JP6084996B2 - 低温セラミックスコーティングの密着力強化方法 - Google Patents

低温セラミックスコーティングの密着力強化方法 Download PDF

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Description

本発明は,工具類,機械部品などの金属成品の表面に対するセラミックスコーティング方法に関し,より詳細には,低温セラミックスコーティングによるセラミックス膜の形成前に金属成品をブラスト処理することで,金属成品とセラミックス膜の密着力を強化する低温セラミックスコーティングの密着力強化方法に関する。
従来,金属成品にセラミックスコーティングすることで,金属成品の表面にセラミックス成分主体の薄膜を形成して,耐摩耗性や耐疲労性を付与し,長寿命化を図ることが行われている。
このようなセラミックスコーティングとしては,CVD(化学的蒸着)法,PVD(物理的蒸着)法,TRD(熱反応析出拡散)法,PCVD(プラズマCVD)法などが挙げられる。
例えば,CVD法は,反応管内で加熱した基板物質上に,目的とする薄膜の成分を含む原料ガスを供給し,基板表面あるいは気相での化学反応により薄膜を形成する方法である。
PCVD法は,気体状の原料を減圧下の反応室に連続的に供給し,プラズマエネルギーによって,分子を励起状態にし,気相反応,あるいは基板表面反応などによって基板上に薄膜を形成する手法である。
TRD法は,ホウ砂やハロゲン化物からなる溶融塩浴に,主に炭化物形成元素を含む金属や酸化物の粉末を添加し,そこに炭素を含む品質を浸漬,保持することで,品物の表面に炭化物層(主にVC)を被覆する方法である。
また,PVD法は,化学反応を伴うことなく,被処理品の表面に薄膜を堆積する蒸着法のひとつで,薄膜の原料として固体原料を使用し,これ熱やプラズマのエネルギーによって気化し,被処理品の表面に凝縮させることにより薄膜を形成する方法である。なお,PVD法は,真空蒸着,スパッタリング,イオンプレーティングという3つの物理蒸着法の総称で,金型用には主にイオンプレーティングが使われている。
また,最近では,従来のセラミックスコーティングをするのみでは多様なニーズに応えることが困難となってきたため,セラミックスコーティングとともに,窒化処理,ブラスト処理等を行う複合表面処理も行われている。
このような複合表面処理として,特許文献1では,スチールローラの表面をブラスト処理した後にセラミックス膜を形成している。
特開2010−25198号公報
しかしながら,上述のTRD法及びCVD法は,薄膜の密着性とつきまわり性に優れているが,処理温度が焼き戻し温度以上(約1000℃)と高いため被処理品である金属成品の変形,変寸が生じてしまう問題があった。また,TRD法,CVD法はコストが高くなるとともに,納期が長くなる問題があった。
これに対し,PVD法は,焼き戻し温度以下(約200〜600℃)の低温で処理できるため,被処理品である金属成品の変形,変寸の問題は生じないが,高温によるTRD法及びCVD法に比べて薄膜の密着性およびつきまわり性が劣っていた。そのため,例えば,高面圧のかかる金型や複雑形状をした金型の処理には適用できなかった。
なお,前述のTRD法及びCVD法について,500℃〜600℃程度の低温で処理する低温TRD法,低温CVD法を採用することもできるが,これらについても,高温によるTRD法及びCVD法に比べて薄膜の密着強度が不足し,使用中の剥離が問題となることが多かった。
PCVD法は,450〜550℃程度の低温で処理できる上,PVD法よりも薄膜の密着性に優れているが,近年の高度なニーズに応えるほどの密着力を得るまでに至っていない。
また,セラミックス膜の密着性を高める方法として,前述の複合表面処理を適用して,セラミックスコーティング前に焼き戻し温度以下で処理できるブラスト処理や窒化処理等することが考えられるが,セラミックスコーティング前にブラスト処理する複合表面処理について,前述の特許文献1では,ブラスト処理後に補助ボンド層(中間層)を形成して,その後セラミックスコーティングして成膜するため,コスト高となっていた。
また,セラミックスコーティング前にブラスト処理する複合表面処理について,低温セラミックスコーティングは,密着強度を得るために450℃前後で処理されるのに対し,ブラスト処理によって被処理品の表面層に発生する圧縮応力は,300℃以上で急激に消滅する(数値が小さくなる)ため,セラミックスコーティング前にブラスト処理したとしても,圧縮応力の効果が得られない又は不安定だとされていた。
一方,セラミックスコーティング前に窒化処理する複合表面処理については,表面に形成された窒化物層がセラミックス膜の密着力に悪影響を及ぼすため,高い効果が得られなかった。
