JP2007123119A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】フラッディングに起因する発電出力の低下を抑制するのに有利な燃料電池システムを提供する。
【解決手段】システムは、燃料供給路2と、酸化剤供給路3と、燃料供給路2および酸化剤供給路3のうちの少なくとも一方に設けられたエゼクタ手段6と、発電反応後のオフ流体をエゼクタ手段6の吸引口64に吸引させて帰還させる帰還路7と、エゼクタ手段6の上流の1次圧調整手段81とをもつ。制御装置9は、エゼクタ手段6の1次圧P2を調整することにより、フラッディングが発生する頻度が相対的に高い高頻度運転領域において、オフ流体をエゼクタ手段6の吸引口64から吸引して帰還させる帰還流量QRを増加させる。
【選択図】図2
【解決手段】システムは、燃料供給路2と、酸化剤供給路3と、燃料供給路2および酸化剤供給路3のうちの少なくとも一方に設けられたエゼクタ手段6と、発電反応後のオフ流体をエゼクタ手段6の吸引口64に吸引させて帰還させる帰還路7と、エゼクタ手段6の上流の1次圧調整手段81とをもつ。制御装置9は、エゼクタ手段6の1次圧P2を調整することにより、フラッディングが発生する頻度が相対的に高い高頻度運転領域において、オフ流体をエゼクタ手段6の吸引口64から吸引して帰還させる帰還流量QRを増加させる。
【選択図】図2
Description
本発明はエゼクタ手段を備える燃料電池システムに関する。
従来、特許文献1,2は、エゼクタを備える燃料電池システムを開示している。このものによれば、燃料電池と、燃料流体を燃料電池の燃料入口に供給する燃料供給路と、酸化剤流体を燃料電池の酸化剤入口に供給する酸化剤供給路と、燃料供給路に並列に設けられた複数のエゼクタと、燃料電池から排出された発電反応後の燃料オフガスを各エゼクタの吸引口に吸引させて帰還させる複数の帰還路とを備える燃料電池システムが開示されている。発電運転のときには、水素ストイキ比(燃料電池に供給される水素流量/燃料電池で発電反応により消費される水素流量)を1以上に確保することが多い。このため水素利用率の向上のために、燃料電池の燃料出口から排出されたオフガス(発電反応に使用されなかった水素を含む)を、エゼクタによる吸引作用を利用して燃料供給路に帰還させることにしている。特許文献1では、各エゼクタの絞り路の径はそれぞれ異なる値に設定されている。また、供給する水素流量に対する帰還水素流量は3段階に設定されている。そして、並列に接続された3つのエゼクタをそれぞれ段階毎に用いることにしている。これにより燃料電池の発電出力の全域において、エゼクタの吸引作用による水素帰還が得られる。
また特許文献2は、エゼクタの絞り路の径が可変された燃料電池システムを開示している。このものでは、エゼクタの絞り路の径を変化させることにより、燃料電池の発電出力の全域においてエゼクタの吸引作用による水素帰還が得られる。
特開2004−146098号公報
特開2004−95528号公報
上記した燃料電池システムによれば、発電反応により燃料電池の内部に水が生成される。水は過剰になると、燃料電池の内部の流路を塞ぐことがある。これをフラッディングという。フラッディングが発生すると、反応流体が燃料電池の内部の流路に流れにくくなるため、燃料電池の目標とする発電出力が得られにくくなるおそれがある。フラッディングとは、活物質を含む流体が通過する燃料電池の流路を水で狭くする現象をいう。
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、フラッディングに起因する発電出力の低下を抑制するのに有利な燃料電池システムを提供することを課題とする。
本発明に係る燃料電池システムは、
(a)燃料入口および酸化剤入口をもつ燃料電池と、
(b)燃料源からの燃料流体を燃料電池の燃料入口に供給する燃料供給路と、
(c)酸化剤流体を燃料電池の酸化剤入口に供給する酸化剤供給路と、
(d)燃料供給路および酸化剤供給路のうちの少なくとも一方に設けられ、当該一方を流れる流体を絞って吸引力を発生させる絞り路と、当該一方に連通する吸引口とを備えるエゼクタ手段と、
(e)燃料電池に供給されて燃料電池から排出された発電反応後のオフ流体をエゼクタ手段の吸引口に吸引させて帰還させる帰還路と、
(f)当該一方においてエゼクタ手段の上流に設けられエゼクタ手段の入口側の1次圧を調整可能な1次圧調整手段とを具備する燃料電池システムにおいて、
(g)制御手段が設けられており、制御手段は、燃料電池においてフラッディングが発生する頻度が相対的に高い高頻度運転領域と、フラッディングが発生する頻度が相対的に低い低頻度運転領域とに対応しており、
