JP2004123905A - 水性インク - Google Patents

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Abstract

【課題】普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加え、定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れる水性インクを提供する。
【解決手段】本発明の水性インクは色剤Aが3%以上12%以下であり、その色剤の分散に寄与するポリマーBおよび高分子微粒子Cの合計が2%以上10%以下であり、高分子微粒子Cが2%以上であって、且つA+B+Cが8%以上20%以下であり炭素数が6である分岐してもよい1、2−アルカンジオールが1.5〜5%であることを特徴とする。
【選択図】   なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は普通紙、再生紙あるいはコート紙に対して高い印字品質が得られ、且つ保存安定性に優れる水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の分散体は水に分散させる手段として、界面活性剤を用いる方法(例えば、特許文献1参照)、または疎水部と親水部を有する分散ポリマーを用いて分散されていた(例えば、特許文献2参照)。また、着色材の表面を高分子で被覆する方法としては、インクジェットプリンター用インクとして、染料インクを内包したマイクロカプセルを用いる方法(例えば、特許文献3参照)、水に不溶な溶媒に色素を溶解または分散させて界面活性剤を用いて水中で乳化してマイクロカプセル化する方法(例えば、特許文献4参照)、水、水溶性溶媒並びにポリエステルの少なくとも1種に昇華性分散染料を溶解または分散させた内包物をマイクロカプセルとして記録液に使用する方法(例えば、特許文献5参照)、着色された乳化重合粒子と水性材料からなるインキ組成物(例えば、特許文献6参照)、転相乳化反応や酸析法による方法が検討されている(例えば、特許文献7参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平01−301760号公報
【特許文献2】
特公平5−064724号公報
【特許文献3】
特開昭62−95366号公報
【特許文献4】
特開平1−170672号公報
【特許文献5】
特開平5−39447号公報
【特許文献6】
特開平6−313141号公報
【特許文献7】
特開平10−140065号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の分散体は不安定であり、界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が存在すると、吸脱着が起こりやすくなり、その水性インクの保存安定性が劣るという課題がある。通常の水性インクは紙に対するにじみを低減させるため、界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が必要である。これらの物質を用いないインクでは紙に対する浸透性が不十分となり、均一な印字を行なうためには紙種が制限され、印字画像の低下を引き起こしやすくなるという課題があった。
【0005】
さらに、従来の分散体に本発明で用いるような添加剤(アセチレングリコール、アセチレンアルコールおよびシリコン系の界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルまたは1,2−アルキレングリコールまたはこれらの混合物)を用いると長期の保存安定性が得られず、インクの再溶解性が悪いためインクが乾燥してインクジェットヘッドのノズルや筆記具のペン先等で詰まり易くなるという課題を有していた。
【0006】
また、このような分散剤により分散された顔料は分散剤の残存物がインク系中に残り、分散剤が十分に分散に寄与せず顔料から脱離して粘度が高いものになってしまうという課題があった。粘度が高くなると顔料等の色材の添加量が制限され特に普通紙において十分な画質が得られない。
【0007】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、その目的とするところは、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れる水性インクを提供するところにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性インクは色剤Aを3重量%(以下単に%と示すものは重量%を示す)以上12%以下と、該色剤Aの分散に寄与するポリマーBと、高分子微粒子Cと、炭素数が6である分岐してもよい1、2−アルカンジオールを1.5〜5%とを含有し、さらに該Bと該Cとの合計が2%以上10%以下且つ該Cが2%以上、該Aと該Bと該Cとの合計が8%以上20%以下であることを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明による分散体は安定性に優れ、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらにインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れることなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果によるものである。
【0010】
本発明の水性インクは色剤Aが3%以上12%以下であり、該色剤の分散に寄与するポリマーBおよび高分子微粒子Cの合計が2%以上10%以下であり、高分子微粒子Cが2%以上であって、且つA+B+Cが8%以上20%以下であり炭素数が6である分岐してもよい1、2−アルカンジオールが1.5〜5%であることを特徴とする。
【0011】
本発明において色剤とは、いわゆる有色の分子を有する物質であり、着色剤、顔料、および染料を含めたものをいう。そして、この色剤としては有機顔料または無機顔料を好適に用いることができる。