以上のように,近年では,寸法精度が厳しい高精度な加工に対応するため,寸法変化が生じないように,金属成品の母材の焼き戻し温度以下の低温で処理可能な,PVD法,低温CVD法,低温TRD法,PCVD法が採用されることが多くなってきているが,このような低温セラミックスコーティングでは,使用中にセラミックス膜が基材から剥離する等,セラミックス膜の密着力不足が問題となることが多く,大きな課題となっていた。
そこで,本発明は,上述の問題点を解消するもので,低温によるセラミックスコーティングで,密着強度の高いセラミックス膜を金属成品に形成することができる,低温セラミックスコーティングの密着力強化方法を提供することを目的とする。
以下に,課題を解決するための手段を,実施形態の用語と共に記載する。これは,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本願発明の特許請求の範囲の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
本発明の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法は,金属成品の母材硬度と同等以上の硬度を有する略球状の#280(平均径の平均62〜73.5μm)〜#1000(平均径の平均14.5〜18μm)(JIS R 6001)の範囲内で,3種以上の異なる近似粒度のショットを混合して,前記金属成品に対し,圧縮気体と混合流体として,噴射圧力0.2〜0.6MPa,噴射速度150〜250m/秒,噴射距離100〜250mmで0.5〜5秒以上経過毎に0.1〜1秒間欠噴射するブラスト処理工程と,
前記金属成品の表面の被処理面の面積の1/3〜2/3を直接研磨して平滑部を形成する平滑化処理工程と,
前記金属成品の母材の焼戻し温度以下で前記平滑化処理した金属成品の表面に直接セラミックス膜を形成する低温セラミックスコーティング工程を含み,
前記低温セラミックスコーティング工程前に,前記ブラスト処理工程及び前記平滑化処理工程を行うことを特徴とする(請求項1)。
前記ブラスト処理工程において,上述のブラスト処理条件で2段階でブラスト処理してもよい(請求項2)。
前記ブラスト処理工程において,前記金属成品の表面に直径0.1〜5μmの無数の略円形の底面を有する微小凹部をランダムに形成することができる(請求項3)。
また,低温セラミックスコーティング工程前に,前記金属成品の表面粗さを0.8μm以下(Ra:算術平均粗さ)とすることが好ましい(請求項)。
前記ブラスト処理工程前に,前記金属成品に窒化処理してもよい(請求項)。なお,前記窒化処理の処理温度は,500〜650℃とすることが好ましい(請求項)。
前記ブラスト処理工程後の前記金属成品のX線強度分布曲線の半価幅を,前記金属成品の硬度HV350〜600の範囲で3.5以上,前記金属成品の硬度HV600超の範囲で5.0以上とすることが好ましい(請求項)。
前記低温セラミックスコーティング工程前後での前記金属成品の母材硬度,前記半価幅の減少率が10%以内であることが好ましい(請求項)。
以上説明した本発明の構成により,まず,本発明のブラスト処理工程によって,金属成品の表面が清浄され,金属成品の硬度及び表面の圧縮応力が増大し,さらに,後述する半価幅の数値が上昇した。また,本発明のブラスト処理工程によって,金属成品の表面に急速な加熱と急冷が瞬時に繰り返し行われることで金属成品の表面層に微細組織(ナノ結晶)が形成された。金属成品の表面層がナノ結晶化されることにより,焼戻し温度以下の低温においても窒素,炭素,金属などの成分が浸透拡散しやすくなるため,焼戻し温度以下の低温でのセラミックコーティングによっても,セラミックス膜の密着強度が上がる。このため,低温セラミックスコーティングによっても,セラミックス膜が金属成品の表面に対して剥がれにくくなり,セラミックス膜の寿命の延長が可能となった。また,前記平滑化処理工程において,研磨により金属成品の表面に存在する凸起部を除去することによって,セラミックス膜の剥がれを防止することもできた。
セラミックス膜の密着強度についてさらに説明すると,低温セラミックスコーティングは,焼き戻し温度以下,好ましくは約450℃前後で処理を行うため,上述した通りブラスト処理で発生した圧縮応力についてはその数値がいくらか減少(効果が低下)するが,約450℃前後では,ブラスト処理で得られた母材硬度及び半価幅についてはその数値が減少せず(効果が消滅せず),従って,低温セラミックスコーティング中も金属成品の表面層にナノ結晶組織が残っており,炭素,窒素や金属等のセラミックス成分が低温で浸透拡散しやすくなり密着力が強化される。
なお,前記ブラスト処理工程において,2段階でブラスト処理することで,金属成品の表面がより清浄され,金属成品の硬度,表面の圧縮応力及び,半価幅の数値がより向上した。
また,本発明のブラスト処理工程により,金属成品の表面に直径0.1〜5μmの無数の略円形の底面を有する微小凹部が相対的に大きいものから小さいものまでランダムに形成され(以下,「混合マイクロデンプル」という。),この後にセラミックスコーティングすることで,セラミックスコーティング後も表面に混合マイクロデンプルが形成されており,本発明によりセラミックス膜が形成された金属成品は,離型性が良好であり,不良率が少ないという効果が得られた。
