JP2007126515A - 孔版印刷用水性インキ - Google Patents

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Abstract

【課題】保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性のいずれにも優れる孔版印刷用水性インキの提供。
【解決手段】不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー、塩基、及びキレート剤を含み、前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーが、アクリル酸誘導体樹脂の少なくとも1種であり、かつ、前記キレート剤が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸から選択される少なくともいずれかであることを特徴とする孔版印刷用水性インキである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性に優れた孔版用水性インキに関する。
従来の孔版印刷において使用されているインキは、機械とのマッチング、画像品質などの点から、W/Oエマルションの型が採用されており、環境への配慮から、油相中のオイルとして大豆油他の植物油が使用されてきているが、近年、更なる環境安全性の観点から水性のインキが求められている。
しかし、W/Oエマルション型インキと比較して、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性に劣ることが問題となっている。
孔版印刷機のインキローラ上に放置されている状態でインキは保形性(降伏値)を維持する必要があるが、前記保存安定性に劣ると、降伏値が維持できずにインキローラ脇側に漏出してしまい、ローラ脇の回転機構部分を汚濁したり、ドラム版胴脇から染み出て画像の非画像部分の汚れの原因となることがある。また、パック等の容器内にインキを保存した状態においてもある程度の降伏値を維持する必要があるが、これを維持できずに、パック口から垂れて床や手に付着して汚してしまうという問題がある。
前記孔版印刷機上での安定性に劣ると、インキローラ上に放置されているインキ塊の水分が蒸発して塊量が少なくなり、保存後の印刷において画像復帰が遅くなるという問題がある。
前記耐水性に劣ると、画像形成後に、水や水性ペンとの接触により画像が滲んでしまうという問題がある。
一方、孔版印刷用水性インキとしては、アクリル酸誘導体樹脂等により増粘されたインキ(特許文献1参照)、水とβ−チオジグリコールとトリエチレングリコールとを含み、かつ、前記水の含有量が50質量%以上であるインキ(特許文献2参照)、不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーとトリエチレングリコールとを含むインキ(特許文献3参照)、トリエチレングリコール及びβ−チオジグリコールの少なくともいずれかと、ジエチレングリコールと、不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーとを含むインキ(特許文献4参照)、不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーの一価金属塩又はアミン塩と、アルカリ可溶性樹脂のアンモニウム塩とを含むインキ(特許文献5参照)、平均分子量が190〜500の範囲にあるポリエチレングリコール、平均分子量が200〜800の範囲にあるポリプロピレングリコール、アセチン等から選択される少なくとも1種の水溶性有機溶剤を含むインキ(特許文献6参照)、などが提案されている。
しかし、上記提案においても、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性のいずれにも優れる旨は言及されておらず、これらいずれにも優れる孔版印刷用水性インキの開発が望まれているのが現状である。
特開2001−302955号公報 特許第3639287号公報 特許第3639288号公報 特許第3639289号公報 特許第3639290号公報 特許第3673822号公報
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性のいずれにも優れる孔版印刷用水性インキを提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー、塩基、及びキレート剤を含み、前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーが、アクリル酸誘導体樹脂の少なくとも1種であり、かつ、前記キレート剤が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸から選択される少なくともいずれかであることを特徴とする孔版印刷用水性インキである。
前記<1>に記載の孔版印刷用水性インキでは、所定のキレート剤を含むことから、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性のいずれもを向上させることができる。特に、保存安定性を大幅に向上させることができる。
不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー及び塩基を含む孔版印刷用水性インキがインキローラ上での放置、あるいはパック内における保存により、経時で低粘度になる要因は以下が考えられる。
