JP2018145482A - 耐摩耗性皮膜及びその形成方法、並びに耐摩耗性部材 - Google Patents

耐摩耗性皮膜及びその形成方法、並びに耐摩耗性部材 Download PDF

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Abstract

【課題】滑り等に対する摩耗が繰り返されても長期間にわたって優れた耐摩耗性を維持でき、密着性にも優れる耐摩耗性皮膜及びその製造方法、並びに耐摩耗性部材を提供する。【解決手段】本発明の耐摩耗性皮膜10は、めっき層11と、該めっき層11上に積層される潤滑層12とを有し、前記潤滑層12は、固体潤滑剤2を含有する。耐摩耗性皮膜の形成方法は、基材20の表面をめっき処理することでめっき層11を積層する第1工程と、前記めっき層11の表面に固体潤滑剤2を含有する潤滑層11を積層する第2工程とを含む。【選択図】図1

Description

本発明は、耐摩耗性皮膜及びその形成方法、並びに耐摩耗性部材に関する。
従来、各種の機械部品、工具、金型等の部材に対して、優れた耐摩耗性を付与することが求められており、種々の技術が検討されている。特に近年では、部材表面に耐摩耗性に優れる皮膜をめっき等の方法で形成させることで、例えば、各種部材の滑りに対する耐摩耗性を高めることが行われている。
例えば、特許文献1には、無段階変速機用プーリおよびベルト式無断変速機において、ベルトが接触するプーリ表面の凹凸を設けることで滑りによる摩耗を防ぐ技術が開示されている。さらに、特許文献1には前記凹凸にめっき処理を施すことも開示しており、これにより、滑りに対する耐摩耗性を高めることを試みている。
特許文献2には、転がり軸受において、軸の受け面にマイクロポーラス又はマイクロクラッククロムめっき膜を形成する技術が開示されている。このようなクロムめっき膜は、その表面に存在するマイクロポーラス又はマイクロクラックによって自己潤滑性樹脂を保持することができ、これによって軸受表面で軸を滑りやすくして、滑りに対する耐摩耗性を高めている。
特開2012−117579号公報 特開2016−180439号公報
しかしながら、従来の耐摩耗性の皮膜では、確かに各種部材の滑り等に対する耐摩耗性を向上させることができるものの、摩耗が長期間にわたって繰り返されると、皮膜が削れたり、劣化したりする等の現象が徐々に進行し、耐摩耗性の低下が引き起こされることが問題となっていた。例えば、特許文献1に開示の技術のように、基材表面に凹凸を設けるのみでは、滑りに対する耐摩耗性は徐々に低下し、凹凸に形成されためっき膜も徐々に剥がれるので、耐摩耗性が経時的に損なわれやすい。また、特許文献2の方法でも、マイクロクラック等に保持された自己潤滑性樹脂はやがて剥がれて消失するので、滑りに対する耐摩耗性を長期間維持することが難しい。さらに、特許文献1,2に開示の技術では、めっき膜と基材との密着性、及び、自己潤滑性樹脂と基材表面との密着性が悪いことも、長期間の滑り磨耗の繰り返しによって皮膜が剥がれやすくなる要因となっていた。
近年、各種部材の耐摩耗性に関しては、摩耗が繰り返されても長期間にわたって優れた耐摩耗性を維持できる耐摩耗性皮膜が求められているところ、従来の技術では耐摩耗性の持続に問題があり、さらなる改善が求められていた。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、例えば滑り等に対する摩耗が繰り返されても長期間にわたって優れた耐摩耗性を維持でき、密着性にも優れる耐摩耗性皮膜及びその製造方法、並びに耐摩耗性部材を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、皮膜を特定の層構成とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の発明を包含する。
項1.めっき層と、該めっき層上に積層される潤滑層とを有し、
前記潤滑層は、固体潤滑剤を含有する、耐摩耗性皮膜。
項2.前記めっき層には、複数の孔が形成されている、項1に記載の耐摩耗性皮膜。
項3.前記固体潤滑剤の一部又は全部は、前記孔の内部に入り込んでいる、項2に記載の耐摩耗性皮膜。
項4.前記固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、酸化鉛及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる1種以上である、項1〜3のいずれか1項に記載の耐摩耗性皮膜。
項5.項1〜4のいずれか1項に記載の耐摩耗性皮膜と、基材とを備え、
前記基材は前記耐摩耗性皮膜で被覆されており、
前記耐摩耗性皮膜の前記めっき層側の面が前記基材に固着している、耐摩耗性部材。
項6.前記基材の前記耐摩耗性皮膜が被覆される面には凹凸が形成されている、項5に記載の耐摩耗性部材。
項7.耐摩耗性皮膜と、基材とを備え、
前記基材は前記耐摩耗性皮膜で被覆されており、
前記耐摩耗性皮膜は、二硫化モリブデンを含むめっき層を備え、
前記基材の前記耐摩耗性皮膜が被覆される面には凹凸が形成されている、耐摩耗性部材。
項8.基材の表面をめっき処理することでめっき層を形成する第1工程と、
前記めっき層の表面に固体潤滑剤を含有する潤滑層を形成する第2工程と、
を含む耐摩耗性皮膜の形成方法。