1次圧調整手段を制御してエゼクタ手段の入口側の1次圧を調整することにより、高頻度運転領域において、オフ流体をエゼクタ手段の吸引口から吸引して当該一方に帰還させる帰還流量を低頻度運転領域よりも増加させることを特徴とする。
(a)燃料入口および酸化剤入口をもつ燃料電池と、
(b)燃料源からの燃料流体を燃料電池の燃料入口に供給する燃料供給路と、
(c)酸化剤流体を燃料電池の酸化剤入口に供給する酸化剤供給路と、
(d)燃料供給路および酸化剤供給路のうちの少なくとも一方に設けられ、当該一方を流れる流体を絞って吸引力を発生させる絞り路と、当該一方に連通する吸引口とを備えるエゼクタ手段と、
(e)燃料電池に供給されて燃料電池から排出された発電反応後のオフ流体をエゼクタ手段の吸引口に吸引させて帰還させる帰還路と、
(f)当該一方においてエゼクタ手段の上流に設けられエゼクタ手段の入口側の1次圧を調整可能な1次圧調整手段とを具備する燃料電池システムにおいて、
(g)制御手段が設けられており、制御手段は、燃料電池においてフラッディングが発生する頻度が相対的に高い高頻度運転領域と、フラッディングが発生する頻度が相対的に低い低頻度運転領域とに対応しており、
1次圧調整手段を制御してエゼクタ手段の入口側の1次圧を調整することにより、高頻度運転領域において、オフ流体をエゼクタ手段の吸引口から吸引して当該一方に帰還させる帰還流量を低頻度運転領域よりも増加させることを特徴とする。
燃料電池の内部では発電反応により水が生成する。発電反応で生成した水は、フラッディングの要因となる。
本発明によれば、エゼクタ制御手段は、エゼクタ手段の上流の1次圧調整手段を制御することにより、エゼクタ手段の1次圧を調整する。これにより、燃料電池においてフラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域において、低頻度運転領域よりも、オフ流体をエゼクタ手段の吸引口から吸引する流量を増加させ、当該一方に帰還させる帰還流量を増加させる。
フラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域において、前記した帰還流量が増加すれば、燃料電池に供給される流体の流量が増加する。このため、燃料電池の内部の流路に存在している生成水等の水等といった発電反応を低下させる要因となり得る物質を、燃料電池の内部の流路から押し出す効果が増加する。これにより燃料電池の内部において反応流体の通過性が向上する。ひいては燃料電池の発電出力が確保される。
ここで、フラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域、フラッディングが発生する頻度が低い低頻度運転領域は、燃料電池の運転条件、種類、用途等に応じて適宜変更される。車両搭載用または定置用等であるときには、燃料電池の定格運転の発電出力の最高値(定格出力)を100%とするとき、低頻度運転領域は、発電出力が30%以下あるいは20%以下である形態が例示される。あるいは20%以下でも良い。高頻度運転領域は、発電出力が40%以上、50%以上、60%以上である形態が例示される。あるいは70%以上でも良い。但し、これに限られるものではない。
一般的には、フラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域は、燃料電池の発電出力が高い高出力運転領域に相当する。また、フラッディングが発生する頻度が低い低頻度運転領域は、燃料電池の発電出力が高出力運転領域よりも低い低出力運転領域に相当する。低出力運転領域は、燃料電池の定格運転の発電出力の最高値(定格出力)を100%とするとき、発電出力が30%以下あるいは20%以下である形態が例示される。また、高出力運転領域は、燃料電池の定格運転の最高値(定格出力)を100%とするとき、発電出力が40%以上、50%以上、60%以上である形態が例示される。但し、これに限られるものではない。
本発明によれば、エゼクタ制御手段は、エゼクタ手段の上流の1次圧調整手段を制御することにより1次圧を調整する。これにより、燃料電池においてフラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域において、フラッディングが発生する頻度が低い低頻度運転領域よりも、当該一方に帰還させる帰還流量を増加させる。このため高頻度運転領域において、燃料電池の内部においてフラッディングを発生させている水を移動させて除去することができる。故に、燃料電池の発電出力を高めることができる。