すなわち、前記水性インキの増粘は、塩基との中和により不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーがイオン化し、ポリマー主鎖にそって負電荷を生じて、コイル状に緩んだ状態の分子が負電荷同士の反発により真っ直ぐに伸びた状態となり増粘状態が得られている。しかし、増粘状態のインキは放置や保存によって、インキ中の塩類のカチオン成分が樹脂を架橋乃至沈殿させることにより低粘度となることが考えられる。
そこで、前記孔版印刷用水性インキに、上記所定のキレ−ト剤を加えると、インキ中の塩類のカチオン成分を封鎖し、伸直状態の不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーへの影響が小さくなることが考えられ、その結果、増粘状態を保持できると考えられる。
<2> 保湿剤を含み、該保湿剤が、グリセリン、キシリトール、キシリット、d−ソルビトール、d−ソルビット、乳酸、及び尿素から選択される少なくともいずれかを含む前記<1>に記載の孔版印刷用水性インキである。
前記<2>に記載の孔版印刷用水性インキでは、グリセリン、キシリトール、キシリット、d−ソルビトール、d−ソルビット、乳酸、及び尿素から選択される少なくともいずれかを含むため、インキローラ上で該水性インキが放置されても蒸発する水分を抑制することで、インキローラ上のインキ塊量を維持し、放置後の印刷においても画像復帰枚数の遅延を大幅に防止できる。
<3> ポリビニルピロリドンの含有量が、固形分でインキ全量に対して0.5〜6.0質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の孔版印刷用水性インキである。
前記<3>に記載の孔版印刷用水性インキでは、ポリビニルピロリドンの含有量を、固形分でインキ全量に対して0.5〜6.0質量%としたため、耐水性を大幅に改善できる。これは、ポリビニルピロリドンの造膜性能により、画像上における耐水性を付与しているものと考えられる。また、ポリビニルピロリドンが顔料分散剤、あるいはビヒクルとして機能することで印刷紙中へのインキ浸透性が向上していることも耐水性に寄与していると考えられる。
<4> キレート剤の含有量が、孔版印刷用水性インキ全量に対して0.003〜0.01質量%である前記<1>から<3>のいずれかに記載の孔版印刷用水性インキである。
該<4>に記載の孔版印刷用水性インキでは、キレート剤の含有量を孔版印刷用水性インキ全量に対して0.003〜0.01質量%としたため、更なる保存安定性の向上を図ることができる。
本発明によれば、従来における問題を解決することができ、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性のいずれにも優れる孔版印刷用水性インキを提供することができる。
(孔版印刷用水性インキ)
本発明の孔版印刷用水性インキは、不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー、塩基、及び、インキ全量に対して0.001〜0.01質量%のキレート剤を含んでなり、必要に応じて、保湿剤、ポリビニルピロリドン、及びその他の成分を含有してなる。
−不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー−
前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーは、アクリル酸誘導体樹脂の少なくとも1種である。
前記アクリル酸誘導体樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸トリエタノールアミン、などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーの孔版印刷用水性インキに対する含有量は、アクリル酸誘導体の種類や分子量に応じて、インキ粘度を印刷機とのマッチングに最適となるように適宜選択することができるが、孔版印刷用水性インキ全量に対して0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜2.0質量%であることがより好ましい。前記含有量が0.05質量%未満であると、所望のインキ粘度を得られないことがあり、10質量%を超えてもインキにそれ以上の増粘は見られず、コスト高になることがある。
前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーのpHは、インキの増粘の観点から、5〜10に調整するのが好ましく、pHを維持するために緩衝作用を持つ物質を添加してもよい。
−塩基−
前記塩基は、前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーを中和し、本発明の孔版印刷用水性インキを増粘するために用いられる。
前記塩基としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム等の無機塩基、低分子量アミン、アルカノールアミン、トリエタノールアミン、低濃度アンモニア、などが挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の孔版印刷用水性インキは、前記塩基により中和を行い、pH5〜10に調整するのが好ましい。