項9.前記第1工程のめっき処理では、樹脂粒子を含むめっき液を使用することで樹脂粒子を含むめっき層を形成し、該めっき層を加熱処理することで前記樹脂粒子を焼失する工程をさらに備える、項8に記載の形成方法。
項10.前記めっき処理を行う前に前記基材の表面に凹凸を形成する工程をさらに備える、項8又は9に記載の形成方法。
本発明に係る耐摩耗性皮膜は、特に滑りに対する摩耗が繰り返されても長期間にわたって優れた耐摩耗性を維持でき、また、基材に対する密着性にも優れるので、耐摩耗性の持続性に優れる。
本発明に係る耐摩耗性部材は、前記耐摩耗性皮膜を備えることで、長期間にわたって優れた耐摩耗性を有し、また、基材と耐摩耗性皮膜との密着性も高いので、耐摩耗性の持続性に優れる。
本発明に係る耐摩耗性皮膜の形成方法によれば、前記耐摩耗性皮膜及び前記耐摩耗性部材を製造する方法として適した方法である。特に、本発明に係る耐摩耗性皮膜の形成方法で製造される耐摩耗性皮膜は、固体潤滑剤がめっき層に強く保持されやすいので、長期間にわたって優れた耐摩耗性を有し続けることができる。
本発明の耐摩耗性皮膜の実施の形態の一例であり、基材に被覆されている状態を示す概略断面図である。 本発明の耐摩耗性皮膜の他の実施の形態の一例であり、基材に被覆されている状態を示す概略断面図である。 本発明の耐摩耗性皮膜を基材に形成させる方法を示す概略の断面図である。 本発明の耐摩耗性皮膜を基材に形成させる他の方法を示す概略の断面図である。 実施例及び比較例の摩耗試験結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
1.耐摩耗性皮膜
図1は、本発明の耐摩耗性皮膜が基材に被覆されている状態を示す概略断面図である。
本発明の耐摩耗性皮膜10は、めっき層11と、該めっき層11上に積層される潤滑層12とを有し、潤滑層12は、固体潤滑剤2を含有する。
図1の実施形態では、耐摩耗性皮膜10は、基材20の表面に被覆されている。耐摩耗性皮膜10の前記めっき層11側の面(潤滑層12とは逆側の面)が前記基材20の表面に固着している。つまり、図1の実施形態では、基材20、めっき層11及び潤滑層12がこの順に積層している。これにより、耐摩耗性部材30が形成されている。
めっき層11は、めっき処理によって形成された層である。めっき層11は、例えば、電解めっき、無電解めっき等の方法で形成された層である。
めっき層11は、耐摩耗性皮膜10において、潤滑層12に含まれる固体潤滑剤2を保持する役割を発揮することができる層である。後記するようにめっき層11の表面が凹凸を有する場合は、固体潤滑剤2を保持しやすくなる。また、基材20(例えば、鉄(S45C))よりも摩擦係数の低いめっき層11を被覆することで固体潤滑剤2の保持力を高めることができる。
めっき層11としては、各種金属のめっき層を挙げることができる。めっき層11を形成する金属は、特に限定されない。金属の具体例としては、ニッケル、銅、クロム、亜鉛、スズ、パラジウム、鉛、銀、金等が挙げられる。
めっき層11を形成する金属は、1種のみ又は2種以上とすることができる。また、めっき層11を形成する金属は、合金とすることもできる。あるいは、めっき層11を形成する金属は、酸化物、窒化物、硫化物等とすることもできる。さらに、めっき層11は、金属に加えて又は金属に替えてその他の元素(例えば、リン、ホウ素等の非金属元素)を構成元素とすることもできる。
めっき層11としてはその他、例えば、Ni等の金属めっきをベースとして、フッ素樹脂(PTFE)、雲母、アルミナ(Al)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、二酸化ケイ素(SiO)等を組み合わせた複合めっきであってもよい。
めっき層11の一例としては、無電解めっき処理により形成したニッケルめっき層(無電解ニッケルめっき層)、無電解Ni−P複合めっき層が挙げられる。めっき層11が無電解Ni−P複合めっき層である場合、共析されるPの効果によってめっき層11の硬度と耐食性が向上し得る。また、めっき層11が無電解Ni−P複合めっき層である場合、基材形状に沿った形状のめっき層11が得られやすいという利点も有する。
めっき層11の形成方法は特に限定されず、例えば、公知の各種のめっき処理の方法でめっき層11を形成することができる。以下では、めっき層11を形成するための処理を「第1めっき処理」と表記する。
第1めっき処理としては、例えば、電気めっき、無電解めっき、溶融めっき、気相めっき等が行われ得る。めっき処理は、連続式、バッチ式のいずれの方式でも採用可能である。第1めっき処理で使用するめっき液は公知のめっき液を使用することができ、例えば、めっき層11を形成する金属を含有する各種の金属を含むめっき液を使用することができる。
電解めっきでは、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、銀(Ag)、金(Au)等の1種以上の金属を含むめっき液を使用できる。
無電解めっきでは、Ni−P,Ni−B、Ni−Co、Cu、Ag等を含むめっき液を使用できる。複合めっきでは、Niめっきをベースとしてフッ素樹脂(PTFE)、雲母、アルミナ(Al)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、二硫化モリブデン(MoS)、二硫化タングステン(WS)、二酸化ケイ素(SiO)等の1種以上を含むめっき液が使用できる。
