JP2004123906A - 水性インク - Google Patents
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Abstract
【課題】普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れ、少量でキレート剤としての効果があり、蒸発や昇華等して有害なものではない水性インクを提供する。
【解決手段】本発明の水性インクは、色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、キレート剤とを含む水性インクであって、上記色剤がポリマーで包含されて水に分散可能とされるか、または分散剤なしに分散される分散体であり、上記キレート剤がニトリロ3酢酸またはその塩である、ことを特徴とする。
【選択図】 なし
【解決手段】本発明の水性インクは、色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、キレート剤とを含む水性インクであって、上記色剤がポリマーで包含されて水に分散可能とされるか、または分散剤なしに分散される分散体であり、上記キレート剤がニトリロ3酢酸またはその塩である、ことを特徴とする。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は普通紙、再生紙あるいはコート紙に対して高い印字品質あるいは画像品質が得られ、且つ保存安定性に優れるインクジェット記録用インク等に好適な水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の水性インクは染料を水に溶解または顔料を水に分散させる方法が用いられてきた。顔料を水に分散させる手段として、界面活性剤を用いる方法、または疎水部と親水部を有する分散ポリマーを用いる方法が知られている。また、着色材の表面を高分子で被覆する方法としては、インクジェットプリンター用インクとして、染料インクを内包したマイクロカプセルを用いる方法、水に不溶な溶媒に色素を溶解または分散させこれを界面活性剤で水中で乳化したマイクロカプセル化した色素を用いる方法、水、水溶性溶媒並びにポリエステルの少なくとも1種に昇華性分散染料を溶解または分散させた内包物をマイクロカプセルとして記録液に使用する方法、転相乳化反応や酸析法による方法等が知られており、また着色された乳化重合粒子と水性材料からなるインキ組成物が検討されている。
【0003】
以上のように種々の水性インクが提案されているが、長期の保存安定性を得るために検討された例は少ない。また、従来は水性インク用のキレート剤としては殆どの場合エチレンジアミン四酢酸塩が用いられてきた。ニトリル三酢酸類を用いた例としては、キレート剤としてではないが、インクジェットインクの画像濃度および文字品位が高く、ブリーディングが発生せず、良好な耐光性を得るために染料とNiやCu等の金属配位化合物を用いた例がある(例えば、特許文献1参照)。また、ポリマー微粒子に金属と配位し得る構造を導入した例がある(例えば、特許文献2参照)。あるいは、画像記録層にキレート化剤を用いた例などがある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−239964号公報
【特許文献2】
特開平11−349875号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように顔料系水性インクを形成するために種々検討されているが、従来の分散体は不安定であり、本発明でよいとする界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が存在すると、吸脱着が起こりやすくなり、その水性インクの保存安定性が劣るという課題がある。通常の水性インクは紙に対するにじみを低減させるため、界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が必要である。これらの物質を用いないインクでは紙に対する浸透性が不十分となり、均一な印字を行なうためには紙種が制限され、印字画像の低下を引き起こしやすくなるという課題があった。
【0006】
さらに、従来の分散体に本発明で用いるような添加剤(特にアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルまたは1,2−アルキレングリコールまたはこれらの混合物)を用いると長期の保存安定性が得られず、インクの再溶解性が悪いためインクが乾燥してインクジェットヘッドのノズルや筆記具のペン先等で詰まり易くなるという課題を有していた。
【0007】
また、このような分散剤により分散された顔料は分散剤の残存物がインク系中に残り、分散剤が十分に分散に寄与せず顔料から脱離して粘度が高いものになってしまうという課題があった。粘度が高くなると顔料等の色材の添加量が制限され特にPPC用紙のような普通紙において十分な画質が得られない。また、顔料などの分散体を用いる場合、カルシウムやマグネシウム等の硬度成分が、顔料由来やインクジェット等では接触部分の成分として存在する。顔料などの分散体はそれら硬度成分により凝集してしまうのでキレート剤によりそれらの影響をなくしておく必要がある。一般にはエチレンジアミン4酢酸塩を用いるが、これも添加量が多いと分散に影響して安定性が得られなくなる。従って、少量でキレート剤としての効果があるものを用いる必要であった。また、インクジェット記録用インクのような一般に接触するものとしては蒸発や昇華等して有害なものは避ける必要があった。エチレンジアミン4酢酸塩は一般に安全とされるが、これはそのものの安全性と水溶液などにしたときの状態での安全性について述べられているだけであり、インクジェットのような乾燥過程や空気中のOHラジカルとの接触による酸化が伴うような場合について検証されているものではない。特に塩になっていないエチレンジアミン4酢酸自体は毒性が高く、分解してできるエチレンジアミンも毒性が高いものなので微量であっても使用しない方が好ましい。
【0008】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、その目的とするところは、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れ、少量でキレート剤としての効果があり、蒸発や昇華等して有害なものではない水性インクを提供するところにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性インクは、色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、キレート剤とを含む水性インクであって、上記色剤がポリマーで包含されて水に分散可能とされるか、または分散剤なしに分散される分散体であり、上記キレート剤がニトリロ3酢酸またはその塩である、ことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明による分散体は安定性に優れ、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらにインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れ、少量でキレート剤としての効果があり、蒸発や昇華等して有害なものではないことなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果によるものである。
【0011】
本発明の水性インクはキレート剤としてニトリロ3酢酸またはその塩を用いたことを特徴とする。ニトリロ三酢酸またはその塩はインクのような液体状態ではキレート剤として安定であるが、紙などの記録媒体では乾燥状態となり、空気中のOHラジカルによって分解され安全なものとなり、インクジェット等の一般の人に接触することの多い水性インク用として好適である。
【0012】
ニトリロ3酢酸またはその塩の添加量が0.001〜0.1%であることが好ましい。通常はニトリロ3酢酸のナトリウム塩が好適に用いることができる。特にアニオン分散である顔料や高分子微粒子を用いたときはpHがアルカリ側であるので、1〜3ナトリウム塩が好ましい。対イオンはナトリウムに限らず、カリウムやリチウム等の1価イオンの他にアンモニウイオンやアミン等でもよい。0.001%未満ではキレート剤としての効果が低く、顔料由来あるいはインクの接触部分のカルシウムイオン、マグネシウムイオン等の硬度成分によって安定性が得られなくなる。0.1%を超えてもキレート剤としての効果はあるが、顔料等の分散安定性が得られにくくなる。より好ましい添加量0.005〜0.05%である。カチオン分散の場合は塩になっていないニトリロ3酢酸が好ましい。
【0013】
また、色剤が顔料をポリマーで包含して水に分散可能または分散剤なしに分散された分散体を用いることができる。そして、その分散体と、さらに高分子微粒子を添加してなることによって、さらに高色濃度および発色性の他に顔料の紙などの媒体への定着性を向上させることができる。特に、前述の分散剤なしに分散された顔料の定着性を向上させるために好適である。
【0014】
また、前述の分散体と前述の高分子微粒子の混合状態でのゼータ電位の絶対値が30ミリボルト以上であることが好ましい。ゼータ電位の絶対値が30ミリボルト未満では、インクのカートリッジやヘッドの材料などに含まれる添加剤の影響で保存安定性が得られなくなる。
【0015】
さらに、前述の分散体および前述の高分子微粒子のゼータ電位の絶対値がそれぞれ独立して30ミリボルト以上であり、その分散体のゼータ電位の値とその高分子微粒子のゼータ電位の値との差が±10ミリボルト以下であることが好ましい。分散体のゼータ電位と高分子微粒子のゼータ電位の絶対値との差が±10ミリボルトを超えると保存安定性が低下してしまう。より好ましくは±5ミリボルト以下である。
【0016】
前述の色剤が有機顔料または無機顔料であることを特徴とする。例えば、黒色インク用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられるがインクジェット用としては比重が比較的低く水中で沈降しにくいカーボンブラックが好ましい。
【0017】
さらにカラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、180、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット19、23、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等が使用できる。また、顔料の粒経は5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下の粒子からなる顔料を、さらに好ましくは0.01〜0.15μmの粒子からなる顔料が好ましい。
【0018】
また、前述の分散ポリマーを形成する物質の疎水基が少なくともアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれた1種以上であることが好ましい。そして、前述の親水性官能基を有する物質の親水基が少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、若しくはアミド基またはそれらの塩基であることが好ましい。それら分散ポリマーを形成する物質の具体例として2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。例えばスチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3または4)−アルキルスチレン、(α,2,3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0019】
