンク、QMF(Quadrature Mirror Filter)フィルタバンクなどのフィルタバンクと呼ばれる手法がある。フィルタバンクは、分析フィルタバンクと合成フィルタバンクの1セットで構成される。このフィルタバンクの手法は、入力信号を各帯域ごとに目的に応じて処理する場合などに利用されているもので、例えば非可逆圧縮などで広く用いられている。
上記分析フィルタバンク11Lは、入力されるLch音声信号をn個の等帯域による周波数帯域に分割し、n個のサブバンド信号(sub1-L、sub2-L・・・subn-L)を生成する。これらn個のサブバンド信号sub1-L〜subn-Lの個々は、図示するようにしてn個のゲイン器13(13-1〜13-n)のうち対応する添え字(1〜n)の付されるゲイン器13を介した後、それぞれ合成フィルタバンク14Lに供給されるようになっている。
合成フィルタバンク14Lでは、このようにして供給されるn個のサブバンド信号(sub1-L〜subn-L)を合成して元の音声信号形態に再構成する。
同様に、上記分析フィルタバンク11Rは、入力されるRch音声信号をn個の等帯域による周波数帯域に分割し、n個のサブバンド信号(sub1-R、sub2-R・・・subn-R)を生成する。この場合も、これらn個のサブバンド信号sub1-R〜subn-Rの個々は、上記したゲイン器13(13-1〜13-n)のうち対応する添え字(1〜n)の付されるゲイン器13を介した後、それぞれ合成フィルタバンク14Rに供給される。
合成フィルタバンク14Rでは、供給されるn個のサブバンド信号(sub1-R〜subn-R)を合成して元の音声信号形態に再構成する。
なお、ここでは各分析フィルタバンク11によって入力音声信号を等帯域により分割するものとしたが、非等帯域により分割することもできる。
そして、分析フィルタバンク11Lにより生成されたサブバンド信号sub1-L〜subn-Lの個々は、図示するようにn個のバンド別ゲイン算出回路12(12-1〜12-n)のうち対応する添え字の付されるバンド別ゲイン算出回路12に対してもそれぞれ分岐して供給される。
同様に、分析フィルタバンク11Rにより生成されたサブバンド信号sub1-R〜subn-Rの個々としても、バンド別ゲイン算出回路12-1〜12-nのうち対応する添え字の付されるバンド別ゲイン算出回路12に対してもそれぞれ分岐して供給される。
つまり、これによってバンド別ゲイン算出回路12-1〜12-nの個々には、それぞれ対応する帯域のLchのサブバンド信号(以下サブバンド信号sub-Lとも言う)とRchのサブバンド信号(以下サブバンド信号sub-Rとも言う)とが入力されるようになっている。
バンド別ゲイン算出回路12-1〜12-nの個々には、図1に示したシステムコントローラ5からの角度指示信号がそれぞれ入力される。これらバンド別ゲイン算出回路12は、後述するようにしてそれぞれ入力されるLchのサブバンド信号sub-L、Rchのサブバンド信号sub-Rの位相差とレベル比と、上記角度指示信号とに基づき、この角度指示信号により指示される角度に定位している音源を抽出するために、対応する帯域のサブバンド信号sub-L、サブバンド信号sub-Rに設定されるべきゲインG-subを算出する。
つまり、バンド別ゲイン算出回路12-1では、サブバンド信号sub1-L、サブバンド信号sub1-Rに設定すべきゲインG-sub1を生成し、バンド別ゲイン算出回路12-2ではサブバンド信号sub2-L、サブバンド信号sub2-Rに設定すべきゲインG-sub2を生成するといったように、バンド別ゲイン算出回路12-1〜12-nによっては、それぞれの帯域のサブバンド信号sub1-L〜subn-L、サブバンド信号sub1-R〜subn-Rに設定されるべきゲインGsub1〜G-subnが生成される。
なお、このようなバンド別ゲイン算出回路12の内部構成については後述する。
バンド別ゲイン算出回路12-1〜12-nで算出されたゲインG-sub1〜G-subnの個々は、上記したゲイン器13-1〜13-nのうち対応する添え字の付されたゲイン器13にそれぞれ供給される。
ゲイン器13の個々は、供給されたゲインG-subに基づき、それぞれ分析フィルタバンク11Lからのサブバンド信号sub-L、分析フィルタバンク11Rからのサブバンド信号sub1-Rのゲインを調整し、サブバンド信号sub-Lについては合成フィルタバンク14Lへ、サブバンド信号sub-Rについては合成フィルタバンク14Rへそれぞれ供給する。
合成フィルタバンク14L、14Rでは、上述もしたようにゲイン器13-1〜13-nから供給されるサブバンド信号sub1-L〜subn-L、サブバンド信号sub1-R〜subn-Rを合成して元の音声信号形態に再構成して出力する。
ここで、ゲイン器13-1〜13-nから供給される各帯域のサブバンド信号sub-L、サブバンド信号sub-Rは、それぞれ対応するバンド別ゲイン算出回路12で生成された、角度指示信号により指示される角度に定位している音源を抽出するためのゲインG-subに応じてゲインが調整されたもとなっている。
例えば、指示された角度に定位している音源が帯域1〜帯域2(サブバンド信号sub1-L〜sub2-L、サブバンド信号sub1-R〜sub2-R)で構成されるものであったとすれば、例えばこれらサブバンド信号sub1-L〜sub2-L、サブバンド信号sub1-R〜sub2-Rのみがゲイン=1とされ、それ以外の帯域がすべてゲイン=0に調整されるといったものである。
これにより、上記のようにして全ての帯域のサブバンド信号が合成されて再構成された音声信号としては、上記角度指示信号により指示された角度に定位している音源のみが抽出されたものとして再現できるものとなっている。
ここでは、このように合成フィルタバンク14L、14Rからそれぞれ出力される、角度指示信号により指示された角度に定位している音源を抽出したものとできる音声信号のことを、それぞれ音声信号Lex、音声信号Rexと呼ぶ。
図4は、バンド別ゲイン算出回路12の内部構成を示している。
先ず、図3に示した分析フィルタバンク11Lからのサブバンド信号sub-Lは、フーリエ変換器21Lに入力され、ここにおいて例えばFFT(高速フーリエ変換)などのフーリエ変換処理が施される。フーリエ変換処理により得られた複素サブバンド信号csub-Lは、位相差算出器22とレベル比算出器23とに供給される。
また、分析フィルタバンク11Rからのサブバンド信号sub-Rは、フーリエ変換器21Rに供給されフーリエ変換処理が施され、同様に複素サブバンド信号csub-Rとして位相差算出器22とレベル比算出器23とに供給される。
位相差算出器22では、フーリエ変換器21Lからの複素サブバンド信号csub-Lとフーリエ変換器21Rからの複素サブバンド信号csub-Rとの位相差(時間差)を算出する。
ここで、時間ωにおける複素サブバンド信号csub-Lとcsub-RとをそれぞれL(ω)、R(ω)とした場合、時間ωにおける複素サブバンド信号csub-Lと複素サブバンド信号csub-Rとの位相差θlr(ω)は、次の[数1]により与えられる。
但し、下記[数1]において、−180≦θlr(ω)≦180とする。
また、Re(x)は複素数xの実部を、Im(x)はxの虚部を表す。

Figure 2007135046

位相差算出器22は、上記[数1]に基づいてフーリエ変換器21Lからの複素サブバンド信号csub-Lとフーリエ変換器21Rからの複素サブバンド信号csub-Rとの位相差θlr(ω)を算出する。そして、このように算出される位相差θlr(ω)を順次出力することで、ゲイン算出器24に位相差信号θlrを供給するようにされる。
また、レベル比算出器23では、フーリエ変換器21Lからの複素サブバンド信号csub-Lとフーリエ変換器21Rからの複素サブバンド信号csub-Rとのレベル比を算出する。
ここで、時間ωにおける複素サブバンド信号csub-Lとcsub-RとをそれぞれL(ω)、R(ω)とした場合、時間ωにおける複素サブバンド信号csub-Lと複素サブバンド信号csub-Rとのレベル比maglr(ω)は、次の[数2]により与えられる。
但し、下記[数2]において、−1≦maglr(ω)≦1とする。

Figure 2007135046

レベル比算出器23は、上記[数2]に基づいてフーリエ変換器21Lからの複素サブバンド信号csub-Lとフーリエ変換器21Rからの複素サブバンド信号csub-Rとのレベル比maglr(ω)を算出する。そして、このように算出される位相差maglr(ω)を順次出力することで、ゲイン算出器24にレベル比信号maglrを供給するようにされる。
ゲイン算出器24は、位相差算出器22からの位相差信号θlrと、レベル比算出器23からのレベル比信号maglrと、さらに図1に示したシステムコントローラ5からの角度指示信号とに基づき、この角度指示信号により指示される角度に定位している音源を抽出するために、対応する帯域のLchのサブバンド信号sub-LとRchのサブバンド信号sub-Rとに設定すべきゲインG-subを算出する。
ここで、音像の定位は人間の感覚的なものであり、厳密な定義はされておらず数式などで表す事は難しい。例えばLch,Rchのステレオ音声信号について、各々のchの信号が完全に等しい場合、各スピーカの真ん中あたりに音源があるように感じる。また、左側のchのみに信号が含まれている場合は左側のスピーカ付近に音源があるように感じる。
本明細書では、このように感覚的に音像の位置が知覚されることを定位と呼び、或る点を基準としたときの音像の定位位置への角度を定位角度と呼んでいる。
音像を定位させる手法としては各種のものが知られているが、聴取者の各耳に到達する音声信号の位相差(時間差)とレベル比(音圧レベル比)によって特定位置(特定方向)に音源を感じさせるものがある。一例として、特開平2−298200号公報により開示される手法では、音源からの信号にフーリエ変換を行い、周波数軸上で各々のchの信号に周波数に依存したレベル比と位相差とを与えることで、或る方向に音像を定位させるようにしている。
このような手法の逆の発想として、本実施の形態では、各chの音声信号の位相差、レベル比を、音源が定位している角度を表す情報として扱うものとしている。このために本実施の形態では、これまでで説明してきたように各chの音声信号の位相差と各chの信号のレベル比とを解析することで、音源の定位角度を求めるようにしている。
ここで、これまでに説明した音声信号処理部3の構成によれば、各周波数帯域ごとに、各chの音声信号の位相差θlr(ω)とレベル比maglr(ω)とが求まる。つまり、これによって各周波数帯域の音声信号ごとに、それらの定位角度を求めていることになる。
このようにして位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)により各周波数帯域ごとの定位角度が求まれば、図4におけるゲイン算出器24としては、入力される角度指示信号と、これら周波数帯域ごとの定位角度との違いに基づき、上記角度指示信号により指示される定位角度の音源が抽出されるように、それぞれの周波数帯域の音声信号(sub1-L〜subn-L、sub1-R〜subn-R)に設定すべきゲインを算出すればよい。
具体的に、本実施の形態では、先ずは位相差θlr(ω)によって求めた定位角度に応じて算出される位相差側ゲインGθ(ω)と、レベル比maglr(ω)で求めた定位角度に応じて算出するレベル比側ゲインGmag(ω)とを別個に得るようにする。その上で、最終的に各サブバンド信号sub-L、sub-Rに与えるゲインG-subとしては、これら位相差側ゲインGθ(ω)と、レベル比側ゲインGmag(ω)とを乗算して求めるものとする。
つまり、時間ωにおけるゲインG-subをゲイン値G-sub(ω)とすると、

