JP2007112939A - 接着剤組成物の製造方法、接着剤組成物及び紙管 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高強度、高硬度で、耐水性、耐温水性、耐煮沸水性、耐熱性に優れるため、高温多湿時にも高い紙管強度を発揮し、なおかつウェットタック、初期接着性に優れるため接着作業性、紙管の生産性が良好な接着剤組成物を得る。
【解決手段】 本発明の接着剤組成物の製造法は、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールからなる保護コロイドの存在下で乳化(共)重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体をポリビニルアルコール及び無機充填材の存在下で水溶液重合により得られる樹脂組成物(B)、特定組成の、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体、活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマーより得られた水溶液樹脂組成物(C)、及び、特定量の水溶性ヒドラジン化合物(D)を混合することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、木工、紙工、紙管用として用いられる接着剤組成物の製造方法、及び接着剤組成物、並びにそれを用いた紙管に関する。さらに詳しくは、保存安定性と乾燥皮膜の強度、耐湿熱性に優れ、なおかつ、オープンタイムが長い上に、ウェットタックが高く、作業性に優れた接着剤組成物の製造方法に関する。また、該製造方法による接着剤組成物、及び、該接着剤組成物を用いた、高温多湿時にも高い強度を発揮する紙管に関するものである。
従来、プリント合板をはじめとする合板、紙パッケージ、段ボール、紙管の製造工程等において、木工用、紙工用の接着剤が広く用いられている。木工用接着剤組成物としては、台板の目止め効果や接着力向上の目的で、クレーなどの無機充填剤が配合された酢酸ビニル樹脂エマルジョンが用いられている。一方、紙工用接着剤組成物としては、接着後の耐水接着力や強度が要求され、紙パッケージのグルアー用や段ボールの中芯合紙用の接着剤組成物としては酢酸ビニルエマルジョンが用いられている。
上記用途の中でも、特に紙管は、プラスチック管と異なり、パルプの離解、再生によるリサイクルが可能で環境に優しい点で特に優れており、新聞紙やフィルムの芯材用途をはじめ、今日多方面で用いられている。紙管は通常、接着剤を原紙に塗布し、これを金属製心棒に螺旋状に巻き付けることにより製造される。従来、紙管用接着剤組成物としては、澱粉、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル樹脂エマルジョン等が用いられている。これらの接着剤の性能としては、作業性、生産性の面からは高速接着性が要求され、紙管の性能面からは耐水性、耐温水性、耐煮沸水性、耐熱性、耐湿熱性等が要求される。また、紙管としては、偏平耐圧強度、座屈強度、折り曲げ強度等の特性が要求される。さらに、これらの性能は様々な環境下において要求され、特に冬場の超低温下でも高速接着性を示し、梅雨時期や夏場の高温多湿条件下においても上記諸強度を発揮することが要求される。
これに対して、上記ポリビニルアルコールからなる接着剤組成物は初期接着性、耐水性、耐温水性、耐煮沸水性が劣り、紙管としては高温多湿時の強度や作業性が悪い。また、酢酸ビニル樹脂エマルジョンからなる接着剤組成物は耐熱性、耐温水性、耐煮沸水性が劣り、紙管としては硬さや高温多湿時の強度に乏しい。耐熱性や硬さを向上させる観点で、上記接着剤組成物にクレー等の無機充填剤を配合することも一部行われているが、経時で充填剤の沈降が起こり、初期接着性が低下し作業性が悪化する問題が生じる。さらに、耐温水性、耐煮沸水性の解決にも至っていなかった。
これらの問題点を解決するため、さらに接着剤組成物の改良が行われてきており、保護コロイドとしてのポリビニルアルコールとクレー系顔料の存在下、酢酸ビニルを乳化重合する接着剤組成物の製造方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。一方、アクリル系の接着剤組成物の検討も行われており、ポリビニルアルコール(保護コロイド)と無機充填材の存在下、(メタ)アクリル系モノマー等を乳化(共)重合するアクリル系接着剤組成物(例えば、特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、前者は、初期接着性や弾性率は優れているものの、未だ耐温水性、耐煮沸水性が十分でなく、高温多湿時の耐圧強度が不足する問題を有している。さらに、残存酢酸ビニルモノマーの発癌性の問題やアセトアルデヒドやホルムアルデヒドなどの有害分解物の発生の問題によって敬遠されてきており、市場からは酢酸ビニルを添加しない接着剤組成物が要望されている。また、後者は、初期接着性、耐熱性、耐水性や乾燥皮膜の弾性率は向上するものの、乳化重合安定性が低いため重合途中でゲル化しやすく、得られる接着剤組成物の安定性が低いという欠点があった。さらに、得られる接着剤組成物の耐温水性や耐熱水性も未だ十分とは言えず、経時による無機充填剤の沈降も起きやすい問題を有していた。
すなわち、上述の通り、接着作業性、初期接着性、耐水性、耐温水性、耐煮沸水性、耐熱性、乾燥皮膜の弾性率、強度や安定性など、全ての要求に優れた接着剤組成物は未だ得られていないというのが現状であった。
特開平11−228608号公報 特開2002−188069号公報
本発明者は、メルカプト基を有するポリビニルアルコールを保護コロイドとして製造した(メタ)アクリル系樹脂組成物と、カルボキシル基含有モノマーをポリビニルアルコール及び無機充填剤の存在下で重合させた特定構造を有する樹脂組成物を混合した接着剤樹脂組成物は、オープンタイムが長く、接着作業性に優れ、強度、耐水性、耐温水性、耐煮沸水性や充填剤の安定性に優れることを見出すに至った。
しかしながら、上記接着剤組成物はウェットタック性が不足しており、低温での初期接着力の発現が遅いため、特に冬場の紙管製造工程などで生産スピードが低下する問題を有していることがわかった。
すなわち、本発明の目的は、上記の強度、耐熱性などの特徴を有する接着剤組成物にウェットタック性を付与し、初期接着力の発現をさらに速め、生産性を向上させる接着剤組成物の製造方法、該製造方法による該接着剤組成物及び該接着剤組成物を用いて得られる紙管を提供することにある。
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、(メタ)アクリル酸エステル単独で、又は(メタ)アクリル酸エステルと、該(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーとを、保護コロイドとして分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下で乳化(共)重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物に、ポリビニルアルコール及び無機充填材の存在下でカルボキシル基含有重合性不飽和単量体を水溶液重合させて得られる樹脂組成物を混合し、更にその上に、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体、活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマー、及び(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸エステルと該(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なモノマーからなる重合性不飽和単量体混合物を、有機溶剤中で溶液重合し、共重合体の有機溶剤溶液を得て、次いでこれを水溶液に変換した後、減圧下に有機溶剤を除去して得た水溶液樹脂組成物と、架橋剤として水溶性ヒドラジン化合物を混合して得た常温硬化性接着剤組成物が、上記のような優れた特性を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸エステルと該(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合可能なモノマーとを、保護コロイドとして分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下で乳化(共)重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)と、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体をポリビニルアルコール及び無機充填材の存在下で水溶液重合させて得られる樹脂組成物(B)と、0.1〜20重量%の前記カルボキシル基含有重合性不飽和単量体、0.1〜10重量%の活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマー、70〜99.8重量%の(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸エステルと該(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合可能なモノマーからなる不飽和単量体混合物を、有機溶剤中で溶液重合し、共重合体の有機溶剤溶液を得て、次いでこれを水溶液に変換した後、減圧下に有機溶剤を除去して得た水溶液樹脂組成物(C)と、該水溶液樹脂組成物(C)中の重合性不飽和単量体混合物の総量に対して0.1〜10重量%の水溶性ヒドラジン化合物(D)とを混合することを特徴とする接着剤組成物の製造方法を提供する。