燃料電池システムは、燃料電池と、燃料供給路と、酸化剤供給路と、エゼクタ手段と、エゼクタ手段の入口側の1次圧を調整する1次圧調整手段とを備えている。燃料電池は、燃料入口および酸化剤入口をもつ。燃料供給路は、燃料源からの燃料流体を燃料電池の燃料入口に供給する。酸化剤供給路は、酸化剤流体を燃料電池の酸化剤入口に供給する。燃料流体としては燃料ガスが例示される。燃料ガスとしては一般的には水素ガス、水素含有ガスが例示される。従って燃料源としては、水素タンク等の燃料タンクが例示される。酸化剤流体としては酸素含有ガスが例示される。
エゼクタ手段は、燃料供給路および酸化剤供給路のうちの少なくとも一方に設けられている。エゼクタ手段とは、流体を絞ることにより流速を高めて吸引力を発生させ、帰還路から流体を吸引させるものを意味する。エゼクタ手段が燃料供給路に設けられているときには、燃料電池から排出された燃料オフ流体を燃料供給路に帰還させる。エゼクタ手段が酸化剤供給路に設けられているときには、燃料電池から排出された酸化剤オフ流体を酸化剤供給路に帰還させる。ここで、エゼクタ手段は燃料供給路に設けられていることが好ましい。この場合、発電反応を経た後の燃料オフ流体に含有されている燃料成分を再利用するのに有利である。ここで、オフ流体は燃料電池から排出された流体を意味する。
エゼクタ手段は、当該一方を流れる流体を絞って吸引力を発生させる絞り路と、絞り路に連通する吸引口とを備えている。そして、燃料電池から排出された発電反応後のオフ流体を、エゼクタ手段は、吸引口から吸引力により吸引し、当該一方に帰還させる。1次圧調整手段は、当該一方においてエゼクタ手段の上流に設けられており、エゼクタ手段の入口側の1次圧を調整できるものであれば良い。1次圧調整手段としては、エゼクタ手段の上流に設けられた制御弁が例示される。
本発明によれば、制御手段が設けられている。制御手段は、エゼクタ手段の上流の1次圧調整手段を制御することによりエゼクタ手段の入口側の1次圧を調整する。これにより、燃料電池1においてフラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域において、フラッディングが発生する頻度が低い低頻度運転領域よりも、オフ流体をエゼクタ手段の吸引口から吸引して当該一方に帰還させる帰還流量を増加させる。
この場合、制御手段は、フラッディングが発生する頻度が低い低出力運転領域においては、燃料電池から排出されたオフ流体をエゼクタ手段の吸引口に帰還させない形態が例示される。ここで、フラッディングが発生する頻度が低い低出力運転領域は、燃料電池の定格運転の発電出力の最高値(定格出力)を100%とするとき、発電出力が30%以下である形態が例示される。従って、フラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域は、燃料電池の発電出力が高い高出力運転領域(高負荷運転領域)、または、燃料電池の発電出力が中程度である中出力運転領域である。フラッディングが発生する頻度が低い低頻度運転領域は、燃料電池の発電出力が低い低出力運転領域(低負荷運転領域)である。
本発明によれば、エゼクタの吸引口の圧力(図2におけるP4)としては発電出力が変動したとしても、基本的にはほぼ一定領域となる形態が例示される。ここで、燃料電池の定格運転の発電出力の最高値(定格出力)を100%とするとき、発電出力が0〜100%の運転領域にわたり、エゼクタ手段の吸引口の圧力としては、基準圧(a,絶対圧)に対してプラスマイナス25%以内に維持される形態が例示される。なお、プラスマイナス20%以内、10%以内としても良い。但しこれに限られるものではなく、エゼクタの吸引口の圧力は発電出力に応じて多少変動する形態でも良い。例えば、後述する図4において、発電出力が高くなるにつれて圧力P4が多少増加する傾向でも良いし、あるいは、発電出力が高くなるにつれて圧力P4が多少減少する傾向でも良い。
制御手段としては、マップおよび/または演算式を記憶する記憶手段を有する形態が例示される。この場合、マップおよび/または演算式は、燃料電池の発電出力に関する情報と、エゼクタ手段の入口側の1次圧に関する情報との関係を規定する。ここで、発電出力に関する情報としては、燃料電池の発電出力、燃料電池で作動される負荷の大きさ等が例示される。エゼクタ手段の入口側の1次圧に関する情報としては、エゼクタ手段の入口側に設けられる制御弁の開度が例示される。制御手段は、記憶手段のマップおよび/または演算式に基づいて、燃料電池の発電出力に応じて制御弁の開度を制御することができる。