【0012】
例えば、黒色インク用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられるがインクジェット用としては比較的密度が低く水中で沈降しにくいカーボンブラックが好ましい。更にカラーインク用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、93、94、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、128、138、153、180、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、202、206、209、219、C.I.ピグメントバイオレット19、23、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36等が使用できる。
【0013】
水性インク中でもインクジェットに用いる場合これらの顔料としての添加量は、0.5〜30%が好ましく、さらには1.0〜12%が好ましいが、本発明ではPPC用紙のような普通紙において十分な発色を得るために3%以上添加する場合について述べる。従って、3%以上で12%以下が最も好ましい添加量である。3%未満の添加量では、普通紙における印字濃度が確保できなくなり、また12%を超えた添加量では、インクの粘度増加や粘度特性に構造粘性が生じ、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が悪くなる傾向になる。
【0014】
また、顔料の粒経は1μm以下が好ましく、より好ましくは0.01〜0.15μmの粒子からなる顔料を、さらに好ましくは0.05〜0.12μmの粒子からなる顔料が好ましい。
【0015】
分散方法は超音波分散、ナノマイザー、ジェットミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミルなどによる方法などの分散方法を用いることができるが、好ましくはジェットミルやナノマイザー等の非メディア分散の方がコンタミが少なく好ましい。
【0016】
さらに、前述の分散に寄与するポリマーは有機顔料の場合0.5%以上であることが、定着性の観点から好ましい。このポリマーを形成する物質の疎水基は少なくともアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれた1種以上であることが好ましい。そして、前述の親水性官能基を有する物質の親水基が少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、若しくはアミド基またはそれらの塩基であることが好ましい。それら分散ポリマーを形成する物質の具体例として2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリール基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。例えばスチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3または4)−アルキルスチレン、(α,2,3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0017】
また、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とするようにこれらのポリマーを添加しながら作成することもできる。
【0018】
重合開始剤は過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0019】
本発明における、乳化重合では連鎖移動剤を用いることもできる。例えば、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
【0020】
そして、前述の分散体を用いることによって安定性の優れた水性インクとすることができる。また、分岐してもよい1、2−ヘキサンジオールには、1、2−ヘキサンジオール、4−メチル−1、2−ペンタンジオール、3−メチル−1、2−ペンタンジオール、2−メチル−1、2−ペンタンジオール、1−メチル−1、2−ペンタンジオール、3、3−ジメチル−1、2−ブタンジオールがある。
【0021】
本発明においては必須成分として高分子微粒子を添加する場合について述べる。その添加量は0.1%以上10%以下である。より好ましくは1%以上8%以下、さらに好ましくは2%以上6%以下である。0.1%未満では耐擦性の向上の効果が少なく、10%を越えるとインクの粘度が上昇してインクジェット記録用インクとしては使用しにくくなる。しかし、本発明ではこれらの中でも特にその高分子微粒子による定着性や発色性等の特性が発揮できる添加量が2%以上について述べる。
【0022】
高分子微粒子は通常水に分散してエマルジョンを形成する。高分子微粒子を形成する物質として、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびブチルメタクリレートの他に(α、2、3または4)−アルキルスチレン、(α、2、3または4)−アルコキシスチレン、3、4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、8−オクタンジオールおよび1、10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0023】
このような高分子微粒子を形成するために用いる乳化剤としてはラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸カリの他にアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および両性界面活性剤を用いることができ、前述のインクに添加することができる界面活性剤類を用いることができる。重合開始剤は過硫酸カリや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどを用いることができた。重合のための連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1、4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどを用いることができる。
