以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の好ましい第1の実施形態によるインダクタ素子100の構造を示す略分解斜視図であり、図2は、第1の実施形態によるインダクタ素子100を組み立てた状態を示す略斜視図である。
図1に示すように、本実施形態によるインダクタ素子100は、基板111,112と、基板111,112間に設けられた絶縁層121〜125と、所定の絶縁層に形成された導体パターンとを備えて構成されている。基板111,112の材料については特に限定されないが、透磁率の高い材料、例えばフェライトなどを用いることが好ましい。また、絶縁層121〜125の材料については、特に限定されないが、ポリイミドなどを用いることが好ましい。
絶縁層に形成された導体パターンは、各絶縁層121〜125の表面に形成された第1〜第4の内部電極131〜134と、各絶縁層121〜125の表面に形成された第5の内部電極135a,135bと、絶縁層123の表面に形成された第1及び第3のスパイラル状導体141,143と、絶縁層122の表面に形成された第2及び第4のスパイラル状導体142,144と、絶縁層124の表面に形成された引き出し導体151,152と、絶縁層121の表面に形成された引き出し導体153,154とを含んでいる。第1のスパイラル状導体141と第2のスパイラル状導体142は、絶縁層123を介して向かい合うように配置されており、このため、両者は互いに磁気結合している。同様に、第3のスパイラル状導体143と第4のスパイラル状導体144も、絶縁層123を介して向かい合うように配置されており、このため、両者は互いに磁気結合している。後述するように、これらの導体パターンは、絶縁層上に、スパッタリング法、蒸着法、メッキ法などのいわゆる薄膜プロセスによって形成することができる。
これら導体パターンのうち、第1〜第5の内部電極131〜134,135a,135bは、ぞれぞれ図2に示す第1〜第5の端子電極101〜104,105a,105bに接続される導体パターンである(図1では、第1〜第5の端子電極101〜104,105a,105bの図示を省略してある。以下、各分解斜視図において同様)。図2に示すように、第1及び第2の端子電極101,102は互いに隣接して配置されており、第3及び第4の端子電極103,104も互いに隣接して配置されている。また、第5の端子電極105a,105bは2個設けられているが、本発明において第5の端子電極の数はこれに限定されず、例えば1個であっても構わない。
図1に戻って、第1のスパイラル状導体141は平面状コイルであり、その一端141aは第1の内部電極131に接続されている。一方、第1のスパイラル状導体141の他端141bは、絶縁層124に形成されたスルーホール及び引き出し導体151を介して、第3の内部電極133に接続されている。上述の通り、第1の内部電極131は第1の端子電極101に接続されており、第3の内部電極133は第3の端子電極103に接続されていることから、第1のスパイラル状導体141の一端141aは、第1の端子電極101に接続され、他端141bは第3の端子電極103に接続されていることになる。
第2のスパイラル状導体142も平面状コイルであり、その一端142aは第2の内部電極132に接続されている。一方、第2のスパイラル状導体142の他端142bは、絶縁層122に形成されたスルーホール及び引き出し導体153を介して、第4の内部電極134に接続されている。上述の通り、第2の内部電極132は第2の端子電極102に接続されており、第4の内部電極134は第4の端子電極104に接続されていることから、第2のスパイラル状導体142の一端142aは、第2の端子電極102に接続され、他端142bは第4の端子電極104に接続されていることになる。
第3のスパイラル状導体143も平面状コイルであり、その一端143aは第1の内部電極131に接続されている。一方、第3のスパイラル状導体143の他端143bは、絶縁層123に形成されたスルーホール及び引き出し導体152を介して、第5の内部電極135a,135bに接続されている。上述の通り、第5の内部電極135a,135bは、第5の端子電極105a,105bに接続されていることから、第3のスパイラル状導体143の一端143aは、第1の端子電極101に接続され、他端143bは第5の端子電極105a,105bに接続されていることになる。
第4のスパイラル状導体144も平面状コイルであり、その一端144aは第2の内部電極132に接続されている。一方、第4のスパイラル状導体144の他端144bは、絶縁層122に形成されたスルーホール及び引き出し導体154を介して、第5の内部電極135a,135bに接続されている。したがって、第4のスパイラル状導体144の一端144aは、第2の端子電極102に接続され、他端144bは第5の端子電極105a,105bに接続されていることになる。
本実施形態では、引き出し導体152,154によって第5の内部電極135a,135bが互いに接続されている。つまり、第5の端子電極105a,105bが内部で短絡されている。但し、本発明がこれに限定されるものではなく、第3のスパイラル状導体143の他端143bが第5の内部電極135a,135bの少なくとも一方に接続されており、且つ、第4のスパイラル状導体144の他端144bが第5の内部電極135a,135bの少なくとも一方に接続されていれば足りる。したがって、第5の内部電極135a,135bの一方を不使用電極としても構わない。
本実施形態においては、第1乃至第4のスパイラル状導体141〜144の巻数はいずれも約3回である。もちろん、本発明において第1乃至第4のスパイラル状導体141〜144の巻数はこれに限定されず、何回であっても構わない。但し、第1及び第2のスパイラル状導体141,142の対称性を保つためには、第1のスパイラル状導体141の巻数及び第2のスパイラル状導体142の巻数については同一とする必要がある。同様に、第3及び第4のスパイラル状導体143,144の対称性を保つためには、第3のスパイラル状導体143の巻数及び第4のスパイラル状導体144の巻数についても同一とする必要がある。第1及び第2のスパイラル状導体141,142の巻数と、第3及び第4のスパイラル状導体143,144の巻数については、互いに異なっていても構わない。