G-sub(ω)=Gθ(ω)×Gmag(ω)

により最終的なゲインG-subを求める。
そして、ゲイン算出器24において、位相差側ゲインGθ(ω)は、角度指示信号により指示される定位角度をangleとしたとき、以下の[数3]により求めるものとする。
但し、下記[数3]において、gradientは0以上の任意の値、top_widthは0≦top_width≦180の任意の値であるとする。
また、角度指示信号により指示可能な定位角度angleは−180≦angle≦180であるとする。
また、位相差側ゲインGθ(ω)については、0≦Gθ(ω)≦1であり、算出されたGθ(ω)の値が0よりも小さいときはGθ(ω)=0とする。

Figure 2007135046
また、ゲイン算出器24において、レベル比側ゲインGmag(ω)は、同じく角度指示信号により指示される定位角度をangleとしたとき、以下の[数4]により求めるものとする。
但し、この[数4]においてもgradientは0以上の任意の値、top_widthは0≦top_width≦180の任意の値であるとする。
また、角度指示信号により指示可能な定位角度angleは−180≦angle≦180であるとする。
また、レベル比側ゲインGmag(ω)については、0≦Gmag(ω)≦1であり、算出されたGmag(ω)の値が0よりも小さいときはGmag(ω)=0とする。

Figure 2007135046
上記[数3][数4]において、gradient、top_widthの値については種々の設定が可能であるが、以下にその一例を示す。
先ず第一例としては、全ての周波数帯域(サブバンド)について、gradient、top_widthの値を固定とする手法である。上記[数3]において、例えばtop_width=20、gradient=1に固定とし、角度指示信号により指示されたangleの値がangle=0、angle=−80であったときにそれぞれ得られる位相差側ゲインGθ(ω)の特性を次の図5に示す。
図5は、横軸を位相差θlr(ω)、縦軸を位相差側ゲインGθ(ω)としたときの位相差側ゲインGθ(ω)の値をグラフ化して示している。つまり、この図では各定位角度ごとに対応した位相差ゲインGθ(ω)の値を示しているものである。
先ず、この第一例ではtop_widthの値が「20」に固定であることから、位相差側ゲインGθ(ω)の値が最大値となる(この場合はGθ(ω)=1)幅が40となる。具体的に、angle=0のときは位相差θlr(ω)が−20〜20までの範囲がtop_width(Gθ(ω)=1)となり、angle=−80のときは位相差θlr(ω)が−100〜−60までの範囲がtop_width(Gθ(ω)=1)となる。すなわち、先の[数3]([数4]も同様)において、ゲインが最大値となる範囲は「angle−top_width〜angle+top_width」の範囲となるので、ゲインが最大値となる範囲は「top_width×2」となる。
また、この場合はgradientの値が「1」で固定であるため、top_widthの範囲外、つまり(θlr(ω)>angle+top_width)または(θlr(ω)<angle−top_width)となる部分では、[数3]を解くと必ず位相差側ゲインGθ(ω)が負の値となり、先に述べた0≦Gθ(ω)≦1の条件を合わせると、このtop_widthの範囲外の位相差側ゲインGθ(ω)は全て「0」となる。
また、第二例は、全ての周波数帯域(サブバンド)についてgradientは固定とするが、指示されたangleの値に伴ってtop_widthの値を変化させる手法である。この場合、例えばtop_widthの値は、指示されるangleの値に応じ、