【0024】
本発明では水性インクの例としてインクジェット記録用インクについて応用する例について述べる。本発明のように顔料や高分子微粒子等の固形物の量が比較的多く用いたインクでは、長い時間吐出しないノズルはノズル前面でインクが乾燥して増粘するため、印字が乱れる現象がでやすい。しかし、インクがノズルの前面で吐出しない程度に微動させることによって、インクが攪拌されてインクの吐出を安定的に行なうことができる。これを行なうためには電歪素子によることが制御しやすい。したがって、この機構を用いて本発明になるインクジェット記録用インクを用いることで、インク中の色材濃度を多くすることができ、色材が顔料である場合、エマルジョン等の泡立ちやすい物質を用いても色濃度を高くしてしかも安定的にインクを吐出することが可能となる。
【0025】
顔料Aが3%以上12%以下であり、その顔料の分散に寄与するポリマーBおよび高分子微粒子Cの合計が2%以上10%以下であり、高分子微粒子Cが2%以上であって、A+B+Cの量が8%以上20%以下であって、炭素数が6である分岐してもよい1、2−アルカンジオールの添加量が1.5〜5%であることが好ましい。この条件であることで十分な印字品質、定着性、保存安定性および吐出安定性を確保することができる。
【0026】
A+B+Cの量が8%未満において、Aが多く、B+Cが少ないと定着性が不十分となる。またAが少なくB+Cが多いと十分な発色性が得られない。Aが3%以上においてBは有機顔料の場合0.5%以上にならないと分散安定性を得にくい。好ましい添加比としてはA:(B+C)が0.5以上2以下である。0.5未満では定着性が不十分であり、2を超えると十分な発色性が得られない。また、この場合浸透剤として炭素数が6である分岐してもよい1、2−アルカンジオールの添加量が1.5〜5%であることがよい。1.5未満ではにじみが多くなり、印字品質が低下する。5%を超えると、浸透性の向上効果があまりなく、印字品質は頭打ちとなり、粘度増加の弊害が発生しやすくなる。
【0027】
またAとしてピグメントブラック7を用いる場合は5%以上、ピグメントブルー15:3または15:4等のフタロシアニン系顔料の場合は3%以上、その他の顔料の場合は4%以上にすることで、PPC用紙のような普通紙での発色性が確保される。
【0028】
そして、さらに上述の水性インクに少なくとも界面活性剤を添加してなることが好ましい。その界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上であることが好ましい。これらの界面活性剤を用いることで普通紙上のにじみがさらに低減され、専用紙上での線幅を適当な程度に調整することができる。
【0029】
前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上を0.1%以上5%以下含むことが好ましい。インクジェットインクのような低粘度、小ドット径および動的挙動があるものは、動的表面張力を40mN/m以下にする添加量が好ましい。動的表面張力が40mN/mを超えるとにじみが多くなる。5%を超えると印字品質の効果が頭打ちであり、添加しても粘度が上昇して使いづらくなり、ヘッドの先端にインクが付着しやすくなり、印字が乱れやすくなる。0.1%未満では印字品質向上の効果が低くなる。より好ましい添加量は0.15〜2%である。
【0030】
また、前述の水性インクに少なくともグリコールエーテルを添加してなることが好ましい。これらの添加により印字の乾燥性が向上し、連続して印刷しても前の印字部分が次の媒体の裏面に転写されることがなくなるため、特にインクジェット記録にあっては高速印字が可能となる。
【0031】
そして、前述のグリコールエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、且つ炭素数3〜10のアルキルエーテルであることが好ましい。その中でも、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テルおよび/または(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることが好ましい。また、前述のジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルおよび(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる1種以上からなる物質の添加量が0.5%以上30%以下であることが好ましい。0.5%未満では浸透性の効果が低く印字品質が向上しない。30%を超えると粘度上昇により使いづらくなり、それ以上添加しても印字品質向上の効果がない。より好ましくは1%以上15%以下である。
【0032】
そして、少なくとも前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルおよび(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれた1種以上とを同時に添加してなることが好ましい。アセチレングリコールおよび/またはアセチレンアルコール系界面活性剤と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルおよび(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれた1種以上とは同時に用いる方がPPC用紙等の普通紙においてにじみが低減し印字品質が向上する。
【0033】
