本発明の工程を説明する前に本発明で使用する各成分の説明をする。酸基含有ポリエステル樹脂は、結着剤樹脂として用いられる。この酸基としては、各種のものがあるが、中でもカルボキシル基が好ましい。
本発明で用いられる酸性基含有ポリエステル樹脂としては、通常の重縮合反応によって製造できる。即ち、溶剤の存在下もしくは非存在下において原料の多塩基酸と多価アルコールとを触媒の存在下に脱水重縮合を行って製造することが出来る。多塩基酸はそのアルキルエステル化物を使用して脱メタノール重縮合を行ってもよい。
使用する多塩基酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマール酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。これらの多塩基酸を1種又は2種以上用いることができる。
多塩基酸に代えて、多塩基酸誘導体、例えば多塩基酸無水物又は上記した多塩基酸アルキルエステル等を使用することが出来る。多塩基酸アルキルエステルとしては、多塩基酸メチルエステルが好ましい。勿論、これら多塩基酸のみを用いても良いし、多塩基酸を主体として、その一部が同誘導体である混合物を用いることも出来る。
使用する多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリンなどの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族系ジオール類が挙げられる。これらの多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。
当該ポリエステル樹脂としては、酸成分及びアルコール成分いずれも、芳香族環を有するものを必須として得たものが好ましい。
本発明のトナーがフルカラー複写機、フルカラープリンタに用いられるトナーである場合には、当該ポリエステル樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜75℃であるのが好ましく、より好ましくは55〜70℃である。ガラス転移点が上記範囲であると、トナーとしての耐熱凝集性の不良も少なく、良好な定着性も兼備したものとなる。
本発明のトナーがフルカラー複写機、フルカラープリンタに用いられる様な有彩色のトナーである場合には、樹脂の100℃における溶融粘度は、104〜106ポイズであるのが好ましく、より好ましくは104〜5×105ポイズである。この範囲であると、定着ヒートロールのシリコンオイル供給量にも依るが、紙の巻き付きやオフセット現象が起こり難くなる。しかも、紙上に転写したシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック各色トナーの定着時における溶融混合もより良好か完全となり、定着時の画像平滑性も、発色も良好となる。
ポリエステルの酸基の含有量は、例えば、上記の多塩基酸と多価アルコールの配合比と反応率により、ポリエステルの末端のカルボキシル基を制御することによって調整することができる。あるいは多塩基酸成分として、例えば無水トリメリット酸や、多価アルコールとして例えばジメチロールプロピオン酸等を使用することによってポリエステルの主鎖中にカルボキシル基を有するものが得られる。
例えば重縮合反応は酸価と軟化点が所定の値となったところで終了することで、本発明で使用できる酸基含有ポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明で使用するポリエステル樹脂の合計酸基の酸価は1〜30mg・KOH/gであることが必要であり、より好ましくは2〜20mg・KOH/gである。上記範囲であれば、中和率の簡便な調整で、転相乳化後の微粒子に粗大粒子が混入することなく、適切な粒子径の粒子のみシャープに得られるので好ましい。これはおそらく、顔料とポリエステル樹脂の酸性基が相互作用するためではないかと考えられる。
本発明に使用するポリエステル樹脂の重量平均分子量は2,000〜100,000であることが好ましい。この範囲の中、フルカラー用トナーとしては5,000〜20,000であることが好ましい。この範囲であると、トナーバインダーとして強靭でありOHPシートへの定着性も良好となる。しかも、ポリエステル樹脂のシャープメルト性に優れ、色相も良好となるため、フルカラー用として好ましい。
本発明においては、結着剤樹脂として全て(100重量%)上記のようなポリエステル樹脂を使用するのが好ましいが、必要に応じて40重量%未満であれば他の樹脂を添加しても良い。この様なものとしては、例えば、スチレンアクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、スチレンブタジエン樹脂、石油樹脂などを挙げることが出来る。その場合でも結着剤樹脂全体としての酸基の含有量は、酸価として1〜30mg・KOH/gとするのが好ましく、結着剤樹脂全体としての重量平均分子量は2,000〜100,000として用いるのが好ましい。
本発明で使用される着色剤としては、従来、電子写真の分野で使用されてきた無彩色又は有彩色の着色剤をいずれも用いることができ、以下のものが例示できる。なお、着色剤としては、通常は顔料のみ又は顔料を主体としたものが使用出来る。
黒色顔料としては、例えば、各種カーボンブラック、酸価銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、フェライト、マグネタイトなどが使用できる。
黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、チタン黄、ナフトールイエローS、ハンザイエロー10G、ハンザイエロー5G、ハンザイエローG、ハンザイエローGR、ハンザイエローA、ハンザイエローRN、ハンザイエローR、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、パーマネントイエローNCG、バルカンファーストイエロー5G、バルカンファーストイエローR、キノリンイエローレーキ、アンスラゲンイエロー6GL、パーマネントイエローFGL、パーマネントイエローH10G、パーマネントイエローHR、アンスラピリミジンイエロー、その他イソインドリノンイエロー、クロモフタルイエロー、ノボパームイエローH2G、縮合アゾイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー等が挙げられる。
赤色顔料としては、例えば、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK、ベンジジンオレンジG、パーマネントレッド4R、パーマネントレッドBL、パーマネントレッドF5RK、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチンングレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、ブリリアントカーミン3B、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、パーマネントカーミンFBB、ベリノンオレンジ、イソインドリノンオレンジ、アンスアンスロンオレンジ、ピランスロンオレンジ、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンスカーレット、ペリレンレッド等が挙げられる。
青色顔料としては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ファナトーンブルー6G、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーRS、インダスレンブルーBC、インジコ等が挙げられる。
なお、これらの着色剤の添加量は、トナー中における結着剤樹脂100重量部に対し、1〜20重量部、好ましくは、2〜10重量部となるようにする。
その他の添加剤としては、公知慣用の種々のものが挙げられる。この様なものとしては、例えば、オフセット防止剤として各種のワックス類、また、正帯電性、又は負帯電性の帯電制御剤を用いることもできる。
本発明において使用される、疎水性の有機溶剤の特性としては、まず、使用する酸基含有ポリエステル樹脂を溶解、又は分散しうるものでなければならない。次に、水溶解性の有機溶剤は好ましくなく、水に対する溶解度(20℃)が30重量%(wt%)以下のものを使用するのが好ましい。水溶解性の有機溶剤を使用すると、転相後、水性媒体中に残存する樹脂成分が増加するため好ましくない。使用する有機溶剤は、上記条件を満たしていれば混合系でもよいが、溶剤回収、溶剤再使用等の生産性の面から、水への溶解度が30重量%以下の疎水性有機溶剤のみの単独溶剤の使用が好ましい。
ポリエステル樹脂が溶解又は分散可能か否かは、樹脂の構成モノマー種、比率、分子量、架橋程度等により、一概にはいえないが、例えば、以下の有機溶剤が使用できる。この溶解又は分散可能か否かは、用いるポリエステル樹脂を用いる有機溶媒と混合撹拌してみることにより容易に確認できる。
有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類等が挙げられる。なかでも、水性媒体中から該有機溶剤を容易に除去できるものが好ましく、さらに、粒子内部に残存しにくいものが好ましい。本発明では、上記理由から、メチルエチルケトンが好適に使用される。
本発明で使用する中和剤は、ポリエステル樹脂に含まれる酸基、好ましくはカルボキシル基を中和して、塩構造とし、樹脂の親水性を増加し、転相乳化性を発現させるとともに、水性媒体中での粒子の分散を安定化させるために必須のものであり、各種塩基性化合物が使用できる。
本発明における塩基性化合物のうち、無機の塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ、それらの炭酸塩、それらの酢酸塩など、およびアンモニアなどが挙げられる。有機の塩基性化合物としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン類、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類などを使用することができる。塩基性化合物はそのまま用いてもよいが、通常は水溶液の形態として用いる。
これらの中でも、後に述べる逆中和の工程と乾燥の工程で大部分が除去され、弊害が少ない点で、アンモニア水を用いるのが特に好ましい。他の無機塩基性化合物はトナーの内部にイオンとして残留すると帯電特性に悪影響を与える心配がある。また有機アミン類も内部に残留すると、複写機やプリンターの使用条件によっては衛生上好ましいものではない。
本発明では、酸基含有ポリエステル樹脂を含む微粒子の会合を促進するために、水溶性金属化合物が好適に使用できる。
本発明で用いられる水溶性金属化合物としては、公知慣用のものが挙げられるが、ポリエステル樹脂中の酸性基と相互作用可能な2価以上の金属の塩化物がより好適に使用される。水溶性金属化合物としては、好ましくは金属の塩化物、例えば塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化第一銅、塩化第二銅、塩化第一鉄、塩化第二鉄等が挙げられる。