前記塩基の含有量も、インキ粘度を印刷機とのマッチングに最適となるように適宜選択することができるが、孔版印刷用水性インキ全量に対して0.01〜3.0質量%が好ましく、0.1〜1.5質量%がより好ましい。前記含有量が0.01質量%未満であると、所望のインキ粘度を得られないことがあり、3.0質量%を超えて投与してもインキにそれ以上の増粘は見られず、コスト高になることがある。
−キレート剤−
前記キレ−ト剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸、メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸から選択される少なくともいずれかである。これらの中でも、更なる保存安定性の向上を図る観点から、メチルグリシン二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸が好ましい。
前記キレート剤の含有量は、特に制限はないが、例えば、孔版印刷用インキ全量に対して0.001〜0.01質量%が好ましく、更なる保存安定性の向上を図る観点から、0.003〜0.01質量%がより好ましい。前記含有量が0.001%未満であると、インキ粘度保持に対して効果がないことがあり、0.01質量%を超えても、それ以上の効果はなく、コスト高になることがある。
−保湿剤−
本発明の孔版印刷用水性インキには、該インキの機上での安定性を向上させ、保存後の印刷において画像復帰をより早める観点から、保湿剤を含むことが好ましい。
前記保湿剤としては、例えば、グリセリン、キシリトール、キシリット、d−ソルビトール、d−ソルビット、乳酸、及び尿素から選択される少なくともいずれかが挙げられる。これらの中でも、更なる機上での安定性の向上を図る観点から、グリセリン、尿素が好ましい。
前記保湿剤の含有量は、孔版印刷用水性インキ全量に対して3.0〜30質量%が好ましく、5.0〜20質量%がより好ましい。前記含有量が3.0質量%未満であると、保湿剤としての機能を得られないことがあり、30質量%を超えてもそれ以上の効果はなく、コスト高になることがある。
−ポリビニルピロリドン−
本発明の孔版印刷用水性インキには、耐水性を更に向上させる観点から、ポリビニルピロリドンを含むことが好ましい。
前記ポリビニルピロリドンのK値は、特に制限はないが、0超30以下が好ましい。
ここで、前記K値とは、ポリビニルピロリドンの分子量の目安となる数値であり、粘度測定値からFikentscherの式により求めることができる。前記ポリビニルピロリドンのK値が30より高くなると、ポリビニルピロリドンを添加するインキ粘度が高くなりすぎ、インキパックからのインキの吸引や印刷時の紙への浸透を阻害することがある。
前記ポリビニルピロリドンの含有量は、特に制限はないが、固形分で孔版印刷用水性インキ全量に対して0.5〜6.0質量%であることが好ましい。前記含有量が0.5質量%未満であると、画像における耐水性に対して効果がないことがある。前記含有量が6.0質量%を超えても、それ以上の効果はなく、コスト高になることがあり、ポリビニルピロリドンの造膜性によりスクリ-ン目詰まりが発生することもある。
−その他の成分−
本発明の孔版印刷用水性インキは、前記インキの諸特性を妨害しない範囲で、その他の成分として、例えば、着色剤、分散剤、水、不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー及びポリビニルピロリドン以外の水溶性高分子(以下、単に「水溶性高分子」と称することがある)、水中油型樹脂エマルション、防腐剤及び防かび剤、水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤、消泡剤、有機溶剤、などを含んでいてもよい。
−−着色剤−−
前記着色剤としては、特に制限はなく、各種色調の公知の顔料、分散染料などから目的に応じて選択することができ、インキの調色のために、前記油相又は水相に適宜添加することができる。前記顔料としては、例えば、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類;アルミニウム粉、ブロンズ粉などの金属粉;弁柄、黄鉛、群青、酸化クロム、などの無機顔料;不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料などのアゾ系顔料;無金属フタロシアニン顔料、銅フタロシアニン顔料などのフタロシアニン系顔料;アントラキノン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、イソインドリン系色素、ジオキサンジン系色素、スレン系色素、ペリレン系色素、ペリノン系色素、チオインジゴ系色素、キノフタロン系色素、金属錯体などの縮合多環系顔料;酸性又は塩基性染料のレーキなどの有機顔料;ジアゾ染料、アントラキノン系染料などの油溶性染料;蛍光顔料、などが挙げられ、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記着色剤の含有量は、特に制限はないが、孔版印刷用水性インキ全量に対して2.0〜20質量%が好ましく、3.0〜15質量%がより好ましい。前記含有量が2.0質量%未満であると、印刷物の濃度が不足することがあり、20質量%を超えても、印刷濃度が上がらず、コスト高となることがある。
前記着色剤のうち、不溶性着色剤の分産後の平均粒径は、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜1.0μmがより好ましい。
−分散剤−