top_width=|angle/4|

により求めるものとする。例えば先の[数4]において、gradientの値をgradient=20で固定し、angleの値としてangle=0、angle=−80がそれぞれ指示された場合に得られるレベル比側ゲインGmag(ω)の特性を次の図6に示す。
この図6においても、横軸をレベル比maglr(ω)、縦軸をレベル比側ゲインGmag(ω)としたときのレベル比側ゲインGmag(ω)の値をグラフ化して示している。
この場合、top_widthの値が指示されたangleの値に応じて「top_width=|angle/4|」に変化するので、angle=0のときは図示するようにtop_width=0となり、angle=−80のときはtop_width=20となる。
また、この場合は、gradientの値が先の第一例の場合の「1」ではなく「20」とされたので、top_widthの範囲外のレベル比側ゲインGmag(ω)は全て「0」にはならい。すなわち、この場合はtop_widthの範囲外となる(maglr(ω)・180>angle+top_width)または(maglr(ω)・180<angle−top_width)となる部分のうち、レベル比maglr(ω)の値の或る範囲までは、[数4]の計算結果として正の値が得られる。つまり、このことで、図示するようにtop_widthの範囲外であってもレベル比maglr(ω)の値が或る値となるまでは、angleの値から遠ざかるにつれレベル比側ゲインGmag(ω)の値は0に向けて徐々に減少するようになる。
これら図5,図6の説明から理解されるように、[数3][数4]においてgradientの値は、位相差側ゲインGθ(ω)、レベル比側ゲインGmag(ω)について、top_widthの範囲外となる部分の傾きを調整するための値である。
上記手法によれば、top_widthの値とこのようなgradientの値の設定によって、ゲイン窓の形状を自由に調整することができる。
また、上記説明において、第二例では、例えばtop_width=|angle/4|として、angleの値が0のときはtop_widthを0とし、angleの値が0から遠ざかるにつれtop_widthの幅を拡大するものとしたが、これは、先の[数1][数2]の計算によると、算出される位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)の値が「0」寄り(つまり中央寄り)の値で得られてしまうことがある場合を想定してのものである。
つまり、このように位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)の値が中央寄りの値で得られてしまう場合において、angleにより0から遠い角度が指示されたときにtop_widthが狭く抽出する定位角度範囲が狭めであった場合には、抽出すべき定位角度に定位している周波数帯域成分が適正に抽出されず、逆にそれ以外の周波数帯域成分が抽出されてしまうといった虞がある。
これに対し、上記第二例のように指示されたangleの値が0から遠ざかるにつれtop_widthの幅を拡大すれば、上記のように位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)として「0」寄りの値が算出される場合にも抽出すべき周波数帯域を適正に抽出することができるようになる。
上記のような[数3]「数4」により、角度指示信号により指示されたangleに定位している音源を抽出するために、対応するサブバンド信号に設定されるべき位相差側ゲインGθ(ω)、レベル比側ゲインGmag(ω)を得ることができる。
そして、上述もしたように、図4に示したゲイン算出器24では、これら[数3]「数4」に基づき得られた位相差側ゲインGθ(ω)とレベル比側ゲインGmag(ω)とを乗算することで、対応するサブバンド信号sub-L、sub-Rに対して最終的に設定されるべきゲイン値G-sub(ω)を算出するようにされる(G-sub(ω)=Gθ(ω)×Gmag(ω))。
その上でゲイン算出器24は、このゲイン値G-sub(ω)を図3に示したゲイン器13に供給すべきゲインG-subとして順次出力するようにされる。
図7は、これまでに説明してきた第1の実施の形態としての音源抽出動作の動作手順をフローチャートにより示している。
図7において、先ずステップS101では、Lch信号、Rch信号を複数バンドに分割する。すなわち、この動作は、図3に示した分析フィルタバンク11L、分析フィルタバンク11Rが、それぞれ入力されるLch音声信号、Rch音声信号をn個の周波数帯域に分割し、それぞれサブバンド信号sub1-L〜subn-L、サブバンド信号sub1-R〜subn-Rを生成する動作に相当する。
続くステップS102では、分割したLch信号、Rch信号をフーリエ変換する。すなわち、図4に示した、各バンド別ゲイン算出回路23内のフーリエ変換器21L、各フーリエ変換器21Rが、それぞれ入力されるサブバンド信号sub-L、sub-Rについてフーリエ変換処理を施す。
ステップS103では、バンド(周波数帯域)ごとにLch信号とRch信号の位相差θlr(ω)を算出する。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12における位相差算出器22が、それぞれフーリエ変換器11Lからの複素サブバンド信号csub-Lとフーリエ変換器11Rからの複素サブバンド信号csub-Rとに基づき、位相差θlr(ω)を算出する。
そして、ステップS104では、バンドごとに位相差θlr(ω)と[数3]、及び角度指示信号(angle)に基づき位相差側ゲインGθ(ω)を算出する。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12におけるゲイン算出器24が、位相差算出器22から供給される位相差θlr(ω)と、システムコントローラ5から供給される角度指示信号の値(angleの値)と、先に示した[数3]とに基づき、位相差側ゲインGθ(ω)を算出するものである。
また、ステップS105では、バンドごとにLch信号とRch信号のレベル比maglr(ω)を算出する。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12におけるレベル比算出器23が、それぞれフーリエ変換器11Lからの複素サブバンド信号csub-Lとフーリエ変換器11Rからの複素サブバンド信号csub-Rとに基づき、レベル比maglr(ω)を算出する。
そして、ステップS106では、バンドごとにレベル比maglr(ω)と[数4]、及び角度指示信号(angle)に基づきレベル比側ゲインGmag(ω)を算出する。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12におけるゲイン算出器24が、レベル比算出器23から供給されるレベル比maglr(ω)と、システムコントローラ5から供給される角度指示信号の値(angleの値)と、先に示した[数4]とに基づき、レベル比側ゲインGmag(ω)を算出するものである。
なお、ここでは説明の便宜上、位相差θlr(ω)・位相差側ゲインGθ(ω)の算出と、レベル比maglr(ω)・レベル比側ゲインGmag(ω)の算出とが前後して行われるものとしたが、実際の構成においてこれらは同時並行的に行われるものとなる。
ステップS107では、バンドごとに位相差側ゲインGθ(ω)とレベル比側Gmag(ω)とを乗算してゲイン値G-sub(ω)を算出する。これは、各バンド別ゲイン算出回路12におけるゲイン算出器24が、ステップS104にて生成した位相差側ゲインGθ(ω)と、ステップS106にて生成したレベル比側Gmag(ω)とを乗算する動作に相当する。
このステップS107により、各バンド別ゲイン算出回路12におけるゲイン算出器24において、それぞれのバンドに設定すべき最終的なゲイン値G-sub(ω)が得られる。
続くステップS108では、バンドごとにLch信号、Rch信号にゲイン値G-sub(ω)を与える。つまり、図3に示した各ゲイン器13が、入力されるサブバンド信号sub-L、サブバンド信号sub-Rに対し、それぞれ対応するバンド別ゲイン算出回路12から供給されるゲイン値G-subを与える。
そして、ステップS109では、各バンドのLch信号、各バンドのRch信号をそれぞれ合成して出力する。すなわち、図3に示した合成フィルタバンク14Lがゲイン器13-1〜13-nから供給される各バンドのLch信号を入力してこれらを合成して出力し、また合成フィルタバンク14Rがゲイン器13-1〜13-nから供給される各バンドのRch信号を入力してこれらを合成して出力する。
これによって合成フィルタバンク14L、合成フィルタバンク14Rからは、先にも説明したように角度指示信号により指示された角度(angle)に定位している音源のみが抽出されたものとして再現できる音声信号Lex、音声信号Rexが出力される。
このような音声信号Lex、音声信号Rexが出力されることで、聴取者に対し、指示された角度に定位している音源のみが抽出されたように知覚させることができる。換言すれば、これによって指示された角度に定位している音源のみを抽出することができる。
なお、これまでの説明では、本実施の形態としての音源抽出動作の実現にあたり、音声信号処理部3を図7に示した各動作を行うハードウェアにより構成する場合を例示したが、その一部又は全部をソフトウエア処理により実現することも可能である。その場合、音声信号処理部3としては、図7に示した対応する処理を実行するためのプログラムに従って動作するマイクロコンピュータなどで構成すればよい。この場合、音声信号処理部3に対してはROM等の記録媒体が備えられ、そこに上記プログラムが記録される。
また、第1の実施の形態では、[数3][数4]の計算にあたり、各chの音声信号についての位相差及びレベル比として、或る時点(時間(ω))での位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)の値を用いるものとしたが、これら位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)の積分結果を位相差、レベル比の値として用いることもできる。
また、第1の実施の形態では、ゲイン値G-subの算出にあたり、先の[数3][数4]としての、位相差θlr(ω)とangleとを変数としてゲインGθ(ω)を求めるための関数、及びレベル比maglr(ω)とangleとを変数としてゲインGmag(ω)を求めるための関数を用いるものとしたが、これに代え、予め角度指示信号により指示可能な定位角度(angle)ごとに、先の図5、図6に示したようなゲイン特性(ゲインについての窓)をそのまま定義する窓関数を用いてゲイン値を求めるようにすることもできる。
つまり、例えば先の図5に示したangle=0のときを例に挙げれば、予めこのangle=0のときのゲイン窓の形状を定めておき、このゲイン窓の形状を定義する関数として、位相差θlr(ω)(定位角度)を変数としてゲインGθ(ω)を求めるための関数を予め生成して用意しておく。同様に、他のangleの値についてもそのangleのときに対応して設定されるべきゲイン窓の形状を定めておき、それらの窓形状を定義する関数を予め生成して用意しておく。
また、レベル比maglr(ω)についても、同様に指示可能なangleの値ごとにそのangleのときに対応して設定されるべきゲイン窓の形状を定めておき、それらの窓形状を定義する関数として、レベル比maglr(ω)を変数とした関数を予め生成して用意しておく。
そして、実際に角度指示信号によりangleの値が指示されたときは、この指示されたangleの値に応じて位相差側、レベル比側の窓関数をそれぞれ1つ選択し、その窓関数に対し、算出した位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)の値を代入して、それぞれ位相差側ゲインGθ(ω)、レベル比側ゲインGmag(ω)を算出するといったものである。
但し、本実施の形態の[数3][数4]のように、angleも変数とした関数を用いてゲインを算出するものとすれば、上記のように位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)のみを変数とする窓関数を用いる場合とは異なり、保持しておくべき関数としてはこれら[数3][数4]によるそれぞれ1種のみとすることができる。
すなわち、上記説明から理解されるように、窓関数を用いる手法では、各angle対応に個別の関数をそれぞれ用意しておく必要があり、この点でゲイン算出のための関数を保持しておくために必要なメモリ容量が増大化する傾向となる。これに対し、上記のように[数3][数4]のみを保持しておくだけで済めば、その分必要なメモリ容量を削減することができる。
また、ここでは、指示された角度に定位している音源のみが抽出されて出力されるべく、指示された角度に定位している音源の音量を調整するものとしたが、これに代え、指示された角度に定位している音源に対し、例えばリバーブ処理などの他の音声信号処理を施すようにすることもできる。
具体的に、リバーブ処理であれば、ゲイン器13がリバーブ処理を実行するリバーブ処理器となり、位相差とレベル比とに基づき算出されたリバーブ係数(リバーブのレベルを変化させるためのパラメータ)に基づき各サブバンド信号にリバーブ処理を施すように構成すればよい。
また、ここでは、指示された角度に定位している音源のみが抽出されて出力されるべく、指示された角度のゲイン窓を凸状とするものとしたが、逆に指示された角度に定位している音源を消すとした場合は、指示された定位角度の部分が凹状となるようなゲイン窓を設定する等すればよい。
<第2の実施の形態>