そして、前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上が0.1%であり、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルおよび(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれた1種以上が1%以上であることが好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上は少量で浸透性を向上させる効果がある。従って、0.5%以下であり、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルおよび(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれた1種以上は1%以上であることで印字品質がさらに向上する。
【0034】
また、前述の色剤の分散に寄与するポリマーが、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とすることが好ましい。本発明で用いるアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルおよび(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれた1種以上からなる物質は通常の分散剤分散に用いる分散剤と吸脱着反応を起こすため、脱離した分散剤がインク中に浮遊し、それが原因で印字が乱れるという現象を生じやすい。しかし、上記のポリマーを用いて好適な分散を行なうことでポリマーが安定に着色剤を包含しているので吸脱着を起こしにくい。
【0035】
さらに、前述の色剤の分散に寄与するポリマーが少なくとも重合性基を有する分散剤と共重合性モノマーとの共重合体で該顔料を包含したものであることが好ましい。ここで、重合性基を有する分散剤とは少なくとも疎水基、親水基および重合性基を有するもので、重合性基はアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などであり、共重合性基も同じくアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基あるいはビニル基などである。インクジェット記録用インクとしては粒径が比較的そろっていた方が目詰まりや吐出の安定性の観点から好ましいので、顔料をポリマーで包含した着色剤は、乳化重合または転相乳化法によって製造されることが好ましい。本発明でよいとするアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれた1種以上からなる物質の添加によっても分散安定性が得られ、長期に安定性が得られるので好ましい。
【0036】
前述の顔料をポリマーで包含した着色剤は、重合性基を有する分散剤で該顔料を分散させた後、該分散剤と共重合可能なモノマーと重合開始剤を用いて水中で乳化重合されたものまたは色剤をポリマーが覆うように水中への転相乳化であることが好ましい。
【0037】
本発明の水性インクは2−ピロリドンをさらに添加してなることが好ましい。2−ピロリドンを添加することで、吐出の安定性が向上する。その好ましい添加量は1%以上15%以下である。1%未満では吐出の安定性向上の効果が低く、15%を超えても吐出の安定性向上は頭打ちであって、粘度増加の弊害がでやすくなる。さらに好ましくは1.5%以上5%以下である。
【0038】
また、本発明の水性インクは水系であり通常の場合は腐敗しやすいので、防腐剤をさらに添加してなることが好ましく、その防腐剤がアルキルイソチアゾロン、クロルアルキルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、ブロモニトロアルコール、オキサゾリジン系化合物およびクロルキシレノールから選ばれた1種以上であることが好ましい。その添加量の適正値は0.01%〜1%である。0.01%未満では防腐効果が低く、1%を超えると色剤の分散安定性が悪くなる傾向になる。より好ましい添加量は0.02%〜0.3%である。本発明の水性インクはまた防錆剤をさらに添加してなることが好ましく、その防錆剤がジシクロヘキシルアンモニウムニトラートおよび/またはベンゾトリアゾールであることが好ましい。その添加量の適正値は0.005%〜0.5%である。0.005%未満では防錆効果が低く、0.5%を超えると色剤の分散安定性が悪くなる傾向になる。より好ましい添加量は0.008%〜0.1%である。
【0039】
さらに、本発明の水性インクはノズル前面でインクが乾燥して詰まることを抑制するため保湿剤をさらに添加してなることが好ましく、さらにその保湿剤がヒドロキシル基を2以上有する物質であることが好ましく、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量400以下のポリエチレングリコール、トリメチロール(炭素数6以下の)アルカン、アルドース、ケトースおよび糖アルコールから選ばれた1種以上であることが好ましい。アルドース、ケトースおよび糖アルコールの例として単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。その添加量の適正値は5%〜50%である。5%未満では保湿効果が低く、50%を超えると保湿剤としての効果は頭打ちであり、粘度が高くなり好ましくない。より好ましい添加量は8%〜25%である。
【0040】
また、本発明の水性インクはキレート剤をさらに添加してなることが好ましく、そのキレート剤がエチレンジアミン4酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸、グリコールエーテルジアミン4酢酸、ニトリロ3酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸およびそれらの塩であることが好ましい。その添加量の適正値は0.005%〜1%である。0.005%未満ではキレート効果が低く、1%を超えるとキレート効果が頭打ちであり、色剤の分散安定性が悪くなる傾向になる。より好ましい添加量は0.01%〜0.3%である。
