以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)について、図面を参照し説明する。
図1は、本実施形態の車載用燃料電池システムの排出ガス希釈装置(以下、単に排出ガス希釈装置ともいう)の構成を示す図である。
本実施形態の車載用燃料電池システムは、大別して、水素ガスを燃料として電力を生成する燃料電池1と、燃料電池1から排出される水素ガスを希釈して車両外に排出する排出水素ガス希釈装置2と、を備えている。
車載用燃料電池システムの燃料電池1は、燃料極10に水素ガスが供給され、空気極12に空気(酸素を含んだ酸化ガスとして)が供給され、触媒を利用した電気化学反応により電力を発生させる。
本実施形態の排出水素ガス希釈装置2は、燃料電池1の燃料極10側から排出される水素ガスを空気極12側から排出される空気流で希釈する。本実施形態において特徴的な点は、水素ガスが空気流に対して基準濃度以下になるように制御されている点である。以下、詳細に説明する。
まず、空気極12に供給され、反応に使用された空気は、空気流路14に導かれ、車両外に排出されるようになっている。燃料極10に供給され、電気化学反応で未反応となった水素ガスは、水素ガス流路16に導かれ、再び燃料電池1の燃料極10に供給され、一部の水素ガスが、この水素ガス流路16から分岐され、空気流路14に放出され車両外に排出される。
排出水素ガス希釈装置2は、燃料極10から排出された水素ガスを一時的に滞留させるバッファタンク18を備える。バッファタンク18は、水素ガス流路16に接続され水素ガスを導入する導入路20と、空気流路14に接続されバッファタンク18の水素ガスを空気流路14に導出する導出路22と、を備えている。導入路20には、所定のタイミングで開閉されるシャットバルブ24が備えられ、導出路22には、バッファタンク18から導出される水素ガスの流量を調整する電磁バルブ26が、備えられている。
シャットバルブ24が所定のタイミング、例えば30秒毎に2秒間開かれ、水素ガス流路16に導かれた水素ガスが間欠的にバッファタンク18に導入される。バッファタンク18は、水素ガスを一時的に滞留させた後、導出路22から空気流路14に導出する。後述するように、本実施形態において、この電磁バルブ26が制御されることにより、導出路22から空気流路14に導出する水素ガスの流量を調整し、空気流路14に導出された水素ガスが空気流に対して基準濃度以下になるように制御している。
排出水素ガス希釈装置2は、更に、空気流路14の流量を検出する流量センサ28と、バッファタンク18の圧力を検出する圧力センサ30と、電磁バルブ26の開度を示すバルブ開度テーブルを記憶するメモリ32と、流量センサ28と圧力センサ30の検出値と、バルブ開度テーブルとに基づいて電磁バルブ26を制御する制御回路34と、を備えている。
流量センサ28は、バッファタンク18の導出路22から水素ガスが導出される位置よより上流側の空気流路14に設けられており、空気流路14の空気流の流量を検出する。流量センサ28で検出された流量の検出信号は、制御回路34に入力される。
圧力センサ30は、バッファタンク18に設けられ、バッファタンク18内の圧力を検出する。圧力センサ30で検出された圧力の検出信号は、流量センサ28の検出信号と同様、制御回路34に入力される。
メモリ32には、電磁バルブ26の開度を示すバルブ開度テーブルが記憶されている。バルブ開度テーブルは、この水素ガスの流量が空気流の流量に対して基準濃度以下になるように空気流の流量とバッファタンク内の水素ガスの圧力とバルブの開度との相関関係を示すテーブルである。図2は、バルブ開度テーブルの例を示す図である。
図2は、バルブ開度テーブルの例を示す図であり、このバルブ開度テーブルについて、図3,図4を用いて説明する。
図3は、バッファタンク18内の圧力の時間変化を示す図である。図3に示すように、バッファタンク18内の圧力は、水素ガスの間欠的な導入に従って瞬間的に上昇し、導出路22から水素ガスが導出されるに従ってバッファタンク18内の圧力は減少する。従って、バッファタンク18から導出される水素ガスの流量を調整するためには、このような圧力変化に対応して、バッファタンク18内の圧力が高くなるとバルブ開度を小さくし、バッファタンク18内の圧力が低くなるとバルブ開度を大きくすることが必要である。また、図4は、水素ガスが空気流に対して基準濃度以下になるような水素ガスの流量と空気の流量の関係を示したグラフである。図4に基づけば、空気流の流量が少なければ希釈が許容される水素ガスの流量は少なく、空気流の流量が多ければ希釈が許容される水素ガスの流量も多くなることが理解される。