前処理として前記窒化処理をすると,窒化により形成された拡散層が,表面から深くなるにつれ高硬度から徐々に低硬度となる傾斜化された硬化層となり,金属成品の強化とセラミックス膜の密着力の向上に有効であった。
また,前処理として窒化処理をして,金属成品の表面に窒化化合物層が形成されても,本発明のブラスト処理工程により,前記窒化化合物層を良好に除去することができた。
本発明のブラスト処理をした金属成品の表面の顕微鏡写真を基にした拡大図である。 本発明のブラスト処理をした金属成品の表面を拡大して表した斜視図である。 図2の黒丸で仕切られた領域の拡大図であって,本発明の平滑化処理前の金属成品の表面の凹凸形状を示した模式図である。 図2の黒丸で仕切られた領域の拡大図であって,本発明の平滑化処理後の金属成品の表面の凹凸形状を示した模式図である。 本発明の平滑化処理前の金属成品の表面の粗さ曲線を示すグラフ。 本発明の平滑化処理後の金属成品の表面の粗さ曲線を示すグラフ。 HAP10相当品(プレス金型)について,母材硬度,WPC処理(登録商標,図では「WPC」と略記。)後の硬度,TiNコーティング(図では「TiN」と略記。)後の硬度,WPC処理(登録商標)後にTiNコーティングしたものの硬度を示すグラフ。 HAP10相当品(プレス金型)について,母材の表面粗さ,WPC処理(登録商標,図では「WPC」と略記。)後の表面粗さ,TiNコーティング(図では「TiN」と略記。)後の表面粗さ,WPC処理(登録商標)後にTiNコーティングしたものの表面粗さを示すグラフ。 温度変化に伴う,圧縮応力,硬度,及び半価幅の値の変化を示すグラフ。
次に,本発明の実施形態を以下説明する。
本発明の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法にあっては,金属成品の被処理面に,ショットを噴射するブラスト処理工程と,前記金属成品の被処理面を研磨により平滑部に形成する平滑化処理工程と,PVDや低温CVD,低温TDR,PCVD等により,TiCN,TiAlN,TiN,CrN,CBN,TiO,SiO,Al,Y,SiC,WC,TiC,DLC等を主成分としたセラミックス膜を形成する低温セラミックスコーティング工程とから成る。各工程の順序については,前記低温セラミックスコーティング前に,前記ブラスト処理工程と前記平滑化処理工程を行うこと以外,特に限定されない。
なお,本発明は,適宜,前記ブラスト処理工程を行う前に,窒化処理,浸炭処理等による前処理工程を行うことができる。
被処理成品
本発明の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法の処理対象となる金属成品は,金属から成る各種の成品,例えば金型,刃物,摺動部品,治工具,切削工具,装飾部品,歯車,軸受等を対象とすることができる。
ブラスト処理工程
本発明において,セラミックスコーティングする前に行うブラスト処理は,既知のブラスト装置によりショットを噴射して金属成品の表面に衝突させるものである。なお,本発明のブラスト処理工程においては,後述するブラスト処理条件で2段階でブラスト処理することも可能である。
本発明では,ブラスト装置は,各種の型式のものを使用することができるが,例えばショットの投入されたタンク内に圧縮空気を供給し,該圧縮空気により搬送されたショットを別途与えられた圧縮空気の空気流に乗せてブラストガンより噴射する直圧式のブラスト装置,タンクから落下したショットを圧縮空気に乗せて噴射する重力式のブラスト装置,圧縮空気の噴射により生じた負圧によりショットを吸引して圧縮空気と共に噴射するサクション式のブラスト装置等の各種のブラスト装置を使用することができる。
本発明において使用されるショットは,処理対象の金属成品に対し同等以上の硬度を有し,JIS研磨材粒度が#280(平均径の平均62〜73.5μm)〜#1000(平均径の平均14.5〜18μm)(JIS R 6001)の範囲で目的に応じて近似粒度3種以上を混合したものを使用する。なお,本明細書において,粒度とは,平均粒子径の範囲を示し,近似粒度とは,上記範囲内の粒度を言う。
本発明において使用するショットの,JIS R 6001に基づく粒度分布を以下に示す。粗粒の粒度は以下の表1による。
拡大写真試験法による微粉の粒度分布は以下の表2による。
さらに,本発明で使用するショットの規格の詳細を以下の表3−1及び表3−2に示す。
噴射方法について,本発明は,噴射圧力0.2〜0.6MPa,噴射速度150〜250m/秒,噴射距離100〜250mmで0.5〜5秒以上経過毎に0.1〜1秒噴射を繰り返す間欠噴射を行う。
これにより,金属成品の表面に急速な加熱と急冷が瞬時に繰り返し行われ,表面層の組織が微細化(ナノ結晶化)される。金属成品の表面がナノ結晶化されることにより,焼戻し温度以下の低温においても窒素,炭素,金属などのセラミックス成分が浸透拡散しやすくなる。
