JP2007106991A - 光学部品用スチレン系熱可塑性樹脂、及び熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

光学部品用スチレン系熱可塑性樹脂、及び熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】光学的に透明であり、耐光性に優れ、吸水率が小さく、かつ紫外線硬化型樹脂との接着性に優れた光学部品用スチレン系熱可塑性樹脂および樹脂組成物を提供する。
【解決手段】飽和吸水率が0.6重量%以下であり、かつ飽和吸水時の寸法変化率が0.07%以下であるスチレン系熱可塑性樹脂及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明性、耐光性に優れた光学用部品に適した特定のスチレン系熱可塑性樹脂、及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物に関するものである。
近年テレビの大型化に伴い従来の直視型ブラウン管テレビから背面透過型プロジェクションテレビ、PDPテレビ、液晶テレビの需要が増大している。これらには、光学的に透明な樹脂製のスクリーン、拡散板、導光板等が使われている。例えば、プロジェクションテレビのスクリーンの構成は、一般的にはテレビ内部から順にフレネルレンズ、レンチキュラーレンズのレンズ基板の2枚構成の樹脂製レンズからなり、場合によっては、該スクリーンの前に前面パネルが設けられることもある。
一般に、光学部品特にフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等に使用される可能性のある透明樹脂としては、アクリル樹脂、スチレンーアクリル系共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体及び環状オレフィン等があげられる。具体的には、それらの部品には、従来からアクリル樹脂が使用されてきた。しかし、近年のテレビの大型化に伴うスクリーン自体の大型化により、吸水率が大きいアクリル樹脂を使用していることに起因するスクリーンの反りが目立つようになり、結果的に画面が歪む等の問題が発生した。この問題を改善する為に、最近では吸水率の小さいスチレン−アクリル系共重合体が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
また、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズには、従来はアクリル樹脂が使用されていた。しかし、上記したようにアクリル樹脂は吸水による寸法変化が大きい。テレビの大型化に伴いこれらレンズも大きくなっており、吸水によりレンズの寸法が変化することで、特にレンズの中心部が膨らむように反りが発生する。その結果、焦点ボケ、色再現性の低下、2重像といった現象による映像の画質低下の問題が起こった。これらの現象を解決するために、該レンズの材質としてアクリル樹脂に比べて吸水率の小さいスチレンーアクリル系共重合体が採用され主流となっている。
しかしながら、最近は更に大型化の薄型テレビが開発されており、スチレン−アクリル系共重合体でも吸水による寸法変化による反りの発生が問題となり始めている。この問題を解決するために、メタクリル酸メチルの含有量を下げたスチレン−アクリル系共重合体の開発が試みられている。しかし、メタクリル酸メチルの含有量を下げると、吸水による寸法変化は小さくすることはできるが、該樹脂基板を使ってフレネルレンズ等レンズを制作する際に基板の上に塗布される紫外線硬化型樹脂との接着性が不十分となり、フレネルレンズ等を加工できないという問題がある。
一方、スチレン−アクリロニトリル共重合体に関しては、従来は、単に共重合体として記載されているのみであり、その具体的な組成等についての検討はなされていない(例えば、特許文献2〜6参照。)。
特開2002−40563号公報 特開平2−245703号公報 特開平9−26503号公報 特開平9−281307号公報 特開平11−312741号公報 特開2003−279712号公報
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたもので、光学的に透明であり、耐光性に優れ、吸水率および寸法変化率が小さく、なお且つ紫外線硬化型樹脂との接着性に優れたスチレン系熱可塑性樹脂、スチレン系熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。また、大型の映像スクリーンの吸水によるスクリーンの寸法変化を劇的に改良することを目的とする。
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を進めた結果、以下に記す特定のスチレン系熱可塑性樹脂により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。また、該樹脂に更に特定のヒンダードアミン系安定剤を組み合わせた樹脂組成物が、更に優れた特性を有することを見出した。