続いては第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態は、第1の実施の形態の応用として、音声信号と同期した映像信号を再生する場合において、映像のズームに応じて音源の抽出を行うようにしたものである。
図8は、このような第2の実施の形態としての再生装置30の内部構成を示している。
なお、この図8において、既に先の図1において説明した部分については同一の符号を付して説明を省略する。
先ずこの場合、再生装置30が再生対象とする記録媒体には、音声信号と共に、これと同期した映像信号が記録される。メディア再生部32としては、装填された記録媒体に記録される音声信号と映像信号とについての再生を行うように構成される。
再生された音声信号としてのLch信号、Rch信号は、音声信号処理部33に供給される。また、これらLch信号、Rch信号と同期して再生される映像信号Vは、映像信号処理部34に供給される。
ここで、第2の実施の形態において、映像信号についてのズーム操作は、リモートコントローラ10に備えられる上下左右の方向キー(図2の10a〜10d)により行うことができる。
ズーム操作としては、右方向キー10a/左方向キー10bにより画面の左右方向を指示することができ、また上方向キー10c/下方向キー10dによりズームイン/ズームアウト指示を行うことができる。
この場合のシステムコントローラ5としても、コマンド受信部7を介してリモートコントローラ10からの右方向キー10a/左方向キー10bに対応するコマンド信号が入力されることに応じ、角度指示信号を出力するようにされる。出力される角度指示信号は、音声信号処理部33に供給されると共に、この場合は分岐して映像信号処理部34に対しても供給される。
また、上方向キー10c/下方向キー10dに対応するコマンド信号の入力に応じては、システムコントローラ5は図示するようにズーム倍率指示信号を出力するようにされる。このズーム倍率指示信号としても、音声信号処理部33と映像信号処理部34とに供給される。
音声信号処理部33は、第1の実施の形態の音声信号処理部3が備えていた機能、つまり角度指示信号により指示される角度に定位している音源を抽出する機能に加え、この場合はズーム倍率指示信号に応じて、指示された角度に定位している音源のゲイン(または指示された角度以外に定位している音源のゲイン)を調整するようにされる。つまり、これにより、角度指示信号により指示された角度(すなわちこの場合はズーム位置)に定位している音源の音量を、映像のズーム倍率に応じて調整するようにされているものである。
なお、音声信号処理部33の内部構成については後述する。
また、映像信号処理部34は、入力される映像信号Vについて各種の映像信号処理を行う。例えば、輪郭補正処理やガンマ補正処理などの画質補正処理などを行う。
また、特にこの場合は、上記した角度指示信号とズーム倍率指示信号とに応じた映像のズーム処理を行う。具体的には、角度指示信号で指示される画面の左右位置と、ズーム倍率指示信号により指示されるズーム倍率とに応じて、映像信号Vに基づき映し出される映像の一部がズームイン/ズームアウトするように処理を行う。
この映像信号処理部34により映像信号処理が施された映像信号Vは、図示するようにD/Aコンバータ35を介して出力される。
図9は、音声信号処理部33の内部構成を示している。
なお、この図9においても既に第1の実施の形態(図3)において説明した部分については同一符号を付して説明を省略する。
この場合の音声信号処理部33において、Lch信号は、図示するように分析フィルタバンク11Lに入力される共に、分岐してゲイン調整回路39Lに対しても供給される。また、分析フィルタバンク11Rに供給されるRch信号は、分岐してゲイン調整回路39Rに対しても供給される。
ゲイン調整回路39Lには、上記Lch信号と共に、合成フィルタバンク14Lからの音声信号Lexが入力される。そして、図8に示したシステムコントローラ5からのズーム倍率指示信号も入力される。
このゲイン調整回路39Lでは、ズーム倍率指示信号により指示されるズーム倍率に応じ、音声信号LexまたはLch信号のゲインを調整するようにされる。つまり、ズーム倍率の上昇(つまりズームイン)に応じては、音声信号Lexのゲインを上げる(またはLch信号のゲインを下げる)ようにしてゲイン調整を行う。また、ズーム倍率の低下(つまりズームアウト)に応じては、音声信号Lexのゲインを下げる(またはLch信号のゲインを上げる)ようにしてゲイン調整を行う。
そしてゲイン調整回路39Lは、ゲイン調整したこれら音声信号LexとLch信号とを合成(加算)して出力する。
また、ゲイン調整回路39Rには、上記Rch信号と共に、合成フィルタバンク14Rからの音声信号Rexが入力され、またシステムコントローラ5からのズーム倍率指示信号も入力される。
このゲイン調整回路39Rとしても、ズーム倍率指示信号により指示されるズーム倍率に応じ、音声信号RexまたはRch信号のゲインを調整するようにされる。つまり、ズーム倍率の上昇(つまりズームイン)に応じては音声信号Rexのゲインを上げる(またはRch信号のゲインを下げる)ようにしてゲイン調整を行う。また、ズーム倍率の低下(つまりズームアウト)に応じては、音声信号Rexのゲインを下げる(またはRch信号のゲインを上げる)ようにしてゲイン調整を行う。
そしてゲイン調整回路39Rとしても、ゲイン調整したこれら音声信号RexとRch信号とを合成して出力するようにされる。
これらゲイン調整回路39L、39Rの出力は、図8に示したD/Aコンバータ4を介して音声信号出力として外部出力される。
このような音声信号処理部33の構成において、音声信号Lex、音声信号Rexとしては、角度指示信号により指示される角度に定位している音源を抽出したものとなっている。つまり、角度指示信号により指示された映像の左右位置に定位している音源を抽出したものとなっている。そして上記構成によれば、このように抽出された音源の音量が、指示されたズーム倍率に応じて調整される。つまり、これによって映像のズーム位置に定位しているとして抽出した音源の音量を、映像のズーム倍率に応じて調整することができる。
ここで、従来においても、映像信号の再生装置などにおいてズーム操作に応じ映像の一部をズームイン/ズームアウトするようにされたものがある。これにより、例えば映像の中央にズームインするなど、見たい部分を拡大することができるというものである。
しかし、このような映像のズーム機能を備える従来の装置においては、ズームインした場合にも音声信号としては通常通り出力される。これによると、場合によってはズームインによって画面中に映し出されなくなった部分からの音も含まれるなど、映像と音声との一体感が損なわれてユーザに違和感を抱かせる可能性がある。
これに対し第2の実施の形態によれば、映像のズーム機能と連動して音声信号の調整も行われる。具体的には、ズームイン/ズームアウトする角度に応じて、その角度に定位している音像の音量をズーム倍率に応じて調整することができる。これによって従来のようにズームインされた映像と音声とが一致しないことによる違和感を効果的に低減することができる。
図10は、図8,図9の構成により実現される動作をフローチャートにより示している。
なお、この図10において、ステップS201〜S209による動作は、先の図7に示したステップS101〜S109と同様に、角度指示信号により指示された角度に定位している音源を抽出するための動作となる。従って、これらステップS201〜S209の動作についてここで改めて説明はせず、ステップS210〜S213についてのみ説明する。
先ず、ステップS210では、ズーム倍率指示信号に応じLch/Lex、Rch/Rexのゲイン値を決定する。つまり、この動作は、図9に示したゲイン調整回路39L、ゲイン調整回路39Rが、それぞれ合成フィルタバンク14Lからの音声信号Lexまたはメディア再生部32からのLch信号、合成フィルタバンク14Rからの音声信号Rexまたはメディア再生部32からのRch信号について、ズーム倍率指示信号に応じてゲイン値を決定する動作に相当する。
そして、ステップS211では、決定したゲイン値に基づきLch信号、音声信号Lex、Rch信号、音声信号Rexのゲインを調整する。つまり、ゲイン調整回路39LがLch信号または音声信号Lexのゲインを調整し、ゲイン調整回路39RがRch信号または音声信号Rexのゲインを調整する。
その上で、ステップS212において、Lch信号・音声信号Lex、Rch信号・音声信号Rexを合成して出力する。つまり、ゲイン調整回路39LがLch信号・音声信号Lexを合成して出力し、ゲイン調整回路39RがRch信号・音声信号Rexを合成して出力する。
ここで、先の図9の説明によると、各ゲイン調整回路39におけるズーム倍率指示信号に応じたゲイン調整としては、ズームインに応じては音声信号Lex、音声信号Rex側のゲインを上げる、またはLch信号、Rch信号側のゲインを下げるものとした。また、ズームアウトに応じては、音声信号Lex、音声信号Rex側のゲインを下げる、またはLch信号、Rch信号側のゲインを上げるものとした。
例えば前者の調整、すなわちズームインに応じて音声信号Lex・Rex側のゲインを上げる調整を行ったときは、これら音声信号Lex・Rexの音量が設定音量よりも大きくなるように調整されることになる。このことによると、ユーザの設定音量が守られなくなるといった点で問題となりかねない。
これを対策するとした場合には、後者の調整、つまりズームイン操作に応じLch信号・Rch信号側のゲインを下げるように調整を行えばよい。
但し、実際の聴感上の問題として、これらの調整手法のように音声信号Lex・Rex側のみ、又はLch信号・Rch信号のみのどちらか一方を調整した場合は、全体的な音量として元の設定音量との均衡がとられなくなる可能性があり、この点でユーザに違和感を感じさせてしまう虞がないとは言えない。
そこで、この点を考慮する場合等には、ズーム倍率指示信号に応じて音声信号Lex・Rex側、Lch信号・Rch信号側の双方のゲインを総合的に調整するようにすることもできる。
なお、この第2の実施の形態としても、音源抽出動作は音声信号処理部33のハードウェア構成により実現する場合を例示したが、その一部又は全部をソフトウエア処理により実現することも可能である。その場合、音声信号処理部33としては、図10に示した対応する処理を実行するためのプログラムに従って動作するマイクロコンピュータなどで構成すればよい。この場合、音声信号処理部33に対してはROM等の記録媒体が備えられ、そこに上記プログラムが記録されることになる。
<第3の実施の形態>

第3の実施の形態は、先の第1の実施の形態を応用して、予め定められた所定の定位角度範囲ごとに、定位している音源のゲイン調整ができるようにするものである。
なお、第3の実施の形態において、再生装置の全体構成としては、先の図1に示した再生装置1と同様であるとする。つまり、記録媒体に記録された音声信号についてのみ再生が可能とされているものとする。
この場合の再生装置としては、図1に示した操作部6上に、次の図11に示すようなつまみ操作子6−1、6−2、6−3、6−4、6−5を備えるようにされる。
これらつまみ操作子6−1、6−2、6−3、6−4、6−5は、それぞれ対応する定位角度範囲に定位する音源についてのゲイン(音量)を調整するための操作子となる。
ここで、第3の実施の形態では、複数系統の音声信号(つまりこの場合はLch信号とRch信号)がスピーカから出力されたとき、音源が定位可能な角度範囲(この場合は例示的に360°としている)を、5つの等間隔の範囲に分けるものとしている。
つまりこの場合、聴取者の正面を0°(中央)とすると、180°〜108°、108°〜36°、36°〜−36°、−36°〜−108°、−108°〜−180°の範囲に分けるものとしている。これらの定位角度範囲を、ここでは定位角度レンジと呼ぶ。
この場合、5つに分けられた定位角度レンジのうち、180°〜108°の範囲を定位角度レンジ1とし、108°〜36°の範囲を定位角度レンジ2とする。以降も順に36°〜−36°の範囲は定位角度レンジ3、−36°〜−108°の範囲は定位角度レンジ4、−108°〜−180°の範囲は定位角度レンジ5とする。
図11において、つまみ操作子6−1は、定位角度レンジ1に定位する音源についてのゲインを調整するための操作子となる。また、以降も同様に、つまみ操作子6−2、つまみ操作子6−3、つまみ操作子6−4、つまみ操作子6−5は、それぞれ定位角度レンジ2、定位角度レンジ3、定位角度レンジ4、定位角度レンジ5に定位する音源についてゲイン調整を行うための操作子となる。
これらつまみ操作子6−1〜6−5によるそれぞれの操作情報は、図示は省略するが、システムコントローラ5に入力されて各レンジごとのゲイン指示信号に変換される。このようなレンジごとのゲイン指示信号は、次の図12にも示すように、音声信号処理部43内のバンド別ゲイン算出回路12−1〜12−nに対しそれぞれ供給されるようになっている。
なお、ここではつまみ操作子6−1〜6−5は操作部6に設けられる場合を示したが、これらをリモートコントローラ10に設けることもできる。
また、ここでは定位角度レンジは等間隔に分けるものとしたが、非等間隔で分けることもできる。また、定位角度レンジの数は5つとしたがそれ以外の数に分けることもできる。
図12は、第3の実施の形態の再生装置における音声信号処理部43の内部構成について示している。なお、この図においても既に図3にて説明した部分については同一符号を付して説明を省略する。
上記もしているように、この場合の再生装置においては、つまみ操作子6−1〜6−5によるそれぞれの操作情報が、システムコントローラ5に入力されてレンジごとのゲイン指示信号に変換され、図示するようにバンド別ゲイン算出回路12−1〜12−nに対しそれぞれ供給される。
各バンド別ゲイン算出回路12では、このように入力されるレンジごとのゲイン指示信号と、分析フィルタバンク11Lからのサブバンド信号sub-Lと分析フィルタバンク11Rからのサブバンド信号sub-Rとに基づき、後段のゲイン器13にて対応する帯域のサブバンド信号sub-L、サブバンド信号sub-Rに設定されるべきゲインG-subを算出する。
この場合の各バンド別ゲイン算出回路12の内部構成は、次の図13に示すものとなる。
なお、この図13においても先の図4にて説明した部分については同一符号を付して説明を省略する。
この場合のバンド別ゲイン算出回路12には、先の図4に示したバンド別ゲイン算出回路12が備えていたゲイン算出器24に代えて、ゲイン算出器44が設けられる。このゲイン算出器44としても、位相差算出器22からの位相差信号θlrと、レベル比算出器23からのレベル比信号maglrとが入力される。また、システムコントローラ5からのレンジごとのゲイン指示信号は、このゲイン算出器44に入力されるようになっている。
このゲイン算出器44に対しては、図示するメモリ部45が設けられる。メモリ部45は例えばROMなどの記憶装置とされ、ここには図示する窓関数対応情報45aが格納される。
この窓関数対応情報45aは、レンジごとのゲイン指示信号により指示され得る各定位角度レンジごとのゲインの組み合わせの1つ1つに、予め定められた対応する窓関数が対応づけられた情報である。この場合も、最終的なゲイン値G-sub(ω)としては位相差側ゲインGθ(ω)とレベル比側ゲインGmag(ω)とを乗算して求めるので、この窓関数としては、位相差信号θlrの値(θlr(ω))を変数として位相差側ゲインGθ(ω)を表す位相差側窓関数と、レベル比信号maglrの値(maglr(ω))を変数としてレベル比側ゲインGmag(ω)を表すレベル比側窓関数との2種が用意される。
つまり、窓関数対応情報45aとしては、レンジごとのゲイン指示信号により指示され得る各定位角度レンジごとのゲインの組み合わせの1つ1つに予め定められた対応する位相差側窓関数が対応づけられた情報と、同じくレンジごとのゲイン指示信号により指示され得る各定位角度レンジごとのゲインの組み合わせの1つ1つに予め定められた対応するレベル比側窓関数が対応づけられた情報とを含むものとなっている。
なお、このような窓関数対応情報45aついては後の図14、図15にて改めて説明する。
ゲイン算出器44は、システムコントローラ5からのレンジごとのゲイン指示信号を元に、上記窓関数対応情報45aから対応する位相差側窓関数を読み出し、この位相差側窓関数と位相差算出器22からの位相差θlr(ω)とに基づく演算を行うことで、対応する周波数バンドに応じた位相差側ゲインGθ(ω)を算出する。
また、これと共にゲイン算出器44は、レンジごとのゲイン指示信号を元に上記窓関数対応情報45aから対応するレベル比側窓関数を読み出し、このレベル比側窓関数とレベル比算出器23からのレベル比maglr(ω)とに基づく演算を行うことで、対応する周波数バンドに応じたレベル比側ゲインGmag(ω)を算出する。
そしてこの場合のゲイン算出器44としても、