また、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とするようにこれらのポリマーを添加しながら作成することもできる。
【0020】
重合開始剤は過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスアセトキシフェニルエタン、アゾビスメチルブタンアミドジヒドロクロライドテトラハイドレート、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート、アゾビスシアノ吉草酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0021】
本発明における、乳化重合では連鎖移動剤を用いることもできる。例えば、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
【0022】
そして、前述の分散体を用いることによって安定性の優れたインクジェット記録用インクとすることができる。さらに前述の分散体を筆記具用インクにも好適に用いることができる。
【0023】
また、前述の高分子微粒子のイオンの極性が前述の分散体と同一であることが好ましい。異なる極性の場合は凝集等を起こして安定な水性インクとはし難い。さらに、等電点におけるpH差が±2以下であることが好ましい。
【0024】
水性インク中でもインクジェットに用いる場合これらの顔料としての添加量は、0.5〜30%が好ましいが、1.0〜12%がさらに好ましい。これ以下の添加量では、印字濃度が確保できなくなり、またこれ以上の添加量では、インクの粘度増加や粘度特性に構造粘性が生じ、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が悪くなる傾向になる。
【0025】
顔料の分散方法は超音波分散、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ナノマイザーおよびジェットミルなどによる方法などの分散方法を用いることができる。
【0026】
前述の界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上であることが好ましい。これらは紙などに印字した文字のにじみを低減して印字品質をさらに向上させることができる。
【0027】
前述の水性インクに少なくともアルキレングリコールモノアルキルエーテルおよび/または1,2−アルキレングリコールを添加してなることが好ましい。これらを添加することで紙などに印字した文字のにじみを低減して印字品質をさらに向上させることができる。
【0028】
前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、且つ炭素数4〜10のアルキルエーテルであることが好ましい。炭素数4未満のアルキルエーテルは浸透性を向上させる効果が低く、炭素数10を超えるアルキルエーテルは水への溶解性を得るために長鎖の親水基が必要になり、そのため分子量が大きくなり、粘度が上昇しやすくなると同時に、浸透剤としての効果があまり得られない。より好ましくは炭素数4〜8のアルキルエーテルである。
【0029】
前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルがジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テルおよび/または(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることが好ましい。これらを用いることで印字品質はさらに向上する。
【0030】
前述の炭素数4〜10の1、2−アルキレングリコールの例としては1、2−ヘキサンジオール、4−メチル−1、2−ペンタンジオール、3−メチル−1、2−ペンタンジオール、2−メチル−1、2−ペンタンジオール、1−メチル−1、2−ペンタンジオール、3、3−ジメチル−1、2−ブタンジオールおよび/または1,2−ペンタンジオール、1、2−オクタンジオール、1、2−デカンジオールがある。
【0031】
前述のジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質を含むインクであって、その物質の添加量が0.5%以上30%以下であることが好ましい。
【0032】
前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の物質の添加量が0.1%以上5%以下であることが好ましい。0.1%未満ではにじみ低減の効果が低く、5%を超えて添加してもにじみ低減の効果が頭打ちであり、逆に色剤の分散安定性を低下させてしまう。より好ましくは0.3%〜2%である。
【0033】
少なくとも前述のアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上とを含むことが好ましい。PPC用紙のような普通紙は様々な種類があり、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の方がにじみを低減する効果が高いものやジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上の方がにじみを低減する効果が高いものがあるので、それらは同時に用いることで多くの紙でにじみ低減の効果が発揮できる。より好ましくはアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上を数多くの種類添加することである。
【0034】
その中でも前述のアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の添加量が0.01%〜0.5%であり、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上の添加量が1%以上であることが好ましい。
【0035】
前述の色剤を包含するポリマーが、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0036】
また、前述の1,2−アルキレングリコールの添加量は10%以下であることが好ましい。
【0037】
前述の高分子微粒子の粒径が10〜500nmであり、添加量が0.1〜20%であることが好ましい。高分子微粒子の粒径が10nm未満では分散の安定性が得られにくくなり、吐出安定性が得られにくくなる。500nmを超えてもまた出吐安定性が得られなくなる。好ましくは20〜300nm、さらに好ましくは50〜200である。そして、その添加量が0.1%未満では定着性向上の効果が低くなる。しかし、専用紙上でのインクの凝集によるむらの発生は0.1%未満でも効果がある。20%を超えると粘度が上昇し、吐出安定性か得られない。定着性向上のためには、好ましくは1〜10%である。
【0038】
この高分子微粒子を分散したエマルジョンを形成する物質として、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびブチルメタクリレートの他に(α、2、3または4)−アルキルスチレン、(α、2、3または4)−アルコキシスチレン、3、4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、8−オクタンジオールおよび1、10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0039】
このような高分子微粒子を形成するために用いる乳化剤としてはラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸カリウムの他にステアルリル基、ノニル基、オクチル基などを有するアルキル基や分岐アルキル基、あるいはアルキルフェニル基などの硫酸塩である活性剤の他に燐酸塩、硼酸塩の活性剤やアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および両性界面活性剤等を用いることができる。
【0040】
重合開始剤は過硫酸カリや過硫酸アンモニウムの他に、過流酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができるが、重合反応は水中で行なうため水溶性の方が好ましい。
【0041】
重合のための連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1、4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなど一般的な連鎖移動剤を用いることができる。
【0042】
また、本発明ではコアとシェルが構造が違うコアシェル型の高分子微粒子を用いた複相の例を示すが、単相の場合でも構わない。しかし、これら高分子微粒子の膜形成温度(MFT)は室温以下に設計するかMFT低下剤を用いて室温以下にすることが好ましい。また、反応条件等によっては上述の添加剤を用いなくてもよい。例えば、ミセル形成モノマーを用いる場合にはミセル形成剤は不要になり、反応条件によっては連鎖移動剤も用いなくて良い場合もあるので、適宜選択できる。
【0043】
本発明におけるインクジェット記録用インクは、その放置安定性の確保、インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等の目的で保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加する場合がある。
【0044】
以下、それらをインクジェットインクについて例示するがこれに限定されない。
【0045】
インクジェットのノズル面や筆記具のペン先で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類を添加することが好ましく、その例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどがある。
【0046】
また、同様にインクが乾燥して詰まることを抑制するために、多くの種類の糖類を用いることもできる。単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。そしてその添加量は0.05%以上で30%以下がよい。0.05%未満ではインクがヘッドの先端で乾燥して詰まる目詰まり現象を回復させる効果は少なく、30%を超えるとインクの粘度が上昇して適切な印字ができなくなる。一般的な糖類である単糖類および多糖類のグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3〜20%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類はインクにしたときの粘度が高くなり過ぎない程度の添加量にする必要がある。
【0047】
その他に水と相溶性を有し、インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類やインク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルやペン先の目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0048】