エゼクタ手段の絞り路としては、絞り路の開口面積が固定値である形態が例示される。エゼクタ手段は当該一方において1個設けられている形態が例示される。制御弁は、エゼクタ手段の1次圧を制御するために、当該一方においてエゼクタ手段の上流に設けられている。制御弁としては、流体の圧力を減圧する減圧弁でも良いし、流体の流量を調整する制御弁でも良い。
本発明によれば、燃料電池の発電運転を停止するときには、制御手段は、燃料電池から排出されたオフ流体が当該一方に帰還する流量を抑止するように、エゼクタ手段の1次圧を調整しつつ、当該一方に流体を供給させる形態が例示される。即ち、燃料電池の発電運転を停止するときには、制御手段は、燃料電池から排出されたオフ流体が当該一方に帰還する帰還流量が0(実質的に0を含む)になるようにエゼクタ手段の1次圧を調整しつつ、当該一方に流体を供給させる形態が例示される。この場合、燃料電池の発電運転を停止するとき、帰還流量(水または水蒸気を含むことがある)を0(実質的に0を含む)に維持しつつ、当該一方に流体を供給させる。このため、エゼクタ手段を含む供給路に水が滞留することが抑制される。これにより寒冷地等において、運転停止後における水の凍結が抑制される。
以下、本発明の一実施例について図1〜図7を参照して説明する。図1は燃料電池システムを示す。燃料電池システムは車両搭載用または定置用に使用できる。この燃料電池システムは、図1に示すように、燃料極および酸化剤極をもつ複数のセルを積層した固体高分子形の燃料電池1(スタック)と、燃料源20(燃料タンク)から吐出された燃料流体である燃料ガス(一般的には水素ガス、水素含有ガス)を燃料電池1の燃料入口10に供給する燃料供給路2と、酸化剤ガス(一般的には空気等の酸素含有ガス)を燃料電池1の酸化剤入口13に供給する酸化剤供給路3とをもつ。
更に、燃料電池1の燃料出口11から排出される燃料オフガスを排出する燃料排出路4が設けられている。燃料排出路4には、燃料排出路4を開閉するパージ弁42が設けられている。燃料排出路4は気液分離部40が設けられている。燃料オフガスに含まれている水分は気液分離部40により除去される。燃料電池1の酸化剤出口14から排出される酸化剤オフガス(一般的には空気オフガス)を排出する酸化剤排出路5が設けられている。
更に、燃料電池システムは、燃料供給路2に設けられたエゼクタ6(エゼクタ手段)と、燃料電池1の燃料出口11から排出された燃料オフガスを燃料供給路2に帰還させる帰還路7と、燃料供給路2においてエゼクタ6の上流であり燃料源20の下流に設けられた制御弁要素8とを備えている。エゼクタ6は燃料供給路2に1個設けられており、制御弁要素8に対して直列とされている。制御弁要素8は、1次圧調整手段として機能する第1制御弁81と、第1制御弁81よりも上流に直列に設けられた第2制御弁82とをもつ。第1制御弁81は減圧機能をもつ弁とされている。制御弁要素8を制御する制御装置9(制御手段)が設けられている。制御装置9は、入力処理回路90とCPU91とメモリ92と出力処理回路93とを有する。燃料電池1の運転温度に関する信号T1、燃料電池1の発電出力に関する信号W1、第1制御弁81の開度に関する信号θ1、第2制御弁82の開度に関する信号θ2等の信号が、入力処理回路90を介して制御装置9に入力される。
図2に示すように、エゼクタ6は、燃料源20側の第1制御弁81に繋がる入口60と、燃料電池1の燃料入口10に連通する出口62と、入口60および出口62の間に形成された絞り能力をもつノズルとしての絞り路63と、絞り路63および出口62の間に形成された吸引口64とを備えている。エゼクタ6の絞り路63は、絞り径が固定値とされた固定絞りとされている。エゼクタ6は固定絞り方式であるため、構造の簡素化およびコスト低廉に有利である。絞り路63は、燃料供給路2を流れる燃料ガスの流量を絞って流速を高め、吸引力を発生させる。吸引口64は帰還路7の先端部70に連通する。
燃料源20(燃料タンク)から吐出された燃料ガスは、第2制御弁82(高圧減圧弁)で減圧され、更に、第1制御弁81(低圧減圧弁)で減圧され、その後、エゼクタ6の入口60に流入し、絞り路63、出口62を経て、燃料電池1の燃料入口10に供給される。
燃料ガスはエゼクタ6の絞り路63で絞られる。燃料ガスの流速はエゼクタ6の絞り路63で増加するため、ベルヌーイの定理により燃料ガスの静圧が低下する。ここで、その静圧がエゼクタ6の吸引口64の静圧よりも高いと、帰還路7のオフガスはエゼクタ6の吸引口64に吸い込まれない。しかしながらその静圧がエゼクタ6の吸引口64の静圧より低下すると、帰還路7のオフガスがエゼクタ6の吸引口64からエゼクタ6内に吸い込まれる。この結果、エゼクタ6の入口60を経て絞り路63を流れる燃料ガスと、帰還路7のオフガスとが合流する。合流した燃料ガスがエゼクタ6の出口62を経て燃料電池1の燃料入口10に供給される。このようにして燃料電池1の燃料出口11から排出されたオフガスが帰還路7およびエゼクタ6を介して帰還する。ここで、必要に応じて、パージ弁42を開放することにより、オフガスを排出路4の排出部44から排出できる。
