JP2007126699A - 耐食性および耐アブレージョン性に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板およびその製造方法 - Google Patents

耐食性および耐アブレージョン性に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】耐食性および耐アブレージョン性に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板を提供する。
【解決手段】亜鉛系メッキ鋼板における亜鉛系メッキ層の上に、少なくとも、表面改質層および上塗り皮膜が形成されている表面処理亜鉛系メッキ鋼板であって、前記表面改質層は、Si換算で20〜125mg/mの二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩、15〜100mg/mのP、および3〜30mg/mのAlを含有するとともに、りん酸アルミニウムAlPO及び/又は塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOの結晶を含んでいる。前記表面改質層をX線回折したとき、前記りん酸アルミニウムAlPOまたは前記塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOに由来する回折強度が200以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐食性および耐アブレージョン性(耐疵付き性)に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板およびその製造方法に関するものである。本発明の表面処理亜鉛系メッキ鋼板は、例えば、家電用、建築材料用、自動車用等に好適に用いられる。
家電用、建築材料用、自動車用等に適用される鋼板としては、耐食性の観点から亜鉛系メッキ鋼板が汎用されている。しかし、亜鉛系メッキのみでは耐食性(耐白錆性)が不充分である他、塗装下地として使用する場合に塗料との密着性も確保し難いことから、下地処理として、りん酸塩処理やクロメート処理が行われている。更に、耐食性、耐指紋性、潤滑性等の特性を付与させることを目的として、クロメート処理層等の上に1μm程度の薄膜被覆(上塗り皮膜)を施した表面処理亜鉛系メッキ鋼板が開発され、家電メーカーを中心に汎用されている。また、近年、環境保全に対する意識が高まってくるにつれ、有害なクロメート処理を回避する目的で、クロメートを用いない(ノンクロメート)表面処理法が数多く提案され、実用化されている。
このような表面処理亜鉛系メッキ鋼板(以下、「表面処理鋼板」と略記する場合がある。)は、鋼板メーカーからユーザーへの輸送時などにおいて、アブレージョンと呼ばれる擦り疵が発生することが知られている。上記の表面処理鋼板は、通常、コイルやシート材を重ねた状態で梱包紙で梱包され、船便やトラックなどで輸送される。あるいは、切断、成形加工された後、段ボール等に箱詰めされてトラック等で輸送される。このとき、輸送中の振動や衝撃等により、鋼板同士が擦れたり、鋼板が段ボールと擦れたりする。そのため、表面処理鋼板の表面が黒く変色(黒変)したり、表面に擦り疵などが発生し、重大な製品欠陥を招く。
そこで、耐アブレージョン性に優れた表面処理鋼板を提供するため、種々の提案がなされている(例えば、特許文献1〜5)。
特許文献1には、ワックスを含むシリカ粒子の乾燥ゲルからなるガラス質の被膜を表面に有する表面処理金属板において、第1のワックスが主としてガラス質の被膜の表面に付着しており、第2のワックスが粒子状にて主としてガラス質の被膜中に分散されており、一部が表面に露出している表面処理金属板が記載されている。
特許文献2〜4は、いずれも、耐アブレージョン性および耐プレスかじり性に優れた表面処理金属板に関し、同一出願人によって同日に出願されたものである。特許文献2および3の公報には、クロメート被覆めっき金属板の上層に、水性樹脂、コロイダルシリカおよび水に加えて所定の潤滑剤で構成された有機皮膜を備えた表面処理金属板が記載されており、特許文献4には、上記クロメート被覆めっき金属板と上記有機皮膜との間に、防錆層を備えた表面処理金属板が記載されている。
特許文献5には、エチルポリシリケートを加水分解して加水分解率を100%以上とした後、SiO換算の固形分濃度で1質量%超20質量%以下に希釈してなる希釈加水分解液を、Si元素換算の付着量が50〜1000mg/mとなる様に金属材の表面に塗布し乾燥した表面処理金属材の製造方法が記載されている。
特開平8−196989号公報 特開2001−288582号公報 特開2001−288583号公報 特開2001−288584号公報 特開2005−118635号公報
しかしながら、上記特許文献に記載の方法では、耐アブレージョン性の点で不充分である。また、耐アブレージョン性が或る程度高められたものであっても、耐食性が不充分であり、耐アブレージョン性および耐食性の両方に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板の提供が切望されている。
本発明は上記事情に着目してなされたものであって、その目的は、耐食性および耐アブレージョン性の両方に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板であって、ノンクロメート処理にも対応可能な表面処理亜鉛系メッキ鋼板、およびその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る耐アブレージョン性に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板は、亜鉛系メッキ鋼板における亜鉛系メッキ層の上に、少なくとも、表面改質層および上塗り皮膜が形成されている表面処理亜鉛系メッキ鋼板であって、前記表面改質層は、Si換算で20〜125mg/mの二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩、15〜100mg/mのP、および3〜30mg/mのAlを含有するとともに、りん酸アルミニウムAlPO及び/又は塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOの結晶を含んでおり、前記表面改質層をX線回折したとき、前記りん酸アルミニウムAlPOまたは前記塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOに由来する回折強度が200以上であることに要旨が存在する。
好ましい実施形態において、前記表面改質層は、有機樹脂を更に含有する。
上記課題を解決することのできた本発明に係る耐アブレージョン性に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板の製造方法は、上記の表面処理亜鉛系メッキ鋼板を製造する方法であって、亜鉛系メッキ鋼板を用意する工程(a)と、前記亜鉛系メッキ鋼板の表面に、下記組成を満足するpH4以下の二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩を含有する表面処理剤を用いて前記表面処理剤を含む層を形成する工程(b)と、水洗することなしに、7℃/秒以下の平均昇温速度で15秒以上焼き付けることによって表面改質層を形成する工程(c)と、を包含する。