即ち、本発明においては、光学特性に優れ且つ吸水寸法安定性の高い特定の樹脂を見出すことで上記目的を達成し、更にその樹脂に耐光性を更に高める為の安定剤を加えた樹脂組成物が、より優れた特性を有することを見出した。
尚、樹脂の耐光(候)性の向上手法としては、トリアジン系、ベンゾトリアジン系、ベンゾフェノン系等の紫外線吸収剤と安定剤との併用が一般的に取られる。しかし、本発明の用途などの様に、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂を硬化させる場合には、紫外線吸収剤が、照射された紫外線を吸収し硬化反応を阻害し、全く硬化しないか、または硬化しても満足する密着性を発揮できない等の問題が生じるため、紫外線吸収剤との併用は好ましくない。この観点から、本発明においては、紫外線吸収剤を併用しないで耐光(候)性を改善し、かつ接着性を阻害しない安定剤についても鋭意研究を行った。
本発明の目的は、以下のスチレン系熱可塑性樹脂、及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物により達成された。
1.飽和吸水率が0.6重量%以下であり、かつ飽和吸水時の寸法変化率が0.07%以下であるスチレン系熱可塑性樹脂。
2.芳香族ビニル単位(A)を73〜95重量%、及び、不飽和ニトリル単位(B)を5〜27重量%からなることを特徴とする前記1に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
3.芳香族ビニル単位(A)を73〜92重量%、及び、不飽和ニトリル単位(B)を8〜27重量%からなることを特徴とする前記1に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
4.前記樹脂成分が、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α、β−不飽和カルボン酸、マレイミドまたはグリシジル基含有単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(C)を、前記成分(A)と前記成分(B)の合計量100重量部に対して、0〜20重量部含有することを特徴とする前記2または3に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
5.前記樹脂成分全体に対する前記成分(B)の含有量の平均値(X)が5<X≦27重量%であり、
前記樹脂成分が、前記成分(B)を(X−5)重量%以下有する共重合体、及び、前記成分(B)を(X+5)重量%以上有する共重合体を、それぞれ5重量%以下有することを特徴とする前記2または4に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
6.前記樹脂成分全体に対する前記成分(B)の含有量の平均値(X)が8≦X≦27重量%であり、
前記樹脂成分が、前記成分(B)を(X−5)重量%以下有する共重合体、及び、前記成分(B)を(X+5)重量%以上有する共重合体を、それぞれ5重量%以下有することを特徴とする前記3または4に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
7.成分(A)がスチレンであり、成分(B)がアクリロニトリルであることを特徴とする前記2〜6いずれか一項に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
8.成分(C)が、ブチルアクリレートであることを特徴とする前記4〜7いずれか一項に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
9.前記2〜8記載のスチレン系熱可塑性樹脂100重量部に対して、ヒンダードアミン系安定剤(D)を0.05〜2.0重量部含有し、飽和吸水率が0.6重量%以下であり、かつ、飽和吸水時の寸法変化率が0.07%以下であることを特徴とするスチレン系熱可塑性樹脂組成物。
10.成分(D)が、セバシン酸ジエステル化合物であることを特徴とする前記9に記載のスチレン系熱可塑性樹脂組成物。
11.成分(D)が、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートであることを特徴とする前記9または10に記載のスチレン系熱可塑性樹脂組成物。
本発明の光学用スチレン系熱可塑性樹脂及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物は、優れた光学特性、優れた耐光性、優れた吸水寸法安定性及び紫外線硬化型樹脂との優れた接着性を有しており、家電機器、OA機器等の光学部品等の用途に使用することが可能となる。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明のスチレン系熱可塑性樹脂及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物は、飽和吸水率が0.6重量%以下であり、かつ飽和吸水時の寸法変化率が0.07%以下である。