G-sub(ω)=Gθ(ω)×Gmag(ω)

による演算を行ってゲイン値G-sub(ω)を算出する。
このようにして各バンド別ゲイン算出回路12(12−1〜12−n)において、各周波数バンドごとに設定されるべきゲインG-sub(G-sub1〜G-subn)が算出される。これらゲインG-sub1〜G-subnは、先の図12にも示されているように、ゲイン器13−1〜13−nのうち対応する添え字の付されるゲイン器13に対して入力されそれぞれサブバンド信号sub-L、サブバンド信号sub-Rに与えられるものとなる。
図14、図15は、上述した位相差側窓関数、レベル比側窓関数について説明するための図であり、各図の(a)図では横軸に位相差θlr(ω)、縦軸に位相差側ゲインGθ(ω)をとった場合の位相差側ゲインGθ(ω)の特性(つまり位相差側窓関数)をグラフ化して示し、(b)図では横軸にレベル比maglr(ω)、縦軸にレベル比側ゲインGmag(ω)をとった場合のレベル比側ゲインGmag(ω)の特性(つまりレベル比側窓関数)をグラフ化して示している。
先ず、図14は、レンジごとのゲイン指示信号により定位角度レンジ1〜定位角度レンジ5のすべてについて同じゲイン値が指示されたときに応じて設定される窓関数の例をそれぞれ示している。
全ての定位角度レンジのゲインとして同じ値が指示された場合は、これら図14(a)(b)に示されるように、入力される位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)の値に関わらす、常に一定のゲイン値となるような関数が定められる。
そして、図15は、レンジごとのゲイン指示信号により定位角度レンジ1〜定位角度レンジ5についてそれぞれ異なるゲインが指示されたときに応じて設定される窓関数の例を示している。
このような窓関数(位相差側窓関数、及びレベル比側窓関数)は、予め、例えば聴感上の実験を行った結果などに基づき、各定位角度レンジに定位している音源が、指示されたゲイン(音量)で出力できるようにして設定される。
そして、このような窓関数としては、レンジごとのゲイン指示信号により指示され得る各定位角度レンジごとのゲインの組み合わせの1つ1つについて、それぞれ予め定めておくようにする。このようなレンジごとのゲイン指示信号により指示され得る各定位角度レンジごとのゲインの組み合わせの1つ1つと、その個々に応じて定めた窓関数とを対応づけて、先の窓関数対応情報45aを生成するようにされる。
このような窓関数対応情報45aとされることにより、ゲイン算出器44は、上述のようにして入力されるレンジごとのゲイン指示信号の値に基づき、対応する適正な位相差側窓関数、レベル比側窓関数を選択することができる。すなわち、ゲイン算出器44にて選択される位相差側窓関数、レベル比側窓関数としては、各定位角度レンジに定位している音源が、レンジごとのゲイン指示信号により指示されるゲイン(音量)でそれぞれ出力することができるようにして設定された窓関数となる。
そして、このように適正に選択された窓関数に基づき、ゲイン算出器44では、位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)から対応する周波数バンドに設定されるべき適正なゲイン値Gθ(ω)、Gmag(ω)が求まる。
これらゲイン値Gθ(ω)、Gmag(ω)が、先に説明したようにゲイン算出器44にて乗算されて、各ゲイン器13にてゲインG-subとして対応するサブバンド信号sub-L、サブバンド信号sub-Rに与えられる。これにより、合成フィルタバンク14L、合成フィルタバンク14Rで合成されて得られる音声信号Lex、音声信号Rexとしては、各定位角度レンジに定位している音源が、それぞれレンジごとのゲイン指示信号により指示されるゲイン(音量)となるようにできるものとなっている。
すなわち、これによってレンジごとのゲイン指示信号で指示されたゲインで、各定位角度レンジに定位している音源のゲインを調整することができる。
ここで、例えば定位角度レンジ1はギター、定位角度レンジ2はベース、定位角度レンジ3はボーカル、定位角度レンジ4はドラム、定位角度レンジ5はキーボードの音源がそれぞれ定位しているとすれば、このような第3の実施の形態によれば、ユーザはこれらの各パートごとの音量を自由に調整することができる。つまりは、例えばギターの音のみを抽出したりボーカルの音を消したり等、或る定位角度に定位している音源のみを抽出したり或いは消したり等といった指示を、ユーザが手動で自由に行うことが可能となるようにできる。
図16は、上記説明による定位角度レンジごとのゲイン調整動作の動作手順を示したフローチャートである。
先ず、ステップS301〜S304においては、先の図7に示したステップS101〜、S103、及びS105と同様の動作により、Lch信号、Rch信号のバンド分割、フーリエ変換、及び各バンドごとの位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)の算出が行われる。
そして、ステップS305では、レンジごとのゲイン指示信号の各値に応じた位相差側窓関数、レベル比側窓関数の選択が行われる。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12内のゲイン算出器44が、システムコントローラ5から入力されるレンジごとのゲイン指示信号の各値に応じ、メモリ部45内の窓関数対応情報45aから該当する位相差側窓関数、及びレベル比側窓関数を選択する。
続くステップS306では、バンドごとに、選択した位相差側窓関数と位相差θlr(ω)とに基づき、位相差側ゲインGθ(ω)を算出する。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12内のゲイン算出器44が、選択した位相差側窓関数に位相差算出器22からの位相差θlr(ω)を代入してこれを解くことで位相差側ゲインGθ(ω)を算出する。
また、ステップS307では、バンドごとに、選択したレベル比側窓関数とレベル比maglr(ω)とに基づき、レベル比側ゲインGmag(ω)を算出する。すなわち、各バンド別ゲイン算出回路12内のゲイン算出器44が、選択したレベル比側窓関数にレベル比算出器23からのレベル比maglr(ω)を代入してこれを解くことでレベル比側ゲインGmag(ω)を算出する。
なお、ここでも便宜上、位相差θlr(ω)・位相差側ゲインGθ(ω)と、レベル比maglr(ω)・レベル比側ゲインGmag(ω)とがそれぞれ前後して算出されるもとしたが、実際にはこれらが同時並行して行われるものとなる。
続くステップS308〜ステップS310では、先の図7のステップS107〜S109と同様に、ゲイン算出器44がバンドごとに位相差側ゲインGθ(ω)とレベル比側ゲインGmag(ω)とを乗算してゲイン値G-sub(ω)を算出し、さらにゲイン器13がバンドごとにLch信号、Rch信号に算出されたゲイン値G-sub(ω)を与え、その上で合成フィルタバンク14L、合成フィルタバンク14Rが、各バンドのLch信号、各バンドのRch信号をそれぞれ合成して出力する。
これにより、各定位角度レンジに定位している音源がそれぞれレンジごとのゲイン指示信号により指示されるゲイン(音量)となるようにできる音声信号Lex、音声信号Rexが出力されることになる。
なお、このような定位角度レンジごとのゲイン調整動作についても、音声信号処理部33のハードウェア構成により実現する場合を例示したが、その一部又は全部をソフトウエア処理により実現することも可能である。その場合、音声信号処理部33としては、図16に示した対応する処理を実行するためのプログラムに従って動作するマイクロコンピュータなどで構成すればよい。この場合、音声信号処理部33に対してはROM等の記録媒体が備えられ、そこに上記プログラムが記録される。
とろこで、これまでの説明では、第3の実施の形態としての定位角度レンジごとのゲイン調整を可能とするために、位相差θlr(ω)とレベル比maglr(ω)のみを変数とした窓関数を用いることにより、各バンドに設定されるべきゲイン値G-subを求めるものとしたが、これに代え、位相差Gθ(ω)とレンジごとのゲイン指示信号の各値、レベル比Gmag(ω)とレンジごとのゲイン指示信号の各値とを変数とした関数を用いてゲイン値G-subを求めるようにすることもできる。
その具体的な手法としては、先ず、位相差θlr(ω)のとり得る値(この場合は180°〜−180°)、レベル比θmag(ω)のとり得る値(この場合は1〜−1)を定位角度レンジの数に応じて分割(この場合は5分割)し、この分割された範囲ごとに独立した関数を用いて位相差側ゲインGθ(ω)、レベル比側ゲインGmag(ω)を算出する。そして、これらレンジごとに独立して求めた位相差側ゲインGθ(ω)、レベル比側ゲインGmag(ω)の値を、レンジごとのゲイン指示信号により指示された各レンジのゲイン値によって乗算し、これによって各定位角度レンジに定位している音源が、それぞれレンジごとのゲイン指示信号により指示されるゲイン(音量)となるようにするための位相差側ゲインGθ(ω)、レベル比側ゲインGmag(ω)を算出する。
そして、各バンドごとに、このように算出された位相差側ゲインGθ(ω)とレベル比側ゲインGmag(ω)とを乗算して最終的なゲイン値G-sub(ω)を得るようにする。
ここで、定位角度レンジ1〜5に応じて位相差θlr(ω)を分割するために設定される閾値を180°側から順にT0、T1、T2、T3、T4、T5とする。また、定位角度レンジごとに求められる位相差側ゲインGθ(ω)をレンジ1側から順にGθ1(ω)、Gθ2(ω)、Gθ3(ω)、Gθ4(ω)、Gθ5(ω)とする。さらに、レンジごとのゲイン指示信号により指示される定位角度レンジごとのゲイン値を、レンジ1側から順にGset1、Gset2、Gset3、Gset4、Gset5とする。
この場合において、上記説明のようにレンジごとに独立して求めた位相差側ゲインの値を、レンジごとのゲイン指示信号により指示された各レンジのゲイン値によって乗算して位相差側ゲインGθ(ω)を求めることは、次の[数5]により表すことができる。