【0041】
本発明におけるインクジェット記録用インクは、その放置安定性の確保、インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等の目的で溶解助剤、浸透制御剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤および防黴剤等種々の添加剤を添加する場合がある。
【0042】
以下、それらを例示する。
【0043】
インクジェット等のノズル面で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類を添加することが好ましく、その例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどがある。
【0044】
その他に水と相溶性を有し、インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類やインク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえばPPC用紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルの目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0045】
また、本発明になるインクにはさらに紙や特殊紙等の媒体への浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤は本実施例に示すインク系との相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものがよい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などがあげられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0046】
また、pH調整剤、溶解助剤あるいは酸化防止剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸(水素)カリウム、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などがある。また、市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。その例としてはチバガイギーのTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物などがある。
【0047】
さらに、粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどがある。
【0048】
次にインクジェット記録用インクの場合を例に具体的な実施の形態について説明する。
【0049】
<顔料分散体の製造>
まず、分散体1はカーボンブラックであるモナーク880(キャボット製)を用いる。攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン20部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させる。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成する。
【0050】
上記分散ポリマー溶液40部とナノマイザー(吉田機械工業製)で1時間粉砕処理したカーボンブラックであるモナーク880(キャボット社製)30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン30部を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌する。その後、イオン交換水を300部添加して、さらに1時間攪拌する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整してから0.3μmのメンブレンフィルターでろ過して固形分(分散ポリマーとカーボンブラック)が20%の分散体1とする。
【0051】
上記と同様な手法で分散体2〜4を得る。分散体2はピグメントブルー15:4(クラリアント製)を用いる。分散体3はピグメントレッド122(クラリアント製)を用いる。分散体4はピグメントイエロー180(クラリアント製)を用いる。
【0052】
<高分子微粒子の製造>
反応容器に滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、攪拌機を備え、イオン交換水100部を入れ、攪拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過流酸カリを0.2部を添加しておく。イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウムを0.05部、スチレン5部、テトラヒドロフルフリルアクリレート6部、ブチルメタクリレート5部およびt−ドデシルメルカプタン0.02を入れたモノマー溶液を、70℃に滴下して反応させて1次物質を作成する。その1次物質に、過流酸アンモニウム10%溶液2部を添加して攪拌し、さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、スチレン30部、ブチルメタクリレート15部、ブチルアクリレート16部、メタクリル酸2部、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら添加して重合反応させた後、アンモニアで中和しpH8.5にして0.3μmのフィルターでろ過した高分子微粒子水溶液を作成する。
【0053】
<インクジェット記録用インクの作成>
インク水溶液                添加量(%)
1、2―ヘキサンジオール          2.5
トリエチレングリコールモノブチルエーエル  1.0