本発明のスチレン系熱可塑性樹脂及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物の飽和吸水時の寸法変化率は、好ましくは0.001〜0.06%、さらに好ましくは0.005〜0.05%、特に好ましくは0.01〜0.04%である。
本発明の樹脂及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物は、剛性、耐久性、低吸水性、良加工性、耐薬品性に優れており、更に透明性、耐光性および紫外線硬化型樹脂との接着性にも優れており、これらの特性を要求する光学部品を得るに適した樹脂及び樹脂組成物である。
本発明のスチレン系熱可塑性樹脂は、ポリスチレン、スチレンーアクリロニトリル共重合体、スチレンーメタクリレート共重合体、メタクリレートーブタジエンースチレンからなるMBS樹脂などのスチレン系熱可塑性樹脂を用いることができる。その中でも、スチレンーアクリロニトリル共重合体を用いることが好ましい。
本発明のスチレン系熱可塑性樹脂は、芳香族ビニル単位(A)73〜95重量%と不飽和ニトリル単位(B)5〜27重量%からなることが好ましい。成分(A)73〜92重量%および成分(B)8〜27重量%からなることがより好ましく、成分(A)77〜90重量%および成分(B)10〜23重量%であることが更に好ましく、成分(A)78〜85重量%および成分(B)15〜22重量%からなることが特に好ましい。
上記の成分(B)の含有量は、本発明の樹脂あるいはスチレン系熱可塑性樹脂組成物を光学部品用途のレンズ基材に用いる場合の、レンズ基材に接着させる紫外線硬化型樹脂との接着性の観点から5重量%以上とすることが好ましく、また飽和吸水時の寸法変化率および黄色度(YI)の観点から27重量%以下とすることが好ましい。
また、上記の成分(B)について、樹脂成分全体に対する成分(B)の含有量の平均値(X)が5<X≦27重量%であり、その樹脂成分が、成分(B)を(X−5)重量%以下有する共重合体、及び、成分(B)を(X+5)重量%以上有する共重合体を、それぞれ5重量%以下含有することが好ましい。また、それぞれの共重合体の含有量を0.01〜5重量%とすることがより好ましく、それぞれの共重合体の含有量を0.02〜4.5重量%とすることが更に好ましく、0.02〜3.5重量%であることが特に好ましい。
また、上記の成分(B)について、樹脂成分全体に対する成分(B)の含有量の平均値(X)が8≦X≦27重量%であり、その樹脂成分が、成分(B)を(X−5)重量%以下有する共重合体、及び、成分(B)を(X+5)重量%以上有する共重合体を、それぞれ5重量%以下含有することが好ましい。また、それぞれの共重合体の含有量を0.01〜5重量%とすることがより好ましく、それぞれの共重合体の含有量を0.02〜4.5重量%とすることが更に好ましく、0.02〜3.5重量%であることが特に好ましい。
本発明のスチレン系熱可塑性樹脂に用いられる芳香族ビニル単位(A)としては、スチレン、α―メチルスチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロルスチレンなどを挙げることができるが、特にスチレンが好ましい。また、不飽和ニトリル単位(B)としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができるが、特にアクリロニトリルが好ましい。
また、本発明の樹脂は、成分(A)および/または成分(B)と共重合可能な単量体を含んでも良い。そのような共重合可能な単量体(C)としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸などの(メタ)アクリル酸;無水マレイン酸等のα、β―不飽和カルボン酸;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体が挙げられる。これらの単量体は1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることが出来る。これらの中でも、アルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ブチルアクリレートが更に好ましい。
成分(C)の含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0〜20重量部とすることが好ましく、7〜15重量部とすることが更に好ましい。
本発明のスチレン系熱可塑性樹脂及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物を得る方法としては、例えば、完全攪拌混合槽に、モノマー、開始剤、溶媒等を連続的にフィードし、連続的に反応槽から抜き出し、熱時、脱揮系で揮発分を除去する方法が挙げられる。脱揮系でのポリマー滞留は極力少なくすることが好ましい。