前記分散剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アニオン系高分子化合物、高分子アルキルアミン系高分子化合物、アルミニウムキレート化合物、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリカルボン酸エステル型高分子化合物、脂肪族系多価カルボン酸、高分子ポリエステルのアミン塩類、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩類、長鎖ポリアミノアミドと高分子酸ポリエステルの塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩類、α-オレフィンスルホン酸塩類、ジオクチルスルホコハク酸塩類、及びアルキド樹脂等、着色剤に対する分散能を有する樹脂などを使用することができる。
この他にも、ポリアクリル酸の部分アルキルエステル、ポリアルキレンポリアミン、脂肪族多価カルボン酸、ポリエーテル、エステル型アニオン界面活性剤、高分子量ポリカルボン酸の長鎖アミン塩、ポリアミド系化合物、燐酸エステル系界面活性剤、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジオクチルスルホコハク酸塩、ポリエチレンイミン、アルキロールアミン塩、などが挙げられ、インキの保存安定性を阻害しない範囲であればイオン性界面活性剤、両性界面活性剤なども使用することができる。
これらの分散剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記分散剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記着色剤の総質量と同量以下が好ましく、前記着色剤の総質量の2〜70質量%がより好ましい。
−−水−−
前記水としては、清浄であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水道水、イオン交換水、蒸留水、などを使用することができる。
−−水溶性高分子−−
前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー及びポリビニルピロリドン以外の水溶性高分子化合物は、保湿や増粘のために添加され、例えば、天然高分子化合物、半合成高分子化合物、合成高分子化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記天然高分子化合物としては、例えば、デンプン、マンナン、アルギン酸ソーダ、ガラクタン、トラガントガム、アラビアガム、プルラン、デキストラン、キサンタンガム、ニカワ、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、などが挙げられる。
前記半合成高分子化合物としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルデンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン、などが挙げられる。
前記合成高分子化合物としては、例えば、アクリル酸樹脂およびポリアクリル酸ナトリウムなどの中和物、ポリビニルイミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリN-アクリロイルピロリジンやポリN−イソプロピルアクリルアミドなどのポリN−アルキル置換アクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルメチルエーテル、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体及びこれらをアルキル基で部分的に疎水した高分子、などが挙げられる。また、アクリルアミド系ポリマーおよびアクリル系のポリマーに関しては、置換基を部分的にアルキル基で疎水化した共重合タイプのポリマーを使用してもよい。また、ポリエチレンとポリプロピレン又はポリブチレンのブロックコポリマーを用いることもできる。
これらの高分子を分散剤として使用する場合は1g/dLの水溶液の表面張力が65mN/m以下を示すような界面活性能を有する水溶性の合成高分子などを用いるのが好ましい。また、これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記水溶性高分子化合物の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキに含まれる水の質量の25質量%以下が好ましく、0.2〜15質量%がより好ましい。
−−水中油型樹脂エマルション−−
前記水中油型樹脂エマルションとしては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、合成高分子化合物でも天然高分子化合物でもよい。
前記合成高分子化合物としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ウレタン樹脂、などが挙げられる。
前記天然高分子化合物としては、孔版印刷用水性インキに普通に用いられる油相に添加できる高分子化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記水中油型樹脂エマルションの分散方法についても特に制限はなく、分散剤、保護コロイド、界面活性剤を添加していてもよく、またソープフリー乳化重合によって合成したものでもよい。