オルフィンE1010(日信化学製)     0.6
2−ピロリドン               2.0
トリエチレングリコール           2.0
トリメチロールプロパン           5.0
グリセリン                 8.0
エチレンジアミン4酢酸2Na塩       0.02
ベンゾトリアゾール             0.01
メチルイソチアゾロン            0.1
イオン交換水               21.37
【0054】
実施例1       添加量(重量%)
分散体1(105)        7.5
上記インク水溶液        40.0
上記高分子微粒子         4.0
トリエタノールアミン       0.8
イオン交換水            残量
【0055】
実施例2
分散体2(85)         4.5
上記高分子微粒子         4.0
上記インク水溶液        40.0
イオン交換水            残量
【0056】
実施例3
分散体3(90)         5.5
上記インク水溶液        40.0
上記高分子微粒子         4.0
イオン交換水            残量
【0057】
実施例4
分散体4(80)         5.0
上記インク水溶液        40.0
上記高分子微粒子         4.0
イオン交換水            残量
【0058】
実施例5
分散体1(105)        3.0
上記インク水溶液        40.0
上記高分子微粒子         4.0
トリエタノールアミン       0.9
イオン交換水            残量
【0059】
実施例6
分散体2(90)         5.0
上記高分子微粒子         3.0
上記インク水溶液        40.0
イオン交換水            残量
【0060】
実施例7
分散体3(90)         5.0
上記高分子微粒子         3.0
上記インク水溶液        40.0
イオン交換水            残量
【0061】
実施例8
分散体4(95)         5.5
上記高分子微粒子         3.0
上記インク水溶液        40.0
イオン交換水            残量
【0062】
比較例に用いたインクの組成は以下になる。比較例で示す顔料はランダム共重合型スチレンアクリル酸系分散剤を用いて分散させたカーボンブラックを用いた。顔料の平均粒径をnm単位で()中に示す。
【0063】
比較例1
水溶性顔料9(90)     5.0
グリセリン         10.0
分散剤            3.0
非イオン系界面活性剤     1.0
イオン交換水          残量
【0064】
比較例2
水溶性染料(フードブラック2) 5.5
DEGmME          7.0
ジエチレングリコール     10.0
2−ピロリドン         5.0
イオン交換水           残量
DEGmME:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
【0065】
比較例3
水溶性顔料11(110)    5.5
水溶性染料(フードブラック2) 2.5
ジエチレングリコール     10.0
非イオン系界面活性剤      1.0
イオン交換水           残量
【0066】
表1に印字の評価結果として文字を印字したときの印字品質としてにじみの評価結果を示す。印字評価の測定はセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターEM−930Cを用いることによって行なう。にじみの評価の指標は8ドット文字で「書」の字の繋がりが全くないものをA、1個所繋がりがあるものをB、2個所および3個所繋がりがあるものをC、4個所以上繋がりがあるものをDとする。ここで繋がりとはインクが紙の繊維に沿って広がり「書」の字横線が繋がる状態をいう。
【0067】
【表1】
Figure 2004123905
【0068】
表1の結果から明らかなように比較例で用いるようなインクは印字品質が悪く、本発明で用いるインクジェット記録用インクを用いると印字品質が良好なことが分かる。尚、これらの評価に用いた紙は、ヨーロッパ、アメリカおよび日本の市販されている紙でConqueror紙、Favorit紙、Modo Copy紙、Rapid Copy紙、EPSON EPP紙、Xerox 4024紙、Xerox 10紙、Neenha Bond紙、Ricopy 6200紙、やまゆり紙、Xerox R紙である。
【0069】
以上のように、本発明においては印字画像の紙等の被記録体に対するにじみが低減される高品質で実用性の高いインクジェット記録用インクを提供することができる。
【0070】
表2に色剤Aとしての顔料濃度、その顔料の分散に寄与するポリマーBとしての分散剤および高分子微粒子Cの添加量と発色性としての彩度(C)、色濃度(OD)、定着性および吐出安定性の評価結果を示す。実施例1〜4の組成においてA,BおよびCを変化させた例について示す。
【0071】
発色性としての彩度(C)、色濃度(OD)はグレタク製カラーコントロールシステムSPM50で測定する。定着性はセイコーエプソン製PM写真用紙を用いて、1センチ平方メートルのベタ印字した部分をゼブラ製ゼブラ蛍光ペンの太字部分を用いて300gの荷重を負加して線を引いたときの、そのベタ部のインクの流れ具合を見て判断する。全くインク流れがないものをA、0.5ミリ〜以下のインク流れがあるものをB、0.5〜1ミリインク流れがあるものをC、1ミリを超えてインク流れがあるものをDとする。吐出安定性はセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターEM−930Cを用いて、A4版Xerox P紙にマイクロソフト社のワードのMS明朝文字をスタイル標準サイズ10で2000字/ページの割合で100ページ連続印字して印字乱れを生じないものをA、10個所未満印字乱れのあるものをB、10個所以上100個所未満印字乱れのあるものをC、100個所以上印字乱れのあるものをDとする。