図2に示すように、第1制御弁81の弁口81aに供給される燃料ガスの1次圧をP1とする。エゼクタ6の入口60に供給される燃料ガスの1次圧をP2とする。燃料電池1の燃料入口10に供給される燃料ガスの1次圧をP3とする。エゼクタ6の吸引口64の圧力をP4とする。
図3は、燃料電池1の燃料極について、燃料電池1の運転温度毎において、フラッディングが発生する頻度の高低を示すマップの一例を示す。ここで、×印は、低頻度運転領域よりも、フラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域を意味する。○印は、フラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域よりも相対的に低い低頻度運転領域を意味する。○印で示される低頻度運転領域においては、燃料オフガスを帰還させないように設定している。これに対して、×印で示される高頻度運転領域においては、燃料オフガスを帰還させるように設定している。図3において、燃料電池1の運転温度は、燃料電池の出口部の冷却水の温度を意味する。発電出力100%は発電出力の最高値(定格出力)を意味する。
図3に示すように、発電出力が増加するにつれて、フラッディングが発生する頻度が高くなり高頻度運転領域となる。これに対して発電出力が減少するにつれて、フラッディングが発生する頻度が低くなる低頻度運転領域となる。制御装置9のメモリ92には、図3に示すマップに対応するデータが格納されている。ここで、マップは、燃料電池1の発電出力と燃料電池1の運転温度とをパラメータとするとき、エゼクタ6の1次圧P2(第1制御弁81の開度)等を規定している。
燃料電池1の運転温度に関する信号T1、燃料電池1の発電出力に関する信号T2、第1制御弁81の開度に関する信号θ1、第2制御弁82の開度に関する信号θ2等が制御装置9に入力される。燃料電池1の運転温度および発電出力に応じて、制御装置9は、メモリ92に格納されているマップを検索し、エゼクタ6の1次圧P2(第1制御弁81の開度)に関する情報を求める。それに応じて制御装置9は第1制御弁81に指令する。このようにして制御装置9は、燃料電池1の発電出力および燃料電池1の運転温度に応じて、第1制御弁81の開度を制御し、エゼクタ6の1次圧P2を制御する。これによりフラッディングを抑制するように帰還流量を決定する。
本実施例によれば、フラッディングが発生する頻度が相対的に高い高頻度運転領域とし、フラッディングが発生する頻度が相対的に低い低頻度運転領域とするとき、制御装置9は、エゼクタ6の1次圧P2を調整することにより、低頻度運転領域においては、オフ流体をエゼクタ6の吸引口64から吸引しない。即ち、低頻度運転領域においては、燃料供給路2に帰還させる帰還流量QRを0とする。
これに対して、高頻度運転領域においては、低頻度運転領域よりも、燃料オフ流体をエゼクタ6の吸引口64から吸引して燃料供給路2に帰還させる帰還流量QRを増加させる制御を実行する。フラッディングが発生する頻度が相対的に中程度の中頻度運転領域では、発電出力に応じて帰還流量QRを高頻度運転領域よりも小さくしても良い。あるいは、0としても良い。ここで、燃料オフガスは、燃料電池1の燃料出口11から排出されるオフガスを意味する。
帰還流量QRについての一例を説明する。ここで、エゼクタ6の絞り路63を流れるガスの速度は、基本的には、エゼクタ6の入口60を流れるガス流量と、エゼクタ6の1次圧P2と、エゼクタ6の2次圧P3とで決定される。本実施例によれば、図4に示すように、燃料電池1の発電出力に関係なく、燃料電池1の燃料出口11側の圧力に相当するエゼクタ6の吸引口64の圧力P4の変動が抑制され、圧力P4は基本的にはほぼ一定領域内に納まるような形態とされている(P4≒a)。圧力P4が基本的にはほぼ一定領域内となるような制御形態とすれば、燃料電池の発電量が増加するにつれて帰還流量が増量させにくくなるという問題を回避し易い。
この場合、燃料源20から燃料供給路2および制御弁要素8を経てエゼクタ6の入口60に供給される燃料ガスの流量QAは、基本的には、燃料電池1の発電出力に基づいて決定される。従って、燃料源20から制御弁要素8を経てエゼクタ6に供給される燃料ガスの流量QAに基づいて、エゼクタ6の入口60に流入するガスの1次圧P2が決定される。