Si:0.5〜5.0%(質量%の意味、以下、同じ)
P :0.15〜4.5%
Al:0.05〜1.5%
好ましい実施形態において、前記工程(b)における前記表面処理剤は、0.005〜0.5%の範囲で有機樹脂を更に含有する。
本発明の表面処理亜鉛系メッキ鋼板は、上記のように構成されているため、耐食性および耐アブレージョン性に優れている。上記の表面処理亜鉛系メッキ鋼板は、例えば、コンピューターケース、ビデオ、モータケース(換気扇など)、オーディオシャーシ類などの家電製品、カーオーディオ、カーナビなどの自動車用品、建築材料などに、好適に用いられる。
本発明者は、耐アブレージョン性に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板(以下、「表面処理鋼板」と呼ぶ場合がある。)を提供するため、鋭意検討してきた。その結果、亜鉛系メッキ層の表面に形成される表面改質層中に、結晶質のりん酸系のアルミニウム塩(具体的には、りん酸アルミニウムAlPO及び/又は塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HO)を含有しており、これらの少なくともいずれか一方が、所定のX線ピーク(回折強度)を有する表面処理鋼板は、耐アブレージョン性が著しく高められることを見出し、本発明を完成した。このような表面処理鋼板は、所定濃度のSi,P、およびAlを含む表面処理剤を用いて当該表面処理剤を含む層を形成した後、水洗することなしに、所定の平均昇温速度で所定時間焼き付けて表面改質層を形成することによって初めて得られることも分かった。
表面改質層中に、上記要件を満足する結晶質のりん酸系のアルミニウム塩が生成することによって耐アブレージョン性が著しく向上する理由は、詳細には不明であるが、以下のように考えられる。アブレージョンは、表面処理鋼板が摺動によって表面から力を受け、上塗り皮膜が表面から削られる、あるいは、上塗り皮膜または表面改質層が内部で破壊されて剥落する、などして発生しているものと思われる。特に、表面改質層は無機物が多いため、上塗り皮膜に比べて硬度が高く、層内での破壊が起こり易いと思われるが、この破壊は、ある弱い部分に欠陥が発生すると、これを起点として層内をクラックが伝播するものと推定される。この場合、改質層が均質であるとクラックが伝播し易いが、層内の各所に微小な異質の物質が点在するとクラックがこの部分で留められ、結果として、破壊が防止されると考えられる。本発明における結晶質は、この点在する異質の物質の役目を担っているのではないかと推定される。
また、本発明では、後記する実施例の欄に記載の方法で耐アブレージョン性を評価しているが、この評価方法は、例えば、前述した特許文献1〜5の従来方法に比べ、過酷なものであると考えられる。例えば、特許文献1では、PWO型平面曲げ疲労試験装置を用いて、アブレージョンを発生させ、目視で耐アブレージョン性を評価しているが、サンプル同士を重ねて摺動させているのみで、表面に所定の荷重を負荷していないと推定されるので、この点で、耐アブレージョン性の基準は、本発明の評価方法に比べて緩やかであると考えられる。また、特許文献2〜4では、ビニールの様な軟らかい物質を介して10g/cmの荷重を負荷しているのみで、本発明の様にボール紙などの硬い物質を当てておらず、荷重も本発明の場合(50g/cm)より小さくなっており、耐アブレージョン性の基準は、本発明の方法に比べて緩やかであると考えられる。特許文献5における耐アブレージョン性の評価基準は、本発明と同等レベルと思われるが、本発明に比べて耐食性が不充分である。本発明によれば、従来よりも過酷な評価基準で耐アブレージョン性を評価しても良好な耐アブレージョン性を確保でき、且つ、良好な耐食性も確保できる点で、極めて有用である。
以下、本発明の表面処理亜鉛系メッキ鋼板について説明する。
前述したとおり、本発明の表面処理亜鉛系メッキ鋼板は、亜鉛系メッキ鋼板における亜鉛系メッキ層の上に、少なくとも、表面改質層および上塗り皮膜が形成されている表面処理亜鉛系メッキ鋼板である。
はじめに、本発明を特徴付ける上記表面改質層について説明する。
上記表面改質層は、Si換算で20〜125mg/mの二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩、15〜100mg/mのP、および3〜30mg/mのAlを含有するとともに、りん酸アルミニウムAlPO及び/又は塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOの結晶(以下、これらをまとめて、りん酸アルミニウム系結晶と呼ぶ場合がある。)を含んでおり、前記表面改質層をX線回折したとき、前記りん酸アルミニウムAlPOまたは前記塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOに由来する回折強度が200以上であることに特徴がある。表面改質層の構成を上記のように制御することにより、耐アブレージョン性が著しく高められる(後記する実施例を参照)。
上記の表面改質層は、前述した2種類のりん酸アルミニウム系結晶の少なくともいずれか一方を含み、且つ、少なくともいずれか一方のりん酸アルミニウム系結晶のX線回折強度は200以上である。本発明には、りん酸アルミニウムAlPOまたは塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOのいずれか一方が200以上のX線回折強度を有するもの、および、これらの両方が200以上のX線回折強度を有するものの両方が含まれるが、いずれの場合も、同程度の優れた耐アブレージョン性が得られている。
X線回折強度の測定条件は、以下のとおりである。
装置:理学電機製X線回折装置「RINT−1500」
方法:θ/2θ法
X線:Cu−Kα(モノクロメータ使用)
管電圧:40kV
管電流:200mA
スリット:発散1°、散乱1°、受光0.15mm
走査速度:2°/min
サンプリング幅:0.02°
上記条件で、2θ=5°〜70°の範囲にわたってスキャンを行い、おおむね、2θ=26.5°にピークが検出されるものをりん酸アルミニウム結晶AlPOとし、おおむね、2θ=8.7°にピークが検出されるものを塩基性りん酸アルミニウム結晶Al(PO(OH)・9HOとした。各検出ピークについて、バックグラウンド補正を行った(バックグラウンド面積を差し引く)後のピーク面積を測定し、各結晶の回折強度を算出した。
更に、上記表面改質層は、Si換算で20〜125mg/mの二酸化ケイ素(SiO、シリカ)及び/又はケイ酸塩、150〜100mg/mのP、および3〜30mg/mのAlを含有している。
上記表面改質層中の主成分となる二酸化ケイ素(SiO)やケイ酸塩は、亜鉛系メッキ層との親和性が良好なため、これらを含有する層(表面改質層)を上塗り皮膜の下地層として形成すると、シリカ微粒子及び/又はケイ酸塩が亜鉛系メッキ層の表面に沈着し、亜鉛系メッキ層と上塗り皮膜との間の耐剥離特性が高められるため、上塗り皮膜のZnめっき表面からの剥落が防止され、結果的に、耐アブレージョン性が向上する。