本発明の製法は、着色剤を含んだ樹脂溶液の有機相が、高せん断力により混合、撹拌され、水性媒体中に転相乳化され、微粒子を形成する。さらに、該微粒子を会合させ、トナーサイズの着色剤内包球形粒子を製造する。そのため、樹脂の凝集力、さらに詳しく言えば、着色剤が分散された樹脂の凝集力が低いと、会合速度よりも粉砕速度が速くなり、見かけ上、粒子が成長しないという現象が生じる。このとき、上記水溶性金属化合物を添加することにより、樹脂の凝集力が向上し、会合速度が粉砕速度よりも速くなり、会合による粒子成長によりトナーサイズの粒子を得ることが可能になる。特に、ジスアゾ系黄色顔料又はキナクリドン系赤色顔料を用いた時に、この処方は有用である。
使用する水溶性金属化合物の量は、適宜調整すればよいが、通常、ポリエステル樹脂の酸基の5〜80mol%となる量、好ましくは、同10〜60mol%となる量である。この範囲では、樹脂の凝集力が高くなりすぎることなく、粗大粒子も発生し難く、好ましい。
次に、本発明の製造工程について、詳細に説明する。本発明の製法は、まず酸基含有ポリエステル樹脂と着色剤と該ポリエステル樹脂を溶解又は分散しうる疎水性有機溶剤を必須成分とする混合物と、水性媒体を、中和剤の存在下、高速回転するローターとそれにかみ合うステーター部分からなる分散機を用いて高せん断作用により、混合・攪拌、乳化させて着色剤内包微粒子(a)を形成する第一工程、引き続き、該微粒子(a)を会合させることにより、所望のトナーサイズの着色剤内包球形粒子(b)を形成する第二工程、次いで、液媒体中に分散している該粒子(b)を乾燥粉体として取り出す第三工程からなる。
まず、第一工程から説明する。第一工程では、例えば酸性基含有ポリエステル樹脂と、着色剤を前記した様な有機溶媒に公知慣用の方法により分散し、着色剤が分散された樹脂溶液(以下、ミルベースと呼ぶことがある)を調整する。この場合、ニーダーあるいは二本ロールにより溶融混練し、その後、該ポリエステル樹脂を疎水性有機溶剤に溶解、又は分散することが出来る。または、該ポリエステル樹脂を疎水性有機溶剤中に溶解、又は分散した樹脂溶液と着色剤を、ボールミル、サンドミル、アジテーターミル等により湿式で分散してもよい。さらに、着色剤分散は使用する樹脂の一部のみを使ったいわゆるマスターバッチ方式を採用しても良い。
着色剤の含有量は、着色剤と結着剤樹脂との合計を100重量%とした時、2〜10重量%となる様にするのが好ましい。着色剤としては、必要に応じて2種以上の顔料を併用しても良い。さらに、帯電制御剤、滑剤、オフセット防止剤など、公知のトナー用の添加剤を必要に応じて添加しても良い。
本発明で水性媒体とは、水のみ又は水を主成分として含む液媒体をいう。水としては、例えば水道水、脱イオン水、精製水、純水、超純水等が使用できるが、好ましくは脱イオン水が使用される。
本発明に於ける微粒子(a)の形成では、公知慣用の乳化分散機、特に、粒子径を0.5〜6μm程度の範囲にコントロールできる乳化分散機が使用できる。例えば、一般的に高速せん断タービン型分散機といわれるもので、ホモミクサー(特殊機化工業社製)、デイスパー(特殊機化工業社製)、ウルトラ・タラックス(ドイツ)、ケデイミル(アメリカ)、シャーフロー(アメリカ)、シルバーソンミキサー(イギリス)、ハレルホモジナイザー(ドイツ)などが挙げられる。
また、スラッシャー(三井鉱山株式会社)やキャビトロン(株式会社ユーロテック)のような高速回転するローターとそれに噛み合うステータによる連続乳化分散機、マイクロフルイダイザー(みづほ工業株式会社)、マイクロホモジナイザー(みづほ工業株式会社)、マントン・ゴーリンホモジナイザー(ゴーリン社)やナノマイザー(ナノマイザー株式会社)のような特殊形状のチャンバーとポンプの供給エネルギーとの相互作用による乳化分散機、スタテイックミキサー(ノリタケカンパニー)のような駆動部のない静止型管内連続混合器が挙げられる。
しかし、中でも高速回転するローターとそれにかみ合うステーター部からなり、キャビテーションによる高速流により発生するせん断力と、回転部分で発生するせん断力、及び高速流が衝突する事で発生するせん断力により混合、撹拌する方式の、ホモミクサー(特殊機化工業社製)、あるいはスラッシャー(三井鉱山株式会社)やキャビトロン(株式会社ユーロテック)が好適である。
つまり、高せん断力としては、回転、圧力降下、衝突などから選ばれる1種以上の原理の組み合わせにより発生した、高い複合せん断力を利用するのが好ましい。
この時の連続式乳化機としては、円盤の円周上に多数のスリットを有する突条の複数が同心円の異なる半径の位置に設けられたローターと、同様のステーターとが一対となったローターステーターを有し、ローターの突条とステーターのそれとが交互になる様に、微小間隙をもって嵌合され、ローター及び/又はステーターが前記同心円の軸中心に回転できる様になっており、前記回転軸と同軸に、前記一対のローターステーターが複数設けられた構造であり、ローターとステーターを軸中心に反対方向に高速回転させるか或いはローターとステーターのいずれか一方を固定しもう一方を軸中心に高速回転させながら、複数のローターステーターの、それぞれの、交互となったローターの突条とステーターのそれとの微小間隙及び各突条に設けられたスリットに液体を連続して通過させる様にして混合を行う連続式乳化分散機が特に好適に使用できる。
また、本発明の製法では、上記高せん断力でミルベースを混合、撹拌している中に、中和剤の存在下、水性媒体を添加すると同時に転相乳化させるのが好ましい。このとき、ミルベースとしては、固形分含有率30〜80重量%、中でも固形分含有率30〜60重量%としたものを用いるのが好ましい。この範囲なら、高い生産効率を保ったまま、転相乳化後の微粒子の粒度分布を狭くでき(粗大粒子が混在することが少ない)、会合後の粒度分布も狭くなるため好ましい。