また、本発明は、上記製造方法において、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の配合比は、(A)/(B)=10/90〜90/10程度であり、水溶液樹脂組成物(C)の配合量は、樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の総量に対して1〜50重量%程度である接着剤組成物の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、上記樹脂組成物(B)の水溶液重合において、ポリビニルアルコール100重量部に対して、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体を5〜200重量部用いる接着剤組成物の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、上記樹脂組成物(B)の水溶液重合において、ポリビニルアルコール100重量部に対して、無機充填材を10〜500重量部用いる接着剤組成物の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、上記樹脂組成物(B)の水溶液重合において、ポリビニルアルコールとして、重合度300〜2500で且つケン化度80〜100モル%の一般ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール系共重合体及びアセトアセトキシ化ポリビニルアルコールから選択された少なくとも1種のポリビニルアルコールを用いる接着剤組成物の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、上記樹脂組成物(B)の水溶液重合において、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体としてアクリル酸を用いる接着剤組成物の製造方法を提供する。
また、本発明は、前記の製造方法により得られる接着剤組成物を提供する。
また、本発明は、前記の接着剤組成物を用いて紙管用原紙を層状且つ螺旋状に巻回して接着することにより得られる紙管を提供する。
本発明の接着剤組成物は、オープンタイムが長く、作業性に優れ、無機充填材の沈降安定性に優れる。なおかつ、初期接着力の発現が速く、ウェットタックに優れる。そのため、特に冬場でも製管スピードを向上させることが可能で生産性が高い。さらに低塗布量で紙管を生産できるため、経済性に富む。また、該接着剤を用いて、紙管用原紙を層状に螺旋状に巻いて接着することにより得られる紙管は、高硬度で、耐水性、耐温水性、耐煮沸水性、耐熱性に優れ、高温多湿時にも強度が低下を起こさない。
本発明の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステルを主たる単量体成分とする(メタ)アクリル系樹脂組成物(以下、(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)という)の製造方法、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体を主たる単量体成分とする樹脂組成物(B)(以下、カルボキシル基含有樹脂組成物(B)という)の製造方法、前記(メタ)アクリル酸エステル、活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマーおよび前記カルボキシル基含有不飽和単量体を主成分とする水溶性の樹脂組成物(以下、水溶性樹脂組成物(C)という)の製造方法、および、上記(A)、(B)、(C)の3種の樹脂組成物と水溶性ヒドラジン化合物(以下、水溶性ヒドラジン化合物(D)という)の混合からなる。
なお、本発明にいう「(メタ)アクリル系樹脂」とは、「アクリル系樹脂」及び/又は「メタクリル系樹脂」のことを意味する。以下同様の意味である。
本発明において用いられる(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする単量体成分を、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールを保護コロイドとして共存させた状態で、乳化(共)重合させることによって製造される。上記単量体成分は、(メタ)アクリル酸エステルのみからなっていてもよいし、(メタ)アクリル酸エステルと該(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合可能な別のモノマーからなっていてもよい。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の重合に用いられる主単量体成分である(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されないが、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステルは1種類のみを用いてもよいし、2種以上の(メタ)アクリル酸エステルを組み合わせて用いてもよい。
上記(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、特に限定されないが、(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)に用いる単量体の総量に対して、50〜98重量%が好ましく、より好ましくは70〜95重量%である。
また、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な共重合成分は、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な成分であれば、特に限定されないが、スチレン系モノマー、(メタ)アクリロニトリル、アミド結合含有ビニルモノマー、酸基(酸無水物基を含む)含有不飽和単量体、ヒドロキシル基含有不飽和単量体、シリル基含有不飽和単量体、エポキシ基含有単量体などが好ましく例示される。
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の共重合成分として用いられるスチレン系モノマーとしては、特に限定されないが、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが挙げられる。これらのモノマーは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。共重合成分として、スチレン系モノマーまたは(メタ)アクリロニトリルを用いる場合、接着剤組成物による皮膜に硬さ、柔軟性、可とう性を付与することができるため好ましい。スチレン系モノマーの使用量は、用いる単量体の総量に対して、例えば0〜50重量%が好ましく、より好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは、0〜20重量%である。
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の共重合成分として用いられるアミド結合含有ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリルアミド、α−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド及びN−ビニルピロリドン等が挙げられる。共重合成分として、アミド結合含有ビニルモノマーを用いる場合、接着剤組成物の保存安定性が向上するため好ましい。また架橋性のアミド結合含有ビニルモノマーを用いた場合、接着剤に更に硬さや耐熱性を付与することができるため好ましい。アミド結合含有ビニルモノマーの使用量は、保存安定性付与の観点から、用いる単量体の総量に対して、例えば0〜10重量%が好ましく、より好ましくは0〜7重量%、さらに好ましくは0〜5重量%である。
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の共重合成分として用いられる酸基含有重合性不飽和単量体としては、少なくとも1つの酸基(酸無水物基を含む)を分子内に有するエチレン性不飽和単量体が用いられる。酸基は、例えばカルボキシル基、スルホン酸基およびリン酸基などから選ばれる。酸基含有重合性不飽和単量体のうち、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸およびフマル酸などが挙げられる。スルホン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−アクリルアミドプロパンスルホン酸、t−ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。リン酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのリン酸モノエステル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートのリン酸モノエステルなどが挙げられる。これらは、商品名「ライトエステル PM」(共栄社化学(株)製)などとして市販されている。これらの酸基含有重合性不飽和単量体は、好ましくは少なくとも1種使用され、2種以上を適宜組み合わせて使用することもできる。
酸基含有重合性不飽和単量体は、得られる合成樹脂エマルジョンの保存安定性、機械的安定性、凍結に対する安定性等の諸安定性を向上させる効果がある。上記酸基含有重合性不飽和単量体のなかでも、上記諸安定性向上効果の観点から、カルボキシル基含有不飽和単量体を用いるのが好ましい。使用する酸基含有重合性不飽和単量体の総量の50重量%以上がカルボキシル基含有不飽和単量体であるのが好ましい。
酸基含有重合性不飽和単量体の使用量は、用いる単量体の総量に対して、例えば0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。酸基含有重合性不飽和単量体の割合が0.1重量%未満では、(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)(水分散液)の諸安定性が悪くなりやすく、長時間の貯蔵に耐えない場合がある。一方、酸基含有重合性不飽和単量体の割合が10重量%を超えると耐水性が低下しやすい。
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の共重合成分として用いられるヒドロキシル基含有重合性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、ε−カプロラクトン変性アクリルモノマーなどが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有重合性不飽和単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。ε−カプロラクトン変性アクリルモノマーとしては、ダイセル化学工業(株)製の商品名「プラクセル FA−1」、「プラクセル FA−2」、「プラクセル FA−3」、「プラクセル FA−4」、及び「プラクセル FA−5」などが挙げられる。