表面改質層中の二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩の含量は、Si換算で20mg/m〜125mg/mの範囲(40mg/m〜270mg/mのSiO換算)である。これにより、後記する実施例に示すように、優れた耐アブレージョン性と耐食性とを確保することができる。二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩の含量がSi換算で20mg/m未満では、所望の耐アブレージョン性が得られない。これらの含量が多くなるにつれ、耐アブレージョン性は向上するが、Si含量が125mg/mを超えると、耐アブレージョン性は却って低下傾向を示すようになる。また、耐食性も低下するようになる。二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩の含有量は、Si換算で、25mg/m以上100mg/m以下であることが好ましく、40mg/m以上80mg/m以下であることが更に好ましい。
上記表面改質層は、15〜100mg/mのPと、3〜30mg/mのAlとを更に含んでいる。PおよびAlは、亜鉛系メッキ層の表面をエッチングするためのエッチング剤、例えば、りん酸、重りん酸等のアルミニウム塩水溶液(以下、単にりん酸系アルミニウム塩水溶液という。)に由来して含まれる。後に詳しく説明するように、表面改質層を製造するに当たっては、上記のりん酸系アルミニウム塩水溶液で亜鉛系メッキ層の表面をエッチングし、適度に粗面化されたメッキ層の表面にコロイダルシリカやケイ酸塩等に由来するシリカ微粒子を沈着させている。更には、PおよびAlは、表面改質層中でりん酸系アルミニウム塩の化合物を形成することにより、層中のシリカあるいはケイ酸塩微粒子同士を繋いで、改質層をより強靭にするバインダーの役目を果たしている。このため、生成する表面改質層には、PとAlとが含まれる。
P含量が15mg/m未満、Al含量が3mg/m未満では、りん酸系アルミニウム塩化合物のバインダー効果が不足し、亜鉛系メッキ層と上塗り皮膜との間の表面改質層の緻密さ、強固さ、すなわち、シリカ微粒子やケイ酸塩同士を繋ぐ力が不足し、耐アブレージョン性向上効果が有効に発揮されないことがある。一方、P含量が100mg/m、Al含量が30mg/mを超えると、表面改質層の内部応力が改質層自体の強度を超え易くなり、かえって、所望の耐アブレージョン性作用が得られない。更に、耐食性を高める目的で、後記する有機樹脂を更に添加したとしても、有機樹脂添加による耐食性向上作用が有効に発揮されない恐れがある(後記する実施例のNo.17および18を参照)。P含有量は、17mg/m以上75mg/m以下であることが好ましく、20mg/m以上50mg/m以下であることがより好ましい。Al含有量は、4mg/m以上25mg/m以下であることが好ましく、5mg/m以上15mg/m以下であることがより好ましい。
表面改質層中のSi、P、Alの量は、例えば蛍光X線法等によって確認することができる(後記する実施例を参照)。
上記の表面改質層は、有機樹脂を更に含有してもよく、これにより、耐食性が高められる。本発明に用いられる有機樹脂は、特に限定されず、例えば、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、単独で、または2種以上を併用して使用することができる。
これらの有機樹脂の中でも水溶性の有機樹脂を用いることが好ましく、有機酸によって構成される有機樹脂を使用することが特に好ましい。有機酸によって構成される有機樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸が好適であり、酸基の一部または全部を塩基で中和したものを用いてもよい。以下に詳しく説明するように、表面改質層を形成する際には、酸性水溶液を使用して亜鉛系メッキ層をエッチングすることが好ましいが、有機酸を構成成分とする有機樹脂は専ら水溶性であるし、このような有機樹脂を含有する水性液は酸性となるので、上記酸性水性液へ配合する際の安定性や作業性に優れている。ポリ(メタ)アクリル酸を用いる場合の重量平均分子量は2000以上が好ましい。より好ましくは10000以上、さらに好ましくは20000以上である。なお、有機酸によって構成される有機樹脂の塩を用いるときの塩基としては、アンモニアや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が使用可能である。
表面改質層中の有機樹脂は、例えば、FT−IRで表面改質層を観察することで、有機樹脂の構造(エステル結合、カルボキシル基、ケトン、アミノ基、ヒドロキシル基、及び、炭素−水素結合等)に由来するFT−IRのピークがスペクトルに現れるので、その存在を把握することができる。本発明では、有機樹脂の構造に由来するFT−IRの吸収強度が0.1〜15となるように有機樹脂を存在させることが好ましい。前記FT−IRの吸収強度は、表面改質層中の有機樹脂の含有量を指標するものであり、FT−IRの吸収強度を一定の範囲とすることによって、耐食性が高められる。
以上本発明を特徴付ける表面改質層について説明した。
本発明が適用される亜鉛系メッキ鋼板としては、亜鉛単独メッキ鋼板の他、亜鉛−Ni鋼板、亜鉛−Fe鋼板、亜鉛−Al鋼板等の亜鉛系合金メッキ鋼板が挙げられる。メッキ法も特に限定されず、溶融メッキ法、電気メッキ法、蒸着メッキ法等のいずれも採用することが可能である。本発明の表面処理亜鉛系メッキ鋼板は、特に、ノンクロメート系処理剤により形成された表面改質層を有することが好ましい。
表面改質層の上には、直接、または他の層を介して、耐食性、耐指紋性、加工性、塗膜密着性等の特性付与を目的として、上塗り皮膜が形成される。具体的には、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、アミノプラスト系樹脂等による各種有機系の上塗り皮膜が挙げられる。
上塗り皮膜は、例えば、特願2004−30231に記載された、特定のエマルジョン組成物から形成された樹脂皮膜であることが好ましい。エマルジョン組成物の詳細は、以下に示すとおりであり、この組成物から得られる樹脂皮膜は、塗装性、潤滑性、加工性等の各種特性に優れ、かつ、脱脂工程後の耐食性にも優れている。
上記エマルジョン組成物は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体(中和状態も含む)を主成分とし、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体が有するカルボキシル基1モルに対して0.2〜0.8モル(20〜80モル%)に相当する沸点100℃以下のアミンと、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体が有するカルボキシル基1モルに対して0.02〜0.4モル(2〜40モル%)に相当する1価の金属の化合物とを含むと共に、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する架橋剤をエマルジョン組成物の固形分100質量%に対し0.5〜20質量%含み、沸点100℃超のアミンおよびアンモニアは、実質的に含まない。