【0072】
【表2】
Figure 2004123905
【0073】
表1および表2の結果からわかるように色剤Aが3%以上12%以下であり、その色剤の分散に寄与するポリマーBおよび高分子微粒子Cの合計が2%以上10%以下であり、高分子微粒子Cが2%以上であって、且つA+B+Cが8%以上20%であり炭素数が6である分岐してもよい1、2−アルカンジオール(本実施例では1、2−ヘキサンジオール)が1.5〜5%であることによって普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加え、定着性を有するインクを作成可能であることがわかる。色剤Aが3%未満ではODも彩度も低くなるので好ましくないことがかる。また、色剤Aである顔料の添加量が12%を超えたり、色剤Aの分散に寄与するポリマーBおよび高分子微粒子Cの合計量が10%を越えたり、色剤Aである顔料の添加量、色剤Aの分散に寄与するポリマーBおよび高分子微粒子Cの合計量が20%を越えてもODや彩度は向上しないし、逆に吐出安定性が得られにくくなることがわかる。ODや彩度はより高い値を示すことが好ましいが、ODはブラック(ピグメントブラック7)で1.3以上、シアン(ピグメントブルー15:4)で1.1以上、マゼンタ(ピグメントレッド122)で1.1以上、イエロー(ピグメントイエロー74)で1.1以上が好ましい値である。同様に彩度はブラックは無彩色なので関係ないが、シアンは40以上、マゼンタは50以上およびイエローは70以上が好ましい値である。
【0074】
表3に実施例1〜8において2−ピロリドンの添加量とインクジェットヘッドからの吐出安定性を評価した結果を示す。吐出安定性は表2に示すものと同じ評価方法による。
【0075】
【表3】
Figure 2004123905
【0076】
表3の結果から分かるように2−ピロリドンの添加により吐出安定性が向上することがわかる。
【0077】
表4に実施例5〜8における保湿剤(トリエチレングリコール(TEG)、トリメチロールプロパン(TMP)およびグリセリン(GL))の種類および添加量等を変えたときの目詰まりの関係を示す。目詰まりはEM930C用のカートリッジに実施例1〜4のインクを充填し、40℃20%の環境下に3ヶ月放置して、クリーニング動作(プリンターに通常備わっている機構で、ドット抜けを回復させる)によって詰まったノズルがすべて回復する回数を測定することによる。4回未満で回復するものをA、4〜5回で回復するものをB、5回〜10回で回復するものをC、10回を超えても回復しないものをDとする。
【0078】
【表4】
Figure 2004123905
【0079】
表4の結果からわかるように保湿剤を添加することで目詰まり回復性が向上することがわかる。特に保湿剤の添加量は全体の14%以上で良好な目詰まり回復性を示すことがわかる。この保湿剤も添加量が多すぎると粘度が上昇するので適宜調整する必要がある。
【0080】
また、本発明においてはさらに界面活性剤やグリコールエーテルをさらに添加してなることが好ましい。以上のような界面活性剤やグリコールエーテルを添加して動的表面張力を40mN/m以下にすることがよい。動的表面張力を40mN/m以下にする物質は実施例に示す1、2−ヘキサンジオールおよびオルフィンE1010の他に、アセチレングリコール系界面活性剤の中のオルフィンSTG(日信化学工業製)、アセチレンアルコール系界面活性剤の中のオルフィンD61(日信化学工業製)、シリコン系界面活性剤の中のBYK347、348(ビッグケミー製)、4−メチル−1、2−ペンタンジオール(MPD)、1、2−ペンタンジオール(1、2−PD)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルジ(DEGmBE)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(PGmBE)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(DPGmBE)等が挙げられる。以下にこれらの物質を実施例1に示す1、2−ヘキサンジオールおよびオルフィンE1010の代りに用いた好ましい形態における例を挙げる。
【0081】
実施例1の組成における1、2−ヘキサンジオール、TEGmBEおよびオルフィンE1010の代りにそれらの添加量や本発明でよいとする他の添加剤であるオルフィンSTG(日信化学工業製)、D61(日信化学工業製)、BYK347(ビッグケミー製)、4−メチル−1、2−ペンタンジオール(MPD)、1、2−ペンタンジオール(1、2−PD)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルジ(DEGmBE)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(PGmBE)、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル(DPGmBE)から選ばれた1種以上からなる物質を用いて作成したインクと比較例1で示すインクに本発明でよいとする添加剤を添加した場合について(表8の実施例9〜18)、同様に70℃/1週間で放置し、放置後のインクの発生異物、物性値(粘度、表面張力)および吐出安定性について調べた結果を表5に示す。異物発生量は70℃放置後の異物量/初期の異物量、粘度は70℃放置後の粘度/初期の粘度、表面張力は70℃放置後表面張力/初期の表面張力の値を示し、吐出安定性はセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターEM−930Cを用いて、A4版Xerox P紙にマイクロソフト社のワードのMS明朝文字をスタイル標準サイズ10で2000字/ページの割合で100ページ連続印字して全く印字乱れなど生じないものをA、10個所未満印字乱れのあるものをB、10個所以上100個所未満印字乱れのあるものをC、100個所以上印字乱れのあるものをDとする。本発明でよいとするDEGmBE、E1010、オルフィンSTG、オルフィンD61、BYK347、4−メチル−1、2−ペンタンジオール(MPD)、TEGmBE、PGmBE、DPGmBE等の物質はいずれも分子量が小さく表5に示す程度の添加量で動的表面張力を低下させることができる。