従って、図2に示すバルブ開度テーブルでは、バッファタンク18内の圧力変化に対応して、バッファタンク18内の圧力が高くなるとバルブ開度を小さくし、バッファタンク18内の圧力が低くなるとバルブ開度を大きくするようなテーブルが記憶されている。更に、図4に基づいて、空気流路14の空気流の流量に応じたバルブ開度テーブル(1)〜(6)が記憶されている。バルブ開度テーブル(1)から(6)に従って空気流の流量は多くなる。なお、バルブ開度テーブル(1)は空気流量が0の場合であり、この場合には、バルブは閉められるように設定されている。また、バルブ開度テーブル(6)は、空気流量が規定値以上になった場合であり、この場合にはバルブは全開(制御が解除)するように設定されている。このように、メモリ32は、図2に示すような、水素ガスの流量が空気流の流量に対して基準濃度以下になるように空気流の流量とバッファタンク内の水素ガスの圧力とバルブの開度との相関関係を示すバルブ開度テーブルを記憶している。これにより、電磁バルブ26を制御することができ、バッファタンク18から導出される水素ガスの流量を調整することができる。
なお、水素ガスの基準濃度は、適宜設定されるが、可燃不可能な範囲である4%以下であることが好適である。
制御回路34には、上述したように、流量センサ28と圧力センサ30の検出値が入力される。制御回路34は、流量センサ28と圧力センサ30の検出値に基づいて、メモリ32のバルブ開度テーブルを参照し、電磁バルブ26の開度を決定する。流量センサ28が少ない空気流の流量を検出した場合には、例えばバルブ開度テーブル(2)が選択され、電磁バルブ26の開度を決定する。圧力センサ30で検出される圧力が高くなると、バルブ開度テーブル(2)に基づいて電磁バルブ26の開度を小さくしていく。また、流量センサ28が多い空気流の流量を検出した場合には、例えばバルブ開度テーブル(3)が選択され、このバルブ開度テーブル(3)に基づいて電磁バルブ26の開度を決定する。このようにして、電磁バルブ26の開度が決定されると、動作信号が電磁バルブ26に出力される。この動作制御信号は、例えばアナログ信号である。
電磁バルブ26は、制御回路34からの動作制御信号により開度が制御される。ここでバルブの開度とは、バルブの開口面積、開閉頻度等の水素ガスの流量を調整可能な制御全般を含む概念である。これにより、バッファタンク18から空気流路14に導出される水素ガスの流量を調整することができる。このように、バッファタンク18から空気流路14に導出される水素ガスは、バルブ開度テーブルに基づいて基準濃度以下になるように流量が調整されているので、車両外に排出される水素ガスの濃度を基準濃度以下に制御することができる。
図4は、導出路22から空気流路14に排出された水素ガスの空気流に対する濃度の時間変化を示す図であり、図4(A)は、比較例として制御を行わない場合、図4(B)は、本実施形態の制御を行った場合の説明図である。図4(A)に示すように、制御を行わない場合には、水素ガス濃度が基準濃度を超える場合がある。これに対して、図4(B)に示すように、本実施形態においては、導出路22から空気流路14に排出される水素ガスの流量が調整されているので、水素ガスの濃度を基準濃度以下に保つことができる。
次に、排出水素ガス希釈装置の作用について説明する。
流量センサ28は、空気流路14の流量を検出し、検出信号を制御回路34に送る。また、圧力センサ30は、バッファタンク18の圧力を検出し、検出値を制御回路34に送る。制御回路34は、流量センサ28と圧力センサ30の検出値に基づいて、メモリ32のバルブ開度テーブルを参照し、電磁バルブ26の開度を決定する。メモリ32のバルブ開度テーブルは、水素ガスの流量が空気流の流量に対して基準濃度以下になるように空気流の流量とバッファタンク内の水素ガスの圧力とバルブの開度との相関関係を示しているので、バッファタンク18から導出される水素ガスの流量を調整することができる。制御回路34は、電磁バルブ26の動作制御信号を送り、電磁バルブ26は、この動作制御信号により制御される。これにより、バッファタンク18から空気流路14に導出される水素ガスの流量を制御することができ、車外に排出される水素ガスの濃度を基準濃度以下に制御することができる。
なお、上述した実施形態においては、空気流路の空気流の流量を流量センサを用いて検出しているが、圧力センサやそれ以外のセンサを用いて空気流路の状態を検出し、制御回路にて流量に換算しても良い。
また、上述した実施形態においては、バッファタンク18に間欠的に導入される水素ガスに関して、圧力センサ30でバッファタンク18内の圧力を検出しているが、例えば、燃料電池1側で制御されるシャットバルブ24の開閉動作信号を制御回路34に入力し、バッファタンク18内の圧力に換算しても良い。
更に、上述した実施形態においては、図2に示すようなバルブ開度テーブルに基づいて制御しているが、水素ガスの濃度を空気流に対して基準濃度以下にすることができる関係を示すものであれば、他の形式であっても良い。
1 燃料電池、2 排出水素ガス希釈装置、10 燃料極、12 空気極、14 空気流路、16 水素ガス流路、18 バッファタンク、20 導入路、22 導出路、24 シャットバルブ、26 電磁バルブ、28 流量センサ、30 圧力センサ、32 メモリ、34 制御回路。