また,本発明のブラスト処理によって,金属成品の表面に直径0.1〜5μmの無数の略円形の底面を有する微小凹部を相対的に大きいものから小さいものまでランダムに形成することができる。また,混合ショットのうち小さいショットによるピーニング加工により研磨作用が働くこと,また,所定時間間隔をおいた極短時間の噴射時間の反復噴射により過度に表面を荒らさないことによって,表面粗さが小さい良質な表面層を得ることができる。図1,図2は,本発明のブラスト処理をした金属成品の表面の状態を拡大して表したものである。
平滑化処理工程
本発明の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法は,前記金属成品の被処理面を研磨して平滑部を形成する平滑化処理工程が含まれる。本発明の平滑化処理工程は,表面粗さが粗い場合など目的に応じて,前記ブラスト処理の後に行うことができる。前記平滑化処理を,前記ブラスト処理の前及び又は後に行うかは,処理の状況に応じ,それぞれ選択が可能であるが,後述の低温セラミックスコーティング工程前であればよい。また,例えば,前記ブラスト処理前に一度,手磨きによる平滑化処理をし,前記ブラスト処理後にさらにペーパラップ処理をする等,本発明においては平滑化処理を複数回行っても良い。
金属成品の表面の凸起部によって,セラミックス膜が剥がれる可能性が有るため,平滑化処理工程において研磨により前記凸起部を除去し,金属成品の表面を平らで滑らかな平滑部とする。
ここで,本明細書において平滑部とは,金属成品の表面に存在する凸凹のうち凸部を研磨により除去した後の表面が平坦で滑らかな状態にある部分をいう。なお,残存する凹部は,後述するとおり,混合マイクロデンプルとして作用する。
また,本発明の平滑化処理は,ペーパで手磨き又はペーパラップ加工装置を使用する他,ブラスト加工によって被処理面を研磨して平滑部を形成しても良く,例えば,バフ研磨加工処理,エアロラップ,不二製作所の「シリウス加工(登録商標)」広くラッピング等の鏡面加工手段も使用することができる。
なお,前記ペーパラップ加工装置としては,テープ送り機構に支持されたラップテープを相互に接近離間可能に配した一対のラッピングアームに設けられたシューによりワークに押付け,前記ラップテープの間でワークを回転させて該ワークの外周面をラップ加工する一般のペーパラップ加工装置等の種々のペーパラップ加工装置を使用することができる。
また,本発明の発明者による膨大な実験の結果,上述のブラスト処理工程により,表面に直径0.1〜5μmの無数の略円形の底面を有する微小凹部をランダムに形成し,本発明の平滑化処理によって被処理面の面積の1/3〜2/3,好ましくは1/2を平滑部とし,また,後述の低温セラミックスコーティング工程前に金属成品の表面粗さが0.8μm(Ra:算術平均粗さ)以下であると,その表面に低温セラミックスコーティングを行うことでより密着力の高いセラミックスコーティング膜が形成されることを見出した。なお,算術平均粗さ(Ra)とは,粗さ曲線から,その平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り,この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し,平均した値であり,以下の式で求める。
なお,本発明においては,金属成品の表面粗さを0.8μm(Ra:算術平均粗さ)以下とすることは,前記平滑化処理の他,上述した,混合ショットのうち小さいショットがピーニング加工により研磨作用として働き,また,所定時間間隔をおいた極短時間の噴射時間の反復噴射により過度に表面を荒らさない前記ブラスト処理工程によっても達成することができる。
なお,図3は,本発明の平滑化処理前の金属成品の表面の状態を示しており,図4は,本発明の平滑化処理後の金属成品の表面の状態を示している。図4の白地部分が平滑化処理によって形成された平滑部を示している。
また,図5のグラフは,本発明の平滑化処理前の金属成品の表面の粗さ曲線を示しており,図6のグラフは本発明の平滑化処理後の金属成品の表面の粗さ曲線を示す。図6より,本発明の平滑処理をした金属成品の表面は,凸起部が除去されて平滑部が形成される一方,微小凹部から成る混合マイクロデンプルは残存していることが分かる。この状態で,セラミックスコーティングすることで,セラミックスコーティング後も表面に混合マイクロデンプルが形成されており,本発明によりセラミックス膜が形成された金属成品は,離型性が良好であり,不良率が少ないという効果が得られる。また,混合マイクロデンプルは,潤滑剤の他,固体,液体,気体溜まりとして作用する。
低温セラミックスコーティング工程
本発明は,セラミックスコーティングをして,金属成品の表面に,TiCN,TiAlN,TiN,CrN,CBN,TiO,SiO,Al,Y,SiC,WC,TiC,DLC等を主成分とした各種公知のセラミックス膜を形成する。