上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンと、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸の共重合体であり、公知の高温高圧重合法等で重合することによって得られる。共重合体としては、ランダムが最も好ましいが、ブロック共重合体や、不飽和カルボン酸部分がグラフトしたような共重合体でも良い。エチレンの一部に変えてプロピレンまたは1−ブテン等のオレフィン系モノマーを用いてもよく、さらに本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他の公知のビニル系モノマーを一部共重合(10質量%程度以下)してもよい。エチレンに対する不飽和カルボン酸の共重合比率は、モノマー全量を100質量%とした時に、不飽和カルボン酸が10〜40質量%であることが好ましい。
上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体はカルボキシル基を有しているので、有機塩基や金属イオンで中和することにより、エマルジョン化(水分散体化)が可能となる。このとき、有機塩基として沸点100℃以下のアミンを用いる。沸点が100℃を超えるアミン類は、樹脂塗膜を乾燥させたときに鋼板上に残存しやすく、上塗り皮膜の吸水性が増すため、耐食性等の低下を招く。よって、上塗り皮膜形成のために用いられるエマルジョン組成物には、沸点100℃超のアミン類は含まれない。また、アンモニアの添加効果も認められなかったため、アンモニアも含まれていない。なお、上記沸点は、大気圧下での沸点を採用する。
沸点100℃以下のアミン(以下、上記アミン類という)の具体例としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルブチルアミン、N,N−ジメチルアリルアミン、N−メチルピロリジン、テトラメチルジアミノメタン、トリメチルアミン等の3級アミン;N−メチルエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン等の2級アミン;プロピルアミン、t−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、イソブチルアミン、1,2−ジブチルプロピルアミン、3−ペンチルアミン等の1級アミン等が挙げられ、1種または2種以上を混合して使用することができる。これらの中でも3級アミンが好ましく、最も好ましいものはトリエチルアミンである。
上記アミン類の量は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対し、0.2〜0.8モル(20〜80モル%)の範囲とする。この範囲であれば、耐食性が良好だからである。上記アミン類が0.2モルより少ないと、エマルジョン中の樹脂粒子の粒径が大きくなって、上記効果が発揮されないが、0.8モルを超えるとエマルジョン組成物が増粘してゲル化することがあるため、好ましくない。より好ましい上記アミン類の量の上限は0.6モル、さらに好ましくは0.5モルであり、より好ましい上記アミン類の量の下限は0.3モルである。
エマルジョン組成物の調製には、1価の金属イオンも用いられ、皮膜硬度の向上に効果的である。1価の金属の化合物としては、ナトリウム、カリウム、リチウムから選ばれる1種または2種以上の金属を含むことが好ましく、これらの金属の水酸化物、炭酸化物または酸化物が好ましい。中でも、NaOH、KOH、LiOH等が好ましく、NaOHが最も性能が良く好ましい。また、2価以上の金属の化合物は添加することによる効果が認められないため、用いない。
この1価の金属の化合物の量は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対して、0.02〜0.4モル(2〜40モル%)の範囲とする。上記金属化合物量が0.02モルより少ないと乳化安定性が不充分となるが、0.4モルを超えると、得られる樹脂皮膜の吸湿性(特にアルカリ性溶液に対して)が増大し、耐食性が劣化するため好ましくない。より好ましい金属化合物量の下限は0.03モル、さらに好ましい下限は0.1モルであり、より好ましい金属化合物量の上限は0.5モル、さらに好ましい上限は0.2モルである。
上記アミン類と上記1価の金属化合物のそれぞれの使用量の好ましい範囲は上記したとおりであるが、これらはいずれもエチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基を中和してエマルジョン化するために用いられる。従って、これらの合計量(中和量)が多すぎると、エマルジョン組成物の粘度が急激に上昇して固化することがある上に、過剰なアルカリ分は耐食性劣化の原因となるため、揮発させるために多大なエネルギーが必要となるため好ましくない。しかし、中和量が少なすぎると乳化性に劣るため、やはり好ましくない。従って、上記アミン類と上記1価の金属化合物の合計使用量は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対し、0.3〜1.0モルの範囲とすることが好ましい。
上記アミン類と1価の金属イオンによるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体の中和工程(エマルジョン化工程)では、沸点100℃以下のアミンと1価の金属の化合物とを略同時に共重合体へと添加するか、沸点100℃以下のアミンを先に添加することが望ましい。理由は定かではないが、沸点100℃以下のアミンを後添加すると、耐食性・耐アブレージョン性の向上効果が不充分となる恐れがあるからである。
上記エマルジョン組成物には、カルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する架橋剤が配合される。上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体を化学的に架橋させ、皮膜強度の向上を図るためである。架橋剤量は、エマルジョン組成物中の固形分100質量%のうち、1〜20質量%(より好ましくは5〜10質量%)とする。1質量%より少ないと、化学結合による架橋の効果が不充分となり、耐食性・耐アブレージョン性の向上効果が発揮されにくい。一方、20質量%を超えて配合すると、樹脂皮膜の架橋密度が過度に高くなりすぎて硬度が上昇し、プレス加工時の変形に追従できなくなることからクラックが発生し、その結果耐食性や塗装性を低下させるため好ましくない。なお、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体に対する架橋剤量の比率としては、共重合体中のカルボキシル基量に応じて架橋剤量を適宜変更することが望まれるが、通常、共重合体100質量部に対し、架橋剤を0.5〜50質量部(より好ましくは5〜20質量部)とすることが好ましい。