さらに、図1に示す矢印Aからみた場合、第1及び第2のスパイラル状導体141,142は、一端141a,142aから他端141b,142bに向かって、いずれも右回り(時計回り)に巻回されている。したがって、第1の端子電極101を始点とした第1のスパイラル状導体141の巻回方向と、第2の端子電極102を始点とした第2のスパイラル状導体142の巻回方向は、互いに同一方向となる。
尚、第1及び第2のスパイラル状導体141,142の巻回方向については、互いに同一である限りその方向については特に限定されず、したがって、両者とも左回り(反時計回り)であっても構わない。
これに対し、図1に示す矢印Aからみた場合、第3のスパイラル状導体143は、一端143aから他端143bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のスパイラル状導体144は、一端144aから他端144bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。したがって、第1の端子電極101を始点とした第3のスパイラル状導体143の巻回方向と、第2の端子電極102を始点とした第4のスパイラル状導体142の巻回方向は、互いに逆方向となる。
第3及び第4のスパイラル状導体143,144の巻回方向については、互いに逆方向である限りその方向については特に限定されず、したがって上記とは逆、すなわち、第3のスパイラル状導体143が左回り(反時計回り)であり、第4のスパイラル状導体144が右回り(時計回り)であっても構わない。また、第1及び第2のスパイラル状導体141,142の巻回方向と、第3又は第4のスパイラル状導体143,144の巻回方向との関係についても特に限定されるものではない。
また、絶縁層121〜125には、それぞれ2つの貫通孔121a〜125a,121b〜125bが形成されている。このうち、貫通孔121a〜125aには磁性体161が挿入されており、貫通孔121b〜125bには磁性体162が挿入されている。図1に示すように、絶縁層122,123に形成された貫通孔122a,123aは、スパイラル状導体141,142の中心部分に位置しており、このため、スパイラル状導体141,142は、磁性体161の周囲に巻回された状態となる。同様に、貫通孔122b,123bは、スパイラル状導体143,144の中心部分に位置しており、このため、スパイラル状導体143,144は、磁性体162の周囲に巻回された状態となる。本発明において、このような磁性体161,162を設けることは必須でないが、これを設けることによって、漏れの少ない磁気回路を形成することができる。
図3は、本実施形態によるインダクタ素子100の等価回路図である。
図3に示すように、本実施形態によるインダクタ素子100は、第1及び第2のフィルタ回路部分F1,F2が一体化された素子を構成する。第1のフィルタ回路部分F1は、第1及び第2のスパイラル状導体141,142によって構成される回路であり、第1及び第2の端子電極101,102と、第3及び第4の端子電極103,104との間に挿入される。一方、第2のフィルタ回路部分F2は、第3及び第4のスパイラル状導体143,144によって構成される回路であり、第1及び第2の端子電極101,102と、第5の端子電極105a,105bとの間に挿入される。
ここで、第1のフィルタ回路部分F1は、第1及び第2の端子電極101,102を始点とした2つのコイル(第1及び第2のスパイラル状導体141,142)の巻回方向が同一であることから、差動成分に対するインピーダンスが低く、逆に、同相成分に対するインピーダンスが高いという特性を示す。一方、第2のフィルタ回路部分F2は、第1及び第2の端子電極101,102を始点とした2つのコイル(第3及び第4のスパイラル状導体143,144)の巻回方向が互いに逆方向であることから、差動成分に対するインピーダンスが高く、逆に、同相成分に対するインピーダンスが低いという特性を示す。
このため、インダクタ素子100の使用形態を示す図4のように、出力バッファ13を用いて、入力側となる一対の信号線11a,12aから出力側となる一対の信号線11b,12bへ差動信号を伝送すると、差動信号に重畳しているコモンモードノイズが第1のフィルタ回路部分F1にて遮断され、或いは、第2のフィルタ回路部分F2にてグランドへバイパスされる。これにより、コモンモードノイズは入力バッファ14へ伝わることなく除去される。
しかも、第1のフィルタ回路部分F1は、周波数が高くなるほど同相成分に対するインピーダンスが高くなるという周波数特性を有している一方、第2のフィルタ回路部分F2は、周波数が低くなるほど同相成分に対するインピーダンスが低くなるという周波数特性を有していることから、高域のコモンモードノイズについては第1のフィルタ回路部分F1によって遮断され、低域のコモンモードノイズについては第2のフィルタ回路部分F2によってバイパスされることになり、広域に亘ってコモンモードノイズを効果的に除去することが可能となる。
図4に示す回路図は、回路的には図22に示した回路図と実質的に同一であるが、第1及び第2のフィルタ回路部分F1,F2が一体化されていることから、部品点数を削減することが可能となる。
しかも、図2を用いて説明したように、第1及び第2の端子電極101,102が隣接して配置され、且つ、第3及び第4の端子電極103,104が隣接して配置されていることから、図5に示すように、プリント基板190上において一対の信号線11a,12a及び一対の信号線11b,12bをいずれも平行に敷設することができ、プリント基板190上における配線パターンの迂回などが不要となる。このため、プリント基板190上における配線パターンの占有面積が必要以上に増大することがなく、しかも、高い対称性を確保することが可能となる。これにより、装置全体の小型化と信号品質の向上を両立させることが可能となる。
次に、インダクタ素子100の好ましい製造方法について説明する。
図6(a)〜(c)は、インダクタ素子100の好ましい一製造方法を説明するための工程図である。
