JP2007113099A - メッキ膜作製方法と該方法によるメッキ膜を備えたメッキ製品 - Google Patents

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Abstract

【課題】密着性の高いメッキ膜を煩雑な化学的前処理(下地処理)を施すことなく作製し得る方法を提供すること。
【解決手段】本発明によって提供される方法は、金属製基材(2)の表面にメッキ膜(4)を作製する方法であって、表面が粗い硬質の微粒子から成る硬質微粉(P)を前記基材の表面に投射して該基材表面(2A)に微視的な凹凸(2B)を形成すること、および、該凹凸の形成された基材表面にメッキ処理を施すことを包含する。本方法では、チタン、アルミニウム等の難メッキ性金属から成る基材表面に高密着性メッキ膜を作製することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、基材表面にメッキ膜を作製する技術に関し、詳しくは、メッキを施す前の基材表面(下地)の処理技術に関する。
メッキ製品の付加価値の向上(特に装飾用品)、或いは電気製品における電気接点の抵抗若しくは摺動部品の摩擦低減のような機能性向上を目的に、種々のメッキ(鍍金)技術が利用されている。
ところで、被メッキ処理材料(基材)の表面に種々のメッキ膜を形成する場合に要求される重要な性能の一つとして、形成されたメッキ膜と基材との密着性(剥がれ難さ)が良好であることが挙げられる。特に表面に不動態皮膜が形成される難メッキ材であるチタン、アルミニウム等の金属材料を基材とする場合、メッキ膜の密着性を向上させるための基材表面(下地)処理を行うことが必要であり、従来、かかる目的の下地処理として弗酸のような薬品を使用した化学的前処理(典型的にはエッチング処理)が行われている。
しかしながら、上記のような化学薬品による洗浄処理を行うことは、使用した薬剤の廃液処理のような手間とコストのかかる後処理を伴うため好ましくない。
特開平8−309662号公報 特開2005−89802号公報
そこで本発明は、かかる従来のメッキ処理技術(特に下地処理)における上記従来の問題点を解決すべく開発されたものであり、上述のような化学的下地処理を行うことなく金属製基材の表面に密着性に優れた所望のメッキ膜を作製(形成)し得る方法を提供することを目的とする。また、そのような方法において実施される被メッキ材料(基材)の下地処理方法の提供を他の目的とする。また、そのようなメッキ作製方法によって作製されたメッキ膜を備えるメッキ製品の提供を他の目的とする。
本発明により提供されるメッキ膜作製方法は、金属製基材の表面にメッキ膜を作製する方法であって、(1)表面が粗い硬質の微粒子から成る硬質微粉を前記基材の表面に投射して該表面に微視的な凹凸を形成すること、および、(2)該凹凸の形成された基材表面にメッキ処理を施すこと、を包含する。
本発明者は、微粒子の高速投射技術を応用しさらに工夫することによって、従来は上記のような化学的前処理が必要であった難メッキ材の表面(下地)を、密着性に優れるメッキ膜の形成に適する性状に容易に変化させ得ることを見出し本発明を完成するに至った。
なお、上記特許文献1及び2には、微粉を被処理材に投射する工程が記載されているが、本発明の方法とは目的も着眼点も異なっている。
ここで開示されるメッキ膜作製方法では、適当なメッキ処理(例えば電気メッキ処理)の前処理(下地処理)として、上記硬質微粉を使用する投射(噴射を包含する)処理を行い、微視的な凹凸を基材表面に形成する。これにより、適当なメッキ処理を施した際には、メッキ成分(金属)が当該凹凸形成面の凹み部分にも析出し、それを足場にしてメッキ膜が形成されることにより当該メッキ膜の密着性が向上する。
従って、本発明のメッキ膜作製方法によると、密着性に優れ、結果的に長寿命のメッキ膜を作製することができる。