また、本発明になるインクにはさらに紙や特殊紙等の媒体への浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤は本実施例に示すインク系との相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものがよい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などがあげられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0049】
また、pH調整剤、溶解助剤あるいは酸化防止剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸(水素)カリウム、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などがある。また、市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。その例としてはチバガイギーのTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物などがある。
【0050】
さらに、粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどがある。
【0051】
【実施例】
次に具体的な実施の形態について説明する。
【0052】
実施例における顔料1はピグメントブラック7、顔料2はピグメントブルー15:4、顔料3はピグメントレッド122、顔料4はピグメントイエロー74を用いた。しかし、これらに限定されず多くの有機、無機顔料を用いることができる。<>中にそれぞれの平均粒径をnm(ナノメートル)単位で示す。平均粒径はマルバーン社製ゼータサイザー3000を用いる光散乱法により測定した。
【0053】
本発明においては、顔料を反応性分散剤で分散し、次いで水中で触媒の存在下で乳化重合を行なうことによって得ることができる。
【0054】
(分散体1〜4の製造)
まず、分散体1としては無機顔料であるピグメントブラック7の中からラーベンC(コロンビアンカーボン株式会社製)を用いる。超音波発生機、攪拌機、滴下装置、水冷式還流コンデンサー、および温度調整器を備えた反応容器にラーベンC25部(以下単に部と示すものは重量部を示す)と、重合性界面活性剤である旭電化株式会社製のアデカリアソープSE−10Nを5部とをイオン交換水180部中に加えて超音波を4時間かけて分散処理を行なう。
【0055】
次に、スチレン5部とα−メチルスチレン1.6部と、アゾビスイソブチロニトリル0.5部とのメチルエチルケトン溶液をさらに加えて70℃で8時間重合反応を行なう。得られた溶液を遠心ろ過してポリマーで包含された顔料を取り出し、さらに0.4μmのメンブレンフィルターで濾過して粗大粒子を除去する。このポリマーで包含された顔料溶液をホモジナイザーでほぐして再分散させる。
【0056】
そして、反応容器に前述の顔料のメチルエチルケトン溶液を、さらにイオン交換水27部とラウリル硫酸ナトリウム0.05部を添加し、イオン交換水100部と重合開始剤として過流酸カリウムを0.5部入れ、窒素雰囲気70℃を保持する。次いで、スチレン25部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート1部、ブチルメタクリレート15部、トリエチレングリコールメタクリレート5部およびt−ドデシルメルカプタン0.02部を入れた混合溶液を、滴下し反応させた後に、ロータリーエバポレーターでメチルエチルケトンと水の一部を留去して、水酸化ナトリウムで中和してpH8.5に調整してから0.3μmのフィルターでろ過して分散体1とする。
上記分散体の一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000によりpH8.5におけるゼータ電位を測定したところ−50mVである。
【0057】
上記と同様な手法で分散体2〜4を得る。分散体2は有機顔料であるピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体3は有機顔料であるピグメントレッド122(ジメチルキナクリドン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体4は有機顔料であるピグメントイエロー74(縮合アゾ顔料:クラリアント製)を用いる。同様にpH8.5においてゼータ電位を測定したところ、分散体2が−48mV、分散体3が−46mVおよび分散体4が−51mVである。
【0058】
(分散体5〜8の製造)
まず、分散体5はカーボンブラックであるモナーク880(キャボット製)を用いる以外は、特開平8−3498と同様な方法による。この分散体の一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000によりpH8.5におけるゼータ電位を測定したところ−53mVである。
【0059】
分散体6はピグメントブルー15:4(銅フタロシアニン顔料:クラリアント製)を用いる。攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン20部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させる。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成する。
【0060】
上記分散ポリマー溶液40部とピグメントブルー15:4を30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン30部を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌する。その後、イオン交換水を300部添加して、さらに1時間攪拌する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整してから0.3μmのメンブレンフィルターでろ過して固形分(分散ポリマーとピグメントブルー15:4)が20%の分散体6とする。上記分散体の一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000によるpH8.5におけるゼータ電位を測定したところ−51mVである。
【0061】
上記と同様な手法で分散体7および8を得る。分散体7はピグメントレッド122(ジメチルキナクリドン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体8はピグメントイエロー180(ジケトピロロピロール:クラリアント製)を用いる。同様にpH8.5においてゼータ電位を測定したところ、分散体7が−49mV、分散体8が−48mVおよび分散体4が−52mVである。
【0062】
(高分子微粒子の製造)
反応容器に滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、攪拌機を備え、イオン交換水100部を入れ、攪拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過流酸カリを0.2部を添加しておく。イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウムを0.05部、スチレン15部、テトラヒドロフルフリルアクリレート6部、ブチルメタクリレート5部およびt−ドデシルメルカプタン0.02を入れたモノマー溶液を、70℃に滴下して反応させて1次物質を作成する。その1次物質に、過流酸アンモニウム10%溶液2部を添加して攪拌し、さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、スチレン30部、ブチルメタクリレート25部、ブチルアクリレート6部、アクリル酸2部、1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら添加して重合反応させた後、水酸化ナトリウムで中和しpH8.5にして0.3μmのフィルターでろ過した高分子微粒子30%水溶液を作成してエマルジョンAとした。上記エマルジョンの一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000によりpH8.5におけるゼータ電位を測定したところ−48mVである。
【0063】
(インクジェットインクの調製例)
以下具体的に、本発明によるインクジェット記録用インクに好適な組成の例を示す。分散体の添加量はその量(固形分濃度:顔料とそれを取り巻く分散ポリマーの合計量)を重量で換算したものとして示す。<>は顔料の粒径をnm単位で示す。また、下記組成のインク(分散体と高分子微粒子の混合状態)の一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000により下記pHにおけるゼータ電位を測定した結果を併記する。
【0064】
<インクジェット記録用インクの作成>
インク水溶液 添加量(%)
1、2―ヘキサンジオール 2.5
トリエチレングリコールモノブチルエーエル 1.0
オルフィンE1010(日信化学製) 0.6
2−ピロリドン 2.0
トリエチレングリコール 2.0
トリメチロールプロパン 5.0
グリセリン 8.0
ニトリロ三酢酸ニナトリウム塩 0.02
ベンゾトリアゾール 0.01
ベンゾイソチアゾロン 0.05
イオン交換水 21.37
【0065】
実施例1 添加量(重量%)
分散体1(105) 7.5
上記インク水溶液 40.0
上記高分子微粒子 4.0
トリエタノールアミン 0.8
イオン交換水 残量
ゼータ電位−50mV(pH8.9)
【0066】
実施例2
分散体2(85) 4.5
上記高分子微粒子 4.0
上記インク水溶液 40.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−48mV(pH9.3)
【0067】
実施例3
分散体3(90) 5.5
上記インク水溶液 40.0
上記高分子微粒子 4.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−49mV(pH9.0)
【0068】
実施例4
分散体4(80) 5.0
上記インク水溶液 40.0
上記高分子微粒子 4.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−49mV(pH9.0)
【0069】
実施例5
分散体1(105) 3.0
上記インク水溶液 40.0
上記高分子微粒子 8.0
トリエタノールアミン 0.9
イオン交換水 残量
ゼータ電位−48mV(pH8.6)
【0070】
実施例6
分散体2(90) 5.0
上記高分子微粒子 3.0
上記インク水溶液 40.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−49mV(pH9.4)
【0071】
実施例7
分散体3(90) 5.0
上記高分子微粒子 3.0
上記インク水溶液 40.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−49mV(pH8.8)
【0072】
実施例8
分散体4(95) 5.5
上記高分子微粒子 3.0
上記インク水溶液 40.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−47mV(pH9.5)
【0073】