まず、図6(a)に示すように、フェライトなどの磁性材料からなる基板111を用意し、その表面にポリイミドなどの樹脂を塗布することによって絶縁層121を形成する。図6(a)には示されていないが、絶縁層121の一部はパターニングされ、これによって、図1に示した貫通孔121a,121bが形成される。
次に、スパッタリング法などにより、絶縁層121の全表面に下地導体159を形成し、さらにその表面にフォトレジスト191を形成する。下地導体159は、後述するメッキ工程において給電体として機能するとともに、導体パターンと絶縁層との密着性を向上させるための密着層として機能する。このような機能を果たすためには、例えば、クロム(Cr)と銅(Cu)の積層膜によって下地導体159を構成することが好ましい。
次に、図6(b)に示すように、フォトリソグラフィー法によってフォトレジスト191をパターニングし、下地導体159の一部を露出させる。その後、下地導体159を給電体とした電解メッキを行うことにより、下地導体159が露出した部分に引き出し導体153,154(導電パターン)を形成する。導電パターンの材料としては、メッキにより形成可能な金属であれば特に限定されず、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、ニッケルクロム合金(Ni−Cr)、はんだ、スズ(Sn)などを用いることができる。中でも、コストや電気伝導性などを考慮すれば、銅(Cu)を用いることが非常に好ましい。導電パターンの材料として銅(Cu)を選択する場合には、メッキ液として硫酸銅浴等を用いればよい。
そして、図6(c)に示すように、フォトレジスト191を除去し、酸などのエッチング液を用いて引き出し導体152が形成されていない部分の不要な下地導体159を除去(ソフトエッチング)すれば、1層目の加工が完了する。
以下、同様の工程を繰り返すことにより、絶縁層122〜125及び他の導電パターン(スパイラル状導体141〜144など)を形成した後、各絶縁層121〜125に形成された貫通孔121a〜125a,121b〜125bに磁性体161,161を埋め込む。そして、フェライトなどの磁性材料からなる上側の基板112を取り付けた後、第1〜第5の端子電極101〜104,105a,105bを形成すれば、本実施形態によるインダクタ素子100が完成する。
このように、スパイラル状導体141〜144などの導体パターンをメッキ法により形成すれば、スクリーン印刷法などの厚膜プロセスを用いた場合と比べて、インダクタ素子100全体の厚みを薄くすることが可能となる。
尚、インダクタ素子100の作製においては、例えばウェハ状である大型の基板111,112を用い、同一のウェハ上に多数のインダクタ素子100を同時に形成した後、ダイサーなどを用いて個々のインダクタ素子100に分離することが好ましい。これによれば、1枚のウェハから多数のインダクタ素子100を取り出すことができることから、製造コストを大幅に削減することが可能となる。
導体パターンの形成方法としては、上述したメッキ法に限らず、スパッタリング法や蒸着法など、他の薄膜プロセスを用いることも可能である。この場合、図7(a)に示すように全面に導体膜150を成膜した後、フォトレジスト191を形成し、図7(b)に示すように、フォトレジスト191を用いて導体膜150をパターニングすることによって導体パターン(例えば引き出し導体153,154)を形成しても構わない。さらには、図8に示すように、メタルマスク192を用いたスパッタリングや蒸着を行うことによって、導体パターン(例えば引き出し導体153,154)を選択的に成膜しても構わない。
以上説明したように、本実施形態によるインダクタ素子100は、差動成分に対するインピーダンスが低く、同相成分に対するインピーダンスが高い第1のフィルタ回路部分F1と、逆に、差動成分に対するインピーダンスが高く、同相成分に対するインピーダンスが低い第2のフィルタ回路部分F2が一体化されていることから、部品点数を削減することが可能となる。
また、第1及び第2の端子電極101,102が隣接して配置され、且つ、第3及び第4の端子電極103,104が隣接して配置されていることから、プリント基板190上における配線パターンの迂回などが不要となる。このため、プリント基板190上における配線パターンの占有面積が必要以上に増大することがなく、しかも、高い対称性を確保することが可能となる。これにより、装置全体の小型化と信号品質の向上を両立させることが可能となる。
しかも、本実施形態によるインダクタ素子100は、スパイラル状導体141〜144をフェライトなどの磁性材料からなる基板111,112によって挟み込んでおり、且つ、スパイラル状導体141〜144の中心部分を貫通するように磁性体161,162が設けられていることから、漏れの少ない磁気回路を形成することが可能となる。これにより、小型化した場合であっても、良好な特性を得ることが可能となる。
さらに、本実施形態では、絶縁層を介して第1及び第2のスパイラル状導体141,142を異なる層に形成し、且つ、絶縁層を介して第3及び第4のスパイラル状導体143,144を異なる層に形成していることから、磁気結合する2つのスパイラル状導体間に生じる寄生容量を抑制することができ、その結果、良好な特性を得ることが可能となる。また、スパイラル状導体141〜144の巻数を大きくすることが容易である、という利点も有している。
さらに、本実施形態では、第1及び第3のスパイラル状導体141,143を同一平面に形成し、第2及び第4のスパイラル状導体142,144を他の同一平面に形成していることから、絶縁層の数を削減することが可能となり、その結果、製造コストを削減することが可能となる。
尚、本実施形態では、第3のスパイラル状導体143の内周から外周へ向かう巻回方向と、第4のスパイラル状導体144の内周から外周へ向かう巻回方向とが逆であるが、本発明においてこの点は必須でなく、両者が一致していても構わない。この態様は、後述する第2の実施形態において詳述する。
尚、本実施形態では、第1及び第2のスパイラル状導体141,142の他端141b,142bを、第3及び第4の端子電極103,104にそれぞれ接続しているが、この接続関係が逆であっても構わない。この場合、本実施形態の変形例である図9に示すように、引き出し導体151を第4の内部電極134に接続し、引き出し導体153を第3の内部電極133に接続するよう、導体パターンのパターン形状を変えればよい。この場合も、図5に示したように、プリント基板190上において一対の信号線11b,12bを平行に敷設することができる。