めっき層11の厚みは特に限定されない。例えば、めっき層11の厚みは適宜設定することができ、例えば、5μm以上であることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。
めっき層11の表面は平坦に形成することができる。あるいは、めっき層11の表面は平坦ではなく、例えば、凹凸を有するように形成することができる。めっき層11の表面が凹凸を有する場合、その面に潤滑層12を積層できる限りは凹凸の程度は特に限定されない。例えば、めっき層11の表面の最大粗さRzが後記潤滑粒子の一次平均粒子径よりも大きくなるように凹凸を形成することができる。この場合、潤滑層12に含まれる潤滑粒子をめっき層11が保持しやすくなり、耐摩耗性皮膜10の耐摩耗性が優れ、その効果も持続しやすい。なお、本明細書でいう最大粗さRz(μm)は、JIS B 0601:2001で定義される。
より具体的に、めっき層11表面の凹凸の最大粗さ(Rz)は、前記潤滑粒子の平均一次粒子径の2〜5倍程度とすることでき、例えば、0.01〜100μm、0.1〜300μm、より好ましくは0.25〜4μm、特に好ましくは0.5〜2μmとすることができる。凹凸は、めっき層11の少なくとも潤滑層12が被覆される面の全面に形成されていることが好ましく、めっき層11の全面に形成されることも好ましい。
潤滑層12は、耐摩耗性皮膜10において、めっき層11表面を被覆するように形成された層である。この潤滑層12は、耐摩耗性皮膜10の最表面に位置し、基材20等に耐摩耗性を付与することができる層である。
潤滑層12は、固体潤滑剤2を必須の構成成分として含む層である。潤滑層12は、固体潤滑剤2のみで形成されている層でもよい。あるいは、潤滑層12は、固体潤滑剤2以外の他の材料を含んでもよい。潤滑層12は、その全質量に対して固体潤滑剤2を50質量%以上含むことが好ましい。
固体潤滑剤2は、耐摩耗性を発揮することができる材料で形成することができ、例えば、公知の耐摩耗性材料及び潤滑材料等を使用することができる。
固体潤滑剤2は、黒鉛(C)、二硫化モリブデン(MoS)、窒化ホウ素(BN)、二硫化タングステン(WS)、酸化鉛(PbO)、樹脂等が例示される。
前記樹脂としては、例えば、フッ素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン及びテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体等を挙げることができる。
固体潤滑剤2は、粒子状に形成されていることが好ましい。本明細書において、粒子状に形成されている固体潤滑剤2を特に「潤滑粒子」と表記する。固体潤滑剤2が潤滑粒子である場合、めっき層11上に対する固体潤滑剤2の付着力が高まるので、潤滑層12の密着性が向上する。また、めっき層11に後記する孔が形成されている場合は、この孔に潤滑粒子が入り込みやすくなる。
潤滑粒子の平均一次粒子径は特に限定されない。めっき層11に形成される後記孔に入り込みやすく、しかも、複数の潤滑粒子が一つの孔に入り込みやすいという観点から、後記する孔の直径よりも小さいことが好ましく、また、めっき層11表面に形成される凹凸の前記Rzよりも小さいことが好ましい。また、潤滑粒子は、後記する樹脂粒子の平均一次粒子径よりも小さいことが好ましい。例えば、潤滑粒子の平均一次粒子径は、0.5〜2μmとすることができる。なお、潤滑粒子の平均一次粒子径とは、動的光散乱法による粒度分布計測機で測定した値をいう。
潤滑粒子は、球状、楕円状、扁平状の他、各種の形状とすることができる。
潤滑粒子は、二硫化モリブデンの粒子であることが特に好ましい。二硫化モリブデンは、すべり性の良い層状結晶構造を有し、耐荷重性に優れた粒子であるので、形成される耐摩耗性皮膜10の耐摩耗性に優れるとともに、その耐摩耗性部材が有する耐摩耗性効果の持続力も向上しやすく、また、めっき層11表面にも付着しやすい上に孔にも入り込みやすい。この観点から、潤滑層12は、二硫化モリブデンの粒子のみで形成されることが好ましい。
潤滑層12は、めっき層11の全面又は一部を覆うことができる。例えば、潤滑層12は、めっき層11表面の50%以上を覆っていることが好ましく、100%(つまり、表面全体)を覆っていることが好ましい。
潤滑層12の厚みは特に限定されない。例えば、潤滑層12の厚みは、1〜30μmとすることができる。
潤滑層12を形成する方法は特に限定されない。なお、潤滑層12を形成する方法を、以下では「潤滑層形成手段」と表記する。
潤滑層形成手段としては、例えば、固体潤滑剤2を含む原料を使用して、ショットブラスト、バレル、塗装、塗布、刷り込み(インプリンティング)等の公知の手段を挙げることができる。潤滑層形成手段で使用する固体潤滑剤2を含む原料は、固体潤滑剤2のみで構成することもできる。なお、ここでいうショットブラストは、粒子を加速して対象物に衝突させることであり、必ずしも、ショットブラスト装置等を使用することを意味するものではない。
潤滑層12は、その表面が凹凸を有するように形成され得る。あるいは、潤滑層12は、その表面が平坦となるように形成させることもできる。潤滑層12の表面が凹凸を有している場合であっても、磨耗が加わることで徐々に平坦化され得る。つまり、耐摩耗性皮膜10を使用し続けるとやがて潤滑層12の表面も平坦化される。平坦化されると潤滑層12の馴染み性が向上し得る。
図2は、本発明の他の形態の耐摩耗性皮膜が基材に被覆されている状態を示す概略断面図である。