カルボキシル基と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤としては特に限定されないが、ソルビトールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル類や、ポリグリシジルアミン類等のグリシジル基含有架橋剤;4,4’−ビス(エチレンイミンカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トルエンビスアジリジンカルボキシアミド等の2官能アジリジン化合物;トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド、トリス〔1−(2−メチル)アジリジニル〕ホスフィンオキサイド、トリメチロールプロパントリス(β−アジリジニルプロピオネート)、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1,3,5−トリアジン、テトラメチルプロパンテトラアジリジニルプロピオネート等の3官能以上のアジリジン化合物あるいはこれらの誘導体等のアジリジニル基含有架橋剤が好適例として挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を用いることができる。中でも、アジリジニル基含有架橋剤が好ましい。なお、多官能アジリジンと、1官能アジリジン(エチレンイミン等)を併用してもよい。
上記エマルジョン組成物には、固形分換算で5〜40質量%(より好ましくは20〜30質量%)のシリカ粒子を含有させてもよい。耐食性、塗装性、耐疵付き性等の向上に効果的である。シリカ粒子量が少ないとこれらの効果が発現しにくいが、多すぎると、シリカ粒子の割合が過度に高くなって造膜性が低下し、乾燥工程の際に樹脂皮膜にクラックが入ることがあり、耐食性低下につながるため好ましくない。また、シリカ粒子が増磨剤として作用するようになり、皮膜の潤滑性を高め、摩擦係数を低下させて、加工時における金型の摩耗を生じ、金型の寿命を縮めることもある。
上記のようなシリカ粒子の効果を最大限に得るには、シリカ粒子の平均粒子径が1〜200nmの範囲にあることが好ましい。シリカ粒子の粒子径が200nmを超えると、樹脂皮膜の表面を粗くして、緻密な樹脂皮膜を形成することができず、さらに、シリカ粒子が増磨剤としても作用するので、加工性が劣化する。シリカ粒子の粒子径が小さいほうが皮膜の耐食性は向上するが、極端に微小な粒子となると、上記効果が飽和してしまうので、粒子径の下限は1nmが好ましい。特に、脱脂後の耐食性を重視する場合は、シリカ粒子の平均粒子径を4〜20nmの範囲とするとよい。このようなシリカ粒子は、通常、コロイダルシリカとして知られており、例えば、「スノーテックス」シリーズ(日産化学工業社製のコロイダルシリカ)の「XS」、「SS」、「40」、「N」、「UP」等を好適に用いることができる。
上記のエマルジョン組成物には、ワックスが含まれていることが好ましい。ワックスが固形分換算で0.5〜20質量%(より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%)の範囲で含まれていると、得られる樹脂皮膜の潤滑性、耐疵付き性が良好となる。ただし、ワックス量が多すぎると、ワックスが軟化・液化あるいはブルーミングして、樹脂皮膜と後塗装の塗膜の界面に濃化し、塗装性が劣化するため、好ましくない。
ワックスとしては特に限定されず、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス等の天然ワックス;ポリエチレン等の合成ワックス;これらの混合物等の公知のワックスがいずれも使用可能である。軟化点は、80〜140℃のものを選択することが好ましい。最も好適なワックスは球形ポリエチレンワックスであり、平均粒子径が0.1〜3μm(より好ましくは0.3〜1.0μm)のものが好ましい。潤滑性や加工性の顕著な向上を図れるからである。球形ポリエチレンワックスとしては、例えば、「ダイジェットE−17」(互応化学社製)、「KUE−1」、「KUE−5」、「KUE−8」(三洋化成工業社製)、「ケミパール」シリーズ(三井化学社製)の「W−100」、「W−200」、「W−300」、「W−400」、「W−500」、「W−640」、「W−700」等や、「エレポンE−20」(日華化学社製)等のような市販品を好適に用いることができる。
本発明で用いられるエマルジョン組成物は、必須成分であるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、上記アミン類、1価の金属の化合物、アジリジン化合物等の架橋剤、さらに必要に応じて用いられるシリカ粒子、ワックス等を含むものであることが好ましい。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、これらの樹脂成分がエマルジョン組成物の固形分の50質量%以上となるように、アジリジン化合物、シリカ粒子、ワックス等の量を調整することが望ましい。
エマルジョン組成物の調製方法は、まず、必須成分であるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を水性媒体と共に、例えば、ホモジナイザー装置等に投入し、必要により70〜250℃の加熱下とし、上記アミン類と1価の金属の化合物を適宜水溶液等の形態で添加して(上記アミン類を先に添加するか、上記アミン類と1価の金属の化合物とを略同時に添加する)、高剪断力で撹拌する。シリカ粒子、ワックス、架橋剤等はいずれの段階で添加してもよいが、架橋剤添加後は架橋反応が進行してゲル化しないように、熱を掛けないようにすることが望ましい。
上記エマルジョン組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲で、希釈溶媒、皮張り防止剤、レベリング剤、消泡剤、浸透剤、乳化剤、造膜助剤、着色顔料、増粘剤、シランカップリング剤、他の樹脂等を適宜添加してもよい。なお、上記エマルジョン組成物に配合することのできる各種添加剤は、上塗り樹脂皮膜形成のために他の樹脂組成物を用いたときにも使用可能である。
次に、上記の表面処理鋼板を製造する方法について説明する。
本発明による表面処理亜鉛系メッキ鋼板の製造方法は、亜鉛系メッキ鋼板を用意する工程(a)と、前記亜鉛系メッキ鋼板の表面に、Si、P、Alが下記組成を満足するpH4以下の二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩を含有する表面処理剤(以下、単に「表面処理剤」と呼ぶ場合がある。)を用いて前記表面処理剤を含む層を形成する工程(b)と、水洗することなしに、平均昇温速度7℃/秒以下で15秒以上焼き付けることによって表面改質層を形成する工程(c)と、を包含している。
Si:0.5〜5.0%
P :0.15〜4.5%
Al:0.05〜1.5%
以下、各工程について、順次、説明する。
まず、上述した亜鉛系メッキ鋼板を用意する(工程(a))。
次に、上記亜鉛系メッキ鋼板の表面に、pH4以下の表面処理剤を用い、表面処理剤を含む層を形成する(工程(b))。この層は、Si:0.5〜5.0%(SiO換算の固形分濃度:1.0〜11%)、P:0.15〜4.5%、Al:0.05〜1.5%を含んでいる。以下では、表面処理剤を含む層を「表面処理剤含有層」と呼び、後記する工程(c)によって形成される表面改質層と区別する場合がある。