[第2の実施形態]
図10は、本発明の好ましい第2の実施形態によるインダクタ素子200の構造を示す略分解斜視図である。第2の実施形態によるインダクタ素子200を組み立てた状態は、図2に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子200は、絶縁層121,122上に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるインダクタ素子100と相違している。その他の点は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図10に示すように、本実施形態では、第4のスパイラル状導体244が、第1の実施形態とは異なり、外周から内周に向かって右回り(時計回り)に形成されている。これは、第3のスパイラル状導体143と同じ巻回方式である。つまり、本実施形態では、内周から外周へ向かう巻回方向については、第3のスパイラル状導体143と第4のスパイラル状導体244とで一致している。
また、絶縁層121には、引き出し導体153のほか、引き出し導体251,252が形成されている。引き出し導体251は、第2の内部電極132と第4のスパイラル状導体244の一端244aとを接続する導体であり、引き出し導体252は、第5の内部電極135a,135bと第4のスパイラル状導体244の他端244bとを接続する導体である。本実施形態では、第4のスパイラル状導体244の一端244aは内周に位置し、第4のスパイラル状導体244の他端244bは外周に位置している。
これにより、第1〜第5の端子電極101〜104,105a,105bと、第1乃至第4のスパイラル状導体141〜143,244との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と一致する。つまり、図10に示す矢印Aからみた場合、第3のスパイラル状導体143は、一端143aから他端143bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のスパイラル状導体244は、一端244aから他端244bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されていることになる。
このため、本実施形態によるインダクタ素子200は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。このように、本発明においては、各スパイラル状導体の内周から外周へ向かう巻回方向については、限定されない。尚、第1及び第2の実施形態とも、第1及び第2のスパイラル状導体141,142については、内周から外周へ向かう巻回方向が同一であるが、これについても互いに逆としても構わない。
[第3の実施形態]
図11は、本発明の好ましい第3の実施形態によるインダクタ素子300の構造を示す略分解斜視図である。第3の実施形態によるインダクタ素子300を組み立てた状態も、図2に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子300は、絶縁層121〜123上に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるインダクタ素子100と相違している。その他の点は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図11に示すように、本実施形態では、第3のスパイラル状導体343が絶縁層122上に形成されており、第4のスパイラル状導体344が絶縁層123上に形成されている。つまり、第1及び第4のスパイラル状導体141,344が同一平面に形成され、第2及び第3のスパイラル状導体142,343が他の同一平面に形成されている。この場合も、絶縁層の数を削減することが可能となり、その結果、製造コストを削減することが可能となる。
第3のスパイラル状導体343の一端343aは、絶縁層121に形成された引き出し導体351を介して、第1の内部電極131に接続されており、他端343bは、絶縁層121に形成された引き出し導体154を介して、第5の内部電極135a,135bに接続されている。つまり、第3のスパイラル状導体343の接続関係については、第1の実施形態と全く同じである。
また、第4のスパイラル状導体344の一端344aは、第2の内部電極132に接続されており、他端344bは、絶縁層124に形成された引き出し導体152を介して、第5の内部電極135a,135bに接続されている。つまり、第4のスパイラル状導体344の接続関係についても、第1の実施形態と全く同じである。
これにより、第1〜第5の端子電極101〜104,105a,105bと、第1乃至第4のスパイラル状導体141,142,343,344との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と同様となる。つまり、図11に示す矢印Aからみた場合、第3のスパイラル状導体343は、一端343aから他端343bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている一方、第4のスパイラル状導体344は、一端344aから他端344bに向かって右回り(時計回り)に巻回されていることになり、両者の巻回方向は互いに逆となる。
このため、本実施形態によるインダクタ素子300も、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。このように、第1及び第4のスパイラル状導体141,344を同一平面に形成し、第2及び第3のスパイラル状導体142,343を他の同一平面に形成した場合においても、絶縁層の数を削減することが可能となり、その結果、製造コストを削減することが可能となる。
[第4の実施形態]