図2の形態の耐摩耗性皮膜10は、めっき層11と、該めっき層11上に積層される潤滑層12とを有し、潤滑層12が固体潤滑剤2を含有する点では、図1の実施形態と同様である。
図2の形態の耐摩耗性皮膜10では、めっき層11には、複数の孔15が形成されている。言い換えれば、めっき層11はポーラス(多孔質)形状である。この点が図1の実施形態の耐摩耗性皮膜10と異なる。図2の実施形態では、めっき層11に複数の孔15が形成されている点を除いては、図1の実施形態と同様の構成を採用することができる。
図2の実施形態のように、めっき層11に複数の孔15が形成されている場合、潤滑層12に含まれる固体潤滑剤2が孔15の中に入り込むことができ、潤滑層12とめっき層11の密着性が向上する。また、潤滑層12に含まれる固体潤滑剤2が孔15に入り込むことで、仮に摩耗によって表面に存在する潤滑層12が剥がれたとしても、孔15に入り込んだ固体潤滑剤2はめっき層11からは脱落しにくい。これにより、耐摩耗性皮膜10の耐摩耗性をより長期にわたって持続することができる。固体潤滑剤2が潤滑粒子である場合、孔15の中に保持されやすいので、耐摩耗性皮膜10の耐摩耗性効果が特に持続されやすい。
めっき層11に形成される複数の孔15は、めっき層11の全領域にわたって分布して存在していることが好ましい。つまり、複数の孔15は、めっき層11の表層のみならず、めっき層11の内部にも形成されていることが好ましい。この場合、仮に摩耗によってめっき層11の表面が削れたとしても、削れた部分から内部の孔15が現れ、この孔15に表面に残っていた固体潤滑剤2が入り込むことができる。その結果、固体潤滑剤2によって、耐摩耗性を維持し続けることができ、耐摩耗性の効果をさらに長期的に持続することが可能となる。
めっき層11中における孔の含有割合は特に限定されない。例えば、孔はめっき層11中に30〜70体積%に割合で存在していることが好ましい。めっき層11に存在する孔の体積割合は、後記する第2の形成方法において、めっき層11に含まれる樹脂粒子の体積割合を計測することで求めることができる。第2の形成方法において、めっき層11に含まれる樹脂粒子の体積割合は、例えば、めっき層11を溶媒に溶解させて樹脂粒子だけを取り出し、得られた樹脂粒子の重量から体積を算出することで計測することができる。
孔15のサイズは、固体潤滑剤2が入り込める程度のサイズで形成されていることが好ましい。特に、固体潤滑剤2が前記潤滑粒子である場合、孔15は、潤滑粒子の平均一次粒子径の2倍以上の直径を有することが好ましい。ここでいう孔15の直径とは、透過型電子顕微鏡による直接観察によってめっき層11の表面又は断面を観察して、無作為に50個の孔15を選択し、これらの円相当径を計測して算術平均した値をいう。
図2の実施形態にあっては、潤滑層12に含まれる固体潤滑剤2の一部又は全部は、めっき層11に形成されている孔15の内部に入り込んでいることが好ましい。この場合、摩耗によって固体潤滑剤2が脱落しにくくなり、耐摩耗性の効果を長期間持続することができる。固体潤滑剤2は、初期の状態から孔15に入り込み得るし、また、使用して摩耗が繰り返されることによって徐々に孔15に入り込む場合もある。
特に、一つの孔15につき複数の潤滑粒子が入り込んでいることが好ましい。この場合、潤滑粒子の脱落が防止されやすく、また、めっき層11の剥がれも防止しやすい。ただし、孔15の内部には、空間が残ることが好ましい。この場合、仮に耐摩耗性皮膜10が減圧状態となったとしても、耐摩耗性皮膜10が剥がれにくくなるという利点がある。
孔15は、着色されていてもよい。孔15が着色されていることによって、孔15を目視で判別することが可能となる。
なお、孔15はめっき層11を厚み方向に貫通しないように形成されていることが好ましい。孔15がめっき層11を厚み方向に貫通せずに形成されると、貫通孔が基材20に到達することがないので、いわゆるめっき欠陥(クラック、ピンホール)による耐摩耗性皮膜の耐食性の低下を抑制することができる。
孔15を有するめっき層1を形成する方法は特に限定されない。以下、孔15を有するめっき層1を形成する方法を「孔形成方法」と表記する。
孔形成方法は、例えば、めっき層11を形成するための第1めっき処理で使用するめっき液に樹脂粒子を含有させ、これを用いてめっき層11を形成する方法が挙げられる。
樹脂粒子を含有するめっき液の種類は、樹脂粒子を含む点を除いては、第1の形成方法で使用するめっき液と同様である。
樹脂粒子を含有するめっき液から形成されためっき層11には、樹脂粒子が含まれる。このめっき層11を加熱処理して、樹脂粒子を焼失させることで、めっき層11中に孔15を形成できる。孔15は、加熱処理前には樹脂粒子が存在していた部分に形成され得る。
樹脂粒子の種類は特に限定されない。例えば、350℃以上で蒸発するアクリル樹脂粒子及びポリエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂粒子を例示することができる。
樹脂粒子の平均一次粒子径は特に限定されない。例えば、固体潤滑剤2が潤滑粒子であれば、その潤滑粒子の平均一次粒子径よりも2〜5倍の平均一次粒子径を有することが好ましい。
別の観点から、樹脂粒子の平均一次粒子径は、めっき層11の表面の最大粗さRzより大きくすることができる。この場合、樹脂粒子の焼失後に形成される孔15に、前記潤滑粒子が入り込みやすくなり、また、潤滑粒子が孔15に保持されやすくなり、耐摩耗性が向上しやすい。