【0082】
【表5】
Figure 2004123905
【0083】
以上の結果からわかるように、本発明になる水性インクは良好な印字品質であり、吐出安定性、保存性安定性に優れるインクジェット記録用インクになることがわかる。また、実施例2〜8についても同様に添加剤を変えて試験を行なったところ、ほぼ同様な結果がえられた。
【0084】
尚、本発明はこれらの実施例に限定されると考えるべきではなく、本発明の主旨を逸脱しない限り種々の変更は可能である。
【0085】
【発明の効果】
以上述べたように本発明は普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加え、定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れる水性インクを作成可能とするという効果を有する。

Claims (19)

  1. 色剤Aを3重量%(以下単に%と示すものは重量%を示す)以上12%以下と、該色剤Aの分散に寄与するポリマーBと、高分子微粒子Cと、炭素数が6である分岐してもよい1、2−アルカンジオールを1.5〜5%とを含有し、さらに該Bと該Cとの合計が2%以上10%以下且つ該Cが2%以上、該Aと該Bと該Cとの合計が8%以上20%以下であることを特徴とする水性インク。
  2. 界面活性剤をさらに添加してなることを特徴とする請求項1に記載の水性インク。
  3. グリコールエーテルをさらに添加してなることを特徴とする請求項1または2に記載の水性インク。
  4. 2−ピロリドンをさらに添加してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性インク。
  5. 保湿剤をさらに添加してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の水性インク。
  6. キレート剤をさらに添加してなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水性インク。
  7. 防腐剤をさらに添加してなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水性インク。
  8. 防錆剤をさらに添加してなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水性インク。
  9. 前記色剤が有機顔料または無機顔料であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水性インク。
  10. 前記界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項2に記載の水性インク。
  11. 前記グリコールエーテルがアルキレングリコールモノアルキルエーテルである請求項3に記載の水性インク。
  12. 前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、且つ炭素数5〜11のアルキルエーテルであることを特徴とする請求項11に記載の水性インク。
  13. 前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルがジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テルおよび/または(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする請求項12に記載の水性インク。
  14. 少なくとも前記アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテルおよび(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルから選ばれた1種以上と、を含むことを特徴とする請求項3に記載の水性インク。
  15. 前記保湿剤がヒドロキシル基を2以上有する物質であることを特徴とする請求項5に記載の水性インク。
  16. 前記ヒドロキシル基を2以上有する物質が、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量400以下のポリエチレングリコール、トリメチロール(炭素数6以下の)アルカン、アルドース、ケトースおよび糖アルコールから選ばれた1種以上である請求項15記載の水性インク。
  17. 前記キレート剤がエチレンジアミン4酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン3酢酸、グリコールエーテルジアミン4酢酸、ニトリロ3酢酸、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、ジエチレントリアミン5酢酸、トリエチレンテトラミン6酢酸およびそれらの塩であることを特徴とする請求項6に記載の水性インク。
  18. 前記防腐剤がアルキルイソチアゾロン、クロルアルキルイソチアゾロン、ベンズイソチアゾロン、ブロモニトロアルコール、オキサゾリジン系化合物およびクロルキシレノールから選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項7に記載の水性インク。
  19. 前記防錆剤がジシクロヘキシルアンモニウムニトラートおよび/またはベンゾトリアゾールであることを特徴とする請求項8に記載の水性インク。
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