回転により高せん断力を発生させる連続乳化機を用いる場合、ローター部の周速は顔料の種類、樹脂種により適宜最適な条件が決められるが、周速が8〜30m/s、より好ましくは8〜25m/sの範囲であれば、初期分散径を適切なものとすることが出来、水の巻き込みも少なくなるので、その結果、得られる粒子に空隙が少なく、色相、粒子強度等の点で、いずれにも優れたものとなる。また、会合後も微粒子が少なく出来るため好ましい。
添加する水性媒体の量は、ミルベースの有機溶剤量に対し、100〜300重量%となる量が好ましい。
本発明の製法では、均一に着色剤が分散された粒子を得るには、水性媒体の添加方法が、意外と重要である。この添加は、所定量の水性媒体をあらかじめ仕込んでいても、あるいは一部を仕込んだ後、残量を加えて転相してもよいが、より好ましくは、所定量の水性媒体全量をより短時間に添加し、速やかに転相させることが好ましい。このようにすることで、最少量の水性媒体量で転相が可能になる。さらに、このような方法を取ることによって、転相乳化現象を確実に行わせることが出来るうえ、第二工程での会合も容易に進行させることが出来るという利点がある。転相条件によっては、所定量の水性媒体全量を加えても、転相までに時間がかかる場合もあるが、この場合には粗大粒子が発生しやすくなるため、水性媒体の添加後速やかに転相が開始するように、転相条件を変更することが好ましい。
水性媒体を滴下する場合には、水性媒体が有機溶剤あるいは中和された樹脂に溶解あるいは吸着され、細分化されるため転相水量が大幅に増加する。そのため、水性媒体の添加速度は、有機溶剤あるいは中和された樹脂に溶解あるいは吸着され、細分化される速度よりも速くする必要がある。
また、ミルベースと水性媒体をあらかじめフ゜レミキシンク゛した後、高せん断力により転相乳化すること
も可能だが、ミルベースと水性媒体をフ゜レミキシンク゛した段
階で、顔料が凝集する場合があり、その場合には、均一な粒子が容易に形成でき難くなるため、好ましくない。
また、水性媒体の添加における、この転相温度は、5〜50℃、より好ましくは10〜50℃とする。転相温度が5℃よりも低いと粗大粒子が残存しやすくなり好ましくない。また50℃よりも高くなると微粒子が発生しやすくなり、やはり好ましくない。
中和剤は、酸基含有ポリエステル樹脂を中和するために用いられる。この中和剤は、所定量をミルベース中に添加しても、あるいは水性媒体に添加していてもよいが、通常前者が採用される。また、中和量は、当該樹脂の酸基、好ましくはカルボキシル基の20〜90mol%となる範囲内である。この範囲であると、転相が容易に起こり易く、しかも微粒子も発生し難いので、好ましい。
第一工程で得られる微粒子(a)の粒度分布は、均一、かつシャープであることが望ましい。また、ここで得られる微粒子の粒子径は、2〜8μm、好ましくは3〜6μmとなる様にするが好ましい。この様な範囲とすれば、会合後も微粒子が残存し難くなるため好ましい。しかも、粗大粒子が混在することも少なくなる傾向となるため好ましい。
つぎに、本発明の製法の第二工程について説明する。この第二工程は、第一工程で得られた微粒子をそれよりも大きな粒子径となる様に会合させる工程である。これは平均粒子径同志との比較で、会合前に比べて会合後が、相対的に見て、より大きな粒子径となる様にする。
第二工程では、第一工程から引き続き、第一工程と同様高せん断力下で会合を行うのが好適であり、複合高せん断力下で会合を行うのが最も好ましい。会合は、第一工程よりも低せん断力、あるいは、例えば、フアウドラー翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼などの低せん断力の攪拌装置に変えて混合・攪拌する事によっても可能であるが、この場合、粗大粒子の発生が生じる傾向にあるため、好ましくない。また、第一工程よりも高せん断力で行ってもよいが、場合によっては、会合よりも粉砕の速度が速くなり、微粒子が発生する傾向にあるため好ましくない。第二工程における会合は、第一工程と同様の撹拌、混合条件で行うのが好ましい。
本発明の製法の好適な方法では、複合せん断力下で粉砕と会合の競合下に、粒子成長を行うのが特徴であり、そのため、特に、粗大粒子の混在が少なく、かつ特に、粒度分布に優れたトナーサイズの着色剤内包球形粒子が得られる。また、該複合せん断力をかけることにより、粒子内への水の巻き込みがなく、空隙のない、均一な球形粒子が得られる。
以下、本発明の製法を、乳化分散会合法と略記する。
乳化分散会合法における粒径制御は、例えば、撹拌時間等により行われ、撹拌時間を制御することで、第一工程で得られた平均粒子径よりも大きい粒子径、通常、平均粒子径が3〜13μmのものが容易に得られる。
尚、本発明において平均粒子径は、例えばトナーの製造において通常使われる「コールターマルチサイザー」(株式会社日科機)で測定した50%体積平均粒子径が採用できる。本発明でトナーを製造するに当たっては、特に有彩色顔料を用いたフルカラー複写機用乾式粉体トナーとしては、3〜8μmのいわゆる小粒径トナーとすることが好ましい。この平均粒子径範囲であると、トナーの流動性が良好で、かつ画像の解像力も高いので好ましい。
また、本発明の製造方法によれば、トナー粒子は、実質球形であり、ワーデルの実用球形度で0.95〜1.00の好ましいものが容易に得られる。