ヒドロキシル基含有重合性不飽和単量体を共重合体成分として用いることにより、親水性が増し、ポリビニルアルコールとの混和安定性が増し、(A)の製造における作業性が向上する。ヒドロキシル基含有重合性不飽和単量体の使用量は、用いる単量体の総量に対して、例えば0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは1〜7重量%である。0.1重量%未満では、上記効果が発揮されない。また、10重量%を超えると皮膜の耐水性が低下し、好ましくない。
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の共重合成分として用いられるシリル基含有重合性不飽和単量体としては、例えば、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシリル基を含有するモノマーが挙げられるが、これらに限定されない。シリル基含有重合性不飽和単量体として、一般にシランカップリング剤として知られている化合物を好適に用いることができる。シリル基含有重合性不飽和単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらシリル基含有重合性不飽和単量体を共重合成分として用いることにより、無機充填剤との親和性が増し、接着剤の強度が改善されるとともに、耐温水性、耐沸騰水性及び耐熱性が向上する。シリル基含有重合性不飽和単量体の使用量は、用いる単量体の総量に対して、例えば0.1〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜3重量%である。この割合が0.1重量%未満では上記特徴が出ず、5重量%より多い場合は、凝集により重合安定性、貯蔵安定性、造膜性が低下する。
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の共重合成分として用いられるエポキシ基含有重合性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが挙げられる。エポキシ基含有重合性不飽和単量体は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。エポキシ基含有重合性不飽和単量体を共重合成分として用いることにより、接着剤の強度及び耐熱性が改善される。エポキシ基含有重合性不飽和単量体の使用量は、用いる単量体の総量に対して、例えば0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%である。この割合が0.1重量%未満では上記特徴が出ず、10重量%より多い場合は、重合安定性、貯蔵安定性、造膜性が低下しやすい。
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の乳化(共)重合においては、保護コロイドとして、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(末端チオール変性ポリビニルアルコール)が用いられる。分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとしては、特に限定されないが、重合度が300〜2500で、ケン化度が80〜100モル%のものが好ましい。分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールは単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールを保護コロイドとして用いることにより、適度な親水性と保水性が付与されるため、オープンタイムが長くなり、作業性が向上すると同時に、(メタ)アクリル酸樹脂組成物(A)と、カルボキシル基含有樹脂組成物(B)との混和性が向上し、高不揮発分で低粘度となり、保存安定性に優れ、作業性と初期接着性が増大する。
分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの使用量は、(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)に用いる単量体の総量に対して、例えば1〜20重量%が好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。1重量%未満では、モノマーの反応性が低下し、安定な樹脂分散液が得られにくくなる。また、20重量%を超えると、樹脂分散液の粘度が高くなり、接着剤として用いた場合に、作業性、製管スピードが遅くなり、生産性が低下しやすくなる場合がある。また、乾燥性が低下するため初期接着性が低下する場合や、含水率が高くなるため耐水性が低下する場合がある。
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)の乳化(共)重合においては、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールとともに、アニオン性、ノニオン性等の乳化剤または反応性界面活性剤を用いてもよい。
乳化剤としては、炭素数が6以上の炭素原子を有する炭化水素基からなる疎水性部分と、カルボン酸塩、スルホン酸塩又は硫酸塩部分エステルなどの親水性部分とを同一分子中に有する両親媒性化合物から選ばれるアニオン系又は非イオン系の乳化剤が用いられる。このうち、アニオン乳化剤としては、アルコキシフェノール類又は高級アルコール類の硫酸ハーフエステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;アルキル又はアリルスルホネートのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルの硫酸ハーフエステルのアルカリ金属塩又はアンモニウム塩などが挙げられる。また非イオン系の乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル又はポリオキシエチレンアリルエーテルなどが挙げられる。またこれら一般汎用のアニオン系、ノニオン系乳化剤のほかに、分子内にラジカル重合性の不飽和二重結合を有する、すなわちアクリル系、メタクリル系、プロペニル系、アリル系、アリルエーテル系、マレイン酸系などの基を有する各種アニオン系、ノニオン系反応性界面活性剤なども適宜、単独又は2種以上の組み合わせで使用される。この際、併用する乳化剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非環境ホルモン型のノニオン性乳化剤を用いるのが好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)[(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂分散液等]を得る際の乳化重合は、例えば、前記モノマー成分を水性液中で、ラジカル重合開始剤及び保護コロイドとしての分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下に、攪拌下加熱することによって実施することができる。反応温度は例えば30〜100℃が好ましく、反応時間は例えば1〜10時間が好ましい。水と分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール及び乳化剤を仕込んだ反応容器に、モノマー混合液又は分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール及び乳化剤によるモノマープレ乳化液の一括添加又は暫時滴下する方法が、反応温度の調節が容易であり好ましい。また、乳化重合としては、通常の一段連続モノマー均一滴下法、多段モノマーフィード法であるコア・シェル重合法や、重合中にフィードするモノマー組成を連続的に変化させるパワーフィード重合法など、いずれの重合法も採用することができる。
上記ラジカル重合開始剤としては、通常アクリル樹脂の乳化重合で使用される公知の開始剤が使用できる。具体的には、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムや、過酸価水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物と、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤とが組み合わされたいわゆるレドックス系開始剤等が、例えば水溶液の形で使用される。
上記乳化重合においては、メルカプタン系化合物や低級アルコールなどの分子量調節のための助剤(連鎖移動剤)を併用してもよい。助剤を併用することにより、重合途中で凝集物等の発生がなく乳化重合を円滑に進めたり、樹脂皮膜が円滑かつ均一に形成し接着性が向上したりするため好ましい。
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)を構成する(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、皮膜の強度や造膜性等の観点から、好ましくは5万〜100万であり、より好ましくは20万〜80万である。また、(メタ)アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、皮膜の強度、硬度や造膜性等の観点から、−40〜60℃の範囲が好ましく、より好ましくは−20〜60℃の範囲である。
前記樹脂組成物(A)単独では接着剤組成物としての性能は低い。例えば、紙管用接着剤として使用された場合には、特に紙管の硬さや、耐湿熱性等が劣る。本発明では、これらの接着性能を改善するために、上記樹脂組成物(A)に、ポリビニルアルコール及び無機充填材の存在下でカルボキシル基含有不飽和単量体を水溶液重合させて得られる樹脂組成物(B)を添加、配合する。