表1に作成したインク中の初期のカルシウムイオン、マグネシウムイオン、およびアルミニウムイオンの量とニトリロ三酢酸二ナトリウム塩(NTA)および比較例としてエチレンジアミン4酢酸二ナトリウム塩(EDTA)の添加量と本発明になる水性インクの保存安定性の関係を示す。保存安定性は実施例1〜8に示すインクをガラス製アンプル瓶に入れ密栓後、70℃で1ヶ月放置したときの粘度/初期の粘度の値が1.02未満をA、0.02〜0.05をB、5%を越えて10%以下をC、10%を超えるときをDとする。尚、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、およびアルミニウムイオンの量は上記実施例1〜8のインクを用いて、ICP発光分光法((株)日立製作所製P4010)により測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1の結果からニトリロ三酢酸塩の添加で長期の保存安定性が確保されることがわかる。また、ニトリロ三酢酸の添加量は100ppm(0.01%)で、通常顔料由来で存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびアルミニウムイオンの影響をほぼ低減する効果があり、保存安定性も優れることがわかる。エチレンジアミン4酢酸塩の場合は200ppm以上の添加が必要で、顔料によっては添加量が多いと保存安定性が低下することがわかる。
【0076】
表2に印字の評価結果として文字を印字したときのにじみの評価結果を示す。表2においてセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターMJ930Cを用いて1ドットを形成したときの、ドットの最短半径r1、最長半径r2として10ドットの平均でのr2/r1の値を用いて評価する。r2/r2≦2をA、2<r2/r2≦3をB、3<r2/r2≦4をC、4<r2/r2をDということを示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2の結果から本発明で用いるインクジェット記録用インクを用いると印字品質が良好なことが分かり、ニトリロ三酢酸塩を用いても印字が良好である。
【0079】
尚、これらの評価に用いた紙は、ヨーロッパ、アメリカおよび日本の市販されている普通の紙でConqueror紙、Favorit紙、Modo Copy紙、Rapid Copy紙、EPSON EPP紙、Xerox 4024紙、Xerox 10紙、Neenha Bond紙、Ricopy 6200紙、やまゆり紙、Xerox R紙である。
【0080】
以上のように、本発明においては印字画像の紙等の被記録体に対するにじみが低減される高品質なインクジェット記録用インクを提供することができる。
【0081】
また、実施例1〜8のインクをガラス製のサンプル瓶に入れ密栓後、それぞれ60℃/1週間で放置し、放置前後でのインクの発生異物、物性値(粘度、表面張力)について調べた。
【0082】
その結果いずれのインクも異物の発生、物性値の変化が殆ど無く、ニトリロ三酢酸塩を用いても良好な保存安定性である。
【0083】
また、表3に実施例1の組成でニトリロ三酢酸塩の有無と添加剤を変えたときの発生異物、物性値(粘度、表面張力)および吐出安定性を調べた。この場合表1と同じように、カルシウム200ppm、マグネシウム110ppmおよびアルミニウム30ppmを含んでいる。ニトリロ三酢酸塩の添加のないものを比較例とした。実施例1の組成においてTEGmBEとE1010の代りに本発明でよいとする他の添加剤(アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質)を用いて作成したインクと比較例のインクに本発明でよいとする添加剤(アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質)を添加した場合について(表3の実施例9〜18)、同様に70℃/1週間で放置し、放置後のインクの発生異物、物性値(粘度、表面張力)および吐出安定性について調べた結果を表2に示す。異物発生量は60℃放置後の異物量/初期の異物量、粘度は60℃放置後の粘度/初期の粘度、表面張力は60℃放置後表面張力/初期の表面張力の値を示し、吐出安定性はセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターPM−900Cを用いて、A4版Xerox P紙に100ページ連続印字して全く印字乱れなど生じないものをA、10個所未満印字乱れのあるものをB、10個所以上100個所未満印字乱れのあるものをC、100個所以上印字乱れのあるものをDとする。表3においてDEGmBEはジエチレングリコールモノブチルエーテル、TEGmBEはトリエチレングリコールモノブチルエーテル、PGmBEはプロピレングリコールモノブチルエーテル、DPGmBEはジプロピレングリコールモノブチルエーテル、1、2−HDは1、2−ヘキサンジオール、1、2−PDは1、2−ペンタンジオール、1、2−ODは1、2−オクタンジオール、4−M−1,2−PDは4−メチル−1、2−ペンタンジオール、オルフィンE1010はアセチレングリコール系界面活性剤(日信化学製)、オルフィンSTGもアセチレングリコール系界面活性剤(日信化学製)、サーフィノール61はアセチレングリコール系界面活性剤(エアプロダクツ製)、BYK347はシリコン系界面活性剤(ビッグケミー製)である。
【0084】
【表3】
【0085】
表3の結果からわかるように、本発明になるアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質とニトリロ三酢酸塩を用いても用いたインクジェット記録用インクは良好な印字品質であり、吐出安定性、保存性安定性に優れるインクジェット記録用インクになることがわかる。また、実施例2〜8についても同様に添加剤を変えて試験を行なったところ、ほぼ同様な結果がえられた。
【0086】
また、表4に、実施例1から8のインクと、それらにおいて高分子微粒子からなるエマルジョンを添加していないものを比較例として、定着性の評価を行なった結果を示す。定着性の評価は普通紙(Xerox4024紙)と専用紙(PM写真用紙)を用いて印刷面とその裏面を300gの荷重で重ね合わせで1m/sの速度で移動させたときのインクの剥がれ具合を観察する方法による。印刷直後、5分後、1時間後、2時間後および3時間後の結果を示す。表4中Aは全く剥がれがないもの、Bはわずかにはがれがあるもの、Cは剥がれがあり裏面に移るもの、Dはかなり剥がれがあり裏面に移るものである。
【0087】
【表4】
【0088】
表4の結果からわかるように、高分子微粒子を添加すると特に専用紙において1時間後には剥がれがなく良好な定着性になり、高分子微粒子を用いたインクでもニトリロ三酢酸塩を用いることができることが分かる。
【0089】
表5に実施例1〜8における顔料分散体のゼータ電位、高分子微粒子のゼータ電位およびマイクロカプセルと高分子微粒子の混合状態でのゼータ電位と、各インクを70℃7日放置したときの異物の発生状態を、ゼータ電位絶対値の低い顔料分散体および高分子微粒子とのゼータ電位の差が大きい分散体を比較例として示す。表5の異物の評価は初期の異物量と70℃7日放置したときの異物量の比の値として示す。表5においてゼータ電位の測定はマルバーン社(英国)のゼータサイザー3000HSを用いてpH4から11までpH依存性を測定した。そして、粒子が安定して存在できるpH9の値を示す。
【0090】
【表5】
【0091】
表5の結果から分かるように本発明になる水性インクは保存安定性が優れ、ゼータ電位の絶対値が低い場合と高分子微粒子とのゼータ電位の差が大きいと異物が発生しやすいことが分かり、ニトリロ三酢酸塩を用いても何ら保存安定性に悪影響を及ぼすことがないことがわかる。
【0092】
尚、本発明はこれらの実施例に限定されると考えるべきではなく、本発明の主旨を逸脱しない限り種々の変更は可能である。
【0093】
【発明の効果】
以上述べたように本発明は普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れ、少量でキレート剤としての効果があり、蒸発や昇華等して有害なものではない水性インクを提供するという効果を有する。
【発明の属する技術分野】
本発明は普通紙、再生紙あるいはコート紙に対して高い印字品質あるいは画像品質が得られ、且つ保存安定性に優れるインクジェット記録用インク等に好適な水性インクに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の水性インクは染料を水に溶解または顔料を水に分散させる方法が用いられてきた。顔料を水に分散させる手段として、界面活性剤を用いる方法、または疎水部と親水部を有する分散ポリマーを用いる方法が知られている。また、着色材の表面を高分子で被覆する方法としては、インクジェットプリンター用インクとして、染料インクを内包したマイクロカプセルを用いる方法、水に不溶な溶媒に色素を溶解または分散させこれを界面活性剤で水中で乳化したマイクロカプセル化した色素を用いる方法、水、水溶性溶媒並びにポリエステルの少なくとも1種に昇華性分散染料を溶解または分散させた内包物をマイクロカプセルとして記録液に使用する方法、転相乳化反応や酸析法による方法等が知られており、また着色された乳化重合粒子と水性材料からなるインキ組成物が検討されている。
【0003】
以上のように種々の水性インクが提案されているが、長期の保存安定性を得るために検討された例は少ない。また、従来は水性インク用のキレート剤としては殆どの場合エチレンジアミン四酢酸塩が用いられてきた。ニトリル三酢酸類を用いた例としては、キレート剤としてではないが、インクジェットインクの画像濃度および文字品位が高く、ブリーディングが発生せず、良好な耐光性を得るために染料とNiやCu等の金属配位化合物を用いた例がある(例えば、特許文献1参照)。また、ポリマー微粒子に金属と配位し得る構造を導入した例がある(例えば、特許文献2参照)。あるいは、画像記録層にキレート化剤を用いた例などがある。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−239964号公報
【特許文献2】
特開平11−349875号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように顔料系水性インクを形成するために種々検討されているが、従来の分散体は不安定であり、本発明でよいとする界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が存在すると、吸脱着が起こりやすくなり、その水性インクの保存安定性が劣るという課題がある。通常の水性インクは紙に対するにじみを低減させるため、界面活性剤やグリコールエーテル等の親水部と疎水部を有する物質が必要である。これらの物質を用いないインクでは紙に対する浸透性が不十分となり、均一な印字を行なうためには紙種が制限され、印字画像の低下を引き起こしやすくなるという課題があった。
【0006】
さらに、従来の分散体に本発明で用いるような添加剤(特にアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルまたは1,2−アルキレングリコールまたはこれらの混合物)を用いると長期の保存安定性が得られず、インクの再溶解性が悪いためインクが乾燥してインクジェットヘッドのノズルや筆記具のペン先等で詰まり易くなるという課題を有していた。
【0007】