ここでワーデルの実用球形度とは、粒子の投影面積に等しい面積を持つ円の直径と粒子の投影像に外接する最小円の直径との比で表せる値をいう。具体的にはスライドグラス上にトナーを適当量とり、個々のトナー粒子が相互に接触したり、重なったりしないように分散させる。これらトナー粒子をルーゼックス450(日本レギュレーター製)により、CRT画面上に顕微鏡の倍率500倍で写し出す。ここでルーゼックス450は個々の粒子が分離して存在すれば、任意のものを自由に選び、その投影面積を測定することができるのでこれから等しい面積をもつ円の直径が計算できる。一方、このCRT画面をそのまま写真撮影し粒子の投影像に外接する最小円の直径を作図より求める。ここでは上記の比の値をランダムに選んだトナー粒子100個について計算しその平均値を求めて「ワーデルの実用球形度」とすることが出来る。このワーデルの実用球形度で0.95以上であると、トナーの流動性が特に好ましい。
乳化分散会合法では、疎水性溶剤を用いて、高せん断力により、強制的に水性媒体中に転相乳化することで微粒子を生成させる。そのため、水性媒体中に残存する水可溶成分は非常に少ない。先に述べた水溶性溶媒を用い、コアセルベーションを利用した粒子生成法では、水性媒体中に水可溶成分が残存するためトナーの製法としては好ましくない。
一方、疎水性有機溶媒を用い、低せん断力と、親水−疎水性のバランスのみから転相乳化しようとしても、多量の転相水(転相のための水性媒体)を添加しないと転相を生じず、しかも良好なトナー粒子は得られない(着色剤分散が不均一になるとともに、水の巻き込みが発生する)。
この場合、アルコール系の助溶剤を添加することで転相可能となるが(実質水溶性溶媒となる)、やはり、水可溶成分が多量に発生する点と、使用可能な樹脂の特性が限定され、なをかつ、乳化しなかったり、異形粒子となりやすく、熱特性を容易に調整することができないので、好ましくない。
乳化会合分散法では、上記したように幅広い樹脂特性に対応し、何ら特別なポリエステル樹脂を使用する必要がなく、粉砕法で使用されるのと同様のポリエステル樹脂を用いて、球形トナーを得ることが可能となる。また、粉砕法では、粉砕性が悪く生産性の低い樹脂(堅い樹脂)でも、本発明の製法では、容易にトナー化することが可能となる。
乳化分散会合法における会合停止は、例えば、せん断力を低下させたり無くしたり、液媒体の希釈したり、中和剤を添加したりする等により達せられる。せん断力の低下は、乳化会合を行った装置が、前記好適な乳化分散機であるローターを有するものである場合には、せん断力を6m/sより減少させればよい。また、粒子を含む液媒体を水により固形分含有量が20%以下となるように希釈してもよい。また、カルボキシル基の中和率を上げ、液媒体中での分散安定性を増加させる目的で、該カルボキシル基の10〜50mol%を中和する量の中和剤を添加してもよい。
本発明の製法の第三工程では、第二工程で得られた粒子の液分散体から、液媒体を除去し、トナー粉体を得る工程である。
さらに詳細には、まず、第二工程で得られた粒子の液分散体から有機溶剤の一部、あるいは全部を留去してから、トナー原体粒子を濾別する。場合によっては、ウエットケーキは水洗した後に、酸そのもの又はその水溶液を注いで、粒子表面に存在する中和塩構造を酸型に変換(逆中和という場合がある)した後に、再度良く水洗を行い、乾燥してトナー原体を得る。
この酸としては、公知慣用のものが使用できるが、通常は水溶液が使用される。好適には、希塩酸が用いられる。
乾燥は、公知慣用の方法がいずれも採用できるが、例えばトナー粒子が熱融着や凝集しない温度で、常圧下又は減圧下で乾燥してもよいし、凍結乾燥するという方法も挙げられる。また、スプレードライヤー等を用いて、水性媒体からのトナー粒子の分離と乾燥とを同時に行うという方法もある。
また、本発明のトナー粒子は、樹脂包埋しミクロトームで切断した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、着色剤は粒子に内包されて均一に分散し、ボイド(粒子内空隙)の存在は認められない。
得られた球形の着色剤内包球形粒子からなる乾燥粉体トナーは、そのままでも電子写真用トナーとして使用することができるが、例えば、疎水性シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムなどの無機微粒子や各種ポリマ微粒子などから適当なものを選択し、外添処理をしてからトナーとして使用する方が好ましい。これら無機微粒子やポリマ微粒子は、比較的大きな粒子径のものと比較的小さな粒子径のものとを併用することもできる。
この様にして得られた本発明の電子写真用トナーは、キャリアと組み合わせることにより二成分現像剤として、また非磁性一成分トナーあるいは磁性一成分トナーとして使用することができる。
キャリアとしては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、例えば、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類等の金属及びそれらの合金又は酸化物、表面処理されたガラス、シリカ等の粉末が使用できる。勿論、シリコーン樹脂、アクリル樹脂やフッ素樹脂等で被覆されたフエライトキャリアやマグネタイトキャリアも使用できる。キャリアの粒子径としては、例えば20〜200ミクロン程度のものが使用される。本発明の製法によるトナーは、キャリアーとの長時間による強攪試験に於いても微粉の発生がなく、電子写真用トナー粒子として十分な機械的強度を有している。
本発明で得られたトナーと、キャリアとから二成分型静電荷像現像剤を得る場合には、例えばキャリア100重量部当たり、トナー1〜15重量部となる様な割合で混合して用いればよい。