本発明のスチレン系熱可塑性樹脂の重量平均分子量としては、スチレン換算分子量で185,000〜250,000の範囲が好ましい。重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー社製HLC8220GPC)、カラム(東ソー社製TSK-GEL G6000HXL-G5000HXL-G5000HXL-G4000HXL-G3000HXL直列)を用いて測定する。試料 20mg±0.5mgをテトラヒドロフラン 10mlに溶解し、0.45μmのフィルターで濾過した。この溶液をカラム温度40℃に100μl注入し、検出器RI温度 40℃で測定しスチレン換算した値を用いる。
一方、光学部品であるスクリーン等は、CRT等から照射される光を長時間受けることとなる為に、使用される材質には、耐光性能が高いことが要求される。本発明の樹脂は、優れた耐光性能を有するが、長時間の耐光性を更に高めるために更なる耐光性処方を施すことが好ましい。しかし、該スクリーンのフレネルレンズに塗布される紫外線硬化型樹脂は、紫外線の照射を受けて硬化反応が進行する為、スクリーン用の樹脂に紫外線を吸収する等の硬化反応を阻害するものを添加することは実用的でない。更に、添加したものがスクリーン基材と紫外線硬化型樹脂との接着性を阻害するものであってはならない。また、添加するものが、該スクリーンの透明性を低下させることがあってはならない。
本発明者らは、耐光性、硬化反応性及び接着性等を満足する耐光剤について鋭意検討した結果、ヒンダードアミン系安定剤が適することを見出した。即ち、本発明のスチレン系熱可塑性樹脂にヒンダードアミン系安定剤を加えることで、長時間の耐光性を更に高めることが可能となる。本発明のヒンダードアミン系安定剤(D)としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、及びメチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのセバシン酸ジエステル化合物、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物が挙げられ、その1種以上を用いることができる。それらの中でも、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートなどのセバシン酸ジエステル化合物が好ましく、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートが最も好ましい。
ヒンダードアミン系安定剤(D)は、スチレン系熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.05〜2.0重量部の範囲で添加することが好ましい。ヒンダードアミン系安定剤(D)の含有量は、好ましくは、樹脂100重量部に対し、0.1〜1.5重量部の範囲内であり、より好ましくは0.2〜1.0重量部の範囲内である。耐光性向上の観点から、安定剤(D)の含有量は、0.05重量部以上であり、紫外線硬化型樹脂との接着性の観点から2.0重量部以下とすることが好ましい。
ヒンダードアミン系安定剤(D)は、スチレン系熱可塑性樹脂の重合時に添加することができる。また、押出機を用いてスチレン系熱可塑性樹脂を溶融する際に、樹脂ペレットと共にホッパー、あるいはサイドフィーダーから添加することもできる。さらにまた、光学部品用として用いる同種のスチレン系熱可塑性樹脂と安定剤とのマスターバッチを事前に準備し、光学部品を押出成形あるいは射出成形する際に、上記マスターバッチを添加する、簡便な方法をとることもできる。
本願発明のスチレン系熱可塑性樹脂及びスチレン系熱可塑性樹脂組成物は、光を拡散する目的の拡散材を0.1〜10重量%含有しても良い。一般的には、拡散材としては架橋させたアクリル樹脂、架橋させたスチレンーアクリル系樹脂、架橋したスチレン樹脂、架橋したシリコン系樹脂等の有機系拡散材や、炭酸カルシューム、タルク、酸化チタン、硫酸バリューム等の無機系拡散材があげられる。
本発明のスチレン系熱可塑性樹脂あるいはスチレン系熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形あるいは押出成形により所望の成形品を得ることができる。特に大型部品になる程、押出成形のシートから加工するのが好ましい。例えば、本発明のスチレン系熱可塑性樹脂あるいはスチレン系熱可塑性樹脂組成物を設定温度240℃の65mm単軸押出機(東芝機械(株)製)で溶融し、押出機ヘッドに設けたTダイから押し出し、ついで3本ロール(温度:上ロール 98℃、中ロール 95℃、下ロール 85℃)を介して厚さ1.85mmの光学用のスクリーン基板を得ることができる。該基板に、さらに片側に熱硬化性樹脂を所望の形状、例えばフレネルレンズの形状に成形し、規定の紫外線を必要時間、照射し、熱硬化させることで、所望のリアプロジェクションテレビ用のスクリーンを得ることができる。