また、本発明のメッキ膜作製方法では化学的前処理(エッチング処理)を省くことが可能となり、従来と比較して低い成膜コストで高密着性メッキ膜を作製することができる。
また、微粉が投射される部位を適宜選択することにより、所望する特定の部位のみメッキ膜を形成することができる。
ここで開示される方法では、従来の手間とコストのかかる後処理(例えば廃液処理)を要する化学的手段によらずに下地処理が行えるため、従来のメッキ処理よりも低コストに難メッキ材にメッキ膜を形成することができる。
従って、本発明のメッキ膜作製方法の好ましい一態様では、表面に不動態皮膜が形成され得るような難メッキ性金属(チタン、アルミニウム、等)から成る基材を使用する。
また、本発明のメッキ膜作製方法の好ましい他の一態様では、前記硬質微粉として粒度分布が1〜150μmの範囲内にある研磨材又は研削材を使用する。
このような粒径範囲に粒度分布のある微粉研磨材又は研削材(砥粒)は、研磨又は研削に適する粗い表面(典型的には尖った凸部や狭いクレバス(溝、割れ目、深く鋭いくぼみ)のような凹部のある微視的に険峻な凹凸面)を有しており、本発明の方法に使用する硬質微粉として好適である。従って、本態様の方法によると、密着性の高いメッキ膜の形成に適する凹凸を基材表面に形成することができる。
好ましくは、前記基材のメッキ処理を施す表面に、概ね幅3μm以下のクレバス(溝、割れ目、深く鋭いくぼみ)がほぼ全域に亘って存在するような凹凸面が形成されるように前記微粉を投射することを特徴とする。
このように微粉の投射のレベルを調整することによって、より密着性に優れるメッキ膜を難メッキ材(例えばチタン、アルミニウム、又はそれらを成分とする合金から成る基材)に形成することが容易となる。
特に好ましくは、ほぼ0.1MPa〜1.5MPaの圧力で前記微粉を基材表面に投射することを特徴とする。
この程度の圧力で上記硬質微粉(好適には研磨材又は研削材に適する性状の微粉)を投射することによって、高密着性メッキ膜の形成に適する凹凸面を基材表面に形成することができる。
本発明は他の側面として、ここで開示されるいずれかのメッキ膜作製方法によって作製されたメッキ膜を表面の少なくとも一部に備えることを特徴とするメッキ製品を提供する。
ここで開示の方法によると高密着性のメッキ膜が形成され得るため、好ましくは、不動態皮膜が形成され得る金属のような難メッキ材から成る表面の一部に前記メッキ膜が形成されているメッキ製品を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば微粉の粒度分布や投射処理条件)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば電気めっき処理方法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明のメッキ膜作製方法に用いられる基材としては、微粉投射によって表面に適当な凹凸が形成され得るものであれば特に制限なく用いることができる。本発明の奏する効果を考えれば、一般的に難メッキ材に該当する金属製の基材を好ましく使用することができる。例えば、チタン又はチタンを含む合金、アルミニウム又はアルミニウムを含む合金、レアメタル(タングステン等)が挙げられる。
基材の形状は特に限定されず、製造したい金属製品(メッキ製品)に応じて決定される。例えば、眼鏡フレーム等の日用品、基板その他の各種電気製品、オートバイや自動車のパーツ等の装飾品、シャフト、ベアリング等の摺動部品、等が挙げられる。
本発明のメッキ膜作製方法を実施するために使用される硬質微粉は、所定の圧力(スピード)で基材表面に投射することにより本発明の目的を実現し得る凹凸面を当該表面に形成し得るものであれば材質は問わないが、硬く且つ尖った凹凸のある微粉(例えば硬いセラミックスを粉砕して得た表面が円滑でない微粉)が好適である。
このような用途に適するものとして、各種研磨や研削に使用されるような材質の微粉研磨剤および研削材(砥粒)が挙げられる。アルミナ質或いは炭化ケイ素質の研磨剤、研削材を好適に使用し得る。