本発明において用いられるカルボキシル基含有樹脂組成物(B)は、カルボキシル基含有不飽和単量体をポリビニルアルコール及び無機充填材の存在下で水溶液重合させることにより製造される。
上記カルボキシル基含有樹脂組成物(B)に用いられるカルボキシル基含有不飽和単量体は、カルボキシル基(酸無水物基を含む)と重合性不飽和基を有する単量体であり、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エタクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸などが好ましく例示される。中でも、アクリル酸が特に好ましい。上記カルボキシル基含有不飽和単量体は単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、重合に際しては、本発明の効果を損なわない範囲で、カルボキシル基含有不飽和単量体以外の単量体(共重合成分)を少量用いてもよい。その場合、カルボキシル基含有不飽和単量体の使用量は、単量体総量に対して、95モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは99モル%以上である。
上記カルボキシル基含有樹脂組成物(B)の重合に用いられるポリビニルアルコールとしては、一般的なポリビニルアルコールのほか、ヒドロキシル基の一部をアセトアセトキシ化したもの(アセトアセトキシ化ポリビニルアルコール)又はヒドロキシル基の一部をメルカプト基で置き換えたもの、あるいはエチレン−酢酸ビニル共重合体をケン化したエチレン変性ポリビニルアルコール系共重合体等の変性ポリビニルアルコールが好ましく例示される。これらのポリビニルアルコールは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
上記ポリビニルアルコールの重合度が300〜2500、ケン化度が80〜100モル%のものが好ましく、より好ましくは300〜2500、ケン化度が95〜99.9モル%であり、とりわけ重合度が300〜2500、ケン化度が98〜99.9モル%の、いわゆる完全ケン化ポリビニルアルコールと一般的に呼称されるものが特に好ましい。重合度が300未満の場合には接着剤組成物の耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性が低下する場合があり、重合度が2500を超える場合には接着剤組成物の粘度が高くなりすぎ、作業性が悪くなる場合がある。また、ケン化度が80モル%未満の場合には、接着剤組成物の耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性が低下する場合がある。
本発明で用いられる無機充填材としては、特に限定されないが、クレー、カオリン、炭酸カルシウム、アスベスチン、シリカ、ホワイトカーボン、炭酸バリウム、アルミナホワイト、サチンなどが挙げられる。無機充填材は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。上記の無機充填剤の中でもクレー、カオリンが特に好ましい。
上記カルボキシル基含有樹脂組成物(B)の重合において、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体の使用量は、特に限定されないが、耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性、及び接着剤として用いた場合の塗布作業性等の観点から、ポリビニルアルコール100重量部に対して、5〜200重量部が好ましく、より好ましくは10〜100重量部であり、10〜50重量部が特に好ましい。ポリビニルアルコール100重量部に対してカルボキシル基含有重合性不飽和単量体の使用量が5重量部未満では、紙管用接着剤として用いた場合、十分な耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性が得られにくい。これは、カルボキシル基含有樹脂組成物(B)中のカルボキシル基濃度が小さいため、ポリビニルアルコール及び紙管原紙のセルロース基中のヒドロキシル基とカルボキシル基含有重合性不飽和単量体のカルボキシル基との水素結合による相互作用が少なく、ヒドロキシル基とカルボキシル基の規則正しい配向に伴う結晶化が進まないことに起因するものと推測される。一方、ポリビニルアルコール100重量部に対してカルボキシル基含有重合性不飽和単量体の使用量が200重量部より多い場合には、ポリビニルアルコール中のヒドロキシル基に対してカルボキシル基が過剰となり、会合物増加による高分子量化のため接着剤組成物が増粘して、作業性が悪くなると同時に、紙管用接着剤として用いた場合、親水性増大のため耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性などの性能が低下し、好ましくない。
上記カルボキシル基含有樹脂組成物(B)の重合において、無機充填剤の使用量は、特に限定されないが、ポリビニルアルコール100重量部に対して、10〜500重量部が好ましく、より好ましくは30〜400重量部であり、50〜300重量部が特に好ましい。ポリビニルアルコール100重量部に対して無機充填剤の使用量が10重量部未満では、接着剤皮膜の弾性率、硬さや耐熱性が不足する場合がある。また、前記無機充填材の使用量が500重量部より多い場合には、樹脂成分の含有量が低下することにより、初期接着力、接着力、耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性が低下しやすく、更に樹脂成分と無機充填材の比重差により、無機充填材の沈降が進みやすくなり、好ましくない。
上記カルボキシル基含有樹脂組成物(B)の重合は、30〜100℃程度の温度で、撹拌下に行われる。水溶液重合は一般的な重合法に従って行うことができる。例えば、水、ポリビニルアルコール及び無機充填材を反応容器に仕込み、ラジカル重合開始剤を添加した後、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体を一括添加、又は連続滴下することにより重合を実施できる。カルボキシル基含有重合性不飽和単量体、ポリビニルアルコール及び水を予め混合し、溶解したものを系内に連続滴下してもよい。
上記カルボキシル基含有樹脂組成物(B)の重合において用いられるラジカル重合開始剤としては公知の開始剤を使用できる。例えば、水溶性のフリーラジカル重合開始剤として、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;前記過硫酸塩又は過酸化水素と、酸性亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤との組み合わせによる、いわゆるレドックス系開始剤などがそれぞれ水溶液の形で使用される。
上記カルボキシル基含有樹脂組成物(B)の重合の反応時間は、重合完結と作業効率および分子切断等による性能変化の観点から、例えば1〜5時間である。重合の終了は、例えば高速液体クロマトグラフィー等において、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体の消失を確認することにより判断できる。
本発明のカルボキシル基含有樹脂組成物(B)の製造方法では、上記カルボキシル基含有重合性不飽和単量体の重合後、熱処理を施すのが好ましい。熱処理温度は、60℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは80〜100℃である。熱処理の時間は30分〜5時間が好ましい。該熱処理により、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体の重合物のカルボキシル基とポリビニルアルコールのヒドロキシル基とが水素結合などの相互作用により、配向し、結晶化が促進される。そのため、接着剤として使用した場合に、耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性が向上する。また、同時に無機充填材と樹脂成分との物理的吸着や、グラフト重合などの化学的結合による相互作用が促進され、接着剤組成物の沈降安定性が改善され、皮膜の弾性率、硬さ、耐熱性が向上する。熱処理温度が60℃未満では、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体重合物のカルボキシル基とポリビニルアルコールのヒドロキシル基との相互作用が不足し、上記配向、結晶化が十分に進行しない場合があり、接着剤として耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性が不足する場合がある。また、無機充填材と樹脂成分との相互作用も不足し、接着剤組成物の沈降安定性が低下したり、皮膜の弾性率、硬さ、耐熱性が不足したりする場合がある。熱処理温度が100℃より高い場合は、上記物性の問題は生じないが、水を多量に含む組成物の100℃を超える温度での加熱処理は、装置上、操作上の点で工業的に不利である。
本発明における樹脂組成物(B)の接着性能発現機構について以下に考察する。ポリビニルアルコールと無機充填材の存在下で、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体を水溶液重合させた場合、重合により生成したポリマーは、側鎖に所定間隔を置いて連続的に並んだカルボキシル基を有している。これらのカルボキシル基と、ポリビニルアルコールの所定間隔を置いて連続的に並んだヒドロキシル基とが水素結合などの相互作用により、配向し、結晶化する。そして、重合後の熱処理により、益々この配向、結晶化が促進される。結晶化した樹脂は温水、熱水に溶けにくく、このため接着剤として紙管などに応用された場合、オープンタイムが長く作業性が優れると同時に、紙管の耐温水性、耐沸騰水性、耐湿熱性が向上する。また、無機充填材が同時に存在するため、フィラー効果(フィラーと樹脂成分の相互作用)により、重合時および熱処理の際に、配向、結晶化した樹脂成分が無機充填材表面に物理的に吸着したり、又は場合によってはグラフト反応などの化学結合により相互作用が起こり、樹脂組成物の沈降安定性が改善され、皮膜の弾性率、硬さ、及び耐熱性が改善される。無機充填材の単なる後添加では、このようなフィラー効果は望めず、樹脂成分と無機充填材との相互作用が乏しいため、沈降安定性が劣り、接着剤皮膜の弾性率、硬さ、耐熱性が劣る。