以下に詳しく説明するように、本発明に用いられる表面処理剤は、Siの供給源(コロイダルシリカ、ケイ酸塩など)と、PおよびAlの供給源(重りん酸アルミニウムなどのエッチング剤)とを含んでおり、pH4以下の酸性水溶液である。このような表面処理剤を用い、亜鉛系メッキ層をロールコーター法などの公知の塗布方法で処理した後、水洗することなく、後述する所定の条件で焼き付けると、亜鉛系メッキ層の表面はエッチングされ、エッチング(粗面化)された亜鉛系メッキ層の表面に、難溶性(水またはアルカリ性水溶液に溶けにくい)のりん酸アルミニウムAlPO及び/又は塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOの結晶を含む反応層(表面改質層)が形成される。この表面改質層には、シリカ微粒子及び/又はケイ酸塩が取り込まれ、シリカ微粒子及び/又はケイ酸塩と上記のりん酸アルミニウム系結晶とが、P、Al、酸素よりなるバインダーによって結び付けられ、複合一体化して存在するため、表面改質層は緻密で強固なものとなる。さらには、エッチングによって粗面化されているため、表面積が増し、亜鉛系メッキ層との密着性も強固になり、上記表面改質層中のシリカやケイ酸塩表面の官能基により、層の上に形成される上塗り皮膜との結合も緻密で強固なものとなるため、結果として、耐アブレージョン性が著しく向上する。更に、後述するように、上記の表面処理剤中に有機樹脂の水性液を添加すると、表面改質層中の欠陥が埋められることにより、層が一層緻密化するため、耐食性が向上する。
本発明では、このような耐アブレージョン性に優れた表面改質層を形成するため、表面処理剤に含まれるSi、P、およびAlの濃度を所定範囲に制御している。
表面処理剤中のSi濃度は、0.5%以上5.0%の範囲内である。Siが0.5%未満では、一回の処理で満足のいく厚さの表面改質層を形成するのが困難となり、主成分であるシリカ及び/又はケイ酸塩の含量が不足し、所望の耐アブレージョン性が得られ難くなる。一方、Si濃度が5.0%を超えると、表面処理剤中に占めるシリカ及び/又はケイ酸塩の含有比率が高くなり、表面改質層中の当該含量が過剰になって層が脆くなり、耐アブレージョン性が低下傾向を示すようになる。また、表面処理剤中の気液界面等に固形物が生成し易くなり、押し疵やブツ等の製品不良が発生し易くなる傾向が生じてくる。表面処理剤中のSi濃度は、1.0%以上4.0%以下であることが好ましく、2.0%以上3.0%以下であることがより好ましい。表面処理剤中のSi濃度は、主として、コロイダルシリカ等として配合されるSiO、珪酸塩等の配合量によって調整することができる。
ここで、表面処理剤にシリカ源として配合することのできるコロイダルシリカとしては、例えば、「スノーテックス」シリーズ(日産化学工業社製のコロイダルシリカ)の「O」、「OS」、「OL」、「OXS」、「OUP」等が好ましく、珪酸塩としては、NaSiOやNaSiO等が好ましい。
表面処理剤中のP濃度は、0.15%以上4.5%以下の範囲内である。Pは、エッチング剤として添加されるりん酸系アルミニウム塩の成分であり、エッチング作用と、緻密な表面改質層の形成とを支配する重要な元素である。P濃度が0.15%未満の場合、エッチング作用が不足すると共に、バインダー効果も不足するため、シリカ微粒子あるいはケイ酸塩の沈着促進効果も低下し、所望とする表面改質層が得られない。そのため、表面改質層と亜鉛系メッキ層との密着性、表面改質層自体の強度、表面改質層と上塗り皮膜との密着性が不充分となり、耐アブレージョン性も低下してしまう。ただし、P濃度が4.5%を超えると、亜鉛系メッキ層表面のエッチング作用が過剰になり、製品の外観不良を招くほか、表面処理剤の入ったタンク等が腐食し易くなるといった実操業上の問題も生じてくる。P濃度は、0.5%以上4.0%以下であることが好ましく、1.0%以上3.0%以下であることがより好ましい。
表面処理剤中のAl濃度は、0.05%以上1.5%以下の範囲内である。Alは、エッチング剤として添加されるりん酸系アルミニウム塩に由来する元素であり、シリカあるいはケイ酸塩の沈着を促進して表面改質層の密着性を高め、結果的に、耐アブレージョン性作用の向上に寄与する重要な元素である。Al濃度が0.05%未満の場合、このような作用を有効に発揮させることができない。ただし、Al濃度が1.5%を超えると、表面処理剤中の気液界面等に固形物が生成し易くなり、押し疵やブツなどの製品不良を生じ易くなる。Al濃度は、0.15%以上1.2%以下であることが好ましく、0.3%以上0.9%以下であることがより好ましい。
上記表面処理剤には、耐食性などの向上を目的として、前述した有機樹脂を添加してもよい。表面処理剤中に含まれる有機樹脂の添加濃度は、有機樹脂の固形分で0.005%〜0.5%であることが好ましい。有機樹脂の添加濃度が0.005%未満の場合、有機樹脂の添加による耐食性向上作用がほとんど発揮されない。一方、有機樹脂の添加濃度が0.5%を超えると、耐アブレージョン性が低下する恐れがある。有機樹脂の添加濃度は、0.01%以上0.3%以下であることがより好ましく、0.02%以上0.2%以下であることが更に好ましい。
具体的には、本発明に用いられる表面処理剤は、コロイダルシリカと、りん酸や重りん酸等のアルミニウム塩と、有機樹脂(好ましくはポリ(メタ)アクリル酸またはその塩)とを含む酸性水性液であることが好ましい。このような表面処理剤を使用すれば、亜鉛系メッキ層の表面に難溶性のりん酸アルミニウム系結晶を含む、P、Al、酸素がバインダーとなった緻密な反応層が形成されると共に、当該反応層にシリカが沈着し、更に、有機樹脂も取り込まれることで、エッチングによって粗面化した亜鉛との間に緻密で強固な表面改質層が形成され、耐アブレージョン性および耐食性が著しく高められる。
より具体的には、表面処理剤100%中、各成分の固形分は、りん酸(または重りん酸)Al;0.1〜25%(より好ましくは3.0〜11%)、コロイダルシリカ;1.0〜11%(より好ましくは2.0〜7.0%)が好ましく、有機樹脂を0.02〜0.3%含み、pHが1.5〜4.0の範囲の酸性水性液であることが好ましい。これにより、表面改質層の組成を前述した範囲内に調整することができる。
亜鉛系メッキ鋼板を上記表面処理剤で処理する方法としては、浸漬法、スプレー塗工法(スプレーコーティング法)、ロールコーティング法等公知のコーティング手段を採用することができる。
次に、上記のようにして形成した表面処理剤含有層を、水洗することなしに、7℃/秒以下の平均昇温速度で15秒以上焼き付けることによって表面改質層を形成する(工程(c))。
本発明では、上記の表面処理剤含有層を水洗せずに、焼き付けを行うことが重要である。後記する実施例に示すように、上記の表面処理剤含有層を水洗すると、表面改質層中のSi、P,Alの各含有量が少なくなり、所定のX線回折強度を有するりん酸アルミニウム系結晶が得られない。そのため、耐アブレージョン性が低下してしまう。
次いで、7℃/秒以下の平均昇温速度で15秒以上焼き付ける。後記する実施例に示すように、平均昇温速度が7℃/秒を超えると、表面改質層に、所望とするりん酸アルミニウム系結晶が得られず、非晶質層が主体となるため、耐アブレージョン性が低下する。平均昇温速度の下限は、所望とするりん酸アルミニウム系結晶を形成するという観点からは特に限定されないが、遅すぎると、表面改質層の乾燥に長時間を要してしまい、生産性が著しく低下する。実操業レベルを考慮すると、平均昇温速度は、0.5℃/秒以上6℃/秒以下であることが好ましく、1℃/秒以上4℃/秒以下であることがより好ましい。