また、このような分散剤により分散された顔料は分散剤の残存物がインク系中に残り、分散剤が十分に分散に寄与せず顔料から脱離して粘度が高いものになってしまうという課題があった。粘度が高くなると顔料等の色材の添加量が制限され特にPPC用紙のような普通紙において十分な画質が得られない。また、顔料などの分散体を用いる場合、カルシウムやマグネシウム等の硬度成分が、顔料由来やインクジェット等では接触部分の成分として存在する。顔料などの分散体はそれら硬度成分により凝集してしまうのでキレート剤によりそれらの影響をなくしておく必要がある。一般にはエチレンジアミン4酢酸塩を用いるが、これも添加量が多いと分散に影響して安定性が得られなくなる。従って、少量でキレート剤としての効果があるものを用いる必要であった。また、インクジェット記録用インクのような一般に接触するものとしては蒸発や昇華等して有害なものは避ける必要があった。エチレンジアミン4酢酸塩は一般に安全とされるが、これはそのものの安全性と水溶液などにしたときの状態での安全性について述べられているだけであり、インクジェットのような乾燥過程や空気中のOHラジカルとの接触による酸化が伴うような場合について検証されているものではない。特に塩になっていないエチレンジアミン4酢酸自体は毒性が高く、分解してできるエチレンジアミンも毒性が高いものなので微量であっても使用しない方が好ましい。
【0008】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、その目的とするところは、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れ、少量でキレート剤としての効果があり、蒸発や昇華等して有害なものではない水性インクを提供するところにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の水性インクは、色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、キレート剤とを含む水性インクであって、上記色剤がポリマーで包含されて水に分散可能とされるか、または分散剤なしに分散される分散体であり、上記キレート剤がニトリロ3酢酸またはその塩である、ことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明による分散体は安定性に優れ、普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらにインクジェットヘッドからのインクの吐出安定性に優れ、少量でキレート剤としての効果があり、蒸発や昇華等して有害なものではないことなどの特性が要求されていることに鑑み、鋭意検討した結果によるものである。
【0011】
本発明の水性インクはキレート剤としてニトリロ3酢酸またはその塩を用いたことを特徴とする。ニトリロ三酢酸またはその塩はインクのような液体状態ではキレート剤として安定であるが、紙などの記録媒体では乾燥状態となり、空気中のOHラジカルによって分解され安全なものとなり、インクジェット等の一般の人に接触することの多い水性インク用として好適である。
【0012】
ニトリロ3酢酸またはその塩の添加量が0.001〜0.1%であることが好ましい。通常はニトリロ3酢酸のナトリウム塩が好適に用いることができる。特にアニオン分散である顔料や高分子微粒子を用いたときはpHがアルカリ側であるので、1〜3ナトリウム塩が好ましい。対イオンはナトリウムに限らず、カリウムやリチウム等の1価イオンの他にアンモニウイオンやアミン等でもよい。0.001%未満ではキレート剤としての効果が低く、顔料由来あるいはインクの接触部分のカルシウムイオン、マグネシウムイオン等の硬度成分によって安定性が得られなくなる。0.1%を超えてもキレート剤としての効果はあるが、顔料等の分散安定性が得られにくくなる。より好ましい添加量0.005〜0.05%である。カチオン分散の場合は塩になっていないニトリロ3酢酸が好ましい。
【0013】
また、色剤が顔料をポリマーで包含して水に分散可能または分散剤なしに分散された分散体を用いることができる。そして、その分散体と、さらに高分子微粒子を添加してなることによって、さらに高色濃度および発色性の他に顔料の紙などの媒体への定着性を向上させることができる。特に、前述の分散剤なしに分散された顔料の定着性を向上させるために好適である。
【0014】
また、前述の分散体と前述の高分子微粒子の混合状態でのゼータ電位の絶対値が30ミリボルト以上であることが好ましい。ゼータ電位の絶対値が30ミリボルト未満では、インクのカートリッジやヘッドの材料などに含まれる添加剤の影響で保存安定性が得られなくなる。
【0015】
さらに、前述の分散体および前述の高分子微粒子のゼータ電位の絶対値がそれぞれ独立して30ミリボルト以上であり、その分散体のゼータ電位の値とその高分子微粒子のゼータ電位の値との差が±10ミリボルト以下であることが好ましい。分散体のゼータ電位と高分子微粒子のゼータ電位の絶対値との差が±10ミリボルトを超えると保存安定性が低下してしまう。より好ましくは±5ミリボルト以下である。
【0016】
前述の色剤が有機顔料または無機顔料であることを特徴とする。例えば、黒色インク用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられるがインクジェット用としては比重が比較的低く水中で沈降しにくいカーボンブラックが好ましい。
【0017】
さらにカラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83(ジスアゾイエローHR)、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、153、180、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ba))、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3(パーマネントレッド2B(Sr))、48:4(パーマネントレッド2B(Mn))、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、185、190、193、209、219、C.I.ピグメントバイオレット19、23、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等が使用できる。また、顔料の粒経は5μm以下が好ましく、より好ましくは0.3μm以下の粒子からなる顔料を、さらに好ましくは0.01〜0.15μmの粒子からなる顔料が好ましい。
【0018】
また、前述の分散ポリマーを形成する物質の疎水基が少なくともアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基から選ばれた1種以上であることが好ましい。そして、前述の親水性官能基を有する物質の親水基が少なくともカルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、アミノ基、若しくはアミド基またはそれらの塩基であることが好ましい。それら分散ポリマーを形成する物質の具体例として2重結合を有するアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基あるいはアリル基を有するモノマーやオリゴマー類を用いることができる。例えばスチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ブチルメタクリレート、(α,2,3または4)−アルキルスチレン、(α,2,3または4)−アルコキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールおよび1,10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0019】
また、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上を主成分とするようにこれらのポリマーを添加しながら作成することもできる。
【0020】
重合開始剤は過硫酸カリウムや過硫酸アンモニウムの他に、過硫酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、アゾビスアセトキシフェニルエタン、アゾビスメチルブタンアミドジヒドロクロライドテトラハイドレート、アゾビスメチルブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ジメチルアゾビスイソブチレート、アゾビスシアノ吉草酸、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができる。
【0021】
本発明における、乳化重合では連鎖移動剤を用いることもできる。例えば、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1,4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなどが挙げられる。
【0022】
そして、前述の分散体を用いることによって安定性の優れたインクジェット記録用インクとすることができる。さらに前述の分散体を筆記具用インクにも好適に用いることができる。
【0023】
また、前述の高分子微粒子のイオンの極性が前述の分散体と同一であることが好ましい。異なる極性の場合は凝集等を起こして安定な水性インクとはし難い。さらに、等電点におけるpH差が±2以下であることが好ましい。
【0024】
水性インク中でもインクジェットに用いる場合これらの顔料としての添加量は、0.5〜30%が好ましいが、1.0〜12%がさらに好ましい。これ以下の添加量では、印字濃度が確保できなくなり、またこれ以上の添加量では、インクの粘度増加や粘度特性に構造粘性が生じ、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が悪くなる傾向になる。
【0025】
顔料の分散方法は超音波分散、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ナノマイザーおよびジェットミルなどによる方法などの分散方法を用いることができる。
【0026】
前述の界面活性剤がアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上であることが好ましい。これらは紙などに印字した文字のにじみを低減して印字品質をさらに向上させることができる。
【0027】
前述の水性インクに少なくともアルキレングリコールモノアルキルエーテルおよび/または1,2−アルキレングリコールを添加してなることが好ましい。これらを添加することで紙などに印字した文字のにじみを低減して印字品質をさらに向上させることができる。
【0028】
前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、且つ炭素数4〜10のアルキルエーテルであることが好ましい。炭素数4未満のアルキルエーテルは浸透性を向上させる効果が低く、炭素数10を超えるアルキルエーテルは水への溶解性を得るために長鎖の親水基が必要になり、そのため分子量が大きくなり、粘度が上昇しやすくなると同時に、浸透剤としての効果があまり得られない。より好ましくは炭素数4〜8のアルキルエーテルである。
【0029】
前述のアルキレングリコールモノアルキルエーテルがジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テルおよび/または(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることが好ましい。これらを用いることで印字品質はさらに向上する。