本発明は、次の実施形態を含む。1.酸基含有ポリエステル樹脂と着色剤と該ポリエステル樹脂を溶解又は分散しうる疎水性有機溶剤を必須成分とする混合物と、水性媒体を、中和剤の存在下、高せん断作用により、混合・攪拌、乳化させて着色剤内包微粒子(a)を形成後、引き続き、該微粒子(a)を会合させることにより、着色剤内包球形粒子(b)を形成し、液媒体中に分散している該粒子(b)を乾燥粉体として取り出すことを特徴とする、球形の電子写真用トナーの製造法。
2.水溶性金属化合物の存在下で乳化、会合を行うことを特徴とする、上記1記載の製造法。
3.乳化、会合を、高速回転するローターとそれにかみ合うステーター部分からなる分散機を用い、かつ該ローター部の周速が、8〜30m/s、好ましくは8〜25m/sとなる範囲内でもって行う、上記1及び2記載の製造法。
4.酸基含有ポリエステル樹脂と着色剤と該ポリエステル樹脂を溶解又は分散しうる疎水性有機溶剤を必須成分とする混合物を、高せん断作用により混合・攪拌している中に、中和剤の存在下、水性媒体を加えると同時に乳化させて着色剤内包微粒子(a)を形成する、上記1、2及び3記載の製造法。
5.トナーが、ワーデルの実用球形度で0.95〜1.00となる様にした上記1、2、3及び4記載の製造法。
6.酸基含有ポリエステル樹脂の酸基が、カルボキシル基であり、該酸基の酸価が1〜30mg・KOH/gである、上記1、2、3、4及び5記載の製造法。
7.水溶性金属化合物が金属の塩化物であり、その添加量が当該ポリエステル樹脂の酸基の5〜80mol%となる量である、上記1、2、3、4、5及び6記載の製造法。
8.水に対する溶解度が30重量%以下の、疎水性有機溶剤を使用する、上記1、2、3、4、5、6及び7記載の製造法。
9.酸基含有ポリエステル樹脂と有機赤色顔料と該ポリエステル樹脂を溶解又は分散しうる疎水性有機溶剤を必須成分とする混合物と、水性媒体を、中和剤の存在下、高せん断作用により、混合・攪拌、乳化させて赤色顔料内包微粒子(a)を形成後、引き続き、該微粒子(a)を会合させることにより、赤色顔料内包球形粒子(b)を形成し、液媒体中に分散している該粒子(b)を乾燥粉体として取り出すことを特徴とする、球形の電子写真用赤色トナーの製造法。
10.酸基含有ポリエステル樹脂と有機青色顔料と該ポリエステル樹脂を溶解又は分散しうる疎水性有機溶剤を必須成分とする混合物と、水性媒体を、中和剤の存在下、高せん断作用により、混合・攪拌、乳化させて青色顔料内包微粒子(a)を形成後、引き続き、該微粒子(a)を会合させることにより、青色顔料内包球形粒子(b)を形成し、液媒体中に分散している該粒子(b)を乾燥粉体として取り出すことを特徴とする、球形の電子写真用青色トナーの製造法。
11.酸基含有ポリエステル樹脂と有機黄色顔料と該ポリエステル樹脂を溶解又は分散しうる疎水性有機溶剤を必須成分とする混合物と、水性媒体を、中和剤の存在下、高せん断作用により、混合・攪拌、乳化させて黄色顔料内包微粒子(a)を形成後、引き続き、該微粒子(a)を会合させることにより、黄色顔料内包球形粒子(b)を形成し、液媒体中に分散している該粒子(b)を乾燥粉体として取り出すことを特徴とする、球形の電子写真用黄色トナーの製造法。
12.酸基含有ポリエステル樹脂とカーボンブラックと該ポリエステル樹脂を溶解又は分散しうる疎水性有機溶剤を必須成分とする混合物と、水性媒体を、中和剤の存在下、高せん断作用により、混合・攪拌、乳化させてカーボンブラック内包微粒子(a)を形成後、引き続き、該微粒子(a)を会合させることにより、カーボンブラック内包球形粒子(b)を形成し、液媒体中に分散している該粒子(b)を乾燥粉体として取り出すことを特徴とする、球形の電子写真用黒色トナーの製造法。
13.上記9、10及び11の、球形の電子写真用有彩色トナーを全て用いて、支持体上の静電荷潜像の現像を行う静電荷像カラー現像方法。
14.上記9、10、11及び12の、球形の電子写真用トナーを全て用いて、支持体上の静電荷潜像の現像を行う静電荷像現像方法。
本発明の好適な実施形態は、次の通りである。芳香環を有するジカルボン酸と芳香環を有するジオールのみを反応させて得たカルボキシル基に基づく酸価1〜30mg・KOH/g、重量平均分子量2千〜10万、温度100℃における溶融粘度104〜106ポイズ、Tg55〜70℃の熱可塑性ポリエステル樹脂と、顔料と、該ポリエステル樹脂を溶解又は分散しうる、水に対する溶解度(20℃)が30重量%以下の疎水性有機溶剤を必須成分とする、結着剤樹脂100重量部当たり2〜10重量部となる顔料を含み、固形分含有率30〜60重量%の混合物と、前記混合物中の有機溶剤を100重量%とした時に100〜300重量%相当量の脱イオン水を、前記混合物中の結着剤樹脂の酸基の20〜90モル%相当量のアンモニアを含む水と、必要に応じて前記混合物中の結着剤樹脂の酸基の10〜60モル%相当量の2価金属塩化物の存在下、前記混合物の複合高せん断力下、両者が10〜50℃で、混合物に脱イオン水を一度に全量を混合・攪拌、乳化させて3〜6ミクロンの体積平均粒子径の顔料内包微粒子(a)を形成後、引き続き、該微粒子(a)を会合させることにより、前記より大きい顔料内包球形粒子(b)を形成し、系を希釈して会合を止めてから、有機溶媒を蒸留除去、濾過水洗してから、再び脱イオン水に分散させ、希塩酸を加えて逆中和し、表面のアンモニアで中和されたカルボキシル基を遊離のカルボキシル基としてから、濾過水洗して、該粒子(b)を乾燥して、体積平均粒子径で3〜13ミクロンで、ワーデルの実用球形度0.95以上の電子写真用トナー粉体原体として取り出す。
このトナー原体に無機微粒子を添加して、電子写真用乾式トナーとして、これの1〜15重量部に、20ミクロン以上の、熱可塑性樹脂被覆した磁性キャリアを混合して、二成分型静電荷像現像剤を得る。