焼き付け時間は、15秒以上とする。後記する実施例に示すように、焼き付け時間が15秒未満では、表面改質層に、所望とするりん酸アルミニウム系結晶が得られず、非晶質層が主体となるため、耐アブレージョン性が低下する。また、焼き付け時間が短くなると、有機樹脂添加による耐食性向上作用も低下傾向を示す。焼き付け時間が長いほど、所望の結晶が得られ、耐アブレージョン性も一層向上するが、生産性などが低下する。実操業レベルを考慮すると、焼き付け時間は、おおむね、20秒以上120秒以下であることが好ましく、25秒以上90秒以下であることがより好ましい。
上記の焼き付けは、後記する実施例に示すように、コンベア式の熱風炉で行ってもよいし、あるいは、赤外線加熱炉、電磁誘導加熱炉、電気抵抗加熱炉などで行ってもよい。平均昇温速度は、例えば、炉内の雰囲気温度を100〜250℃の範囲内に制御したり、風速を5〜25m/秒の範囲内に制御したりすることによって調整することができる。また、焼き付け時間は、例えば、コンベア速度を20〜100m/分の範囲で制御したり、焼付け炉長を20〜50mの範囲内に制御したりすることによって調整することができる。
表面改質層の総付着量は、50〜500mg/m(より好ましくは、100〜400mg/m)の範囲内に制御することが好ましく、これにより、耐アブレージョン性が高められる。前述した表面改質層の付着量の好適範囲を厚さに換算すると、比重を2とした場合、0.025〜0.25μmである。
次に、上記の表面改質層の上に、直接、または他の層を介して、前述した有機系の上塗り皮膜(樹脂皮膜)を積層する。
上塗り皮膜の形成方法は、特に限定されず、例えば、前述したエマルジョン組成物を、公知の塗布方法、すなわち、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等を用いて、金属板表面の片面または両面に塗布して加熱乾燥すればよい。加熱乾燥温度は、用いる架橋剤とカルボキシル基の架橋反応が進行する温度で行うことが好ましい。また、潤滑剤として、球形のポリエチレンワックスを用いる場合は、球形を維持しておく方が後の加工工程での加工性が良好となるので、70〜130℃の範囲で乾燥を行うことが望ましい。
上塗り皮膜の付着量(厚さ)は、乾燥後において、0.2〜2.5g/mが好ましい。薄すぎると、金属板への均一塗工が難しく、加工性、耐食性、塗装性等、目的とするバランスのとれた皮膜特性を得ることが困難である。しかし、付着量が2.5g/mを超えると、コンピュータハウジング等に用いる場合のアース性、すなわち導電性が低下するため好ましくない。さらに、プレス加工の際に樹脂皮膜の剥離量が多くなって、金型への剥離皮膜の付着蓄積が起こり、プレス成形に支障を生じるほか、製造コスト的にも無駄である。上塗り皮膜の付着量は、0.4g/m以上2.0g/mで以下であることがより好ましい。
上記の方法により、本発明の表面処理亜鉛系メッキ鋼板が得られる。このようにして製造された表面処理亜鉛系メッキ鋼板は、用途に応じて、適宜、加工工程を施してもよいし、あるいは公知の電着塗装・粉体塗装・シルク印刷(130〜160℃、20〜30分程度焼き付け)などを施してもよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。なお、以下の実施例における「%」および「部」は、特に断らない限り、「質量%」および「質量部」を意味する。
実施例1(No.1〜31)
(原板の用意)
厚さ0.8mmの鋼板の表面に、電気メッキ法により付着量20g/mの亜鉛メッキを施した亜鉛メッキ鋼板(品番;SECC)をアルカリ脱脂してから水洗、乾燥したものを原板として使用した。
(表面改質層の形成)
表1に示す種々の表面処理剤を調製するため、重りん酸アルミニウム水溶液(日本化学工業社製、固形分50%)、コロイダルシリカ(「スノーテックス−O」、日産化学工業社製、固形分20%)、および水を用意し、これらの量を適宜変えて混合した(No.1〜31)。このうち、No.1、3〜7、9、11〜22、24〜28、30〜31について、有機樹脂添加による耐食性向上作用を調べる目的で、表面処理剤中に、有機樹脂として、ポリアクリル酸(和光純薬工業(株)、重量平均分子量(Mw)=25000)を表1に示す範囲で添加した。
このようにして得られた各表面処理剤を用い、以下のようにして表2に示すNo.1〜16の表面改質層(本発明例)を形成した。
まず、上記の原板(脱脂後の亜鉛メッキ鋼板)をロールコート法(No.1〜12、15〜16)、浸漬法(No.13)、またはスプレー法(No.14)によって処理して表面処理剤を含む層(表面処理剤含有層)を形成した後、水洗することなしに、表1に示す種々の条件で焼き付けを行うことにより、亜鉛メッキ層上に表2に示す組成の表面改質層を形成した(No.1〜16)。なお、浸漬法を行う場合は、焼き付けを行う前に、表1に示す表面処理剤中に2秒間浸漬して引き上げた後、余分な溶液をリンガロールで除去することにより、表面処理剤含有層を形成した。また、スプレー法を行う場合は、焼き付けを行う前に、表1に示す表面処理剤をスプレー圧50kPaで2秒間吹き付けた後、余分な溶液をリンガロールで除去することにより、表面処理剤含有層を形成した。
比較のため、以下のようにして表2に示すNo.17〜31の表面改質層(比較例)を形成した。
まず、上記の原板をロールコート法(No.17〜21、23〜27、30〜31)またはスプレー法(No.22、28〜29)によって処理して表面処理剤含有層を形成した後、水洗することなしに(No.17〜27)、あるいは、スプレー圧50kPaで5秒間水洗し(No.28〜31)、表1に示す種々の条件で焼き付けることにより、亜鉛メッキ層上に表面改質層を形成した(No.17〜31)。
上記の焼き付けは、コンベア式の熱風炉で行い、雰囲気温度を150〜450℃の範囲、風速を20〜150m/sの範囲で変えることによって亜鉛系メッキ鋼板の平均昇温速度を表1に示す範囲内に調整した。また、コンベア速度を3〜40m/分の範囲で変えることによって焼き付け時間(在炉時間)を表1に示す範囲内に調整した。
(上塗り皮膜の形成)
以下のようにして上塗り皮膜を形成した。本実施例では、No.1〜31のすべての亜鉛系メッキ鋼板に、同じ上塗り皮膜を形成している。
まず、オートクレーブに、水626部と、エチレン−アクリル酸共重合体(アクリル酸29%、メルトインデックス(MI)300)160部とを加え、エチレン−アクリル酸共重合体中のカルボキシル基1モルに対し、40モル%のトリエチルアミンと、15モル%のNaOHとを添加した後、150℃、500kPaの雰囲気下で高速拡散を行い、エチレン−アクリル酸共重合体のエマルジョンを得た。
次に、上記のエマルジョンに、架橋剤として、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン(「ケミタイトDZ−22E」、「ケミタイト」は登録商標、日本触媒社製)を固形分で5%(エマルジョン組成物の固形分を100%としたときの値、以下同じ)、グリシジル基含有化合物(「エピクロンCR5L」(CR5Lと略す)、「エピクロン」は登録商標、大日本インキ化学工業社製)を固形分で5%、粒子径10〜20nmのシリカ粒子(「スノーテックス40」、日産化学工業社製)を固形分で30%、軟化点120℃、平均粒径1μmの球形ポリエチレンワックスを固形分で5%となるように配合して撹拌し、エマルジョン組成物を調製した。