さらに別の観点においては、樹脂粒子の平均一次粒子径は、めっき層11の表面の最大粗さRz以下にすることができる。この場合、めっき層11表面に凹凸が存在しやすくなり、特に表面が摩耗されたときに凹凸が現れやすくなって、耐摩耗性が向上する。例えば、樹脂粒子の平均一次粒子径は、1μm以上10μm以下とすることができる。
樹脂粒子を含むめっき液は、界面活性剤を含むことが好ましい。この場合、樹脂粒子のめっき液における分散性が向上し、形成されためっき層11中に樹脂粒子が均一に分散しやすくなる。その結果、めっき層11に形成される孔15が均一に分布しやすい。
界面活性剤の種類は特に限定されない。例えば、公知のアニオン性、カチオン性又はノニオン性の界面活性剤を使用することができる。
界面活性剤の使用量は、例えば、樹脂粒子に対して界面活性剤を0.5〜2.0重量%使用することができる。
前記樹脂粒子を含むめっき層11の加熱処理の条件は特に限定されない。例えば、加熱温度を300〜350℃とすることができる。加熱時間は加熱温度に応じて適宜変更でき、例えば、120〜300分とすることができる。加熱条件も限定されず、窒素等の不活性ガスの雰囲気下、空気雰囲気下等の各種の雰囲気下で加熱を行うことができる。市販されている加熱炉等によって、加熱処理を行うことができる。
孔形成方法の他例としては、ポーラスニッケルめっき法等の電解めっき法が挙げられる。その他、第1めっき処理により形成しためっき層11の表面を、ショットブラスト、エッチング等の適宜の方法で荒らす方法によっても、孔15を形成することができる。
図2の実施形態では、めっき層11に孔15が形成され、この孔15に潤滑粒子が入り込み得る点を除いては、その他の構成は、図1の実施形態と同様とすることができる。
本発明の耐摩耗性皮膜10では、例えば、図1,2の形態を有し得るものであり、耐摩耗性を付与するための皮膜として、各種の部材に対して好適に使用することができ、後記耐摩耗性部材30を形成することができる。本発明の耐摩耗性皮膜10で各種部材を被覆する場合、図1,2に示すように、潤滑層12が表面側に位置するように耐摩耗性皮膜10が被覆される。
本発明の耐摩耗性皮膜10は、耐摩耗性に優れる潤滑層12を備えることで、高い耐摩耗性を付与することができ、また、潤滑層12とめっき層11との密着性も良好であり、摩耗が繰り返されたとしても耐摩耗性の効果が失われにくい。
特に図2の実施形態のように、めっき層11に孔15が形成されている場合は、潤滑層12に含まれる固体潤滑剤2がめっき層11に保持されやすいので、耐摩耗性の効果を長期にわたって持続することができる。固体潤滑剤2が潤滑粒子である場合は、特にその効果が顕著となる。
従来の耐摩耗性皮膜は、摩耗され続けると皮膜が剥がれるため、次第に耐摩耗性が消失し得るものであったが、本発明の耐摩耗性皮膜10は、前述の構成を具備することで、従来よりも長期間にわたって耐摩耗性の効果を持続することができる。
2.耐摩耗性部材
本発明の耐摩耗性部材30は、図1、図2に示すように、耐摩耗性皮膜10と、基材20とを備え、前記基材20は前記耐摩耗性皮膜10で被覆されており、前記耐摩耗性皮膜10は、前記めっき層側11の面が前記基材20に固着している。
耐摩耗性皮膜10は、本明細書の「1.耐摩耗性部材」の項で説明した構成と同様である。
基材20は、各種の固体材料を適用することができ、その種類は特に制限されない。例えば、金属、合金、樹脂、セラミックス、紙、木、布等の各種材料を基材20とすることができる。
基材20の形状は特に限定されない。例えば、基材20の形状は、基板状、フィルム状、棒状、ブロック状、球状、楕円球状、歪曲状等が挙げられる。また、基材20は、各種の摺動部品、機械部品、工具、金型等であってもよい。
基材20の耐摩耗性皮膜10が被覆される面には凹凸が形成されていることが好ましい。この場合、耐摩耗性皮膜10と基材20との密着性が特に向上し得る。この結果、摩耗が繰り返されたとしても耐摩耗性の効果が失われにくく、より長期にわたって耐摩耗性効果を持続することができる。
基材20に形成される凹凸の最大粗さ(Rz)は特に限定されない。例えば、基材20に形成される凹凸の最大粗さ(Rz)は、前記潤滑粒子の平均一次粒子径の2〜5倍程度とすることできる。具体的には、基材20に形成される凹凸の最大粗さは、0.25〜4μmであることが好ましく、0.5〜2μmであることがより好ましい。凹凸は、基材20の少なくとも耐摩耗性皮膜10が被覆される面の全面に形成されていることが好ましく、基材20の全面に形成されることも好ましい。
耐摩耗性皮膜10は、そのめっき層側11の面が基材20に直接固着され得る。あるいは、耐摩耗性皮膜10のめっき層側11の面と、基材20との間に他の層が介在して、耐摩耗性皮膜10が基材20に固着され得る。
本発明の耐摩耗性部材30は、耐摩耗性皮膜10を備えることで、摩耗が繰り返されても長期間にわたって優れた耐摩耗性を維持できる。
耐摩耗性部材30において、潤滑層12に含まれる固体潤滑剤の一部又は全部は、めっき層11に形成されている孔15の内部に入り込んでいる態様であってもよい。
本発明に係る耐摩耗性部材の他の形態として、耐摩耗性皮膜と、基材とを備え、基材は耐摩耗性皮膜で被覆されており、耐摩耗性皮膜は、二硫化モリブデンを含むめっき層を備え、基材の耐摩耗性皮膜が被覆される面には凹凸が形成されている、形態(以下、「第3形態」と表記することがある)を挙げることもできる。