このような機構により接着性能が発現されると推察されるため、ポリビニルアルコールとしてはヒドロキシル基が狭く且つほぼ等間隔で連続的に並んだ完全ケン化ポリビニルアルコールが好ましい。また、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体としては、重合後カルボキシル基が等間隔で連続的に並び、水素結合による結晶化が起こりやすいアクリル酸が最も好ましい。
本発明の水溶液樹脂組成物(C)は、(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体及び活性カルボニル基含有不飽和単量体を必須成分としてなる。なお、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル系樹脂組成物(A)の製造に用いたものと同様の化合物を用いることが出来るが、好ましくは同一の化合物であり、アクリル系樹脂組成物(A)の製造に(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて共重合成分を用いている場合には、水溶液樹脂組成物(C)の製造の際にも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに加えて該共重合成分を用いることが好ましい。また、水溶液樹脂組成物(C)の必須成分として用いられるカルボキシル基含有重合性不飽和単量体は、カルボキシル基含有樹脂組成物(B)の合成に用いたものと同様の化合物であり、好ましくは同一の化合物である。
水溶液樹脂組成物(C)の重合に用いられる(メタ)アクリル酸エステルの使用量は、水溶性樹脂組成物(C)の重合に用いられる単量体成分の総量に対して、70〜99.8重量%であり、好ましくは70〜95重量%である。
水溶性樹脂組成物(C)の重合に用いられるカルボキシル基含有重合性不飽和単量体の使用量は0.1〜20重量%であり、好ましくは0.5〜15重量%である。カルボキシル基含有重合性不飽和単量体の使用量が0.1重量%未満の場合には、製造時のアルカリ添加により、白濁し水溶液化が困難となる場合がある。また、20重量%を超えると、接着剤の粘度が高くなることによる作業性の低下と耐水性、耐湿性の低下を招く場合ある。なお、上記使用量は、アクリル系樹脂組成物(A)の製造に共重合成分としてカルボキシル基含有重合性不飽和単量体を用いている場合にも、(A)由来であるか(B)由来であるかを問わず、すべてのカルボキシル基含有重合性不飽和単量体の使用量をいうものとする。
活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクロレイン、クロトンアルデヒド、ホルミルスチロールなどの重合性不飽和基含有アルデヒド;ジアセトン(メタ)アクリルアミド、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、アセト酢酸ビニルエステル、γ,γ−ジメチル−6−ケトカルボン酸ビニルエステル、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン(例えばビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン)等の重合性不飽和基含有ケトン(ケト基含有重合性不飽和化合物)などが挙げられる。なかでもジアセトン(メタ)アクリルアミドが好ましい。
これらの活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマーは、架橋助剤としての水溶性ヒドラジン化合物(D)と組み合わせて用いることにより、接着剤の皮膜形成時に、活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマーのカルボニル基と水溶性ヒドラジン化合物(D)のヒドラジノ基とが反応して、常温又は低温で架橋構造を形成する。このため、接着剤のウェットタックが改善し、基材に対する接着力を向上でき、優れた密着性、耐熱性を発揮し、特に冬場での製管スピードを上げることができる。
水溶性樹脂組成物(C)の重合に用いられる活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマーの使用量は、水溶性樹脂組成物(C)の重合に用いられる単量体成分の総量に対して、0.1〜10重量%であり、好ましくは0.5〜7重量%である。使用量が0.1重量%未満の場合には、上記ウェットタック改善の効果が小さくなる場合があり、10重量%を超える場合には、皮膜の耐水性が低下し、高温多湿下で接着不良を生じやすい。
本発明の水溶液樹脂組成物(C)は、上記の単量体成分の混合物を有機溶剤の存在下で重合し共重合体の有機溶剤溶液を得る工程と、得られた共重合体の酸性基をアルカリ中和し、有機溶媒溶液に水を添加した後、減圧下に有機溶剤を完全に除去することにより、水溶液又はコロイド分散剤を得る工程からなる。
水溶液樹脂組成物(C)の重合工程における重合方法としては、通常のアクリル樹脂又はビニル樹脂などの合成に採用されている有機溶剤溶液重合方法を用いることができる。水溶液樹脂組成物(C)の重合は、上記に規定した単量体成分を所定の使用量で、有機溶剤に溶解し、ラジカル重合開始剤の存在下で攪拌、加熱することによって実施できる。この際の反応温度は50〜180℃が好ましく、反応時間は1〜10時間程度が好ましい。
前記有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、メチルセロソルブアセテート、ブチルカービナトールアセテートなどのエステル系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、イソブタノールなどの低級アルコール系溶剤、n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系溶剤などが使用できる。
前記ラジカル重合開始剤は、通常アクリルの溶液重合で使用される既知の開始剤が使用できる。具体的には、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エトキシヘキサノエートなどの過酸化物系化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ系化合物などが挙げられる。
水溶液樹脂組成物(C)の中和および溶媒の変換工程において、得られた共重合体樹脂の有機溶剤溶液の水溶液への変換は、常法によって行われる。具体的には、該共重合体樹脂中に含まれる酸性基を塩基性化合物で中和し、次いで水を加えて樹脂を水中に分散、溶解させることによって行われる。従って、本法によれば重合時及び後処理工程において、乳化剤を用いる必要が全くない。
前記中和に用いられる塩基性化合物としては、特に限定されないが、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、地磯プロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン、2−アミノメチルプロパノール、モルホリン、メチルモルホリン、ピペラジン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムなどが例示される。
得られた共重合体の水溶液には、有機溶剤が含まれている。本発明では、通常の減圧蒸留法によって、有機溶剤を除去する。この減圧蒸留は、例えば、5〜30kPaの減圧度で、40〜80℃、1〜10時間で行うことができる。有機溶剤はほぼ完全に除去されることが好ましい。
上記のように得られた水溶液樹脂組成物(C)の重量平均分子量は、特に限定されないが、1000〜300000が好ましく、より好ましくは5000〜100000である。分子量の調節は、重合開始剤量によっても制御可能であるが、さらに分子量を低下させたい場合は、樹脂(A)の乳化重合時に用いたのとまったく同様の連鎖移動剤の使用が可能である。
上記のように得られた水溶性樹脂組成物(C)のガラス転移点(Tg)は、−20〜+20℃が好ましい。Tgを上記のように比較的低温に調節することにより、ウェットタックがより効果的に発現される。
本発明で用いられる水溶性ヒドラジン化合物(D)は、ヒドラジン誘導体で水溶性を有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、ポリヒドラジド化合物やポリセミカルバジド化合物などが含まれる。具体的な化合物としては、例えば、蓚酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等の2〜18個の炭素原子を有する飽和脂肪族カルボン酸ジヒドラジド;マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等のモノオレフィン性不飽和ジカルボン酸ジヒドラジド;フタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、ピロメリット酸のジヒドラジド、トリヒドラジド、テトラヒドラジド等の芳香族性カルボン酸ポリヒドラジド;ニトリロトリヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼントリヒドラジド、エチレンジアミンテトラ酢酸テトラヒドラジド、1,4,5,8−ナフトエ酸テトラヒドラジド、カルボン酸低級アルキルエステル基を有する低重合体をヒドラジン又はヒドラジン水和物(ヒドラジンヒドラード)と反応させて得られるポリヒドラジド;炭酸ジヒドラジド、ビスセミカルバジド;ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート等のジイソシアネート及びそれにより誘導されるポリイソシアネート化合物にヒドラジン化合物や上記例示のジヒドラジドを過剰に反応させて得られる水系多官能セミカルバジド及びこれらの混合物、その他アクリルアミドとアクリル酸ヒドラジドの共重合物などの高分子型多官能ヒドラジド等が挙げられる。
最後に、得られた(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)、カルボキシル基含有樹脂組成物(B)、水溶性樹脂組成物(C)および水溶性ヒドラジン化合物(D)を混合し、接着剤組成物を得る。混合手法は、特に限定されず、慣用の手法を用いて行うことができる。これら成分の混合前に、それぞれの組成物を水で希釈又は濃縮してもよく、混合後に、接着剤組成物を水で希釈又は濃縮してもよい。混合温度は、0〜100℃が好ましい。