図5は、燃料電池1の発電出力とエゼクタ6の入口60側の1次圧P2との関係を模式的に示す。本実施例によれば、エゼクタ6の1次圧P2は、図5の特性線S2に示す傾向に設定されている。横軸の100%(max)は定格出力を意味する。図5の特性線S2に示すように、判定基準点X1が設けられている。判定基準点X1は、燃料ガスの成分、圧力、エゼクタ6の構造等に基づいて調整される。判定基準点X1の最大値は、フラッディングが起きない発電出力として決められている。本実施例では、判定基準点X1の変動範囲が定格出力(100%)に対して15〜20%になるように設定されている。判定基準点X1の最大値は、定格出力(100%)に対して20%に設定されている。判定基準点X1未満が低出力運転領域MA、判定基準点X1以上が高出力運転領域MBとされている。
図5に示すように、判定基準点X1においては、エゼクタ6の1次圧P2は、(1.5〜1.8)×aで示される圧力に増加されている。判定基準点X1よりも高出力側の高出力運転領域XBになると、エゼクタ6の1次圧P2は次第に増加する。そして、燃料電池1の定格出力(max,100%)のときには、エゼクタ6の1次圧P2は、(8〜10)×aで示される圧力に増加されており、かなり高圧化する。上記したように燃料電池1の発電出力に応じて、制御装置9は第1制御弁81の開度を制御することにより、エゼクタ6の1次圧P2を特性線S2(図5参照)に示すように制御する。
図6は、燃料電池1の発電出力とエゼクタ6の出口62側の2次圧P3との関係を示す。エゼクタ6の入口60の1次圧P2が上記した特性線S3に示すように制御されると、エゼクタ6の出口62側の2次圧P3は、図6の特性線S3に示すようになる。即ち、図6の特性線S3に示すように、エゼクタ6の1次圧P3は、発電出力が0%から判定基準点X1までの低出力運転領域MAでは、aで示される圧力とされる。この低出力運転領域MA領域では帰還流量QRは0とされている。
これに対して、高出力運転領域MB(フラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域に相当する)に移行すると、図6の特性線S3として示すように、エゼクタ6の2次圧P3は次第に増加する。そして、燃料電池1の定格出力(100%)のときには、エゼクタ6の2次圧P3は、a+bで示される圧力に増加されている。
計算によれば、燃料ガスが水素を主成分とすると共に窒素および水蒸気を含む混合ガスである場合には、上記した圧力aは120〜300kPa(abs)程度とすることができる。圧力bは10〜60kPa程度とすることができる。absは絶対圧を意味する。第1制御弁81の1次圧P1は例えば0.6〜4MPa(abs)とすることができる。このように第1制御弁81の開度を調整すれば、上記したようにエゼクタ6の1次圧P2を調整することができ、ひいては高出力運転領域MBにおいて帰還ガス量QRを調整することができる。
更に説明を加える。帰還路7を経てエゼクタ6の吸引口64から吸引する燃料オフガスの流量、つまり、帰還流量QRは、基本的には、燃料電池1の燃料入口10の圧力P3(エゼクタ6の吐出圧に相当)と、エゼクタ6の吸引口64の圧力P4との比率(=P4/P3)に基づいて決定される。この比率(=P4/P3)が高いと、エゼクタ6の吸引口64から吸引するガスの流量、つまり、燃料オフガスの帰還流量QRが増加する。これに対して、この比率(=P4/P3)が低いと、エゼクタ6の吸引口64から吸引するガスの流量、つまり、燃料オフガスの帰還流量QRが減少する。図6において、低出力から判定基準点X1までの低出力運転領域MAにおいては、帰還流量QRは0とされる。これに対して高出力運転領域MBにおいては、帰還流量QRは次第に増加する。
ここで、エゼクタ6の吸引口64側の圧力P4が実質的に一定圧a(図4参照)とすると、燃料電池1の燃料入口10の圧力P3は、図6の特性線S3に示すように、低出力運転領域MAでは基本的には圧力aである。そして圧力P3は、発電出力が相対的に高い高出力運転領域MBでは、エゼクタ6の吸引口64から吸引されて帰還する帰還ガス量QRを考慮すると、増加する。定格出力(max,100%)では、圧力P3はa+bの圧力となる。ここで、帰還路7を経てエゼクタ6に帰還する帰還ガス量QRは、ガスの組成に影響される。ガス成分の比重の影響を受けるためである。
制御弁要素8を経て燃料供給路2に供給される供給流量をQAとすると、計算によれば、帰還するガスが、モル%で、水素:窒素:水蒸気=67:17:16の組成をもつ混合ガスである場合には、発電出力が15〜20%のとき、供給流量QAに対して帰還ガス量QRはモル%で20%以上を期待することができる。即ち、供給流量QAを100%とすると、帰還ガス量QRと供給流量QAとが合流した流量としては、120%以上を期待できる。