第3形態においては、耐摩耗性皮膜には、潤滑層は形成されておらず、例えば、二硫化モリブデンを含むめっき層のみで形成される。固体潤滑剤は、図1の実施形態と同様である。
第3形態のめっき層は、例えば、第1めっき処理で使用するめっき液に二硫化モリブデンを含んだものを使用して形成することができる。めっき液に二硫化モリブデンが含まれている点を除いては、めっき液の種類は第1めっき処理で使用するめっき液と同様とできる。
第3形態においても、めっき層11には孔15が形成されていてもよい。孔15は、前述の孔形成方法と同様の方法で形成することができる。
第3形態の耐摩耗性部材30にあっても、耐摩耗性皮膜10と基材20との密着性が高いので、摩耗が繰り返されたとしても耐摩耗性の効果が失われにくく、より長期にわたって耐摩耗性効果を持続することができる。
3.耐摩耗性皮膜の形成方法
耐摩耗性皮膜10の形成方法は、特に限定されず、前述した構成を備える限りは、各種の方法にて耐摩耗性皮膜10を製作することができる。以下、一例として、図1の形態の耐摩耗性皮膜10を基材20上に形成する方法(以下、「第1の形成方法」とする)、及び、図2の形態の耐摩耗性皮膜10を基材20上に形成する方法(以下、「第2の形成方法」とする)を説明する。
(第1の形成方法)
耐摩耗性皮膜10の形成方法は、基材20の表面をめっき処理することでめっき層11を形成する第1工程と、めっき層11の表面に固体潤滑剤2を含有する潤滑層12を形成する第2工程とを含み得る。
図3は、第1の形成方法の模式的な説明図である。
図3(a)に示す基材20の構成は、「2.耐摩耗性部材」で説明した基材20と同様である。
図3(b)に示すように、第1工程におけるめっき処理を行う前に、基材20の表面に凹凸を形成する工程をさらに備えることもできる。この場合、基材20表面に形成された凹凸面上に耐摩耗性皮膜10が形成され、また、凹凸面を有する基材20を含む耐摩耗性部材30が得られる。
基材20の表面に凹凸を形成する方法は特に限定されない。例えば、公知の手段で基材20の表面に凹凸を形成することができる。具体的には、基材20の表面を、ショットブラスト、ショットピーニング、エッチング等の処理をすることで基材20の表面に凹凸を形成することができる。
基材20の表面に凹凸を形成する方法は、特に、ショットブラストを用いることが好ましい。ショットブラストを採用することで、基材20の表面の最大粗さ(Rz)を所望の範囲に調整しやすく、また、処理後の表面が連続した凹凸が深く形成される梨地状となりやすい。凹凸は、基材20の少なくとも耐摩耗性皮膜10が被覆される面の全面に形成させることが好ましく、基材20の全面に形成させることも好ましい。
第1工程におけるめっき処理は、前記第1めっき処理と同様である。
第1工程において、基材20表面に凹凸を形成した場合は、第1めっき処理によって形成されるめっき層11の表面も凹凸が形成され得る。基材20に形成される凹凸は、例えば、図1の実施形態で説明した凹凸と同様の態様にすることができる。
第1工程によって、図3(c)に示すように、基材20にめっき層11が積層される。
第2工程では、第1工程で形成しためっき層11の表面に固体潤滑剤2を含有する潤滑層12を積層する。
第2工程では、前述の潤滑層形成手段により、潤滑層12を形成することができる。これにより、図3(d)に示すように、めっき層11上に固体潤滑剤2を含有する潤滑層12が積層される。めっき層11の表面が凹凸状になっている場合は、形成直後の潤滑層12の表面も凹凸状になり得る。
潤滑層12を潤滑粒子で形成させる場合、潤滑層形成手段が好適であり、特にショットブラストのような手段を採用することで、潤滑粒子が物理的な作用によってめっき層11表面に付着しやすい。これにより、付着力の大きい潤滑層12がめっき層11上に形成され得る。また、第1工程においてショットブラストを使用して基材20表面に凹凸を形成した場合は、潤滑層12を積層する方法もショットブラストを使用することが好ましい。
上記第1工程及び第2工程を具備する形成方法によって、図1に示す形態の耐摩耗性皮膜が基材20に形成され得る。このような形成方法によれば、耐摩耗性皮膜を容易に形成することができる。
(第2の形成方法)
図4は、第2の形成方法の模式的な説明図である。
第2の形成方法は、第1の形成方法において、第1工程のめっき処理では、樹脂粒子を含むめっき液を使用することで、樹脂粒子を含むめっき層を形成し、該めっき層を加熱処理することで前記樹脂粒子を焼失する工程をさらに備える。加熱処理することで前記樹脂粒子が焼失し前記めっき層中に複数の孔が形成される
第2の形成方法において、めっき層中に複数の孔を形成させる方法は、前述の「孔形成方法」と同様の方法である。
図4では、一例として、前記樹脂粒子を含むめっき液を用いて第1めっき処理をしてめっき層11を形成し(図4(b))、これを前記加熱処理することで前記樹脂粒子5を焼失させて孔15を形成する形態(図4(c))を示している。尚、図4では、樹脂粒子5が前記樹脂粒子に相当する。
第2の形成方法において、加熱処理は、図4に示すように、第1工程と第2工程との間で行うことができる。あるいは、第2工程の後に加熱処理を行うこともできる。しかし、固体潤滑剤2が、孔15の中に入り込みやすいという点では、加熱処理は第1工程と第2工程との間、つまり、図4(b)のように第1工程で樹脂粒子を含有するめっき層11を形成した後、潤滑層12を形成する前に加熱処理を行うことが好ましい。