粒径1〜500μmの微粒子から成る微粉が使用し得るが、粒度分布が1〜150μmの範囲に含まれる微粉の使用が好ましい。10〜100μm、さらには10〜50μm(例えば10〜30μm)程度の微粒子から成る微粉が特に好適である。
適当な粒径サイズに分級されて比較的狭い粒度分布となった微粉の使用が均質なメッキ膜の形成のために好ましい。例えば、研削砥石用研削材のJIS粒度分布において粒度(沈降試験方法による場合)がF230(ほぼ38〜77μmの粒度分布)、F240(ほぼ32〜68μmの粒度分布)、F280(ほぼ25〜60μmの粒度分布)、F320(ほぼ19〜52μmの粒度分布)、F360(ほぼ14〜46μmの粒度分布)、F400(ほぼ10〜39μmの粒度分布)、F500(ほぼ7〜34μmの粒度分布)、F600(ほぼ4.6〜30μmの粒度分布)、F800(ほぼ3.5〜28μmの粒度分布)、F1000(ほぼ2.4〜23μmの粒度分布)、F1200(ほぼ2〜20μmの粒度分布)に該当する粒度分布の微粉が好適である。F280〜F500程度のものが特に好ましい。
上述のような微粉を用いて投射を行う条件は、使用する基材及び微粉の性状に応じて適宜調整すればよく特に限定されないが、一般的な難メッキ性金属(チタン、アルミニウム等から構成される基材)である場合、微粉の投射圧力、例えばエアーブラストの場合における放射する流体(典型的には空気、又は窒素、アルゴン等の不活性ガス)の圧力が0.1〜1.5MPa程度が好ましく、0.2〜1MPa程度が特に好適である。
投射する手段は上記のような条件を満足し得るものであれば特に限定はないが、図1に模式的に示すように、一般的なショットブラストやエアーブラストを行う装置(ブラスト装置)10を使用すればよい。硬質微粉Pの投射(ブラスト)時間は特に限定されないが、チタンやアルミニウム(又はこれらの合金)製基材2である場合、上記圧力で1〜数十秒程度(典型的には1〜10秒程度)の投射でよい。これにより、図1に模式的に示すように、基材2の表面2Aに所望する比較的険峻な凹凸面2Bを形成することができる。なお、本発明の方法では、適当なブラスト装置10を使用してメッキ処理前の下地処理(即ち凹凸面形成処理)が簡単に行え、上述のエッチング処理を行った場合のような煩雑な後処理工程(廃液処理、基材の乾燥処理等)を行う必要がなく、微粉投射処理を行った後、迅速にメッキ処理を行うことができる。なお、従来一般的なブラストを行う場合と同様、ブラスト装置に適当な粉塵回収装置(集塵装置)を装備することにより、投射された微粉を容易に回収することができる。
而して、微粉投射終了後、形成された基材表面(凹凸面)2Bに対して種々のメッキ処理を行う。
本発明の実施にあたっては、メッキ処理に特に制限はなく、従来公知であるいずれかの適当な電気メッキ処理(乾式又は湿式電解メッキ処理)、或いは無電解メッキ処理を実施し、所望する金属種のメッキ膜(例えば金、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属メッキ、クロムメッキ、ニッケルメッキ、亜鉛メッキ、銅メッキ、等)4を基材2の表面2Bに作製し、目的のメッキ製品(金属製品)6が得られる。
以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
実施例1として、チタン製板材(15mm×15mm×1mm)を基材として使用し、その表面に平均粒径:約25μmのアルミナ微粒子から成る微粉研磨材(株式会社フジミ製品)を市販のエアーブラスト装置(株式会社不二製作所:商品名ニューマブラスターDPV-1)を用いて投射(噴射)した。
具体的には、装置のノズル(口径約1mm)から投射圧力(本実施例では空気加圧圧力)0.5MPaでアルミナ微粉を基材表面全体にほぼ均一になるように約10秒間投射(噴射)した。ノズル先端から基材表面までの距離は10〜50mmとした。