(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)とカルボキシル基含有樹脂組成物(B)の混合比は、特に限定されないが、(A)/(B)(重量比)=10/90〜90/10が好ましく、より好ましくは20/80〜80/20である。前記混合比が10/90未満では、得られる接着剤組成物の粘度が高すぎて、製管スピードが上がらず、初期接着性も劣る傾向となり、90/10を超える場合には、接着剤の粘度が低すぎ、貯蔵安定性が劣り、無機充填材が経時で沈降する傾向が強くなるとともに、接着剤組成物の硬さ、耐湿熱性が低下しやすい。なお、(A)と(B)の混合比は、不揮発分換算では、(A)/(B)(重量比)=15/85〜95/5が好ましく、より好ましくは25/75〜85/15である。
水溶液樹脂組成物(C)の配合量は、(A)と(B)の総量に対して、1〜50重量%が好ましく、より好ましくは2〜40重量%である。水溶液樹脂組成物(C)の配合量が1重量%未満では、得られる接着剤組成物のウェットタックが不足する場合があり、50重量%を超える場合は、接着剤の耐水性が低くなる場合がある。
水溶性ヒドラジン化合物(D)の配合量は、水溶液樹脂組成物(C)中の不飽和単量体成分の総量に対して、0.1〜10重量%が好ましく、より好ましくは0.3〜7重量%である。水溶性ヒドラジン化合物(D)の配合量が、0.1重量%未満では接着剤の常温架橋が進まずウェットタックが不足したり、耐水性、耐熱性などの性能が不足したりする場合がある。配合量10重量%を超える場合には、ヒドラジン化合物の親水性のため、接着剤の耐水性が低下する場合がある。
前記樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の上記混合配合物でも、例えば紙管製造時の接着剤として上記のように十分な性能を発揮する。この上に更に高度な性能、すなわち初期接着力の発現が一層速く、ウェットタックに優れ、そのため特に冬場の製管スピードが速いことによる紙管の生産性が高く、低塗布量で経済性に優れるようにすればより完璧な接着剤となる。そのために上記樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)混合物の上に、更にカルボキシル基含有重合性不飽和単量体、活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマー、 (メタ)アクリル系モノマー、又は(メタ)アクリル系モノマーと該(メタ)アクリル系モノマーに対して共重合可能なモノマーからなる重合性不飽和単量体混合物を、有機溶剤中で溶液重合し、共重合体の有機溶剤溶液を得て、次いでこれを水溶液に変換した後、減圧下に有機溶剤を除去して得た水溶液樹脂組成物(C)と、これに該水溶液樹脂組成物(C)中の重合性不飽和単量体混合物の総量に対して0.1〜10重量%の水溶性ヒドラジン化合物(D)を混合することによりカルボニルとヒドラジンの常温又は低温架橋反応が起こり、特に接着剤のウェットタックが向上し、上記要求性能が確保される。
本発明の接着剤組成物とその製造方法の特に好ましい態様は以下の通りである。先ず、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単独で、または共重合モノマーとともに、保護コロイドとして分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下に、乳化(共)重合させて接着性を有する(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)を得る。一方、クレーやカオリンなどの無機充填材と完全ケン化ポリビニルアルコールの存在下で、アクリル酸をラジカル重合し、重合後80℃以上の高温で0.5時間以上熱処理して接着性を有するカルボキシル基含有樹脂組成物(B)を得る。次に、(A)の重合に用いたものと同一の(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーまたは(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと共重合モノマーの混合物、(B)の重合に用いたものと同一のカルボキシル基含有重合性不飽和モノマー、活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマーを、有機溶剤中で溶液重合し共重合体の有機溶剤溶液を得て、これを水溶液に変換した後、減圧下に有機溶剤を除去して水溶液樹脂組成物(C)とする。さらに、該(C)中のカルボニル基と化学量論的に等しい量の水溶性ヒドラジン化合物(D)を混合する。最後に、これら(A)〜(D)を所定の割合で混合する。混合温度は、例えば0〜100℃間の任意の温度でよい。
本発明の接着剤組成物は、目的を損なわない範囲で必要に応じて他の改質剤を添加しても良い。例えば、粘性改良剤として、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、カゼイン、澱粉、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、可塑剤、造膜助剤としてテキサノール、ジブチルフタレート、フェニルグリコールなどのグリコール誘導体、アジピン酸ジブチルなどのアジピン酸誘導体、脂肪酸誘導体、スルホン酸誘導体、フマル酸誘導体、パラフィン誘導体、ポリエステル誘導体、ポリビニルアルコールの耐水化剤としてのホウ酸などが挙げられ、さらに、その他の添加剤として、粘着付与剤、消泡剤、防腐剤、有機溶剤などが挙げられる。
本発明の接着剤組成物は、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールを保護コロイドとして乳化(共)重合することにより合成された(メタ)アクリル系(共重合体)エマルジョン、すなわち前記の(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)と、ポリビニルアルコール及び無機充填材の存在下でカルボキシル基含有重合性不飽和単量体を水溶液重合させて得られる前記のカルボキシル基含有樹脂組成物(B)と、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体、活性カルボニル基含有重合性不飽和単量体、(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸エステルと共重合モノマーを溶液重合し、溶媒を水溶液に変換して得られた前記の水溶液樹脂組成物(C)、及び、水溶性ヒドラジン化合物(D)を混合してなる混合液である。
以下に本発明の特徴を説明する。
本発明に用いられる(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)は、接着性を発現させる接着剤の基本成分である。本発明においては、(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)は保護コロイドがポリビニルアルコール系であるため、ポリビニルアルコールが主成分の一つであるカルボキシル基含有樹脂組成物(B)との混和性が良い。ポリビニルアルコールを含まない、単なる乳化剤のみによる乳化重合で合成された樹脂組成物の場合には、カルボキシル基含有樹脂組成物(B)との混和性が悪く、均一安定な組成物が得られない。また、(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)は不揮発分が高いにも拘わらず比較的粘度が低いため、これを含む組成物を接着剤として用いると、作業性が上がり製管スピードを速くできる。さらに、大部分が疎水性成分であるため乾燥速度が速く、不揮発成分も高いため、初期接着性も良く、生産効率を大幅に向上できる。
本発明に用いられるカルボキシル基含有樹脂組成物(B)は、硬さ、弾性率、耐熱性を付与する成分である。カルボキシル基含有樹脂組成物(B)は、前述のように、カルボキシル基含有不飽和単量体の重合体の有するカルボキシル基とポリビニルアルコールのヒドロキシル基の規則配向と熱処理による結晶化、及び、無機充填材のフィラー効果(フィラーと樹脂成分の結合による強度の向上)によって、優れた硬さ、弾性率と耐熱性、耐温水性、耐沸騰水性、耐湿熱性を示す。また、本発明のカルボキシル基含有樹脂組成物(B)の製造方法においては、重合時に系内に無機充填材を添加するため、樹脂成分が無機充填材によく吸着し、フィラー効果が高まるため沈降安定性に優れる。さらに、フィラー効果によって、接着剤の硬さ、弾性率、耐熱性が優れたものとなり、接着強度が向上する。無機充填材を重合後に添加、混合しただけの樹脂組成物では、フィラー効果が小さく、本発明の効果は得られない。
本発明に用いられる水溶液樹脂組成物(C)は、ウェットタック性、初期粘着性などの接着速度を付与する成分である。水溶液樹脂組成物(C)は、上記特殊な製造法により乳化剤を用いずに水溶液又はコロイド分散性微粒子にしてあるため、樹脂組成物(A)及び樹脂組成物(B)中のポリビニルアルコールとの親和性が良く、優れた混和性を示す。乳化剤により分散安定化させた場合は、ポリビニルアルコールとは、親水性、疎水性のバランスおよび溶解性パラメータ(SP値)が合わないため相溶性が低下する。しかも、混和性が良好で安定な構造である(会合体の形成による高分子量化などがない)ため、混和によって不揮発分は下がらずに粘度は寧ろ下がる傾向にあり、製管時の作業性が良い。また、水溶性ヒドラジン化合物(D)を加えることによって、(C)中のカルボニル基と(D)のヒドラジン基が常温又は低温で架橋構造を形成し、さらには、(A)、(B)中の官能基及び紙管の紙基材表面のカルボニル基等とも架橋構造(相互作用による疑似架橋も含む)を形成するため、ウェットタックが向上し、特に難しい冬場環境での製管スピードが向上する。さらには強固な接着性を発現する。