潤滑層12を形成する前に加熱処理を行う場合、加熱処理を行って孔15を形成した後に、孔15の着色処理を行うこともできる。着色の方法は、例えば、公知の着色方法を採用することができ、公知のインク、ペンキ等の着色剤を塗布する方法等を例示できる。
第2の形成方法において、基材20に凹凸を設ける方法、及び、潤滑層12を形成する方法は、第1の形成方法と同様である。
第2の形成方法では、潤滑層12を形成する方法は、ショットブラストを採用することが好ましく、この場合、固体潤滑剤2が孔15に入り込みやすくなる。また、ショットブラストによれば、潤滑粒子を物理的な外力の作用によってめっき層11に固着させる。そのため、めっき層11の表面及び孔15に潤滑粒子を入れ込みやすい。
特に、孔15の直径がめっき層11の内部へ行くほど大きくなる場合(めっき層11表面よりも内部の方が孔15の開口断面積が大きい場合)、ショットブラストで入れ込みさせると、より内部の孔15に潤滑粒子が入り込みやすい。これにより、潤滑粒子がめっき層11から脱落しにくくなり、耐摩耗性の効果がより長期間持続し得る。
以上の第2の形成方法によって、図2の形態の耐摩耗性皮膜、つまり、複数の孔15が形成されためっき層11を備える耐摩耗性皮膜10が基材20に形成される。
樹脂粒子を5使用してめっき層11に孔15を形成する方法では、アスペクト比が大きい孔15が形成されやすく、急峻な凹凸も形成しやすい。これにより、潤滑粒子等の固体潤滑剤2がめっき層11に保持されやすく、耐摩耗性の持続性に優れる耐摩耗性皮膜10を形成しやすい。
本発明に係る耐摩耗性皮膜の形成方法によれば、前記耐摩耗性皮膜及び前記耐摩耗性部材を製造する方法として適した方法である。特に、本発明に係る耐摩耗性皮膜の形成方法で製造される耐摩耗性皮膜は、固体潤滑剤がめっき層に強く保持されやすいので、長期間にわたって優れた耐摩耗性を有し続けることができる。
本発明の方法並びに耐摩耗性皮膜10及び耐摩耗性部材30は、各種の部材に好適に使用することができる。適用可能な部材としては、各種の機械部品、各種エンジン部品のすべり軸受けやピストンリングなどの動力系部品、チェーンなどの連続して稼働する動力伝達部品、工具、金型等が例示され、その他、家庭用品、産業機械、輸送機又はレジャー用品等、に使用されるような各種摺動部品も例示される。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
(実施例1)
基材として鉄(S45C)を準備し、ショットブラストによって基材に凹凸を形成した。ショットブラストには、セラミック系投射材(アルミナ、ガーネット)を使用し、サンドグリッドはメッシュサイズ#100〜150、圧力は10kgf/cmとし、基材表面の凹凸の最大粗さRzは、2〜4μmとした。
次いで、凹凸を形成した基材に無電解Ni−Pめっき処理を行った。無電解Niめっき液は、「二ムデンKTB(登録商標)」(上村工業株式会社)を使用し、その他作業環境は上記めっき液の標準条件に準じた。生成しためっき層の厚みは10μmであった。
次いで、めっき層上に、ショットブラストによって二硫化モリブデン粒子(平均一次粒子径1μm)を保持させ、約3μmの厚みを有する潤滑層を形成した。このようにして、耐摩耗性皮膜で被覆された基材を耐摩耗性部材として得た。
(実施例2)
基材として鉄(S45C)を準備し、この基材をショットブラストで凹凸を形成した。ショットブラストには、セラミック系投射材(アルミナ、ガーネット)を使用し、サンドグリッドは#100〜150、圧力は10kgf/cmとし、基材表面の凹凸の最大粗さRzは、2〜4μmとした。
次いで、凹凸を形成した基材に無電解Ni−Pめっき処理を行った。無電解Niめっき液は、「二ムデンKTB(登録商標)」(上村工業株式会社)を使用し、このめっき液にさらに、平均一次粒子径が2.5μmのアクリル樹脂粒子を5g/Lの量で添加し、さらに、微量のカチオン系界面活性剤を添加した。その他作業環境は上記めっき液の標準条件に準じた。生成しためっき層の厚みは10μmであり、内部にアクリル樹脂粒子が含まれていた。
このようにめっき層を形成した基材を、350℃で120分加熱処理を行った。これにより、アクリル樹脂粒子が焼失して、めっき層中に孔が形成された。
次いで、孔を形成しためっき層上に、ショットブラストによって二硫化モリブデン粒子(平均一次粒子径1μm)を保持させ、約3μmの厚みを有する潤滑層を形成した。このようにして、耐摩耗性皮膜で被覆された基材を耐摩耗性部材として得た。
(実施例3)
基材として鉄(S45C)を準備し、この基材をショットブラストで凹凸を形成した。ショットブラストには、セラミック系投射材(アルミナ、ガーネット)を使用し、サンドグリッドは#100〜150、圧力は10kgf/cmとし、基材表面の凹凸の最大粗さRzは、2〜4μmとした。
次いで、凹凸を形成した基材に無電解Ni−Pめっき処理を行った。無電解Niめっき液は、「二ムデンKTB(登録商標)」(上村工業株式会社)を使用し、このめっき液にさらに、二硫化モリブデン粒子(平均一次粒子径1μm)を5g/Lの量で添加した。その他作業環境は上記めっき液の標準条件に準じた。生成しためっき層の厚みは10μmであり、内部に二硫化モリブデン粒子が含まれていた。このようにして、耐摩耗性皮膜で被覆された基材を耐摩耗性部材として得た。
(実施例4)
基材に凹凸を形成しなかったこと以外は実施例2と同様の方法で耐摩耗性部材を得た。
(比較例1)