本発明においては,被処理品である金属成品の変形,変寸を避けるため,従来のセラミックスコーティングのうち,PVD,PCVD,低温CVD,低温TRDなどの焼き戻し温度(約650℃)以下,好ましくは約450℃前後の低温域で処理できる低温セラミックスコーティングを使用する。
CVD法は,化学反応を経て所望の物質の薄膜を得る方法であるが,本発明では,約500℃程度の低温度領域で処理する低温CVD(LTCVD)を使用する。
TRD(熱反応析出拡散)法は,ホウ砂やハロゲン化物等からなる溶融塩浴に,主に炭化物形成元素を含む金属や酸化物の粉末を添加し,そこに炭素を含む品を浸漬,保持することで,品物の表面に炭化物層(主にVC)を被覆する方法であるが,本発明では,約500℃〜600℃の低温域での溶融塩処理(低温TDR)を使用する。
PCVD(プラズマCVD)法は,気体状の原料を減圧下の反応室に連続的に供給し,プラズマエネルギーによって,分子を励起状態にし,気相反応,あるいは基板表面反応などによって基板上に連続膜を形成する手法で,450〜550℃程度の低温で処理できる。
PVD法は,化学反応を伴うことなく,被処理品の表面に薄膜を堆積する蒸着法のひとつで,薄膜の原料として固体原料を使用し,これに熱やプラズマのエネルギーによって気化し,被処理品の表面に凝縮させることにより薄膜を形成する方法で,約200〜600℃の低温で処理できる。PVD法としては,より具体的には,電子ビーム加熱法,抵抗加熱法,フラッシュ蒸着等の各種真空蒸着法,プラズマ蒸着法,極スパッタリング法,直流スパッタリング法,直流マグネトロンスパッタリング法,高周波スパッタリング法,マグネトロンスパッタリング法,イオンビームスパッタリング法,バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法,DC(direct current)法,RF法,多陰極法,活性化反応法,電界蒸着法,高周波イオンプレーティング法,反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法,レーザーアブレーション法等を挙げることができる。
前処理工程
上述したように,本発明は,前記ブラスト処理工程の前処理として,金属成品に対して手磨き,焼き入れ,焼き戻し,窒化処理,浸炭処理等を行うことができる。この前処理は,ニーズに合わせて適宜行うものであって,この前処理を行わなくても良い。
前記窒化処理については,窒化により形成された拡散層が,表面から深くなるにつれ高硬度から徐々に低硬度となる傾斜化された硬化層となり,基材の強化とセラミックスなどの硬質薄膜の密着力の向上に有効である。
また,窒化処理については,イオン窒化(プラズマ窒化)法やラジカル窒化法などの窒化法を適用することができる。イオン窒化法は,効率的に硬化層深さを確保することができるが,被処理品の表面に脆い窒化化合物層が形成されやすく,処理後の表面粗度が増加し,窒化後に研磨などの後処理が必要となる。しかし,前述したブラスト処理工程により,前記窒化化合物層を除去することができるため,本発明において,イオン窒化法を適用しても何ら問題はない。
一方,ラジカル窒化法は,表面に窒化化合物層を形成せずに,被処理品に窒素拡散層を形成することができる。
窒化処理の好ましい具体的条件は,処理温度:500〜650℃(より好ましくは500〜575℃),処理時間:4〜12時間(より好ましくは6〜10時間)である。窒化処理時の処理温度が,650℃を超えると金属成品に変形,変寸が生じやすくなり,500℃よりも低くなると,窒化深さ(硬化層深さ)が浅くなりやすい。
半価幅
本明細書において半価幅とは,X線強度分布曲線の最大限度とバックグランド強度の中間に,バックグランドと平行な線を引き,X線強度分布曲線との交点間で決まる幅のことで,回折角度値で示す。X線応力測定で得られる回折強度分布曲線のピーク位置は,この半価幅中点をピーク位置と見なす方法が一般的に採用されている。さらに半価幅の大小は粒内ひずみ,硬さ,結晶粒度のパラメータともなる。
本発明のブラスト処理を行うとこの半価幅の数値が増大するため,本発明のブラスト処理を行った金属成品の表面の組織がナノ結晶化しているものと考えられる。
なお,ブラスト処理によって被処理品の金属成品の表面層に発生する圧縮応力は300℃以上になると急激に消滅(数値が減少)し,また,硬度も500℃以上になると消滅(数値が減少)していくが,半価幅は500℃以上でも効果がある(数値が減少しない)。
また,本発明の低温セラミックスコーティング工程は,焼き戻し温度以下,好ましくは約450℃前後で処理を行うため,圧縮応力については数値がある程度減少しても,無処理や単一の窒化処理の場合と比べて,圧縮応力の値は,同等以上である。母材硬度及び半価幅については数値が持続する。つまり,本発明のブラスト処理を行った金属成品の表面層の組織はナノ結晶化し,本発明の低温セラミックスコーティング工程中は,金属成品の表面層の組織がナノ結晶の状態で保持される。