前記水中油型樹脂エマルションの最低造膜温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、40℃以下が好ましい。
前記水中油型樹脂エマルションの添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキに含まれる水の質量の30質量%以下が好ましく、0.2〜15重量%がより好ましい。
−−防腐剤及び防かび剤−−
前記防腐剤及び防かび剤は、孔版印刷用水性インキ内で細菌やかびが繁殖するのを防ぐために添加され、孔版印刷用水性インキを長期間保存する場合に有効である。
前記防腐剤及び防かび剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、サリチル酸、フェノール類、p−オキシ安息香酸メチル、p−オキシ安息香酸エチル等の芳香族ヒドロキシ化合物、及びその塩素化合物、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、リン酸チタニア、クロロブタノ−ル、キトサン誘導体、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記防腐剤及び防かび剤の添加量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中に含まれる水の質量の3質量%以下が好ましく、0.05〜1.0質量%がより好ましい。
−−水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤−−
前記水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、低級飽和一価アルコール、グリコール、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらは、蒸発抑制剤及び凍結防止剤として兼用可能である。
前記低級飽和一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、などが挙げられる。
前記グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、などが挙げられる。
前記水の蒸発抑制剤又は凍結防止剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、インキ中の水の質量の30質量%以下が好ましく、6〜25質量%がより好ましい。
−−消泡剤−−
前記消泡剤は、前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー等を水中で攪拌する際の起泡防止のために添加される。
前記消泡剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、高級脂肪酸アミド、ポリエチレングリコール、脂肪酸低級アルコールエステル、ポリプロピレングリコール、ジメチルポリシロキサン、などが挙げられる。
前記消泡剤の添加量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、水の質量の0.1〜1.5質量%が好ましく、0.4〜1.0質量%がより好ましい。前記消泡剤のキャリアーとして、エチレングリコール、低級アルコール等を適宜使用することができる。
−−有機溶剤−−
前記有機溶剤は、着色剤、分散剤、水溶性高分子等の水への溶解、分散を容易にするために添加される。
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、例えば、アルコール類、エステル類、などが挙げられる。
前記アルコール類としては、例えば、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ブチルセロソルブ、などが挙げられる。
−製造方法−
本発明の孔版印刷用水性インキの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができるが、例えば、分散体形成工程、該分散体の希釈工程、増粘工程を経て、前記孔版印刷用水性インキを調製する方法が挙げられる。
前記分散体形成工程では、例えば、着色剤、分散剤、有機溶剤、水等を、ボールミルやビーズミル等の密閉式分散機により分散することにより分散体を形成する。
前記分散体の希釈工程では、例えば、消泡剤、不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー、キレート剤、水等を目視で均一になるまで攪拌し、予め希釈液を調製しておき、該希釈液を、前記分散体形成工程で得られた分散体に、攪拌しながら徐々に加え、目視で均一に混合されるまで攪拌することにより、前記分散体を希釈する。
前記増粘工程では、塩基あるいはその水溶液を、希釈された分散体に加えて、増粘を行い、最終的な製品としての所望の孔版印刷用水性インキを得る。
本発明の孔版印刷用水性インキとしては、ずり速度20sec−1の時の粘度が、3〜40Pa・sが好ましく、10〜30Pa・sがより好ましい。
以上説明したように、本発明の孔版印刷用水性インキは、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性のいずれにも優れるので、例えば、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
−孔版印刷用水性インキの調製−
−−分散体の形成−−