実施例1において、めっき層及び潤滑層を形成せず、凹凸を形成した基材を比較用サンプルとして得た。
(比較例2)
実施例1において、めっき層を形成させずに基材上に直接約3μmの厚みを有する潤滑層(二硫化モリブデン粒子)を形成し、これを耐摩耗性部材として得た。
(比較例3)
潤滑層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の方法で耐摩耗性部材を得た。
(比較例4)
二硫化モリブデン粒子の代わりに黒雲母(平均一次粒子径1μm以下)を使用し、さらにめっき液にカチオン系界面活性剤を添加したこと以外は実施例3と同様の方法で耐摩耗性部材を得た。
(比較例5)
二硫化モリブデン粒子の代わりにPTFE粒子(平均一次粒子径1μm以下)を使用したこと以外は実施例3と同様の方法で耐摩耗性部材を得た。
(耐摩耗性試験)
耐摩耗性部材の耐摩耗性試験は、次の条件で行った。
・荷重:10N
・相手材:ステンレス
・回転数:耐摩耗性部材を100rpm、相手材を100rpmとした。
・摩耗時間:被膜がなくなるまで実施
・測定開始15分ごとに皮膜の削れた摩耗量を測定
尚、耐摩耗性試験は、ピンオンディスク方式の摩耗試験機を用いて行うことができる。
図5には、各実施例及び比較例で得られた耐摩耗性部材の耐摩耗性試験の結果を示している。この図から、実施例で得られた耐摩耗性部材は、耐摩耗性試験を長時間行っても、摩耗量の増加が起こりにくいことがわかるのに対し、比較例の耐摩耗性部材は、測定開始後すぐに、または、一定時間経過後、摩耗量が顕著に増大していることがわかる。この結果、実施例で得られた耐摩耗性部材は、摩耗が繰り返されても長期間にわたって優れた耐摩耗性を維持できているといえる。
比較例1,2は、めっき層12がなく、すぐに摩耗による剥がれが発生することがわかった。比較例2は、初期の二硫化モリブデンが存在している間は摩耗しないが、二硫化モリブデンが表面からなくなると同時に、すぐに素材の摩耗が確認された。
比較例3は、めっき層があるので、初期は摩耗しにくいが、徐々にめっき層12が無くなり、摩耗が進んだと思われる。
比較例4、5の複合めっきは、複合された粒子の効果のため、初期は摩耗量も少なく良好であるが、後半は摩耗の進行が速く、60分から90分あたりで被膜すべてが摩耗してしまい、素材まで到達した。
一方、実施例1〜4は、良好な結果であった。特に、実施例2がもっとも摩耗時間による摩耗量が少ない結果となった。実施例2は、めっき層がポーラスに形成されて孔があるからであると考えられる。
実施例1では、二硫化モリブデンがめっき層の凹凸部分に入れ込み固定されていることから、耐摩耗性が長期間持続できている。
実施例2では、二硫化モリブデンが孔15に入れ込みされているので、潤滑層が強固に固定されており、結果、耐摩耗性に優れている。
実施例3は、実施例1,2と異なり、二硫化モリブデンがめっき層に保持されていることから、摺動性があり、かつ、めっき層に強固に固定されている。この結果、実施例3は、複合めっき層として比較例4、5よりも良好な耐摩耗性を示した。
実施例4は、基板15の凹凸処理がないため、基材15と、めっき層との密着性は他の実施例ほど高くないものの、比較例よりも優れた耐摩耗性を有していた。
2:固体潤滑剤
5:樹脂粒子
10:耐摩耗性皮膜
11:めっき層
12:潤滑層
13:コート層
15:孔
20:基材
30:耐摩耗性部材

Claims (10)

  1. めっき層と、該めっき層上に積層される潤滑層とを有し、
    前記潤滑層は、固体潤滑剤を含有する、耐摩耗性皮膜。
  2. 前記めっき層には、複数の孔が形成されている、請求項1に記載の耐摩耗性皮膜。
  3. 前記固体潤滑剤の一部又は全部は、前記孔の内部に入り込んでいる、請求項2に記載の耐摩耗性皮膜。
  4. 前記固体潤滑剤は、黒鉛、二硫化モリブデン、窒化ホウ素、二硫化タングステン、酸化鉛及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐摩耗性皮膜。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐摩耗性皮膜と、基材とを備え、
    前記基材は前記耐摩耗性皮膜で被覆されており、
    前記耐摩耗性皮膜の前記めっき層側の面が前記基材に固着している、耐摩耗性部材。
  6. 前記基材の前記耐摩耗性皮膜が被覆される面には凹凸が形成されている、請求項5に記載の耐摩耗性部材。
  7. 耐摩耗性皮膜と、基材とを備え、
    前記基材は前記耐摩耗性皮膜で被覆されており、
    前記耐摩耗性皮膜は、二硫化モリブデンを含むめっき層を備え、
    前記基材の前記耐摩耗性皮膜が被覆される面には凹凸が形成されている、耐摩耗性部材。
  8. 基材の表面をめっき処理することでめっき層を形成する第1工程と、
    前記めっき層の表面に固体潤滑剤を含有する潤滑層を形成する第2工程と、
    を含む耐摩耗性皮膜の形成方法。
  9. 前記第1工程のめっき処理では、樹脂粒子を含むめっき液を使用することで樹脂粒子を含むめっき層を形成し、該めっき層を加熱処理することで前記樹脂粒子を焼失する工程をさらに備える、請求項8に記載の形成方法。
  10. 前記めっき処理を行う前に前記基材の表面に凹凸を形成する工程をさらに備える、請求項8又は9に記載の形成方法。
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