これに対して帰還ガスが純水素ガスである場合には、計算によれば、発電出力が15〜20%のとき、帰還ガス量QRは供給流量QAに対して40%以上を期待することができる。このように高出力運転領域MB(フラッディングが発生する頻度が高い高頻度運転領域に相当する)において、帰還流量QRが増加すれば、燃料電池1に供給されるガスの流量が増加する。このため、燃料電池1の内部の流路に存在している生成水等の水等といった発電反応を低下させる要因となり得る物質を、流路から押し出す効果が増加する。これにより燃料電池1の流路の通気性が確保され、フラッディングが抑制され、燃料電池1の発電出力が維持される。なお、過剰な水蒸気、さらには、不純物ガス等といった発電反応を低下させる要因となり得る物質を、流路から押し出す効果も増加する。
図7は、燃料電池1の発電出力と帰還流量QRとの関係を模式的に示す。図7の特性線S0は、発電出力に応じた帰還流量QRの目標最低値を示す。特性線S0に示すように、フラッディングを抑制するためには、燃料電池1の発電出力が増加するにつれて、帰還流量QRの目標最低値を次第に増加させる。図7の特性線SAは、上記した混合ガスを用いたときにおける帰還流量QRを示す。図7の特性線SBは、純水素ガスを用いたときにおける帰還流量QRを示す。特性線SA,SBに示すように、燃料電池1の発電出力が判定基準点X1以下の低出力運転領域MAでは、実際の帰還流量QAは0とされる。これに対して判定基準点X1を超える高出力運転領域MBにおいては、特性線SA,SBに示すように、帰還流量QRの目標最低値(特性線S0)よりも多く設定する。この点を考慮して、第1制御弁81の開度を調整してエゼクタ6の1次圧P2を調整する。
ところで、燃料電池1の燃料出口から排出された燃料オフガスは、水分または水蒸気を含むことが多い。このため、燃料電池の運転終了時に、燃料オフガスを帰還路70を介してエゼクタ6に帰還させると、寒冷地等では、運転停止後の凍結の要因となるおそれがある。この点について本実施例によれば、前述したように図3に示すフラッディングマップにおいて、○印で示される低頻度運転領域においては、フラッディングが発生しないか低頻度であるため、帰還流量QRが0になるように1次圧P2を設定している。このように制御装置9は帰還流量QRを0にする領域を設定している。
このため本実施例によれば、燃料電池1の発電運転を停止する終了処理のときには、燃料電池1の燃料出口から排出された燃料オフガスが燃料供給路2に帰還する帰還流量QRが0になるように、エゼクタ6の1次圧P2を調整しつつ、燃料供給路2に燃料ガスを供給する。このようにすれば、終了処理時において、水分または水蒸気を含む燃料オフガスがエゼクタ6を介して燃料供給路2に吸引されない。従って、エゼクタ6を含む燃料供給路2における滞留水を除去または低減するのに有利となる。これにより寒冷地等において、運転停止後における水の凍結が抑制される。よって、燃料供給路2の凍結閉鎖が抑制される。終了処理では、パージ弁42を開放させることが好ましい。
図8および図9は一般的なエゼクタの資料を示す。図8は、エゼクタ6の入口60に供給される主流流量とエゼクタ6の入口60側の1次圧P2との関係を示す。図8に示すように、主流流量が増加すると、エゼクタ6の1次圧P2は増加する。主流流量が増加すると、エゼクタ6の絞り路63を流れるガスの流速が音速領域となる。主流流量が減少すると、エゼクタ6の絞り路63を流れるガスの流速が亜音速領域となる。図9は、エゼクタ6の入口60に供給される主流流量と帰還流量QRとの関係を示す。図9から理解できるように、主流流量が増加すると、エゼクタ6による帰還流量QRは増加する。主流流量が増加すると、エゼクタ6の絞り路63を流れるガスの流速が音速領域となる。主流流量が減少すると、エゼクタ6の絞り路63を流れるガスの流速が亜音速領域となる。本実施例によれば、音速領域で用いても良く、あるいは、亜音速領域で用いても良い。
(他の実施例)
上記した各実施例によれば、制御装置9のメモリ92には、図3に示すマップのデータが格納されている。制御装置9では、図3のマップにおいて×印で示される高頻度運転領域においては帰還流量QRが所定の値として設定されている。また、○印で示される低頻度運転領域においては帰還流量QRが0として設定されている。
上記した各実施例によれば、制御装置9のメモリ92には、図3に示すマップのデータが格納されている。制御装置9では、図3のマップにおいて×印で示される高頻度運転領域においては帰還流量QRが所定の値として設定されている。また、○印で示される低頻度運転領域においては帰還流量QRが0として設定されている。