下記成分を混合し、ビーズミルで分散を行い分散体を形成した。
着色剤:ラーベン780(カーボンブラック、コロンビアンカーボン杜製)・・・4.5質量部
分散剤:ポリスタ−OM(アニオン系高分子化合物、日本油脂株式会社)・・・2.0質量部
有機溶剤:n−ブチルアルコール・・・1.0質量部
水:水道水・・・32.5質量部
−−分散体の希釈工程−−
まず、下記成分を混合し、目視で均一になるまで攪拌することにより希釈液とした。
消泡剤:ポリプロピレングリコール・・・0.5質量部
不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー:カーボポール940(ポリアクリル酸樹脂、中外貿易社製)・・・0.5質量部
キレート剤:エチレンジアミン四酢酸・・・0.005質量部
水:水道水・・・57.995質量部
次いで、上記分散体20質量部を攪拌しながら、前記希釈液79質量部を徐々に加えた。
−−増粘工程−−
前記分散体と希釈液とが均一に攪拌されたのを目視により確認した後に、塩基としてのトリエタノールアミン1.0質量部を加え、実施例1の孔版印刷用水性インキを調製した。
(実施例2〜9及び比較例1)
−孔版印刷用水性インキの調製−
実施例1において、分散体及び希釈剤の含有量を表1〜5に示す組成に変えた以外は、実施例1と同様にして、各例の孔版印刷用水性インキを調製した。なお、表中の数値の単位は、特に断りのない限り質量%である。
Figure 2007126515
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〔評価〕
実施例1〜9及び比較例1の孔版印刷用水性インキを用いて、下記の内容による保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性の評価を行った。その結果を表6及び7に示す。
<保存安定性の評価>
前記孔版印刷用水性インキを、60℃にて1ヶ月保存した後の外観について、目視により観察し、以下の3段階評価を行った。
○・・・保存前の状態と変わらず。
△・・・若干の水の分離が見られる。
×・・・水が浸みだし、シャバシャバとした低粘度の状態
<孔版印刷機上での安定性の評価>
前記孔版印刷用水性インキの入ったドラムを、孔版印刷機(リコー社製、JP5500)上にて、常温常湿で3日間放置した後、前記孔版印刷機により印刷を行い、画像が完全に復帰するまでの枚数を数えた。
<耐水性の評価>
製版後、印刷20枚目の画像上を、印刷から1時間後に水性ラインマーカーでなぞり、画像の滲み具合を目視で観察し、以下の4段階で評価した。なお、印刷には、リコー社製、JP5500を使用した。また、前記ラインマーカーには、OPTEX CARE(ZEBRA社製)を使用し、筆圧は約200gで、筆跡下の画像が目視で観察できるように薄い色のものを選択した。
1・・・太字部のみならず細字にも滲みが目立ち、使用不可
2・・・太字部に滲みが目立つが使用可能
3・・・太字部にかすかに滲みが見られる
4・・・滲みが全くない
Figure 2007126515
Figure 2007126515
表6及び7の結果から、所定のキレート剤を含む実施例1〜9の孔版印刷用水性インキは、比較例1の孔版印刷用水性インキに比して、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性のいずれもが優れていることが判った。特に、キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸又はジエチレントリアミン五酢酸を、0.003〜0.01質量%含む、実施例1〜5、8、及び9の孔版印刷機用水性インキでは、保存安定性が、保湿剤を含む、実施例2、及び4〜8の孔版印刷機用水性インキでは、孔版印刷機上での安定性が、ポリビニルピロリドンを含む、実施例3〜9の孔版印刷機用水性インキでは、耐水性が、それぞれ極めて優れていることが判った。
本発明の孔版印刷用水性インキは、保存安定性、孔版印刷機上での安定性、及び耐水性のいずれにも優れるので、例えば、輪転孔版印刷機による孔版印刷に好適に用いられる。

Claims (4)

  1. 不飽和カルボン酸系水溶性ポリマー、塩基、及びキレート剤を含み、前記不飽和カルボン酸系水溶性ポリマーが、アクリル酸誘導体樹脂の少なくとも1種であり、かつ、前記キレート剤が、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、コハク酸、エチレンジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ニトリロ三酢酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸から選択される少なくともいずれかであることを特徴とする孔版印刷用水性インキ。
  2. 保湿剤を含み、該保湿剤が、グリセリン、キシリトール、キシリット、d−ソルビトール、d−ソルビット、乳酸、及び尿素から選択される少なくともいずれかを含む請求項1に記載の孔版印刷用水性インキ。
  3. ポリビニルピロリドンの含有量が、固形分で孔版印刷用水性インキ全量に対して0.5〜6.0質量%である請求項1から2のいずれかに記載の孔版印刷用水性インキ。
  4. キレート剤の含有量が、孔版印刷用水性インキ全量に対して0.003〜0.01質量%である請求項1から3のいずれかに記載の孔版印刷用水性インキ。
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