次いで、前述した亜鉛メッキ鋼板(上塗り皮膜なし)の表面改質層の上に、上記エマルジョン組成物をバーコートで塗布し、板温90℃で1分加熱乾燥し、付着量1g/mの上塗り皮膜を形成した。
(評価)
このようにして得られた各供試材(No.1〜31)について、表面処理剤中のSi、PおよびAlの濃度(%)、表面改質層中のSi、PおよびAlの量(mg/m)、耐アブレージョン性、および耐食性を以下のようにして評価した。また、表面改質層中のりん酸アルミニウム系結晶(具体的には、りん酸アルミニウムAlPOおよび塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HO)のX線回折強度を、前述した方法に基づいて測定した。
(1)表面処理剤中のSi、PおよびAlの濃度
これらの各濃度(%)は、ICP発光分析装置(セイコーアドバンス社製)を用いて測定した。
(2)表面改質層中のSi、PおよびAlの量
これらの各量(mg/m)は、蛍光X線装置(商品名「MIF−2100」;島津製作所製)によって測定した。
(3)耐アブレージョン性
各供試材の表面に、ボール紙を介して50g/cmの荷重を加え、振動発生装置(アイデックス(株)製、BF50UC)を用いてJIS Z 0232(包装貨物−振動試験方法)に準拠した振動(600回/分の楕円摺動)を3分間加えて摺動部(評価面)にアブレージョンを発生させた。振動後の評価面を目視で観察し、下記基準で評価した。評価基準が○のものを合格(耐アブレージョン性に優れる)と判定した。
○:アブレージョンの発生無し〜軽微
△:アブレージョンが発生し、上塗り皮膜の黒化が明らかに見られた。
×:金属光沢あり(亜鉛系メッキ表面のダメージが認められた)
(4)耐食性
供試材の裏面(上塗り皮膜を施していない方の面)にシールを施し、JIS Z 2371に記載の塩水噴霧試験を行い、試験240時間後の白錆発生面積率を下記基準で評価した。
◎:5%未満
○:5%以上20%未満
△:20%以上50%未満
×:50%超
これらの結果を表1〜2に併記する。
Figure 2007126699
Figure 2007126699
表2中、No.1〜16は、本発明の要件を満足する本発明例であり、表面改質層中のSi、P、Alが本発明の範囲を満足し、且つ、所定のピーク強度を有するりん酸アルミニウム系結晶が得られているため、耐アブレージョン性に極めて優れている。更に、表面処理剤中に有機樹脂を添加したNo.1、3〜6、9、11、13〜16は、いずれも、耐食性も高められている。なお、No.12も、有機樹脂を添加した例であるが、上記の例に比べ、耐食性向上効果が認められなかった。No.12では、表面改質層中に含まれるSi、P、Alの含有量が、いずれも、本発明で規定する範囲の上限値に達しているため、表面改質層の内部応力によってクラックが入り易いなどの理由により、有機樹脂添加による耐食性向上作用が有効に発揮されなかったためと推察される。
これに対し、本発明の要件を満足しないNo.17〜31の比較例は、以下の不具合を有している。
No.17〜18は、表面処理剤中のSi、P、Al濃度の一部または全部が本発明の範囲を超えているため、表面改質層中のSi、P、Al付着量の一部または全部が本発明の範囲を超えてしまい、耐アブレージョン性がやや低下し、表面処理剤中に所定量の有機樹脂を添加したにもかかわらず、耐食性も低下した。
No.19〜21は、焼き付け条件が本発明の範囲を外れているため、所望のりん酸アルミニウム系結晶が得られなった例であり、耐アブレージョン性が低下した。なお、No.19および21は、表面処理剤中に所定量の有機樹脂を添加したにもかかわらず、改質層の焼き付け時間が不足したために耐食性が低下した。
No.22〜27は、表面処理剤中のP、Al,Siの濃度が本発明の範囲を外れているため、所望のりん酸アルミニウム系結晶が得られなった例であり、耐アブレージョン性が低下した。このうち、No.23〜27は、樹脂の添加量のみを変えた例であり、樹脂の添加量が本発明の好ましい範囲を満足するNo.24〜26は、耐食性が向上した。
No.28〜31は、いずれも、表面処理剤含有層を形成した後、水洗を行ってから、本発明の要件を満足する焼き付けを行った例である。なお、No.28〜29では、表面処理剤中のP、Alの各濃度も、本発明の範囲を外れている。表2に示すように、これらは、いずれも、表面改質層中のSi、P、Al付着量の一部または全部が本発明の範囲を下回ってしまい、所望のりん酸アルミニウム系結晶が得られなったため、耐アブレージョン性が低下した。
参考のため、図1および図2に、No.11(本発明例)およびNo.30(比較例)のX線回折強度を測定した結果を、それぞれ、示す。これらの図より、本発明例では、所定の強度を有するりん酸アルミニウム系の結晶が得られている(図1)のに対し、比較例では、上記りん酸アルミニウム系の結晶は認められなかった(図2)。
実施例のNo.11(本発明例)におけるX線回折強度を測定した結果を示すグラフである。 実施例のNo.30(比較例)におけるX線回折強度を測定した結果を示すグラフである。

Claims (4)

  1. 亜鉛系メッキ鋼板における亜鉛系メッキ層の上に、少なくとも、表面改質層および上塗り皮膜が形成されている表面処理亜鉛系メッキ鋼板であって、
    前記表面改質層は、Si換算で20〜125mg/mの二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩、15〜100mg/mのP、および3〜30mg/mのAlを含有するとともに、りん酸アルミニウムAlPO及び/又は塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOの結晶を含んでおり、
    前記表面改質層をX線回折したとき、前記りん酸アルミニウムAlPOまたは前記塩基性りん酸アルミニウムAl(PO(OH)・9HOに由来する回折強度が200以上であることを特徴とする耐食性および耐アブレージョン性に優れた表面処理亜鉛系メッキ鋼板。
  2. 前記表面改質層は、有機樹脂を更に含有する請求項1に記載の表面処理亜鉛系メッキ鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の表面処理亜鉛系メッキ鋼板を製造する方法であって、
    亜鉛系メッキ鋼板を用意する工程(a)と、
    前記亜鉛系メッキ鋼板の表面に、下記組成を満足するpH4以下の二酸化ケイ素(SiO)及び/又はケイ酸塩を含有する表面処理剤を用いて前記表面処理剤を含む層を形成する工程(b)と、
    Si:0.5〜5.0%(質量%の意味、以下、同じ)、
    P :0.15〜4.5%、
    Al:0.05〜1.5%
    前記表面処理剤を含む層を、水洗することなしに、7℃/秒以下の平均昇温速度で15秒以上焼き付けることによって表面改質層を形成する工程(c)と、
    を包含する表面処理亜鉛系メッキ鋼板の製造方法。
  4. 前記工程(b)において、前記表面処理剤は、0.005〜0.5%の範囲で有機樹脂を更に含有する請求項3に記載の表面処理亜鉛系メッキ鋼板の製造方法。
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