以下、本発明の実施例を示し、本発明を更に具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、「部」は、全て重量基準であるものとする。
(参考例1)(ポリエステル樹脂の合成例)
攪拌機、温度計、N2 ガス導入管、分留管を有するフラスコにビスフェノールAプロピレンオキサイド2.2モル付加物の1955部(5.5モル相当)、ビスフェノールAエチレンオキサイド2.2モル付加物の1789部(5.5モル相当)、ついでテレフタル酸の830部(5モル相当)、イソフタル酸の830部(5モル相当)とジブチル錫オキサイドの4部を仕込み、N2 ガス気流下攪拌加熱昇温し、230℃にて脱水縮合反応を行った。 その際原料モノマーが留出しないよう注意を払い、もし留出した場合には留出分を補填して、仕込組成通りの樹脂組成となるよう調整した。酸価が4mg・KOH/gとなる迄反応した後、N2ガスを停止して攪拌しながら室温まで冷却した。GPCによる重量平均分子量は12000であった。島津製作所(株)社製の「DSC−50」の示差走査熱量計DSCをもちいて、セカンドラン法で、毎分10℃の昇温速度で測定したところ、樹脂固体のガラス転移点は61℃であった。島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて、ノズル径1.0mmφ×1.0mm、荷重10Kg、毎分6℃の昇温速度で樹脂固体の溶融粘度を測定したところ、100℃において4×104ポイズであった。
(実施例1)
参考例1で得られたポリエステル樹脂の1200部に、メチルエチルケトンの800部を加え、よく溶解した樹脂溶液に、「Ket Blue 123」(大日本インキ化学工業(株)社製フタロシアニン系顔料)の50部を添加し、「アイガーモーターミル」(米国アイガー社製モーターミル)にて、湿式顔料分散を行った。分散終了後、メチルエチルケトンにより、固形分含有量を50%に調整し、ミルベースを得た。
1Lのセパラブルフラスコに、このミルベースの200部、メチルエチルケトンの50部、1規定アンモニア水の3.5部を仕込み、「T.K.ロボミクス」(特殊機化工業製ホモミクサー、攪拌部直径30mm)を用いて3000RPMで混合・攪拌しながら温度を30℃に昇温した。温度が一定となったら、ホモミクサーの回転数を13000RPM(周速19.4m/s)に上げ、これに30℃に調整された脱イオン水の225部を一気に添加すると、直ちに転相乳化し、粒径3.7μmの微粒子が得られた。この分散液を、同様の条件下でさらに撹拌を続け、脱イオン水を添加し転相乳化てから20分後に撹拌を3000RPM(周速4.5m/s)に落とし、希釈水として脱イオン水の150部と、分散安定性を増すために、1規定のアンモニア水の4部を添加した。
次いで、減圧蒸留により有機溶剤を除去し、濾過水洗を行った。このとき、濾液の固形分含有量を測定したところ、水可溶成分の量は1.5重量%であった。さらに、ウエットケーキを脱イオン水に再分散して、1規定塩酸水溶液を加えてPHを約2.5とし、さらに濾過、水洗後、ウエットケーキを乾燥して、目的とする着色剤内包樹脂粒子を得た。
この着色樹脂粒子は、コールターカウンターによる測定で、体積平均粒子径が6.0μmで、ワーデルの実用球形度が0.98であった。また、島津製作所(株)社製の「DSC−50」の示差走査熱量計DSCをもちいて、セカンドラン法で、毎分10℃の昇温速度で測定したところ、樹脂固体のガラス転移点は61℃であった。島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて、ノズル径1.0mmφ×1.0mm、荷重10Kg、毎分6℃の昇温速度で樹脂固体の溶融粘度を測定したところ、100℃において4×104ポイズであり、参考例1で示したポリエステル樹脂とほぼ同様の値を示した。また、該粒子を樹脂包埋しミクロトームで切削した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、着色剤が粒子内に均一に分散し、ボイド(空隙)の存在は認められなかった。
この着色樹脂粒子に、疎水性シリカ 「AEROSIL R976」(日本アエロジル社製)の0.7重量%をヘンシェルミキサーを使用して外添し、トナーとした。このトナーを非磁性プリンター(エプソン社製LP−1700)に用いたところ、青色の良好な画像が得られた。
また前記トナー4重量部に粒子径80μmのシリコンコートフェライトキャリア(パウダーテック社製)100重量部を加えて混合し、ブローオフ帯電量を測定したところ−49μC/gを示し、この現像剤を市販の複写機(三田工業製DC−111)に用いたところ十分実用に供しうる良好な画像がえられた。
(実施例2)
参考例1で得られたポリエステル樹脂の1200部に、メチルエチルケトンの800部を加え、よく溶解した樹脂溶液に、「Ket Yellow 403」(大日本インキ化学工業(株)社製ジスアゾ系顔料、硫酸バリウム無添加品)の37部を添加し、「アイガーモーターミル」(米国アイガー社製モーターミル)にて、湿式顔料分散を行った。分散終了後、メチルエチルケトンにより、固形分含有量を50%に調整し、ミルベースを得た。
1Lのセパラブルフラスコに、このミルベースの200部、メチルエチルケトンの85.7部、1規定アンモニア水の5.7部、塩化カルシウム二水和物の0.13部を仕込み、「T.K.ロボミクス」(特殊機化工業製ホモミクサー、攪拌部直径30mm)を用いて3000RPMで混合・攪拌しながら温度を30℃に昇温した。温度が一定となったら、ホモミクサーの回転数を10000RPM(周速14.9m/s)に上げ、これに30℃に調整された脱イオン水の257部を一気に添加すると、直ちに転相乳化し、粒径4.4μmの微粒子が得られた。この分散液を、同様の条件下でさらに撹拌を続け、脱イオン水を添加してから12分後に撹拌を3000RPM(周速4.5m/s)に落とし、希釈水として脱イオン水の200部と、分散安定性を増すために、1規定のアンモニア水の3.5部を添加した。