本発明の樹脂およびスチレン系熱可塑性樹脂組成物は光学部品に用いられる。薄型テレビとしては、背面透過型プロジェクションテレビ(又はリアプロジェクションテレビ)、液晶テレビ、PDPテレビ等が挙げられるが、本発明の樹脂および樹脂組成物が用いられる光学部品は、背面透過型プロジェクションテレビ、液晶テレビに用いられる。具体的には、背面透過型プロジェクションテレビおよび液晶テレビなどに用いられるスクリーン(フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、前面パネル、拡散板、導光板等挙げられる。これらの部品においては、部品が吸水して寸法変化が起こり反りが発生した場合、画像が歪む等の不具合が起こる。よって、これらの光学部品には、吸水率及び寸法変化率が低いことが要求されており、本発明の樹脂あるいはスチレン系熱可塑性樹脂組成物を用いることでその要求を満たすことができる。
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の表中の各物性は、次に示す方法により求めた。
(1)飽和吸水率
射出成形された150mm×150mm×2.0mm厚さの平板試験片を、予め80℃にて3時間乾燥した後に、23℃のデシケーター中で冷却する。この時の試験片の重量をWとする。次に、この試験片を23℃の水中に浸漬し、重量増加が平衡に達した時の重量(W)を測定して、次式から飽和吸水率(wt%)を求める。
飽和吸水率=(W―W)/W×100
(2)飽和吸水時の寸法変化
上記で飽和吸水率に達した後に、試験片を取出し、布で表面を拭く。平板の樹脂の流れ方向について、吸水前後の寸法をノギスで測定し、吸水前後の寸法変化量を求め、その値を吸水前の寸法で除して求める。
(3)全光線透過率
50mm×90mm×2.5mm厚さの試験片を4枚重ねて、JIS K7105に準じて測定する。但し、実施例8、比較例4〜5は、12.7mm×12.7mm×127mmの短冊試験片を用いた。
(4)曇り度
50mm×90mm×2.5mm厚さの試験片を4枚重ねて、JIS K7105に準じて測定する。但し、実施例8、比較例4〜5は、12.7mm×12.7mm×127mmの短冊試験片を用いた。また、白濁の有無は目視で観察した。
(5)耐光性試験
スガ試験機(株)製サンシャインウエザーメータ−を用いて、下記の条件にて測定する。
BP温度63℃
降雨なし
500時間暴露
(6)黄変指数変化(△YI)
耐光性試験500時間後の試料をスガ試験機(株)製多光源分光測色計MSC−5Nにて黄変指数(YI500)を測定し、下式のように、未暴露の試料の黄変指数(YI)との差で表す。
△YI=YI500−YI
(7)接着性試験
紫外線硬化型樹脂として、ウレタンーアクリレート(共栄社化学株式会社製
UA−306H)を使用する。硬化剤として、イルガキュア907(日本バガルギー(株)製)を使用し、硬化型樹脂90%に対し、10%の割合で添加する。硬化剤を含んだ硬化型樹脂を試験片(寸法50mm×90mm×2.5mm)上に塗布した後、試験片側から光照射を行い、硬化型樹脂を硬化させる。硬化には高圧水銀灯(波長365nmにおける光強度150mw/cm)を用い、30秒照射とする。硬化させた面にナイフで1mmの碁盤目100個を作り、ニチバン製のセロハンテープを圧着した後に、45度の角度で速やかにセロテープを剥がし、硬化樹脂の接着状態を観察する。
尚、表1及び2では、接着性が十分である場合を“○”、若干剥がれる部分がある場合を“△”、硬化樹脂の大半が剥がれる場合を“×”とした。また、表中の“−”印は、未含有または未測定を示す。
(8)樹脂組成分布の測定
試料0.05gを40mlのTHF(テトラヒドロフラン)に溶解し、高速液体クロマトグラフWaters TM600(Waters社製)を用い、カラムはμ BONDASPHERE 3.9mmφ×150mm、カラムオーブン 35℃、キャリアはヘキサン/クロロホルム 1mL/min、グラジエント条件は下記の条件、検出器は、Mass Detector ELSD−1000(Polymer Laboratories社製)で、Neb.温度 40℃、Eva.温度 70℃、ガス流量 1.0L/minで共重合体中のアクリロニトリル組成分布を測定した。
グラジエント条件
TIME ヘキサン% クロロホルム%
0 50 50
15 0 100
20 0 100
[実施例1〜7および比較例1〜3]
表1に示したスチレン系熱可塑性樹脂と安定剤の組み合わせを、30mmベント式単軸押出機((株)石中鉄工所製 HS−B)を用いて、220℃で混練りし、目的の樹脂あるいは樹脂組成物を得た。安定剤としては、JF90(城北化学工業(株)製)を用いた。得られた各々の樹脂あるいは樹脂組成物を東芝機械(株)製IS−55EPNを用いて、温度240℃、金型温度60℃の条件で射出成形し評価用試験片を作成した。それらの物性の評価結果を表1に示す。