すなわち、本発明においては、基本成分である(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)に他の成分との混和性を向上させる改良を施し、カルボキシル基含有樹脂組成物(B)を添加することによって、硬さ、耐熱性などの基本物性を改良し、さらに、水溶性樹脂組成物(C)および水溶性ヒドラジン化合物(D)を添加することによって、ウェットタック性などの高接着速度を付与していることが特徴である。これによって、紙管用接着剤として極めて優れた性能が発揮される。本発明の接着剤組成物は、オープンタイムが長く、粘性が良好で作業性が良く、初期接着性が速く、ウェットタックが優れているため、紙管を高速に効率良く製造することができる。特に従来不可能であった冬場、超低温時での環境における低塗布量での高速製管が容易になり、経済性に優れる。またこのようにして製造された本発明の紙管は、硬さ、耐水性、耐温水性、耐煮沸水性、耐湿熱性に優れ、高温多湿時の座屈、偏平、折り曲げ等のあらゆる強度が高い。また、本発明の接着剤組成物は、可塑剤及び酢酸ビニルモノマーを一切使用する必要がないので、環境ホルモンの問題や残存モノマー、それが分解して生じるホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどの健康面の障害が生じない。
本発明の接着剤組成物の不揮発分は、用途等により適宜選択でき、特に限定されないが、塗布作業性や保存安定性、輸送コスト等の観点から、15〜50重量%が好ましく、より好ましくは25〜40重量%である。
本発明の接着剤組成物の粘度(B型粘度計、30rpm、5〜30℃)は、用途等により適宜選択でき、特に限定されないが、塗布作業性や保存安定性等の点から、50〜3000mPa・sが好ましく、より好ましくは、100〜1000mPa・sである。
本発明の接着剤組成物の、初期接着性は、30秒以下が好ましく、より好ましくは25秒以下である。なお、初期接着性とは、接着剤を用いて、被着体同士を貼付した直後の接着性をいい、初期接着性が1分以上である場合には、貼付した被着体同士がずれ易くなる場合や被着体が「浮いて」しまう場合(いわゆる「ウェット滑り」)があり、作業性、生産性が低下することがある。
本発明の接着剤組成物の、ウェットタック(5℃、24時間接着強度)は、100g以上が好ましく、より好ましくは150g以上である。なお、ウェットタックとは、接着剤組成物が完全に硬化するまでの接着力を示し、ウェットタックが50g未満である場合には、接着剤を用いて、被着体同士を貼付してから接着剤が完全に硬化するまでの間に、被着体が「浮いて」しまう場合(ウェット滑り)があり、作業性、生産性が低下することがある。
中でも、本発明の接着剤組成物が紙管用途である場合、不揮発分は30%以上、粘度は100〜700mPa・s、ウェットタックは150g以上、初期接着性は25秒以下、耐温水性(80℃)は8時間以上、耐煮沸水性(100℃)は3時間以上が好ましい。さらに、外観や沈降安定性が良好であることが好ましい。
本発明の接着剤組成物は、木工用接着剤、紙工用接着剤、紙管用接着剤、段ボール接着剤等として好適に使用できる。中でも、紙管用途に用いられる場合に良好なウェットタックにより、製管スピード、生産性を向上できるため特に好ましい。本発明の接着剤組成物からなる上記接着剤は、例えば、合板の貼り合わせ、段ボールの中芯原紙とライナーの貼り合わせ、紙パッケージの組み立てや紙管用原紙の接着に用いられる。
本発明の紙管は、上記の接着剤組成物を用いて得られる。紙管の製造方法は、従来公知に準じ、紙管用原紙を層状に且つ螺旋状に巻回して接着する方法による。すなわち、本発明の接着剤組成物を紙管用原紙に塗布し、これを金属製心棒に層状、かつ螺旋状に巻きつけることにより製造することができる。本発明の接着剤組成物が硬化した硬化膜は、弾性率、強度が高く、耐湿熱性に優れる。このため、本発明の紙管は、高い扁平圧縮強度、挫屈強度、折り曲げ強度を有し、また、高温、多湿環境でも高い耐久性を有する。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下において「部」及び「%」は特に断りのない限り、すべて重量基準である。粘度は、B型粘度計を用い、30rpmの条件で測定した値(mPa・s)である。
調製例1
[樹脂組成物(A1)の調製]
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水250g、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名「M−205」)の20%水溶液5gを仕込み、70℃に昇温した。一方、イオン交換水200g、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名「M−205」)の20%水溶液120g、ノニオン性乳化剤(第一工業製薬(株)製、商品名「DKS NL−180」)の10%水溶液100g、メタクリル酸メチル(MMA)230g、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)190g、メタクリル酸グリシジル(GMA)6g、及びアクリル酸(AA)5gを予め乳化させてモノマー乳化液を調整し、そのうち5%を反応容器に仕込み、残りを滴下ロートに入れた。他方、重合開始剤として過硫酸アンモニウム(APS)0.5gをイオン交換水10gに溶解し、これを反応容器に仕込んで重合を開始した。80℃で10分反応を行った後、上記滴下ロート中のモノマー乳化液を80℃で3時間滴下した。モノマー乳化液滴下20分後から、APS1gをイオン交換水30gに溶解した開始剤水溶液を3時間にわたって滴下した。モノマー乳化液滴下終了後、80℃で1時間熟成反応を行い、冷却した。
得られた樹脂分散液[樹脂組成物(A1)]の不揮発分は40.5%で、粘度は140mPa・sであった。
調製例2
[樹脂組成物(A2)の調製]
調製例1において、MMA230g、2EHA190gの代わりに、MMA180g、メタクリル酸n−ブチル(n−BMA)30g、アクリル酸ブチル(BA)210gを用いた点以外は、調製例1と同様の操作を行い、樹脂分散液[樹脂組成物(A2)]を得た。
調製例3
[樹脂組成物(A3)の調製]
調製例1において、モノマー乳化液中のイオン交換水200g、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名「M−205」)の20%水溶液120g、ノニオン性乳化剤の10%水溶液100gの代わりに、M−205の20%水溶液150g、イオン交換水250gを用いた点以外は、調製例1と同様の操作を行い、樹脂分散液[樹脂組成物(A3)]を得た。
調製例4
[樹脂組成物(A’)の調製]
調製例1において、初期仕込み用のM−205の20%水溶液5gの代わりに、反応性乳化剤(第一工業製薬(株)、商品名「KH−10」)の30%水溶液2gを用い、モノマー乳化液中のイオン交換水200g、M−205の20%水溶液120gの代わりに、イオン交換水270g、反応性乳化剤(第一工業製薬(株)、商品名「KH−10」)の30%水溶液20gを用いた点以外は、調製例1と同様の操作を行い、樹脂分散液[樹脂組成物(A’)]を得た。
調製例5
[樹脂組成物(B1)の調製]
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた反応容器に、イオン交換水800gを仕込み、85℃に昇温し、攪拌しながらポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名「PVA−105」、重合度500、ケン化度98モル%以上)50gと、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名「PVA117」、重合度1700、ケン化度98モル%以上)50gを徐々に添加し、85℃で1時間かけてポリビニルアルコールを溶解した。次にクレー220gとアクリル酸30gを添加し、80℃に調整し、過硫酸アンモニウムの10%水溶液を5g添加した。80℃で1時間アクリル酸の重合反応を行った。その後90℃に昇温し、3時間攪拌を続けた後、冷却し、樹脂組成物(B1)を得た。この樹脂組成物の不揮発分は30.3%で、粘度は1050mPa・sであった。
調製例6
[樹脂組成物(B2)の調製]
調製例5において、クレーの代わりにカオリンを同量用いた点以外は、調製例5と同様の操作を行い、樹脂組成物(B2)を得た。
調製例7
[樹脂組成物(B3)の調製]
調製例5において、PVA−105(50g)とPVA−117(50g)の代わりに、PVA−105のみ100g用いた点以外は、調製例5と同様の操作を行い、樹脂組成物(B3)を得た。
調製例8
[樹脂組成物(B’)の調製]
調製例5において、AAを全く使用しなかった点以外は、調製例5と同様の操作を行い、樹脂組成物(B’)を得た。
調製例9
[水溶性樹脂(C1)の調製及びヒドラジン化合物(D1)の添加]
攪拌機、温度計、滴下ロート、還流冷却器および窒素導入管などを備えた通常のアクリル系樹脂製造用の反応容器に、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2メチルブチロニトリル)(AMBN)1部とイソプロピルアルコール(IPA)200部を仕込み、攪拌しながら80℃に昇温した。その後、攪拌しながら下記モノマー混合液を5時間にわたって滴下した。滴下終了後、AMBN0.6部をIPA30部に溶解したものを反応容器に添加して、さらに80℃で2時間反応を継続した。
MMA 85部
BA 135部
AA 18部
ジアセトンアクリルアミド(DAAAm) 12部
重合終了後、攪拌を続けながら、25%アンモニア水10部を反応容器中に加え、水620部を約2時間にわたって反応容器中に滴下し、水溶液化した。水溶液化後、ロータリーエバポレーターを用いてIPAを蒸発させ、水溶液樹脂(C1)を得、これに10重量%アジピン酸ジヒドラジド水溶液(D1)60部を混合した。この水溶液樹脂の不揮発分は35.1%で、粘度は380mPa・sであった。
実施例1
調製例1で得られた樹脂組成物(A1)60部、調整例5で得られた樹脂組成物(B1)30部と調製例9で得られた水溶液樹脂10部を混合して、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物の不揮発分は36.9%、粘度は400mPa・sであった。
実施例2
調製例1で得られた樹脂組成物(A1)40部、調製例5で得られた樹脂組成物(B1)50部と調製例9で得られた水溶液樹脂10部を混合して、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物の不揮発分は34.9%、粘度は580mPa・sであった。