図12は、本発明の好ましい第4の実施形態によるインダクタ素子400の構造を示す略分解斜視図である。第4の実施形態によるインダクタ素子400を組み立てた状態も、図2に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子400は、絶縁層121〜123上に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるインダクタ素子100と相違している。その他の点は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。第2の実施形態によるインダクタ素子200と同一の要素についても、同一の符号を付してある。
図12に示すように、本実施形態では、上述した第3の実施形態と同様、第3のスパイラル状導体443が絶縁層122上に形成されており、第3のスパイラル状導体444が絶縁層123上に形成されている。つまり、第1及び第4のスパイラル状導体141,444が同一平面に形成され、第2及び第3のスパイラル状導体142,443が他の同一平面に形成されている。
本実施形態では、第3の実施形態とは異なり、第4のスパイラル状導体444が、外周から内周に向かって右回り(時計回り)に形成されている。これは、第3のスパイラル状導体443と同じ巻回方式である。つまり、本実施形態では、内周から外周へ向かう巻回方向については、第3のスパイラル状導体443と第4のスパイラル状導体444とで一致している。この点は、第2の実施形態と同様である。
具体的には、第3のスパイラル状導体443の一端443aは、絶縁層121に形成された引き出し導体451を介して、第1の内部電極131に接続されており、他端443bは、絶縁層121に形成された引き出し導体252を介して、第5の内部電極135a,135bに接続されている。また、第4のスパイラル状導体444の一端444aは、第2の内部電極132に接続されており、他端444bは、絶縁層124に形成された引き出し導体152を介して、第5の内部電極135a,135bに接続されている。
これにより、第1〜第5の端子電極101〜104,105a,105bと、第1乃至第4のスパイラル状導体141,142,443,444との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と同様となる。つまり、図12に示す矢印Aからみた場合、第3のスパイラル状導体443は、一端443aから他端443bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている一方、第4のスパイラル状導体444は、一端444aから他端444bに向かって右回り(時計回り)に巻回されていることになり、両者の巻回方向は互いに逆となる。
このため、本実施形態によるインダクタ素子400も、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。
[第5の実施形態]
図13は、本発明の好ましい第5の実施形態によるインダクタ素子500の構造を示す略分解斜視図である。
本実施形態によるインダクタ素子500は、第1乃至第5の内部電極131〜134,135a,135bの配列が上記実施形態によるインダクタ素子100,200,300,400とは異なっている。つまり、図13に示すように、本実施形態では、第1の内部電極131と第2の内部電極132が対向する位置に配置されており、第3の内部電極133と第4の内部電極134もが対向する位置に配置されている。これにより、本実施形態によるインダクタ素子500を組み立てると、図14に示すように、第1乃至第5の端子電極101〜104,105a,105bの配置も上記各実施形態とは異なる配置となる。
図13に示すように、第1のスパイラル状導体141の一端141aは、第1の内部電極131に接続されており、他端141bは、絶縁層124上に形成された引き出し導体551を介して、第3の内部電極133に接続されている。また、第2のスパイラル状導体542の一端542aは、第2の内部電極132に接続されており、他端542bは、絶縁層121上に形成された引き出し導体553を介して、第4の内部電極134に接続されている。
さらに、第3のスパイラル状導体143の一端143aは、第1の内部電極131に接続されており、他端143bは、絶縁層124上に形成された引き出し導体552を介して、第5の内部電極135bに接続されている。また、第4のスパイラル状導体544の一端544aは、絶縁層121上に形成された引き出し導体554を介して、第2の内部電極132に接続されており、他端544bは、絶縁層121上に形成された引き出し導体555を介して、第5の内部電極135aに接続されている。本実施形態では、第5の端子電極105a,105bが内部で短絡されていないが、上記各実施形態と同様、これらを内部で短絡させても構わない。その他、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態においても、図13に示す矢印Aからみた場合、第1及び第2のスパイラル状導体141,542は、一端141a,542aから他端141b,542bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている。また、第3のスパイラル状導体143は、一端143aから他端143bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のスパイラル状導体544は、一端544aから他端544bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。
図15は、インダクタ素子500を用いた場合における、プリント基板上の配線パターンを説明するための図である。
図15に示すように、本実施形態によるインダクタ素子500を用いた場合においても、プリント基板190上で一対の信号線11a,12a及び一対の信号線11b,12bをいずれも平行に敷設することができ、プリント基板190上における配線パターンの迂回などが不要となる。
尚、本実施形態によるインダクタ素子500では、第1及び第2の実施形態と同様、第1及び第3のスパイラル状導体141,143を同一平面に形成し、第2及び第4のスパイラル状導体542,544を他の同一平面に形成しているが、第3及び第4の実施形態のように、第1及び第4のスパイラル状導体141,544を同一平面に形成し、第2及び第3のスパイラル状導体142,543を他の同一平面に形成しても構わない。いずれにおいても、絶縁層の数を削減することが可能となる。