なお,セラミックス膜の形成の原理に関して,セラミックスコーティング中の活性化されたセラミックス成分が,被処理成品の表面に活性化吸着して表面層内に拡散浸透すると考えられている。すると,本発明の低温セラミックスコーティング工程中は,被処理成品である金属成品の表面層の組織がナノ結晶の状態で保持されているため,このナノ結晶の状態が,低温においても炭素,窒素や金属等のセラミックス成分が表面層の組織内を浸透拡散することを促進させ,セラミックス膜の密着力を強化している。
また,本願の発明者は,鋭意研究の結果,ブラスト処理後の金属成品の半価幅を硬度HV350〜600の範囲で3.5以上,硬度HV600の範囲で5.0以上とすることで,本発明の低温セラミックスコーティングにより,より密着力の高いセラミックス膜が形成されることを見出した。
実施例1は,被処理成品としてメタルプレス金型を手磨きして研磨したものを,以下の表4−1に記載の噴射条件でブラスト処理(2段階処理)を行った。また,ブラスト処理は,ノズルを手動で毎分60回100mm振動させて行った。その結果,実施例1の半価幅は6.0であった。
比較例1は,実施例1と同じメタルプレス金型を,ブラスト処理せずに,手磨きして研磨したものである。
以上の実施例1及び比較例1をいずれも同条件で,PVD法により450℃でTiNを約2μm形成するセラミックスコーティング処理を行った。比較例1の半価幅は,4.8であった。
実施例1と比較例1との比較結果を,以下の表4−2に示す。なお,表4−2中,表面粗さRa,表面硬度HV,表面応力MPaについては,ブラスト処理後セラミックスコーティング前の数値結果である。
セラミックスコーティング後の実施例1及び比較例1いずれも,表面の圧縮応力は−500MPaであったが,実施例1については,セラミック膜の寿命が飛躍的に延長する効果が得られた。なお,実施例1のセラミックスコーティング(PVD)前のブラスト処理による高い圧縮応力は,一旦,PVDの処理温度(450℃)により消滅し,数値が低下する(実施例1の母材の圧縮応力は,−1000MPa。なお,比較例1の母材の圧縮応力は,−100MPa。)が,新たにPVDにより形成されたセラミックス膜に圧縮応力が残留する。セラミックスコーティング後は,セラミックス膜の圧縮応力を測定するため,PVD後の実施例1の表面の圧縮応力の値は,PVDにより形成されたセラミックス膜の圧縮応力の値となり,ブラスト処理せずに実施例1と同じ条件のPVD処理をした比較例1の値と同一となった。セラミックスコーティングによる,圧縮応力が付与される原因としては,異種原子や空孔・空隙の導入,結晶構造,結晶粒界の存在や異種材料間の格子のミスフィットなどが考えられる。
実施例1の金属成品の母材が高硬度のHAP10(粉末ハイス)であったため,表面に均一なナノ結晶が形成され,セラミックス膜の密着強度が高まったものと考えられる。
図7は,母材(HAP10),母材に表4−1に記載の噴射条件でブラスト処理(WPC処理(登録商標)。以下,「WPC処理」という。)したもの,母材にTiNコーティングしたもの,母材にWPC処理した後にTiNコーティングしたもの,これら4パターンそれぞれについての硬度を示すグラフである。また,図8は,上記4パターンそれぞれについての表面粗さを示すグラフである。
図7より,粉末ハイス(HAP10)はその硬度がHv930と高硬度であるため,実施例1は,WPC処理後の母材硬度がHv1200と,高硬度になっている。
このことから,実施例1は本発明のブラスト処理後に,表面に均一なナノ結晶,微細組織が形成された結果と思われる。この組織は,温度が焼戻し温度以上に上昇しなければ持続するので,PVD処理の際にセラミックス成分のチタン及び窒素が浸透拡散することで,セラミックス膜の寿命延長効果が得られたものと考えられる。
また,図8より,母材(HAP10)+WPC+TiNコーティングの表面粗さがRz0.65μmより,TiNコーティング後も,混合マイクロデンプルが形成されている。
なお,図7より,母材(HAP10)+WPC+TiNの母材硬度Hv1480より,半価幅についても6.0が保持されているものと考えられる。
実施例2は,被処理成品として直径50mm,高さ30mmのプリン用金型を手磨きして研磨したものについて,以下の表5−1に記載の噴射条件でブラスト処理(1段階の処理)した後,約450℃でPVD法によりセラミックスコーティングし,成品の表面に約2μmのTiNを形成した。
比較例2は,実施例2の被処理成品と同じプリン用金型を手磨きして研磨した後,ブラスト処理せずに,実施例2と同条件でセラミックスコーティングし,成品の表面に約2μmのTiN膜を形成した。
実施例2と比較例2との比較結果を,以下の表5−2に示す。なお,表5−2中,表面粗さRa,表面硬度HV,表面応力MPaについては,ブラスト処理後コーティング前の数値結果である。
本発明のブラスト処理をした実施例は,ブラスト処理をしていない比較例と比較して,セラミックスコーティング前の表面粗さRa,表面硬度HV,及び表面応力MPaの数値が向上している。