【0030】
前述の炭素数4〜10の1、2−アルキレングリコールの例としては1、2−ヘキサンジオール、4−メチル−1、2−ペンタンジオール、3−メチル−1、2−ペンタンジオール、2−メチル−1、2−ペンタンジオール、1−メチル−1、2−ペンタンジオール、3、3−ジメチル−1、2−ブタンジオールおよび/または1,2−ペンタンジオール、1、2−オクタンジオール、1、2−デカンジオールがある。
【0031】
前述のジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質を含むインクであって、その物質の添加量が0.5%以上30%以下であることが好ましい。
【0032】
前述のアセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の物質の添加量が0.1%以上5%以下であることが好ましい。0.1%未満ではにじみ低減の効果が低く、5%を超えて添加してもにじみ低減の効果が頭打ちであり、逆に色剤の分散安定性を低下させてしまう。より好ましくは0.3%〜2%である。
【0033】
少なくとも前述のアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上とを含むことが好ましい。PPC用紙のような普通紙は様々な種類があり、アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の方がにじみを低減する効果が高いものやジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上の方がにじみを低減する効果が高いものがあるので、それらは同時に用いることで多くの紙でにじみ低減の効果が発揮できる。より好ましくはアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上を数多くの種類添加することである。
【0034】
その中でも前述のアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の添加量が0.01%〜0.5%であり、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上の添加量が1%以上であることが好ましい。
【0035】
前述の色剤を包含するポリマーが、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上であることが好ましい。
【0036】
また、前述の1,2−アルキレングリコールの添加量は10%以下であることが好ましい。
【0037】
前述の高分子微粒子の粒径が10〜500nmであり、添加量が0.1〜20%であることが好ましい。高分子微粒子の粒径が10nm未満では分散の安定性が得られにくくなり、吐出安定性が得られにくくなる。500nmを超えてもまた出吐安定性が得られなくなる。好ましくは20〜300nm、さらに好ましくは50〜200である。そして、その添加量が0.1%未満では定着性向上の効果が低くなる。しかし、専用紙上でのインクの凝集によるむらの発生は0.1%未満でも効果がある。20%を超えると粘度が上昇し、吐出安定性か得られない。定着性向上のためには、好ましくは1〜10%である。
【0038】
この高分子微粒子を分散したエマルジョンを形成する物質として、スチレン、テトラヒドロフルフリルアクリレートおよびブチルメタクリレートの他に(α、2、3または4)−アルキルスチレン、(α、2、3または4)−アルコキシスチレン、3、4−ジメチルスチレン、α−フェニルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン、N、N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N、N−ジエチルアクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、その他アルキル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基のジエチレングリコールまたはポリエチレングリコールの(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、その他含フッ素、含塩素、含珪素(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド、(メタ)アクリル酸等の1官能の他に架橋構造を導入する場合は(モノ、ジ、トリ、テトラ、ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、8−オクタンジオールおよび1、10−デカンジオール等の(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ、トリ)(メタ)アクリレート、ビスフェノールAまたはFのエチレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等アクリル基やメタクリル基を有する化合物を用いることができる。
【0039】
このような高分子微粒子を形成するために用いる乳化剤としてはラウリル硫酸ナトリウムやラウリル硫酸カリウムの他にステアルリル基、ノニル基、オクチル基などを有するアルキル基や分岐アルキル基、あるいはアルキルフェニル基などの硫酸塩である活性剤の他に燐酸塩、硼酸塩の活性剤やアニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤および両性界面活性剤等を用いることができる。
【0040】
重合開始剤は過硫酸カリや過硫酸アンモニウムの他に、過流酸水素やアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、過酢酸、クメンヒドロパーオキシド、t−ブチルヒドロキシパーオキシド、パラメンタンヒドロキシパーオキシドなどラジカル重合に用いられる一般的な開始剤を用いることができるが、重合反応は水中で行なうため水溶性の方が好ましい。
【0041】
重合のための連鎖移動剤としては、t−ドデシルメルカプタンの他にn−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、キサントゲン類であるジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソブチルキサントゲンジスルフィド、あるいはジペンテン、インデン、1、4−シクロヘキサジエン、ジヒドロフラン、キサンテンなど一般的な連鎖移動剤を用いることができる。
【0042】
また、本発明ではコアとシェルが構造が違うコアシェル型の高分子微粒子を用いた複相の例を示すが、単相の場合でも構わない。しかし、これら高分子微粒子の膜形成温度(MFT)は室温以下に設計するかMFT低下剤を用いて室温以下にすることが好ましい。また、反応条件等によっては上述の添加剤を用いなくてもよい。例えば、ミセル形成モノマーを用いる場合にはミセル形成剤は不要になり、反応条件によっては連鎖移動剤も用いなくて良い場合もあるので、適宜選択できる。
【0043】
本発明におけるインクジェット記録用インクは、その放置安定性の確保、インク吐出ヘッドからの安定吐出達成等の目的で保湿剤、溶解助剤、浸透制御剤、粘度調整剤、pH調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤、腐食防止剤、分散に影響を与える金属イオンを捕獲するためのキレート等種々の添加剤を添加する場合がある。
【0044】
以下、それらをインクジェットインクについて例示するがこれに限定されない。
【0045】
インクジェットのノズル面や筆記具のペン先で乾燥を抑えるために水溶性のあるグリコール類を添加することが好ましく、その例としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトールなどがある。
【0046】
また、同様にインクが乾燥して詰まることを抑制するために、多くの種類の糖類を用いることもできる。単糖類および多糖類があり、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の他にアルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類を用いることができる。そしてその添加量は0.05%以上で30%以下がよい。0.05%未満ではインクがヘッドの先端で乾燥して詰まる目詰まり現象を回復させる効果は少なく、30%を超えるとインクの粘度が上昇して適切な印字ができなくなる。一般的な糖類である単糖類および多糖類のグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ラクトース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトース、マルトース、セロビオース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等のより好ましい添加量は3〜20%である。アルギン酸およびその塩、シクロデキストリン類、セルロース類はインクにしたときの粘度が高くなり過ぎない程度の添加量にする必要がある。
【0047】
その他に水と相溶性を有し、インクに含まれる水との溶解性の低いグリコールエーテル類やインク成分の溶解性を向上させ、さらに被記録体たとえば紙に対する浸透性を向上させ、あるいはノズルやペン先の目詰まりを防止するために用いることのできるものとして、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホランなどがあり、これらを適宜選択して使用することができる。
【0048】
また、本発明になるインクにはさらに紙や特殊紙等の媒体への浸透性を制御するため、他の界面活性剤を添加することも可能である。添加する界面活性剤は本実施例に示すインク系との相溶性のよい界面活性剤が好ましく、界面活性剤のなかでも浸透性が高く安定なものがよい。その例としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などがあげられる。両性界面活性剤としてはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシンその他イミダゾリン誘導体などがある。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル)などのエーテル系、ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレートなどのエステル系、その他フッ素アルキルエステル、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などの含フッ素系界面活性剤などがある。
【0049】
また、pH調整剤、溶解助剤あるいは酸化防止剤としてジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、モルホリンなどのアミン類およびそれらの変成物、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどの無機塩類、水酸化アンモニウム、4級アンモニウム水酸化物(テトラメチルアンモニウムなど)、炭酸(水素)カリウム、炭酸(水素)ナトリウム、炭酸(水素)リチウムなどの炭酸塩類その他燐酸塩など、あるいはN−メチル−2−ピロリドン、尿素、チオ尿素、テトラメチル尿素などの尿素類、アロハネート、メチルアロハネートなどのアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸およびその塩などがある。また、市販の酸化防止剤、紫外線吸収剤なども用いることができる。その例としてはチバガイギーのTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物などがある。