実施例3
調製例2で得られた樹脂組成物(A2)60部、調製例5で得られた樹脂組成物(B1)30部と調製例9で得られた水溶液樹脂10部を混合して、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物の不揮発分は36.8%、粘度は400mPa・sであった。
実施例4
調製例1で得られた樹脂組成物(A1)60部、調製例6で得られた樹脂組成物(B2)30部と調製例9で得られた水溶液樹脂10部を混合して、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物の不揮発分は36.9%、粘度は390mPa・sであった。
実施例5
調製例1で得られた樹脂組成物(A1)60部、調製例7で得られた樹脂組成物(B3)30部と調製例9で得られた水溶液樹脂10部を混合して、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物の不揮発分は36.9%、粘度は300mPa・sであった。
実施例6
調製例3で得られた樹脂組成物(A3)60部、調製例5で得られた樹脂組成物(B1)30部と調製例9で得られた水溶液樹脂10部を混合して、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物の不揮発分は37.1%、粘度は480mPa・sであった。
実施例7
調製例1で得られた樹脂組成物(A1)50部、調製例5で得られた樹脂組成物(B1)30部と調製例9で得られた水溶液樹脂20部を混合して、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物の不揮発分は36.4%、粘度は420mPa・sであった。
比較例1
攪拌機、滴下ロート、還流冷却器及び温度計を備えた反応容器に、クレー130g、ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、「PVA210」:重合度1000、ケン化度88モル%)60g、及び水570gを仕込み、攪拌下、内温70℃に昇温した。これに、MMA110g、2EHA90gの混合液を1.5時間で滴下した。一方、同時に5%過硫酸アンモニウム水溶液12gを1.5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、2時間、80℃に保った。その後、30℃まで冷却し、水で希釈したところ、接着剤組成物は得られず、ゲル化していた。
比較例2
比較例1において、MMAをスチレンに変更した以外は、比較例1と同様の操作を行った。比較例1と同様、接着剤組成物は得られず、ゲル化していた。
比較例3
比較例1において、ポリビニルアルコール60gの代わりに、分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコール(M−205)60gに変更した以外は、比較例1と同様の操作を行い、紙管用の接着剤組成物を得た。接着剤組成物の不揮発分は40.1%、粘度560mPa・sであった。
比較例4
実施例1において、調製例1で得られた樹脂組成物(A1)60部の代わりに、調製例4で得られた樹脂組成物(A’)60部を用いた点以外は、実施例1と同様の操作を行い、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物は安定性が悪く、分離、ゲル化した。
比較例5
調製例1で得られた樹脂組成物(A1)単独を紙管用接着剤として用いた。
比較例6
実施例1において、調製例5で得られた樹脂組成物(B1)30部の代わりに、調製例8で得られた樹脂組成物(B’)30部を用いた点以外は、実施例1と同様の操作を行い、紙管用の接着剤組成物を得た。この接着剤組成物の不揮発分は36.3%、粘度は240mPa・sであった。
[性能評価試験]
実施例及び比較例で得られた接着剤組成物につき、下記の要領で外観、沈降安定性、初期接着性、ウェットタック、耐温水性、耐沸騰水性試験を行った。表1に評価結果を示す。
(1)外観
接着剤組成物中に塊、異物が混入していないかどうかを、グラインドツブゲージ NO.2323(ERICHSEN社製)を用いて測定し、異物等の大きさが10μm未満の場合は外観良好(○)、相分離や異物の大きさが10μm以上の場合には外観不良(×)と判断した。
なお、樹脂異物は一般的に透明であり、不透明のフィラーは異物とは見なさない。
(2)沈降安定性
接着剤組成物を沈降管に入れ、温度20℃の条件下、1ヶ月間放置後の沈降量を測定した。沈降物を目視にて観察し、沈降物が見られないものを安定性良好(○)、沈降物が見られるものを安定性不良(×)と判断した。
(3)初期接着性
温度20℃、湿度60%RHの雰囲気下で、接着剤組成物をKライナー紙(王子製紙(株)製、秤量220g/m2)、縦10cm×横3cmに、バーコーター(NO.30)で塗布した(塗布厚み20μmドライ)。塗布直後に、接着剤塗布面に前記のKライナー紙を貼り合わせた後ゴムロール1回で接着させた。20℃60%RHの雰囲気条件下、経時ごとに接着面を剥がし、100%紙破れするまでの時間を測定した。なお、「紙破」とは、紙質部での破壊をいう。
(4)ウェットタック
ポリエチレンテレフタレート(縦10cm×横3cm)に、実施例、比較例で作製した接着剤試料を塗布し、同じ大きさのKライナー紙(上記(3)と同じものを使用した)を重ねて接着し試験片とした。試験片は5℃に調整した低温室に入れ、24時間放置したものを用いた。
接着試験機(JT(株)製、「ASM01型」)を用いて、塗布量20μmドライ、オープンタイム1秒の条件で剪断剥離試験を行い、接着強度(g)を測定した。
(5)耐温水性(JIS K 6833に準拠)
試験片(サイズ)として、B級原紙を用いた。バーコーター(NO.14)で接着剤組成物を接着面積25mm×25mmで塗布し、原紙同士を接着させ、貼合後、1kg重の荷重下、室温で1日放置した。試験片におもり(質量50g)をつけて、80℃の温水に漬け、おもりが落下するまでの時間を測定した。
(6)耐沸騰水性
(5)と同様にして試験片を作成した。100℃の沸騰水に漬け、(5)と同様にして、重りが落下するまでの時間を測定した。
Figure 2007112939
以上の結果から、本発明の接着剤組成物は、紙管用接着剤として必要な外観、沈降安定性、初期接着性に優れると共に、ウェットタック、耐温水性、耐煮沸水性にも優れ、特に冬場での製管スピードが速く、生産性に優れ、これらが低塗布量で達成されるため経済性にも優れる。また、無機充填材が配合されていると同時に、樹脂は低温、常温架橋システムになっており、強固な結合をするため、耐湿熱性や弾性率に富み、高硬度、高耐圧性で、紙管の偏平耐圧、座屈、折り曲げなどの諸強度に優れる。
また、接着剤は高不揮発分で低粘度であるため、より一層製管速度が上がり、優れた生産効率を有する。

Claims (8)

  1. (メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸エステルと該(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合可能なモノマーとを、保護コロイドとして分子末端にメルカプト基を有するポリビニルアルコールの存在下で乳化(共)重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物(A)、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体をポリビニルアルコール及び無機充填材の存在下で水溶液重合させて得られる樹脂組成物(B)、0.1〜20重量%の前記カルボキシル基含有重合性不飽和単量体、0.1〜10重量%の活性カルボニル基含有重合性不飽和モノマー、70〜99.8重量%の(メタ)アクリル酸エステル、又は(メタ)アクリル酸エステルと該(メタ)アクリル酸エステルに対して共重合可能なモノマーからなる重合性不飽和単量体混合物を、有機溶剤中で溶液重合し、共重合体の有機溶剤溶液を得て、次いでこれを水溶液に変換した後、減圧下に有機溶剤を除去して得た水溶液樹脂組成物(C)、及び、該水溶液樹脂組成物(C)中の重合性不飽和単量体混合物の総量に対して0.1〜10重量%の水溶性ヒドラジン化合物(D)を混合することを特徴とする接着剤組成物の製造方法。
  2. 樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の配合比が、(A)/(B)(重量比)=10/90〜90/10であり、水溶液樹脂組成物(C)の配合量が樹脂組成物(A)と樹脂組成物(B)の総量に対して1〜50重量%である請求項1記載の接着剤組成物の製造方法。
  3. 樹脂組成物(B)の水溶液重合において、ポリビニルアルコール100重量部に対して、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体を5〜200重量部用いる請求項1又は2記載の接着剤組成物の製造方法。
  4. 樹脂組成物(B)の水溶液重合において、ポリビニルアルコール100重量部に対して、無機充填材を10〜500重量部用いる請求項1又は2記載の接着剤組成物の製造方法。
  5. 樹脂組成物(B)の水溶液重合において、ポリビニルアルコールとして、重合度300〜2500で且つケン化度80〜100モル%の一般ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール系共重合体及びアセトアセトキシ化ポリビニルアルコールから選択された少なくとも1種のポリビニルアルコールを用いる請求項1又は2記載の接着剤組成物の製造方法。
  6. 樹脂組成物(B)の水溶液重合において、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体としてアクリル酸を用いる請求項1又は2記載の接着剤組成物の製造方法。
  7. 請求項1〜6の何れかの項に記載の製造方法により得られる接着剤組成物。
  8. 請求項7記載の接着剤組成物を用いて紙管用原紙を層状且つ螺旋状に巻回して接着することにより得られる紙管。
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