なお,実施例2及び比較例2について,TiNをコーティングした後の表面の圧縮応力は,いずれも−500MPaであった。なお,TiNをコーティングした後の実施例2及び比較例2の母材の表面(TiN膜の内側)についての圧縮応力は,比較例2が0MPa,実施例2が−300MPaであった。
しかし,実施例2は,セラミックスコーティングの密着力が高まり,寿命が比較例に対し5倍に延長された。SUS304の母材硬度が低いことから,ブラスト処理を施した実施例のナノ結晶,微細組織の形成が表面から浅い位置であるために,セラミックス成分のチタン(Ti)と窒素(N)の拡散浸透が促進され,5倍の寿命延長となったものと考えられる。ステンレスは,比較的低硬度であるが,熱伝導度が0.039と低いため,急加熱となり,ナノ結晶,微細組織になりやすい。
なお,実施例2の半価幅が4.5に対し,比較例2の半価幅は2.5であり,実施例の寿命が延長していることからも,実施例2の方が表面層の組織が微細で,ナノ結晶化され,コーティングの密着強度が高まったものであることが分かる。
また,実施例2については,セラミックスコーティング後も表面に混合マイクロデンプルが形成されているため,離型性が良好であり,不良率が少なかった。
実施例3は,被処理成品としてSPHのプレスシボリダイを手磨きして研磨したものを,以下の表−1に記載の噴射条件でブラスト処理(2段階処理)を行った。また,ブラスト処理は,被処理成品をテーブルの上にセットし,10秒/1回転させ,ノズルを中心より100mm振動させて行った。ブラスト処理後,軽くペーパラップを行った。
比較例3は,実施例3の被処理成品と同じSPHのプレスシボリダイを,ブラスト処理せずに,手磨きして研磨したものである。
以上の実施例3及び比較例3をいずれも同条件で,PVD法により450℃でTiCNを約3μm形成するセラミックスコーティング処理を行った。なお,プレスシボリダイの母材は530℃で2回焼き戻しを行ったものである。
実施例3と比較例3との比較結果を,以下の表6−2に示す。なお,表6−2中,表面粗さRa,表面硬度HV,表面応力MPaについては,ブラスト処理後コーティング前の数値結果である。
なお,TiCNをコーティングした後の実施例3及び比較例3の母材の表面(TiCN膜の内側)についての圧縮応力は,比較例3が+200MPa,実施例3が−900MPaであった。
従来は,CVD法にてTiCNコーティングを行っていたが,その寿命が3万ショットであった。これに対し,実施例3は,低温のPVD法を適用しても20万ショットと寿命が延びた。
また,比較例3の半価幅は4.0に対し,実施例3の半価幅は5.2であったことから,実施例3の方が表面層の組織が微細であることが分かる。
実施例4は,被処理成品としてピアスパンチφ8を手磨きして研磨したものについて,以下の表7−1に記載の噴射条件でブラスト処理(2段階処理)を行った。また,ブラスト処理は,被処理成品をテーブルの上にセットし,3秒/1回転させ,ノズルを中心より100mm振動させて処理を行った。ブラスト処理後,軽くペーパラップを行った。
比較例4は,実施例4の被処理成品と同じピアスパンチφ8をブラスト処理せずに手磨きして仕上げ,研磨したものである。
比較例4は,CVD法により1100℃で表面にTiCを約4μm形成し,実施例4は,PCVD法により500℃で表面にTiCNを約3μm形成するセラミックスコーティング処理を行った。
実施例4と比較例4との比較結果を,以下の表7−2に示す。なお,表7−2中,表面粗さRa,表面硬度HV,表面応力MPaについては,ブラスト処理後コーティング前の数値結果である。
比較例4について,CVDによるTiCコーティング後の圧縮応力は+100MPaであったのに対して,実施例4について,PCVDによるTiCNコーティング後の圧縮応力は−600MPaであった。セラミックスコーティングに伴う熱により実施例4の圧縮応力が消滅した。
しかし,比較例4の半価幅が4であったのに対し,コーティング後の実施例4の半価幅は6.0と高い数値が得られたことから,実施例4は,ブラスト処理により表面層に形成されたナノ結晶が保持され,セラミックス膜の密着強度が上がり,ショット寿命が延長されたものと考えられる。
実施例4については,PCVD後も,表面に混合マイクロデンプルが形成されていた。
実施例5は,被処理成品としてダイカスト金型用ピンを570℃で窒化処理した後,以下の表8−1に記載の噴射条件でブラスト処理(2段階処理)を行った後,ペーパラップ仕上げを行った。
比較例5は,実施例5の被処理成品と同じダイカスト金型用ピンを570℃で窒化処理した後,ブラスト処理せずに,ペーパラップ仕上げを行った。
比較例5,実施例5いずれもPVD法により,450℃でCrNを約3μm形成するセラミックスコーティング処理を行った。
実施例と比較例との比較結果を,以下の表8−2に示す。なお,表8−2中,表面粗さRa,表面硬度HV,表面応力MPaについては,ブラスト処理後コーティング前の数値結果である。