次いで、減圧蒸留により有機溶剤を除去し、濾過水洗を行った。このとき、濾液の固形分含有量を測定したところ、水可溶成分の量は1.4重量%であった。さらに、ウエットケーキを脱イオン水に再分散して、1規定塩酸水溶液を加えてPHを約2.5とし、さらに濾過、水洗後、ウエットケーキを乾燥して、目的とする着色剤内包樹脂粒子を得た。
この着色樹脂粒子は、コールターカウンターによる測定で、体積平均粒子径が6.2μmで、ワーデルの実用球形度が0.98であった。また、島津製作所(株)社製の「DSC−50」の示差走査熱量計DSCをもちいて、セカンドラン法で、毎分10℃の昇温速度で測定したところ、樹脂固体のガラス転移点は61℃であった。島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて、ノズル径1.0mmφ×1.0mm、荷重10Kg、毎分6℃の昇温速度で樹脂固体の溶融粘度を測定したところ、100℃において4.2×104ポイズであり、参考例1で示したポリエステル樹脂とほぼ同様の値を示した。また、該粒子を樹脂包埋しミクロトームで切削した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、着色剤が粒子内に均一に分散し、ボイド(空隙)の存在は認められなかった。
この着色樹脂粒子に、疎水性シリカ 「AEROSIL R976」(日本アエロジル社製)の0.7重量%をヘンシェルミキサーを使用して外添し、トナーとした。このトナーを非磁性プリンター(エプソン社製LP−1700)に用いたところ、黄色の良好な画像が得られた。
また前記トナー4重量部に粒子径80μmのシリコンコートフェライトキャリア(パウダーテック社製)100重量部を加えて混合し、ブローオフ帯電量を測定したところ−51μC/gを示し、この現像剤を市販の複写機(三田工業製DC−111)に用いたところ十分実用に供しうる良好な画像がえられた。
(実施例3)
参考例1で得られたポリエステル樹脂の1200部に、メチルエチルケトンの800部を加え、よく溶解した樹脂溶液に、「Toner Magenta Eー02」(ヘキストインダストリー(株)社製キナクリドン系顔料)の50部を添加し、
「アイガーモーターミル」(米国アイガー社製モーターミル)にて、湿式顔料分散を行った。分散終了後、メチルエチルケトンにより、固形分含有量を50%に調整し、ミルベースを得た。
1Lのセパラブルフラスコに、このミルベースの200部、メチルエチルケトンの85.7部、1規定アンモニア水の6.6部、塩化カルシウム二水和物の0.13部を仕込み、「T.K.ロボミクス」(特殊機化工業製ホモミクサー、攪拌部直径30mm)を用いて3000RPMで混合・攪拌しながら温度を15℃に昇温した。温度が一定となったら、ホモミクサーの回転数を9000RPM(周速13.4m/s)に上げ、これに15℃に調整された脱イオン水の230部を一気に添加すると、直ちに転相乳化し、粒径5.1μmの微粒子が得られた。この分散液を、同様の条件下でさらに撹拌を続け、脱イオン水を添加してから11分後に撹拌を3000RPM(周速4.5m/s)に落とし、希釈水として脱イオン水の200部と、分散安定性を増すために、1規定のアンモニア水の2.8部を添加した。
次いで、減圧蒸留により有機溶剤を除去し、濾過水洗を行った。このとき、濾液の固形分含有量を測定したところ、水可溶成分の量は1.4重量%であった。さらに、ウエットケーキを脱イオン水に再分散して、1規定塩酸水溶液を加えてPHを約2.5とし、さらに濾過、水洗後、ウエットケーキを乾燥して、目的とする着色剤内包樹脂粒子を得た。
この着色樹脂粒子は、コールターカウンターによる測定で、体積平均粒子径が6.0μmで、ワーデルの実用球形度が0.97であった。また、島津製作所(株)社製の「DSC−50」の示差走査熱量計DSCをもちいて、セカンドラン法で、毎分10℃の昇温速度で測定したところ、樹脂固体のガラス転移点は61℃であった。島津製作所製フローテスタCFT−500を用いて、ノズル径1.0mmφ×1.0mm、荷重10Kg、毎分6℃の昇温速度で樹脂固体の溶融粘度を測定したところ、100℃において4.3×104ポイズであり、参考例1で示したポリエステル樹脂とほぼ同様の値を示した。また、該粒子を樹脂包埋しミクロトームで切削した断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、着色剤が粒子内に均一に分散し、ボイド(空隙)の存在は認められなかった。
この着色樹脂粒子に、疎水性シリカ 「AEROSIL R976」(日本アエロジル社製)の0.7重量%をヘンシェルミキサーを使用して外添し、トナーとした。このトナーを非磁性プリンター(エプソン社製LP−1700)に用いたところ、赤色の良好な画像が得られた。
また前記トナー4重量部に粒子径80μmのシリコンコートフェライトキャリア(パウダーテック社製)100重量部を加えて混合し、ブローオフ帯電量を測定したところ−48μC/gを示し、この現像剤を市販の複写機(三田工業製DC−111)に用いたところ十分実用に供しうる良好な画像がえられた。
上記した通り、実施例で得たトナーは、いずれも水性媒体へのポリエステル樹脂の水可溶成分の溶出がより少なく、歩留まり(収率)がより良好であるとともに、用いた樹脂が本来有する優れた特性をそのまま引き継ぎ、熱特性のバランスに優れた、粒子径分布が極めてシャープで、球形度の著しく高いトナーが容易に得られる。