Figure 2007135046
また、同様に、レベル比側ゲインGmag(ω)については、定位角度レンジ1〜5に応じてレベル比maglr(ω)を分割するために設定される閾値を「1」側から順にT0/180、T1/180、T2/180、T3/180、T4/180、T5/180とし、また、定位角度レンジごとに求められるレベル比側ゲインGmag(ω)をレンジ1側から順にGmag1(ω)、Gmag2(ω)、Gmag3(ω)、Gmag4(ω)、Gmag5(ω)とし、さらに、レンジごとのゲイン指示信号により指示される定位角度レンジごとのゲイン値を、レンジ1側から順にGset1、Gset2、Gset3、Gset4、Gset5とした場合において、上記説明のようにレンジごとに独立して求めたレベル比側ゲインの値を、レンジごとのゲイン指示信号により指示された各レンジのゲイン値によって乗算してレベル比側ゲインGmag(ω)を求めることは、次の[数6]により表すことができる。

Figure 2007135046
そして、この場合は、上記説明のようにして定位角度レンジごとの位相差側ゲインGθ1(ω)、Gθ2(ω)、Gθ3(ω)、Gθ4(ω)、Gθ5(ω)については、それぞれ定位角度レンジごとに独立して設定された関数を用いて算出するようにされる。
具体的に、位相差側ゲインGθ1(ω)、Gθ2(ω)、Gθ3(ω)、Gθ4(ω)、Gθ5(ω)は、定位角度レンジごとのゲイン窓の左斜辺の傾斜を各々gradientθ1L、gradientθ2L、gradientθ3L、gradientθ4L、gradientθ5Lとし、定位角度レンジごとのゲイン窓の右斜辺の傾斜を各々gradientθ1R、gradientθ2R、gradientθ3R、gradientθ4R、gradientθ5Rとし、また、各定位角度レンジごとのゲイン窓の上底の幅を2で割ったものを各々top_widthθ1、top_widthθ2、top_widthθ3、top_widthθ4、top_widthθ5としたとき、下記の[数7][数8][数9][数10][数11]により求める。
但し、下記[数7]〜[数11]において、0≦Gθ1(ω)≦1、0≦Gθ2(ω)≦1、0≦Gθ3(ω)≦1、0≦Gθ4(ω)≦1、0≦Gθ5(ω)≦1であるとする。

Figure 2007135046

Figure 2007135046

Figure 2007135046

Figure 2007135046

Figure 2007135046
また、先の説明によれば、定位角度レンジごとのレベル比側ゲインGmag1(ω)、Gmag2(ω)、Gmag3(ω)、Gmag4(ω)、Gmag5(ω)についても、それぞれ定位角度レンジごとに独立して設定された関数を用いて算出するようにされる。
つまり、レベル比側ゲインGmag1(ω)、Gmag2(ω)、Gmag3(ω)、Gmag4(ω)、Gmag5(ω)は、定位角度レンジごとのゲイン窓の左斜辺の傾斜を各々gradientmag1L、gradientmag2L、gradientmag3L、gradientmag4L、gradientmag5Lとし、定位角度レンジごとのゲイン窓の右斜辺の傾斜を各々gradientmag1R、gradientmag2R、gradientmag3R、gradientmag4R、gradientmag5Rとし、また、各定位角度レンジごとのゲイン窓の上底の幅を2で割ったものを各々top_widthmag1、top_widthmag2、top_widthmag3、top_widthmag4、top_widthmag5としたとき、下記の[数12][数13][数14][数15][数16]により求める。
但し、下記[数12]〜[数16]においても、0≦Gmag1(ω)≦1、0≦Gmag2(ω)≦1、0≦Gmag3(ω)≦1、0≦Gmag4(ω)≦1、0≦Gmag5(ω)≦1であるとする。