実施例5及び比較例5いずれもセラミックスコーティング後の表面の圧縮応力は,−500MPaであった。
なお,CrNをコーティングした後の実施例5及び比較例5の母材の表面(CrN膜の内側)についての圧縮応力は,比較例5が−400MPa,実施例5が−800MPaであった。セラミックスコーティングに伴う熱により実施例5の母材の表面の圧縮応力が消滅している。
しかし,実施例5のセラミックスコーティングの寿命は5倍の効果が得られた。母材が,窒化処理より,HV930と高硬度であった為,実施例5の表面に均一なナノ結晶が形成され,セラミックスコーティング時の処理温度が低温であってもCrが内部に拡散され密着強度が上昇したと考えられる。なお,比較例5の半価幅は3.5,実施例5の半価幅は5.3であり,実施例5の方が表面層の組織が微細であったことが分かる。
なお,上述の実施例の他に,硬度,圧縮応力,半価幅の変化を確認するために,熱間用金型SKD61に焼入れ,焼戻しを行い,硬度がHV570となったものに上述の実施例5と同じ加工条件(表8−1)でブラスト処理を行った。
ブラスト処理の結果,表面硬度はHV790,圧縮応力は−1200MPaであった。
そして,各試験片を1時間温度保持し,硬度,圧縮応力,半価幅の変化を確認した結果を図9のグラフで示す。図9より,圧縮応力は300℃以上になると急激に消滅(数値が減少)し,硬度は500℃以上になると急激に消滅(数値が減少)するが,半価幅は500℃以上でも効果がある(数値の減少が小さい)ことが分かる。従って,焼戻し温度以下であれば,硬度及び半価幅については保持することができる。つまり,本発明のブラスト処理により表面層に形成された微細組織(ナノ結晶)は,本発明の低温セラミックスコーティングをしても破壊されず保持されるため,セラミックス成分が金属成品の内部に拡散されセラミックス膜の密着強度が上昇し,寿命延長の効果が得られる。

Claims (8)

  1. 金属成品の母材硬度と同等以上の硬度を有する略球状の#280(平均径の平均62〜73.5μm)〜#1000(平均径の平均14.5〜18μm)の範囲内で,3種以上の異なる近似粒度のショットを混合して,前記金属成品に対し,圧縮気体と混合流体として,噴射圧力0.2〜0.6MPa,噴射速度150〜250m/秒,噴射距離100〜250mmで0.5〜5秒以上経過毎に0.1〜1秒間欠噴射するブラスト処理工程と,
    前記金属成品の表面の被処理面の面積の1/3〜2/3を直接研磨して平滑部を形成する平滑化処理工程と,
    前記金属成品の母材の焼戻し温度以下で前記平滑化処理した金属成品の表面に直接セラミックス膜を形成する低温セラミックスコーティング工程を含み,
    前記低温セラミックスコーティング工程前に,前記ブラスト処理工程及び前記平滑化処理工程を行うことを特徴とする低温セラミックスコーティングの密着力強化方法。
  2. 前記ブラスト処理工程において,請求項1記載のブラスト処理条件で2段階でブラスト処理することを特徴とする請求項1記載の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法。
  3. 前記ブラスト処理工程において,前記金属成品の表面に直径0.1〜5μmの無数の略円形の底面を有する微小凹部をランダムに形成することを特徴とする請求項1又は2記載の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法。
  4. 前記低温セラミックスコーティング工程前の前記金属成品の表面粗さが,0.8μm(Ra)以下であることを特徴とする請求項1〜いずれか1項記載の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法。
  5. 前記ブラスト処理工程前に,前記金属成品に窒化処理したことを特徴とする請求項1〜いずれか1項記載の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法。
  6. 前記窒化処理の処理温度を500〜650℃としたことを特徴とする請求項記載の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法。
  7. 前記ブラスト処理工程後の前記金属成品のX線強度分布曲線の半価幅を,前記金属成品の硬度HV350〜600の範囲で3.5以上,前記金属成品の硬度HV600超の範囲で5.0以上としたことを特徴とする請求項1〜いずれか1項記載の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法。
  8. 前記低温セラミックスコーティング工程前後での前記金属成品の母材硬度,前記半価幅の減少率が10%以内であることを特徴とする請求項1〜いずれか1項記載の低温セラミックスコーティングの密着力強化方法。
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