しかしながらマップ方式に限らず、演算方式を採用しても良い。即ち、燃料電池1の運転温度に関する信号T1と、燃料電池1の発電出力に関する信号W1等とに基づいて、現在の発電運転が高頻度運転領域である否かを求める。そして、現在の発電運転が高頻度運転領域であるときにおいては、制御装置9は、所定の演算式αに基づいて、第1制御弁81の開度Vを所定の値に設定する。現在の発電運転が低頻度運転領域であるときにおいては、制御装置9は、所定の演算式αに基づいて、帰還流量QRが0になるように第1制御弁81の開度Vを設定する。演算式αとしては、前記したT1,W1をパラメータとして、第1制御弁81の開度Vを求める関数式が挙げられる。開度V=f(T1,W1)が例示される。
上記した実施例によれば、圧力P4は基本的にはほぼ一定領域内に納まるような形態とされているが、これに限らず、圧力P4が多少変動する形態でも良い。
その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
本発明は車載用、定置用等の燃料電池システムに利用することができる。
10は燃料入口、13は酸化剤入口、1は燃料電池、20は燃料源、2は燃料供給路、3は酸化剤供給路、6はエゼクタ(エゼクタ手段)、63は絞り路、64は吸引口、7は帰還路、8は制御弁要素、81は第1制御弁(1次圧調整手段)を示す。
Claims (6)
- (a)燃料入口および酸化剤入口をもつ燃料電池と、
(b)燃料源からの燃料流体を前記燃料電池の前記燃料入口に供給する燃料供給路と、
(c)酸化剤流体を前記燃料電池の前記酸化剤入口に供給する酸化剤供給路と、
(d)前記燃料供給路および前記酸化剤供給路のうちの少なくとも一方に設けられ、当該一方を流れる流体を絞って吸引力を発生させる絞り路と、当該一方に連通する吸引口とを備えるエゼクタ手段と、
(e)前記燃料電池に供給されて前記燃料電池から排出された発電反応後のオフ流体を前記エゼクタ手段の前記吸引力により前記吸引口に吸引させて当該一方に帰還させる帰還路と、
(f)当該一方において前記エゼクタ手段の上流に設けられ前記エゼクタ手段の入口側の1次圧を調整可能な1次圧調整手段とを具備する燃料電池システムにおいて、
(g)前記制御手段が設けられており、前記制御手段は、
前記燃料電池においてフラッディングが発生する頻度が相対的に高い高頻度運転領域と、フラッディングが発生する頻度が前記高頻度運転領域よりも相対的に低い低頻度運転領域とに対応しており、
前記1次圧調整手段を制御して前記エゼクタ手段の入口側の1次圧を調整することにより、前記高頻度運転領域において、前記オフ流体を前記エゼクタ手段の前記吸引口から吸引して当該一方に帰還させる帰還流量を前記低頻度運転領域よりも増加させることを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1において、前記制御手段は、フラッディングが発生する頻度が相対的に低い前記低頻度運転領域においては、前記燃料電池から排出された前記オフ流体を前記エゼクタ手段の前記吸引口に帰還させないことを特徴とする燃料電池システム。
- 請求項1また2において、フラッディングが発生する頻度が相対的に低い前記低頻度運転領域は、前記燃料電池の定格運転の発電出力の最高値を100%とするとき、発電出力が30%以下であることを特徴とする燃料電池システム。
- 請求項1〜3のうちのいずれか一項において、前記制御手段はマップおよび/または演算式を記憶する記憶手段を有しており、
前記マップおよび/または演算式は、前記燃料電池の発電出力に関する情報と前記エゼクタ手段の入口側の1次圧に関する情報との関係を規定しており、
前記制御手段は、前記記憶手段のマップおよび/または演算式に基づいて前記燃料電池の前記発電出力に応じて前記エゼクタ手段の入口側の1次圧を制御し、前記帰還流量を制御することを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1〜4のうちのいずれか一項において、前記エゼクタ手段の前記絞り路は、前記絞り路の開口面積が固定値であることを特徴とする燃料電池システム。
- 請求項1〜5のうちのいずれか一項において、前記燃料電池の発電運転を停止するときには、前記制御手段は、前記燃料電池から排出されたオフ流体が当該一方に帰還する帰還流量が0になるように前記エゼクタ手段の1次圧を調整しつつ、当該一方に流体を供給させることを特徴とする燃料電池システム。
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