かかる投射処理終了後、投射処理面を電子顕微鏡(SEM)で観察した。図2はそのSEM写真である。この写真から明らかなように、基材表面に尖った凸部や幅が3μm以下の狭いクレバス状凹部のある微視的に険峻な凹凸が形成されていることが確認できた。
比較例1として、市販の平均粒径:約100μmの銅微粒子から成る微粉を使用して同条件にて投射処理を行った。投射処理終了後、投射処理面を電子顕微鏡(SEM)で観察した。図3はそのSEM写真である。この写真から明らかなように、銅微粉のように軟らかい粒子では所望する険峻な凹凸は形成されなかった。
次に、実施例1及び比較例1について一般的な湿式電解法によりメッキ処理を施し、上記投射面に膜厚約1μmの金メッキ膜を作製した。また、比較例2として投射処理を行わない上記基材の表面についても同様に金メッキ膜を作製した。
得られた金メッキ膜の表面(15mm×15mm)に室温環境下で市販のセロハン粘着テープ(幅20mm、長さ40mm〜50mm)を貼り付け、それを剥がすことによってメッキ膜の密着性を試験した。
その結果、図4の写真に示すように、本発明に係る投射処理を行った後に得た金メッキ膜は全く剥離が認められなかった。他方、図5(比較例1)及び図6(比較例2)の写真に示すように、本発明に係る投射処理を行わなかった比較例では、メッキ膜のほとんど全て(比較例2)或いは大半(比較例1)が剥離した。
以上に説明したとおり、本発明によると、種々の産業分野で密着性の高いめっき膜を備えたメッキ製品を提供することができる。例えば、電気部品、摺動部品の特性向上、装飾品、日用品の高付加価値化、或いは、歴史遺産の補修に関する新技術の提供等を実現することができる。
本発明のメッキ膜作製方法の手順を模式的に示す説明図である。 一実施例に係る硬質微粉(アルミナ微粉)の投射処理後の基材(チタン板材)の表面構造を示すSEM写真である。 一比較例に係る軟質微粉(銅微粉)の投射処理後の基材(チタン板材)の表面構造を示すSEM写真である。 一実施例において作製された金メッキ膜の密着性を評価するテープ引き剥がし試験結果を示す写真である。 一比較例において作製された金メッキ膜の密着性を評価するテープ引き剥がし試験結果を示す写真である。 一比較例において作製された金メッキ膜の密着性を評価するテープ引き剥がし試験結果を示す写真である。
符号の説明
2 基材
2A 基材表面
2B 凹凸形成面
4 メッキ膜
6 メッキ製品
10 ブラスト装置

Claims (7)

  1. 金属製基材の表面にメッキ膜を作製する方法であって、
    表面が粗い硬質の微粒子から成る硬質微粉を前記基材の表面に投射して該基材表面に微視的な凹凸を形成すること、および、
    該凹凸の形成された基材表面にメッキ処理を施すこと、
    を包含するメッキ膜作製方法。
  2. 前記硬質微粉として、粒度分布が1〜150μmの範囲内にある研磨材又は研削材を使用する、請求項1に記載のメッキ膜作製方法。
  3. 前記基材のメッキ処理を施す表面に、幅3μm以下のクレバスがほぼ全域に亘って存在するような凹凸面が形成されるように前記微粉を投射する、請求項1又は2に記載のメッキ膜作製方法。
  4. 0.1MPa〜1.5MPaの圧力で前記微粉を前記基材表面に投射する、請求項3に記載のメッキ膜作製方法。
  5. 表面に不動態皮膜が形成され得る難メッキ性金属から成る基材を使用する、請求項1〜4のいずれかに記載のメッキ膜作製方法。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のメッキ膜作製方法によって作製されたメッキ膜を金属製基材の表面の少なくとも一部に備えるメッキ製品。
  7. 不動態皮膜が形成され得る金属から成る基材表面の一部に前記メッキ膜が形成されている、請求項6に記載のメッキ製品。
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