また、本実施形態によるインダクタ素子500では、第1及び第3の実施形態と同様、第3のスパイラル状導体143の内周から外周へ向かう巻回方向と、第4のスパイラル状導体544の内周から外周へ向かう巻回方向とを互いに逆方向としているが、第2及び第4の実施形態のように、これらを同一方向としても構わない。
[第6の実施形態]
図16は、本発明の好ましい第6の実施形態によるインダクタ素子600の構造を示す略分解斜視図である。第6の実施形態によるインダクタ素子600を組み立てた状態も、図2に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子600では、第1及び第2のスパイラル状導体641,642がいずれも絶縁層122上において、互いに沿って形成されている。このため、このため、両者は互いに磁気結合している。さらに、第3及び第4のスパイラル状導体643,644は、いずれも絶縁層123において互いに沿って形成されている。このため、このため、両者も互いに磁気結合している。また、本実施形態では、各絶縁層121〜125に形成された貫通孔121a〜125aが一つずつである。その他、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図16に示すように、第1のスパイラル状導体641の一端641aは、第1の内部電極131に接続されており、他端641bは、絶縁層121上に形成された引き出し導体651を介して、第3の内部電極133に接続されている。また、第2のスパイラル状導体642の一端642aは、絶縁層121上に形成された引き出し導体652を介して、第2の内部電極132に接続されており、他端642bは、絶縁層121上に形成された引き出し導体653を介して、第4の内部電極134に接続されている。
さらに、第3のスパイラル状導体643の一端643aは、第1の内部電極131に接続されており、他端643bは、絶縁層124上に形成された引き出し導体654を介して、第5の内部電極135a,135bに接続されている。また、第4のスパイラル状導体644の一端644aは、絶縁層124上に形成された引き出し導体655を介して、第2の内部電極132に接続されており、他端644bは、絶縁層124上に形成された引き出し導体654を介して、第5の内部電極135a,135bに接続されている。
本実施形態においても、図16に示す矢印Aからみた場合、第1及び第2のスパイラル状導体641,642は、一端641a,642aから他端641b,642bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている。また、第3のスパイラル状導体643は、一端643aから他端643bに向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のスパイラル状導体644は、一端644aから他端644bに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。
これにより、第1〜第5の端子電極101〜104,105a,105bと、第1乃至第4のスパイラル状導体641〜644との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と同様となる。このため、本実施形態によるインダクタ素子600も、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。しかも、本実施形態の構成によれば、第1及び第2のスパイラル状導体641,642が同一層上で互いに沿って形成されており、且つ、第3及び第4のスパイラル状導体643,644が同一層上で互いに沿って形成されていることから、インダクタ素子600の平面サイズを縮小することが可能となる。
しかも、本実施形態の構成によれば、第1及び第2のスパイラル状導体641,642を形成するためのマスクパターンと、第3及び第4のスパイラル状導体643,644を形成するためのマスクパターンを共用することが可能となり、これにより製造コストを削減することも可能となる。但し、本実施形態において、マスクパターンを共用可能な構成とすることは必須でない。
尚、本実施形態によるインダクタ素子600は、端子電極の配置を第1〜第4の実施形態と同一としているが、これを第5の実施形態と同一としても構わない。つまり、第1乃至第5の端子電極101〜104,105a,105bの配置を、図14に示した配置としても構わない。
また、本実施形態では、第1及び第2のスパイラル状導体641,642と、第3及び第4のスパイラル状導体643,644とが上下に隣接していることから、これらスパイラル状導体間において多少の磁気結合が生じる。この磁気結合を弱める必要がある場合には、これらの間隔を広くしたり、これらの間に透磁率の高い材料を介在させればよい。逆に、両者の磁気結合を強める必要がある場合には、これらの間隔を狭くしたり、これらの間に透磁率の低い材料を介在させればよい。つまり、両者の磁気結合については、用途に応じて適宜調整することが可能である。
さらに、本実施形態では、第1及び第2のスパイラル状導体641,642と、第3及び第4のスパイラル状導体643,644とが上下に隣接しているが、これらを同一平面に形成しても構わない。第1〜第4のスパイラル状導体641〜644をすべて同一平面に形成した例を図17に示す。
図17に示すように、第1〜第4のスパイラル状導体641〜644をすべて同一平面に形成する場合、絶縁層121に引き出し導体656〜659を形成し、各スパイラル状導体641〜644の所定の端部と、これに対応する所定の内部電極とを接続すればよい。具体的には、引き出し導体656によって、第2のスパイラル状導体642の一端642a及び第4のスパイラル状導体644の一端644aと、第2の内部電極132とを接続し、引き出し導体657によって、第1のスパイラル状導体641の他端641bと第3の内部電極133とを接続すればよい。さらに、引き出し導体658によって、第2のスパイラル状導体642の他端642bと第4の内部電極134とを接続し、引き出し導体659によって、第3のスパイラル状導体643の他端642b及び第4のスパイラル状導体644の他端644bと、第5の内部電極135a,135bとを接続すればよい。