Figure 2007135046

Figure 2007135046

Figure 2007135046

Figure 2007135046

Figure 2007135046
ここで、閾値T0〜T5については固定値となり、本例のように5分割の等分割とする場合はT0=180、T1=108、T2=36、T3=−36、T4=−108、T5=−180となる。
また、gradientθ1L〜gradientθ5L、gradientθ1R〜gradientθ5R、gradientmag1L〜gradientmag5L、gradientmag1R〜gradientmag5R、top_widthθ1〜top_widthθ5、top_widthmag1〜top_widthmag5の各値は、固定値、またはシステムコントローラ5から適宜指示される値とすることができる。例えばシステムコントローラ5から適宜指示されるようにした場合、各定位角度レンジ間の境界でゲイン値が繋がるような値を選定するようにすればよい。
次の図17は、gradientθ1L=1、gradientθ2L=26、gradientθ3L=20、gradientθ4L=1、gradientθ5L=180とし、またgradientθ1R=1、gradientθ2R=26、gradientθ3R=180、gradientθ4R=1、gradientθ5R=20とし、さらにtop_widthθ1=36、top_widthθ2=30、top_widthθ3=30、top_widthθ4=36、top_widthθ5=30とした場合において、レンジごとのゲイン指示信号により定位角度レンジ1のゲインGset1=1.0、定位角度レンジ2のゲインGset2=1.3、定位角度レンジ3のゲインGset3=1.0、定位角度レンジ4のゲインGset4=0.7、定位角度レンジ5のゲインGset5=1.0が指示された場合において、横軸を位相差θlr(ω)、縦軸を位相差側ゲインGθ(ω)として位相差側ゲインGθ(ω)の特性をグラフ化して示している。
また、図18では、gradientmag1L〜gradientmag5L、gradientmag1R〜gradientmag5Rをすべて「1」とし、さらにtop_widthmag1〜top_widthmag5をすべて「36」とした場合において、レンジごとのゲイン指示信号により定位角度レンジ1のゲインGset1=1.0、定位角度レンジ2のゲインGset2=0.7、定位角度レンジ3のゲインGset3=1.0、定位角度レンジ4のゲインGset4=1.3、定位角度レンジ5のゲインGset5=1.0が指示された場合において、横軸をレベル比θlr(ω)、縦軸をレベル比側ゲインGmag(ω)としてレベル比側ゲインGmag(ω)の特性をグラフ化して示している。
先ず図17において、この場合はtop_widthθ1とtop_widthθ4とを「36」とし、gradientθ1Lとgradientθ1Rとを「1」、gradientθ4Lとgradientθ4Rとを「1」としたことで、図示するように定位角度レンジ1と定位角度レンジ4での位相差側ゲインGθ(ω)は全域にわたってフラットとなる特性が得られる。この場合、定位角度レンジ1のゲイン=1.0、定位角度レンジ4のゲイン=0.7であるから、これら定位角度レンジ1(この場合は180<Gθ(ω)≦108)と定位角度レンジ4(この場合は−36>θlr(ω)≧−108)に該当する位相差θlr(ω)の値が算出された周波数バンド(サブバンド信号)に対応する位相差側ゲインGθ(ω)としては、それぞれ「1」と「0.7」となる。
また、それ以外の定位角度レンジ2、定位角度レンジ3、定位角度レンジ5については、それぞれ[gradientθ2L=26,gradientθ2R=26,top_widthθ2=30]、[gradientθ3L=20,gradientθ3R=180,top_widthθ3=30]、[gradientθ5L=180,gradientθ5R=20,top_widthθ5=30]とされたことに応じ、それぞれのレンジのゲイン窓(ゲイン特性)の形状は図のようになる。そして、この場合は定位角度レンジ2のゲイン=1.3、定位角度レンジ3のゲイン=1.0、定位角度レンジ5のゲイン=1.0であることから、各々top_widthの部分のゲイン値は「1.3」、「1.0」、「1.0」となる。また、これら定位角度レンジ2、定位角度レンジ3、定位角度レンジ5のtop_width以外の部分は、先の[数8][数9][数11]に基づく計算(具体的には各式の(1)(3))が行われることで図のような形状が得られる。
また、図18においては、gradientmag1L〜gradientmag5L、gradientmag1R〜gradientmag5Rをすべて「1」とし、さらにtop_widthmag1〜top_widthmag5をすべて「36」としたので、図示するように各定位角度レンジで一定の値が得られる。具体的に、この場合は定位角度レンジ1のゲイン=1.0、定位角度レンジ2のゲイン=0.7、定位角度レンジ3のゲイン=1.0、定位角度レンジ4のゲイン=1.3、定位角度レンジ5のゲイン=1.0が指示された場合なので、定位角度レンジ1に該当するレベル比magθ(ω)の値が算出された周波数バンド(サブバンド信号)に対応するレベル比側ゲインGmag1(ω)の値はすべて「1.0」となる。また、定位角度レンジ2に該当するレベル比magθ(ω)の値が算出された周波数バンドに対応するレベル比側ゲインGmag2(ω)の値はすべて「0.7」、定位角度レンジ3に該当するレベル比magθ(ω)の値が算出された周波数バンドに対応するレベル比側ゲインGmag3(ω)の値はすべて「1.0」、定位角度レンジ4に該当するレベル比magθ(ω)の値が算出された周波数バンドに対応するレベル比側ゲインGmag4(ω)の値はすべて「1.3」、定位角度レンジ5に該当するレベル比magθ(ω)の値が算出された周波数バンドに対応するレベル比側ゲインGmag5(ω)の値はすべて「1.0」となる。
このような手法によれば、レンジごとのゲイン指示信号により指示されたゲイン(音量)で各定位角度レンジに定位している音源を調整するための位相差側ゲインGθ(ω)としては、位相差θlr(ω)と、レンジごとのゲイン指示信号により指示される各定位角度レンジごとのゲイン値(Gset1〜Gset5)とを変数とした関数を用いて算出できる。同様に、レンジごとのゲイン指示信号により指示されたゲイン(音量)で各定位角度レンジに定位している音源を調整するためのレベル比側ゲインGmag(ω)としては、レベル比maglr(ω)と、レンジごとのゲイン指示信号により指示される各定位角度レンジごとのゲイン値(Gset1〜Gset5)とを変数とした関数を用いて算出できる。
すなわち、この場合においてメモリ部45に格納しておくべき関数としては、少なくとも[数7]〜[数11]、[数12]〜[数16]のみとすることができ、先に説明したような各定位角度レンジで設定され得るゲイン値の組み合わせごとに対応させて窓関数を用意する場合よりも、メモリ部45に格納しておくべきデータ容量を削減することができる。
図19は、第3の実施の形態としてのゲイン調整動作を行うにあたって、上記のように位相差θlr(ω)とレンジごとのゲイン指示信号により指示される各定位角度レンジごとのゲイン値(Gset1〜Gset5)とを変数とした関数と、レベル比maglr(ω)とレンジごとのゲイン指示信号により指示される各定位角度レンジごとのゲイン値(Gset1〜Gset5)とを変数とした関数とを用いてゲイン値を算出する場合の、動作手順を示したフローチャートである。
先ず、この場合、ステップS401〜S404では、先の図16に示したステップS301〜S304と同様に、Lch信号、Rch信号のバンド分割、フーリエ変換、及び各バンドごとの位相差θlr(ω)、レベル比maglr(ω)の算出が行われる。
そしてこの場合、次のステップS405では、バンドごとに位相差θlr(ω)と[数7]〜[数11]に基づき、位相差側ゲインGθ1(ω)、Gθ2(ω)、Gθ3(ω)、Gθ4(ω)、Gθ5(ω)を算出するようにされる。すなわち、各バンド別ゲイン算出回路12内におけるゲイン算出器44が、位相差算出器22から入力される位相差θlr(ω)と予め設定された[数7]〜[数11]とに基づく演算を行うことで、位相差側ゲインGθ1(ω)、Gθ2(ω)、Gθ3(ω)、Gθ4(ω)、Gθ5(ω)を算出するものである。
そして、続くステップS406では、[数5]に基づき、位相差側ゲインGθ1(ω)、Gθ2(ω)、Gθ3(ω)、Gθ4(ω)、Gθ5(ω)とレンジごとのゲイン指示信号の値(Gset1、Gset2、Gset3、Gset4、Gset5)とから、各バンド対応の位相差側ゲインGθ(ω)を算出する。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12におけるゲイン算出器44が、ステップS405にて算出した位相差側ゲインGθ(ω)(つまりGθ1(ω)、Gθ2(ω)、Gθ3(ω)、Gθ4(ω)、Gθ5(ω)の何れか)と、システムコントローラ5から供給されるレンジごとのゲイン指示信号の値とから[数5]に基づく演算を行うことで、対応する周波数バンド(サブバンド信号)に設定されるべき位相差側ゲインGθ(ω)を算出するものである。
また、ステップS407では、バンドごとにレベル比maglr(ω)と[数12]〜[数16]に基づき、レベル比側ゲインGmag1(ω)、Gmag2(ω)、Gmag3(ω)、Gmag4(ω)、Gmag5(ω)を算出する。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12内におけるゲイン算出器44が、レベル比算出器23から入力されるレベル比maglr(ω)と予め設定された[数12]〜[数16]とに基づく演算を行うことで、レベル比側ゲインGmag1(ω)、Gmag2(ω)、G,ag3(ω)、Gmag4(ω)、Gmag5(ω)を算出する。
さらに、ステップS408では、[数6]に基づき、レベル比側ゲインGmag1(ω)、Gmag2(ω)、Gmag3(ω)、Gmag4(ω)、Gmag5(ω)とレンジごとのゲイン指示信号の値(Gset1、Gset2、Gset3、Gset4、Gset5)とから、各バンド対応のレベル比側ゲインGmag(ω)を算出する。つまり、各バンド別ゲイン算出回路12におけるゲイン算出器44が、ステップS407にて算出したレベル比側ゲインGmag(ω)(つまりGmag1(ω)、Gmag2(ω)、Gmag3(ω)、Gmag4(ω)、Gmag5(ω)の何れか)と、システムコントローラ5から供給されるレンジごとのゲイン指示信号の値とから[数6]に基づく演算を行うことで、対応する周波数バンド(サブバンド信号)に設定されるべきレベル比側ゲインGmag(ω)を算出する。
なお、ここでも便宜上、位相差θlr(ω)・位相差側ゲインGθ(ω)と、レベル比maglr(ω)・レベル比側ゲインGmag(ω)とが前後してそれぞれ算出されるもとしたが、実際にはこれらが同時並行して行われるものとなる。
その上で、ステップS409〜S411では、先の図16に示したステップS308〜S310と同様に、ゲイン算出器44がバンドごとに位相差側ゲインGθ(ω)とレベル比側ゲインGmag(ω)とを乗算してゲイン値G-subを算出し、ゲイン器13がバンドごとにLch信号、Rch信号にG-sub(ω)を与え、さらに合成フィルタバンク14L、合成フィルタバンク14Rが、各バンドのLch信号、各バンドのRch信号をそれぞれ合成して出力する。
なお、このような[数5]〜[数16]を用いて定位角度レンジごとのゲイン調整動作についても、音声信号処理部33のハードウェア構成により実現する場合を例示したが、その一部又は全部をソフトウエア処理により実現することも可能である。その場合、音声信号処理部33としては、図19に示した対応する処理を実行するためのプログラムに従って動作するマイクロコンピュータなどで構成すればよい。この場合、音声信号処理部33に対してはROM等の記録媒体が備えられ、そこに上記プログラムが記録される。
ここで、定位角度レンジごとにゲイン調整を行う手法としては、このような[数5]〜[数16]を用いてゲイン値を算出する手法以外にも、例えば各閾値(T0〜T5)の中間点でのゲイン値をレンジごとのゲイン指示信号により指示されたゲイン値とし、その間を直線補間または曲線補間するといった手法も採ることができる。その場合としても、窓関数は使用しないのでその分メモリ部45として必要な容量を削減することができる。
また、第3の実施の形態として、定位角度レンジごとのゲイン調整を行うにあたっては、以下のような手法も採ることができる。
つまり、先ずは定位角度レンジ対応に、その定位角度レンジに定位している音源を抽出する音声信号Lexと音声信号Rexを生成する系を備える。つまり、この場合は定位角度レンジ1に定位する音源を抽出するための音声信号Lexと音声信号Rexの生成系と、定位角度レンジ2に定位する音源を抽出するための音声信号Lexと音声信号Rexの生成系と、定位角度レンジ3に定位する音源を抽出するための音声信号Lexと音声信号Rexの生成系と、定位角度レンジ4に定位する音源を抽出するための音声信号Lexと音声信号Rexの生成系と、定位角度レンジ5に定位する音源を抽出するための音声信号Lexと音声信号Rexの生成系とを備える。例えば、このような構成としては、第1の実施の形態の音声信号処理部3を5系統備えるようにしたものと捉えることができる。
その上で、これら複数系統の音声信号Lex・音声信号Rexの出力の1つ1つに対応して、それぞれゲイン調整回路を設け、これらゲイン調整回路において、レンジごとのゲイン指示信号により指示される定位角度レンジごとのゲイン値に応じて、それぞれ入力される音声信号Lex・音声信号Rexのゲインを調整して出力する。そして、最終的には、これらゲイン調整回路から出力される各音声信号Lex、各音声信号Rexをそれぞれ合成して出力する。
これによって同様に各定位角度レンジに定位している音源をレンジごとのゲイン指示信号の値に応じて調整することができる。
<実施の形態の変形例>