【0050】
さらに、粘度調整剤としては、ロジン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチなどがある。
【0051】
【実施例】
次に具体的な実施の形態について説明する。
【0052】
実施例における顔料1はピグメントブラック7、顔料2はピグメントブルー15:4、顔料3はピグメントレッド122、顔料4はピグメントイエロー74を用いた。しかし、これらに限定されず多くの有機、無機顔料を用いることができる。<>中にそれぞれの平均粒径をnm(ナノメートル)単位で示す。平均粒径はマルバーン社製ゼータサイザー3000を用いる光散乱法により測定した。
【0053】
本発明においては、顔料を反応性分散剤で分散し、次いで水中で触媒の存在下で乳化重合を行なうことによって得ることができる。
【0054】
(分散体1〜4の製造)
まず、分散体1としては無機顔料であるピグメントブラック7の中からラーベンC(コロンビアンカーボン株式会社製)を用いる。超音波発生機、攪拌機、滴下装置、水冷式還流コンデンサー、および温度調整器を備えた反応容器にラーベンC25部(以下単に部と示すものは重量部を示す)と、重合性界面活性剤である旭電化株式会社製のアデカリアソープSE−10Nを5部とをイオン交換水180部中に加えて超音波を4時間かけて分散処理を行なう。
【0055】
次に、スチレン5部とα−メチルスチレン1.6部と、アゾビスイソブチロニトリル0.5部とのメチルエチルケトン溶液をさらに加えて70℃で8時間重合反応を行なう。得られた溶液を遠心ろ過してポリマーで包含された顔料を取り出し、さらに0.4μmのメンブレンフィルターで濾過して粗大粒子を除去する。このポリマーで包含された顔料溶液をホモジナイザーでほぐして再分散させる。
【0056】
そして、反応容器に前述の顔料のメチルエチルケトン溶液を、さらにイオン交換水27部とラウリル硫酸ナトリウム0.05部を添加し、イオン交換水100部と重合開始剤として過流酸カリウムを0.5部入れ、窒素雰囲気70℃を保持する。次いで、スチレン25部、テトラヒドロフルフリルメタクリレート1部、ブチルメタクリレート15部、トリエチレングリコールメタクリレート5部およびt−ドデシルメルカプタン0.02部を入れた混合溶液を、滴下し反応させた後に、ロータリーエバポレーターでメチルエチルケトンと水の一部を留去して、水酸化ナトリウムで中和してpH8.5に調整してから0.3μmのフィルターでろ過して分散体1とする。
上記分散体の一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000によりpH8.5におけるゼータ電位を測定したところ−50mVである。
【0057】
上記と同様な手法で分散体2〜4を得る。分散体2は有機顔料であるピグメントブルー15:3(銅フタロシアニン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体3は有機顔料であるピグメントレッド122(ジメチルキナクリドン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体4は有機顔料であるピグメントイエロー74(縮合アゾ顔料:クラリアント製)を用いる。同様にpH8.5においてゼータ電位を測定したところ、分散体2が−48mV、分散体3が−46mVおよび分散体4が−51mVである。
【0058】
(分散体5〜8の製造)
まず、分散体5はカーボンブラックであるモナーク880(キャボット製)を用いる以外は、特開平8−3498と同様な方法による。この分散体の一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000によりpH8.5におけるゼータ電位を測定したところ−53mVである。
【0059】
分散体6はピグメントブルー15:4(銅フタロシアニン顔料:クラリアント製)を用いる。攪拌機、温度計、還流管および滴下ロートをそなえた反応容器を窒素置換した後、スチレン20部、α−メチルスチレン5部、ブチルメタクリレート15部、ラウリルメタクリレート10部、アクリル酸2部、t―ドデシルメルカプタン0.3部を入れて70℃に加熱し、別に用意したスチレン150部、アクリル酸15部、ブチルメタクリレート50部、t−ドデシルメルカプタン1部、メチルエチルケトン20部およびアゾビスイソブチロニトリル3部を滴下ロートに入れて4時間かけて反応容器に滴下しながら分散ポリマーを重合反応させる。次に、反応容器にメチルエチルケトンを添加して40%濃度の分散ポリマー溶液を作成する。
【0060】
上記分散ポリマー溶液40部とピグメントブルー15:4を30部、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100部、メチルエチルケトン30部を混合し、ホモジナイザーで30分攪拌する。その後、イオン交換水を300部添加して、さらに1時間攪拌する。そして、ロータリーエバポレーターを用いてメチルエチルケトンの全量と水の一部を留去して、0.1mol/Lの水酸化ナトリウムで中和してpH9に調整してから0.3μmのメンブレンフィルターでろ過して固形分(分散ポリマーとピグメントブルー15:4)が20%の分散体6とする。上記分散体の一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000によるpH8.5におけるゼータ電位を測定したところ−51mVである。
【0061】
上記と同様な手法で分散体7および8を得る。分散体7はピグメントレッド122(ジメチルキナクリドン顔料:クラリアント製)を用いる。分散体8はピグメントイエロー180(ジケトピロロピロール:クラリアント製)を用いる。同様にpH8.5においてゼータ電位を測定したところ、分散体7が−49mV、分散体8が−48mVおよび分散体4が−52mVである。
【0062】
(高分子微粒子の製造)
反応容器に滴下装置、温度計、水冷式還流コンデンサー、攪拌機を備え、イオン交換水100部を入れ、攪拌しながら窒素雰囲気70℃で、重合開始剤の過流酸カリを0.2部を添加しておく。イオン交換水7部にラウリル硫酸ナトリウムを0.05部、スチレン15部、テトラヒドロフルフリルアクリレート6部、ブチルメタクリレート5部およびt−ドデシルメルカプタン0.02を入れたモノマー溶液を、70℃に滴下して反応させて1次物質を作成する。その1次物質に、過流酸アンモニウム10%溶液2部を添加して攪拌し、さらにイオン交換水30部、ラウリル硫酸カリ0.2部、スチレン30部、ブチルメタクリレート25部、ブチルアクリレート6部、アクリル酸2部、1、6−ヘキサンジオールジメタクリレート1部、t−ドデシルメルカプタン0.5部よりなる反応液を70℃で攪拌しながら添加して重合反応させた後、水酸化ナトリウムで中和しpH8.5にして0.3μmのフィルターでろ過した高分子微粒子30%水溶液を作成してエマルジョンAとした。上記エマルジョンの一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000によりpH8.5におけるゼータ電位を測定したところ−48mVである。
【0063】
(インクジェットインクの調製例)
以下具体的に、本発明によるインクジェット記録用インクに好適な組成の例を示す。分散体の添加量はその量(固形分濃度:顔料とそれを取り巻く分散ポリマーの合計量)を重量で換算したものとして示す。<>は顔料の粒径をnm単位で示す。また、下記組成のインク(分散体と高分子微粒子の混合状態)の一部をマルバーン社(英国製)のゼータサイザー3000により下記pHにおけるゼータ電位を測定した結果を併記する。
【0064】
<インクジェット記録用インクの作成>
インク水溶液 添加量(%)
1、2―ヘキサンジオール 2.5
トリエチレングリコールモノブチルエーエル 1.0
オルフィンE1010(日信化学製) 0.6
2−ピロリドン 2.0
トリエチレングリコール 2.0
トリメチロールプロパン 5.0
グリセリン 8.0
ニトリロ三酢酸ニナトリウム塩 0.02
ベンゾトリアゾール 0.01
ベンゾイソチアゾロン 0.05
イオン交換水 21.37
【0065】
実施例1 添加量(重量%)
分散体1(105) 7.5
上記インク水溶液 40.0
上記高分子微粒子 4.0
トリエタノールアミン 0.8
イオン交換水 残量
ゼータ電位−50mV(pH8.9)
【0066】
実施例2
分散体2(85) 4.5
上記高分子微粒子 4.0
上記インク水溶液 40.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−48mV(pH9.3)
【0067】
実施例3
分散体3(90) 5.5
上記インク水溶液 40.0
上記高分子微粒子 4.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−49mV(pH9.0)
【0068】
実施例4
分散体4(80) 5.0
上記インク水溶液 40.0
上記高分子微粒子 4.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−49mV(pH9.0)
【0069】
実施例5
分散体1(105) 3.0
上記インク水溶液 40.0
上記高分子微粒子 8.0
トリエタノールアミン 0.9
イオン交換水 残量
ゼータ電位−48mV(pH8.6)
【0070】
実施例6
分散体2(90) 5.0
上記高分子微粒子 3.0
上記インク水溶液 40.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−49mV(pH9.4)
【0071】
実施例7
分散体3(90) 5.0
上記高分子微粒子 3.0
上記インク水溶液 40.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−49mV(pH8.8)
【0072】
実施例8
分散体4(95) 5.5
上記高分子微粒子 3.0
上記インク水溶液 40.0
イオン交換水 残量
ゼータ電位−47mV(pH9.5)
【0073】
表1に作成したインク中の初期のカルシウムイオン、マグネシウムイオン、およびアルミニウムイオンの量とニトリロ三酢酸二ナトリウム塩(NTA)および比較例としてエチレンジアミン4酢酸二ナトリウム塩(EDTA)の添加量と本発明になる水性インクの保存安定性の関係を示す。保存安定性は実施例1〜8に示すインクをガラス製アンプル瓶に入れ密栓後、70℃で1ヶ月放置したときの粘度/初期の粘度の値が1.02未満をA、0.02〜0.05をB、5%を越えて10%以下をC、10%を超えるときをDとする。尚、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、およびアルミニウムイオンの量は上記実施例1〜8のインクを用いて、ICP発光分光法((株)日立製作所製P4010)により測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