これによれば、絶縁層の数を削減することが可能となり、その結果、低背化を実現することが可能となる。また、製造コストを削減することも可能となる。また、第1及び第2のスパイラル状導体641,642と、第3及び第4のスパイラル状導体643,644との間の磁気結合がほとんど生じないことから、両者の磁気結合を弱める必要がある場合においても特に好適である。
[第7の実施形態]
図18は、本発明の好ましい第7の実施形態によるインダクタ素子700の構造を示す略分解斜視図である。第7の実施形態によるインダクタ素子700を組み立てた状態も、図2に示した通りである。
本実施形態によるインダクタ素子700は、基板111,112に挟まれた絶縁層が6層(721〜726)である点、並びに、これら絶縁層に形成された導体パターンの形状が異なる点において、第1の実施形態によるインダクタ素子100と相違する。その他の点は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。絶縁層721〜726には、それぞれ貫通孔721a〜726a及び721b〜726bが形成されている。
図18に示すように、本実施形態においては、スパイラル状導体が複数層に亘って形成されている。より具体的に説明すると、第1のスパイラル状導体は、それぞれ異なる層に形成された導体741a,741b,741c,741d,741eによって構成され、第2のスパイラル状導体は、それぞれ異なる層に形成された導体742a,742b,742c,742d,742eによって構成されている。第1のスパイラル状導体と第2のスパイラル状導体は、2重らせん構造を有しており、このため、両者は互いに磁気結合している。
また、第3のスパイラル状導体は、それぞれ異なる層に形成された導体743a,743b,743c,743d,743eによって構成され、第4のスパイラル状導体は、それぞれ異なる層に形成された導体744a,744b,744c,744d,744eによって構成されている。第3のスパイラル状導体と第4のスパイラル状導体も2重らせん構造を有しており、このため、両者は互いに磁気結合している。
導体741a,741b,741c,741d,741eによって構成される第1のスパイラル状導体の一端741xは、第1の内部電極131に接続されており、第1のスパイラル状導体の他端741yは、第3の内部電極133に接続されている。一方、導体742a,742b,742c,742d,742eによって構成される第2のスパイラル状導体の一端742xは、第2の内部電極132に接続されており、第2のスパイラル状導体の他端742yは、第4の内部電極134に接続されている。
また、導体743a,743b,743c,743d,743eによって構成される第3のスパイラル状導体の一端743xは、第1の内部電極131に接続されており、第3のスパイラル状導体の他端743yは、第5の内部電極135bに接続されている。一方、導体744a,744b,744c,744d,744eによって構成される第4のスパイラル状導体の一端744xは、第2の内部電極132に接続されており、第4のスパイラル状導体の他端744yは、第5の内部電極135aに接続されている。
本実施形態においては、図18に示す矢印Aからみた場合、第1のスパイラル状導体(741a,741b,741c,741d,741e)は、一端741xから他端741yに向かって左回り(反時計回り)に巻回されているとともに、第2のスパイラル状導体(742a,742b,742c,742d,742e)も、一端742xから他端742yに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。したがって、第1の端子電極101を始点とした第1のスパイラル状導体(741a,741b,741c,741d,741e)の巻回方向と、第2の端子電極102を始点とした第2のスパイラル状導体(742a,742b,742c,742d,742e)の巻回方向が互いに同一方向となっている。
これに対し、図18に示す矢印Aからみた場合、第3のスパイラル状導体(743a,743b,743c,743d,743e)は、一端743xから他端743yに向かって左回り(反時計回り)に巻回されている一方、第4のスパイラル状導体(744a,744b,744c,744d,744e)は、一端744xから他端744yに向かって右回り(時計回り)に巻回されている。したがって、第1の端子電極101を始点とした第3のスパイラル状導体(743a,743b,743c,743d,743e)の巻回方向と、第2の端子電極102を始点とした第4のスパイラル状導体(744a,744b,744c,744d,744e)の巻回方向が互いに逆方向となっている。
これにより、第1〜第5の端子電極101〜104,105a,105bと、第1乃至第4のスパイラル状導体741〜744との接続関係は、第1の実施形態における接続関係と同様となる。このため、本実施形態によるインダクタ素子700も、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。しかも、本実施形態の構成によれば、各絶縁層上の導体パターンの形状がそれほど複雑ではなく、また、それほど高いパターン精度が要求されないことから、スクリーン印刷法などの厚膜プロセスを用いることが可能となる。その結果、製造コストを削減することが可能となる。
尚、本実施形態によるインダクタ素子700においても、端子電極とスパイラル状導体との接続関係を第1〜第4の実施形態と同一としているが、これら接続関係を第5の実施形態と同一としても構わない。つまり、第1乃至第5の端子電極101〜104,105a,105bの配置を、図14に示した配置としても構わない。
[第8の実施形態]
図19は、本発明の好ましい第8の実施形態によるインダクタ素子800の構造を示す略分解斜視図である。本実施形態によるインダクタ素子800は、プリント基板上に形成された構造を有している。