以上実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した各実施の形態に限定されるべきものではない。
例えば各実施の形態では、音声信号はLchとRchの2chのみとしたが、2ch以上の音声信号に対応することもできる。
また、各実施の形態では、各chの音声信号の位相差とレベル比を算出した結果に基づき音声信号に設定されるべきゲイン値を算出するものとしたが、位相差またはレベル比のどちらか一方のみに基づきゲイン値を算出するように構成することもできる。
また、レベル比以外にも、各ch信号の音圧レベルの差を表すものでれば他の要素について算出し、これに基づきゲイン値を算出することもできる。
また、各実施の形態において、メディア再生部2としては、記録媒体から音声信号(及び映像信号)を再生するものとしたが、AM・FM、TV放送などを受信・復調して音声信号(及び映像信号)を出力するチューナ装置として構成することもできる。
或いは、各実施の形態の再生装置としては、このようなメディア再生部2を備えて記録媒体についての再生機能、または放送信号の受信機能を有するように構成される以外にも、例えばアンプ装置などとして、外部で再生(受信)された音声信号を入力し、この入力音声信号に対して音声信号処理を行うように構成することもできる。
また、第2の実施の形態では、ズーム倍率に応じた音声信号の調整として、例えば上方向キー10c/下方向キー10dによるズームイン/ズームアウト操作に応じ、左右方向キー(10a、10b)で指示された角度に定位している音像の音量について手動で調整できるように構成したが、このような構成を、第1の実施の形態のように音声信号についてのみ再生する場合にも適用することができる。
つまり、音声信号のみについて再生を行う場合にも、指示された角度に定位している音像の音量を上方向キー10c/下方向キー10dなどを利用した手動の操作に応じて調整するように構成するものである。
また、第2の実施の形態において、例えば上方向キー10c/下方向キー10dによるズームイン/ズームアウト操作に応じ、抽出する音源の範囲を広げたり狭めたりするように構成することもできる。
つまり、上方向キー10cによるズームイン操作に応じて、例えば[数3]及び[数4]におけるtop_widthやgradientの値を小さくし、下方向キー10dによるズームアウト操作に応じてtop_widthやgradientの値を大きくすることで抽出する音源の範囲がズームイン/ズームアウト操作に連動して変化するように構成するものである。
また、第3の実施の形態では、第1の実施の形態のように音声信号についてのみ再生を行う場合において、各定位角度レンジごとのゲイン調整を行う場合を例示したが、第2の実施の形態の場合ように映像信号についての再生も行う場合においても定位角度レンジごとのゲイン調整を行うように構成することもできる。
本発明における第1の実施の形態としての音声信号処理装置を備えて構成される再生装置の内部構成について示したブロック図である。 実施の形態の再生装置が備えるリモートコマンダの外観図である。 第1の実施の形態としての音声信号処理装置の内部構成を示すブロック図である。 第1の実施の形態の音声信号処理装置が備えるバンド別ゲイン算出回路の内部構成について示したブロック図である。 第1の実施の形態において設定される位相差側ゲインの特性について例示的に示した図である。 第1の実施の形態において設定されるレベル比側ゲインの特性について例示的に示した図である。 第1の実施の形態としてのゲイン調整動作の動作手順を示したフローチャートである。 第2の実施の形態としての音声信号処理装置を備えて構成される再生装置の内部構成を示したブロック図である。 第2の実施の形態としての音声信号処理装置の内部構成について示したブロック図である。 第2の実施の形態としてのゲイン調整動作の動作手順を示したフローチャートである。 第3の実施の形態としての再生装置の操作部に備えられる操作子を示した外観図である。 第3の実施の形態としての音声信号処理装置の内部構成について示したブロック図である。 第3の実施の形態としての音声信号処理装置が備えるバンド別ゲイン算出回路の内部構成を示したブロック図である。 レンジごとのゲイン指示信号の各値が同じ値とされる場合に対応して設定される窓関数について例示した図である。 レンジごとのゲイン指示信号の各値がそれぞれ異なる値とされる場合に対応して設定される窓関数について例示した図である。 第3の実施の形態のゲイン調整動作として、窓関数を用いてゲイン値を算出する場合の調整動作の動作手順について示したフローチャートである。 第3の実施の形態としてゲイン値の算出にレンジごとのゲイン指示信号の値と位相差とを変数とした関数を用いる場合において設定される定位角度レンジごとの位相差側ゲインの特性について例示した図である。 第3の実施の形態としてゲイン値の算出にレンジごとのゲイン指示信号の値とレベル比とを変数とした関数を用いる場合において設定される定位角度レンジごとのレベル比側ゲインの特性について例示した図である。 第3の実施の形態としてゲイン値の算出にレンジごとのゲイン指示信号の値と位相差とを変数とした関数、及びレンジごとのゲイン指示信号の値とレベル比とを変数とした関数を用いる場合における、ゲイン調整動作の動作手順について示したフローチャートである。
符号の説明
1,30 再生装置、2 メディア再生部、3,33,43 音声信号処理部、4 D/Aコンバータ、5 システムコントローラ、6 操作部、6−1〜6−5 つまみ操作子、7 コマンド受信部、10 リモートコマンダ、10a 右方向キー、10b 左方向キー、10c 上方向キー、10d 下方向キー、11L,11R 分析フィルタバンク、12−1〜12−n バンド別ゲイン算出回路、13−1〜13−n ゲイン器、14L,14R 合成フィルタバンク、21L,21R フーリエ変換器、22 位相差算出器、23 レベル比算出器、24,44 ゲイン算出器、39L,39R ゲイン調整回路、45 メモリ部、45a 窓関数対応情報

Claims (10)

  1. 複数系統の音声信号をそれぞれ複数の周波数帯域に分割する分割手段と、
    上記分割手段により分割された上記複数の周波数帯域ごとに上記複数系統の音声信号の位相差を算出する位相差算出手段と、
    上記分割手段により分割された上記複数の周波数帯域ごとに上記複数系統の音声信号のレベル比を算出するレベル比算出手段と、
    上記位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比とに基づいて、上記分割手段による分割出力について所要の音声信号処理を施す音声信号処理手段と、
    を備えることを特徴とする音声信号処理装置。
  2. 上記音声信号処理手段は、
    上記位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比と、指示された定位角度の情報とに基づき、上記分割出力について音声信号処理を施す、
    ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
  3. 上記音声信号処理手段は、
    上記位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比と、さらに指示された定位角度の情報とに基づき、上記分割出力についてゲイン調整を行うことで、上記指示された定位角度に定位している音源の音声を抽出するようにされる、
    ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
  4. さらに、
    音声信号と同期した映像信号を入力する映像入力手段と、
    上記映像信号に基づき得られる映像の一部が拡大されるようにして映像信号処理を施す映像信号処理手段と、
    上記映像信号処理手段により拡大される上記映像の一部の位置に応じて定位角度を指示する定位角度指示手段とを備えると共に、
    上記音声信号処理手段は、
    上記位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比と、さらに上記定位角度指示手段により指示された定位角度とに基づき、上記分割出力について音声信号処理を施す、
    ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
  5. さらに、
    上記映像信号処理手段による上記映像の一部の拡大倍率に応じたゲイン値を指示するゲイン値指示手段を備えると共に、
    上記音声信号処理手段は、
    上記位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比と、上記定位角度指示手段により指示された定位角度と、さらに上記ゲイン値指示手段により指示されるゲイン値とに基づき、上記分割出力についてゲイン調整を行うようにされる、
    ことを特徴とする請求項4に記載の音声信号処理装置。
  6. さらに、予め設定された複数の定位角度レンジごとのゲイン値を指示するためのレンジゲイン値指示手段を備えると共に、
    上記音声信号処理手段は、
    上記位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比と、さらに上記レンジゲイン値指示手段により指示された上記定位角度レンジごとのゲイン値とに基づき、上記分割出力についてのゲイン調整を行う、
    ことを特徴とする請求項1に記載の音声信号処理装置。
  7. 上記音声信号処理手段は、
    予め各定位角度レンジごとに指示され得るゲイン値の組み合わせごとに設定された複数の窓関数のうちから、上記レンジゲイン値指示手段により指示された定位角度レンジごとのゲイン値に対応する窓関数を選択し、
    この選択した窓関数と、上記位相差算出手段と上記レベル比算出手段とにより算出された上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比とに基づき、上記分割出力のそれぞれに設定されるべきゲイン値を算出するようにされる、
    ことを特徴とする請求項6に記載の音声信号処理装置。
  8. 上記音声信号処理手段は、
    上記レンジゲイン値指示手段により指示される定位角度レンジごとのゲイン値と上記位相差算出手段により算出される位相差とを変数とした関数と、上記レンジゲイン値指示手段により指示される定位角度レンジごとのゲイン値と上記レベル比算出手段により算出されるレベル比とを変数とした関数とに基づき、上記分割出力のそれぞれに設定されるべきゲイン値を算出するようにされる、
    ことを特徴とする請求項6に記載の音声信号処理装置。
  9. 複数系統の音声信号をそれぞれ複数の周波数帯域に分割する分割手順と、
    上記分割手順により分割した上記複数の周波数帯域ごとに上記複数系統の音声信号の位相差を算出する位相差算出手順と、
    上記分割手順により分割した上記複数の周波数帯域ごとに上記複数系統の音声信号のレベル比を算出するレベル比算出手順と、
    上記位相差算出手順と上記レベル比算出手順とにより算出した上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比とに基づいて、上記分割手順による分割出力について所要の音声信号処理を施す音声信号処理手順と、
    を備えていることを特徴とする音声信号処理方法。
  10. 複数系統の音声信号をそれぞれ複数の周波数帯域に分割する分割手順と、
    上記分割手順により分割した上記複数の周波数帯域ごとに上記複数系統の音声信号の位相差を算出する位相差算出手順と、
    上記分割手順により分割した上記複数の周波数帯域ごとに上記複数系統の音声信号のレベル比を算出するレベル比算出手順と、
    上記位相差算出手順と上記レベル比算出手順とにより算出した上記複数の周波数帯域ごとの位相差とレベル比とに基づいて、上記分割手順による分割出力について所要の音声信号処理を施す音声信号処理手順と、
    を音声信号処理装置に実行させることを特徴とするプログラム。
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