表1の結果からニトリロ三酢酸塩の添加で長期の保存安定性が確保されることがわかる。また、ニトリロ三酢酸の添加量は100ppm(0.01%)で、通常顔料由来で存在するカルシウムイオン、マグネシウムイオンおよびアルミニウムイオンの影響をほぼ低減する効果があり、保存安定性も優れることがわかる。エチレンジアミン4酢酸塩の場合は200ppm以上の添加が必要で、顔料によっては添加量が多いと保存安定性が低下することがわかる。
【0076】
表2に印字の評価結果として文字を印字したときのにじみの評価結果を示す。表2においてセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターMJ930Cを用いて1ドットを形成したときの、ドットの最短半径r1、最長半径r2として10ドットの平均でのr2/r1の値を用いて評価する。r2/r2≦2をA、2<r2/r2≦3をB、3<r2/r2≦4をC、4<r2/r2をDということを示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2の結果から本発明で用いるインクジェット記録用インクを用いると印字品質が良好なことが分かり、ニトリロ三酢酸塩を用いても印字が良好である。
【0079】
尚、これらの評価に用いた紙は、ヨーロッパ、アメリカおよび日本の市販されている普通の紙でConqueror紙、Favorit紙、Modo Copy紙、Rapid Copy紙、EPSON EPP紙、Xerox 4024紙、Xerox 10紙、Neenha Bond紙、Ricopy 6200紙、やまゆり紙、Xerox R紙である。
【0080】
以上のように、本発明においては印字画像の紙等の被記録体に対するにじみが低減される高品質なインクジェット記録用インクを提供することができる。
【0081】
また、実施例1〜8のインクをガラス製のサンプル瓶に入れ密栓後、それぞれ60℃/1週間で放置し、放置前後でのインクの発生異物、物性値(粘度、表面張力)について調べた。
【0082】
その結果いずれのインクも異物の発生、物性値の変化が殆ど無く、ニトリロ三酢酸塩を用いても良好な保存安定性である。
【0083】
また、表3に実施例1の組成でニトリロ三酢酸塩の有無と添加剤を変えたときの発生異物、物性値(粘度、表面張力)および吐出安定性を調べた。この場合表1と同じように、カルシウム200ppm、マグネシウム110ppmおよびアルミニウム30ppmを含んでいる。ニトリロ三酢酸塩の添加のないものを比較例とした。実施例1の組成においてTEGmBEとE1010の代りに本発明でよいとする他の添加剤(アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質)を用いて作成したインクと比較例のインクに本発明でよいとする添加剤(アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質)を添加した場合について(表3の実施例9〜18)、同様に70℃/1週間で放置し、放置後のインクの発生異物、物性値(粘度、表面張力)および吐出安定性について調べた結果を表2に示す。異物発生量は60℃放置後の異物量/初期の異物量、粘度は60℃放置後の粘度/初期の粘度、表面張力は60℃放置後表面張力/初期の表面張力の値を示し、吐出安定性はセイコーエプソン株式会社製のインクジェットプリンターPM−900Cを用いて、A4版Xerox P紙に100ページ連続印字して全く印字乱れなど生じないものをA、10個所未満印字乱れのあるものをB、10個所以上100個所未満印字乱れのあるものをC、100個所以上印字乱れのあるものをDとする。表3においてDEGmBEはジエチレングリコールモノブチルエーテル、TEGmBEはトリエチレングリコールモノブチルエーテル、PGmBEはプロピレングリコールモノブチルエーテル、DPGmBEはジプロピレングリコールモノブチルエーテル、1、2−HDは1、2−ヘキサンジオール、1、2−PDは1、2−ペンタンジオール、1、2−ODは1、2−オクタンジオール、4−M−1,2−PDは4−メチル−1、2−ペンタンジオール、オルフィンE1010はアセチレングリコール系界面活性剤(日信化学製)、オルフィンSTGもアセチレングリコール系界面活性剤(日信化学製)、サーフィノール61はアセチレングリコール系界面活性剤(エアプロダクツ製)、BYK347はシリコン系界面活性剤(ビッグケミー製)である。
【0084】
【表3】
【0085】
表3の結果からわかるように、本発明になるアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質とニトリロ三酢酸塩を用いても用いたインクジェット記録用インクは良好な印字品質であり、吐出安定性、保存性安定性に優れるインクジェット記録用インクになることがわかる。また、実施例2〜8についても同様に添加剤を変えて試験を行なったところ、ほぼ同様な結果がえられた。
【0086】
また、表4に、実施例1から8のインクと、それらにおいて高分子微粒子からなるエマルジョンを添加していないものを比較例として、定着性の評価を行なった結果を示す。定着性の評価は普通紙(Xerox4024紙)と専用紙(PM写真用紙)を用いて印刷面とその裏面を300gの荷重で重ね合わせで1m/sの速度で移動させたときのインクの剥がれ具合を観察する方法による。印刷直後、5分後、1時間後、2時間後および3時間後の結果を示す。表4中Aは全く剥がれがないもの、Bはわずかにはがれがあるもの、Cは剥がれがあり裏面に移るもの、Dはかなり剥がれがあり裏面に移るものである。
【0087】
【表4】
【0088】
表4の結果からわかるように、高分子微粒子を添加すると特に専用紙において1時間後には剥がれがなく良好な定着性になり、高分子微粒子を用いたインクでもニトリロ三酢酸塩を用いることができることが分かる。
【0089】
表5に実施例1〜8における顔料分散体のゼータ電位、高分子微粒子のゼータ電位およびマイクロカプセルと高分子微粒子の混合状態でのゼータ電位と、各インクを70℃7日放置したときの異物の発生状態を、ゼータ電位絶対値の低い顔料分散体および高分子微粒子とのゼータ電位の差が大きい分散体を比較例として示す。表5の異物の評価は初期の異物量と70℃7日放置したときの異物量の比の値として示す。表5においてゼータ電位の測定はマルバーン社(英国)のゼータサイザー3000HSを用いてpH4から11までpH依存性を測定した。そして、粒子が安定して存在できるpH9の値を示す。
【0090】
【表5】
【0091】
表5の結果から分かるように本発明になる水性インクは保存安定性が優れ、ゼータ電位の絶対値が低い場合と高分子微粒子とのゼータ電位の差が大きいと異物が発生しやすいことが分かり、ニトリロ三酢酸塩を用いても何ら保存安定性に悪影響を及ぼすことがないことがわかる。
【0092】
尚、本発明はこれらの実施例に限定されると考えるべきではなく、本発明の主旨を逸脱しない限り種々の変更は可能である。
【0093】
【発明の効果】
以上述べたように本発明は普通紙上ではにじみが少なく高発色であり、専用紙上では十分な発色に加えて定着性を有するインクを作成可能であり、インクジェット記録にあってはさらに吐出安定性が優れ、少量でキレート剤としての効果があり、蒸発や昇華等して有害なものではない水性インクを提供するという効果を有する。
Claims (17)
- 色剤と、水と、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、キレート剤とを含む水性インクであって、上記色剤がポリマーで包含されて水に分散可能とされるか、または分散剤なしに分散される分散体であり、上記キレート剤がニトリロ3酢酸またはその塩である、水性インク。
- 前記ニトリロ3酢酸またはその塩の添加量が0.001〜0.1重量%(以下単に%と示すものは重量%を示す)である請求項1に記載の水性インク。
- さらに高分子微粒子を添加してなる請求項1または2に記載の水性インク。
- 前記分散体と前記高分子微粒子の混合状態でのゼータ電位の絶対値が30ミリボルト以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性インク。
- 前記分散体および前記高分子微粒子のゼータ電位の絶対値がそれぞれ独立して30ミリボルト以上であり、該分散体のゼータ電位の値と該高分子微粒子のゼータ電位の値との差が±10ミリボルト以下である請求項4に記載の水性インク。
- 前記色剤が有機顔料または無機顔料であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水性インク。
- 前記高分子微粒子のイオンの極性が前記分散体と同一である請求項3〜6のいずれかに記載水性インク。
- 前記界面活性剤がアセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の水性インク。
- 前記水溶性有機溶剤がアルキレングリコールモノアルキルエーテルおよび/または1,2−アルキレングリコールであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水性インク。
- 前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルが繰り返し単位10以下のアルキレングリコールであって、且つ炭素数4〜10のアルキルエーテルであることを特徴とする請求項9に記載の水性インク。
- 前記アルキレングリコールモノアルキルエーテルがジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエ−テルおよび/または(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルであることを特徴とする請求項9または10に記載の水性インク。
- 前記1,2−アルキレングリコールが分岐してもよい炭素数4〜10のアルキレングリコールであることを特徴とする請求項9に記載の水性インク。
- 前記ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上からなる物質を含むインクであって、該物質の添加量が0.5%以上30%以下であることを特徴とする請求項11または12に記載の水性インク。
- 前記アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上の物質の添加量が0.1%以上5%以下であることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の水性インク。
- 少なくとも前記アセチレンアルコール系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤およびシリコン系界面活性剤から選ばれた1種以上と、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、(ジ)プロピレングリコールモノブチルエーテルおよび1,2−アルキレングリコールから選ばれた1種以上と、を含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれかに記載の水性インク。
- 前記色剤を包含するポリマーが、ポリアクリル酸エステル、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマーからなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載の水性インク。
- 前記高分子微粒子の粒径が10〜500nmであり、添加量が0.1〜20%であることを特徴とする請求項3〜16のいずれかに記載の水性インク。
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