本実施形態によるインダクタ素子800は、第1〜第4のスパイラル状導体841〜844の構造については、図1に示した第1の実施形態とほぼ同様であり、第1のスパイラル状導体841と第2のスパイラル状導体842、並びに、第3のスパイラル状導体843と第4のスパイラル状導体844とが互いに磁気結合しているが、これらがプリント基板を構成する樹脂層190−1〜190−3に形成され、これにより、素子自体が別部品ではなく、プリント基板上に集積された構造を有している点において相違する。
より具体的には、第1のスパイラル状導体841は樹脂層190−2に形成されており、その一端は第1の入力ライン801に接続され、他端は第1の出力ライン803に接続されている。また、第2のスパイラル状導体842は樹脂層190−1に形成されており、その一端は第2の入力ライン802に接続され、他端は第2の出力ライン804に接続されている。第1及び第2の入力ライン801,802は、差動信号が供給される一対の配線であり、例えば、図4に示した信号線11a,12aがこれに該当する。一方、第1及び第2の出力ライン803,804も一対の配線であり、例えば、図4に示した信号線11b,12bがこれに該当する。
また、第3のスパイラル状導体843は樹脂層190−2に形成されており、その一端は第1の入力ライン801に接続され、他端はグランドライン805aに接続されている。また、第4のスパイラル状導体844は樹脂層190−1に形成されており、その一端は第2の入力ライン802に接続され、他端はグランドライン805bに接続されている。グランドライン805a,805bは、共通の導体であっても構わない。
本実施形態においては、図19に示す矢印Aからみた場合、第1のスパイラル状導体841は、第1の入力ライン801に接続された一端から、第1の出力ライン803に接続された他端に向かって右回り(時計回り)に巻回されている。同様に、第2のスパイラル状導体842も、第2の入力ライン802に接続された一端から、第2の出力ライン804に接続された他端に向かって右回り(時計回り)に巻回されている。したがって、第1の入力ライン801を始点とした第1のスパイラル状導体841の巻回方向と、第2の入力ライン802を始点とした第2のスパイラル状導体842の巻回方向は、互いに同一方向となっている。
これに対し、図19に示す矢印Aからみた場合、第3のスパイラル状導体843は、第1の入力ライン801に接続された一端から、グランドライン805aに接続された他端に向かって右回り(時計回り)に巻回されている一方、第4のスパイラル状導体844は、第2の入力ライン802に接続された一端から、グランドライン805bに接続された他端に向かって左回り(反時計回り)に巻回されている。したがって、本実施形態においても、第1の入力ライン801を始点とした第3のスパイラル状導体843の巻回方向と、第2の入力ライン802を始点とした第4のスパイラル状導体844の巻回方向が互いに逆方向となっている。
これにより、本実施形態によるインダクタ素子800は、第1の実施形態によるインダクタ素子100と全く同じ機能を果たす。しかも、本実施形態によれば、素子自体がプリント基板上に形成されていることから、プリント基板に搭載すべき部品点数を削減することが可能となる。
尚、本実施形態によるインダクタ素子800では、第1及び第2の実施形態と同様、第1及び第3のスパイラル状導体841,843を同一平面に形成し、第2及び第4のスパイラル状導体842,844を他の同一平面に形成しているが、第3及び第4の実施形態のように、第1及び第4のスパイラル状導体841,844を同一平面に形成し、第2及び第3のスパイラル状導体842,843を他の同一平面に形成しても構わない。
また、本実施形態によるインダクタ素子800では、第1及び第3の実施形態と同様、第3のスパイラル状導体843の内周から外周へ向かう巻回方向と、第4のスパイラル状導体844の内周から外周へ向かう巻回方向とを互いに逆方向としているが、第2及び第4の実施形態のように、これらを同一方向としても構わない。
また、本実施形態では、インダクタ素子をプリント基板上に形成しているが、これを半導体チップに集積することにより、半導体チップ内に埋め込んでも構わない。この場合、略断面図である図20に示すように、半導体基板911上に設けられた層間絶縁膜921,922間に第1及び第3のスパイラル状導体941,943を形成し、層間絶縁膜922,923間に第2及び第4のスパイラル状導体942,944を形成すればよい。この場合も、図20に示す矢印Aからみた場合、第1のスパイラル状導体941の一端(入力ライン)から、他端(出力ライン)に向かう巻回方向と、第2のスパイラル状導体942の一端(入力ライン)から、他端(出力ライン)に向かう巻回方向を、互いに同一方向とするとともに、第3のスパイラル状導体943の一端(入力ライン)から、他端(グランドライン)に向かう巻回方向と、第4のスパイラル状導体944の一端(入力ライン)から、他端(グランドライン)に向かう巻回方向を、互いに逆方向とすればよい。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
例えば、第1〜第6及び第8の実施形態では、2つの平面にそれぞれ2つのスパイラル状導体を形成しているが、本発明がこれに限定されるものではなく、その他、種々の態様も採用しても構わない。したがって、磁気結合する一対のスパイラル状導体を絶縁層を介して異なる層に形成するタイプのフィルタ回路部分(第1〜第5及び第8の実施形態参照)と、磁気結合する一対のスパイラル状導体を同一平面に形成するタイプのフィルタ回路部分(第6の実施形態参照)とが、一つのインダクタ素子に混在していても構わない。同様に、磁気結合する一対のスパイラル状導体を複数層に亘って形成するタイプのフィルタ回路部分(第7の実施形態参照)と、他の形式のフィルタ回路部分が、一つのインダクタ素子に混在していても構わない。
また、上記各実施形態にて例示したスパイラル状導体の巻数や、絶縁層の層数は、あくまで一例であり、本発明が何らこれに限定されるものではない。
さらに、上記各実施形態にて例示したスパイラル状導体は周囲が略四角形であるが、スパイラル状導体の形状についてはこれに限定されず、円形や多角形であっても構わない。
また、本発明によるインダクタ素子は、コモンモードノイズを除去するための素子として用いるだけでなく、他の用途にも使用することも可能である。