なお、アクリロニトリル20重量%を含有するスチレン系熱可塑性樹脂のうち、アクリロニトリルを15重量%以下および25重量%以上含有する共重合体の含有量は、それぞれ4重量%以下であった。また、アクリロニトリル9重量%を含有するスチレン系熱可塑性樹脂組成物のうち、アクリロニトリルを5重量%以下および14重量%以上含有する共重合体の含有量は、それぞれ5重量%以下であった。また、比較例2は、PSJポリスチレンHF77(PSジャパン(株)製)を用いた。
表1に示す通り、実施例1〜7は飽和吸水率が小さく、且つ寸法変化率も小さく、紫外線硬化型樹脂との接着性に優れている。
比較例1でアクリロニトリル含有量が高くなると、飽和吸水率は大きく、寸法変化率も大きくなる。比較例2のようにアクリロニトリルを含まないと紫外線硬化樹脂との接着性が得られなくなる。また、比較例3のように安定剤の量が多くなると紫外線硬化樹脂との接着性が得られない。
[実施例8および比較例4、5]
表2に示した組成のアクリロニトリルの組成分布を高速液体クロマトグラフで測定した結果を表2に示す。アクリロニトリルの組成分布が広くなると、光学特性が低下し、寸法変化が大きくなり好ましくない。
Figure 2007106991
Figure 2007106991
光学的に透明な樹脂製の大型スクリーン(フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ)、前面パネル、拡散板、導光板等などに使用することが可能である。

Claims (11)

  1. 飽和吸水率が0.6重量%以下であり、かつ飽和吸水時の寸法変化率が0.07%以下であるスチレン系熱可塑性樹脂。
  2. 芳香族ビニル単位(A)を73〜95重量%、及び、不飽和ニトリル単位(B)を5〜27重量%からなることを特徴とする請求項1に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
  3. 芳香族ビニル単位(A)を73〜92重量%、及び、不飽和ニトリル単位(B)を8〜27重量%からなることを特徴とする請求項1に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
  4. 前記樹脂成分が、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α、β−不飽和カルボン酸、マレイミドまたはグリシジル基含有単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種の成分(C)を、前記成分(A)と前記成分(B)の合計量100重量部に対して、0〜20重量部含有することを特徴とする請求項2または3に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
  5. 前記樹脂成分全体に対する前記成分(B)の含有量の平均値(X)が5<X≦27重量%であり、
    前記樹脂成分が、前記成分(B)を(X−5)重量%以下有する共重合体、及び、前記成分(B)を(X+5)重量%以上有する共重合体を、それぞれ5重量%以下有することを特徴とする請求項2または4に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
  6. 前記樹脂成分全体に対する前記成分(B)の含有量の平均値(X)が8≦X≦27重量%であり、
    前記樹脂成分が、前記成分(B)を(X−5)重量%以下有する共重合体、及び、前記成分(B)を(X+5)重量%以上有する共重合体を、それぞれ5重量%以下有することを特徴とする請求項3または4に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
  7. 成分(A)がスチレンであり、成分(B)がアクリロニトリルであることを特徴とする請求項2〜6いずれか一項に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
  8. 成分(C)が、ブチルアクリレートであることを特徴とする請求項4〜7いずれか一項に記載のスチレン系熱可塑性樹脂。
  9. 請求項2〜8記載のスチレン系熱可塑性樹脂100重量部に対して、ヒンダードアミン系安定剤(D)を0.05〜2.0重量部含有し、飽和吸水率が0.6重量%以下であり、かつ、飽和吸水時の寸法変化率が0.07%以下であることを特徴とするスチレン系熱可塑性樹脂組成物。
  10. 成分(D)が、セバシン酸ジエステル化合物であることを特徴とする請求項9に記載のスチレン系熱可塑性樹脂組成物。
  11. 成分(D)が、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートであることを特徴とする請求項9または10に記載のスチレン系熱可塑性樹脂組成物。
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